(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る焼却炉1の構成を示す図である。後述するように、
図1の焼却炉1は、複数の火格子(ストーカ)により廃棄物であるごみを搬送しつつ燃焼させるストーカ式の焼却炉である。
【0021】
焼却炉1は、燃焼室2と、空気供給部3と、ごみ供給部4と、排出経路6と、制御システム8とを備える。制御システム8は、焼却炉1の全体制御を担う。燃焼室2では、ごみの燃焼と、ごみから発生した炭素と水素を主成分とした燃焼生成ガスの燃焼とが行われる。燃焼室2から排出される排ガス(燃焼ガス)は、排出経路6にて所定の排ガス処理が施され、大気へと導かれる。
【0022】
ごみ供給部4は、ホッパ41と、給じん装置42とを備える。ホッパ41は、ごみを貯留する。ホッパ41内には、クレーン431により、ごみピットからごみが投入される。給じん装置42は、プッシャーやスクリュー等の駆動機構421による押出動作により、ホッパ41内のごみを燃焼室2内の後述の火格子部21上に供給する。駆動機構421を制御することにより、給じん装置42から火格子部21上へのごみの供給速度(例えば、所定時間当たりの押出動作の回数であり、以下、「給じん装置速度」という。)が調整可能である。
【0023】
燃焼室2内には、火格子部21と、排出部22とが設けられる。火格子部21は、給じん装置42と排出部22との間に位置し、両者の間にて連続的に配列される複数の火格子を備える。複数の火格子において1つ置きに配置される可動火格子の往復運動により、火格子部21上のごみが排出部22に向かって移動する。このように、火格子部21の複数の火格子が、給じん装置42から排出部22へと向かう搬送経路に沿ってごみを搬送する。後述するように、空気供給部3により搬送経路の各位置においてごみに対して空気が供給され、燃焼室2内にてごみが燃焼する。燃焼後のごみ(主として灰)は排出部22にて燃焼室2外に排出される。以下の説明では、搬送経路において給じん装置42から排出部22へと向かう方向を「搬送方向」という。搬送方向は、水平方向であってもよい。なお、火格子部21における複数の火格子の形状、配列、動作等については様々なものが採用可能である。
【0024】
火格子部21上の搬送経路は、搬送方向において3個の部分に区分される。搬送経路における給じん装置42側(搬送方向上流側)の部分23には、給じん装置42によりごみが供給され、当該部分23において主としてごみの乾燥が行われる。搬送経路における中央の部分24では、主としてごみの燃焼が行われ、排出部22側(搬送方向下流側)の部分25では、主としてごみの後燃焼が行われる。以下の説明では、搬送経路における3個の部分23,24,25を、それぞれ乾燥火格子23、燃焼火格子24および後燃焼火格子25と呼ぶ。乾燥火格子23、燃焼火格子24および後燃焼火格子25は、搬送方向に沿って順に設けられる。すなわち、搬送方向において、燃焼火格子24は乾燥火格子23の下流側に隣接し、後燃焼火格子25は燃焼火格子24の下流側に隣接する。乾燥火格子23、燃焼火格子24および後燃焼火格子25のそれぞれは、複数の火格子の集合である。
【0025】
図1の焼却炉1では、燃焼火格子24が、第1燃焼火格子241と、第2燃焼火格子242とにさらに区分される。搬送方向において、第2燃焼火格子242は第1燃焼火格子241の下流側に隣接する。また、後燃焼火格子25が、第1後燃焼火格子251と、第2後燃焼火格子252とにさらに区分される。乾燥火格子23、第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242および後燃焼火格子25のそれぞれに対して、可動火格子を駆動する駆動機構26が設けられる。乾燥火格子23、第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242および後燃焼火格子25では、ごみの搬送速度が個別に調整可能である。以下の説明では、乾燥火格子23、第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242および後燃焼火格子25におけるごみの搬送速度を「乾燥火格子速度」、「第1燃焼火格子速度」、「第2燃焼火格子速度」および「後燃焼火格子速度」という。
【0026】
本実施の形態における焼却炉1では、火格子部21が、鉛直方向および搬送方向に垂直な幅方向において複数の搬送レーンに分割されており、給じん装置42も搬送レーン210毎に設けられる。
図2では、2個の搬送レーン210のそれぞれにおける給じん装置42、乾燥火格子23、第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242および後燃焼火格子25の配置を示している。給じん装置速度、乾燥火格子速度、第1燃焼火格子速度、第2燃焼火格子速度および後燃焼火格子速度は、搬送レーン210毎に調整可能である。
【0027】
図1の空気供給部3は、一次空気供給部31を備える。一次空気供給部31は、空気予熱器311と、加熱空気供給管312と、補助空気供給管313と、バイパス管314(一部を破線にて示す。)とを備える。空気予熱器311は、外部からファン(図示省略)を介して供給される燃焼用の空気を加熱し、加熱空気を排出する。加熱空気供給管312の一端は、空気予熱器311に接続される。加熱空気供給管312の他端は、複数の分岐管315に分岐しており、複数の分岐管315は、複数の搬送レーン210の乾燥火格子23、第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242、第1後燃焼火格子251および第2後燃焼火格子252にそれぞれ接続される。加熱空気供給管312により、空気予熱器311からの加熱空気が、乾燥火格子23、第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242、第1後燃焼火格子251および第2後燃焼火格子252に導かれる。
【0028】
補助空気供給管313の一端は、加熱空気供給管312に接続される。補助空気供給管313の他端には、未加熱の空気が供給される。これにより、加熱空気供給管312において補助空気供給管313が接続される位置316を混合位置として、加熱空気よりも低い温度の空気が当該加熱空気に混合される。加熱空気供給管312において、混合位置316と分岐管315との間には温度計331が設けられる。温度計331の出力値に基づいて、空気予熱器311から排出される加熱空気の流量(すなわち、空気予熱器311に供給される空気の流量)、および、補助空気供給管313を流れる未加熱の空気の流量が調整される。これにより、加熱空気供給管312を流れる空気の温度が調整される。
【0029】
図1の焼却炉1では、加熱空気供給管312を流れる空気が、各搬送レーン210の第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242、第1後燃焼火格子251および第2後燃焼火格子252にそのままの状態で供給される。後述する処理例では、燃焼火格子24(第1燃焼火格子241および第2燃焼火格子242)に供給する空気の温度に着目するため、加熱空気供給管312を流れる空気の温度を、「燃焼火格子空気温度」という。焼却炉1では、後燃焼火格子25に供給する空気の温度も燃焼火格子空気温度となる。
【0030】
バイパス管314の一端は、加熱空気供給管312において空気予熱器311と混合位置316との間の位置(以下、単に「接続位置」という。)に接続される。バイパス管314の他端は分岐しており、複数の搬送レーン210の乾燥火格子23に対する分岐管315に接続される。バイパス管314は、当該接続位置と各乾燥火格子23とを実質的に接続する。当該接続位置では、未加熱の空気が混合されていない加熱空気が流れており、当該加熱空気がバイパス管314に供給される。また、バイパス管314には、ダンパを含むバイパス流量調整部332が設けられる。空気供給部3では、バイパス流量調整部332により、乾燥火格子23に供給する空気を、燃焼火格子空気温度よりも高い温度に調整可能である。実際には、乾燥火格子23に対する分岐管315内には、温度計333が設けられる。温度計333の出力値に基づく制御システム8の制御により、バイパス管314を流れる加熱空気の流量が調整され、乾燥火格子23に供給する空気の温度(以下、「乾燥火格子空気温度」という。)が調整される。
図1の焼却炉1では、複数の搬送レーン210において乾燥火格子空気温度が同じであるが、搬送レーン210毎に乾燥火格子空気温度が調整可能であってもよい(燃焼火格子空気温度において同様)。
【0031】
また、各分岐管315には、ダンパ334および流量計335が設けられる。制御システム8が、流量計335の出力値に基づいてダンパ334を制御することにより、各分岐管315を流れる空気の流量、すなわち、各搬送レーン210の乾燥火格子23、第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242、第1後燃焼火格子251および第2後燃焼火格子252のそれぞれに供給する空気の流量が調整される。以下の説明では、一次空気供給部31から火格子部21に供給される空気を「一次空気」と呼ぶ。また、各搬送レーン210の乾燥火格子23、第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242および後燃焼火格子25にそれぞれ供給する一次空気の流量を「乾燥火格子空気流量」、「第1燃焼火格子空気流量」、「第2燃焼火格子空気流量」および「後燃焼火格子空気流量」と呼ぶ。後燃焼火格子空気流量が、第1後燃焼火格子251および第2後燃焼火格子252において個別に設定されてもよい。なお、各乾燥火格子23に接続される分岐管315では、圧力差および適正なダクティングにより、バイパス管314から流れる加熱空気は逆流しない。もちろん、分岐管315において逆止弁が設けられてもよい。
【0032】
空気供給部3は、図示省略の二次空気供給部と、EGRガス供給部とをさらに備える。二次空気供給部は、一次空気供給部31と同様に、空気予熱器を有する。二次空気供給部は、加熱された空気である二次空気を、後述の前側および後側二次空気ノズルを介して燃焼室2内に供給する。EGRガス供給部は、燃焼室2から排出される排ガスを含むガス(すなわち、排ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)ガスであり、以下、「EGRガス」という。)を、後述の前側および後側EGRガスノズルを介して燃焼室2内に供給する。EGRガスは、例えば、排出経路6に設けられるバグフィルタ(図示省略)を通過した排ガスと空気とが混合されたものである。EGRガスは、当該排ガスのみを含むガスであってもよい。すなわち、EGRガスは、少なくとも排ガスを含む。
【0033】
燃焼室2では、前傾斜壁部201と、後傾斜壁部202と、後壁部203と、一対の側壁部204とが設けられる。前傾斜壁部201は、乾燥火格子23の上方をおよそ覆う。後傾斜壁部202は、後燃焼火格子25および排出部22の上方をおよそ覆う。後壁部203は、後傾斜壁部202における搬送方向下流側の端部から鉛直方向下方に広がる。換言すると、後壁部203は、搬送方向の下流側に向かって火格子部21から離れた位置において直立する。後壁部203と後燃焼火格子25との間に、排出部22が設けられる。後壁部203は、燃焼室2における搬送方向下流側の側面を形成する。一対の側壁部204は、前傾斜壁部201および後傾斜壁部202における幅方向両側の端部から鉛直方向下方に広がる。一対の側壁部204は、燃焼室2における幅方向両側の側面を形成する。
図2中に太線にて示すように、一対の側壁部204は、幅方向における火格子部21の両端部に近接した位置に配置され、当該位置において直立する。
【0034】
上述の前側二次空気ノズルおよび前側EGRガスノズルは、前傾斜壁部201において個別に設けられる。
図1では、前側二次空気ノズルおよび前側EGRガスノズルを、1つの矢印A1により示している。また、後側二次空気ノズルおよび後側EGRガスノズルは、後傾斜壁部202において個別に設けられる。
図1では、後側二次空気ノズルおよび後側EGRガスノズルを、1つの矢印A2により示している。
【0035】
燃焼室2において、排出経路6へと向かうガスに対して、前側二次空気ノズルおよび後側二次空気ノズルから二次空気が供給(噴出)される。これにより、燃焼室2内で発生した燃焼生成ガスが燃焼する。また、前側EGRガスノズルから乾燥火格子23上のごみ近傍に向けてEGRガスが噴出され、後側EGRガスノズルにより、搬送経路において乾燥火格子23から下流側に離れた位置の上方から、燃焼室2内にEGRガスが噴出される。燃焼室2内にEGRガスを供給することにより、燃焼温度が低下する。これにより、サーマルNOx(窒素酸化物)の発生が抑制され、NOx濃度の低減等が実現される。
【0036】
燃焼室2の上部には、排ガスを熱源とするボイラ711が設けられる。ボイラ711からの蒸気は、排ガスを利用する過熱器712によりさらに加熱され、過熱蒸気が生成される。過熱器712から排出される過熱蒸気の流量(すなわち、発生蒸気量)は、流量計713により測定される。過熱蒸気は、例えば発電等に利用される。
【0037】
燃焼室2内には、複数の温度計721,722、ごみ層厚取得部73、供給高さ検出部74および熱画像撮像部75がさらに設けられる。複数の温度計721,722は、例えば、熱電対温度計である。一の温度計721は、燃焼室2において排出経路6との接続部近傍、すなわち、燃焼室2の出口近傍に位置する。他の一の温度計722は、燃焼室2において後燃焼火格子25の上方に位置する。燃焼室2内には、他の温度計が設けられてもよい。
【0038】
ごみ層厚取得部73は、2つの圧力計を有する。一方の圧力計は、燃焼室2内における燃焼火格子24の上方の圧力を取得し、他方の圧力計は、燃焼火格子24の下側(分岐管315側)における風箱内の圧力を取得する。当該2つの圧力計により取得される2つの圧力の差圧は、燃焼火格子24上に存在するごみの量(厚さ)に依存する。ごみ層厚取得部73では、上記差圧、および、燃焼火格子24に対する一次空気の供給量等に基づいて、燃焼火格子24上のごみの層の厚さ(の推定値)が取得される。
【0039】
供給高さ検出部74は、乾燥火格子23上のごみよりも上方に配置され、発信器と、受信器とを含む。発信器から乾燥火格子23上のごみの表面に向けてマイクロ波帯の電波が発信され、当該電波のごみの表面からの反射波が受信器により受信される。これにより、乾燥火格子23上において、給じん装置42の近傍における測定点でのごみの高さ(火格子部21上に供給された直後のごみの高さ)が、供給高さとして検出される。なお、供給高さ検出部74では、ミリ波帯の電波等が利用されてもよい。
【0040】
図3は、熱画像撮像部75の近傍を示す図である。熱画像撮像部75は、後壁部203に取り付けられる。詳細には、後壁部203において孔部2031が形成され、孔部2031の縁から外側(燃焼室2とは反対側)に突出する筒状部76が設けられる。筒状部76には、赤外線カメラである熱画像撮像部75の鏡筒(レンズチューブ)751が外部から挿入される。筒状部76の外側の端部は、熱画像撮像部75の本体752により閉塞される。熱画像撮像部75は、中心射影方式により火格子部21上のごみの熱画像を取得する。熱画像は、火格子部21上のごみの表面温度の分布を示す。実際には、熱画像撮像部75(の撮像デバイス)は、3.7〜3.9マイクロメートル(μm)の特定波長(帯)において最大感度を有する。実質的に、熱画像撮像部75では、当該特定波長の赤外線を検出することにより、熱画像が取得される。
【0041】
熱画像撮像部75において、光学系の光軸J1を含む鉛直面上における画角は、例えば60度である。当該鉛直面に垂直であり、かつ、光軸J1を含む面上における画角は、例えば45度である。
図1および
図2では、符号Lを付す細線にて熱画像撮像部75による撮像範囲を示している。搬送方向における撮像範囲は、前傾斜壁部201の一部から第2後燃焼火格子252までである。幅方向における撮像範囲は、一方の側壁部204から他方の側壁部204までである。光軸J1を含む鉛直面は、一対の側壁部204に平行であり、両者の中央に位置する。当該鉛直面上において燃焼火格子24の表面と光軸J1とがなす角度は、好ましくは5度以上30度以下であり、例えば10度である。
【0042】
筒状部76には、ガス導入口761が形成される。ガス導入口761は、パージ用ガスを筒状部76内に常時導入する。パージ用ガスは、筒状部76内において鏡筒751の周囲に充填されるとともに、孔部2031を介して燃焼室2内に噴出される。筒状部76により、熱画像撮像部75の周囲から燃焼室2内に向けてパージ用ガスを噴出するガス噴出部が実現される。当該ガス噴出部から噴出されるパージ用ガスにより、鏡筒751の先端に飛灰が堆積することや、熱画像撮像部75が過度に高温になることが防止される。パージ用ガスは、好ましくは、燃焼室2から排出される排ガスを含むEGRガスである。これにより、燃焼室2内に空気が過度に供給されることが防止され、低空気比燃焼がより確実に実現される。焼却炉1の設計によっては、パージ用ガスが空気等であってもよい。
【0043】
熱画像撮像部75では、本体752内に計装空気が導入される。計装空気は、湿気が除去された清浄な空気である。計装空気は、本体752および鏡筒751の内部に充填されるとともに、鏡筒751の先端の外縁部に設けられた排出口を介して燃焼室2内に噴出される。本体752内に導入される計装空気により、熱画像撮像部75の内部構成の冷却が実現される。なお、鏡筒751の先端から噴出される計装空気の流量は、上記パージ用ガスの流量に比べて十分に低い。焼却炉1では、熱画像撮像部75の周囲に設けられる各種冷却機構が不能となった場合に、熱画像撮像部75を燃焼室2から待避させる機構が設けられてもよい。
【0044】
図4Aおよび
図4Bは、制御システム8に含まれる一部の機能構成を示す図である。制御システム8は、画像処理部81と、ごみ高さ演算部82と、ごみ高さ制御部83とを備える。
図4Aおよび
図4Bでは、ごみ高さ制御部83が指令する値の種類(操作パラメータ)も示している。ごみ高さ制御部83では、ごみ高さ演算部82から入力される情報に基づいて、各操作パラメータの指令値が常時調整される。以下に説明する制御システム8の動作は一例であり、適宜変更されてよい。実際には、制御システム8には、他の入力に基づいて各操作パラメータの指令値を調整する他の制御部も含まれており、複数の制御部において、操作パラメータが重複する場合には、当該複数の制御部に対してそれぞれ定められた重み(操作パラメータ毎に相違してもよい。)を考慮して、当該操作パラメータの実際の指令値が決定される。
【0045】
画像処理部81では、熱画像撮像部75から一定時間毎に入力される熱画像に対して、平滑化処理等の画像処理が施される。ごみ高さ演算部82は、識別器821と、学習部822とを備える。ごみ高さ演算部82では、画像処理部81により画像処理が施された熱画像(以下、同様に「熱画像」という。)に基づいて、搬送方向および幅方向における火格子部21上の各位置のごみの高さ(以下、単に「ごみ高さ」という。)が求められる。これにより、搬送方向および幅方向におけるごみ高さの分布を示すごみ高さ情報が取得される。火格子部21上の各位置におけるごみ高さは、当該位置におけるごみの厚さ、または、ごみの堆積値である。
【0046】
図5は、ごみ高さ情報の一例を示す図である。本実施の形態では、各搬送レーン210の乾燥火格子23、第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242および後燃焼火格子25のそれぞれにおいて、ごみが堆積される表面の領域を、搬送方向の前部および後部に2分割し、さらに幅方向の内側および外側に2分割した領域(以下、「分割領域」という。)が設定される。
図2では、細い破線にて分割領域29を示している。ごみ高さ情報は、各分割領域29に堆積するごみの高さ(後燃焼火格子25では、灰の高さ)を示す。
図5では、2つの搬送レーン210を「左レーン」および「右レーン」と記している。熱画像からごみ高さ情報を取得する処理の詳細については後述する。以下の説明において、火格子部21上の各位置は、原則として分割領域29を単位とする位置(各分割領域29の位置)を意味する。焼却炉1では、
図2に示す分割領域29よりも小さい分割領域29が設定されてもよい。
【0047】
ごみ高さ制御部83では、各搬送レーン210に対して、搬送方向の各位置における内側および外側の分割領域29のごみ高さの平均値や最大値等が、搬送方向の当該位置におけるごみ高さとして求められる。そして、当該ごみ高さと所定の目標値との比較結果に基づいて、操作パラメータの指令値が変更される。具体的に、一の搬送レーン210のみに着目した場合に、乾燥火格子23の前部におけるごみ高さが目標値よりも低いときには、給じん装置速度の指令値が現在の値よりも増大される(または、所定の設定値よりも増大される。以下同様である。)。これにより、給じん装置42から乾燥火格子23の前部へのごみの供給量が増加し、乾燥火格子23の前部においてごみ高さが低い状態が連続することが防止される。また、乾燥火格子空気流量および乾燥火格子空気温度の指令値が現在の値よりも低減される。これにより、目標値よりも低いごみ高さとなっている乾燥火格子23の前部上のごみに対して、過度な熱エネルギーが供給されることが防止される。なお、乾燥火格子空気流量の指令値の変更は、一次空気の総流量に対する乾燥火格子空気流量の割合(配分)の変更であってもよい(以下同様)。
【0048】
乾燥火格子23の前部におけるごみ高さが目標値よりも高いときには、給じん装置速度の指令値が現在の値よりも低減される。これにより、給じん装置42から乾燥火格子23の前部へのごみの供給量が減少し、乾燥火格子23の前部においてごみ高さが高い状態が連続することが防止される。また、乾燥火格子空気流量および乾燥火格子空気温度の指令値が現在の値よりも増大される。これにより、目標値よりも高いごみ高さとなっている乾燥火格子23の前部上のごみに対して、熱エネルギーの供給が不足することが防止される。
【0049】
乾燥火格子23の後部におけるごみ高さが目標値よりも低いときには、当該位置におけるごみが次の位置である第1燃焼火格子24の前部において密になるように、乾燥火格子速度の指令値が(現在の値よりも)僅かに増大される。また、乾燥火格子空気流量および乾燥火格子空気温度の指令値が僅かに低減される。乾燥火格子23の後部におけるごみ高さが目標値よりも高いときには、各操作パラメータの指令値は、上記とは逆方向に変動する(以下同様)。第1燃焼火格子241の前部におけるごみ高さが目標値よりも低いときには、乾燥火格子速度の指令値が増大され、第1燃焼火格子空気流量および燃焼火格子空気温度の指令値が低減される。第1燃焼火格子241の後部におけるごみ高さが目標値よりも低いときには、第1燃焼火格子速度の指令値が僅かに増大され、第1燃焼火格子空気流量および燃焼火格子空気温度の指令値が僅かに低減される。
【0050】
第2燃焼火格子242の前部におけるごみ高さが目標値よりも低いときには、第1燃焼火格子速度の指令値が増大され、第2燃焼火格子空気流量の指令値が低減される。第2燃焼火格子242の後部におけるごみ高さが目標値よりも低いときには、第2燃焼火格子速度の指令値が僅かに増大され、第2燃焼火格子空気流量の指令値が僅かに低減される。後燃焼火格子25の前部におけるごみ高さが目標値よりも低いときには、後燃焼火格子速度の指令値が僅かに増大され、後燃焼火格子空気流量の指令値が低減される。後燃焼火格子25の後部におけるごみ高さが目標値よりも低いときには、後燃焼火格子速度の指令値が僅かに増大され、後燃焼火格子空気流量の指令値が僅かに低減される。
【0051】
実際には、乾燥火格子23の前部、乾燥火格子23の後部、第1燃焼火格子241の前部、第1燃焼火格子241の後部、第2燃焼火格子242の前部、第2燃焼火格子242の後部、後燃焼火格子25の前部および後燃焼火格子25の後部に対して、順に低くなる目標値が設定される。ごみ高さ制御部83による上記制御により、各搬送レーン210の搬送経路において、搬送方向の下流側に向かって漸次低くなるごみ高さの分布がおよそ維持される。また、ごみの燃焼位置等も一定に維持される。
【0052】
次に、ごみ高さ演算部82が、熱画像からごみ高さ情報を取得する処理について説明する。ごみ高さ情報を取得するには、まず、機械学習により識別器821を構築する処理が事前準備として行われる。
図6は、識別器821を構築する処理の流れを示す図である。
【0053】
識別器821の構築では、まず、熱画像撮像部75により取得される複数の熱画像が準備される(ステップS11)。
図7は、熱画像の一例を示す図である。熱画像撮像部75では、ごみの燃焼時に生成される炭酸ガスや、火炎(輝炎)の影響を受けにくい特定波長の赤外線のみを検出することにより、
図7に示すように、炭酸ガスや火炎の影響が除去された熱画像が取得される。実際には、火格子部21上におけるごみの堆積状態(ごみ高さの分布)が様々である複数の熱画像が準備される。画像処理部81では、複数の熱画像に対して平滑化処理等の画像処理が施される。当該画像処理が施された熱画像(多階調の画像)は、識別器821の学習に用いられる画像であり、以下、「教師画像」という。
【0054】
図8は、一の教師画像を模式的に示す図である。既述のように、熱画像撮像部75において、搬送方向における撮像範囲は、前傾斜壁部201の一部から第2後燃焼火格子252までであり、幅方向における撮像範囲は、一方の側壁部204から他方の側壁部204までである。したがって、教師画像は、火格子部21のおよそ全体に堆積するごみを示すとともに、火格子部21の側方に設けられる側壁部204の一部を示す。すなわち、教師画像は、ごみを示すごみ領域51と、側壁部204を示す側壁部領域52(
図8中にて平行斜線を付す。)とを含む。
図8では、火格子部21の存在領域53を破線にて囲んでいる。火格子部21の存在領域53は、ごみ領域51と重なっている。
【0055】
ごみ高さ演算部82では、
図9に示すように、各教師画像において火格子部21の存在領域53を分割した複数の分割領域59(
図9中にて細い破線にて示す。)が設定される。複数の分割領域59は、
図2を参照して説明した火格子部21上の分割領域29をそれぞれ示す。続いて、教師画像の各分割領域59に対して、ごみ高さを示すクラスが、習熟した運転員により教示される(ステップS12)。例えば、ごみが無い状態を0%とし、想定される最大高さを100%として、0〜100%の範囲を分割した8個の区間をそれぞれ示す8個のクラスが設定され、当該8個のクラスのいずれかに、各分割領域59が割り振られる。例えば、1%は1cm(センチメートル)に相当する。
【0056】
本実施の形態では、ごみ高さ演算部82により、運転員の教示作業が支援される。
図10は、教示作業を支援する処理を説明するための図である。例えば、複数の搬送レーン210の第1燃焼火格子241に対応する複数の分割領域59の集合を注目領域590(
図10中にて太線にて囲む。)として、注目領域590に対して3値化処理が施される。3値化処理では、注目領域590に含まれる各画素の値(輝度値)が第1閾値未満である場合に、当該画素に対して値1が付与される。また、当該画素の値が第1閾値以上、かつ、第1閾値よりも大きい第2閾値未満である場合に、当該画素に対して値2が付与され、当該画素の値が第2閾値以上である場合に、当該画素に対して値3が付与される。そして、ラベリング処理により、同じ値(付与された値)を有するとともに互いに隣接する画素群が教示単位領域591として抽出される。
図10では、ラベリング処理により抽出される各教示単位領域591を抽象的に示している。乾燥火格子23、第2燃焼火格子242および後燃焼火格子25のそれぞれに対応する注目領域590に対しても同様の処理が行われる。注目領域590は、
図10中の横方向に並ぶ一列の分割領域59の集合等であってもよい。
【0057】
制御システム8には、ディスプレイおよび入力部(図示省略)が設けられており、当該ディスプレイにおいて、各教示単位領域591が特定可能な状態で教師画像が表示される。運転員は、ディスプレイ上の教師画像を参照しつつ各教示単位領域591におけるごみの高さを判定し、当該高さを入力部を介して入力する。ここでは、想定される最大高さを100%として、0〜100%の範囲内で高さが入力される。各教示単位領域591に対して入力される高さ(以下、「入力高さ」という。)は、既述の8個のクラスにそれぞれ対応する高さから選択されてもよい。
【0058】
ごみ高さ演算部82では、教示単位領域591の入力高さに基づいて、教師画像の各分割領域59(に対応する火格子部21上の分割領域29)のごみ高さが算出される。各分割領域59のごみ高さは、例えば、当該分割領域59と重なる複数の教示単位領域591における入力高さの平均値または最大値である。各分割領域59のごみ高さは、当該分割領域59と重なる複数の教示単位領域591の面積に基づく重み付き平均値等であってもよい。そして、各分割領域59のごみ高さに基づいて、当該分割領域59に対して、ごみ高さの8個の区間をそれぞれ示す8個のクラスのいずれかが割り振られる。以上のように、ごみ高さ演算部82により教示作業が支援されることにより、教師画像の各分割領域59に対するクラスの決定(教示)を容易に、かつ、適切に行うことが可能となる。設定される複数のクラスの個数は、8以外であってよい。
【0059】
続いて、
図9に示すように、各教師画像において、複数の矩形領域58(
図9中にて細い破線にて示す。)が設定される。複数の矩形領域58は、火格子部21と各側壁部204との境界に対応する存在領域53のエッジ531(存在領域53の横方向の端部におけるエッジであり、
図9中にて太い破線にて示す。)から、上方に向かって伸び、当該エッジ531に沿って配列される。
図9の例では、各エッジ531に沿って配列される矩形領域58の個数は、当該エッジ531に接しつつ当該エッジ531に沿って並ぶ分割領域59の個数と同じである。ごみ高さ演算部82では、ごみ領域51のエッジを検出することにより、各矩形領域58内におけるごみ領域51と側壁部領域52との境界位置が取得される。そして、各矩形領域58の下端から当該矩形領域58内における境界位置までの高さの平均値や中央値、最大値等が、境界高さとして求められる。各矩形領域58の境界高さは、例えば画素数にて表される。
【0060】
また、各教師画像では、各分割領域59に含まれる複数の画素の値の代表値が、当該分割領域59の領域輝度として求められる。複数の画素の値の代表値は、当該複数の画素の値の分布における中央近傍を示す値であり、例えば、平均値や中央値である。そして、複数の分割領域59の領域輝度、および、複数の矩形領域58の境界高さから、各分割領域59に対する複数の特徴量が取得される(ステップS13)。
【0061】
例えば、
図9中にて符号59aを付す分割領域に注目する場合、
図10を参照して説明した場合と同様に、当該分割領域59aを含む注目領域590(
図9中にて太線にて囲む。)が設定される。そして、注目領域590に含まれる複数の分割領域59の領域輝度と分割領域59aの領域輝度との差、および、当該注目領域590と部分的に重なる複数の矩形領域58の境界高さが、分割領域59aに対する複数の特徴量として取得される。各分割領域59に教示されたクラスと、当該分割領域59に対する複数の特徴量との組合せは、教師データとして扱われる。ごみ高さ演算部82では、他の種類の特徴量が用いられてもよい。
【0062】
学習部822では、未知の熱画像において、教師画像と同様にして設定される各分割領域のごみ高さを取得する部分識別器が、複数の教師データを用いて学習を行うことにより構築される。各分割領域の部分識別器の学習では、複数の教師画像において、当該分割領域と同じ位置の分割領域59に対する複数の教師データが用いられる。ここで、識別器(部分識別器)の構築とは、識別器が含むパラメータに値を付与したり、構造を決定すること等により識別器を生成することを意味する。部分識別器において用いられるアルゴリズムとしては、様々なものが採用可能であり、本実施の形態では、ファジィクラスタリング(例えばファジィc平均法)が利用される。
【0063】
既述のように、教師データは、複数(8個)のクラスのうちの1つのクラスを示し、ファジィクラスタリングを利用する部分識別器は、未知の熱画像の分類領域に対して、各クラスに属する度合いを示す帰属度(メンバシップ値)を出力する。制御システム8では、熱画像の複数の分類領域にそれぞれ対応する複数の部分識別器の集合が識別器(ここでは、FCM識別器)821として扱われる。このようにして、ごみ高さ演算部82において学習部822により識別器821が構築される(ステップS14)。運転員(人)が熱画像から各位置のごみ高さを決定する際には、熱画像中の当該位置と周囲との色合いの差や、ごみ領域51のエッジ等に基づいて、ごみの状態を無意識に三次元的に捉えていると考えられる。
図6の処理により構築される識別器821では、熱画像中の当該位置および周囲の輝度や、ごみ領域51と側壁部領域52との境界位置に基づく複数の特徴量を用いることにより、運転員による上記決定に従った分類が可能となる。
【0064】
図11は、ごみ高さ情報を取得する処理の流れを示す図である。ごみ高さ情報の取得では、熱画像撮像部75により熱画像が取得され、画像処理部81を介してごみ高さ演算部82に入力される(ステップS21)。熱画像では、
図9と同様に、複数の分割領域59および複数の矩形領域58が設定され、上記ステップS13と同様にして、各分割領域59に対して複数の特徴量が取得される(ステップS22)。各分割領域59に対する複数の特徴量は、当該分割領域59の領域輝度と、当該分割領域59の周囲の分割領域59の領域輝度との差を含む。また、当該複数の特徴量は、当該分割領域59近傍の矩形領域58における境界高さを含む。
【0065】
そして、各分割領域59に対する複数の特徴量が、当該分割領域59に対応する部分識別器に入力されることにより、当該分割領域59に対して、ごみ高さの8個のクラスの帰属度が分類結果として出力される(ステップS23)。ごみ高さ演算部82では、8個のクラスの帰属度の総和で、各クラスの帰属度を割って得た値が当該クラスの重みとして求められる。また、各クラスが示すごみ高さの範囲の中央値、最大値または最小値等が当該クラスの代表高さとして扱われる。そして、代表高さと重みとを掛けて得た値の全てのクラスにおける総和、すなわち、全てのクラスに対する重み付き平均値が、当該分割領域59に対応する火格子部21上の分割領域29のごみ高さとして取得される(ステップS24)。これにより、搬送方向および幅方向における火格子部21上の各位置のごみ高さを示すごみ高さ情報が取得される。
【0066】
実際には、熱画像撮像部75では、一定時間毎に熱画像が取得され、ごみ高さ演算部82では、各時刻の熱画像から火格子部21上の各位置におけるごみ高さが取得される。焼却炉1では、熱画像撮像部75およびごみ高さ演算部82により、ごみ高さ情報を取得するごみ高さ情報取得部が実現される。なお、識別器821を構築する
図6の処理が、所定期間経過後に再度行われ、識別器821が更新されてもよい。また、熱画像撮像部75により取得される熱画像に基づいて、火格子部21上における着火点や燃切点の位置を制御する燃焼位置制御が別途行われてもよい。
【0067】
ここで、焼却炉1において、熱画像撮像部75、ごみ高さ演算部82、および、ごみ高さ制御部83を省略した比較例の焼却炉を想定する。比較例の焼却炉では、燃焼火格子24の風箱と燃焼空間との差圧を利用するごみ層厚取得部73により燃焼火格子24上のごみの層の厚さが取得され、当該厚さに基づいて火格子部21によるごみの搬送速度が制御される。また、供給高さ検出部74により、乾燥火格子23上に供給された直後のごみの供給高さが検出される。
【0068】
図12および
図13は、火格子部21上のごみ9を示す図であり、
図12では、幅方向に垂直な断面を示し、
図13では、搬送方向に垂直な断面を示している。また、
図12では、搬送方向の下流側に向かってごみ高さが漸次低くなる理想的なごみ高さの分布を符号E1を付す二点鎖線にて示し、
図13では、断面の位置における理想的なごみ高さを符号E2を付す二点鎖線にて示している。さらに、部分的にごみ高さが低い異常部分(後述する吹抜部分)に符号D1を付し、部分的にごみ高さが高い異常部分(後述する大塊部分)に符号D2を付している。
【0069】
図12に示すように、搬送経路におけるごみ9の高さの分布において大きな起伏が存在しても、ごみ層厚取得部73および供給高さ検出部74では、このような起伏を検出することができない。また、
図13に示すように、複数の搬送レーン210においてごみ高さが大きく相違することもあり、ごみ層厚取得部73および供給高さ検出部74では、このようなごみ高さの相違も検出することができない。したがって、比較例の焼却炉では、ごみの搬送経路におけるごみ高さの分布を安定させることができず、ごみの燃焼が不安定となる。
【0070】
これに対し、焼却炉1では、熱画像撮像部75により火格子部21上のごみの熱画像が取得され、ごみ高さ演算部82により、当該熱画像に基づいて火格子部21上のごみ高さの分布を示すごみ高さ情報が取得される。そして、ごみ高さ制御部83では、搬送方向におけるごみ高さの分布が、搬送方向の下流側に向かってごみ高さが漸次低くなる理想的な分布に近づくように、当該ごみ高さ情報に基づいて、ごみ供給部4によるごみの供給速度と、乾燥火格子23によるごみの搬送速度と、燃焼火格子24によるごみの搬送速度とが個別に制御される。これにより、火格子部21上において、部分的なごみの不足(ごみ枯れ)や過供給を抑制することができ、ごみの搬送経路におけるごみ高さの分布を安定させることができる。その結果、発生蒸気量や燃焼室2内の温度を安定させる、すなわち、ごみの燃焼を安定させることができる。
【0071】
ごみ高さ演算部82では、学習により識別器821が構築され、火格子部21上の各位置に対応する熱画像中の位置の輝度、および、熱画像中のごみ領域51と側壁部領域52との境界位置に基づいて、当該位置に対して識別器821により分類結果が取得される。当該分類結果は、火格子部21上の当該位置が、ごみ高さの複数の区間にそれぞれ属する帰属度を含み、当該位置のごみ高さが、当該複数の区間の帰属度に基づいて取得される。これにより、火格子部21上の各位置におけるごみ高さを容易に、かつ、精度よく取得することができる。
【0072】
焼却炉1では、火格子部21が、複数の搬送レーン210に分割され、各搬送レーン210において、乾燥火格子23によるごみの搬送速度と、燃焼火格子24によるごみの搬送速度とが、ごみ高さ情報に基づいて個別に制御される。これにより、各搬送レーン210において、搬送経路におけるごみ高さの分布を安定させることができ、ごみの燃焼をさらに安定させることができる。また、燃焼火格子24が、第1燃焼火格子241と、第2燃焼火格子242とを備え、第1燃焼火格子241によるごみの搬送速度と、第2燃焼火格子242によるごみの搬送速度とが個別に制御される。これにより、搬送経路におけるごみ高さの分布を、理想的な分布に近づける制御をより自在に行うことができる。
【0073】
さらに、乾燥火格子23と燃焼火格子24とに供給される空気の流量および温度が、ごみ高さ情報に基づいて個別に制御されることにより、ごみの燃焼をさらに安定させることができる。また、低空気比燃焼における排ガス中のNOxおよびCO(一酸化炭素)の発生量の低減等も実現することができる。なお、焼却炉1では、乾燥火格子23と燃焼火格子24とに供給される空気の流量または温度の一方のみが制御されてもよい。
【0074】
焼却炉1では、搬送方向の下流側に向かって火格子部21から離れた位置において直立する後壁部203が設けられ、熱画像撮像部75が、後壁部203に取り付けられる。また、熱画像撮像部75において、3.7〜3.9μmの波長の赤外線を検出することにより、火格子部21上のごみの熱画像が撮像される。これにより、炭酸ガスや火炎の影響が除去され、火格子部21上の各位置におけるごみ高さが把握可能な熱画像を容易に取得することができる。
【0075】
上述のように、焼却炉1では、搬送経路におけるごみ高さの分布を安定させることが可能となるが、
図12および
図13に示す、部分的にごみ高さが低い異常部分D1(以下、「吹抜部分D1」という。)や、部分的にごみ高さが高い異常部分D2(以下、「大塊部分D2」という。)が、皆無となる訳ではない。ここで、吹抜部分D1は、部分的にごみ層が(ほぼ)なくなっており、供給した空気がごみ燃焼に寄与せずに吹き抜ける部分である。大塊部分D2は、ごみが大きな塊となっており、空気の抜けが悪く、燃えにくい状態となっている部分である。燃焼火格子24上に吹抜部分D1が存在する場合、燃焼火格子24に供給される空気の一部が無駄となる。また、燃焼火格子24上に大塊部分D2が存在する場合、多くの未燃ごみが残ってしまう。次に、燃焼火格子24上のごみにおいて、吹抜部分D1および大塊部分D2が存在する場合における好ましい処理について述べる。
【0076】
図14は、制御システム8に含まれる他の機能構成を示す図である。
図14に示す制御システム8は、
図4Aに示す画像処理部81、ごみ高さ演算部82およびごみ高さ制御部83に加えて、異常部分検出部84を備える。異常部分検出部84では、熱画像およびごみ高さ情報に基づいて、燃焼火格子24上のごみにおける吹抜部分D1および大塊部分D2が検出される。
【0077】
具体的には、大塊部分D2を検出するための閾値であるごみ高さの上限値が予め定められており、ごみ高さ情報が示す火格子部21上の各分割領域29のごみ高さが当該上限値と比較される。ごみ高さが当該上限値以上である分割領域29が、大塊部分D2の一次候補領域として特定される。続いて、熱画像撮像部75により取得される熱画像において、一次候補領域に対応する領域の温度の平均値や中央値等が一次候補領域の温度として取得され、当該温度が所定の温度閾値以下である一次候補領域が、大塊部分D2の二次候補領域として特定される。そして、互いに連続する二次候補領域の個数が所定数以上である場合に、これらの二次候補領域の集合が、大塊部分D2(の存在領域)として検出される。上記所定数は、面積閾値として捉えられ、1であってもよい。
【0078】
吹抜部分D1も、上記と同様の処理により検出される。すなわち、ごみ高さ情報が示す火格子部21上の各分割領域29のごみ高さが、吹抜部分D1を検出するための閾値であるごみ高さの下限値と比較され、ごみ高さが当該下限値以下である分割領域29が、吹抜部分D1の一次候補領域として特定される。続いて、熱画像において取得される温度が温度閾値以下である一次候補領域が、吹抜部分D1の二次候補領域として特定される。そして、互いに連続する二次候補領域の個数が所定数以上である場合に、これらの二次候補領域の集合が、吹抜部分D1(の存在領域)として検出される。このように、異常部分検出部84では、大塊部分D2および吹抜部分D1が容易に検出可能である。なお、吹抜部分D1を検出する際に、ごみ層厚取得部73により取得される圧力が参照されてもよい。
【0079】
ごみ高さ制御部83では、燃焼火格子24上における大塊部分D2および吹抜部分D1の存在位置に応じて、制御される操作パラメータが相違する。本実施の形態では、第1燃焼火格子241の前部または第2燃焼火格子242の前部に大塊部分D2が存在する場合には、その位置における搬送速度は維持した上で、搬送方向において当該位置の上流側に隣接する火格子(乾燥火格子23または第1燃焼火格子241)の火格子速度が低減される。これにより、当該位置におけるごみの圧密が軽減され、大塊部分D2におけるごみ高さが低くなる。また、第1燃焼火格子241の後部または第2燃焼火格子242の後部に大塊部分D2が存在する場合には、その位置における搬送速度が低減され、かつ、搬送方向において当該位置の下流側に隣接する火格子(第2燃焼火格子242または後燃焼火格子25)の火格子速度が増大される。これにより、当該位置におけるごみが分断されやすくなり、大塊部分D2におけるごみ高さが低くなる。
【0080】
また、第1燃焼火格子241の前部または第2燃焼火格子242の前部に吹抜部分D1が存在する場合には、その位置における搬送速度は維持した上で、搬送方向において当該位置の上流側に隣接する火格子の火格子速度が増大される。これにより、当該位置にごみが補給され、吹抜部分D1におけるごみ高さが高くなる。また、第1燃焼火格子241の後部または第2燃焼火格子242の後部に吹抜部分D1が存在する場合には、その位置における搬送速度が増大され、かつ、搬送方向において当該位置の下流側に隣接する火格子の火格子速度が低減される。これにより、当該位置においてごみが密になり、吹抜部分D1におけるごみ高さが高くなる。
【0081】
ごみ高さ制御部83では、火格子部21上の各位置におけるごみ高さのみに基づく制御(
図4Aおよび
図4B参照)と、吹抜部分D1および大塊部分D2が存在する場合における上記制御(
図14参照)とにおいて、指令値を変更する操作パラメータが重複する場合には、両制御に対してそれぞれ定められた重み(操作パラメータ毎に相違してもよい。)を考慮して、当該操作パラメータの実際の指令値が決定される。また、吹抜部分D1および大塊部分D2が検出されてから所定時間(例えば、3分)だけ、あるいは、吹抜部分D1および大塊部分D2が解消するまでの間、
図14の制御が優先的に行われてもよい。吹抜部分D1および大塊部分D2が検出された場合には、制御システム8のディスプレイへの表示等により、吹抜部分D1および大塊部分D2の存在が運転員に報告されることが好ましい。
【0082】
以上のように、異常部分検出部84では、燃焼火格子24上において、ごみ高さが上限値以上または下限値以下であり、表面温度が所定値以下である異常部分が、ごみ高さ情報と熱画像が示す各位置の温度とに基づいて検出される。このように、ごみ高さ情報のみならず、熱画像が示す温度も参照することにより、異常部分を精度よく検出することができる。また、異常部分が検出された際に、当該異常部分におけるごみ高さが、周囲の正常な領域におけるごみ高さに近づくように(より好ましくは、当該異常部分におけるごみ高さ、および、表面温度等により把握される燃焼状態が、周囲の正常な領域におけるごみ高さおよび燃焼状態に近づくように)、当該異常部分の位置に応じて、乾燥火格子23によるごみの搬送速度、または、燃焼火格子24によるごみの搬送速度が制御される。これにより、火格子部21上における異常部分を解消(または軽減)することが実現され、ごみの燃焼をさらに安定させることが可能となる。
【0083】
上記焼却炉1では様々な変形が可能である。
【0084】
識別器821では、火格子部21上の各位置に対して、ファジィクラスタリング(ソフトクラスタリング)によりごみ高さの複数の区間(クラス)の帰属度が取得されるが、識別器821の設計によっては、ハードクラスタリングが利用されてもよい。この場合、各位置に対して、ごみ高さの1つの区間が分類結果として取得され、当該区間の代表高さが、当該位置のごみ高さとして扱われる。以上のように、ごみ高さ情報取得部では、識別器821により、火格子部21上の各位置に対して、ごみ高さの複数の区間に関する分類結果が取得される。これにより、火格子部21上の当該位置のごみ高さを分類結果に基づいて容易に取得することが可能となる。
【0085】
熱画像撮像部75では、3.7〜3.9μmの特定波長の赤外線を検出することにより、炭酸ガスや火炎の影響が除去された熱画像が取得されるが、ごみ高さ情報の取得において求められる精度によっては、他の波長の赤外線を検出することにより熱画像が取得されてもよい。この場合、例えば、当該熱画像に対して所定の火炎除去処理を施して得られる画像から、ごみ高さ情報が取得される。
【0086】
焼却炉1では、1つの搬送レーン210のみが設けられてもよく、また、
図15に示すように、3以上の搬送レーン210が設けられてもよい。この場合に、複数の熱画像撮像部75が設けられ、各熱画像撮像部75により火格子部21の一部(一部の搬送レーン210)に堆積されるごみのみが撮像されてもよい。さらに、例えば、乾燥火格子23および燃焼火格子24のみに対するごみ高さ情報を取得する場合には、熱画像撮像部75による撮像範囲から、後燃焼火格子25が除外されてもよい。以上のように、火格子部21上の少なくとも一部の領域を、ごみ高さ情報を取得する対象領域として、熱画像撮像部75では、対象領域におけるごみの熱画像が撮像される。
【0087】
熱画像撮像部75により、火格子部21上のごみ高さが把握可能な熱画像が取得されるのであるならば、熱画像撮像部75は、前傾斜壁部201、後傾斜壁部202または側壁部204に取り付けられてもよい。ただし、このような熱画像を容易に取得するには、熱画像撮像部75は後壁部203に取り付けられることが好ましい。また、複数の熱画像撮像部75により、互いに異なる方向から同じ対象領域を撮像することにより複数の熱画像が取得され、当該複数の熱画像からごみ高さ情報がより高精度に取得されてもよい。
【0088】
上記実施の形態では、搬送方向および幅方向の双方におけるごみ高さの分布を示すごみ高さ情報が取得されるが、ごみ高さ情報は、対象領域における搬送方向のみのごみ高さの分布を示すものであってもよい。この場合、ごみ高さ演算部82では、熱画像におけるごみ領域51と側壁部領域52との境界位置のみに基づいて、搬送方向におけるごみ高さの分布(ごみ高さ情報)を取得することも可能である。
【0089】
焼却炉1において、供給高さ検出部74と同様の構成である複数のレベル計を搬送方向に沿って配列して設けることにより、搬送方向のごみ高さの分布が取得されてもよい。この場合、当該複数のレベル計の集合がごみ高さ情報取得部として捉えられる。
図16では、幅方向(
図16の横方向)の複数の位置のそれぞれにおいて、乾燥火格子23、第1燃焼火格子241および第2燃焼火格子242上のごみ高さを取得する複数のレベル計74a,74b,74cを示している。乾燥火格子23のごみ高さを取得するレベル計74aは、例えば、前傾斜壁部201に取り付けられ、第1燃焼火格子241のごみ高さを取得するレベル計74b、および、第2燃焼火格子242のごみ高さを取得するレベル計74cは、側壁部204に取り付けられる。各レベル計74a,74b,74cは、鉛直方向に対して傾斜した方向に電波を発信し、ごみ9からの反射波を受信する。熱画像撮像部75に対するガス噴出部と同様に、各レベル計74a,74b,74cの周囲から燃焼室2内に向けてパージ用ガスを噴出するガス噴出部が設けられることが好ましい。搬送方向におけるごみ高さの分布は、火格子部21上において搬送方向に離れた少なくとも2つの位置(例えば、乾燥火格子23および燃焼火格子24上の位置)におけるごみ高さを示すものであればよく、ごみ高さ情報取得部は、少なくとも2つのレベル計を含む。以上のように、搬送方向のごみ高さの分布を示すごみ高さ情報を取得するごみ高さ情報取得部は、様々な態様により実現することが可能である。
【0090】
一方、複数のレベル計において、飛灰やクリンカーの付着を回避したり、高温の燃焼ガスに対する耐熱性を確保するには、大きなコストがかかるため、焼却炉1の製造コストを削減するという観点では、熱画像撮像部75およびごみ高さ演算部82を含むごみ高さ情報取得部を用いることが好ましい。
【0091】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。