(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696844
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】継手穴削正装置
(51)【国際特許分類】
B23D 75/00 20060101AFI20200511BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
B23D75/00
B23Q17/00 F
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-127132(P2016-127132)
(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公開番号】特開2018-1287(P2018-1287A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一戸 俊孝
(72)【発明者】
【氏名】筒井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 道隆
(72)【発明者】
【氏名】石井 義浩
(72)【発明者】
【氏名】安達 充史
【審査官】
中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭53−095492(JP,U)
【文献】
実開昭59−034944(JP,U)
【文献】
特開平01−264717(JP,A)
【文献】
特開平02−106237(JP,A)
【文献】
特開平05−162012(JP,A)
【文献】
特表平11−513622(JP,A)
【文献】
特開2000−343327(JP,A)
【文献】
特開2004−223644(JP,A)
【文献】
特開2004−298998(JP,A)
【文献】
特開2005−059196(JP,A)
【文献】
特開2015−094394(JP,A)
【文献】
米国特許第3073023(US,A)
【文献】
韓国公開特許第2000−0061220(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 35/00−49/06
B23D 67/00−81/00
B23Q 17/00−23/00
B24B 3/00−3/60
B24B 21/00−39/06
B24B 41/00−51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形成されているボルト挿通穴の位置、径または数が異なる複数種類のフランジ継手のボルト挿通穴を削正可能な継手穴削正装置であって、
複数種類のフランジ継手のボルト挿通穴の位置に対応して配置された複数のリーマと、
上下方向に移動可能に構成され、前記複数のリーマに対応する位置にリーマが挿通可能な挿通孔が形成されている、加工対象のフランジ継手を載置可能な昇降テーブルと、
前記昇降テーブルに設けられ載置されたフランジ継手を固定可能なクランプ手段と、
前記昇降テーブルに載置されたフランジ継手の種類を判別するためのセンサと、
前記複数のリーマを回転させるための第1モータと、
前記昇降テーブルを上下移動させるための第2モータと、
前記第1モータの回転力を前記複数のリーマに伝達するための回転伝達手段と、
前記第2モータの回転力を前記昇降テーブルの上下移動力に変換するための変換手段と、
前記第1モータおよび第2モータを制御可能な制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記センサからの信号に基づいて前記昇降テーブル上に加工対象のフランジ継手が載置されたと判定すると、前記クランプ手段を解除した状態のまま前記第1モータを削正時とは逆の方向へ回転させる機能を備えることを特徴とする継手穴削正装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1モータおよび第2モータを制御して前記昇降テーブルを下降させながら前記第1モータを削正時とは逆の方向へ回転させ、前記センサからの信号に基づいて前記昇降テーブルが所定の加工位置まで降下したと判定すると、前記クランプ手段を作動させて前記昇降テーブル上の加工対象のフランジ継手を固定し、前記第1モータを正転させて削正を実行可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の継手穴削正装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第2モータを駆動して前記昇降テーブルを所定の原点位置へ移動させる原点復帰機能と、加工対象のフランジ継手に対する削正終了後に前記第2モータを駆動して前記昇降テーブルを所定の停止位置へ移動させる機能とを備え、
前記複数のリーマは、先端が上方を向き、少なくとも1つリーマと該リーマ以外のリーマとで、先端位置が異なるように配設され、
前記停止位置は前記複数のリーマのうち最も先端が高いものの先端位置よりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載の継手穴削正装置。
【請求項4】
前記原点位置は、前記複数のリーマのうち最も先端が高いものの先端位置よりも低く、先端が高いものを除く他のリーマの先端位置よりも高くなるように設定され、
前記停止位置は、前記原点位置よりも高いことを特徴とする請求項3に記載の継手穴削正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーパリーマ等の回転式切削工具を備えワーク(被削正物)に設けられている複数の貫通穴を同時に削正可能な削正装置に関し、例えばフランジ継手やたわみ板継手におけるボルト挿通穴を削正する継手穴削正装置に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両においては、輪軸(車軸)に設けられ駆動装置(モータ)の回転力を輪軸へ伝達するためにたわみ板継手を使用しているものがある。このたわみ板継手は、2枚のたわみ板と
図7に示すような3タイプのTD(ツインディスク)継手とを備え、モータの回転を減速して輪軸へ伝達するための大小2つのギアを収納するカルダン(ギアボックス)内の小歯車(駆動歯車)とモータの回転軸との間に設けられおり、モータ軸側のTD継手とたわみ板との間、ギア軸側のTD継手とたわみ板との間がそれぞれ複数のボルトで締結されている。
【0003】
従来、鉄道車両は、定期的に分解整備が行われており、車軸のたわみ板継手に関しては、TD継手に形成されているボルト挿通穴の縁にバリのような傷が発生していることがあり、組み立て時にボルトを挿入することができないことがある。そこで、分解後に継手のボルト挿通穴に専用のピンを挿入できるかできないかを調べる検査が行われる。そして、ピンを挿入できない場合には、修理場へ搬送してリーマを有する切削加工装置(ボール盤)のテーブル上に載置して、芯出し、チャッキングを行なってから、回転するリーマで継手のボルト挿通穴を一つずつ削正する作業が実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−94394号公報
【特許文献2】特開2004−223644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のリーマを有する切削加工装置を用いたボルト挿通穴の削正は、非常に作業工程数が多く時間がかかるとともに、精度を高めるには熟練を要していた。そのため、作業時間を短縮しかつ熟練を要さずに精度の高い削正が行える装置が望まれていた。
なお、従来のリーマ加工装置においては、芯出しピンや位置合わせ用治具を用いてワークの芯出しを行なう方式が一般的であった(例えば特許文献1参照)。
一方、リーマ加工装置による加工の際に、テーパリーマ工具を回転させずに、削正しようとする穴に挿入することで芯出しを行うようにした技術が特許文献2に記載されている([0065])。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されている技術は、芯出しピンや位置合わせ用治具が不要という利点はあるが、穴を1つずつ削正するものであり、TD継手のように複数のボルト挿通穴を有するワークに対して、複数の穴を同時に削正する場合には充分な精度が保証されない。また、特許文献2の技術は、テーパリーマ工具を回転させないで芯出しを行うので、工具の径と加工対象の穴の径が正確に一致していないと、穴の中心に対して工具の中心が偏心して位置決めされてしまうため、精度の高い位置決めができないという課題がある。
なお、TD継手は広義にはフランジ継手の一種であるとともに、本発明はたわみ板を使用しない狭義のフランジ継手に対するボルト挿通穴削正装置にも適用可能であるので、本明細書においては、特に断らない限りTD継手を含めてフランジ継手と称する。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、複数のボルト挿通穴を有するフランジ継手のようなワークに対して、複数のボルト挿通穴を同時に高精度で削正することができる継手穴削正装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、操作が容易であり熟練を要することなく誰でも精度よくボルト挿通穴を削正することができる継手穴削正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明は、
形成されているボルト挿通穴の位置、径または数が異なる複数種類のフランジ継手のボルト挿通穴を削正可能な継手穴削正装置において、
複数種類のフランジ継手のボルト挿通穴の位置に対応して配置された複数のリーマと、
上下方向に移動可能に構成され、前記複数のリーマに対応する位置にリーマが挿通可能な挿通孔が形成されている、加工対象のフランジ継手を載置可能な昇降テーブルと、
前記昇降テーブルに設けられ載置されたフランジ継手を固定可能なクランプ手段と、
前記昇降テーブルに載置されたフランジ継手の種類を判別するためのセンサと、
前記複数のリーマを回転させるための第1モータと、
前記昇降テーブルを上下移動させるための第2モータと、
前記第1モータの回転力を前記複数のリーマに伝達するための回転伝達手段と、
前記第2モータの回転力を前記昇降テーブルの上下移動力に変換するための変換手段と、
前記第1モータおよび第2モータを制御可能な制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記センサからの信号に基づいて前記昇降テーブル上に加工対象のフランジ継手が載置されたと判定すると、前記クランプ手段を解除した状態のまま前記第1モータを削正時とは逆の方向へ回転させる機能を備えるようにした。
【0009】
かかる構成の継手穴削正装置によれば、複数のリーマを備えこれらのリーマを1つのモータで回転駆動することができるため、複数のボルト挿通穴を有するフランジ継手のようなワークに対して、複数のボルト挿通穴を同時に高精度で削正することができる。また、制御手段はクランプ手段による加工対象物の固定を解除した状態のままモータを削正時とは逆の方向へ回転させる機能を備えるため、リーマの逆転によって加工対象物の芯出しを行うことができ、これによってボルト挿通穴を高精度で削正することができる。
【0010】
また、望ましくは、前記制御手段は、前記第1モータおよび第2モータを制御して前記昇降テーブルを下降させながら前記第1モータを削正時とは逆の方向へ回転させ、前記センサからの信号に基づいて前記昇降テーブルが所定の加工位置まで降下したと判定すると、前記クランプ手段を作動させて前記昇降テーブル上の加工対象のフランジ継手を固定し、前記第1モータを正転させて削正を実行可能に構成する。
【0011】
かかる構成によれば、昇降テーブルを下降させながら第1モータを削正時とは逆の方向へ回転させるため、昇降テーブルの下降中に芯出しを行うことができるので、別々に行う場合よりも時間を短縮することができる。また、センサからの信号に基づいて昇降テーブルが所定の加工位置まで降下したと判定すると、クランプ手段を作動させて加工対象のフランジ継手を固定し第1モータを正転させて削正を実行するため、作業効率を向上させることができる。
【0012】
また、望ましくは、前記制御手段は、前記第2モータを駆動して前記昇降テーブルを所定の原点位置へ移動させる原点復帰機能と、加工対象のフランジ継手に対する削正終了後に前記第2モータを駆動して前記昇降テーブルを所定の停止位置へ移動させる機能とを備え、
前記複数のリーマは、先端が上方を向き、少なくとも1つリーマと該リーマ以外のリーマとで、先端位置が異なるように配設され、前記停止位置は前記複数のリーマのうち最も先端が高いものの先端位置よりも高くなるように構成する。
【0013】
かかる構成によれば、削正終了後に昇降テーブルを、複数のリーマのうち最も先端が高いものの先端位置よりも高い停止位置へ移動させて停止するため、昇降テーブル上から加工対象のフランジ継手を取り除く際に、誤ってリーマの先端を損傷させる事故が発生するのを防止することができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記原点位置は、前記複数のリーマのうち最も先端が高いものの先端位置よりも低く、先端が高いものを除く他のリーマの先端位置よりも高くなるように設定され、前記停止位置は、前記原点位置よりも高くなるように構成する。
かかる構成によれば、昇降テーブルが原点位置にある状態で加工対象のフランジ継手をテーブル上に載置する際に、リーマの先端が昇降テーブルから突出するので、この突出しているリーマの先端を目安として加工対象物をセットすることができる。そのため、わざわざ加工対象物をセットする際の目安となるマークや突起を設ける必要がなくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る継手穴削正装置によれば、複数のボルト挿通穴を有するフランジ継手のようなワークに対して、複数のボルト挿通穴を同時に高精度で削正することができる。また、操作が容易であり熟練を要することなく初心者でも精度よくボルト挿通穴を削正することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る継手穴削正装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】実施形態の継手穴削正装置のリーマ加工部の構成例を示す平面図である。
【
図3】実施形態の継手穴削正装置のリーマ加工部の構成例を示す正面図である。
【
図4】実施形態の継手穴削正装置のリーマ加工部の構成例を示す側面図である。
【
図5】実施形態の継手穴削正装置のリーマ回転駆動部の構成例を示す正面図である。
【
図6】
図5のリーマ回転駆動部を下方から見た様子を示す底面図である。
【
図7】(A),(B),(C)は、実施形態の継手穴削正装置により削正可能な鉄道車両用誘導モータのたわみ板継手を構成する3タイプのTD継手の具体例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る継手穴削正装置の実施形態について説明する。
図1は本実施形態の継手穴削正装置を前方側から見た斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の継手穴削正装置10は、リーマ加工部および駆動源を内蔵した筐体11と、該筐体11の側部(図では右側部)に配設された制御ボックス12と、筐体11の前部上端に設けられ上記制御ボックス12内の制御部に対して加工開始指令を与える一対のスタートスイッチ13A,13Bと、上記制御部に対してワーク(被削正物)としてのTD継手の固定解除指令を与えるフットスイッチ14を備える。
【0018】
筐体11の前壁は、上下に分割されたパネル保持枠11A,11Bと、該パネル保持枠11A,11Bに保持された透明パネル15A,15Bとにより構成され、パネル越しに内部のリーマ加工部の動作を視認可能に構成されている。また、筐体11の上壁には、ワークとしてのTD継手をセットしたり取り除いたりするための開口窓部11Cが設けられている。この開口窓部11Cからは、
図2に示すようなリーマ加工部の上部を視認することができるが、
図1ではリーマ加工部の図示を省略している。
上記制御ボックス12の上面には、電源スイッチや照明オン/オフ・スイッチ、ワーク指定ノブ、自動と手動の切替えを行うモード切替えスイッチ、原点復帰ボタン、状態表示ランプなどを備えた操作パネル16が設けられている。
【0019】
次に、筐体11の内部に設けられているリーマ加工部の構成について、
図2〜
図6を用いて説明する。
リーマ加工部20は、
図2に示すように、ワークを載置するための昇降可能な矩形プレート状のテーブル21と、該テーブル21上に同心円状に配設されて載置されたワークを移動不能に固定するための4組8個の電磁ホルダ22a〜22hと、ワークがテーブル21上に載置されたことおよびワークの種類を判別するための電磁センサ23A,23Bを備える。
また、本実施形態の継手穴削正装置10におけるリーマ加工部20は、加工対象のTD継手に対応して、直径が16mmである4本の小径テーパリーマ24A〜24Dと、直径が20mmである2本の大径テーパリーマ25A,25Bを備える。
【0020】
上記テーブル21には、テーブルの昇降に伴って上記4本の小径テーパリーマ24A〜24Dの先端がテーブル面から突出したり没入したりするための挿通孔21a〜21dが形成されている。また、小径テーパリーマ24A〜24Dは、その先端が筐体11の上壁よりやや下方に位置するように構成されている。一方、テーブル21の幅は、上記大径テーパリーマ25A,25Bの間隔よりも小さく設定されており、これにより、テーブルの昇降に伴って上記2本の大径テーパリーマ25A,25Bの先端がテーブルの両側方にてテーブル面より高くなったり低くなったりするように構成されている。
【0021】
特に限定されるものでないが、本実施形態では、
図2に示すように、大径テーパリーマ25A,25Bの先端は、筐体11の上壁より少し上方へ突出するように設定されている。そして、テーブル21は、大径テーパリーマ25A,25Bの先端よりも高い位置まで上昇可能に構成され、下方方向へは、小径テーパリーマ24A〜24Dの先端から加工対象のTD継手のうち最も厚いものの厚さ分以上、下まで降下可能に構成されている。その結果、テーブル21上に載置されたワークは、筐体11の上壁より高い位置から筐体11の上壁よりも低い位置まで昇降可能になる。そして、これに伴い、筐体11の上壁の開口窓部11Cの両側縁には、上下動される際にワークの両端が上壁と干渉しないようにするための切欠きC1,C2が設けられている。
【0022】
上記テーブル21の下方には、
図3に示すように、リーマ加工部20を支持する支持プレート26aと複数の脚部26bとからなる支持台26が設けられ、該支持台26の支持プレート26aの下面に上記テーブル21を昇降させるためのモータ27が固定されている。そして、テーブル21の後端と筐体11の後壁との間には、該モータ27の回転軸に連結され鉛直方向に延設された送りネジ28Aがテーブル21の後方に位置するように設けられている。
また、テーブル21の後端には、
図4に示すように、下方へ向かって延設する支持プレート21Aが設けられ、この支持プレート21Aの背面に上記送りネジ28Aと螺合する雌ネジ部を有する変換ブロック28Bが固着されている。このように、本実施形態においては、送りネジ方式でテーブル21が昇降されるように構成されている。
【0023】
図5に示すように、大径テーパリーマ25A,25Bおよび小径テーパリーマ24A〜24Dの下端には、それぞれ回転を伝達するための回転伝達軸29a〜29fが連結され、これらの回転伝達軸29a〜29fの下端に、それぞれ無端平ベルトを巻回可能なプーリ32a〜32fが固着されている。なお、回転伝達軸29a〜29fのうち大径テーパリーマ25A,25Bに連結された回転伝達軸29a,29bには、上下に2個ずつプーリが固着されている。
【0024】
さらに、リーマ加工部20側方のやや後方位置には、大径テーパリーマ25A,25Bおよび小径テーパリーマ24A〜24Dを回転駆動させるためのモータ30が配設され、このモータ30の回転出力軸30aにプーリ31が固着されている。そして、このモータ30の回転軸のプーリ31と上記大径テーパリーマ25A,25Bの回転伝達軸29a,29bの下端のプーリ32a,32bには、
図5および
図6に示すように、無端平ベルト33Aが巻回されている。
【0025】
また、大径テーパリーマ25Aの回転伝達軸29aの下端の他方のプーリ32g(
図5)と、小径テーパリーマ24A,24Bの下端のプーリ32c,32d(
図6)と、補助プーリ32jとの間には、無端平ベルト33Bが巻回されている。
同様に、大径テーパリーマ25Bの回転伝達軸29bの下端の他方のプーリ32h(
図5)と、小径テーパリーマ24C,24Dの下端のプーリ32e,32f(
図6)と、補助プーリ32kとの間には、無端平ベルト33Cが巻回されている。これによって、モータ30が回転駆動されると、大径テーパリーマ25A,25Bおよび小径テーパリーマ24A〜24Dが、同時に同一方向へ回転されるようになっている。
【0026】
なお、符号32iが付されているのは、無端平ベルト33Aに張力を与えるテンションプーリである。また、符号32m,32nが付されているのは、無端平ベルト33B,33Cに張力を与えるテンションプーリである。
次に、本実施形態の継手穴削正装置10を用いたTD継手のボルト挿通穴の削正手順について説明する。
【0027】
先ず、制御ボックス12上面の操作パネル16の電源スイッチをオンにする。続いて、照明オン/オフ・スイッチをオンして照明(図示省略)を点灯させる。次に、ワーク指定ノブや切替えスイッチを操作して、削正対象のワークを指定するとともに、自動か手動かの切替えを行う。その後、原点復帰ボタンを押すと、テーブル21が予め設定されている原点位置に移動する。移動中は、状態表示ランプが点滅し、原点位置まで移動すると停止して、状態表示ランプが点灯に代わる。
【0028】
テーブルの原点位置は、小径テーパリーマ24C,24Dの先端がテーブル21の上面から突出せず、大径テーパリーマ25A,25Bの先端がテーブル21の上面から少しだけ突出する位置である。これにより、ワークを載置する際に、小径テーパリーマ24C,24Dの先端にワークが当たって損傷を与える事故が発生するのを回避することができる。
テーブル21が原点位置に復帰したら、ワーク指定ノブで指定したワークを、ワークのボルト挿通穴のうち外側の2つを大径テーパリーマ25A,25Bの先端に合わせるようにしてテーブル21上に載置する。このとき、誤ってワーク指定ノブで指定したワークと異なるタイプのワークをテーブル21上に載置すると、電磁センサ23A,23Bがそれを検知してアラームが鳴る。
【0029】
正しいワークをテーブル21上に載置すると、一対のスタートスイッチ13A,13Bに内蔵されているランプが点滅するので、点滅を確認してから一対のスタートスイッチ13A,13Bを同時に操作してオンさせる。すると、大径テーパリーマ25A,25Bおよび小径テーパリーマ24A〜24Dが逆転しながらテーブル21が下降する。このとき、電磁ホルダ22a〜22hは励磁されていない。すると、6本のリーマがワークに設けられている6個のボルト挿通穴に侵入して、芯出しが行われる。
なお、ワーク指定ノブで指定したワークのタイプに応じて、テーブルの下降位置が異なるように制御することができる。また、このとき図示しないクラッチ機構により不要なリーマは回転させないように制御することができる。これにより、例えば
図7(C)に示すようなボル挿通穴が2個のTD継手が選択された時は、大径テーパリーマ25A,25Bのみ回転させ、小径テーパリーマ24A〜24Dを回転させないようにすることができる。
【0030】
テーブル21が所定位置まで降下すると、電磁ホルダ22a〜22hが励磁されてワークをテーブル21上に固定する。そして、大径テーパリーマ25A,25Bおよび小径テーパリーマ24A〜24Dが所定時間正転され、リーマの切歯によってワークのボルト挿通穴が削正される。削正が終了するとテーブル21が上昇を開始する。このとき、テーブル21は上記原点位置よりも高い位置まで上昇して停止する。これにより、小径テーパリーマ24A〜24Dのみならず、大径テーパリーマ25A,25Bの先端もワークのボルト挿通穴から抜ける。また、テーブル21が停止したら、フットスイッチ14を踏み込んでオンさせると、電磁ホルダ22a〜22hが消磁されてワークの固定状態が解除される。その結果、テーブル21上からワークを安全に取り除くことができるようになる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の継手穴削正装置10は自動による削正モードを備えているため、容易かつ短時間に継手穴の削正を行うことができる。また、リーマを逆転させて芯出しを行うため、精度の高い位置決めが可能となり、初心者でも仕上がり精度の良好な削正を実施することができる。
なお、操作パネルには、テーブルの下降を指示するボタンや、テーブルの上昇を指示するボタン、モータの正転を指示するボタン、逆転を指示するボタン、電磁ホルダ22a〜22hの励磁、消磁を指示するボタン等が設けられており、モード切替えスイッチで手動を選択した時は、これらのボタンを順次操作することでワークの削正を実施することができる。
【0032】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、モータ30の回転力を無端平ベルトとプーリでテーパリーマに伝達するようにしているが、チェーンとスプロケットを用いて回転力を伝達するように構成しても良い。また、前記実施形態では、ワークを固定する手段に電磁ホルダを使用しているが、機械的に固定するクランパを用いて固定するように構成しても良い。フランジ継手の種類を判別するための手段も、磁気センサに限定されず光センサ等であっても良い。
【0033】
さらに、前記実施形態では、ワークセット後にテーブルを下降させながらテーパリーマを逆転させて芯出しを行なっているが、テーブルを所定位置まで下降させた後にテーパリーマを逆転させて芯出しを行なうようにしても良い。
また、前記実施形態では、テーパリーマの上下位置を固定しワークを載置するテーブルを昇降させる機構を採用した場合を説明したが、テーブルの上下位置を固定してテーパリーマの方を昇降させるように構成しても良い。
【0034】
さらに、前記実施形態では、使用するテーパリーマの数を6本としたが、加工対象の継手に設けられている穴の数や径の種類に応じて、5本以下あるいは7本以上としても良い。使用するリーマもテーパリーマに限定されず、他の種類のリーマを使用することができる。
また、前記実施形態では、本発明を鉄道車両等に使用されるたわみ継手を構成するTD継手のボルト挿通穴の削正に用いる継手穴削正装置に適用したものについて説明したが、本発明は一般的なフランジ継手のボルト挿通穴の削正に用いる継手穴削正装置に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
10 継手穴削正装置
11 筐体
11A,11B パネル保持枠
12 制御ボックス
13A,13B スタートスイッチ
14 フットスイッチ
15A,15B 透明パネル
20 リーマ加工部
22a〜22h 電磁ホルダ
23A,23B 電磁センサ
24A〜24D 小径テーパリーマ
25A,25B 大径テーパリーマ
27 テーブル昇降用モータ(第2モータ)
30 リーマ回転駆動用モータ(第1モータ)
31,32 プーリ
33 無端平ベルト