特許第6696893号(P6696893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696893
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】カムシャフト支持部材
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/24 20060101AFI20200511BHJP
   F01L 1/04 20060101ALI20200511BHJP
   F01L 1/053 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   F02F1/24 R
   F01L1/04 D
   F01L1/053
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-249390(P2016-249390)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-105134(P2018-105134A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 淳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘隆
(72)【発明者】
【氏名】柘植 仁
(72)【発明者】
【氏名】柴田 学
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将之
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/069446(WO,A1)
【文献】 特開2010−209765(JP,A)
【文献】 実開平07−010459(JP,U)
【文献】 特開2016−083689(JP,A)
【文献】 特開昭62−013711(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0200447(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2005−0114418(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/24
F01L 1/04
F01L 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムシャフトを支持する軸受面を有する軸受部を備え、前記軸受部にボルトボス部が設けられ、そのボルトボス部に有底のねじ孔が設けられたカムシャフト支持部材であって、
前記ボルトボス部のねじ孔と前記軸受部の軸受面との間のオイル流れを遮断する遮断部が設けられており、
前記遮断部は、前記ボルトボス部のねじ孔の底部分と前記軸受部との間に位置することで、これらボルトボス部のねじ孔の底部分と軸受部とを離間させる空間部として構成されていることを特徴するカムシャフト支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のカムシャフトを支持するカムシャフト支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のカムシャフトを支持するカムシャフト支持部材としては、カムキャップがある。図3に示すように、カムキャップ301は、半円筒状の軸受面321が形成されカムシャフトを支持する半割り形状部(軸受部)302、およびその半割り形状部302を挟んだ両側にそれぞれ設けられた締結ボス部303などを備えている。このようなカムキャップにあっては、半割り形状部にボルトボス部を設けた構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−242617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カムキャップは、例えばアルミニウムダイキャスト品であり、図3図4に示すように、半割り形状部(軸受部)302にボルトボス部304を設けると、そのボルトボス部304の中央部付近に微小な鋳巣が生じる場合がある。そして、ボルトボス部304のねじ孔341と半割り形状部302の軸受面321との間に鋳巣S(図4に模式的に示す)が存在していると、半割り形状部302の軸受面321からボルトボス部304のねじ孔341へのオイルリーク経路(例えば図4において矢印で示す経路)が形成され、半割り形状部302の軸受面321に流れる高圧のオイルが、ボルトボス部304のねじ孔341にリークして外部に漏れだすおそれがある。
【0005】
なお、円筒状の軸受部を有するカムシャフト支持部材においても上記と同様な問題が発生するおそれがある。
【0006】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、カムシャフトを支持する半割り形状部などの軸受部を備え、その軸受部にボルトボス部が設けられたカムシャフト支持部材において、軸受部の軸受面に流れるオイルが外部に漏れだすことを抑制することが可能な構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、カムシャフトを支持する軸受面を有する軸受部を備え、前記軸受部にボルトボス部が設けられ、そのボルトボス部に有底のねじ孔が設けられたカムシャフト支持部材において、前記ボルトボス部のねじ孔と前記軸受部の軸受面との間のオイル流れを遮断する遮断部が設けられており、前記遮断部は、前記ボルトボス部のねじ孔の底部分と前記軸受部との間に位置することで、これらボルトボス部のねじ孔の底部分と軸受部とを離間させる空間部として構成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明のカムシャフト支持部材によれば、ボルトボス部のねじ孔と軸受部の軸受面との間に空間部として構成された遮断部を設けているので、軸受部の軸受面からねじ孔へのオイルリーク経路が遮断される。これにより、軸受部の軸受面に流れるオイルが、ボルトボス部のねじ孔にリークして外部に漏れだすことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カムシャフトを支持する軸受部を備え、その軸受部にボルトボス部が設けられたカムシャフト支持部材において、軸受部の軸受面に流れるオイルが外部に漏れだすことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のカムキャップの実施形態を示す斜視図である。
図2図1のカムキャップを組付状態で示す縦断面図である。
図3】従来のカムキャップの一例を示す斜視図である。
図4図3のカムキャップを組付状態で示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
本実施形態では、カムシャフト支持部材の一例であるカムキャップに本発明を適用した例について説明する。
【0013】
カムキャップの実施形態について図1および図2を参照して説明する。
【0014】
カムキャップ1は、アルミニウムダイキャスト品であって、カムシャフト102を支持する半割り形状部(半割り軸受部)2を備え、この半割り形状部2を挟んだ両側にそれぞれ締結ボス部3,3が設けられている。
【0015】
半割り形状部2には半円筒状の軸受面21が形成されている。半割り形状部2の真上にボルトボス部4が設けられている。ボルトボス部4には、ねじ孔41が設けられている。このねじ孔41にはヘッドカバー103を締結する締結ボルト104がねじ込まれる。ボルトボス部4のねじ孔41と半割り形状部2の軸受面21との間の構造については後述する。なお、半割り形状部が、本発明の「カムシャフトを支持する軸受面を有する軸受部」の一例である。
【0016】
締結ボス部3,3にはそれぞれボルト挿通孔31が設けられている。また、2つの締結ボス部3,3のうちの一方の締結ボス部3とボルトボス部4との間には油路5が設けられている。
【0017】
以上の構造のカムキャップ1はカムハウジング101に組み付けられる。具体的には、カムハウジング101に形成された半円筒状の軸受面111にカムシャフト102を配置した状態で、カムシャフト102にカムキャップ1の半割り形状部2を被せる。この状態で、カムキャップ1の各ボルト挿通孔31にそれぞれ締結ボルト(図示せず)を挿通し、その各締結ボルトをそれぞれカムハウジング101のねじ孔(図示せず)にねじ込むことによって、カムキャップ1がカムハウジング101に組み付けられる。
【0018】
このような組付状態で、カムキャップ1の半割り形状部2の半円筒状の軸受面21とカムハウジング101の半円筒状の軸受面111とによってカムシャフト102を支持する円筒状の軸受が構成される。
【0019】
カムシャフト102の外周には円環溝状の高圧油路121が形成されている。この高圧油路121は、カムキャップ1の軸受面21とカムハウジング101の軸受面111とにそれぞれ開口しており、それら軸受面21,111に高圧のオイルが流れるようになっている。
【0020】
そして、以上のようにして組み付けられたカムキャップ1にヘッドカバー(例えば、樹脂製)103が締結される。具体的には、カムキャップ1のボルトボス部4のねじ孔41に、ヘッドカバー103に設けられた締結ボス部130のボルト挿通孔131を位置合せした状態で、そのボルト挿通孔131に締結ボルト104を挿通し、この締結ボルト104をカムキャップ1のボルトボス部4のねじ孔41にねじ込むことによって、ヘッドカバー103がカムキャップ1のボルトボス部4に締結される。
【0021】
−特徴部分−
次に、本実施形態のカムキャップ1の特徴部分について図1および図2を参照して説明する。
【0022】
本実施形態のカムキャップ1では、ボルトボス部4のねじ孔41(より詳細には、ねじ孔41のねじ下孔41a)と半割り形状部2の軸受面21と間のオイル流れを遮断する遮断部6を設けた点に特徴がある。
【0023】
この遮断部6は、ボルトボス部4の一側部(ねじ孔41のねじ下孔41aの下方となる位置)から、ねじ孔41の中心と直交する方向(横方向)に鋳抜きされた空間であって、ボルトボス部4の一側部から、ねじ孔41(ねじ下孔41a)と半割り形状部2の軸受面21との間の領域よりも奥側に延びる空間部である。
【0024】
そして、このような遮断部6(空間部)を設けることにより、ボルトボス部4のねじ孔41と半割り形状部2との間が離間した状態となり、半割り形状部2の軸受面21からボルトボス部4のねじ孔41へのオイルリーク経路が遮断される。これにより半割り形状部2の軸受面21に流れるオイルが、ボルトボス部4のねじ孔41にリークして外部に漏れだすことを抑制することができる。
【0025】
−他の実施形態−
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0026】
例えば、以上の実施形態では、カムキャップ1のボルトボス部4にヘッドカバー103を締結する場合について説明したが、本発明はこれに限られることなく、カムキャップ1のボルトボス部4に他の部材を締結する場合にも適用可能である。
【0027】
本発明は、吸気カムシャフトを支持する半割り形状部を備える吸気カムシャフト用のカムキャップ、または、排気カムシャフトを支持する半割り形状部を備える排気カムシャフト用のカムキャップのいずれにも適用できる。また、本発明は、吸気カムシャフトを支持する半割り形状部と、排気カムシャフトを支持する半割り形状部との2つの半割り形状部が一体に形成されたカムキャップにも適用可能である。
【0028】
以上の実施形態では、カムシャフト支持部材の一例であるカムキャップに本発明を適用した例について説明したが、本発明はこれに限られることなく、カムキャップとカムハウジングとが一体に形成され、円筒状の軸受部を有するカムシャフト支持部材にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、内燃機関のカムシャフトを支持するカムシャフト保持部材に利用可能であり、さらに詳しくは、カムシャフトを保持する軸受部にボルトボス部が設けられたカムシャフト保持部材に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 カムキャップ(カムシャフト支持部材)
2 半割り形状部(軸受部)
21 軸受面
3 締結ボス部
4 ボルトボス部
41 ねじ孔
41a ねじ下孔
6 遮断部
101 カムハウジング
111 軸受面
102 カムシャフト
121 高圧油路
103 ヘッドカバー
104 締結ボルト
図1
図2
図3
図4