特許第6696904号(P6696904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イントラ−セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許6696904-製剤および医薬組成物 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696904
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】製剤および医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20200511BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 5/24 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   A61K31/519
   A61K31/53
   A61P43/00 121
   A61P43/00 111
   A61P25/16
   A61P25/14
   A61P25/28
   A61P25/24
   A61P25/22
   A61P25/30
   A61P25/18
   A61P9/00
   A61P9/12
   A61P11/06
   A61P11/00
   A61P5/24
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-545363(P2016-545363)
(86)(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公表番号】特表2017-502059(P2017-502059A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】US2015010697
(87)【国際公開番号】WO2015106032
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2018年1月5日
(31)【優先権主張番号】61/925,015
(32)【優先日】2014年1月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ−セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA−CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ・ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・オブライエン
(72)【発明者】
【氏名】グレッチェン・スナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ポン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・ピー・ウェノグル
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0065165(US,A1)
【文献】 特表2008−545783(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/192556(WO,A1)
【文献】 特表2004−525098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)遊離形態または塩形態のPDE1阻害剤および(b)遊離形態または塩形態のPDE2阻害剤を含む製剤であって、PDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−ピリジン−2−イル)−ベンジル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オンでり、PDE2阻害剤が、遊離形態または塩形態の2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−{(1R)−1−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−フェニルブチル}−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン(BAY60−7550)である、製剤。
【請求項2】
遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤を医薬上許容される希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物であって、PDE1阻害剤が、遊離形態または医薬上許容される塩形態の(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−ピリジン−2−イル)−ベンジル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オンでり、PDE2阻害剤が、遊離形態または医薬上許容される塩形態の2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−{(1R)−1−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−フェニルブチル}−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン(BAY60−7550)である、医薬組成物。
【請求項3】
該組成物が、遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤が単一投与剤形である多剤混合型医薬組成物である、請求項記載の医薬組成物。
【請求項4】
該組成物が、遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤が別々の投与剤形である多剤遊離型医薬組成物である、請求項記載の医薬組成物。
【請求項5】
遊離形態または眼科的に許容される塩形態のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤が、眼科的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは付随している、請求項いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
cAMPおよび/またはcGMPシグナル伝達疾患、障害または状態を治療するための医薬組成物であって、該疾患、障害または状態が、パーキンソン病、下肢静止不能振戦、ジスキネジア、ハンチントン病、アルツハイマー病、薬剤性運動障害、うつ状態、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、双極型疾患、不安、睡眠障害、ナルコレプシー、認知障害(例えば、学習、記憶、認識記憶、社会的相互作用および作業記憶)、認知症、トゥレット症候群、自閉症、脆弱X症候群、覚醒剤離脱、薬物依存、脳血管疾患、脳卒中、うっ血性心疾患、高血圧、肺高血圧症、肺動脈性高血圧症、性機能障害、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、自己免疫および炎症性疾患;女性性機能不全、運動性無月経、無排卵症、閉経、閉経期症状、月経前症候群、早期分娩、不妊症、不規則な月経周期、異常子宮出血、骨粗鬆症、多発性硬化症、前立腺肥大、前立腺癌、甲状腺機能低下症、エストロゲン誘導性子宮内膜増殖症またはエストロゲン誘導性子宮内膜癌、緑内障または眼内圧亢進、精神病(例えば、幻覚、偏執性妄想もしくは奇異な妄想のような精神病症状、または支離滅裂な会話および思考、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調様障害、精神障害、妄想性障害、および急性躁病エピソードおよび双極性障害におけるような躁病)、外傷性脳損傷のいずれかである、請求項いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
該疾患、障害または状態が、パーキンソン病、統合失調症、ナルコレプシー、緑内障、女性性機能不全、認知障害(例えば、学習、記憶、認識記憶、社会的相互作用および作業記憶)、不安およびうつ状態からなる群から選択される、請求項記載の医薬組成物。
【請求項8】
cAMPおよび/またはcGMPシグナル伝達疾患、障害または状態を治療するための製剤であって、該疾患、障害または状態が、パーキンソン病、下肢静止不能振戦、ジスキネジア、ハンチントン病、アルツハイマー病、薬剤性運動障害、うつ状態、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、双極型疾患、不安、睡眠障害、ナルコレプシー、認知障害(例えば、学習、記憶、認識記憶、社会的相互作用および作業記憶)、認知症、トゥレット症候群、自閉症、脆弱X症候群、覚醒剤離脱、薬物依存、脳血管疾患、脳卒中、うっ血性心疾患、高血圧、肺高血圧症、肺動脈性高血圧症、性機能障害、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、自己免疫および炎症性疾患;女性性機能不全、運動性無月経、無排卵症、閉経、閉経期症状、月経前症候群、早期分娩、不妊症、不規則な月経周期、異常子宮出血、骨粗鬆症、多発性硬化症、前立腺肥大、前立腺癌、甲状腺機能低下症、エストロゲン誘導性子宮内膜増殖症またはエストロゲン誘導性子宮内膜癌、緑内障または眼内圧亢進、精神病(例えば、幻覚、偏執性妄想もしくは奇異な妄想のような精神病症状、または支離滅裂な会話および思考、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調様障害、精神障害、妄想性障害、および急性躁病エピソードおよび双極性障害におけるような躁病)、外傷性脳損傷のいずれかであり、遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤が、同時に(simultaneously)または連続してまたは同時期に(contemporaneously)投与される、請求項記載の製剤。
【請求項9】
該疾患、障害または状態が、パーキンソン病、統合失調症、ナルコレプシー、緑内障、女性性機能不全、認知障害(例えば、学習、記憶、認識記憶、社会的相互作用および作業記憶)、不安およびうつ状態からなる群から選択される、請求項記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2014年1月8日に出願された米国仮出願第61/925,015号に基づく優先権を主張する(各々、出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。
【0002】
(技術分野)
本発明は、遊離形態または塩形態のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤で含む製剤(product)、遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤を含む医薬組成物、ならびにcAMPおよび/またはcGMP関連障害の治療用医薬としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ホスホジエステラーゼ(PDE)の11種類のファミリーが同定されているが、唯一、ファミリー1のPDFであるCa2+−カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ(CaM−PDE)は、カルシウムシグナル伝達経路と環状ヌクレオチド(例えば、cAMPおよびcGMP)シグナル伝達経路の両方を媒介することが示されている。公知の3つのCaM−PDE遺伝子、PDE1A、PDE1BおよびPDE1Cは、すべて、中枢神経系組織において発現する。PDE1Aは、脳全体にわたって発現し、海馬および小脳のCA1〜CA3層においてより高く発現し、線条体においては低いレベルで発現する。PDE1Aは、また、肺および心臓においても発現する。PDE1Bは、主に、線条体、歯状回、嗅索および小脳において発現し、その発現は、高レベルのドーパミン作動性神経支配を有する脳領域と相関する。PDE1Bは主に中枢神経系において発現するが、心臓において検出され得る。PDE1Cは、主に、嗅上皮、小脳顆粒細胞および線条体において発現する。PDE1Cは、また、心臓および血管平滑筋においても発現する。
【0004】
環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼは、環状ヌクレオチドcAMPおよびcGMPをそれぞれの不活性5'一リン酸(5'AMPおよび5'GMP)に加水分解することによって細胞内cAMPおよびcGMPシグナル伝達を減少させる。CaM−PDEは、特に基底核または線条体として知られている脳の領域内で、脳細胞においてシグナル伝達を媒介する決定的役割を果たす。例えば、NMDA型グルタミン酸受容体活性化および/またはドーパミンD2受容体活性化は、細胞内カルシウム濃度を増加させ、カルモジュリン依存性キナーゼII(CaMKII)およびカルシニューリンのようなエフェクターの活性化を導き、CaM−PDEの活性化を導き、その結果、cAMPおよびcGMPを減少させる。他方では、ドーパミンD1受容体活性化は、ヌクレオチドシクラーゼの活性化を導き、その結果、cAMPおよびcGMPを増加させる。これら環状ヌクレオチドは、次に、DARPP−32(ドーパミンおよびcAMP調節性リン酸化タンパク質)およびcAMP応答配列結合タンパク質(CREB)のようなシグナル伝達経路要素の下流でリン酸化するプロテインキナーゼA(PKA;cAMP依存性プロテインキナーゼ)および/またはプロテインキナーゼG(PKG;cGMP依存性プロテインキナーゼ)を活性化する。次に、リン酸化DARPP−32は、プロテインホスファターゼ−1(PP−1)の活性を阻害し、それにより、プロゲステロン受容体(PR)のような基質タンパク質のリン酸化の状態が増大し、生理的反応の誘発を引き起こす。齧歯類での研究は、ドーパミンD1受容体またはプロゲステロン受容体の活性化を介するcAMPおよびcGMP合成の誘発が、いくつかの齧歯類において交尾に対する受容性に関連するロードシス反応を包含する様々な生理的反応に関連するプロゲステロンシグナル伝達を亢進することを示唆している。非特許文献1を参照(この内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。
【0005】
したがって、CaM−PDEは、基底核(線条体)におけるドーパミン調節性細胞内シグナル伝達経路および他の細胞内シグナル伝達経路に影響を及ぼすことができ、これら他の細胞内シグナル伝達経路としては、一酸化窒素、ノルアドレナリン作動性、ニューロテンシン、CCK、VIP、セロトニン、グルタメート(例えば、NMDA受容体、AMPA受容体)、GABA、アセチルコリン、アデノシン(例えば、A2A受容体)、カンナビノイド受容体、ナトリウム利尿ペプチド(例えば、ANP、BNP、CNP)、DARPP−32、およびエンドルフィン細胞内シグナル伝達経路が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0006】
ホスホジエステラーゼ(PDE)活性、特に、ホスホジエステラーゼ1(PDE1)活性は、脳組織内で自発運動活性および学習および記憶の調節因子として機能する。PDE1は、好ましくは神経系内で、細胞内シグナル伝達経路の調節のための治療標的であり、該細胞内シグナル伝達経路としては、ドーパミンD1受容体、ドーパミンD2受容体、一酸化窒素、ノルアドレナリン作動性、ニューロテンシン、CCK、VIP、セロトニン、グルタメート(例えば、NMDA受容体、AMPA受容体)、GABA、アセチルコリン、アデノシン(例えば、A2A受容体)、カンナビノイド受容体、ナトリウム利尿ペプチド(例えば、ANP、BNP、CNP)、エンドルフィン細胞内シグナル伝達経路およびプロゲステロンシグナル伝達経路が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、PDE1Bの阻害は、cGMPおよびcAMPが分解しないように保護することによってドーパミンD1アゴニストの効果を増強するように作用し、同様に、PDE1活性を阻害することによってドーパミンD2受容体シグナル伝達経路を阻害する。細胞内カルシウム濃度の慢性的な上昇は、多くの障害、特にアルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病のような神経変性疾患、ならびに脳卒中および心筋梗塞を引き起こす循環器系の障害における細胞死に関連づけられる。したがって、PDE1阻害剤は、パーキンソン病、下肢静止不能症候群、うつ状態、ナルコレプシーおよび認知障害のような、ドーパミンD1受容体シグナル伝達活性の低下によって特徴付けられる疾患において潜在的に有用である。PDE1阻害剤は、また、女性性機能不全のようなプロゲステロンシグナル伝達の亢進によって寛解され得る疾患においても有用である。
【0007】
PDE2は、また、cAMPおよびcGMPの両方を高いVmaxおよび低いKmをもって加水分解する。該酵素は、そのGAFドメインのうちの1つに結合するcGMPによってアロステリックに刺激される。唯一の遺伝子ファミリーであるPDE2Aは、PDE2の3つのスプライスバリアント、すなわちPDE2A1、PDE2A2およびPDE2A3を有するPDE2をコードする。PDE2A1は、サイトゾル内に位置しているが、一方、PDE2A2およびPDE2A3は膜結合型である。PDE2は、神経発達、学習および記憶における治療可能性を有することが示されている。非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;および非特許文献7。PDE2Aの阻害は、認識記憶、社会的相互作用および作業記憶(統合失調症においてすべてが欠いている)の改善を反映する認識能力の複数の前臨床モデルすべてで認知機能の亢進を示している。非特許文献8。PDE2A阻害は、また、加齢およびアルツハイマー病において発症する認知欠損を改善する。非特許文献9;非特許文献10。PDE2A阻害は、また、不安およびうつ状態の前臨床モデルにおいて有効性を示すことが立証されている。非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Mani, et al., Science (2000) 287: 1053
【非特許文献2】Van Staveren et al., Brain Res. (2001) 888:275
【非特許文献3】O'Donnell et al., J. Pharm. Exp. Ther. (2002) 302:249
【非特許文献4】Velardez et al., Eur. J. Endo. (2000) 143:279
【非特許文献5】Gallo-Payet et al., Endo.(1999) 140:3594
【非特許文献6】Allardt-Lamberg et al., Biochem. Pharm. (2000) 59:1133
【非特許文献7】Wakabayashi et al., Miner. Res. (2002) 17:249
【非特許文献8】Boess et al., Neuropharmacology (2004) 47(7):1081-92
【非特許文献9】Domek-Lopacinska et al., Brain Res. (2008) 1216:68-77
【非特許文献10】Brandon et al., Annual Reports in Medicinal Chemistry (2007) 42:4-5
【非特許文献11】Masood et al., JPET (2009) 331(2):690-699
【非特許文献12】Masood et la., JPET (2008) 326(2):369-379
【非特許文献13】Reierson et al., Neurosci. Lett. (2009) 466(3):149-53
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PDE1およびPDE2は、有用な治療標的であることが示されている。かくして、遊離形態または塩形態の、PDE1活性を選択的に阻害する化合物およびPDE2活性を選択的に阻害する化合物を含む製剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一酸化窒素は、可溶性グアニリルシクラーゼ(GC)を刺激して、cGMPのレベルを増加させる。環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼは、環状ヌクレオチドcAMPおよびcGMPをそれらの個々の不活性5'−モノホスフェート(5'AMPおよび5'GMP)に加水分解することによってcAMPおよびcGMP細胞内シグナル伝達を減少させる。
本発明者らは、PDE1およびPDE2の両方の阻害が行われた場合、この組合せは、脳における一酸化窒素シグナル伝達に対して相加効果を超える効果をもたらし、これにより、脳内の一酸化窒素刺激cGMP濃度を増加させることを見出した。したがって、第一の態様において、本発明は、遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤を含む製剤を提供する。例えば、(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤および(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤を含む製剤が提供される。
【0011】
第二の態様において、本発明は、遊離形態または医薬上許容される塩形態の本明細書に記載のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤を医薬上許容される希釈剤または担体と混合して含む医薬組成物(医薬組成物I)を提供する。PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、多剤混合型医薬組成物(fixed pharmaceutical composition)(ここで、PDE1およびPDE2治療剤は単一投与剤形である)または多剤遊離型医薬組成物(free pharmaceutical composition)(PDE1および治療剤は別々の投与剤形である)中に存在し得る。例えば、
(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、および
(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤
を医薬上許容される担体または希釈剤と混合して含む医薬組成物が提供される。該第二の態様の特定の実施態様において、本発明は、さらに、PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤を含む局所眼用医薬組成物;例えば、遊離形態または眼科的に許容される塩形態の本発明のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤を、眼科的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは付随して(in combination or association with)含む、点眼液、懸濁剤、クリーム剤または軟膏剤を提供する。
【0012】
PDE1およびPDE2阻害剤は、当該技術分野で公知である。本発明の特定の実施態様において、本発明のPDE1阻害剤としては、国際公開第2006/133261号、国際公開第2007/143705号、国際公開第2008/063505号、国際公開第2008/070095号、国際公開第2009/075784号、国際公開第2009/073210号、国際公開第2010/065153号、国際公開第2010/065148号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065149号、国際公開第2010/065147号、国際公開第2010/065152号、国際公開第2010/098839号、国際公開第2010/132127号、国際公開第2011/153129号、国際公開第2011/153135号、国際公開第2011/153136号、国際公開第2011/153138号、国際公開第2012/171016号に記載されているものが挙げられる(各々の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。別の特定の実施態様において、PDE1阻害剤は、遊離形態または塩形態の(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−ピリジン−2−イル)−ベンジル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オンである。別の特定の実施態様において、PDE1阻害剤は、遊離形態または塩形態の(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−(6−フルオロピリジン−2−イル)フェニル)メチル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オンである。
【0013】
別の特定の実施態様において、本発明のPDE2阻害剤としては、国際公開第2010/054260号、国際公開第2010/054253号、国際公開第2012/104293号、国際公開第2013/000924号、国際公開第2013/034755号、国際公開第2013/034758号、国際公開第2013/034761号、国際公開第2006/072615号、国際公開第2006/024640号、国際公開第2006/072612号、国際公開第2012/114222号、国際公開第2012/168817号、国際公開第2005/041957号、国際公開第2005/061497号、国際公開第2011/011312号、欧州特許第1749824号、欧州特許第1548011号、欧州特許第1556055号、米国特許第4,766,122号、国際公開第2002/068423号、国際公開第2002/050078号、国際公開第2002/009713号、国際公開第98/32755号、米国特許第5,861,396号、国際公開第2004/089953号、米国特許第5,861,396号および米国特許第6,573,263号に記載されているものが挙げられる。特定の実施態様において、本発明のPDE2阻害剤は、遊離形態または塩形態の2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−{(1R)−1−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−フェニルブチル}−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン(BAY60−7550)である。
【0014】
第三の態様において、本発明は、本発明の製剤を使用する方法を提供する。本発明の製剤は、例えばドーパミンおよび一酸化窒素(NO)のような環状ヌクレオチド合成誘導物質の阻害またはそのレベルの減少に起因するPDE1もしくはPDE2の発現の増加またはcAMPおよびcGMPの発現の減少の結果としての、cAMPおよびcGMP媒介経路の途絶または該経路へのダメージによって特徴付けられる疾患の治療において有用である。PDE1およびPDE2によってcAMPおよびcGMPの分解を防止し、これによってcAMPおよびcGMP(特に、cGMP)の細胞内レベルを増加させることによって、本発明の製剤および医薬組成物は、環状ヌクレオチド合成誘導物質の活性を増強する。したがって、本発明は、以下の状態:
(i)パーキンソン病、下肢静止不能振戦、ジスキネジア、ハンチントン病、アルツハイマー病および薬剤性運動障害を包含する神経変性疾患;
(ii)うつ状態、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、双極型疾患、不安、睡眠障害、例えばナルコレプシー、認知障害、認知症、トゥレット症候群、自閉症、脆弱X症候群、覚醒剤離脱および薬物依存を包含する精神障害;
(iii)脳血管疾患、脳卒中、うっ血性心疾患、高血圧、肺高血圧症、肺動脈性高血圧症および性機能障害を包含する循環器および心血管障害;
(iv)喘息、慢性閉塞性肺疾患およびアレルギー性鼻炎を包含する呼吸器および炎症性障害、ならびに自己免疫および炎症性疾患;
(v)PDE1またはPDE2を発現する細胞中の低レベルのcAMPおよび/またはcGMP(またはcAMPおよび/またはcGMPシグナル伝達経路の阻害)によって特徴付けられる疾患または状態;および/または
(vi)ドーパミンD1受容体シグナル伝達活性の低下によって特徴付けられる疾患または状態
のうち1つ以上の状態の治療方法であって、該治療を必要とするヒトまたは動物患者へ、本明細書に記載の遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤を医薬上許容される希釈剤または担体と混合して含む本発明の医薬組成物Iの有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0015】
医薬組成物Iは、多剤混合型医薬組成物(PDE1治療剤とPDE2治療剤が単一の投与剤形である)または多剤遊離型医薬組成物(PDE1治療剤とPDE2治療剤が別々の投与剤形である)として投与され得る。
【0016】
一の実施態様において、本発明は、ナルコレプシーの治療方法または予防方法を提供する。この実施態様において、医薬組成物Iは、唯一の治療剤として用いることができるが、他の活性薬剤との併用または共投与に用いることもできる。かくして、本発明は、さらに、ナルコレプシーの治療方法であって、該治療を必要とするヒトまたは動物患者へ、
(i)医薬組成物I、ならびに
(ii)遊離形態または医薬上許容される塩形態の、例えば(a)中枢神経刺激薬−アンフェタミンおよびアンフェタミン様化合物、例えば、メチルフェニデート、デキストロアンフェタミン、メトアンフェタミン、およびペモリン;(b)モダフィニル、(c)抗うつ薬、例えば、三環系(イミプラミン、デシプラミン、クロミプラミンおよびプロトリプチリンが挙げられる)および選択的セロトニン再取り込み阻害薬(フルオキセチンおよびセルトラリンが挙げられる);および/または(d)γヒドロキシ酪酸(GHB)から選択される、覚醒を促進するかまたは睡眠を調節する化合物
の治療上有効量を投与すること、例えば、同時に(simultaneously)または連続してまたは同時期に(contemporaneously)投与することを含む、方法を含む。該医薬組成物Iは、唯一の治療剤として使用され得る(例えば、多剤混合型医薬組成物または多剤遊離型医薬組成物で)か、または別の活性薬剤との併用もしくは共投与に使用され得る。
【0017】
別の実施態様において、本発明は、さらに、プロゲステロンシグナル伝達の亢進によって軽減され得る状態の治療方法または予防方法であって、該治療または予防を必要とするヒトまたは動物へ本発明の医薬組成物Iの有効量を投与することを含む方法を提供する。プロゲステロンシグナル伝達の亢進によって軽減され得る疾患または状態としては、女性性機能不全、続発性無月経(例えば、運動性無月経)、無排卵症、閉経、閉経期症状、甲状腺機能低下症、月経前症候群、早期分娩、不妊症、例えば反復流産に起因する不妊症、不規則な月経周期、異常子宮出血、骨粗鬆症、自己免疫疾患、多発性硬化症、前立腺肥大、前立腺癌および甲状腺機能低下症が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、プロゲステロンシグナル伝達を亢進することによって、PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、子宮の内膜に対する効果によって卵着床を促進するために、また、妊娠に対する免疫応答または低プロゲステロン機能に起因して流産しやすい女性において妊娠を維持するために用いられ得る。本明細書に記載のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、また、ホルモン補充療法の有効性を亢進するのにも有用であり、例えば、閉経後の女性、エストロゲン誘導性子宮内膜増殖症およびエストロゲン誘導性子宮内膜癌において、エストロゲン/エストラジオール/エストリオールおよび/またはプロゲステロン/プロゲスチンと併用投与され得る。本発明の方法はまた、動物交配(animal breeding)にも有用であり、例えば交配させようとする雌性非ヒト哺乳動物における性的受容性および/または発情を誘導するのにも有用である。
【0018】
この実施態様において、PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、上記の治療方法または予防方法において唯一の治療剤として用いられ得るが、他の活性薬剤との併用または共投与に使用され得、例えばホルモン補充療法と併用され得る。かくして、本発明は、また、プロゲステロンシグナル伝達の亢進によって軽減され得る障害の治療方法であって、該治療を必要とするヒトまたは動物患者へ、
(i)本発明の医薬組成物I、および
(ii)遊離形態または医薬上許容される塩形態の、ホルモン、例えばエストロゲンおよびエストロゲンアナログ(例えば、エストラジオール、エストリオール、エストリオールエステル)ならびにプロゲステロンおよびプロゲステロン(例えば、プロゲスチン)から選択されるホルモン
の治療上有効量を投与すること、例えば同時にまたは連続してまたは同時期に投与することを含む、方法を含む。
【0019】
本発明は、また、細胞内または組織内のドーパミンD1細胞内シグナル伝達活性を亢進または増強する方法であって、該細胞または組織を、PDE1およびPDE2活性を阻害するのに十分なPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤の有効量と接触させることを含む、方法を提供する。
【0020】
本発明は、また、PDE1および/またはPDE2関連障害、ドーパミンD1受容体細胞内シグナル伝達経路障害、またはプロゲステロンシグナル伝達経路の亢進によって軽減され得る障害の治療を必要とする患者における該障害の治療方法であって、該患者へ、本発明の医薬組成物Iの有効量を投与することを含む、方法(ここで、PDE1およびPDE2活性がDARPP−32および/またはGluR1 AMPA受容体のリン酸化を調節する)を提供する。
【0021】
別の態様では、本発は、また、緑内障または眼内圧亢進の治療方法であって、該治療を必要とする患者の眼へ、眼科的に適合した担体中の本発明の医薬組成物Iの治療有効量を局所投与することを含む、方法を提供する。しかしながら、治療は、全身療法をも包含し得る。全身療法としては、血流に直接到達することができる治療、例えば経口投与法を包含する。
【0022】
所望により、PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤を含む当該医薬組成物は、緑内障または眼内圧亢進の治療に有用な第3の薬物と連続してまたは同時に投与され得る。PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤を含む当該医薬組成物が他の薬剤と一緒に投与される場合、第3のまたはその後の薬剤の治療有効量は、単剤療法の場合に活性に要する量未満であり得る。したがって、閾値下の量(すなわち、単剤療法の場合に効力に必要なレベルよりも低い量)は、治療上有効であるということができるか、あるいは、有効量ということもできる。実際、異なる作用機序および異なる副作用プロファイルを有する種々の薬剤を投与する利点は、いずれかのまたは両方の薬剤の投与量および副作用を減少させること、ならびに、単剤療法の場合のそれらの活性を亢進または増強することであり得る。
【0023】
かくして、本発明は、緑内障および眼内圧亢進から選択される状態の治療方法であって、該治療を必要とする患者へ、眼内圧を下げることが知られている薬剤の量とPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤の量が合わせて該状態を治療するのに有効であるように、眼内圧を下げることが知られている薬剤の有効量、例えば閾値下量を、遊離形態または医薬上許容される塩形態の本発明のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤の有効量、例えば閾値下量と付随して(concomitantly)または同時にまたは連続して投与することを含む、方法を提供する。
【0024】
一の実施態様において、該薬剤の片方または両方が眼に局所的に投与される。かくして、本発明は、眼内圧を下げることが知られている薬剤の減少した量をPDE1阻害剤の有効量と付随してまたは同時にまたは連続して投与することによって緑内障または眼内圧亢進の治療の副作用を軽減する方法を提供する。しかしながら、全身療法的投与のような、局所投与以外の方法を利用することもできる。
【0025】
本発明の医薬組成物Iと併用してもよいさらなる薬剤は、例えば、典型的にはプロスタグランジン、ピロカルピンもしくはエピネフリンの滴下注入(instillation)、または局所β遮断薬治療、例えばチモロールによる治療、ならびに全身投与炭酸脱水酵素阻害剤、例えばアセタゾラミドからなる既存の薬物から選択され得る。フィゾスチグミンおよびエコチオパートのようなコリンエステラーゼ阻害剤を使用することもでき、これらは、ピロカルピンと同様の効果を有する。緑内障の治療に現在使用されている薬物としては、例えば、
1.房水のぶどう膜強膜流出(uveoscleral outflow)を増加させる、ラタノプロスト(キサラタン)、ビマトプロスト(ルミガン)およびトラボプロスト(トラバタン(Travatan))のようなプロスタグランジンアナログ(ビマトプロストは、線維柱帯流出(trabecular outflow)をも増加させる)、
2.毛様体による房水産生を減少させる、チモロール、レボブノロール(ベータガン)、およびベタキソロールのような局所βアドレナリン受容体アンタゴニスト、
3.房水産生の減少およびぶどう膜強膜流出の増加の二重機構によって働く、ブリモニジン(アルファガン)のようなαアドレナリン受容体アゴニスト、
4.βアゴニスト作用によって、線維柱帯網を介し、かつ、おそらくぶどう膜強膜流出経路を介する房水の流出を増加させる、エピネフリンおよびジピベフリン(プロパイン)のような低選択性(less-selective)交感神経作動薬、
5.毛様体筋の収縮によって働き、線維柱帯網を締め、房水の流出の増加を可能にする、ピロカルピンのような縮瞳薬(副交感神経作動薬)、
6.毛様体内で炭酸脱水酵素を阻害することによって房水の分泌を低下させる、ドルゾラミド(トルソプド)、ブリンゾラミド(エイゾプト)、アセタゾラミド(ダイアモックス)のような炭酸脱水酵素阻害剤、
7.緑内障および胃排出遅延を治療するために使用することもできる、フィゾスチグミン
が挙げられる。
【0026】
例えば、本発明は、本発明のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤、ならびに(i)プロスタノイド、ウノプロストン、ラタノプロスト、トラボプロストまたはビマトプロスト;(ii)αアドレナリン受容体アゴニスト、例えばブリモニジン、アプラクロニジンまたはジピベフリン、および(iii)ムスカリンアゴニスト、例えばピロカルピンから選択される薬剤を含む医薬組成物を提供する。例えば、本発明は、遊離形態または眼科的に許容される塩形態の、本発明のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤を、ビマトプロスト、アブリモニジン(abrimonidine)、ブリモニジン、チモロールまたはその組合せと一緒に眼科的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは付随して含む眼科用製剤を提供する。しかしながら、組合せの選択に加えて、当業者は、適当な選択的受容体サブタイプアゴニストまたはアンタゴニストを選択することができる。例えば、αアドレナリン受容体アゴニストに関しては、α1アドレナリン受容体に対して選択的なアゴニスト、またはブリモニジンのようなα2アドレナリン受容体に対して選択的なアゴニストを選択することができる。βアドレナリン受容体アンタゴニストに関しては、適当な治療用途に応じて、β1またはβ2またはβ3のいずれかに対して選択的なアンタゴニストを選択することができる。M1−M5のような特定の受容体サブタイプに対して選択的なムスカリン受容体アゴニストを選択することができる。
【0027】
PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、点眼液剤、クリーム剤または軟膏剤を包含する眼科用組成物の剤形で投与され得る。眼科用組成物は、さらに、眼内圧降下剤を含むことができる。
【0028】
さらに別の例において、開示されているPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、ビマトプロスト点眼液、酒石酸ブリモニジン点眼液、または酒石酸ブリモニジン/マレイン酸チモロール点眼液であり得る眼内圧降下剤の閾値下量と併せることができる。
【0029】
驚くべきことに、上記の方法に加えて、PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤が、精神病、例えば、幻覚、偏執性妄想もしくは奇異な妄想、または支離滅裂な会話および思考、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調様障害、精神障害、妄想性障害、および急性躁病エピソードおよび双極性障害におけるような躁病などの精神病症状によって特徴付けられる状態の治療に有用であることも発見した。理論に縛られることなく、クロザピンのような定型および非定型の抗精神病薬は、主に、ドーパミンD2受容体においてそれらのアンタゴニスト活性を有すると考えられる。しかしながら、PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、主に、ドーパミンD1受容体におけるシグナル伝達を亢進する。D1受容体シグナル伝達を亢進することによって、PDE1阻害剤は、さまざまな脳領域において、例えば、中隔側坐核ニューロンにおいて、および前頭前野において、NMDA受容体機能を増大させることができる。この機能亢進は、例えば、NR2Bサブユニットを含有するNMDA受容体において見ることができ、例えばSrcおよびプロテインキナーゼAファミリーのキナーゼの活性化によって生じることがある。
【0030】
したがって、本発明は、精神病、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調様障害、精神障害、妄想性障害、ならびに急性躁病エピソードおよび双極性障害におけるような躁病の新しい治療方法であって、該治療を必要とする患者へ、本発明の医薬組成物I(例えば、遊離形態または医薬上許容される塩形態の、本発明のホスホジエステラーゼ−1(PDE1)およびPDE2阻害剤組合せを含む)の治療有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0031】
PDE1およびPDE2阻害剤組合せは、唯一の治療剤として上記の治療または予防方法において使用され得るが、他の活性薬剤との併用または共投与にも使用され得る。かくして、本発明は、さらに、精神病、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調様障害、精神障害、妄想性障害または躁病の治療方法であって、該治療を必要とする患者へ、
(i)本発明の医薬組成物I(例えば、遊離形態または医薬上許容される塩形態の、本発明のPDE1およびPDE2阻害剤組合せを含む);および
(ii)遊離形態または医薬上許容される塩形態の、抗精神病薬、例えば、
定型抗精神病薬、例えば、
ブチロフェノン系、例えば、ハロペリドール(ハルドール、セレネース)、ドロペリドール(ドロレプタン);
フェノチアジン系、例えば、クロルプロマジン(トラジン、ラルガクチル)、フルフェナジン(プロリキシン)、ペルフェナジン(トリラホン)、プロクロルペラジン(コンパジン)、チオリダジン(メラリル、メレリル)、トリフルオロペラジン(ステラジン)、メソリダジン、ペリシアジン、プロマジン、トリフルプロマジン(ベスプリン)、レボメプロマジン(ノジナン)、プロメタジン(フェネルガン)、ピモジド(オーラップ);
チオキサンテン系、例えば、クロルプロチキセン、フルペンチキソール(デピキソール(Depixol)、フルアンキソール)、チオチキセン(ナーベン)、ズクロペンチキソール(クロピキソール、アキュフェーズ(Acuphase));
非定型抗精神病薬、例えば、
クロザピン(クロザリル)、オランザピン(ジプレキサ)、リスペリドン(リスペルダル)、クエチアピン(セロクエル)、ジプラシドン(ゲオドン)、アミスルプリド(ソリアン)、パリペリドン(インヴェガ)、アリピプラゾール(エビリファイ)、ビフェプルノックス;ノルクロザピン
の治療上有効量を投与すること、例えば同時にまたは連続してまたは同時期に投与することを含む、方法を含む。
【0032】
本発明の製剤または医薬組成物は、唯一の治療剤として使用され得るか、または他の活性薬剤との併用もしくは共投与に使用され得る。例えば、PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、ドーパミンのようなD1アゴニストの活性を増強するので、それらは、例えばパーキンソン病患者の治療において、慣用のドーパミン作動薬(dopaminergic medication)、例えばレボドパおよびレボドパ補助剤(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO−B阻害剤)、ドーパミン受容体アゴニスト、ならびに抗コリン作用薬と同時にまたは連続してまたは同時期に投与され得る。加えて、PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、例えば本明細書に記載されているように、また、エストロゲン/エストラジオール/エストリオールおよび/またはプロゲステロン/プロゲスチンと組み合わせて投与され得る。
【0033】
本発明の製および医薬組成物は、特に、パーキンソン病、統合失調症、ナルコレプシー、緑内障、女性性機能不全、認知障害(例えば、学習、記憶、認識記憶、社会的相互作用および作業記憶)、不安およびうつ状態の治療に有効である。
【0034】
特的の実施態様において、本発明の製および医薬組成物は、特に、統合失調症の治療または予防に有用である。
【0035】
さらに別の態様において、本発明は、まつげの伸長または成長増強方法であって、該伸長または成長増強を必要とする患者の眼へ、プロスタグランジンアナログ、例えばビマトプロストの有効量を、本発明の製または医薬組成物の有効量と付随してまたは同時にまたは連続して投与することによる方法を提供する。
【0036】
さらに別の態様において、本発明は、外傷性脳損傷の治療または予防方法であって、該治療または予防を必要とする患者へ本発明の医薬組成物Iの治療有効量を投与することを含む、方法を提供する。外傷性脳損傷(TBI)には、一次損傷および二次損傷が包含され、局所性脳損傷およびびまん性脳損傷のどちらも包含される。二次損傷は、最初の(一次)損傷後の炎症性応答および進行が原因であるかまたはそれにより悪化する、個々の細胞内プロセス(例えば、活性酸素種に起因する毒性、グルタミン酸受容体の過剰刺激、カルシウム過剰流入および炎症性上方制御)に起因する複数の並行した相互作用する相互依存的な生物学的反応カスケードである。異常なカルシウム恒常性は、白質および灰白質のどちらにおいても二次損傷の進行の重要な要素であると考えられる。
【0037】
本発明は、また、
(i)上記した方法のいずれかまたは上記した疾患または状態の治療において用いるための、上記の本発明の製または医薬組成物、
(ii)上記の疾患または状態の治療のための(医薬の製造における)上記の本発明の製または医薬組成物の使用、
(iii)上記の疾患または状態の治療における使用のための上記の本発明の医薬組成物I
を提供する。
【0038】
本発明は、また、以下の状態:
(i)パーキンソン病、下肢静止不能振戦、ジスキネジア、ハンチントン病、アルツハイマー病および薬剤性運動障害を包含する神経変性疾患;
(ii)うつ状態、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、双極型疾患、不安、睡眠障害、例えばナルコレプシー、認知障害、認知症、トゥレット症候群、自閉症、脆弱X症候群、覚醒剤離脱および薬物依存を包含する精神障害;
(iii)脳血管疾患、脳卒中、うっ血性心疾患、高血圧、肺高血圧症、肺動脈性高血圧症および性機能障害を包含する循環器および心血管障害;
(iv)喘息、慢性閉塞性肺疾患およびアレルギー性鼻炎を包含する呼吸器および炎症性障害、ならびに自己免疫および炎症性疾患;
(v)PDE1またはPDE2を発現する細胞中の低レベルのcAMPおよび/またはcGMP(またはcAMPおよび/またはcGMPシグナル伝達経路の阻害)によって特徴付けられる疾患または状態;および/または
(vi)ドーパミンD1受容体シグナル伝達活性の低下によって特徴付けられる疾患または状態
のうち1つ以上の状態の治療方法であって、該治療を必要とするヒトまたは動物患者へ、(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、および(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤の有効量を投与すること、例えば同時にまたは連続してまたは同時期に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施態様において、該PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、単一投与剤形である。他の実施態様においては、PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、別々の投与剤形である。
【0039】
一の実施態様において、本発明は、ナルコレプシーの治療または予防方法を提供する。この実施態様において、遊離形態または医薬上許容される塩形態の該PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、唯一の治療剤として使用され得るが、他の活性薬剤との併用または共投与にも使用され得る。かくして、本発明は、また、ナルコレプシーの治療方法であって、該治療を必要とするヒトまたは動物患者へ、
(i)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、
(ii)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤、および
(iii)任意であるが、遊離形態または医薬上許容される塩形態の、覚醒を促進するかまたは睡眠を調節する化合物、例えば(a)中枢神経刺激薬−アンフェタミンおよびアンフェタミン様化合物、例えばメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン、メトアンフェタミンおよびペモリン;(b)モダフィニル、(c)抗うつ薬、例えば三環系(イミプラミン、デシプラミン、クロミプラミンおよびプロトリプチリンを包含する)および選択的セロトニン再取り込み阻害薬(フルオキセチンおよびセルトラリンを包含する);および/または(d)γヒドロキシ酪酸(GHB)から選択される化合物
の治療有効量を投与すること、例えば同時にまたは連続してまたは同時期に投与することを含む、方法を含む。該PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、唯一の治療剤として使用され得るか、または他の活性薬剤との併用もしくは共投与に用いることもできる。
【0040】
別の実施態様において、本発明は、また、プロゲステロンシグナル伝達の亢進によって軽減され得る状態の治療または予防方法であって、該治療または予防を必要とするヒトまたは動物患者へ、(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、および(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤の有効量を投与することを含む、方法を提供する。プロゲステロンシグナル伝達の亢進によって軽減され得る疾患または状態としては、女性性機能不全、続発性無月経(例えば、運動性無月経)、無排卵症、閉経、閉経期症状、月経前症候群、早期分娩、不妊症、例えば反復流産に起因する不妊症、不規則な月経周期、異常子宮出血、骨粗鬆症、自己免疫疾患、多発性硬化症、前立腺肥大、前立腺癌、および甲状腺機能低下症が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、唯一の治療剤として上記の治療または予防方法で使用され得るが、他の活性薬剤との併用または共投与に使用され得、例えばホルモン補充療法と併用され得る。かくして、本発明は、また、プロゲステロンシグナル伝達の亢進によって軽減され得る障害の治療方法であって、該治療を必要とするヒトまたは動物患者へ、
(i)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、
(ii)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤、および
(iii)遊離形態または医薬上許容される塩形態の、ホルモン、例えばエストロゲンおよびエストロゲンアナログ(例えば、エストラジオール、エストリオールエステル)ならびにプロゲステロンおよびプロゲステロンアナログ(例えば、プロゲスチン)から選択されるホルモン
の治療有効量を投与すること、例えば同時にまたは連続してまたは同時期に投与することを含む、方法を含む。
【0042】
本発明は、また、PDE1および/またはPDE2関連障害、ドーパミンD1受容体細胞内シグナル伝達経路障害、またはプロゲステロンシグナル伝達経路の亢進によって軽減され得る障害の治療を必要とする患者における当該治療方法であって、該患者へ、(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、および(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤の有効量を投与すること(ここで、PDE1およびPDE2活性は、DARPP−32および/またはGluR1 AMPA受容体のリン酸化を調節する)、例えば同時にまたは連続してまたは同時期に投与することを含む、方法も提供する。
【0043】
一の別の態様において、本発明は、また、緑内障または眼内圧亢進の治療方法であって、該治療を必要とする患者の眼へ、眼科的に適合した担体中の(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、および(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤の治療有効量の局所投与を含む、方法を提供する。しかしながら、治療は、全身療法をも包含し得る。全身療法としては、血流に直接到達することができる治療、例えば経口投与法を包含する。
【0044】
所望により、PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、緑内障または眼内圧亢進の治療に有用な第3の薬物と連続してまたは同時に投与され得る。PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤が他の薬剤と一緒に投与される場合、第3のまたはその後の薬剤の治療有効量は、単剤療法の場合に活性に要する量未満であり得る。したがって、閾値下の量(すなわち、単剤療法の場合に効力に必要なレベルよりも低い量)は、治療上有効であるということができるか、あるいは、有効量ということもできる。実際、異なる作用機序および異なる副作用プロファイルを有する種々の薬剤を投与する利点は、いずれかのまたは両方の薬剤の投与量および副作用を減少させること、ならびに、単剤療法の場合のそれらの活性を亢進または増強することであり得る。
【0045】
本発明のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤との併用のための任意のさらなる薬剤は、例えば、典型的にはプロスタグランジン、ピロカルピンもしくはエピネフリンの滴下注入、または局所β遮断薬治療、例えばチモロールによる治療、ならびに全身投与炭酸脱水酵素阻害剤、例えばアセタゾラミドからなる既存の薬物から選択され得る。フィゾスチグミンおよびエコチオパートのようなコリンエステラーゼ阻害剤を使用することもでき、これらは、ピロカルピンと同様の効果を有する。緑内障の治療に現在使用されている薬物としては、例えば、
1.房水のぶどう膜強膜流出を増加させる、ラタノプロスト(キサラタン)、ビマプロスト(ルミガン)およびトラボプロスト(トラバタン)のようなプロスタグランジンアナログ(ビマトプロストは、線維柱帯流出をも増加させる)
2.毛様体による房水産生を減少させる、チモロール、レボブノロール(ベータガン)、およびベタキソロールのような局所βアドレナリン受容体アンタゴニスト
3.房水産生の減少およびぶどう膜強膜流出の増加の二重機構によって働く、ブリモニジン(アルファガン)のようなαアドレナリン受容体アゴニスト
4.βアゴニスト作用によって、線維柱帯網を介し、かつ、おそらくぶどう膜強膜流出経路を介する房水の流出を増加させる、エピネフリンおよびジピベフリン(プロパイン)のような低選択性交感神経作動薬、
5.毛様体筋の収縮によって働き、線維柱帯網を締め、房水の流出の増加を可能にする、ピロカルピンのような縮瞳薬(副交感神経作動薬)、
6.毛様体内で炭酸脱水酵素を阻害することによって房水の分泌を低下させる、ドルゾラミド(トルソプド)、ブリンゾラミド(エイゾプト)、アセタゾラミド(ダイアモックス)のような炭酸脱水酵素阻害剤、
7.緑内障および胃排出遅延を治療するために使用することもできる、フィゾスチグミン
が挙げられる。
【0046】
本発明は、精神病、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調様障害、精神障害、妄想性障害、ならびに急性躁病エピソードおよび双極性障害におけるような躁病の新しい治療方法であって、該治療を必要とする患者へ、(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、および(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤の治療有効量を投与すること、例えば同時にまたは連続してまたは同時期に投与することを含む、方法をも提供する。
【0047】
PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、唯一の治療剤として上記の治療または予防方法において使用され得るが、他の活性薬剤との併用または共投与にも使用され得る。かくして、本発明は、さらに、精神病、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調様障害、精神障害、妄想性障害または躁病の治療方法であって、該治療を必要とする患者へ、
(i)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、
(ii)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤、および
(iii)任意であるが、遊離形態または医薬上許容される塩形態の、抗精神病薬、例えば、
定型抗精神病薬、例えば、
ブチロフェノン系、例えば、ハロペリドール(ハルドール、セレネース)、ドロペリドール(ドロレプタン);
フェノチアジン系、例えば、クロルプロマジン(トラジン、ラルガクチル)、フルフェナジン(プロリキシン)、ペルフェナジン(トリラホン)、プロクロルペラジン(コンパジン)、チオリダジン(メラリル、メレリル)、トリフルオロペラジン(ステラジン)、メソリダジン、ペリシアジン、プロマジン、トリフルプロマジン(ベスプリン)、レボメプロマジン(ノジナン)、プロメタジン(フェネルガン)、ピモジド(オーラップ);
チオキサンテン系、例えば、クロルプロチキセン、フルペンチキソール(デピキソール、フルアンキソール)、チオチキセン(ナーベン)、ズクロペンチキソール(クロピキソール、アキュフェーズ);
非定型抗精神病薬、例えば、
クロザピン(クロザリル)、オランザピン(ジプレキサ)、リスペリドン(リスペルダル)、クエチアピン(セロクエル)、ジプラシドン(ゲオドン)、アミスルプリド(ソリアン)、パリペリドン(インヴェガ)、アリピプラゾール(エビリファイ)、ビフェプルノックス;ノルクロザピン
の治療上有効量を投与すること、例えば同時にまたは連続してまたは同時期に投与することを含む、方法を含む。
【0048】
さらに別の態様において、本発明は、まつげの伸長または成長増強方法であって、該伸長または成長増強を必要とする患者の眼へ、プロスタグランジンアナログ、例えばビマトプロストの有効量を(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、および(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤の有効量と付随してまたは同時にまたは連続して投与することによる方法を提供する。
【0049】
さらに別の態様において、本発明は、外傷性脳損傷の治療または予防方法であって、該治療または予防を必要とする患者へ(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、および(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤の治療有効量を投与することを含む、方法を提供する。外傷性脳損傷(TBI)には、一次損傷および二次損傷が包含され、局所性脳損傷およびびまん性脳損傷のどちらも包含される。二次損傷は、最初の(一次)損傷後の炎症性応答および進行が原因であるかまたはそれにより悪化する、個々の細胞内プロセス(例えば、活性酸素種に起因する毒性、グルタミン酸受容体の過剰刺激、カルシウム過剰流入および炎症性上方制御)に起因する複数の並行した相互作用する相互依存的な生物学的反応カスケードである。異常なカルシウム恒常性は、白質および灰白質のどちらにおいても二次損傷の進行の重要な要素であると考えられる。異常なカルシウム恒常性は、白質および灰白質のどちらにおいても二次損傷の進行の重要な要素であると考えられる。異常なカルシウム恒常性は、白質および灰白質のどちらにおいても二次損傷の進行の重要な要素であると考えられる。
【0050】
本発明は、また、
(i)上記の疾患または状態の治療方法のいずれかまたは治療における、(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、および(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤の、例えば単一投与剤形または別々の投与剤形での使用、
(ii)上記の疾患または状態の治療のための(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、および(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤の(医薬の製造における)使用
をも提供する。
【0051】
本発明は、また、(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、および(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤を含むキットを提供する。
本発明は、また、
(i)上記の疾患または状態の治療方法のいずれかまたは治療における、(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、および(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤を、例えば単一投与剤形または別々の投与剤形で含むキットの使用、
(ii)上記の疾患または状態の治療のための、(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、および(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤を含むキットの使用
をも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】(原文に記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の詳細な説明
PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、当該技術分野で公知である。本発明の特定の実施態様において、本発明のPDE1阻害剤としては、国際公開第2006/133261号、国際公開第2007/143705号、国際公開第2008/063505号、国際公開第2008/070095号、国際公開第2009/075784号、国際公開第2009/073210号、国際公開第2010/065153号、国際公開第2010/065148号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065149号、国際公開第2010/065147号、国際公開第2010/065152号、国際公開第2010/098839号、国際公開第2010/132127号、国際公開第2011/153129号、国際公開第2011/153135号、国際公開第2011/153136号、国際公開第2011/153138号、国際公開第2012/171016号に記載のものが挙げられる(出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。別の特定の実施態様において、PDE1阻害剤は、遊離形態または塩形態の(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−ピリジン−2−イル)−ベンジル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オンである。別の特定の実施態様において、PDE1阻害剤は、遊離形態または塩形態の(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−(6−フルオロピリジン−2−イル)フェニル)メチル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オンである。
【0054】
別の特定の実施態様において、本発明のPDE2阻害剤としては、国際公開第2010/054260号、国際公開第2010/054253号、国際公開第2012/104293号、国際公開第2013/000924号、国際公開第2013/034755号、国際公開第2013/034758号、国際公開第2013/034761号、国際公開第2006/072615号、国際公開第2006/024640号、国際公開第2006/072612号、国際公開第2012/114222号、国際公開第2012/168817号、国際公開第2005/041957号、国際公開第2005/061497号、国際公開第2011/011312号、欧州特許第1749824号、欧州特許第1548011号、欧州特許第1556055号、米国特許第4,766,122号、国際公開第2002/068423号、国際公開第2002/050078号、国際公開第2002/009713号、国際公開第98/32755号、米国特許第5,861,396号、国際公開第2004/089953号、米国特許第5,861,396号および米国特許第6,573,263号に記載のものが挙げられる。特定の実施態様において、本発明のPDE2阻害剤は、遊離形態または塩形態の2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−{(1R)−1−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−フェニルブチル}−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン(BAY60−7550)である。
【0055】
本明細書において、特記しない限り、本発明のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、あらゆる形態、例えば遊離形態または酸付加塩形態または該化合物が酸性置換基を含む場合には塩基付加塩形態の化合物を包含すると解されるべきである。PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、医薬としての使用が意図されており、したがって、医薬上許容される塩が好ましい。医薬用途に不適切な塩は、例えば該遊離化合物またはそれらの医薬上許容される塩の単離または精製に有用であり得、したがって、包含される。
【0056】
本発明のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、場合によってはプロドラッグ形態で存在し得る。PDE1またはPDE2阻害剤のプロドラッグ形態は、体外では不活性であるかまたはあまり活性ではなくてもよく、体内でそれぞれ活性なPDE1またはPDE2阻害性化合物に変わる。例えば、本発明のPDE1またはPDE2阻害剤がヒドロキシ置換基またはカルボキシ置換基を含有する場合、この置換基は、生理学的に加水分解性でかつ許容されるエステルを形成し得る。本明細書で用いる場合、「生理学的に加水分解性でかつ許容されるエステル」とは、生理学的条件下で加水分解して酸(ヒドロキシ置換基を有する本発明のPDE1またはPDE2阻害剤の場合)またはアルコール(カルボキシ置換基を有する本発明のPDE1またはPDE2阻害剤の場合)を生じることができ、投与される量で自体生理学的に耐容性である本発明のPDE1またはPDE2阻害剤のエステルを意味する。したがって、本発明のPDE1またはPDE2阻害剤がヒドロキシ基を含有する場合、例えば化合物−OHである場合、該化合物のアシルエステルプロドラッグ、例えば化合物−O−C(O)−C1−4アルキルは、体内で加水分解して、一方では生理学的に加水分解性のアルコール(化合物−OH)を、他方では酸(例えば、HOC(O)−C1−4アルキル)を形成することができる。別法としては、本発明の化合物がカルボン酸を含有する場合、例えば化合物−C(O)OHである場合、該化合物の酸エステルプロドラッグ、例えば化合物−C(O)O−C1−4アルキルは、加水分解して、化合物−C(O)OHとHO−C1−4アルキルを形成する。理解されるように、かくして、該用語は慣用の医薬プロドラッグ形態を包含する。
【0057】
本発明のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、それらのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体、ならびにそれらの多形体、水和物、溶媒和物および複合体を含む。本発明の範囲内のいくつかの個々の化合物は、二重結合を含有し得る。本発明における二重結合の表示は、二重結合のE異性体とZ異性体の両方を包含することを意味する。加えて、本発明の範囲内のいくつかの化合物は、1つ以上の不斉中心を含有し得る。本発明は光学的に純粋な立体異性体のいずれかおよび立体異性体の組合せのいずれかの使用を包含する。
【0058】
当業者に理解されるように、本発明のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、ケト−エノール互変異性体を示し得る。したがって、本発明において定義される発明は、本明細書に記載の構造とそれらの互変異性体の両方を包含すると解されるべきである。
【0059】
また、本発明のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤がそれらの安定な同位体および不安定な同位体を包含することが意図される。安定な同位体は、同種(すなわち、元素)の豊富な核種と比較して、さらなる中性子を1個含有する非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は保持されろと予想され、このような化合物は非同位体アナログの薬物動態の測定に対する有用性もある。例えば、本発明の化合物の特定の位置にある水素原子を重水素(非放射性である安定な同位体)と置き換えることができる。公知の安定な同位体の例としては、重水素、13C、15N、18Oが挙げられるが、これらに限定されるものではない。別法として、同種(すなわち、元素)の豊富な核種と比較して、さらなる中性子を複数含有する放射性同位体である不安定な同位体、例えば123I、131I、125I、11C、18Fを、対応する豊富な核種、例えばそれぞれI、CおよびFと置き換えることができる。本発明の化合物の有用な同位体の別の例は11C同位体である。これらの放射性同位体は、本発明の化合物の放射線画像診断および/または薬物動態試験に有用である。国際公開第2011/043816号(出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に記載のPDE1阻害剤の同位体の製造方法を本発明の化合物の同位体の製造に使用できる。
【0060】
「本発明のPDE1阻害剤」という記載は、遊離形態または(医薬的)塩形態の本明細書に記載の全ての化合物を包含する。好ましくは、本発明のPDE1阻害剤は、cGMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE1媒介)加水分解を、例えば実施例3に記載されるように、例えば固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにおいて100nM未満のIC50をもって阻害する。好ましくは、本発明のPDE1阻害剤は、遊離形態または塩形態の(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−ピリジン−2−イル)−ベンジル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オンまたは(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−(6−フルオロピリジン−2−イル)フェニル)メチル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オンである。
【0061】
「本発明のPDE2阻害剤」という記載は、遊離形態または(医薬的)塩形態の本明細書に記載の全ての化合物を包含する。好ましくは、本発明のPDE2阻害剤は、cGMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE2媒介)加水分解を、例えば実施例5に記載されるように、例えば固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにおいて100nM未満のIC50をもって阻害する。好ましくは、本発明のPDE2阻害剤は、遊離形態または塩形態の2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−{(1R)−1−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−フェニルブチル}−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン(BAY60−7550)である。
【0062】
「治療」および「治療する」という用語は、したがって、疾患の症状の予防および治療または寛解ならびに該疾患の原因の治療を包含すると解されるべきである。
【0063】
治療方法については、「有効量」という用語は、特定の疾患または障害を治療することができる治療有効量を包含することを意図される。
【0064】
「患者」という用語は、ヒトまたは非ヒト(すなわち、動物)患者を包含する。特定の実施態様において、本発明は、ヒトおよび非ヒトのどちらも包含する。別の実施態様において、本発明は、非ヒトを包含する。別の実施態様において、該用語は、ヒトを包含する。
【0065】
本明細書で用いられる場合、「含む」という用語は、オープンエンドであることが意図され、さらなる未記載の要素または方法工程を除外しない。
【0066】
本発明の製剤および医薬組成物は、特に、パーキンソン病、統合失調症、ナルコレプシー、緑内障、女性性機能不全、認知障害(例えば、学習、記憶、認識記憶、社会的相互作用および作業記憶)、不安およびうつ状態の治療に有用である。
【0067】
本発明の実施に際して用いられる投与量は、もちろん、例えば、治療されるべき特定の疾患または状態、使用される特定のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤、投与様式、ならびに所望の治療法に応じて変化する。PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、経口、非経口、経皮または吸入を包含する適切な経路によって投与され得るが、好ましくは経口投与される。一般に、例えば上記の疾患の治療について、満足のいく結果は、約0.01〜3.0mg/kg程度の投与量の経口投与で得られることが示される。したがって、大型動物、例えばヒトにおいて経口投与のために指摘される日用量は、約0.75〜150mgの範囲であり、好都合には1日1回もしくは2〜4回に分割して投与されるか、または持続放出形態で投与される。かくして、経口投与用の単位投与剤形(unit dosage form)は、例えば、PDE1阻害剤またはPDE2阻害剤約0.2〜75または150mg、例えば約0.2または1.0または2.0〜50、75または100mgを医薬上許容される希釈剤または担体と一緒に含み得る。PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、単一投与剤形(single dosage form)または別々の投与剤形(separate dosage forms)であってよい。PDE1阻害剤およびPDE2阻害剤は、同じ量であっても異なる量であってもよい。
【0068】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、慣用の希釈剤または賦形剤および製剤分野(galenic art)で公知の技術を用いて調製され得る。かくして、経口投与剤形としては、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤などが挙げられる。
【実施例】
【0069】
本発明のPDE1阻害剤およびそれらの医薬上許容される塩は、国際公開第2006/133261号、国際公開第2007/143705号、国際公開第2008/063505号、国際公開第2008/070095号、国際公開第2009/075784号、国際公開第2009/073210号、国際公開第2010/065153号、国際公開第2010/065148号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065149号、国際公開第2010/065147号、国際公開第2010/065152号、国際公開第2010/098839号、国際公開第2010/132127号、国際公開第2011/153129号、国際公開第2011/153135号、国際公開第2011/153136号、国際公開第2011/153138号、国際公開第2012/171016(各々の記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に記載および例示の方法またはそれと類似の方法を用いて製造され得る。本発明のPDE2阻害剤は、国際公開第2010/054260号、国際公開第2010/054253号、国際公開第2012/104293号、国際公開第2013/000924号、国際公開第2013/034755号、国際公開第2013/034758号、国際公開第2013/034761号、国際公開第2006/072615号、国際公開第2006/024640号、国際公開第2006/072612号、国際公開第2012/114222号、国際公開第2012/168817号、国際公開第2005/041957号、国際公開第2005/061497号、国際公開第2011/011312号、欧州特許第1749824号、欧州特許第1548011号、欧州特許第1556055号、米国特許第4,766,122号、国際公開第2002/068423号、国際公開第2002/050078号、国際公開第2002/009713号、国際公開第98/32755号、米国特許第5,861,396号、国際公開第2004/089953号、米国特許第5,861,396号および米国特許第6,573,263号(各々の記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に記載および例示の方法またはそれと類似の方法を用いて製造され得る。これらの方法の出発物質は、商業的に入手できない場合、公知化合物の合成と同様または類似の技術を用いて化学技術から選択される手順によって製造され得る。
【0070】
特に、遊離形態または塩形態の(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−ピリジン−2−イル)−ベンジル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オンおよび(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−(6−フルオロピリジン−2−イル)フェニル)メチル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オンの合成方法は、下記の実施例1および2に記載の手順またはそれと同様の手順を使用して製造され得る。
【0071】
実施例1 (6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−ピリジン−2−イル)−ベンジル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オン
この化合物は、国際公開第2006/133261号に記載のとおり、またはそれと同様に製造され得る。
工程(a) 7−(4−メトキシベンジル)−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4,6(5H,7H)−ジオン:
イソチオシアン酸フェニル(3.9mL、32.7mmol)を6−ヒドラジニル−1−(4−メトキシベンジル)−3−メチルピリミジン−2,4(1H,3H)−ジオン(0.45g、1.6mmol)のDMF(12mL)中懸濁液に添加する。該反応混合物を120℃で40時間加熱し、次に、減圧下にて蒸発させて溶媒を除去する。残留物をヘキサンで洗浄し、次に、MeOH(125mL)で処理し、−15℃で2日間貯蔵して、結晶性固体を得る。該固体をCHOH−EtOAcから再結晶して生成物2.5gを得る。
【0072】
工程(b) 5−メチル−3−(フェニルアミノ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4,6(5H,7H)−ジオン:
AlCl(0.733g、5.50mmol)をアルゴン下で7−(4−メトキシベンジル)−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4,6(5H,7H)−ジオン(0.692g、1.83mmol)およびアニソール(40μL、0.367mmol)の1,2−ジクロロエタン(10mL)中溶液に添加する。該反応混合物を室温で30分間撹拌し、次に、冷却しながら水でクエンチする。得られた懸濁液をセライトの層で濾過し、該セライトをMeOH(20mL)で洗浄する。大量のTHFでセライトから生成物を溶離させる。THF溶出液を蒸発させて生成物0.47gを得る。
【0073】
工程(c) 6−クロロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4(5H)−オン:
5−メチル−3−(フェニルアミノ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4,6(5H,7H)−ジオン(450mg、1.75mmol)をPOCl(20mL)中にて60時間還流させ、該混合物を蒸発乾固させる。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、白色固体として生成物122mgを得、出発物質207mgを回収する。
【0074】
工程(d) 6−((1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンチルアミノ)−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4(5H)−オン:
6−クロロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4(5H)−オン(75.8mg、0.275mmol)、(1R,2R)−2−アミノ−シクロペンタノール(0.55mmol)およびDIPEA(144μL、0.825mmol)のDMF(3mL)中溶液を110℃で一夜加熱する。反応混合物を減圧下にて蒸発させてDMFを除去する。次に、残留物をクロマトグラフィーによって精製して所望の生成物を得る。
【0075】
工程(e) (6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オン:
塩化チオニルのCHCl中2.0M溶液(267μL、0.534mmol)を6−((1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンチルアミノ)−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4(5H)−オン(30mg、0.088mmol)のCHCl(1mL)およびTHF(1.5mL)中溶液に添加する。該反応混合物を室温で一夜撹拌し、次に、28%NHOH 29μLでクエンチする。得られた混合物を濃縮し、クロマトグラフィーによって精製して、白色固体として生成物26mgを得る。
【0076】
工程(f) (6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−ピリジン−2−イル)−ベンジル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オン:
(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オン(22mg、0.068mmol)、2−(4−(ブロモメチル)フェニル)ピリジン(16.9mg、0.068mmol)およびKCO(9.4mg、0.068mmol)のDMF(2.5mL)中混合物をアルゴン下にて室温で一夜撹拌する。該反応混合物を半分取HPLCによって精製して最終生成物を得る。
【0077】
実施例2 (6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−(6−フルオロピリジン−2−イル)フェニル)メチル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オン
この化合物は、国際公開第2007/143705号、国際公開第2013/192556号、米国仮出願第61/838,105号および米国仮出願第61/919,424号(各々の記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に記載のとおり、またはそれと同様に製造され得る。
【0078】
実施例3 IMAPホスホジエステラーゼアッセイキットを使用するインビトロでのPDE1阻害の測定
ホスホジエステラーゼ1B(PDE1B)は、環状グアノシン一リン酸(cGMP)を5'−グアノシン一リン酸(5'−GMP)に変換するカルシウム/カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ酵素である。PDE1Bはまた、蛍光分子cGMP−フルオレセインのような修飾cGMP基質を、対応するGMP−フルオレセインへ変換することができる。cGMP−フルオレセインからのGMP−フルオレセインの生成は、例えばIMAP(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)固定化金属親和性粒子試薬を使用して、定量化され得る。
【0079】
すなわち、IMAP試薬は、GMP−フルオレセインにおいて見られるがcGMP−フルオレセインにおいては見られない遊離5'−リン酸に高い親和性もって結合する。得られたGMP−フルオレセイン-IMAP複合体は、cGMP−フルオレセインと比較して大きい。大きくてゆっくりと回転する複合体と密接に関係する小フルオロフォアを未結合フルオロフォアと区別できる。これは、それらが蛍光を発するときに放出する光子が、蛍光の励起に使用した光子と同じ極性を維持しているからである。
【0080】
ホスホジエステラーゼアッセイにおいて、IMAPと結合できず、したがって蛍光偏光をほとんど維持できないcGMP−フルオレセインを、IMAPと結合すると蛍光偏光(Δmp)を大きく増加させるGMP−フルオレセインに変換する。ホスホジエステラーゼ阻害は、それ故に、Δmpの減少として検出される。
【0081】
酵素アッセイ
材料: Molecular Devices(Sunnyvale, CA)から入手可能であるIMAP試薬(反応緩衝液、結合緩衝液、FL−GMPおよびIMAPビーズ)以外の全ての化学物質はSigma-Aldrich(St. Louis, MO)から入手可能である。
アッセイ: 3’,5’−環状−ヌクレオチド−特異的ウシ脳ホスホジエステラーゼ(Sigma, St. Louis, MO)を50%グリセロールで2.5U/mlに再構成する。酵素1ユニットは、pH7.5にて30℃で1分間につき1.0μmolの3’,5’−cAMPを5’−AMPに加水分解する。酵素(1部)を反応緩衝液(30μM CaCl、10U/mlのカルモジュリン(Sigma P2277)、10mM Tris−HCl pH7.2、10mM MgCl、0.1%BSA、0.05%NaN)(1999部)に添加して、最終濃度1.25mU/mlとする。希酵素溶液99μlを平底96ウェルポリスチレンプレートの各ウェルに添加し、100%DMSOに溶解した試験化合物1μlを添加する。選択された本発明の化合物を混合し、該酵素と室温で10分間プレインキュベートする。
【0082】
384ウェルマイクロタイタープレート中で、酵素と阻害剤との混合物(4部)を基質溶液(0.225μM)(1部)と合わせることにより、FL−GMP変換反応を開始させる。反応物を暗所にて室温で15分間インキュベートする。384ウェルプレートの各ウェルに、結合試薬(1:1800希釈の消泡剤を添加した結合緩衝液による1:400希釈のIMAPビーズ)60μlを添加することにより、反応を停止させる。プレートを室温で1時間インキュベートして、IMAP結合を完了するまで進行させ、次に、Envisionマルチモードマイクロプレートリーダー(PerkinElmer, Shelton, CT)に入れて、蛍光偏光(Δmp)を測定する。
【0083】
Δmpの減少として測定されたGMP濃度低下は、PDE活性の阻害の指標である。0.0037nM〜80,000nMの範囲の8〜16種類の濃度の化合物の存在下で酵素活性を測定し、次に、非線形回帰ソフトウェア(XLFit;IDBS, Cambridge, MA)を使用してIC50値の推定を可能にする薬物濃度対ΔmPをプロットすることによって、IC50値を決定する。
【0084】
PDE1阻害活性について本明細書に記載されるとおりに、またはそれと同様に、PDE1阻害が選択され、アッセイにおいて試験される。本実施例に記載の手順またはそれと同様の手順で、実施例1の化合物は、105±10.9pMのIC50値を有する。
【0085】
実施例4 2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−{(1R)−1−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−フェニルブチル}−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン(BAY60−7550)
本実施例の化合物は、米国特許第6,573,263号(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に記載のとおりに、またはそれと同様に製造され得る。詳細は、以下のとおりである:
【0086】
化合物4A: 2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−[1−(1−ヒドロキシエチル)−4−フェニルブチル]−5−メチルイミダゾ−[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン:
7−(1−アセチル−4−フェニルブチル)−2−(3,4−ジメトキシベンジル)−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン110mg(0.22mmol)をエタノール5mlに溶解し、ホウ素化水素ナトリウム20mg(0.53mmol)で数回に分けて処理して、2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−[1−(1−ヒドロキシエチル)−4−フェニルブチル]−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オンを得る。
【0087】
溶離液としてアセトニトリル/水(1/1、v/v)を使用して、逆相条件下のクロマトグラフィー(Stability C30、5μm)によって化合物4Aを2つのジアステレオマー化合物に分ける。対応するエナンチオマー的に純粋な化合物(下記の実施例4B、4C、4Dおよび4E)は、シリカゲルキラル固定相上でのラセミジアステレオマー(racemic diastereomers)のクロマトグラフィー分離によって得ることができる。
【0088】
該ラセミ体の分離に特に好適なポリアミドシリカゲルキラル固定相(CSP)は、例えば溶離液として酢酸エチルを使用する、モノマーであるN−メタクリロイル−L−ロイシン−d−メンチルアミドまたはN−メタクリロイル−L−ロイシン−1−メンチルアミド(欧州特許出願公開第0379917号を参照)に基づくものである。
【0089】
実施例4Aからの最初に溶出するジアステレオマーのクロマトグラフィー分割によって、2つのエナンチオマー化合物4B[2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−{(1R)−1−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−フェニルブチル}−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン(BAY60−7550)]および化合物4C[2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−{(1S)−1−[(1S)−1−ヒドロキシエチル]−4−フェニルブチル}−5−メチル−イミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン]が得られる。これと同様に、後から溶出するジアステレオマーから2つのエナンチオマー化合物4D[2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−{(1R)−1−[(1S)−1−ヒドロキシエチル]−4−フェニルブチル}−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン]および化合物4E[2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−{(1S)−1−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]4−フェニルブチル}−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン]が得られる。後から溶出するジアステレオマーから出発するエナンチオマー化合物4Dおよび化合物4Eの分離は、化合物4Bと同様に行われる。
【0090】
さらにまた、化合物4Bおよび化合物4Cは、好ましくは、7−(1−アセチル−4−フェニルブチル)−2−(3,4−ジメトキシベンジル)−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オンのジアステレオ選択的還元法によって得ることもできる。これについては、7−(1−アセチル−4−フェニルブチル)−2−(3,4−ジメトキシ−ベンジル)−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン190mg(0.41mmol)をジクロロメタン/メタノール(100/1)20mlに溶解し、塩化亜鉛6.10mg(0.45mmol)で処理し、室温で30分間撹拌する。0℃に冷却した後、水素化ホウ素ナトリウム30mgを数回に分けて添加し、次に、該混合物を氷浴で冷却しながら2.5時間撹拌する。次に、該バッチを、2N塩酸数滴を使用して中和し、真空濃縮し、ジクロロメタン/メタノール(80/1および40/1)溶離液を使用してクロマトグラフィー処理する。次に、該ジアステレオマー混合物を、実施例4Bに記載したように逆相クロマトグラフィー条件下で精製し、キラル固定相上でクロマトグラフィーによって純粋なエナンチオマーに分離する。
【0091】
実施例5 インビトロでのPDE2阻害の測定
PDE2の阻害は、PDE1酵素に代えてPDE2酵素(ヒト組換え)を使用し、基質として蛍光−cAMPを使用し、該酵素を刺激するためにcGMP(1μM)を使用すること以外は、実施例3に記載と同様のアッセイを使用することによって測定され得る。
【0092】
別法として、PDE2阻害は、Boess et al., Neuropharmacology, Volume 47, Issue 7, December 2004, Pages 1081-1092(記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に記載のとおり、またはそれと同様に測定され得る。Boess et al.に記載の手順またはそれと同様の手順を用いて、例示化合物4B(Bay−60−7550)は、2.0nM(ウシ)および4.7nM(ヒト)のIC50値を有することが報告される。
【0093】
実施例6 脳内での一酸化窒素シグナル伝達に対するPDE1およびPDE2阻害剤の効果
動物: 動物の取り扱いおよび使用は、全て、NIHガイドラインに従って、コロンビア大学の動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)によって承認されたプロトコルに従う。雄性C57 BL/6マウス(7〜8週齢)をJackson Laboratoryから入手する。1つのケージにつき最大5匹までのマウスを収容し、標準的なPurina rodent chowおよび水を自由に摂取可能にして12時間明暗サイクル下に維持する。
【0094】
スライス調製:スライス調製は、下記のとおり、またはNishi et al., J. Neuroscience (2008) 28:10460-71(記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に記載と同様に、行うことができる。6〜8週齢の雄性C57BL/6マウスをJapan SLCから購入する。使用される全てのマウスは、ヘルシンキ宣言(Declaration of Helsinki)および米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって採用され公表されているGuide for the Care and Use of Laboratory Animalsに従って取り扱われ、詳細なプロトコルは久留米大学医学部の動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって承認されている。雄性C57BL/6マウスを断頭によって屠殺する。脳を素早く取り出し、氷冷酸素化クレブス−HCOバッファー[NaCl 124mM、KCl 4mM、NaHCO 26mM、CaCl 1.5mM、KHPO 1.25mM、MgSO 1.5mM、およびD−グルコース 10mM、pH7.4]中に入れる。従前に記載されているように(Nishi et al., PNAS (2005) 102:1199-1204)、振動刃ミクロトーム(vibrating blade microtome)、VT1000S(Leica Microsystems)を使用して、冠状スライス(350μm)を調製する。氷冷クレブス−HCOバッファー中にて該スライスから線条体を切り出す。
【0095】
スライス処理: 各スライスを、アデノシンデアミナーゼ(10μg/ml)を含有する新しいクレブス−HCOバッファー2mlが入っているポリプロピレンインキュベーションチューブ中に入れる。該スライスを95%O/5%COによる継続的酸素化条件下にて30℃で60分間プレインキュベートする。30分間プレインキュベートした後にバッファーを新しいクレブス−HCOバッファーと取り替える。スライスをPDE1阻害剤のみ、PDE2阻害剤のみ、PDE2阻害剤と併せたPDE1阻害剤、または対照(PDE1阻害剤もPDE2阻害剤も含まないDMSOビヒクル)で45分間処理する。1μMのPDE1阻害剤化合物(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−ピリジン−2−イル)−ベンジル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オン(実施例1)を使用する。0.1μMの2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−{(1R)−1−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−フェニルブチル}−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン(BAY60−7550または実施例4B)を使用してPDE2を遮断する。前処理に続いて、該スライスを、アデノシンデアミナーゼを含まない所定のクレブス中、5μMのNOドナー、ジエチルアンモニウム(Z)−1−(N,N−ジエチルアミノ)ジアゼン−1−イウム−1,2−ジオレート(DEA/NO)で4分間刺激する。DEA/NOは、cGMPレベルの用量依存性変化を引き起こす能力のために使用される。0.1N NaOHの貯蔵液中のDEA/NOを調製し、各スライスに使用する直前にクレブスバッファーで0.5μMまたは5μMに希釈する。刺激の直後に、該クレブスを除去して5%トリクロロ酢酸と取り替え、超音波処理する。サンプルを氷上で保存した後、4℃にて15,000×gで20分間遠心分離する。上清を環状ヌクレオチド酵素イムノアッセイのために確保しておき、沈殿しているタンパク質ペレットをレムリ(Laemmli)サンプルバッファー60μlに再懸濁させる。各々、使用するまで−80℃で貯蔵する。
【0096】
酵素イムノアッセイ: 確保しておいた上清を5倍容量のエチルエーテルで3回洗浄して、TCAを除去する。次に、該サンプルを室温で真空乾燥させる(Speedvac、Savant SPD111V)。cGMPまたはcAMP酵素イムノアッセイ(Cayman Chemical Co., Ann Arbor, MI)のための調製において、それらをEIAバッファー100μLに再懸濁させる。該サンプルをアセチル化し、キットの取扱説明書に従って添付されている標準と比較して分析する。比色アッセイの結果をSoftMax 4.8ソフトウエア(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)によって記録する。各データポイントをB/B%(100 × [(サンプルまたは標準OD − 平均非特異的結合) / (平均B − 平均非特異的結合)])に変換する。標準はプロットされ、4パラメータロジスティック方程式に適合する。サンプルの濃度は、Microsoft ExcelおよびGraphPad Prizmを使用して標準曲線から補間される。この実験の結果を図1に示す。この実験は、PDE1およびPDE2の阻害の組合せが刺激の条件下での線条体内のcGMPレベルに対する相加効果よりも大きいことを示す。低濃度のDEA/NO(0.5μM)ではPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤の効果は相加的であるが、最大のDEA/NO(5.0μM)では相加効果よりも明らかに大きく、阻害剤の併用によって得られるcGMPのレベルは各阻害剤単独の効果の合計よりも大きい。
本発明は、以下の態様および実施態様を含む。
[発明1]
(a)遊離形態または塩形態のPDE1阻害剤および(b)遊離形態または塩形態のPDE2阻害剤を含む製剤。
[発明2]
PDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−ピリジン−2−イル)−ベンジル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オン、または遊離形態または塩形態の(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−(6−フルオロピリジン−2−イル)フェニル)メチル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オンである、発明1記載の製剤。
[発明3]
PDE2阻害剤が、遊離形態または塩形態の2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−{(1R)−1−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−フェニルブチル}−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン(BAY60−7550)である、発明1または2記載の製剤。
[発明4]
遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤を医薬上許容される希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物。
[発明5]
該組成物が、PDE1治療剤およびPDE2治療剤が単一投与剤形である多剤混合型医薬組成物である、発明4記載の医薬組成物。
[発明6]
該組成物が、PDE1治療剤およびPDE2治療剤が別々の投与剤形である多剤遊離型医薬組成物である、発明4記載の医薬組成物。
[発明7]
遊離形態または眼科的に許容される塩形態のPDE1阻害剤およびPDE2阻害剤が、眼科的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは付随している、発明4〜6いずれか1項記載の医薬組成物。
[発明8]
PDE1阻害剤が、遊離形態または医薬上許容される塩形態の(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−ピリジン−2−イル)−ベンジル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オン、または遊離形態または医薬上許容される塩形態の(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−(6−フルオロピリジン−2−イル)フェニル)メチル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オンである、発明4〜7いずれか1項記載の医薬組成物。
[発明9]
PDE2阻害剤が、遊離形態または医薬上許容される塩形態の2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−{(1R)−1−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−フェニルブチル}−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン(BAY60−7550)である、発明4〜8いずれか1項記載の医薬組成物。
[発明10]
パーキンソン病、下肢静止不能振戦、ジスキネジア、ハンチントン病、アルツハイマー病、薬剤性運動障害、うつ状態、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、双極型疾患、不安、睡眠障害、ナルコレプシー、認知障害(例えば、学習、記憶、認識記憶、社会的相互作用および作業記憶)、認知症、トゥレット症候群、自閉症、脆弱X症候群、覚醒剤離脱、薬物依存、脳血管疾患、脳卒中、うっ血性心疾患、高血圧、肺高血圧症、肺動脈性高血圧症、性機能障害、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、自己免疫および炎症性疾患;女性性機能不全、運動性無月経、無排卵症、閉経、閉経期症状、月経前症候群、早期分娩、不妊症、不規則な月経周期、異常子宮出血、骨粗鬆症、多発性硬化症、前立腺肥大、前立腺癌、甲状腺機能低下症、エストロゲン誘導性子宮内膜増殖症またはエストロゲン誘導性子宮内膜癌、緑内障または眼内圧亢進、精神病(例えば、幻覚、偏執性妄想もしくは奇異な妄想のような精神病症状、または支離滅裂な会話および思考、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調様障害、精神障害、妄想性障害、および急性躁病エピソードおよび双極性障害におけるような躁病)、外傷性脳損傷、PDE1またはPDE2を発現する細胞中の低レベルのcAMPおよび/またはcGMP(またはcAMPおよび/またはcGMPシグナル伝達経路の阻害)によって特徴付けられる疾患または状態、および/またはドーパミンD1受容体シグナル伝達活性の低下によって特徴付けられる疾患または状態、プロゲステロンシグナル伝達の亢進によって軽減され得る疾患または状態のいずれかを治療する方法であって、該治療を必要とする患者へ発明4〜9いずれか1項記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、方法。
[発明11]
該状態が、パーキンソン病、統合失調症、ナルコレプシー、緑内障、女性性機能不全、認知障害(例えば、学習、記憶、認識記憶、社会的相互作用および作業記憶)、不安およびうつ状態からなる群から選択される、発明10記載の方法。
[発明12]
発明10〜11に記載の状態のいずれかの治療または予防的治療のための(例えば、医薬の製造における)発明1〜3いずれか1項記載の製剤または発明4〜9いずれか1項記載の医薬組成物の使用。
[発明13]
発明10〜11のいずれか1項記載の疾患または状態の治療に用いるための、発明4〜9いずれか1項記載の医薬組成物。
[発明14]
パーキンソン病、下肢静止不能振戦、ジスキネジア、ハンチントン病、アルツハイマー病、薬剤性運動障害、うつ状態、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、双極型疾患、不安、睡眠障害、ナルコレプシー、認知障害(例えば、学習、記憶、認識記憶、社会的相互作用および作業記憶)、認知症、トゥレット症候群、自閉症、脆弱X症候群、覚醒剤離脱、薬物依存、脳血管疾患、脳卒中、うっ血性心疾患、高血圧、肺高血圧症、肺動脈性高血圧症、性機能障害、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、自己免疫および炎症性疾患;女性性機能不全、運動性無月経、無排卵症、閉経、閉経期症状、月経前症候群、早期分娩、不妊症、不規則な月経周期、異常子宮出血、骨粗鬆症、多発性硬化症、前立腺肥大、前立腺癌、甲状腺機能低下症、エストロゲン誘導性子宮内膜増殖症またはエストロゲン誘導性子宮内膜癌、緑内障または眼内圧亢進、精神病(例えば、幻覚、偏執性妄想もしくは奇異な妄想のような精神病症状、または支離滅裂な会話および思考、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調様障害、精神障害、妄想性障害、および急性躁病エピソードおよび双極性障害におけるような躁病)、外傷性脳損傷、PDE1またはPDE2を発現する細胞中の低レベルのcAMPおよび/またはcGMP(またはcAMPおよび/またはcGMPシグナル伝達経路の阻害)によって特徴付けられる疾患または状態、および/またはドーパミンD1受容体シグナル伝達活性の低下によって特徴付けられる疾患または状態、プロゲステロンシグナル伝達の亢進によって軽減され得る疾患または状態のいずれかを治療する方法であって、該治療を必要とする患者へ(a)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE1阻害剤、および(b)遊離形態または医薬上許容される塩形態のPDE2阻害剤の有効量を投与することを含む、方法。
[発明15]
該状態が、パーキンソン病、統合失調症、ナルコレプシー、緑内障、女性性機能不全、認知障害(例えば、学習、記憶、認識記憶、社会的相互作用および作業記憶)、不安およびうつ状態からなる群から選択される、発明14記載の方法。
[発明16]
PDE1阻害剤が、遊離形態または医薬上許容される塩形態の(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−ピリジン−2−イル)−ベンジル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オン、または遊離形態または医薬上許容される塩形態の(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(フェニルアミノ)−2−((4−(6−フルオロピリジン−2−イル)フェニル)メチル)−シクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オンである、発明14または15記載の方法。
[発明17]
PDE2阻害剤が、遊離形態または医薬上許容される塩形態の2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−{(1R)−1−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−フェニルブチル}−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オン(BAY60−7550)である、発明14〜16いずれか1項記載の方法。

図1