特許第6696905号(P6696905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6696905ギアボックス及び当該ギアボックスを備えるタービンエンジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696905
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】ギアボックス及び当該ギアボックスを備えるタービンエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/32 20060101AFI20200511BHJP
   F01D 15/12 20060101ALI20200511BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20200511BHJP
   F02C 3/02 20060101ALI20200511BHJP
   F16H 1/20 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   F02C7/32
   F01D15/12
   F01D25/00 F
   F02C3/02
   F16H1/20
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-553338(P2016-553338)
(86)(22)【出願日】2015年2月16日
(65)【公表番号】特表2017-508915(P2017-508915A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】FR2015050372
(87)【国際公開番号】WO2015124857
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2018年1月16日
(31)【優先権主張番号】1451271
(32)【優先日】2014年2月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516247122
【氏名又は名称】サフラン・トランスミッション・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビエル,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】プリュネラ−ウサ,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブラント,ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ベクレル,サミュエル・レイモン・ジェルマン
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0290976(US,A1)
【文献】 特開昭51−101616(JP,A)
【文献】 特開2005−241006(JP,A)
【文献】 特開2008−157234(JP,A)
【文献】 米国特許第02803943(US,A)
【文献】 英国特許出願公告第00626036(GB,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0248900(US,A1)
【文献】 特表2012−516407(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0317991(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/32
F02C 7/36
F01D 15/12
F01D 25/00
F02C 3/02
F16H 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジンに付属された少なくとも1つの装置を駆動するためにタービンエンジンに固定されるギアボックスであって、ギアボックスは、
筐体と、
タービンエンジンのラジアルシャフトと係合することが可能な動力取出部材(1)と、
筐体の中に位置し、装置の少なくとも1つの回転シャフトに動力取出部材(1)の回転運動を伝達することが可能な、1つの運動連鎖(8)であって、運動連鎖(8)は第一末端(12)および第二末端(13)を備える、運動連鎖(8)と、
を備え、
動力取出部材(1)が運動連鎖(8)の中に位置する収束軸を有する歯車によって運動連鎖(8)に連結されており、
前記運動連鎖(8)が、2つの末端(12、13)を有する少なくとも1つの中央シャフト(10)からなり、前記中央シャフト(10)は、少なくとも1つの中間歯車(9)を通じて装置の少なくとも1つの回転シャフト(11)に動力取出部材(1)の運動を伝達することが可能であり、動力取出部材(1)は、中央シャフト(10)の第一末端(12)と第二末端(13)との間に位置する収束軸を有する歯車によって、中央シャフト(10)に連結されており、
中央シャフト(10)の第一末端(12)と第二末端(13)との間に位置する収束軸を有する歯車は、収束軸を有する第一歯車と、収束軸を有する第二歯車とからなり、
中央シャフト(10)は、第一部品(15)および第二部品(16)からなり、
動力取出部材(1)は、収束軸を有する第一歯車によって中央シャフト(10)の第一部品(15)に、および収束軸を有する第二歯車によって中央シャフト(10)の第二部品(16)に連結されていることを特徴とする、ギアボックス。
【請求項2】
収束軸を有する第一歯車が、収束軸を有する第二歯車とは異なる減速比を呈する、請求項1に記載のギアボックス。
【請求項3】
タービンエンジンに付属された少なくとも1つの装置を駆動するためにタービンエンジンに固定されるギアボックスであって、ギアボックスは、
1つの筐体と、
タービンエンジンのラジアルシャフトと係合することが可能な1つの動力取出部材(1)と、
筐体の中に位置し、装置の少なくとも1つの回転シャフトに動力取出部材(1)の回転運動を伝達することが可能な、2つの運動連鎖(2、3)であって、運動連鎖(2、3)は第一末端(4、5)および第二末端(6、7)を備える、2つの運動連鎖(2、3)と、
を備え、
動力取出部材(1)は、運動連鎖の中に位置する収束軸を有する歯車によって運動連鎖(2、3)に連結されており、
前記ギアボックスは2つの運動連鎖(2、3)を備え、各運動連鎖(2、3)が、装置の少なくとも1つの回転シャフトに動力取出部材(1)の回転運動を伝達することが可能であり、各運動連鎖(2、3)は第一末端(4、5)および第二末端(6、7)を備え、動力取出部材(1)は、各運動連鎖(2、3)の第一末端(4、5)および第二末端(6、7)の間に位置する収束軸を有する歯車によって、各運動連鎖(2、3)に連結されている、ギアボックス。
【請求項4】
収束軸を有する2つの歯車が異なる減速比を呈する、請求項3に記載のギアボックス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のギアボックスを備えるタービンエンジン。
【請求項6】
タービンエンジンが高圧シャフトを備え、動力取出部材は高圧シャフトに連結されている、請求項5に記載のタービンエンジン。
【請求項7】
低圧シャフトをさらに備え、動力取出部材が低圧シャフトに連結されている、請求項5に記載のタービンエンジン。
【請求項8】
中間シャフトをさらに備え、動力取出部材が中間シャフトに連結されている、請求項5に記載のタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補機ギアボックスまたはAGBとも呼ばれる、タービンエンジン用装置を駆動するためのギアボックスに関する。このような補機ギアボックスは、タービンエンジンから出るラジアルシャフトを通じてタービンエンジンから生じる運動を伝達し、ポンプ、発電機など、タービンエンジンに付属の装置の様々な補機またはアイテムにこれを伝達するように意図されており、これらはタービンエンジンの動作にとって、またはこのタービンエンジンによって推進される航空機の機材のその他のアイテムにとって、必須である。補機ギアボックスはまた、始動段階の間に装置からエンジンに動力を伝達させる。伝達は、連続歯車からなる運動連鎖によって実現される。
【背景技術】
【0002】
仏国特許出願公開第1258196号明細書は、タービンエンジンに付属された少なくとも1つの装置を駆動するために、タービンエンジンに固定されるギアボックスを記載している。このギアボックスは、図1により詳細に示されている。これは、
タービンエンジンのラジアルシャフトと係合するように意図される動力取出部材1と、
筐体44と、
筐体の中に位置する2つの運動連鎖2、3と、
を備える。各運動連鎖2、3は、互いに連結した歯車を備える。各歯車は、装置の回転シャフトが回転するように、これを駆動させる。2つの運動連鎖2、3は、非平行平面内に位置する。動力取出部材1は、前記運動連鎖の末端4、5のうちの1つにおいて、各運動連鎖と接続している。
【0003】
仏国特許出願公開第1359910号明細書は、タービンエンジンに付属された少なくとも1つの装置を駆動するために、タービンエンジンに固定される別のタイプのギアボックスを記載している。このギアボックスは、
タービンエンジンのラジアルシャフトと係合するように意図される動力取出部材と、
筐体と、
筐体の中に位置する運動連鎖と、
を備える。運動連鎖は、装置の少なくとも1つの回転シャフトが回転するように、回転シャフトにおいて駆動可能な少なくとも1つの歯車に動力取出部材の運動を伝達する中央シャフトを備える。動力取出部材は、中央シャフトの末端のうちの1つにおいて、中央シャフトに接続されている。
【0004】
しかしながら、これら2つの実施形態において、動力取出は制限されており、これはタービンエンジンのすべてのシャフト上で実現されるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許出願公開第1258196号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第1359910号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特にタービンエンジンの高圧シャフト上で、その低圧シャフト上で、またはその中間シャフト上で、動力取出を実現可能にすることによって、動力取出の実現する上でより高い自由度を提供するタービン機械に付属された少なくとも1つの装置を駆動するために、タービン機械に固定されるギアボックスを提案することによって、従来技術の不都合を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これを実現するために、本発明の第一の態様によれば、タービンエンジンに付属された少なくとも1つの装置を駆動するためにタービンエンジンに固定されるギアボックスが提供され、ギアボックスは、
筐体と、
タービンエンジンのラジアルシャフトと係合することが可能な動力取出部材と、
装置の少なくとも1つの回転シャフトに動力取出部材の回転運動を伝達することが可能な筐体の中に位置する少なくとも1つの運動連鎖であって、運動連鎖は第一末端および第二末端を備え、動力取出部材は運動連鎖の中に位置する収束軸を有する歯車によって運動連鎖に連結されている、少なくとも1つの運動連鎖と、
を備える。
【0008】
このため、本発明は、運動連鎖の一端では動力取出部材はもはや運動連鎖に連結されず、厳密に運動連鎖の2つの末端の間の一点で連結されることを、提案する。動力取出部材が運動連鎖の中に移動させられるという事実は、タービンエンジンシャフト上の動力取出を実現するための自由度、したがってギアボックスの実装の自由度を、高めることを可能にする。具体的には航空機動力取出は、今やインターコンプレッサ筐体領域内ではなく、たとえば中間シャフト上、またはタービンと燃焼チャンバとの間、または圧縮機とタービンとの間など、別のエンジンシャフト位置において実現されることが可能である。
【0009】
ギアボックスはまた、個別に、または技術的に可能なすべての組み合わせにしたがって解釈される、以下の特徴の1つ以上を呈してもよい。
【0010】
「コラムギアボックス」として知られる第一の実施形態によれば、運動連鎖は、少なくとも1つの中間歯車を通じて装置の少なくとも1つの回転シャフトに動力取出部材の運動を伝達することが可能な少なくとも1つの中央シャフトを備え、中央シャフトは2つの末端を備え、動力取出部材は、中央シャフトの第一末端と第二末端との間に位置する収束軸を有する歯車によって、中央シャフトに連結されている。このためこの実施形態において、動力取出部材の運動は中央シャフトを通じて装置の回転シャフトに伝達されるが、これは空間を縮小し、ギアボックスのレイアウトの自由度を高めることを可能とする。
【0011】
有利なことに、動力取出部材は、中央シャフトのものとともに割線を形成する方向に沿って延在する。
【0012】
有利なことに、中央シャフトは第一および第二部品を備え、動力取出部材は収束軸を有する第一歯車によって第一部品に連結され、収束軸を有する第二歯車によって第二部品に連結されている。これは、この場合の動力取出部材の移動が、中央シャフトを互いに独立して中央シャフトに連結される2つの部品に分割させることを、意味する。
【0013】
この場合、収束軸を有する第一歯車は好ましくは、中央シャフトの2つの部品が異なる速度で回転するように、収束軸を有する第二歯車とは異なる減速比を呈する。このため低速装置は中央シャフトの2つの部品のうちの1つに連結されてもよく、その一方で高速装置は中央シャフトの他方の部品に連結されて、運動連鎖を最適化させる。
【0014】
「Vギアボックス」として知られる第二の実施形態によれば、ギアボックスは2つの運動連鎖を備え、各運動連鎖は動力取出部材の回転運動を装置の少なくとも1つの回転シャフトに伝達することが可能であり、各運動連鎖は第一末端および第二末端を備え、動力取出部材は、各運動連鎖の第一および第二末端の間に位置する収束軸を有する歯車によって、各運動連鎖に連結されている。
【0015】
有利なことに、各運動連鎖は歯車列を備え、2つの歯車列は割線を形成する方向に延在している。
【0016】
異なる実施形態によれば、収束軸を有する2つの歯車列は、異なるかまたは等しい減速比を呈してもよい。
【0017】
本発明の第二の態様は、上記請求項の1つによるギアボックスを有するタービンエンジンに関する。
【0018】
異なる実施形態によれば、
タービンエンジンは高圧シャフトを備え、動力取出部材は高圧シャフトに連結されており、
タービンエンジンは低圧シャフトを備え、動力取出部材は低圧シャフトに連結されており、
タービンエンジンは中間シャフトを備え、動力取出部材は中間シャフトに連結されており、
本発明のその他の特徴および利点は、以下の添付図面を参照して、後述の詳細な説明を読めば、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来技術のギアボックスの概略斜視図である。
図2】本発明の第一の実施形態によるギアボックスの概略斜視図である。
図3】本発明の第二の実施形態によるギアボックスの概略斜視図である。
図4】本発明の別の実施形態によるギアボックスの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
明確さを改善するため、すべての図において、同一または類似の要素は同じ参照符号で指定される。
【0021】
図2は、「Vギアボックス」として知られる本発明の一実施形態によるギアボックスを示す。ギアボックスは、
筐体44と、
動力取出部材1と、
第一および第二運動連鎖2、3と、
を備える。各運動連鎖2、3は中間歯車列22、23を備える。各中間歯車列22、23は好ましくは、装置の回転シャフトが回転するように、これを駆動することが可能である。各運動連鎖2、3は、第一末端4、5および第二末端6、7を備える。
【0022】
動力取出部材1が各運動連鎖とその末端の1つで連結している従来技術のギアボックスとは異なり、この実施形態では、動力取出部材1は、この運動連鎖の中に位置する領域14において、各運動連鎖2、3に連結されている。言い換えると、領域14は厳密に各運動連鎖2、3の2つの末端4、6と5、7との間に位置している。より正確には、動力取出部材1は好ましくは、運動連鎖の2つの中間歯車の間に挿入された、これらの中間歯車22、23のうちの1つにおいて、各運動連鎖に連結されている。動力取出部材1の位置もまた、連結されているタービンエンジンのラジアルシャフトに応じて選択されることが可能である。
【0023】
動力取出部材1は好ましくは、収束軸を有する歯車24によって、各運動連鎖に連結されている。一実施形態によれば、動力取出部材1を第一運動連鎖2に接合する収束軸を有する歯車24は、動力取出部材1を第二運動連鎖3に連結するものとは異なる減速比を呈することができる。このため低速装置は2つの運動連鎖のうちの1つに接続されてもよく、その一方で高速装置は他方に接続される。
【0024】
図3は、「コラムギアボックス」として知られる、本発明の別の実施形態によるギアボックスを示す。
【0025】
この実施形態において、ギアボックスは、
筐体25と、
動力取出部材1と、
運動連鎖8と、
を備える。
【0026】
運動連鎖8は中間歯車9に連結された中央シャフト10を備え、各中間歯車9はそれ自体が装置の回転シャフト11に連結されている。中央シャフトは2つの末端12、13を備える。中央シャフト10は、収束軸を有する歯車26によって動力取出部材1に連結されている。このため動力取出部材1は、収束軸を有する歯車26を通じて、その回転運動を中央シャフト10に伝達する。中央シャフト10は、中間歯車9を通じてその回転運動を回転シャフト11に伝達する。一実施形態によれば、動力取出および装置歯車への伝達を実現するために、同じものが使用可能である。この場合、収束軸を有する歯車26および中間歯車9は、全く同じ歯車である。
【0027】
この実施形態によるギアボックスは、動力取出部材1が、従来技術の実施形態とは異なり、中央シャフト10の末端12にはもはや連結されておらず、中央シャフトの2つの末端12、13の間に位置する領域において中央シャフト10に連結されているという点で、特に際立っている。より正確には、動力取出部材1は好ましくは、2つの中間歯車9の間に位置する領域14において中央シャフト10に連結されている。
【0028】
図4を参照すると、中央シャフト10はまた、互いに無関係に動力取出部材1に連結された2つの部品15、16で作られることも可能であり、中央シャフト10の第一部品15は収束軸を有する第一歯車27によって動力取出部材1に連結され、中央シャフト10の第二部品16は収束軸を有する第二歯車28によって動力取出部材に連結されている。2つの部品15、16は好ましくは揃えられている。収束軸を有する第一歯車27は、中央シャフト10の第一部品15が第二部品16とは異なる速度で回転するように、収束軸を有する第二歯車28とは異なる減速比を呈してもよい。このため低速装置は2つの部品15、16のうちの1つに連結されてもよく、その一方で高速装置は他方の部品に連結される。
【0029】
当然ながら、本発明は、図面を参照して説明された実施形態に限定されるものではなく、本発明の関連から逸脱しない代替案が想定されてもよい。
図1
図2
図3
図4