【文献】
金子 雅志 他,「高可用サーバクラスタにおけるシステム更新方式の検討」,電子情報通信学会技術研究報告,社団法人電子情報通信学会,2009年11月13日,第109巻 第276号,pp.5−10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
サーバ間でセッション維持に必要なデータを共有しているN−Active構成のサーバのソフトウェアのアップデートを行うアップデート管理装置と、前記サーバに対する処理要求をいずれかのサーバへ振り分けるアップデート振分装置とを備えるクラスタシステムであって、
前記アップデート管理装置は、
前記ソフトウェアのアップデートの指示がなされた場合に、前記ソフトウェアのアップデートの対象となるサーバが提供しているサービスの終了に応じて、前記サーバが用いているソフトウェアをアップデートするサーバ管理部、
を備え、
前記アップデート振分装置は、
前記ソフトウェアのアップデート中のサーバに対する処理要求を、前記処理要求に基づいて、ソフトウェアのアップデートがなされた新サーバ、又は、ソフトウェアのアップデートがなされていない旧サーバのいずれで処理すべきかを判定し、いずれかのサーバに振り分ける振分部、
を備え、
前記振分部は、前記処理要求が破棄してはならない要求であり、前記処理要求を処理したサーバがある場合には、前記処理要求を処理したサーバに前記処理要求を振り分け、前記処理要求が破棄してはならない要求であり、前記処理要求を処理したサーバがない場合には、前記処理要求を旧サーバに振り分けるクラスタシステム。
サーバ間でセッション維持に必要なデータを共有しているN−Active構成のサーバのソフトウェアのアップデートを行うアップデート管理装置と、前記サーバに対する処理要求をいずれかのサーバへ振り分けるアップデート振分装置とを備えるクラスタシステムが行うアップデート方法であって、
前記アップデート管理装置が、前記ソフトウェアのアップデートの指示がなされた場合に、前記ソフトウェアのアップデートの対象となるサーバが提供しているサービスの終了に応じて、前記サーバが用いているソフトウェアをアップデートするサーバ管理ステップ、
前記アップデート振分装置が、前記ソフトウェアのアップデート中のサーバに対する処理要求を、前記処理要求に基づいて、ソフトウェアのアップデートがなされた新サーバ、又は、ソフトウェアのアップデートがなされていない旧サーバのいずれで処理すべきかを判定し、いずれかのサーバに振り分ける振分ステップを有し、
前記振分ステップにおいて、前記処理要求が破棄してはならない要求であり、前記処理要求を処理したサーバがある場合には、前記処理要求を処理したサーバに前記処理要求を振り分け、前記処理要求が破棄してはならない要求であり、前記処理要求を処理したサーバがない場合には、前記処理要求を旧サーバに振り分けるアップデート管理方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明におけるクラスタシステム100のシステム構成を表す構成図である。クラスタシステム100には、外部ネットワーク1を介してクライアント装置10が接続される。外部ネットワーク1は、例えば、インターネットを用いて構成されてもよい。クライアント装置10は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置を用いて構成される。クライアント装置10は、クラスタシステム100が提供するサービスを利用するユーザが所有する通信装置である。クライアント装置10は、クラスタシステム100に対してサービスに対する処理要求を送信する。
【0018】
クラスタシステム100は、複数のアップデート振分装置20−1〜20−M(Mは2以上の整数)、複数のサーバ30−1〜30−N(Nは2以上の整数)及びアップデート管理装置40を備える。クラスタシステム100は、いわゆるN−Active構成のサーバである。以下の説明において、アップデート振分装置20−1〜20−Mを区別しない場合にはアップデート振分装置20と記載する。また、以下の説明において、サーバ30−1〜30−Nを区別しない場合にはサーバ30と記載する。アップデート振分装置20と、サーバ30は、内部ネットワーク50を介して通信可能に接続される。
【0019】
また、アップデート振分装置20及びサーバ30と、アップデート管理装置40とは、ネットワーク60を介して通信可能に接続される。内部ネットワーク50及びネットワーク60は、どのようなネットワークを用いて構成されてもよい。例えば、内部ネットワーク50及びネットワーク60は、LAN(Local Area Network)を用いて構成されてもよい。
【0020】
アップデート振分装置20は、クライアント装置10からの処理要求を該当するサーバ30に振り分ける。例えば、アップデート振分装置20は、処理要求を、ソフトウェアアップデート前のサーバ30(以下「旧サーバ」という。)、又は、ソフトウェアアップデート後のサーバ30(以下「新サーバ」という。)に振り分ける。アップデート振分装置20による処理要求の振分処理についての具体的な方法については後述する。
【0021】
サーバ30は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置を用いて構成される。サーバ30は、クライアント装置10に対してサービスを提供する。サービスとは、例えば、電話のようなライフラインサービス等である。本実施形態では、全てのサーバ30が同一のサービス(例えば、ライフラインサービス)を提供するサーバである場合を例に説明するが、クラスタ毎に異なるサービスを提供するサーバ30であってもよい。なお、N−Active構成のサーバは、セッション維持に必要なデータがサーバ間で共有されている。
【0022】
アップデート管理装置40は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置を用いて構成される。アップデート管理装置40は、アップデート振分装置20及びサーバ30を管理する。例えば、アップデート管理装置40は、サーバ30で用いるソフトウェアのアップデート指示が入力されると、ソフトウェアのアップデートを行う。この際、アップデート管理装置40は、アップデートの対象となるサーバ30で処理中のサービスが終了した時点で、該当サーバ30で用いるソフトウェアをアップデートする。アップデートの具体的な方法については後述する。
【0023】
図2は、アップデート振分装置20の機能構成を表す概略ブロック図である。
アップデート振分装置20は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、負荷分散処理プログラムを実行する。負荷分散処理プログラムの実行によって、アップデート振分装置20は、振分情報記憶部201、更新部202、振分部203を備える装置として機能する。なお、アップデート振分装置20の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、負荷分散処理プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、負荷分散処理プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0024】
振分情報記憶部201は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。振分情報記憶部201は、振分情報ファイルを記憶する。振分情報ファイルとは、クライアント装置10からの処理要求を振り分ける際に用いられるファイルである。振分情報ファイルには、サーバ名と、ファイル新旧表示とが対応付けられている。サーバ名は、サーバ30を特定するための情報である。ファイル新旧表示は、ソフトウェアのアップデートが必要となった場合において、サーバ30が新サーバであるか旧サーバであるかを示す情報が登録される。振分情報ファイルにおいて、サーバ30が新サーバである場合にはファイル新旧表示の項目に“新”が登録され、サーバ30が旧サーバである場合にはファイル新旧表示の項目に“旧”が登録される。なお、ソフトウェアのアップデートが必要ない場合には、ファイル新旧表示の項目には“−”が登録される。
【0025】
更新部202は、アップデート管理装置40からの指示に従って振分情報ファイルを更新する。例えば、更新部202は、振分情報ファイル内へのサーバ30の登録、削除及びファイル新旧表示の項目内の変更を行う。
振分部203は、クライアント装置10から処理要求が受信された場合に、振分情報ファイルを参照して、処理要求を該当するサーバ30に振り分ける。
【0026】
図3は、アップデート管理装置40の機能構成を表す概略ブロック図である。
アップデート管理装置40は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、管理プログラムを実行する。管理プログラムの実行によって、アップデート管理装置40は、コマンド処理部401、サーバ情報記憶部402、サーバ管理部403を備える装置として機能する。なお、アップデート管理装置40の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、管理プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、管理プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0027】
コマンド処理部401は、クラスタシステム100に対するサーバの追加又は削除のコマンド、ソフトウェアのアップデートのコマンド及びサーバ30のサービス開始又はサービス終了のコマンドを受け付け、受け付けたコマンドに応じた処理を行う。
サーバ情報記憶部402は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。サーバ情報記憶部402は、サーバ情報ファイルを記憶する。サーバ情報ファイルとは、クラスタシステム100に備えられるサーバ30に関する情報が登録されたファイルである。
【0028】
図4は、サーバ情報ファイルの具体例を示す図である。
サーバ情報ファイルは、複数のレコードを複数有する。レコードは、サーバ名、サービス及びサーバ負荷の各値を有する。サーバ名の値は、サーバ30を特定するための情報である。サービスの値は、サーバ30が提供しているサービス名を表す。サーバ負荷の値は、サーバ30の負荷の状況を表す。
【0029】
図4に示される例では、サーバ情報ファイルには4つのサーバ名が登録されている。これらのサーバ名は、“サーバA”、“サーバB”、“サーバC”及び“サーバD”である。
図4において、サーバ情報ファイルの最上段に記録されているレコードは、サーバ名の値が“サーバA”、サービスの値が“ライフラインサービス”、サーバ負荷の値が“○○”である。すなわち、サーバ名“サーバA”が、“ライフラインサービス”を提供していて、現在のサーバの負荷が“○○”であることが表されている。なお、サーバ情報ファイルの構成は、
図4に示す構成に限られず、適宜必要な情報が追加されてもよい。
【0030】
図3に戻って、アップデート管理装置40の説明を続ける。
サーバ管理部403は、サーバ30を管理する。例えば、サーバ管理部403は、コマンド処理部401に入力されたコマンドに従って、サーバ30の追加又は削除、サーバ30のサービス開始又はサービス終了、サーバ30が提供するサービスの変更等を行う。また、サーバ管理部403は、所定のタイミングで、サーバ30の稼働状態を監視し、サーバ30の負荷を取得する。サーバ管理部403は、取得した負荷を、サーバ情報ファイルに登録する。所定のタイミングとは、予め設定されたタイミングであってもよいし、コマンドが入力されたタイミングであってもよいし、その他のタイミングであってもよい。
【0031】
次に、
図5を用いて、本実施形態におけるソフトウェアのアップデートの方法について説明する。
図5は、本実施形態におけるソフトウェアのアップデートの方法について説明するための図である。なお、
図5では、ソフトウェアのアップデートの方法について、振分情報ファイルを用いて説明する。
図5において、振分情報ファイルには4台のサーバ30(サーバ名:“A”サーバ、“B”サーバ、“C”サーバ及び“D”サーバ)を示す情報が登録されている。
【0032】
図5(A)は、振分情報ファイルのソフトウェアのアップデート前の状態を示す。例えば、
図5(A)の状態を初期状態とする。
図5(A)に示す例では、ソフトウェアのアップデートが必要となってしない状態であるため、4台全てのサーバ30に対してファイル新旧表示の項目には“−”が登録されている。
【0033】
ソフトウェアのアップデートが必要になった場合、すなわちソフトウェアのアップデートのコマンドがアップデート管理装置40に入力された場合、コマンド処理部401はソフトウェアのアップデートが必要である旨を示す通知(以下「アップデート要求」という。)をアップデート振分装置20に送信する。また、コマンド処理部401は、ソフトウェアのアップデートを実行する旨を示す通知(以下「アップデート実行要求」という。)をサーバ管理部403に送信する。アップデート要求には、アップデートの対象となるソフトウェアを用いているサーバ30のサーバ名が含まれる。
図5では、アップデート要求に、4台のサーバ30(サーバ名:“A”サーバ、“B”サーバ、“C”サーバ及び“D”サーバ)のサーバ名が含まれているとする。アップデート実行要求には、アップデートの対象となるソフトウェアを用いているサーバ30のサーバ名と、アップデートするためのソフトウェアが含まれる。
更新部202は、アップデート管理装置40からアップデート要求を受信すると、振分情報ファイルを参照し、アップデート要求に含まれるサーバ名に該当するサーバ30のファイル新旧表示の項目を“旧”に更新する。この処理後の振分情報ファイルの一例が
図5(B)である。
【0034】
次に、サーバ管理部403は、アップデート実行要求に含まれるサーバ名に該当するサーバ30の負荷を監視し、負荷が所定の閾値以下になったサーバ30を停止する。ここでは、“D”サーバが閾値以下であったとする。この場合、サーバ管理部403は、“D”サーバを停止する。その後、サーバ管理部403は、コマンド処理部401を介して、サーバ30を停止したことを示す通知(以下「停止要求」という。)をアップデート振分装置20に送信する。停止要求には、停止したサーバ30のサーバ名が含まれる。
図5では、停止要求に、“D”サーバを示す情報が含まれているとする。
更新部202は、アップデート管理装置40から停止要求を受信すると、振分情報ファイルを参照し、停止要求に含まれるサーバ名に該当するサーバ30を振分情報ファイルから削除する。例えば、更新部202は、“D”サーバに関する情報を含むレコードを振分情報ファイルから削除する。この処理後の振分情報ファイルの一例が
図5(C)である。
【0035】
次に、サーバ管理部403は、アップデート実行要求に含まれるソフトウェアを用いて、停止したサーバが用いているソフトウェアをアップデートする。例えば、サーバ管理部403は、“D”サーバが用いているソフトウェアをアップデートする。アップデートが完了した後、サーバ管理部403は、コマンド処理部401を介して、サーバ30が用いているソフトウェアのアップデートが完了したことを示す通知(以下「完了通知」という。)をアップデート振分装置20に送信する。完了通知には、アップデートが完了したサーバ30のサーバ名が含まれる。
図5では、完了通知に、“D”サーバを示す情報が含まれているとする。
【0036】
更新部202は、アップデート管理装置40から完了通知を受信すると、振分情報ファイルに、完了通知に含まれるサーバ名を新たに登録する。この際、更新部202は、新たに登録したサーバ30のファイル新旧表示の項目に“新”を登録する。この処理では、更新部202は、振分情報ファイルのサーバ名に“D”サーバ、ファイル新旧表示の項目に“新”を登録する。この処理後の振分情報ファイルの一例が
図5(D)である。このとき以降にアップデート振分装置20で受信したクライアントからの処理要求は、後述する振り分け方法に従いサーバ30に処理を振り分ける。
【0037】
サーバ管理部403は、上記のように、サーバ30の負荷の低下に伴い順次サーバ30を停止したのち、ソフトウェアのアップデートを行う。この処理を繰り返すことによって、最後に最低1台以上のサーバ30のファイル新旧表示の項目が“旧”の状態となる。
図5(E)の例では、“A”サーバのみがファイル新旧表示の項目が“旧”である。ファイル新旧表示の項目が“旧”のサーバでの処理が終了した時点、もしくは、手動等により強制的にファイル新旧表示の項目が“旧”のサーバでの処理を終了させた時点で、サーバ管理部403は最後に残った“A”サーバを停止する。その後、サーバ管理部403は、コマンド処理部401を介して、停止要求をアップデート振分装置20に送信する。この処理における停止要求には、“A”サーバを示す情報が含まれている。
更新部202は、アップデート管理装置40から停止要求を受信すると、振分情報ファイルを参照し、停止要求に含まれるサーバ名に該当するサーバ30を振分情報ファイルから削除する。例えば、更新部202は、“A”サーバに関する情報を含むレコードを振分情報ファイルから削除する。この処理後の振分情報ファイルの一例が
図5(F)である。
【0038】
次に、サーバ管理部403は、アップデート実行要求に含まれるソフトウェアを用いて、停止したサーバが用いているソフトウェアをアップデートする。例えば、サーバ管理部403は、“A”サーバが用いているソフトウェアをアップデートする。アップデートが完了した後、サーバ管理部403は、コマンド処理部401を介して、完了通知をアップデート振分装置20に送信する。この処理における完了通知には、“A”サーバを示す情報が含まれているとする。
更新部202は、アップデート管理装置40から完了通知を受信すると、振分情報ファイルに、完了通知に含まれるサーバ名を新たに登録する。この際、更新部202は、新たに登録したサーバ30のファイル新旧表示の項目に“新”を登録する。この処理では、更新部202は、振分情報ファイルのサーバ名に“A”サーバ、ファイル新旧表示の項目に“新”を登録する。この処理後の振分情報ファイルの一例が
図5(G)である。
以上の処理により、振分情報ファイルのファイル新旧表示の項目が全て“新”となる。これでアップロードが終了する。その後、振分情報記憶部201は、振分情報ファイルを初期状態に更新する。この処理後の振分情報ファイルの一例が
図5(H)である。
【0039】
図6〜9は、本実施形態におけるアップデート振分装置20の振分処理の流れを示すフローチャートである。
振分部203は、クライアント装置10から処理要求が受信されると、振分情報ファイルを参照し、ファイル新旧表示の項目が“−”もしくは全て“旧”であるか否か判定する(ステップS101)。ファイル新旧表示の項目が“−”もしくは全て“旧”である場合(ステップS101−YES)、振分部203は通常の負荷分散処理(ラウンドロビン等)を行う(ステップS102)。その後、アップデート振分装置20は
図6の処理を終了する。
【0040】
一方、ファイル新旧表示の項目が“−”、又は、一部が“旧”、又は、全てが“新”である場合(ステップS101−NO)、振分部203は処理要求が、一貫性が必要な一連の処理(例えば、セッション維持が必要な処理要求)のうち最初の要求(例えば、SIP(Session Initiation Protocol)プロトコルのinvite)であるか否か判定する(ステップS103)。処理要求が最初の要求である場合(ステップS103−YES)、振分部203はファイル新旧表示の項目が“新”のサーバ30(新サーバ)に対して通常の負荷分散処理を行う(ステップS104)。
【0041】
一方、処理要求が最初の要求ではない場合(ステップS103−NO)、振分部203は処理要求が、セッション維持が不要な処理の要求であるか否か判定する(ステップS105)。セッション維持が不要な処理の要求である場合(ステップS105−YES)、振分部203はステップS104の処理を行う。
一方、セッション維持が不要な処理の要求ではない場合、すなわちセッション維持が必要な処理の要求である場合(ステップS105−NO)、振分部203は処理要求を破棄してよい場合か否かを判定する(ステップS106)処理要求を破棄してよい場合(ステップS106−YES)、振分部203は処理要求を新サーバに負荷分散処理を行う(ステップS107)。ここで、セッション維持が必要な処理の要求だが、処理要求を破棄してよい場合とは、例えばSIPプロトコルのConfirmed Daialogを呼救済とした場合でのACK以前の処理要求である。
【0042】
また、ステップS106の処理において、処理要求を破棄してはならない場合(ステップS106−NO)、振分部203は前回の処理要求時に処理したサーバ30の情報(例えば、SIPプロトコルのRecord-Routeヘッダ)と一致するサーバ30があるか否か判定する(ステップS108)。前回の処理要求時に処理したサーバ30がある場合(ステップS108−YES)、振分部203は前回処理したサーバ30に処理要求を振り分ける(ステップS109)。その後、振分部203は、前回処理したサーバ30に前回処理した情報があるか否か判定する(ステップS110)。前回処理したサーバ30に前回処理した情報がある場合(ステップS110−YES)、アップデート振分装置20は振分処理を終了する。例えば、振分部203は、前回処理したサーバ30から処理要求を処理することができない旨の通知を取得しなかった場合に前回処理したサーバ30に前回処理した情報があると判定する。
一方、前回処理したサーバ30に前回処理した情報がない場合(ステップS110−NO)、振分部203はファイル新旧表示の項目が異なる内容のサーバ30に負荷分散処理する(ステップS111)。例えば、振分部203は、前回処理したサーバ30から処理要求を処理することができない旨の通知を取得した場合に前回処理したサーバ30に前回処理した情報がないと判定する。
【0043】
次に、振分部203は、ファイル新旧表示の項目が異なる内容のサーバ30に前回処理した情報があるか否か判定する(ステップS112)。ファイル新旧表示の項目が異なる内容のサーバ30に前回処理した情報がある場合(ステップS112−YES)、アップデート振分装置20は振分処理を終了する。
一方、ファイル新旧表示の項目が異なる内容のサーバ30に前回処理した情報がない場合(ステップS112−NO)、振分部203は処理要求を破棄する(ステップS113)。その後、アップデート振分装置20は振分処理を終了する。
【0044】
また、ステップS108の処理において、前回の処理要求時に処理したサーバ30がない場合(ステップS108−NO)、振分部203は旧サーバに負荷分散処理を行う(ステップS114)。その後、振分部203は、ファイル新旧表示の項目が“旧”のサーバ30に前回処理した情報があるか否か判定する(ステップS115)。ファイル新旧表示の項目が“旧”のサーバ30に前回処理した情報がある場合(ステップS115−YES)、アップデート振分装置20は振分処理を終了する。
一方、ファイル新旧表示の項目が“旧”のサーバ30に前回処理した情報がない場合(ステップS115−NO)、振分部203は新サーバ30に負荷分散処理する(ステップS116)。
【0045】
その後、振分部203は、ファイル新旧表示の項目が“新”のサーバ30に前回処理した情報があるか否か判定する(ステップS117)。ファイル新旧表示の項目が“新”のサーバ30に前回処理した情報がある場合(ステップS117−YES)、アップデート振分装置20は振分処理を終了する。
一方、ファイル新旧表示の項目が“新”のサーバ30に前回処理した情報がない場合(ステップS117−NO)、振分部203は処理要求を破棄する(ステップS118)。その後、アップデート振分装置20は振分処理を終了する。
【0046】
以上のように構成されたクラスタシステム100では、アップデート管理装置40が、アップデート前のサーバ30で処理中のサービスが終了した時点で、該当サーバ30をアップデートする。これにより、データ引継処理を削減することができる。また、アップデート振分装置20が、アップデート中のサーバ30に対する処理要求を新サーバ又は旧サーバのいずれで処理すべきかを判断し、該当するサーバ30に振り分ける。したがって、データ引継処理に要するコストを削減することができる。そのため、クラスタシステムにおいて、ソフトウェアのアップデートを行う際に要する開発コストを削減することが可能となる。
【0047】
振分部203は、処理要求が破棄してよい要求ではなく、処理要求を処理したサーバ30がある場合には、処理要求を処理したサーバ30に処理要求を振り分け、処理要求が破棄してよい要求ではなく、処理要求を処理したサーバ30がない場合には、処理要求を旧サーバに振り分ける。
【0048】
<変形例>
本実施形態におけるクラスタシステム100において、IaaS等でサーバプールにリソースの余裕がある場合は、ソフトウェアのアップデートを行う際に別のサーバリソースを用いてもよい。その場合は、運用中のサーバ台数をN台とした場合、アップデート用として追加で1〜N台のサーバ30が必要となる。アップデート用として追加でN台のサーバを用意した場合のアップデート方法について
図10を用いて説明する。なお、
図10では、ソフトウェアのアップデートの方法について、振分情報ファイルを用いて説明する。
図10において、処理開始時には振分情報ファイルには4台のサーバ30(サーバ名:“A”サーバ、“B”サーバ、“C”サーバ及び“D”サーバ)を示す情報が登録されている。
【0049】
図10(A)は、振分情報ファイルのソフトウェアのアップデート前の状態を示す。例えば、
図10(A)の状態を初期状態とする。
図10(A)に示す例では、ソフトウェアのアップデートが必要となってしない状態であるため、4台全てのサーバ30に対してファイル新旧表示の項目には“−”が登録されている。
【0050】
ソフトウェアのアップデートが必要になった場合、すなわちソフトウェアのアップデートのコマンドがアップデート管理装置40に入力された場合、コマンド処理部401はアップデート要求をアップデート振分装置20に送信する。また、コマンド処理部401は、アップデート実行要求をサーバ管理部403に送信する。アップデート要求には、アップデートの対象となるソフトウェアを用いているサーバ30のサーバ名が含まれる。
図10では、アップデート要求に、4台のサーバ30(サーバ名:“A”サーバ、“B”サーバ、“C”サーバ及び“D”サーバ)のサーバ名が含まれているとする。アップデート実行要求には、アップデートの対象となるソフトウェアを用いているサーバ30のサーバ名と、アップデートするためのソフトウェアが含まれる。
更新部202は、アップデート管理装置40からアップデート要求を受信すると、振分情報ファイルを参照し、アップデート要求に含まれるサーバ名に該当するサーバ30のファイル新旧表示の項目を“旧”に更新する。この処理後の振分情報ファイルの一例が
図10(B)である。
【0051】
次に、サーバ管理部403は、サーバプールから新しいサーバ(例えば、“E”サーバ)を用意し、新しいサーバ(例えば、“E”サーバ)に新しいソフトウェアをインストールする。サーバ管理部403は、コマンド処理部401を介して、新たなサーバ30にソフトウェアをインストールしたことを示す通知(以下「追加要求」という。)をアップデート振分装置20に送信する。追加要求には、新たにソフトウェアをインストールしたサーバ30のサーバ名(例えば、“E”サーバ)が含まれる。
【0052】
更新部202は、アップデート管理装置40から追加要求を受信すると、振分情報ファイルを参照し、追加要求に含まれるサーバ名を振分情報ファイルに新たに登録する。この際、更新部202は、新たに登録したサーバ30のファイル新旧表示の項目に“新”を登録する。この処理では、更新部202は、振分情報ファイルのサーバ名に“E”サーバ、ファイル新旧表示の項目に“新”を登録する。この処理後の振分情報ファイルの一例が
図10(C)である。アップデート振分装置20及びアップデート管理装置40は、上記の処理を旧のソフトウェアの運用台数分(
図10では、4台分)行う。この処理後の振分情報ファイルの一例が
図10(D)である。このとき以降にアップデート振分装置20で受信したクライアントからの処理要求は、後述する振り分け方法に従いサーバ30に処理を振り分ける。
【0053】
次に、サーバ管理部403は、アップデート実行要求に含まれるサーバ名に該当するサーバ30の負荷を監視し、負荷が所定の閾値以下になったサーバ30を停止する。ここでは、“D”サーバが閾値以下であったとする。この場合、サーバ管理部403は、“D”サーバを停止する。その後、サーバ管理部403は、コマンド処理部401を介して、停止要求をアップデート振分装置20に送信する。停止要求には、停止したサーバ30のサーバ名が含まれる。この処理では、停止要求に、“D”サーバを示す情報が含まれているとする。
更新部202は、アップデート管理装置40から停止要求を受信すると、振分情報ファイルを参照し、停止要求に含まれるサーバ名に該当するサーバ30を振分情報ファイルから削除する。例えば、更新部202は、“D”サーバに関する情報を含むレコードを振分情報ファイルから削除する。この処理後の振分情報ファイルの一例が
図10(E)である。
【0054】
サーバ管理部403は、上記のように、サーバ30の負荷の低下に伴い順次サーバ30を停止したのち、ソフトウェアのアップデートを行う。この処理を繰り返すことによって、最後に最低1台以上のサーバ30のファイル新旧表示の項目が“旧”の状態となる。
図10(F)の例では、“A”サーバのみがファイル新旧表示の項目が“旧”である。ファイル新旧表示の項目が“旧”のサーバでの処理が終了した時点、もしくは、手動等により強制的にファイル新旧表示の項目が“旧”のサーバでの処理を終了させた時点で、サーバ管理部403は最後に残った“A”サーバを停止する。その後、サーバ管理部403は、コマンド処理部401を介して、停止要求をアップデート振分装置20に送信する。この処理における停止要求には、“A”サーバを示す情報が含まれている。
更新部202は、アップデート管理装置40から停止要求を受信すると、振分情報ファイルを参照し、停止要求に含まれるサーバ名に該当するサーバ30を振分情報ファイルから削除する。例えば、更新部202は、“A”サーバに関する情報を含むレコードを振分情報ファイルから削除する。この処理後の振分情報ファイルの一例が
図10(G)である。
以上の処理により、振分情報ファイルのファイル新旧表示の項目が新たに追加されたサーバ30となり、全て“新”となる。これでアップロードが終了する。その後、振分情報記憶部201は、振分情報ファイルを初期状態に更新する。この処理後の振分情報ファイルの一例が
図10(H)である。
【0055】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。