(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、バイオマス等の炭素を含む原料をガス化することが行われている。原料のガス化では、ガス化炉において、原料を500〜800℃で熱分解することにより、熱分解ガスが生成される。熱分解ガスは、ガスのみならず、タールの蒸気および粉体のチャー等も含む。熱分解ガスは、後段のガス改質炉へと送られる。ガス改質炉の内部では、酸素の供給による部分燃焼、高温ガスでの加熱、または、ヒータによる加熱により1000℃以上の高温状態が維持されるとともに、水蒸気が吹き込まれる。これにより、熱分解ガス中のタールおよびチャーが水蒸気改質され、水素(H
2)や一酸化炭素(CO)等の燃料ガスに転換される。改質後の熱分解ガスは、ガス精製部で不純物等が取り除かれた後、ガスエンジン等の内燃機関での発電に利用される。
【0003】
なお、特許文献1では、バイオマスガス化装置が開示されている。当該装置のガス化部は、熱分解部から流下するチャーを一時的に滞留させつつ下方へ向かって案内する第1滞留部と、第1滞留部と連通する流下通路内に空気等の酸化ガスを導入する第1酸化ガス供給部と、流下通路から流下するチャーを一時的に滞留させる第2滞留部と、第2滞留部上端に形成されるガス抽出口と、第2滞留部内に空気等の酸化ガスを導入する第2酸化ガス供給部とを備える。当該装置では、タール分を含む熱分解ガスが流下通路を通過し、ガス抽出口に向かって流通する。第1酸化ガス供給部から供給される空気によってチャーや熱分解ガスに燃焼反応が生じ、流下通路が昇温される。これにより、熱分解ガス中のタール分が熱分解されてガス化される。一方、第2滞留部に流下したチャーでは、第2酸化ガス供給部から供給される空気により燃焼反応が生じ、二酸化炭素や水蒸気を主成分とする燃焼ガスが生じる。燃焼ガスは、ガス抽出口に向かって上昇する際に、チャーとの間で反応し、一酸化炭素や水素が生じる。
【0004】
また、特許文献2では、底部にチャー充填層を堆積させる固定床式ガス化炉において、チャー充填層に熱分解ガスを通過させることにより、チャーのガス化およびタールの分解を行うガス化装置が開示されている。また、チャー充填層内に圧縮空気を噴出させる空気ノズルを設け、チャー充填層より上流の温度と下流の温度とに基づいて空気ノズルを制御することにより、チャー充填層において吹き抜けが発生することが防止される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るガス化システム8の構成を示す図である。ガス化システム8は、ガス化炉81と、ガス改質炉1と、ボイラ82と、ガス精製部83と、誘引ファン84と、ガスエンジン85と、煙突86とを備える。ガス化システム8では、ガス化炉81、ガス改質炉1、ボイラ82、ガス精製部83、誘引ファン84、ガスエンジン85および煙突86の順に経由する全体流路が形成されている。誘引ファン84の駆動により、ガス化炉81にて生成される後述の熱分解ガスが、当該全体流路を煙突86に向かって流れる。
【0016】
ガス化炉81は、例えば、キルンガス化炉、固定床ガス化炉、流動床ガス化炉等である。ガス化炉81には、廃棄物またはバイオマス(以下、単に「原料」という。)が投入される。原料は、例えば、一般廃棄物、産業廃棄物、汚泥、木質バイオマス等である。原料は、例えば400〜800℃で加熱されることにより、熱分解してガス化する。これにより、熱分解ガスが生成される。熱分解ガスは、ガスのみならず、タールの蒸気および粉体のチャー等も含む。熱分解ガスは、ガス改質炉1へと供給される。ガス化炉81の底部には、熱分解ガスに含まれないチャーを回収するチャー回収部(図示省略)が設けられる。回収されたチャー(以下、「回収チャー」という。)は、後述のスクリューフィーダ511によりガス改質炉1の炉本体11内に供給される。
【0017】
ガス改質炉1では、熱分解ガス中に含まれるタール、チャー等の含炭素非ガス成分の改質等が行われる。ガス改質炉1の構成については後述する。ガス改質炉1により改質された熱分解ガス(以下、「改質ガス」という。)は、ボイラ82内に流入する。ボイラ82では、内部を流通する循環水との熱交換により、改質ガスの温度が低下する。改質ガスは、ボイラ82からガス精製部83に流入する。ガス精製部83では、改質ガスに対してダストおよびミストの除去、脱塩、脱硫等の精製処理が行われる。精製処理後の改質ガスは、例えば50℃程度であり、誘引ファン84を介してガスエンジン85に供給される。ガスエンジン85では、改質ガスを燃料として発電が行われる。ガスエンジン85において改質ガスを燃焼した排ガスは、煙突86を介して大気へ排出される。
【0018】
ボイラ82における循環水は、改質ガスとの熱交換により水蒸気となる。当該水蒸気の一部は、ガス改質炉1における後述の水蒸気噴出部4に供給される。当該水蒸気の残りは、蒸気タービン821の駆動に利用され、その後、循環水としてボイラ82の内部へと戻される。上記水蒸気が、ガス化炉81に供給されて、原料の加熱に利用されてもよい。
【0019】
ガス改質炉1は、炉本体11と、充填層保持部2と、チャー供給部51と、層厚取得部52と、タール燃焼部3と、水蒸気噴出部4と、制御部10とを備える。制御部10は、ガス改質炉1の全体制御を担う。制御部10は、ガス化システム8の全体制御を担ってもよい。
【0020】
炉本体11は、例えば略円筒状である。炉本体11の一方の端部には、ガス化炉81に接続する流入口111が設けられる。他方の端部には、ボイラ82に接続する流出口112が設けられる。ガス化炉81からの熱分解ガスは、流入口111を介して炉本体11の内部に流入する。当該熱分解ガスは、流出口112に向かって炉本体11の内部を流れ、流出口112を介してボイラ82へと流出する。このように、炉本体11では、熱分解ガスが流れる流路100が形成される。炉本体11の形状は、適宜変更されてよく、例えば、U字状等であってもよい。
【0021】
充填層保持部2は、流路100に設けられる板状の保持部材21を有する。保持部材21は、流入口111から流出口112に向かう熱分解ガスの流れ方向(以下、「ガス流れ方向」という。)に対しておよそ垂直に広がり、炉本体11の側壁の全周に接続する。本実施の形態では、ガス流れ方向は、鉛直方向に平行である。保持部材21には、複数(多数)の孔が均一に分散して形成されており、熱分解ガスは、当該複数の孔を通過する。保持部材21は、例えばセラミックス、磁器、耐火材、コンクリート、金属等により形成される。保持部材21上には、チャーが堆積される。換言すると、保持部材21上には、チャーが充填されたチャー充填層22が設けられる。チャー充填層22は、保持部材21の上面の全体に広がる。チャー充填層22は、下方から保持部材21により保持される。
【0022】
チャー供給部51は、スクリューフィーダ511を有する。スクリューフィーダ511の一端は、ガス化炉81のチャー回収部に接続される。スクリューフィーダ511の他端は、ガス改質炉1の炉本体11に接続される。炉本体11では、充填層保持部2と流入口111との間に、チャー供給口113が設けられる。スクリューフィーダ511の駆動により、チャー回収部からチャー供給口113へと回収チャーが搬送され、充填層保持部2へと供給される。ガス改質炉1では、制御部10がスクリューフィーダ511を制御することにより、回収チャーの供給量(回収チャーの送り速度)が調整される。チャー供給部51では、スクリューフィーダ511以外に、テーブルフィーダ等の粉体供給機が設けられ、シュートを介して回収チャーが充填層保持部2に供給されてもよい。また、ガス化炉81およびガス改質炉1の構造によっては、ガス化炉81の底部が炉本体11の上部に接続され、当該底部から回収チャーを単に落下させることにより、回収チャーが充填層保持部2に供給されてもよい。この場合に、例えば、ガス化炉81の底部からの回収チャーの落下量を調整する機構(例えば、ゲート)が設けられてもよい。
【0023】
層厚取得部52は、レベルセンサ521を有する。レベルセンサ521は、レーザ式であり、チャー充填層22の表面(
図1中の上面)の高さを検出する。レベルセンサ521による検出値は、制御部10に出力される。実際には、チャー充填層22の表面の高さの検出により、充填層保持部2の保持部材21とチャー充填層22の表面との間の距離、すなわち、チャー充填層22の厚さ(以下、「層厚」という。)が取得される。制御部10では、取得される層厚に基づいて、チャー供給部51による充填層保持部2への回収チャーの供給量が制御される。実際には、層厚が一定値を維持するように、回収チャーの供給量が制御される。
【0024】
既述のように、チャー供給部51はチャー供給口113からの押出により、チャー充填層22に対して回収チャーを補充するため、チャー充填層22の表面には起伏が生じるが、本処理例では、厳密な層厚は必ずしも必要ではないため、問題とはならない。もちろん、複数のレベルセンサ521を設け、これらによる検出値の平均値を求める等により、層厚が精度よく求められてもよい。層厚取得部52では、チャー充填層22よりも上流側の位置における圧力と、下流側の位置における圧力との差を求めることにより、層厚が取得されてもよい。
【0025】
ガス化炉81において生成されるチャーの量が、チャー供給部51による充填層保持部2への回収チャーの供給量よりも過度に多い場合には、図示省略のゲート等を介して回収チャーが外部に排出されてもよい。この場合に、外部に排出された回収チャーを、ガス化炉81に再投入することにより、原料のガス化効率が向上されてもよい。一方、ガス化炉81において生成されるチャーの量が、充填層保持部2に供給すべき供給量に対して不足する場合には、木炭、石炭または活性炭等が充填層保持部2に補助的に供給されてもよい。なお、原料から生成されるチャーの割合は、ガス化炉81における加熱温度に依存する。例えば、キルン式のガス化炉81の一例では、加熱温度が400℃のときに、原料から生成されるチャーの割合が50%程度となり、加熱温度が600℃のときに、チャーの割合が30%程度となる。このように、ガス化炉81における加熱温度が高くなると、原料から生成されるチャーの割合は低くなる。
【0026】
タール燃焼部3は、複数の酸化ガスノズル31と、酸化ガス供給部32とを備える。複数の酸化ガスノズル31は、流路100におけるチャー充填層22よりも上流側の空間101(チャー充填層22よりも流入口111側の空間であり、以下、単に「上流側空間101」という。)に配置される。酸化ガス供給部32は、酸素を含むガス(以下、「酸化ガス」という。)を酸化ガスノズル31に供給する。酸化ガスは、例えば空気である。酸化ガスは、酸素自体であってもよい。酸化ガス供給部32からの酸化ガスは、複数の酸化ガスノズル31により上流側空間101内に噴出される。タール燃焼部3では、酸化ガスノズル31が、炉本体11の側壁においてガス流れ方向に多段に設けられてもよい。また、酸化ガスノズル31が炉本体11の上面部に設けられてもよい。
【0027】
図2および
図3は、水蒸気噴出部4の構成を示す図である。
図2では、後述の水蒸気管41の位置における、ガス流れ方向に垂直な炉本体11の断面(流入口111側から見た断面)を示し、
図3では、ガス流れ方向に平行な炉本体11の断面を示している。水蒸気噴出部4は、水蒸気管41を有し、水蒸気管41にはボイラ82から供給される水蒸気が流れる。水蒸気管41は、ガス流れ方向に垂直な面上において、U字状に折り返された、複数の折り返し部を有する。複数の折り返し部は、炉本体11の内部、詳細には、チャー充填層22の内部に配置される。水蒸気管41において炉本体11の内部に配置される部位には、複数の噴出口411が設けられる。
図3の例では、複数の噴出口411は、保持部材21とは反対側、すなわち、上流側空間101側に向かって開口する。水蒸気噴出部4では、複数の噴出口411から水蒸気が噴出される。水蒸気の温度は、例えば300℃程度である。
図3では、各噴出口411における水蒸気の噴出方向を、符号A1を付す矢印にて示している。
【0028】
水蒸気管41において炉本体11の内部に配置される部位の長さは、炉本体11の直径以上であることが好ましく、炉本体11の直径の2倍以上であることがより好ましい。これにより、ガス流れ方向に垂直な面上の広範囲において、水蒸気を分散して噴出することが容易に可能となる。当該部位の長さは、例えば炉本体11の直径の10倍以下である。複数の噴出口411は、保持部材21側に向かって開口してもよい。水蒸気管41に供給される水蒸気は、ガスエンジン85の排ガスの熱や外部の熱源を利用して生成されてもよい。
【0029】
図1のガス改質炉1では、流入口111から炉本体11の内部(流路100)に供給される熱分解ガスは、上流側空間101においてチャー充填層22に向かって流れる。上流側空間101では、複数の酸化ガスノズル31により、酸化ガスが熱分解ガスに供給され、熱分解ガスに含まれるガスのみならず、タールの蒸気も部分燃焼する。熱分解ガスの継続的な部分燃焼により、上流側空間101では高温状態が維持され、例えば、上流側空間101の温度は800〜1200℃となる。このように、タール燃焼部3では、熱分解ガスがチャー充填層22に到達するよりも前に、熱分解ガスに含まれるタールが燃焼し、タールの濃度が低減される。タール燃焼部3では、燃焼反応に加えて、他の反応が生じてもよい。
【0030】
タールの燃焼に十分な空間を確保するという観点では、ガス流れ方向に関して、酸化ガスの供給位置(ここでは、チャー充填層22から最も離れた酸化ガスノズル31)からチャー充填層22の表面に至るタール燃焼部3の長さが、チャー充填層22の厚さよりも大きいことが好ましい。ここで、チャー充填層22の表面の位置は、例えば、当該表面の平均化された位置である。より好ましくは、タール燃焼部3の長さは、チャー充填層22の厚さの1.5倍以上である。タール燃焼部3の長さは、例えばチャー充填層22の厚さの10倍以下である。ガス改質炉1の設計によっては、タール燃焼部3の長さが、チャー充填層22の厚さ以下であってもよい。
【0031】
チャー充填層22に到達した熱分解ガスは、チャー充填層22における回収チャー間の隙間、および、保持部材21の孔を経由して、流路100におけるチャー充填層22よりも下流側の空間102(チャー充填層22よりも流出口112側の空間であり、以下、単に「下流側空間102」という。)へと流れる。熱分解ガスがチャー充填層22を通過する際に、熱分解ガスに残存するタール、および、粉体のチャーがチャー充填層22の回収チャーの細孔等に捕集(トラップ)される。また、上流側空間101における熱分解ガスの燃焼により、チャー充填層22、および、チャー充填層22を流れる熱分解ガスが高温となっている。さらに、水蒸気噴出部4の複数の噴出口411(
図2参照)から、チャー充填層22の回収チャーに向かって勢いよく(例えば、熱分解ガスの流速よりも高い流速で)水蒸気が噴出される。その結果、回収チャーに捕集されたタールおよび粉体のチャー、並びに、回収チャー自体が、水蒸気改質反応により、水素や一酸化炭素等の燃料ガスに転換される(改質される)。チャー充填層22では、回収チャーによりタールの改質反応が促進されている、すなわち、回収チャーが触媒としての役割を果たしていると捉えることもできる。
【0032】
改質された熱分解ガス、すなわち改質ガスは、下流側空間102を通過して流出口112に到達し、ボイラ82へと排出される。典型的には、チャー充填層22および下流側空間102では、酸化ガスは供給されず、燃焼反応は生じない。また、タール等の水蒸気改質反応は、吸熱反応である。したがって、下流側空間102の温度は、例えば1200℃未満となり、上流側空間101およびチャー充填層22における温度よりも低くなる。
【0033】
チャー充填層22では、改質により回収チャーが少なくなると、チャー供給部51により新たな回収チャーが補充される。また、チャー充填層22において改質反応が生じない残存物のうち、保持部材21の孔よりも小さいものは、当該孔から下方へと落下する。炉本体11の底部では、当該残存物が灰回収部19により回収される。
【0034】
ここで、実験例について述べる。
図4は、実験装置9の構成を示す図である。実験装置9では、有底の筒状容器91内に石英ビーズ92が詰められ、石英ビーズ92上に模擬チャーを堆積させることによりチャー充填層93が形成される。模擬チャーは、木炭粉である。筒状容器91の周囲には、電気ヒータ97が設けられ、筒状容器91は1100℃に加熱される。筒状容器91の上部には、蓋部材911が取り付けられ、蓋部材911には流入口912が設けられる。流入口912を介して、模擬ガス、模擬タール、水蒸気、酸素ガスおよび模擬チャーが筒状容器91内に供給可能である。模擬ガスは、実際の熱分解ガスに存在する成分を含み、N
2、CO
2、H
2、CO、CH
4の混合ガスである。模擬タールはトルエンである。酸素ガスは、模擬ガス等の部分燃焼用である。
【0035】
また、蓋部材911には、ノズル94(以下、「層内ノズル94」という。)が設けられる。層内ノズル94の先端の噴出口は、チャー充填層93の内部、詳細には、上下方向におけるチャー充填層93の中央に配置される。層内ノズル94には、水蒸気が供給可能である。筒状容器91の下端には、模擬ガス等の流出口913が設けられる。流出口913から排出されるガスは、チャー捕集部951を介して検出器95(ガスクロマトグラフ)へと導入され、当該ガスに含まれる模擬タールの濃度が検出される。
【0036】
実験では、模擬ガス、模擬タールおよび模擬チャーを表1に示す条件で、流入口912から筒状容器91内に供給した。そして、筒状容器91から排出されるガス中の模擬タール濃度を検出器95により測定した。このとき、Case1では、チャー充填層93を省略した状態で、酸素ガスおよび水蒸気を流入口912から筒状容器91内に供給した。Case2では、チャー充填層93を設けた状態で、酸素ガスおよび水蒸気を流入口912から筒状容器91内に供給した。Case3では、チャー充填層93を設けた状態で、酸素ガスおよび水蒸気を層内ノズル94の噴出口からチャー充填層93内に供給した。Case4では、チャー充填層93を設けた状態で、酸素ガスを流入口912から筒状容器91内に供給し、水蒸気を層内ノズル94の噴出口からチャー充填層93内に供給した。酸素ガスおよび水蒸気の供給量は、いずれの場合も同じである。
【0038】
図5は、実験結果を示す図である。
図5に示すように、Case4では、Case1ないし3のいずれの場合よりも模擬タール濃度が大幅に低減されており、模擬タールの分解率(改質率)が高いことが判る。Case4では、酸素ガスを流入口912から筒状容器91内に供給するため、
図1のガス改質炉1のタール燃焼部3と同様に、模擬ガスおよび模擬タール(熱分解ガス)がチャー充填層93を通過するよりも前に、模擬ガスおよび模擬タールが燃焼する。また、充填層保持部2および水蒸気噴出部4と同様に、未燃焼の模擬タールがチャー充填層93にて捕集され、層内ノズル94の噴出口からチャー充填層93内に噴出される水蒸気により模擬タールおよび模擬チャーが改質される。
【0039】
以上に説明したように、ガス改質炉1は、タール燃焼部3、充填層保持部2および水蒸気噴出部4を備える。タール燃焼部3では、熱分解ガスがチャー充填層22を通過するよりも前に、熱分解ガスに含まれるタールの燃焼が行われる。また、チャー充填層22では、熱分解ガスに残存するタールが捕集され、水蒸気噴出部4では、チャー充填層22の内部に設けられた噴出口411から水蒸気を噴出することにより、チャー充填層22においてタールおよびチャーの水蒸気改質が行われる。これにより、熱分解ガスの改質および回収チャーのガス化を適切に行うとともに、熱分解ガスに含まれるタールの濃度を大幅に低減することができる。その結果、ガス精製部83におけるガス精製処理の負荷を低減するとともに、ガスエンジン85における残存タールに起因するトラブルの発生も抑制することができる。
【0040】
ところで、一般的な触媒を用いることにより熱分解ガス中のタールを改質することも可能である。しかしながら、この場合、熱分解ガスに含まれるチャーおよびダストによる触媒の閉塞を防止するため、ガス化炉とガス改質炉との間に集塵装置を設置する必要がある。また、原料が廃棄物である場合には、廃棄物中の硫黄(S)や塩素(Cl)等の酸性ガス成分が触媒を被毒し、失活させてしまう。したがって、触媒を長期間使用することができず、触媒の交換が必要となり、ガス改質炉のランニングコストが高くなる。
【0041】
これに対し、ガス改質炉1では、ガス化炉81にて生成される回収チャーを利用してチャー充填層22が形成され、チャー充填層22を利用してタールの改質が行われる。また、チャー充填層22の回収チャーの改質(ガス化)も行われる。その結果、原料のエネルギーを無駄なく利用することができる。また、交換が必要な上記触媒を用いることもないため、ガス改質炉1のランニングコストも抑制することができる。
【0042】
ガス改質炉1では、層厚取得部52により取得される層厚に基づいてチャー供給部51による回収チャーの供給量を制御することにより、チャー充填層22の厚さを精度よく一定に保つことができる。その結果、タールの燃焼に必要な空間(上流側空間101)、および、タールを捕集するチャー充填層22の厚さを適切に維持することができ、熱分解ガスに含まれるタールの濃度を安定して低減することができる。また、充填層保持部2が、複数の孔が形成された保持部材21を有することにより、チャー充填層22を適切に保持することができる。
【0043】
図6は、水蒸気噴出部4の他の例を示す図である。
図6の水蒸気噴出部4では、複数の水蒸気ノズル41aが設けられる。複数の水蒸気ノズル41aは、ガス流れ方向に垂直な面上において、炉本体11の中心軸J1を中心とする周方向に等角度間隔で配置される。各水蒸気ノズル41aでは、先端に噴出口411が設けられ、
図6では、各水蒸気ノズル41aにおける水蒸気の噴出方向を、符号A2を付す矢印にて示している。
図6の例では、複数の水蒸気ノズル41aから噴出される水蒸気の軌跡が井桁状となるように、複数の水蒸気ノズル41aにおける噴出方向が設定されている。水蒸気が拡散しにくいチャー充填層22の内部において、ガス流れ方向に垂直な面内の広範囲に水蒸気を供給する(換言すると、水蒸気を効率よく拡散させる)という観点では、
図2および
図6のように、水蒸気噴出部4における3以上の噴出口411が、ガス流れ方向に関して同じ位置に配置されることが好ましい。
【0044】
図7は、水蒸気噴出部4の他の例を示す図である。
図7の水蒸気噴出部4では、複数(
図7では、2つ)の水蒸気管41がガス流れ方向に間隔を空けて設けられる。これにより、チャー充填層22の内部において、ガス流れ方向の広範囲に水蒸気を供給することが可能となる。その結果、熱分解ガスに含まれるタールの濃度をさらに低減することができる。もちろん、3以上の水蒸気管41が、ガス流れ方向に間隔を空けて設けられてもよい。また、複数の水蒸気ノズル41aが、ガス流れ方向に間隔を空けて配置されてもよい。
【0045】
水蒸気噴出部4における噴出口411は、チャー充填層22の近傍に設けられるのであるならば、チャー充填層22の外部に設けられてもよい。
図8の例では、チャー充填層22の表面から僅かに離れた位置に水蒸気管41が設けられる。当該水蒸気管41では、複数の噴出口411が、
図8の下方、すなわち、チャー充填層22側に向かって開口する。噴出口411からの水蒸気は、チャー充填層22の表面に対して噴出される(水蒸気の噴出方向を示す矢印A3参照)。この場合も、チャー充填層22において、タールおよびチャーを効率よく改質することができる。ここで、チャー充填層22の近傍に配置される噴出口411とチャー充填層22の表面との間の距離は、当該噴出口411と酸化ガスノズル31との間の距離の1/3以下であることが好ましく、1/5以下であることがより好ましい。この場合、噴出口411からチャー充填層22に対して水蒸気が直接的に噴出されていると捉えることができる。
【0046】
上記ガス化システム8およびガス改質炉1では様々な変形が可能である。
【0047】
上流側空間101におけるチャー充填層22から離れた位置において、酸化ガスに加えて水蒸気が導入されてもよい。ただし、上流側空間101において熱分解ガスに含まれるタールを適切に燃焼させるには、当該酸化ガスの流量は、当該水蒸気の流量よりも多いことが好ましく、当該水蒸気は導入されないことがより好ましい。また、チャー充填層22の内部または近傍において、水蒸気に加えて酸化ガスが噴出されてもよい。この場合も、チャー充填層22においてタールの水蒸気改質を適切に行うには、当該水蒸気の流量は、当該酸化ガスの流量よりも多いことが好ましく、当該酸化ガスは噴出されないことがより好ましい。
【0048】
チャー充填層22において、タールおよびチャーの水蒸気改質反応が生じる、ガス流れ方向の範囲を広くするという観点では、水蒸気噴出部4の少なくとも1つの噴出口411が、保持部材21から上流側にチャー充填層22の厚さの1/3以上離れた位置に配置されることが好ましく、当該厚さの1/2以上離れた位置に配置されることがより好ましい。
【0049】
ガス改質炉1の設計によっては、充填層保持部2の保持部材21が流出口112の近傍に設けられてもよい。また、炉本体11の底部においてチャー充填層22が保持されてもよく、この場合、当該底部が、充填層保持部2としての役割を果たす。チャー充填層22を通過した熱分解ガスは、当該底部に設けられる流出口112を介して炉本体11から排出される。
【0050】
ガス改質炉1により改質された熱分解ガス(すなわち、改質ガス)は、ガスタービン、燃料電池(固体酸化物形燃料電池(SOFC)等)において用いられてもよい。また、改質ガスは、燃料ガスとして様々な用途に用いられてよく、さらに、液体に変換することにより液体燃料として用いられてもよい。
【0051】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。