【文献】
“コマツ、電気駆動式の超大型ダンプトラックを発売”,[online],2008年 9月25日,Response, [令和2年3月10日検索],インターネット,URL,https://response.jp/article/2008/09/25/114119.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係るダンプトラックの一態様として、電気で駆動するトロリー式ダンプトラックについて説明する。
【0011】
<トロリー式ダンプトラック1の全体構成>
まず、トロリー式ダンプトラック1の全体構成について、
図1〜5を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るトロリー式ダンプトラック1の一構成例を示す側面図である。
図2は、トロリー式ダンプトラック1の正面図である。
図3〜5は、トロリー式ダンプトラック1において、車体フレーム2、建屋4、前輪3A、及び集電装置5を抽出して示した図であり、
図3は斜視図、
図4は側面図、
図5は正面図である。
【0013】
トロリー式ダンプトラック1は、例えば露天掘り鉱山等において、ショベルで掘削した大量の土砂や鉱物を運搬する大型の運搬作業機械であり、例えば車高が数mを超える車両まである。また、このトロリー式ダンプトラック1は、トロリー線Wから電力を得て走行し、鉱山内において、土砂や鉱物を積込む積込場や運搬した荷物を放土する放土場、及び積込場と放土場とを連結する搬送路を主に走行する。
【0014】
図1に示すように、トロリー式ダンプトラック1は、車両全体を支持する枠体である車体フレーム2と、車体フレーム2の前部に回転可能に取り付けられた左右一対の前輪3Aと、車体フレーム2の後部に回転可能に取り付けられた左右一対の後輪3Bと、機械室を画成する建屋4と、トロリー線Wから電力を得るための集電装置5と、オペレータや作業員の通行領域となるデッキ6と、オペレータが搭乗する運転室60と、大量の土砂や鉱物を積載するベッセル7と、を備えている。なお、
図1では、左右一対の前輪3A及び後輪3Bのうち左側の前輪3A及び後輪3Bのみを示している。
【0015】
車体フレーム2は、
図3に示すように、車幅方向の両側においてそれぞれ前後方向に延在するサイドフレーム部21と、デッキ6を支持する支持フレーム部22と、を有している。支持フレーム部22は、左右一対のサイドフレーム部21における前方部からそれぞれ上方に延出する延出部221と、左右一対の延出部221を車幅方向に接続する接続部222と、によって構成されている。
【0016】
建屋4は、
図3及び
図4に示すように、車体フレーム2上における前輪3Aの車軸前方に立設されている。
図2、
図3、及び
図5に示すように、建屋4は、左右一対のサイドフレーム部21からそれぞれ立設した側板部41と、左右一対の側板部41を上端側で車幅方向に接続する上板部42と、一対の側板部41及び上板部42により囲まれた前板部としてのフロントグリル43と、を有する箱状に形成されている。
【0017】
建屋4の内部には、例えばエンジンやラジエータ等(いずれも不図示)の機器が収容されており、これらの機器は、フロントグリル43に形成された複数の通気孔430等から取り込んだ空気により冷却される。
【0018】
建屋4と車体フレーム2とは、一対の棒状部材8L,8Rによって接続されている。これら一対の棒状部材8L,8Rは、いわゆる筋交いとして機能するものであり、車高方向に対して傾斜した状態で、一端部が建屋4の上板部42に固定され、かつ他端部が車体フレーム2に固定されている。一対の棒状部材8L,8Rの具体的な構成については、後述する。
【0019】
集電装置5は、トロリー線W(
図1及び
図2参照)に接触させて電気を集める一対の集電部510L,510Rを有するパンタグラフ51と、当該パンタグラフ51を支持するパンタグラフサポート52と、を備えた重量物である。なお、
図1及び
図2では、パンタグラフ51が畳まれた状態を示しており、パンタグラフ51の一対の集電部510L,510Rをトロリー線Wに接触させる際には、パンタグラフ51に搭載された油圧シリンダやばね等によりパンタグラフ51を上方に向かって起立させる。
【0020】
集電装置5は、パンタグラフサポート52が建屋4の上板部42上に取り付けられることにより、建屋4の上端部に載置されている。すなわち、建屋4の上板部42は、重量物である集電装置5を載置するための載置部の一態様である。なお、以下の説明において「上板部42」を「載置部42」とも呼ぶ。
【0021】
デッキ6は、車体フレーム2の支持フレーム部22及び建屋4によって支持されており、
図2に示すように、例えば左領域6L、中央領域6C、及び右領域6Rに区分することができる。本実施形態では、デッキ6の左領域6Lに運転室60が配置されている。中央領域6Cは、建屋4上(載置部42)に設けられており、集電装置5が載置されている。
【0022】
ベッセル7は、車体フレーム2に傾転可能に取り付けられており、サイドフレーム部21との間を連結するホイストシリンダ(不図示)を伸縮させることにより上下方向に傾転(回動)することができる。例えば、ホイストシリンダを伸長させてベッセル7の前部を上方に持ち上げることにより、積載した土砂や鉱物等を排出することができる。
【0023】
<一対の棒状部材8L,8Rの構成>
次に、一対の棒状部材8L,8Rの構成について、
図2、
図3、
図5、及び
図6を参照して説明する。
【0024】
図6は、
図3におけるX部の拡大図である。なお、
図6では、便宜上、一対の棒状部材8L,8Rの後方に配置されたフロントグリル43の図示を省略している。
【0025】
一対の棒状部材8L,8Rはそれぞれ、例えば一般構造用角形鋼管(STKR)等を用いて形成された内部が中空の角筒状の部材である。なお、一対の棒状部材8L,8Rは互いに同様の構成を有しているため、以下では、一対の棒状部材8L,8Rのうちの左側棒状部材8Lを例に挙げて説明する。
【0026】
左側棒状部材8Lは、トロリー式ダンプトラック1に取り付けられた状態で載置部42側から車体フレーム2側に亘って延伸する軸体81と、軸体81の一端である上端(建屋4の載置部42側の端)、及び軸体81の他端である下端(車体フレーム2側の端)にそれぞれ設けられた基体82A,82Bと、を有している。軸体81の上端に設けられた基体82Aと下端に設けられた基体82Bとは同様の構成を有しているため、上端に設けられた基体82Aを例に挙げ、
図6を参照して説明する。
【0027】
図6に示すように、基体82Aは、板材を屈曲させることにより断面L字状に形成されており、建屋4の載置部42に固定される固定部821と、固定部821から軸体81の延伸方向に沿って延在して軸体81の上端部を補強する補強部822と、を有している。
【0028】
建屋4の載置部42は一対の側板部41よりも前方に突出した領域を有しており、固定部821は、当該突出領域の下面に複数のボルト8Aによって締め付けられて載置部42に固定されている。補強部822は、固定部821側、すなわち屈曲部分に向かうにつれて幅(車幅方向に沿った寸法)が広がるように形成されている。これにより、左側棒状部材8Lと建屋4との接続部分をしっかりと補強することができる。
【0029】
なお、軸体81の下端部に設けられた基体82Bでは、固定部821が、車体フレーム2の左右一対のサイドフレーム部21の前端に設けられた台座部210の座面(上面)に複数のボルトによって締め付けられて車体フレーム2に固定されている。そして、基体82Bの補強部822は、左側棒状部材8Lと車体フレーム2(台座部210)との接続部分を補強している。本実施形態では、一対の棒状部材8L,8Rは、建屋4の前面側(フロントグリル43の前側)に配置されている。
【0030】
また、本実施形態では、
図6に示すように、建屋4の載置部42の車幅方向の中央領域には、車体フレーム2側に延在する中継板9が一体化して設けられている。この中継板9は、一対の棒状部材8L,8Rの基体82A,82Bと同様に板材を屈曲させることにより断面L字状に形成されており、載置部42に接合された接合部91と、接合部91から車体フレーム2側に向かって延在する延在部92と、を有している。延在部92は、車幅方向に長辺を有する長方形状である。
【0031】
そして、一対の棒状部材8L,8Rの基体82Aはそれぞれ、固定部821が中継板9の接合部91に複数のボルト8Aにより締め付けられると共に、補強部822が中継板9の延在部92に複数のボルト9Aにより締め付けられて、中継板9に固定されている。すなわち、本実施形態では、一対の棒状部材8L,8Rの上端部は共に、載置部42の車幅方向の中央領域において中継板9を介して固定されている。
【0032】
これにより、一対の棒状部材8L,8Rの上端部と建屋4の載置部42とを中継板9を介さずに接続する場合と比べて、一対の棒状部材8L,8Rの上端部と建屋4の載置部42との接続がより強固になる。また、予め中継板9が載置部42に一体化して設けられていることにより一対の棒状部材8L,8Rの上端部の固定位置が中継板9によって決まるため、一対の棒状部材8L,8Rの固定作業がしやすくなる。
【0033】
<一対の棒状部材8L,8Rの機能>
次に、一対の棒状部材8L,8Rの機能について、
図7を参照して説明する。
【0034】
図7は、トロリー式ダンプトラック1に車幅方向の加速度aが作用したときの状態を説明する正面模式図である。
【0035】
重量物である集電装置5が建屋4上に載置されたトロリー式ダンプトラック1では、重量物が建屋上に載置されていない一般的なダンプトラックと異なり、建屋4にかかる荷重が大きくなっている。また、建屋4は、路面と直接的に接触する前輪3Aの車軸前方であって、前輪3Aに比較的近い場所に立設されているため、トロリー式ダンプトラック1の走行中における路面の凹凸による振動の影響を大きく受ける。なお、この場合における「振動」には、例えばトロリー式ダンプトラック1が路面上の突出した部分に乗り上げることによって発生する車体フレーム2の捻じれによる揺れも含まれる。
【0036】
トロリー式ダンプトラック1に振動が発生した場合には、建屋4の載置部42とパンタグラフサポート52(集電装置5)との接続部分Y(
図7に示す)に力が集中しやすくなる。このとき、建屋4を正面側から見ると、長方形状であった外縁部分が、平行四辺形状にひしゃげるように変形する。また、接続部分Yが固定端となって載置部42の中央領域が振動の腹となるように載置部42が振動する。
【0037】
例えば、
図7において矢印で示すように、路面の凹凸によってトロリー式ダンプトラック1に車幅方向の左側から右側に向かう加速度aが作用すると建屋4は右方向の力を受け、正面側から見たときに平行四辺形状に変形しようとする。このとき、車幅方向の中央から右方に向かって斜め下に傾斜する右側棒状部材8Rには圧縮方向に力が作用し、車幅方向の中央から左方に向かって斜め下に傾斜する左側棒状部材8Lには伸長方向に力が作用する。これにより、接続部分Yに集中する力を一対の棒状部材8L,8Rにも分散させることができる。
【0038】
このように、車高方向に対して傾斜する一対の棒状部材8L,8Rは、建屋4を正面側から見たときに長方形状の外縁部分内に三角形の構造を形成して、筋交いの機能を果たしている。これにより、建屋4上に重量物である集電装置5が載置された場合であっても、一対の棒状部材8L,8Rによって建屋4が補強されるため、トロリー式ダンプトラック1の走行中の振動による建屋4の変形や破損を抑制することが可能となる。
【0039】
さらに、本実施形態では、一対の棒状部材8L,8Rはそれぞれ、載置部42において振動の腹となり得る中央領域に上端部が固定されると共に、車幅方向において上端部よりも外側かつ前輪3Aの近傍に設けられた台座部210に下端部が固定されている。このように、建屋4及び車体フレーム2において振動の影響を強く受けやすい部分を一対の棒状部材8L,8Rで固定することにより、建屋4の変形や破損がより抑制される。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態では、重量物を搭載したダンプトラックとして集電装置5を搭載したトロリー式ダンプトラック1について説明したが、必ずしも電気で駆動するトロリー式のダンプトラックである必要はなく、例えば油圧で駆動するダンプトラックであってもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、トロリー式ダンプトラック1の軽量化を図る目的から、一対の棒状部材8L,8Rはそれぞれ、内部が中空である角筒状の部材で形成されていたが、必ずしも角筒状である必要はない。
【0043】
また、上記実施形態では、一対の棒状部材8L,8Rはそれぞれ、下端部(基体82B)が車体フレーム2に取り付けられた台座部210に固定されていたが、これに限らず、例えば車体フレーム2の前方部側を構成する部位に直接的に固定されていてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、一対の棒状部材8L,8Rはそれぞれ、載置部42に一体化して設けられた中継板9に上端部が固定されていたが、必ずしも中継板9を介して上端部を載置部42に固定する必要はなく、載置部42に直接的に固定してもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、一対の棒状部材8L,8Rはそれぞれ、上端部が載置部42における車幅方向の中央領域に固定され、下端部が車体フレーム2の台座部210に固定されていたが、一対の棒状部材8L,8Rの載置部42及び車体フレーム2における固定場所については特に制限はなく、一対の棒状部材8L,8Rが建屋4と車体フレーム2との間を斜めに接続して筋交いとしての役割を発揮できればよい。
【0046】
また、上記実施形態では、一対の棒状部材8L,8Rは建屋4の前面側に配置されていたが、これに限らず、例えば建屋4の背面側(ベッセル7が設けられた側)に配置されていてもよい。