特許第6696959号(P6696959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696959
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 17/00 20060101AFI20200511BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20200511BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   F27B17/00 B
   F27D7/06 A
   F27D19/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-242069(P2017-242069)
(22)【出願日】2017年12月18日
(65)【公開番号】特開2019-109014(P2019-109014A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2019年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佑壮
(72)【発明者】
【氏名】沼田 照彦
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−331563(JP,A)
【文献】 実開平01−048597(JP,U)
【文献】 特開平08−042827(JP,A)
【文献】 米国特許第05595483(US,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0049782(KR,A)
【文献】 特開昭62−013261(JP,A)
【文献】 実開平03−000599(JP,U)
【文献】 特開2005−013866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 17/00
F27D 7/06
F27D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加熱して焼成する熱処理装置であって、
ワークを加熱する加熱室と、
前記加熱室に接続されて下方に延びる中継室と、
前記中継室の下方側に接続された冷却室と、
前記加熱室と前記中継室の接続箇所における開口を開く開放位置と、前記開口を閉じる閉塞位置の間を移動可能な弁体と、
前記加熱室を加熱する加熱室用ヒータと、
前記中継室を加熱する中継室用ヒータと、
前記冷却室に接続された真空ポンプと、
前記熱処理装置の運転を制御する制御部とを備え、
前記冷却室には、前記中継室の下方側端部に対向するように上面が向けられた不純物回収プレートと、前記不純物回収プレートの下面に接触して冷却能を有する冷却プレートが設けられており、
前記制御部は、前記加熱室に前記ワークを配置し、前記弁体を前記開放位置に配置した状態で、前記加熱室用ヒータおよび前記中継室用ヒータを運転して前記加熱室および前記中継室を加熱することで、前記ワークに含まれる不純物を気化させて前記中継室を介して前記冷却室に送る第1の加熱ステップと、前記第1の加熱ステップの後、前記弁体を前記閉塞位置に配置した状態で、少なくとも前記加熱室用ヒータを運転して前記加熱室を加熱することで、前記加熱室内の前記ワークを加熱して焼成する第2の加熱ステップを実行するように制御する、熱処理装置。
【請求項2】
前記冷却プレートを、前記不純物回収プレートの下面に接触する接触位置と、前記下面から退避した退避位置の間で上下動可能とし、
前記制御部は、前記第1の加熱ステップでは、前記冷却プレートを前記接触位置に配置し、前記第2の加熱ステップでは、前記冷却プレートを前記退避位置に配置する、請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記中継室の前記下方側端部は、前記冷却室の前記不純物回収プレートに向かって下方に突出した筒状の筒状部であり、
前記不純物回収プレートの上面には、前記筒状部の外周を外側から間隔を空けて囲む補助プレートが設けられている、請求項1又は2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記中継室は、前記加熱室の側方に接続されるとともに前記弁体が設けられた第1の空間と、前記第1の空間から下方に延びる第2の空間とを形成し、
前記中継室用ヒータは、前記第1の空間を加熱する第1のヒータと、前記第2の空間を加熱する第2のヒータとを備え、前記第2のヒータは、前記中継室の前記下方側端部の端面よりも上方に配置され、前記第2のヒータと前記中継室の前記下方側端部との間には、ヒータを備えていない区間が設けられる、請求項1から3のいずれか1つに記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記真空ポンプを前記冷却室に接続する接続流路を開閉するバルブをさらに備え、
前記制御部は、前記第1の加熱ステップでは前記バルブを開き、前記第2の加熱ステップでは前記バルブを閉じるように制御する、請求項1から4のいずれか1つに記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記開口の形状および前記開口を閉じる前記弁体の表面の形状は円形であり、前記開口に接続される前記中継室の流路断面は矩形である、請求項1から5のいずれか1つに記載の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワークを加熱して焼成する熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粉体などのワークを加熱して焼成する熱処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
粉体状のワークには金属成分が不純物として混ざっている。このような不純物は、ワークの焼成を行う前に除去することが望ましい。不純物を除去するために例えば、焼成前のワークを加熱して金属成分を気化させて冷却装置へ導いた後、固体化して回収する装置がある(例えば、特許文献2、3参照)。そのような装置の中には、気化した不純物を含むガスを真空熱処理装置の真空排気系へ導いて回収するものもある(例えば、特許文献4参照)。また、不純物が再利用可能な金属成分である場合は、回収効率が高い方が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−015249号公報
【特許文献2】特開2010−180461号公報
【特許文献3】特開2013−127456号公報
【特許文献4】特開平10−43708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、気化した不純物が冷却装置へ向かって流れる流路には温度勾配があるため、冷却装置に到達する前に流路途中の温度の低い箇所で不純物が析出して付着する場合がある。このような不純物は手作業で取り除く必要があり、回収効率が悪くなってしまう。このように、ワークに含まれる不純物を効率良く回収する点で未だ改善の余地があるといえる。
【0006】
本開示は、前記課題を解決するものであり、ワークに含まれる不純物を効率良く回収することができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の熱処理装置は、ワークを加熱して焼成する熱処理装置であって、ワークを加熱する加熱室と、前記加熱室に接続されて下方に延びる中継室と、前記中継室の下方側に接続された冷却室と、前記加熱室と前記中継室の接続箇所における開口を開く開放位置と、前記開口を閉じる閉塞位置の間を移動可能な弁体と、前記加熱室を加熱する加熱室用ヒータと、前記中継室を加熱する中継室用ヒータと、前記冷却室に接続された真空ポンプと、前記熱処理装置の運転を制御する制御部とを備え、前記冷却室には、前記中継室の下方側端部に対向するように上面が向けられた不純物回収プレートと、前記不純物回収プレートの下面に接触して冷却能を有する冷却プレートが設けられており、前記制御部は、前記加熱室に前記ワークを配置し、前記弁体を前記開放位置に配置した状態で、前記加熱室用ヒータおよび前記中継室用ヒータを運転して前記加熱室および前記中継室を加熱することで、前記ワークに含まれる不純物を気化させて前記中継室を介して前記冷却室に送る第1の加熱ステップと、前記第1の加熱ステップの後、前記弁体を前記閉塞位置に配置した状態で、少なくとも前記加熱室用ヒータを運転して前記加熱室を加熱することで、前記加熱室内の前記ワークを加熱して焼成する第2の加熱ステップを実行するように制御する。
【0008】
前記構成によれば、第1の加熱ステップで気化させた不純物を、冷却プレートによって冷却された不純物回収プレートの上面に析出させることができる。これにより、ワークを焼成する運転を行いながら、不純物を効率良く回収することができる。
【0009】
前記熱処理装置において、前記冷却プレートを、前記不純物回収プレートの下面に接触する接触位置と、前記下面から退避した退避位置の間で上下動可能とし、前記制御部は、前記第1の加熱ステップでは、前記冷却プレートを前記接触位置に配置し、前記第2の加熱ステップでは、前記冷却プレートを前記退避位置に配置してもよい。これにより、不純物をより効率良く回収することができる。
【0010】
前記熱処理装置において、前記中継室の前記下方側端部は、前記冷却室の前記不純物回収プレートに向かって下方に突出した筒状の筒状部であり、前記不純物回収プレートの上面には、前記筒状部の外周を外側から間隔を空けて囲む補助プレートが設けられていてもよい。これにより、気化した不純物を不純物回収プレートの上面およびその周辺に析出させやすくなり、不純物をより効率良く回収することができる。
【0011】
前記熱処理装置において、前記中継室は、前記加熱室の側方に接続されるとともに前記弁体が設けられた第1の空間と、前記第1の空間から下方に延びる第2の空間とを形成し、前記中継室用ヒータは、前記第1の空間を加熱する第1のヒータと、前記第2の空間を加熱する第2のヒータとを備え、前記第2のヒータは、前記中継室の前記下方側端部の端面よりも上方に配置され、前記第2のヒータと前記中継室の前記下方側端部との間には、ヒータを備えていない区間が設けられてもよい。このように、第1の空間と第2の空間のそれぞれにヒータを設けることで、不純物の気化状態を長く維持することができ、不純物をより効率良く回収することができる。一方で、第2のヒータと中継室の下方側端部の間にヒータを備えていない区間を設けることで、第2のヒータの輻射熱で不純物回収プレートを昇温させることが少なくなり、不純物回収プレートによる不純物の捕捉機能を維持することができる。
【0012】
前記熱処理装置において、前記不純物回収プレートは、前記冷却室に着脱自在に設けられてもよい。これにより、不純物回収プレートを取り外すことで、不純物回収プレートに付着した不純物を簡単に取り除くことができる。
【0013】
前記熱処理装置において、前記冷却室に接続された真空ポンプと、前記真空ポンプを前記冷却室に接続する接続流路を開閉するバルブとをさらに備え、前記制御部は、前記第1の加熱ステップでは前記バルブを開き、前記第2の加熱ステップでは前記バルブを閉じるように制御してもよい。これにより、第1の加熱ステップを減圧又は真空下で行うことで、ワークに含まれる不純物をより低い温度で気化させることができ、ヒータの使用量を低く抑えることができる。
【0014】
前記熱処理装置において、前記開口の形状および前記開口を閉じる前記弁体の表面の形状は円形であり、前記開口に接続される前記中継室の流路断面は矩形であってもよい。これにより、気化した不純物が通る経路を大きくすることができるため、不純物回収プレートへ不純物を誘導しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の熱処理装置によれば、ワークに含まれる不純物を効率良く回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態における熱処理装置の概略構成を示す縦断面図
図2A図1のX−X方向から見た概略図
図2B】弁体と開口を斜め方向から見た概略図
図3】不純物回収機構を設けた冷却室の拡大図
図4】実施形態の加熱処理方法を示すフローチャート
図5A】実施形態の加熱処理方法を説明するための概略縦断面図
図5B】実施形態の加熱処理方法を説明するための概略縦断面図
図5C】実施形態の加熱処理方法を説明するための概略縦断面図
図5D】実施形態の加熱処理方法を説明するための概略縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示に係る熱処理装置およびそれを用いた熱処理方法の好適な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が本開示に含まれる。
【0018】
(実施形態)
図1は、実施形態における熱処理装置2の概略構成を示す縦断面図である。
【0019】
図1に示す熱処理装置2は、被処理物であるワークPを加熱して焼成する装置である。ワークPは例えば、黒鉛などの粉体であるが、これに限定されない。
【0020】
図1に示す熱処理装置2は、第1の炉体4と、扉6と、第2の炉体8と、制御部9とを備える。
【0021】
第1の炉体4は、その内部空間に加熱室10と中継室12を形成する炉体である。
【0022】
加熱室10は、被処理物であるワークPを加熱して焼成するための空間である。加熱室10の入口部分には扉6が取り付けられている。扉6の開閉によって、ワークPを加熱室10に搬出入するとともに、加熱室10を密閉することができる。
【0023】
図1に示すように、加熱室10の周囲の壁部には、加熱室用ヒータ14が内蔵されている。加熱室用ヒータ14は、加熱室10の温度を例えば約2400度まで加熱することができる。
【0024】
後述するように、加熱室10では、第1の加熱ステップおよび第2の加熱ステップという2段階の加熱処理が行われる。
【0025】
本実施形態の熱処理装置2によれば、第1の加熱ステップでは、加熱室10内のワークPを第1の加熱温度(例えば1200度)まで加熱することにより、ワークPに含まれる不純物(例えば金属成分)を気化させる。気化した不純物は、後述する真空ポンプ36の吸引力によって、中継室12を介して第2の炉体8内の冷却室24に送られる。第1の加熱ステップの後に行われる第2の加熱ステップでは、第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度(例えば2400度)まで加熱することにより、ワークPが焼成される。これにより、所望の物性を有するワークPが生成される。
【0026】
中継室12は、加熱室10の下流側に接続された部分である。中継室12は、第2の炉体8に接続されている。
【0027】
中継室12には、上流側から順に、第1の空間12Aと、第2の空間12Bとが形成されている。第1の空間12Aは、加熱室10から側方に延びる空間である。第2の空間12Bは、第1の空間12Aから下方に延びる空間である。図1では、第2の空間12Bの領域を点線で仕切って示している。
【0028】
中継室12の周囲の壁部には中継室用ヒータ16が内蔵されている。中継室ヒータ16は、中継室12の温度を例えば約1200度まで加熱することができる。
【0029】
中継室ヒータ16は、第1のヒータ16Aと、第2のヒータ16Bとを備える。第1のヒータ16Aは、第1の空間12Aを加熱するヒータであり、第2のヒータ16Bは、第2の空間12Bを加熱するヒータである。第2のヒータ16Bは、中継室12の下方側端部13の端面15には到達せず、端面15よりも上方に配置されている。
【0030】
中継室12の第1の空間12Aには、弁体18が設けられている。弁体18は、加熱室10と中継室12の接続箇所である開口20を開閉する部材である。弁体18は、駆動軸21を介してシリンダー22に接続されている。弁体18は、シリンダー22の駆動によって水平方向にスライド移動可能に設けられており、開口20を開く開放位置と、開口20を閉じる閉塞位置の間で移動可能である。図1では、弁体18が開放位置にある状態を実線で示し、閉塞位置にある状態を二点鎖線で示している。
【0031】
弁体18と開口20の関係について、図2A図2Bを用いて説明する。図2Aは、図1におけるX−X方向から見た概略図であり、図2Bは、弁体18と開口20を斜め方向から見た概略図である。図2A図2Bに示すように、開口20の周囲における流路断面Aは矩形状に構成されている。これに対して、開口20を閉じる弁体18の表面形状(外形断面)は円形に形成されている。このような構成によれば、開口20を介して加熱室10から中継室12に入ってくる気化状態の不純物の流路面積を広くとることができ、不純物の回収効率が向上する。
【0032】
図1に戻ると、第2の炉体8は、第1の炉体4の下方側に接続された炉体である。第2の炉体8は、その内部空間に冷却室24を形成する。冷却室24は、第1の炉体4から送られてくる気化状態の不純物を冷却するための空間である。
【0033】
冷却室24には、気化状態の不純物を冷却して回収するための構成として、不純物回収機構26が設けられている。不純物回収機構26は、不純物回収プレート28と、冷却プレート30と、補助プレート32と、封止用炉体34とを備える。
【0034】
不純物回収機構26の構成について図3を用いて説明する。図3は、不純物回収機構26を設けた冷却室24の拡大図である。
【0035】
不純物回収プレート28は、第2の空間12Bから流れてくる気化状態の不純物を冷却して凝固させて回収するプレートである。不純物回収プレート28は、上面28Aと、下面28Bとを有する。上面28Aは、中継室12の下方側端部13に対向するように上方を向いて配置される。下面28Bは、不純物回収プレート28の下方に設けた冷却プレート30に対向するように下方を向いて配置される。
【0036】
冷却プレート30は、不純物回収プレート28に接触して不純物回収プレート28を冷却するためのプレートである。冷却プレート30は、不純物回収プレート28を冷却する冷却能を有し、例えば内部に冷却水を通した水配管42を設けたプレートで構成される。冷却プレート30は、昇降式の支柱41で支持され、図示しない駆動源によって上下動可能に構成されている。冷却プレート30は、不純物回収プレート28に接触して不純物回収プレート28を冷却する接触位置(冷却位置)と、不純物回収プレート28から下方に退避して不純物回収プレート28に接触しない非接触位置(退避位置)の間で上下動可能である。図1では、冷却プレート30が接触位置にある状態を実線で示し、非接触位置にある状態を二点鎖線で示している。
【0037】
補助プレート32は、不純物回収プレート28の上面28Aに立設されたプレートである。補助プレート32は、前述した中継室12の下流側端部13の外周を外側から間隔を空けて囲む筒状のプレートである。補助プレート32の上端35の高さ位置は、中継室12の下方側端部13の端面15の高さ位置よりも高く設定されている。このような高さ設定により、不純物回収プレート28の近傍における流路面積を小さくすることができ、気化状態の不純物が冷却面(下方側端部13、不純物回収プレート28、補助プレート32)に接触する確率が増える。これにより、冷却面に不純物が析出しやすくなり、回収効率が向上する。
【0038】
封止用炉体34は、不純物回収プレート28、冷却プレート30および補助プレート32などを設置した冷却室24を封止するための炉体である。封止用炉体34は、第2の炉体8の下方側に接続されて冷却室24を封止する。
【0039】
前述した不純物回収プレート28を含む不純物回収機構26は、第2の炉体8に対して着脱可能に構成されている。具体的には、不純物回収プレート28などと共に封止用炉体34を第2の炉体8に接続して取り付けることができ、かつ、フランジ部44で切り離し、それらを一体的に下方へ移動させることにより、第2の炉体8から取り外すことができる。不純物回収機構26を第2の炉体8から取り外すことで、不純物回収プレート28および補助プレート32に付着した不純物Dを熱処理装置2から取り除いて回収することができる。不純物回収機構26を用いた不純物Dの詳細な回収方法は後述する。
【0040】
第2の炉体8には、真空ポンプ36が接続されている。真空ポンプ36は、第2の炉体8および第1の炉体4の内部空間を減圧状態あるいは真空状態にするためのポンプである。真空ポンプ36は、その吸引力によって、ワークPから気化した不純物を含んだ加熱室10内の気体を冷却室24へ導く流れを作り出す。真空ポンプ36と第2の炉体8は接続流路38によって接続されている。接続流路38の途中にはバルブ40が設けられている。バルブ40は接続流路38を開閉するためのバルブである。バルブ40の開閉によって、第1の炉体4および第2の炉体8の内部空間の圧力状態、吸引力、および減圧時間を調整することができる。
【0041】
図1に示した制御部9は、熱処理装置2の運転を制御する部材である。制御部9は、上述した熱処理装置2の各構成要素に電気的に接続されており、各構成要素の運転を制御可能である。制御部9は例えばマイクロコンピュータなどにより構成される。
【0042】
このように構成される熱処理装置2を運転した場合の加熱処理のフローの例について、図4および図5A図5Dを用いて説明する。図4は、実施形態の加熱処理方法を示すフローチャートであり、図5A−5Dは、実施形態の加熱処理方法を説明するための概略縦断面図である。
【0043】
図4に示すように、まず、第1の加熱ステップを行う(ステップS1)。第1の加熱ステップは、制御部9が熱処理装置2の各構成部材を制御することで、被処理物であるワークPに含まれる金属成分などの不純物を気化させてワークPから取り除くステップである(不純物除去ステップ)。
【0044】
具体的には、図5Aに示すように、加熱室10に常温のワークPを配置する。この状態で、弁体18を開口20を開く開放位置へ移動させて、加熱室10と中継室12を連通させる。さらに、不純物回収機構26の冷却プレート30を不純物回収プレート28の下面28Bに接触させる接触位置に移動させる。これにより、不純物回収プレート28の温度を低下させて不純物を補足させやすい冷却状態とする。さらに、バルブ40を開くことにより、加熱室10および中継室12を真空状態に近い減圧状態とする。このような状態で、加熱室用ヒータ14および中継室用ヒータ16を運転させて、中継室10および中継室12の温度を予め設定した第1の加熱温度(例えば1200度)まで上昇させて加熱する。
【0045】
加熱室10内のワークPを第1の加熱温度まで加熱することにより、ワークPに混入している不純物が気化する(図示省略)。加熱室10は真空状態に近い減圧状態であるため、常圧の場合に比べて不純物が気化する蒸発温度が低くなっている。よって、不純物をより低い温度で気化させることができ、加熱室用ヒータ14の使用量を低減することができる。
【0046】
気化した不純物は開口20を通り、中継室12に入る。中継室12も中継室用ヒータ16によって加熱されているため、気化状態の不純物の温度を所定温度以上に保ち、気化状態を維持することができる。
【0047】
気化状態の不純物はその後、第1の空間12Aから第2の空間12Bに入る。第2の空間12Bに入った気化状態の不純物はさらに冷却室24に向かって下方へ進む。
【0048】
中継室12の下方側端部13に対向する位置に設けられた不純物回収プレート28は、冷却プレート30によって冷却された状態にあり、温度が低くなっている(例えば700度)。中継室12から下方に向かって流れてくる気化状態の不純物は不純物回収プレート28の上面28Aに接触して冷却される。これにより、液体状又は固体状の不純物D1として析出する。不純物回収プレート28の上面28Aに析出させることで、不純物D1を後で回収することができる。
【0049】
ここで、不純物回収プレート28の温度が低くなっていることにより、不純物回収プレート28の周囲の温度も同様に低くなっている。図5Aに示す構成では、不純物回収プレート28の近傍には中継室12の下方側端部13(ヒータを備えていない区間A)および補助プレート32があり、温度が特に低くなっている。図5Aに示すように、中継室12の下方側端部13の壁面にも不純物D2が析出している。このような不純物D2は第1の炉体4の内壁に付着しており、不純物回収機構26のように着脱して取り除くことができない。よって、熱処理装置2の運転を止めた状態で作業員が手作業で取り除く等、手間がかかる場合がある。
【0050】
熱処理装置2の制御部9は、次に、第2の加熱ステップを行う(ステップS2)。第2の加熱ステップは、制御部9が熱処理装置2の各構成部材を制御することで、第1の加熱ステップで加熱したワークPをさらに加熱することによりワークPを焼成するステップである(焼成ステップ)。
【0051】
具体的には、図5Bに示すように、開放位置にあった弁体18を、開口20を閉じる閉塞位置へ移動させる。これにより、加熱室10を中継室12に対して密閉させる。さらに、不純物回収機構26の冷却プレート30を接触位置から退避位置に下降させる。これにより、冷却プレート30による不純物回収プレート28の冷却を行わず、不純物回収プレート28の温度を上昇させる。さらに、バルブ40を閉じ、中継室12に備えた大気開閉弁およびガス導入弁(ともに図示せず)を開くことにより中継室12を常圧の雰囲気状態とする。このような状態で、加熱室用ヒータ14および中継室用ヒータ16を運転し、加熱室10および中継室12の温度を第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度(例えば2400度)まで上昇させる。
【0052】
加熱室10を第2の加熱温度まで上昇させることにより、加熱室10内のワークPを焼成させることができる。焼成したワークPはその後、扉6を開いて、熱処理装置2の外部に搬出される。
【0053】
冷却室24においては、冷却プレート30が退避して不純物回収プレート28が冷却されていないため、不純物回収プレート28に近い中継室12の下方側端部13の温度が上昇する。これより、下方側端部13に付着した不純物D2の温度が上昇する。不純物D2は液体状又は固体状であるが、不純物D2の温度が上昇して融点以上となることにより融解する。これにより不純物D2の大部分は液状となり流動性が増すため、図5Bに示すように重力によって下方に落下する。落下した不純物D2は不純物回収プレート28に受けられて、不純物回収プレート28に既に補足されている不純物D1と混ざる。このとき、冷却プレート30を不純物回収プレート28から離す距離および中継室用ヒータ16の出力を調節して、冷却面の温度が不純物Dを再び気化させないような温度にするのが好ましい。
【0054】
第2の加熱ステップを継続して行うと、図5Cに示すように、中継室12の下方側端部13から不純物D2のほとんどを取り除き、不純物回収プレート28に不純物D3として補足することができる。
【0055】
次に、回収ステップを行う(ステップS3)。具体的には、図5Dに示すように、フランジ部44を切り離し、着脱自在に設けられた不純物回収機構26を第2の炉体8から取り外す。これにより、不純物回収機構26を熱処理装置2の外部に置き、不純物回収プレート28に補足した不純物D3を回収することができる。なお、不純物回収プレート28は封止用炉体34に設けた図示しない支柱によって下方から支持された状態にある。
【0056】
上述したように、本実施形態の熱処理装置2は、不純物除去ステップである第1の加熱ステップと、焼成ステップである第2の加熱ステップを行う。第1の加熱ステップでは、冷却プレート30を不純物回収プレート28に接触させることで、不純物回収プレート28およびその周辺の温度が下がる。これにより、気化した不純物を不純物回収プレート28の上面28Aおよびその周辺に析出させることができる。さらに第2の加熱ステップでは、冷却プレート30を不純物回収プレート28から退避させることで、不純物回収プレート28およびその周辺の温度が上がる。これにより、不純物回収プレート28以外の部分に付着した不純物を溶解させることができる。特に中継室12の下方側端部13の壁面に付着した不純物D2を溶解して下方に落とすことができ、不純物回収プレート28に回収することができる。このようにして不純物D3を効率良く回収することができる。
【0057】
また本実施形態では、不純物回収プレート28の上面28Aに、中継室12の下方側端部13の外周を外側から間隔を空けて囲む補助プレート32を設けている。このような補助プレート32を設けることで、補助プレート32と中継室12の下方側端部13の間に気化状態の不純物が通る狭い経路を形成することができる。これにより、補助プレート32および中継室12の下方側端部13に不純物を析出させやすくなる。中継室12の下方側端部13およびその周辺に付着した不純物D2は第2の加熱ステップで溶解させて不純物回収プレート28上に回収できる。このようにして、不純物D3を効率良く回収することができる。
【0058】
また本実施形態では、中継室用ヒータ16は、第1のヒータ16Aと、第2のヒータ16Bとを備え、第2のヒータ16Bは、中継室12の下方側端部13の端面15よりも上方に配置されている。このように、第1のヒータ16Aと第2のヒータ16Bを設け、中継室12の全体にヒータを配置したことで、中継室12全体を均一に加熱することができ、不純物の気化状態を維持することができる。また、第1の空間12Aと第2の空間12Bを別の温度に制御することもできる。また第2のヒータ16Bを中継室12の下方側端部13の端面15よりも上方に配置することで、冷却室24に近くて冷却されやすい下方側端部13の温度が第1の加熱ステップで過剰に高くなることを防ぐことができ、不純物を析出させやすくなる。析出した不純物D2は第2の加熱ステップで溶かして、不純物回収プレート28で回収することができる。
【0059】
また本実施形態では、不純物回収プレート28は、冷却室24に着脱自在に設けられている。これにより、不純物回収プレート28を取り外すことで、不純物回収プレート28に付着した不純物D3を熱処理装置2の外部に取り除くことができる。このため、不純物D3を効率良く回収することができる。
【0060】
また本実施形態では、第1の加熱ステップではバルブ40を開き、第2の加熱ステップではバルブ40を閉じるように制御している。これにより、第1の加熱ステップを減圧又は真空下で行うことで、ワークPに含まれる不純物をより低い温度で気化させることができる。このため、加熱室用ヒータ14の使用量を低く抑えることができる。
【0061】
また本実施形態では、加熱室10と中継室12の接続箇所である開口20の形状および開口20を閉じる弁体18の表面の形状は円形であり、開口20に接続される中継室12の流路断面Aは矩形である。このような構成によれば、加熱室10内の気体が真空ポンプ36に導かれる経路を大きくすることができる。これより、第1の加熱ステップで、多くの不純物を冷却面に導くことができ、不純物の回収効率が向上する。また、加熱室10内の気体がスムーズに真空ポンプ36で排気でき、加熱室10内が減圧されやすくなり、不純物をより低温で気化させることができる。
【0062】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、各実施形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示は、ワークを加熱して焼成する熱処理装置であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
2 熱処理装置
4 第1の炉体
6 扉
8 第2の炉体
9 制御部
10 加熱室
12 中継室
12A 第1の空間
12B 第2の空間
13 下方側端部
14 加熱室用ヒータ
15 端面
16 中継室用ヒータ
16A 第1のヒータ
16B 第2のヒータ
18 弁体
20 開口
21 駆動軸
22 シリンダー
24 冷却室
26 不純物回収機構
28 不純物回収プレート
28A 上面
28B 下面
30 冷却プレート
32 補助プレート
34 封止用炉体
35 上端
36 真空ポンプ
38 接続流路
40 バルブ
41 昇降柱
42 水配管
44 フランジ部
A ヒータを備えていない区間
D、D1、D2、D3 不純物
P ワーク
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D