特許第6696961号(P6696961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理研ビタミン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696961
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】麺用品質改良剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20200511BHJP
【FI】
   A23L7/109 A
   A23L7/109 E
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-500535(P2017-500535)
(86)(22)【出願日】2016年1月7日
(86)【国際出願番号】JP2016050283
(87)【国際公開番号】WO2016132752
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2018年11月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-28336(P2015-28336)
(32)【優先日】2015年2月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】中森 慶祐
(72)【発明者】
【氏名】高山 洋子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 寛子
【審査官】 平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−185122(JP,A)
【文献】 特開2005−318871(JP,A)
【文献】 特開2007−006724(JP,A)
【文献】 特開2009−112269(JP,A)
【文献】 特開2008−237059(JP,A)
【文献】 特開昭54−023145(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/164801(WO,A1)
【文献】 特開2000−093105(JP,A)
【文献】 特開2002−223713(JP,A)
【文献】 特開平04−207143(JP,A)
【文献】 特開昭50−018646(JP,A)
【文献】 特開昭58−175461(JP,A)
【文献】 特開平10−084894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00−7/25
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する食用油脂を吸着した澱粉を熟成処理した油脂加工澱粉を有効成分とする麺用品質改良剤。
【請求項2】
更に、アルギン酸類及び/又はアスコルビン酸類を有効成分とする請求項1に記載の麺用品質改良剤。
【請求項3】
麺類の食感変化を抑制するための請求項1又は2に記載の麺用品質改良剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の麺用品質改良剤を含有する麺類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺用品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類は、小麦粉、そば粉、澱粉等の主原料に食塩、かんすい、水等を加えて製麺して得られる生麺を、茹でる、蒸す等の加熱調理をしてから喫食される。加熱調理直後の麺類は特有の粘弾性があり良好な食感を有している。しかし、スーパーマーケットやコンビニエンスストアー等で取扱われる加熱調理済みの麺類は、時間の経過とともに硬くなり食感の劣化が進行する。
【0003】
加熱調理後の麺類の食感の劣化抑制には、澱粉に油脂加工を施して製造される油脂加工澱粉を添加することが有効な方法の一つである。
【0004】
そのような方法としては、例えば、40重量%濃度のスラリーを調製したとき、その粘度が100ないし2000c.p.である油脂加工澱粉を製麺原料粉に添加混練することを特徴とする麺類の製造法(特許文献1)、澱粉から形成される麺類であって、該澱粉の0.5〜45重量%が乳化剤と澱粉とを緊密に混合し、70〜140℃で相対湿度60〜100%の条件下で加熱して得られた湿熱処理澱粉に置換されることを特徴とするほぐれを改良した麺類(特許文献2)、澱粉に油脂、油脂の類縁物、脂肪酸及びその誘導体の1種又は2種以上の混合物を添加し、リポキシゲナーゼを作用させてなる油脂加工澱粉を麺原料に用いる方法(特許文献3)等が知られている。
【0005】
しかし、上記の方法は、加熱調理後の麺類の食感の劣化を十分に抑制するには至らず、実用上必ずしも満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭54−023145号公報
【特許文献2】特開平10−084894号公報
【特許文献3】特開2000−106832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、油脂加工澱粉を有効成分とし、加熱調理後の麺類の食感の劣化を十分に抑制できる麺用品質改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、特定の乳化剤を使用して製造される油脂加工澱粉により、上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)グリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する食用油脂を吸着した澱粉を熟成処理することにより得られる油脂加工澱粉を有効成分とする麺用品質改良剤、
(2)更に、アルギン酸類及び/又はアスコルビン酸類を有効成分とする前記(1)に記載の麺用品質改良剤、
(3)麺類の食感変化を抑制するための前記(1)又は(2)に記載の麺用品質改良剤、
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の麺用品質改良剤を含有する麺類、
から成っている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の麺用品質改良剤を添加することにより、加熱調理後の経時的な食感変化が抑制された麺類を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の麺用品質改良剤は、グリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する食用油脂を吸着した澱粉を熟成処理することにより得られる油脂加工澱粉を有効成分とする。
【0012】
上記油脂加工澱粉を製造するために用いられるグリセリン有機酸脂肪酸エステルとしては、例えばグリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル等が挙げられる。これらグリセリン有機酸脂肪酸エステルは、1種類で用いても良いし、2種類以上を任意に組み合わせて用いることができ、好ましくはグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル又はグリセリンクエン酸脂肪酸エステル等である。その構成脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸が挙げられ、好ましくは炭素数16〜18の直鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸である。
【0013】
グリセリン有機酸脂肪酸エステルとしては、ポエムW−10(商品名;グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル;理研ビタミン社製)、PANODAN AB 100 VEG(商品名;グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル;DUPONT社製)、ポエムK−30(商品名;グリセリンクエン酸脂肪酸エステル;理研ビタミン社製)等が商業的に製造及び販売されており、上記油脂加工澱粉の製造にはこれらを用いることができる。グリセリン有機酸脂肪酸エステルは公知方法又は自体公知の方法にしたがって、製造され得る。
【0014】
上記油脂加工澱粉を製造するために用いられる食用油脂としては、食用可能な油脂であれば特に制限はなく、例えば大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、椰子油、パーム油、パーム核油、カポック油、落花生油、オリーブ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油及びハイオレイックヒマワリ油等の植物油脂、牛脂、ラード、魚油及び乳脂等の動物油脂、更にこれら動植物油脂を分別、水素添加又はエステル交換したもの、並びに中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等が挙げられ、好ましくは大豆サラダ油、サフラワー油、菜種油、ヒマワリ油又はコーンサラダ油等である。また、上記食用油脂の一部又は全部の代替品として油分を多く含む穀粉、例えば生大豆粉等を用いても良い。これら食用油脂は、1種類で用いても良いし、2種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0015】
上記油脂加工澱粉を製造するために用いられる澱粉としては、例えば、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、エンドウ豆澱粉等の澱粉、又はこれらをエステル化処理した加工澱粉(例えば、アセチル化澱粉、リン酸化澱粉、オクテニルコハク酸化澱粉等)、エーテル化処理した加工澱粉(例えば、ヒドロキシプロピル澱粉、カルボキシメチル化澱粉等)、架橋処理した加工澱粉(例えば、リン酸架橋澱粉、グリセロール架橋澱粉等)、酸化処理した加工澱粉(例えば、ジアルデヒド澱粉等)、酸処理した加工澱粉、湿熱処理した加工澱粉、更にエステル化、エーテル化、架橋等の処理を2以上組み合わせて施した加工澱粉等が挙げられ、好ましくは架橋処理した加工澱粉又はエステル化処理した加工澱粉、より好ましくはリン酸架橋澱粉又はアセチル化澱粉である。
【0016】
上記油脂加工澱粉の製造においてグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する食用油脂を調製する方法に特に制限はないが、例えば、食用油脂及びグリセリン有機酸脂肪酸エステルを混合し、50〜90℃に加熱及び溶解することにより調製できる。調製された食用油脂中の食用油脂とグリセリン有機酸脂肪酸エステルとの割合(食用油脂/グリセリン有機酸脂肪酸エステル)は、通常1/99〜99/1(W/W)であり、好ましくは60/40〜20/80(W/W)である。
【0017】
グリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する食用油脂(以下、単に「食用油脂」ともいう)を澱粉に吸着させる方法としては、澱粉粒が破壊されない状態で澱粉の表面に食用油脂を吸着させる方法であれば特に制限はないが、乾燥処理を伴う方法であって、その表面に食用油脂が吸着した粉末又は顆粒状の澱粉を調製する方法が好ましい。より具体的には、例えば、(a)平衡水分を保った澱粉若しくは水分含有量を20〜40質量%に調整した澱粉を流動層乾燥機中で流動状態とし、そこに食用油脂を噴霧し乾燥する方法、(b)水分含有量を10〜50質量%に調整した澱粉のケーキに食用油脂を添加し、混合及び分散した後、棚段式通風乾燥機等を用いて乾燥し、粉末化する方法、(c)水分含有量を60〜70質量%に調整したスラリー状の澱粉に食用油脂を添加し、混合及び分散した後、噴霧乾燥機又はドラムドライヤー等を用いて乾燥し、粉末化する方法等を実施することができる。これら方法により調製される粉末又は顆粒状の澱粉は、水分含有量が8〜18質量%、好ましくは10〜14質量%に調整されることが好ましい。
【0018】
上記方法において、澱粉に対する食用油脂の吸着量は、澱粉100質量部に対して通常0.003〜10質量部、好ましくは0.05〜5.0質量部、より好ましくは0.1〜1.0質量部である。
【0019】
次に、食用油脂を吸着した澱粉(以下、単に「澱粉」ともいう)は、熟成処理される。熟成処理は、熟成温度30〜70℃、熟成期間1時間〜20日間の範囲で行うことができる。熟成期間は、澱粉に対する食用油脂の吸着量、熟成温度等に応じて適宜調整することが好ましい。例えば、熟成温度が高い程、比較的短期に設定することが好ましい。より具体的には、例えば、加工澱粉100質量部に対する食用油脂の吸着量が0.5質量部、熟成温度が60℃の場合、好ましい熟成期間は7〜14日である。
【0020】
かくして得られる油脂加工澱粉は、そのまま麺用品質改良剤として用いることができるが、更に、アルギン酸類及び/又はアスコルビン酸類を有効成分として配合した麺用品質改良剤を調製すると、その効果をより高めることができる。
【0021】
アルギン酸類としては、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル(例えば、アルギン酸プロピレングリコールエステル)等が挙げられ、中でもアルギン酸プロピレングリコールエステルが好ましい。本発明の麺用品質改良剤100質量%中、アルギン酸類の含有量は、通常1〜40質量%、好ましくは1〜20質量%である。
【0022】
アスコルビン酸類としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸エステル等が挙げられ、中でもアスコルビン酸ナトリウムが好ましい。本発明の麺用品質改良剤100質量%中、アスコルビン酸類の含有量は、通常0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0023】
本発明の麺用品質改良剤にアルギン酸類及び/又はアスコルビン酸類を有効成分として配合する方法に特に制限はなく、例えば、本発明に係る油脂加工澱粉にアルギン酸類及び/又はアスコルビン酸類を加え、常法により均一に混合することができる。
【0024】
本発明の麺用品質改良剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で他の任意の成分を含んでも良い。そのような成分としては、例えば、酸化防止剤、調味料、香辛料、増粘剤、安定剤、pH調整剤(例えばクエン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、リン酸及びこれらの塩)等が挙げられる。
【0025】
本発明の麺用品質改良剤の使用対象である麺類は、小麦粉、そば粉、米粉等の穀粉と水を主原料として、必要であれば食塩、かん水その他の原材料を混合し、常法により製麺等の加工をすることにより得られる食品であれば特に制限はないが、例えばうどん、きしめん、沖縄そば、中華麺、日本そば、稲庭うどん、ひやむぎ、そうめん、冷麺、スパゲッティー、マカロニ類、米粉麺、大麦麺、春雨、餃子の皮、焼売の皮、ワンタンの皮、春巻きの皮等が挙げられる。また、麺類の形態としては、生麺、茹で麺、蒸し麺、チルド麺、レトルト麺、LL麺、即席麺、乾麺、冷凍麺等のいずれであっても良い。これらのうち、加熱調理後の食感の劣化についての課題の多い、茹で麺、蒸し麺、チルド麺、レトルト麺、LL麺、冷凍麺等への使用がより効果的である。
【0026】
本発明の麺用品質改良剤を麺類に使用する方法に特に制限はないが、例えば、(a)麺生地を混捏する際に原料粉に麺用品質改良剤を添加混合する方法、(b)麺生地を混捏する際に麺用品質改良剤の水分散液を練り水として使用する方法等が挙げられる。麺類に対する麺用品質改良剤の使用量に特に制限はないが、例えば、小麦粉等の穀粉100質量部に対して通常0.1〜10質量部であり、好ましくは0.3〜5質量部である。
麺類の製法自体は従来十分に確立しているので、本発明においてもそれらに従ってよい。
【0027】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
[油脂加工澱粉の製造]
(1)試作品1の製造
サフラワー油50質量%とグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムW−10;理研ビタミン社製)50質量%からなる油脂組成物を60℃に加温・溶解した。水分含有量12.5質量%に調湿したリン酸架橋タピオカ澱粉(商品名:ネオビスT−100;日本食品化工社製)100質量部に対して前記油脂組成物0.5質量部添加し、高速攪拌混合機(型式:レーディゲミキサーFM130D;松坂技研社製)で10分間混合した。得られた混合物をトレーに広げて機内温度60℃の棚段式通風乾燥機で水分含有量12.0質量%まで乾燥し、乾燥物を粉砕し、得られた粉末をポリエチレン製の袋に詰めて60℃で2週間熟成し、油脂加工澱粉(試作品1)を得た。
【0029】
(2)試作品2の製造
試作品1の製造に用いたサフラワー油50質量%をナタネ白絞油(ボーソー油脂社製)50質量%に替えたこと以外は、試作品1の製造と同様に実施し、油脂加工澱粉(試作品2)を得た。
【0030】
(3)試作品3の製造
試作品1の製造に用いたリン酸架橋タピオカ澱粉100質量部をアセチル化タピオカ澱粉(商品名:MT−01;日本食品化工社製)100質量部に替えたこと以外は、試作品1の製造と同様に実施し、油脂加工澱粉(試作品3)を得た。
【0031】
(4)試作品4の製造
試作品1の製造に用いたグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル50質量%をグリセリンクエン酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムK−30;理研ビタミン社製)50質量%に替えたこと以外は、試作品1の製造と同様に実施し、油脂加工澱粉(試作品4)を得た。
【0032】
(5)試作品5の製造
試作品1の製造に用いたグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルをグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムOL−200V;理研ビタミン社製)に替えたこと以外は、試作品1の製造と同様に実施し、油脂加工澱粉(試作品5)を得た。
【0033】
[麺用品質改良剤の製造]
(1)原材料
1)油脂加工澱粉(試作品1〜5)
2)アルギン酸プロピレングリコールエステル(商品名:ダックロイドPF−H;キッコーマンバイオケミファ社製)
3)アスコルビン酸ナトリウム(商品名:L−アスコルビン酸ナトリウム;BASFジャパン社製)
4)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムW−10;理研ビタミン社製)
5)ナタネ白絞油(ボーソー油脂社製)
6)リン酸架橋タピオカ澱粉(商品名:ネオビスT−100;日本食品化工社製)
【0034】
(2)麺用品質改良剤の配合
上記原材料を用いて作製した麺用品質改良剤1〜14の配合組成を表1に示した。この内、麺用品質改良剤1〜10は本発明に係る実施例であり、麺用品質改良剤11〜14はそれらに対する比較例である。
【0035】
【表1】
【0036】
(3)麺用品質改良剤の製造方法
表1に示した原材料の配合に基づき、麺用品質改良剤1〜14各50gを調製した。この内、麺用品質改良剤5〜10及び14は、全ての原材料が粉末状であるため、これら原材料を均一に混合することにより、粉末状の麺用品質改良剤を調製した。また、麺用品質改良剤1〜4及び11は、原材料が1種類のみであるため、当該原材料そのものを麺用品質改良剤とした。一方、麺用品質改良剤12及び13は、フレーク状又は液状の原材料を含むため下記方法により調製した。
【0037】
<麺用品質改良剤12の製造方法>
表1に示した原材料の配合割合に基づいて、所定の原材料を100mL容ガラス製ビーカーに入れ、薬さじで攪拌しながら60℃まで加熱し、更に薬さじで10分間撹拌し、均一に溶解した。得られた組成物をトレーに広げて5℃の恒温槽で冷却・固化した。得られた固化物をフードミルで粉砕し、粉末状の麺用品質改良剤12を得た。
【0038】
<麺用品質改良剤13の製造方法>
表1に示した原材料の配合割合に基づいて、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(フレーク状)をフードミルで粉砕して得た粉末とリン酸架橋タピオカ澱粉を均一に混合し、粉末状の麺用改良剤13を得た。
【0039】
[調理中華麺の作製と評価]
(1)調理中華麺の作製
1)準強力粉(商品名:特ナンバーワン;日清製粉社製)700g、加工澱粉(商品名:あさがお;松谷化学工業社製)300g、グルテン(商品名:エマソフトM−1000;理研ビタミン社製)40g及び麺用品質改良剤1〜14各10gを2L容ポリエチレン製の袋に入れて良く混合し、配合粉とした。
2)1)の配合粉を横型真空テストミキサー(製品名:1.0kg真空HI−LO混捏;大竹麺機社製)を用いて、回転数120rpmで攪拌しながら、予め水440gに食塩10gとかんすい15gとを溶解して調製した溶液(液温25℃)を加えて3分間ミキシングし、更に90rpm、真空圧−73cmHgの条件で10分ミキシングして生地を得た。
3)2)の生地を圧延ロールに通して厚さ4.5mmの麺帯とし、更に該麺帯を圧延ロールに通して厚さ1.5mmのシート状に成形した。得られたシート状の生地を、切り出し機(20番切刃使用)を用いて太さ1.5mmの麺線に加工し、更にこの麺線を長さ30cmに切断し、生麺100gを得た。
4)3)の生麺を熱湯1L中で2分30秒間茹で、流水に30秒間さらした後、氷水に30秒間浸漬して水切りし、茹で麺を得た。得られた茹で麺をポリエチレン製の容器に入れ、5℃で48時間冷蔵保存し、調理中華麺1〜14を得た。また、対照として、麺用品質改良剤を添加しないものを同様に作製し、調理中華麺15とした。
【0040】
(2)食感の評価試験
(1)で作製した調理中華麺1〜15を各々器に入れ、10℃の冷し中華スープ(商品名:冷し中華スープ;理研ビタミン社製)を適量かけ、麺を良くほぐしてから喫食し、その食感について官能試験を行った。官能試験では、下記表2に示す評価基準に従い15名のパネラーで評価を行い、評点の平均値を求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表3に示す。
◎:極めて良好 平均点3.5以上
○:良好 平均点2.5以上、3.5未満
△:やや悪い 平均点1.5以上、2.5未満
×:悪い 平均点1.5未満
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
表3の結果から明らかなように、本発明の麺用品質改良剤1〜10を添加して得られた調理中華麺1〜10は、いずれも「○」以上の結果であり、加熱調理後の経時的な食感の劣化が抑制された優れたものであった。これに対し、比較例の麺用品質改良剤11〜14を添加して得られた調理中華麺11〜14及び対照の調理中華麺15は、いずれも「△」以下の結果であり、本発明のものに比べて劣っていた。
【0044】
[調理パスタの作製と評価]
(1)調理パスタの作製
1)デュラム小麦粉(商品名:マルコポーロ;日本製粉社製)900g、加工澱粉(商品名:あさがお;松谷化学工業社製)100g及び麺用品質改良剤1〜14各15gを2L容ポリエチレン製の袋に入れて良く混合し、配合粉とした。
2)1)の配合粉をパスタ製造機(製品名:小型パスタ機II MPC−2500;不二精機社製)を用いて攪拌しながら、予め水320gに食塩10gを溶解して調製した溶液(液温25℃)を加えて2分ミキシングし、更に、真空圧−73cmHgの条件で2分ミキシングして生地を得た。
3)2)の生地を−73cmHgの減圧条件下で押出製麺し、生パスタ(断面3.5×1.7mmの楕円形;長さ25cm)を得た。
4)3)の生パスタを熱湯1L中で4分間茹で、流水に30秒間さらした後、氷水に30秒間浸漬して水切りして茹でパスタを得た。この茹でパスタをポリエチレン製の容器に入れ、5℃で48時間冷蔵保存し、調理パスタ1〜14を得た。また、対照として、麺用品質改良剤を添加しないものを同様に作製し、調理パスタ15とした。
【0045】
(2)食感の評価試験
(1)で作製した調理パスタ1〜15を各々器に入れ、電子レンジにて1500Wで30秒間加熱してから喫食し、その食感について官能試験を行った。官能試験では、下記表4に示す評価基準に従い15名のパネラーで評価を行い、評点の平均値を求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表5に示す。
◎:極めて良好 平均点3.5以上
○:良好 平均点2.5以上、3.5未満
△:やや悪い 平均点1.5以上、2.5未満
×:悪い 平均点1.5未満
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
表5の結果から明らかなように、本発明の麺用品質改良剤1〜10を添加して得られた調理パスタ1〜10は、いずれも「○」以上の結果であり、加熱調理後の経時的な食感の劣化が抑制された優れたものであった。これに対し、比較例の麺用品質改良剤11〜14を添加して得られた調理パスタ11〜14及び対照の調理パスタ15は、いずれも「△」以下の結果であり、本発明のものに比べて劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、麺用品質改良剤として利用することができる。