特許第6696962号(P6696962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696962
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】データ管理ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20200511BHJP
   A61B 5/145 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   A61B5/00 102A
   A61B5/00 N
   A61B5/00 G
   A61B5/145
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-501277(P2017-501277)
(86)(22)【出願日】2015年7月10日
(65)【公表番号】特表2017-523832(P2017-523832A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】EP2015065883
(87)【国際公開番号】WO2016005586
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2018年6月26日
(31)【優先権主張番号】14176726.9
(32)【優先日】2014年7月11日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・タブ
【審査官】 清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0232520(US,A1)
【文献】 特開平04−015035(JP,A)
【文献】 特表2012−516733(JP,A)
【文献】 特表2012−531950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/01
A61B 5/06−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ管理ユニットであって、データ記憶装置(130)と、プロセッサ(140)とを含み、
該データ記憶装置(130)は
ユーザの複数の血糖測定値、
複数の適用される薬剤用量値、
血糖値の測定時間および薬剤用量値の適用時間を含む、複数の血糖測定値に関するおよび薬剤用量値に関する時間情報、および
血糖値の1つまたはそれ以上の目標範囲
を記憶するように適用され、
該プロセッサは、
第1のモードまたは第2のモードで後続の薬剤用量値についての示唆を決定し、ここで、初めに、薬剤用量値決定は前記第1のモードにあり、
後続の用量値についての示唆の決定前に、複数の測定値の時間情報を使用して、複数の測定値が所定の時間間隔にわたりおよび/または所定数の最近の測定値にわたり1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かという第1の条件を確認し、第1の条件が真である場合には第1のモードから第2のモードに切り替えるように適用され、
ここで、第1のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆の決定は、少なくとも1つの最近の血糖測定値および少なくとも1つの最近の適用された薬剤用量値を使用して、目標範囲に到達するための薬剤用量値の完全な滴定を提供する少なくとも1つの第1の所定の算出ルールに基づいており、
第2のモードにおいて、後続の薬剤用量値の示唆は、
第2の所定の算出ルールに基づいて決定され、ここで、後続の薬剤用量値についての示唆は、最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つに基づいて上限用量値以下となるように決定され、または
3の所定の算出ルールに基づいて決定され、
該第2の算出ルールにより、初めに、少なくとも1つの最近の血糖測定値および少なく
とも1つの最近の適用された薬剤用量値を使用して、少なくとも1つの第1の所定の算出ルールに基づく後続の薬剤用量値についての示唆に関する中間結果が、決定され、次いで、該中間結果が、上限用量値と比較され、その後、後続の薬剤用量値についての示唆が、
中間結果が上限用量値以上である場合に、該上限用量値となるように、
またはそうでない場合、中間結果もしくは該中間結果と第3の所定の算出ルールにより算出された上限用量値との間の値となるように
決定され、
該第3の算出ルールにより、後続の薬剤用量値についての示唆は、中間結果および上限用量値の算術平均となるように算出される、
前記データ管理ユニット。
【請求項2】
プロセッサ(140)は、好ましくはさらにユーザに関するさらなる生理学的パラメータおよび/またはイベントに関するさらなる情報に基づいて、少なくとも1つの第1の所定の算出ルールにより後続の薬剤用量値についての示唆を決定するようにさらに適用される、請求項に記載のデータ管理ユニット。
【請求項3】
プロセッサ(140)は、血糖に関するデータ入力を受けるようにさらに適用され、データ入力は、以下の生理学的パラメータ、すなわち
例えばユーザによるデータ管理ユニットの最終使用、前回の測定値の時間情報、もしくは前回に決定された薬剤用量値の時間情報などの、所定の時点後の低血糖イベントの発生または回数、
例えばユーザによるデータ管理ユニットの最終使用、前回の測定値の時間情報、もしくは前回に決定された薬剤用量値の時間情報などの、所定の時点後の高血糖イベントの発生または回数
の中の少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載のデータ管理ユニット。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載のデータ管理ユニットを含む医用デバイス(100)。
【請求項5】
血糖値の1つまたはそれ以上の目標範囲、複数の適用される薬剤用量値およびプロセッサ(140)を含むデータ記憶装置(130)を備えたデータ管理ユニットを動作させるための方法であって、該方法は:
第1のモードまたは第2のモードにおいて後続の薬剤用量値についての示唆を決定する工程であって、ここで、初めに、薬剤用量値決定は前記第1のモードにある、工程と、
後続の用量値についての示唆の決定前に、複数の血糖測定値の時間情報を使用して、データ記憶装置(130)中に記憶された該複数の血糖測定値が所定の時間間隔にわたりおよび/または所定数の最近の測定値にわたり1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かという第1の条件を確認し、第1の条件が真である場合には第1のモードから第2のモードに切り替える工程と
を含み、
ここで、第1のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆の決定は、少なくとも1つの最近の血糖測定値および少なくとも1つの最近の適用された薬剤用量値を使用して、目標範囲に到達するための薬剤用量値の完全な滴定を提供する少なくとも1つの第1の所定の算出ルールに基づいており、
第2のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆は、
第2の所定の算出ルールに基づいて決定され、ここで、後続の薬剤用量値についての示唆は、最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つに基づいて上限用量値以下となるように決定され、または
3の所定の算出ルールに基づいて決定され、
該第2の算出ルールは、初めに、少なくとも1つの最近の血糖測定値および少なくとも
1つの最近の適用された薬剤用量値を使用して少なくとも1つの第1の所定の算出ルールに基づく後続の薬剤用量値についての示唆に関する中間結果を決定し、次いで、上限用量値と中間結果を比較し、その後、
中間結果が上限用量値以上である場合に、該上限用量値となるような、または
そうでない場合、中間結果もしくは該中間結果と第3の所定の算出ルールにより算出された上限用量値との間の値となるような
後続の薬剤用量値についての示唆を決定し、
該第3の算出ルールにより、後続の薬剤用量値についての示唆は、中間結果および上限用量値の算術平均となるように算出される、
前記方法。
【請求項6】
後続の薬剤用量値についての示唆は、好ましくはさらにユーザに関するさらなる生理学的パラメータおよび/またはイベントに関するさらなる情報に基づいて、少なくとも1つの第1の所定の算出ルールにより決定される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
プロセッサ(140)は、血糖に関するデータ入力を受け、該データ入力は、以下の生理学的パラメータ、すなわち
例えばユーザによるデータ管理ユニットの最終使用、前回の測定値の時間情報、もしくは前回に決定された薬剤用量値の時間情報などの、所定の時点後の低血糖イベントの発生または回数、
例えばユーザによるデータ管理ユニットの最終使用、前回の測定値の時間情報、もしくは前回に決定された薬剤用量値の時間情報などの、所定の時点後の高血糖イベントの発生または回数
の中の少なくとも1つを含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
血糖値の1つまたはそれ以上の目標範囲、複数の適用される薬剤用量値およびプロセッサ(140)を含むデータ記憶装置(130)を備えたデータ管理ユニットを動作させるためのコンピュータプログラムであって、該コンピュータプログラムは:
第1のモードまたは第2のモードにおいて後続の薬剤用量値についての示唆を決定するためのコードであって、ここで、初めに、薬剤用量値決定は前記第1のモードにある、コードと、
後続の用量値についての示唆の決定前に、複数の血糖測定値の時間情報を使用して、複数の血糖測定値が所定の時間間隔にわたりおよび/または所定数の最近の測定値にわたり1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かという第1の条件を確認し、第1の条件が真である場合には第1のモードから第2のモードに切り替えるためのコードと
を含み、
第1のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆の決定は、少なくとも1つの最近の血糖測定値および少なくとも1つの最近の適用された薬剤用量値を使用して、目標範囲に到達するための薬剤用量値の完全な滴定を提供する少なくとも1つの第1の所定の算出ルールに基づいており、
第2のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆は、
第2の所定の算出ルールに基づいて決定され、ここで、後続の薬剤用量値についての示唆は、最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つに基づいて上限用量値以下となるように決定され、または
3の所定の算出ルールに基づいて決定され、
該第2の算出ルールは、初めに、少なくとも1つの最近の血糖測定値および少なくとも1つの最近の適用された薬剤用量値を使用して少なくとも1つの第1の所定の算出ルールに基づく後続の薬剤用量値についての示唆に関する中間結果を決定し、次いで、上限用量値と中間結果を比較し、その後、
中間結果が上限用量値以上である場合に、該上限用量値となるような、または
そうでない場合、中間結果もしくは該中間結果と第3の所定の算出ルールにより算出された上限用量値との間の値となるような
後続の薬剤用量値についての示唆を決定し、
該第3の算出ルールにより、後続の薬剤用量値についての示唆は、中間結果および上限用量値の算術平均となるように算出される、
前記コンピュータプログラム。
【請求項9】
コンピュータを用いて使用するための、内蔵されたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、コンピュータプログラムコードは、請求項に記載のコンピュータプログラムを含む、前記コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ管理ユニット、好ましくは血糖測定器である医用デバイス、データ管理ユニットを動作させるための方法、それぞれのコンピュータプログラム、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の以下の説明は、主に健康障害としての糖尿病と、処方された治療の有効性を評価するために制御されることになる生理学的パラメータとしての血糖値とに関する。しかし、本発明は、他の健康障害に関しても、また(a)高血圧性心疾患における血圧、(b)心疾患および発作の危険因子を有する患者におけるコレステロールプロファイルまたはリポタンパク質プロファイル、(c)ぜんそく患者におけるピークフロー、または(d)血友病の治療を受ける患者における凝固などの他の生理学的パラメータの管理のためにも使用される。
【0003】
糖尿病は、膵臓が十分なインスリンを生成しないかまたは細胞が生成されたインスリンに応答しないかのいずれかによりヒトが高血糖となる代謝性疾患群である。糖尿病の治療は、高血糖を引き起こすことなく可能な限り正常(「正常血糖」)に近く血糖レベルを維持することに重点が置かれる。通常は、これは、食事、運動、および適切な医薬品の使用(1型糖尿病の場合にはインスリン;2型糖尿病の場合には経口薬および場合によってはインスリン)により達成される。
【0004】
インスリンを用いた糖尿病管理の不可欠な要素は、処方された治療の進捗度および成功度に関する情報を定期的に取得するための、患者自身により実施される血中グルコース濃度の定期点検である。この理解および患者医療活動は、血糖レベルが十分に管理された患者においては糖尿病合併症が非常にまれであり比較的軽いものとなるため、必須となる。これに関連して、血糖レベルが、1日の間にわたり変動する点と、投与されるインスリンの量ならびに消費される食品の量および種類、運動レベル、ならびにストレスなどの生活様式因子とにより直接的に影響される点が、考慮されるべきである。
【0005】
したがって、データ管理ユニットを用いた血中糖レベルのモニタリングは、2つの目的を果たす。一方では、このモニタリングは、現時点の血糖管理状態に関する情報を患者に与え、他方では、測定値は、医薬品すなわち摂取されるべきインスリン量の調節が示唆されるか否かを患者または医療専門家(HCP)が決定するための情報としての役割を果たす。
【0006】
これらの目標を達成するためにまたは所望の血糖管理に可能な限り近づけるために、血糖測定(BGM)値が、通常はHCPにより処方された検査方式にしたがって、1日に1回または複数回、データ管理ユニットまたはかかるデータ管理ユニットを含む血糖測定器によりモニタリングされることが、一般に行われている。さらに、いくつかのデータ管理ユニットは、例えば現時点の血糖値および摂取した炭水化物などに基づいて投与すべき薬剤の用量または用量変更についての示唆を与える。
【0007】
特殊な役割を果たすものとして、いわゆる空腹時血糖測定値(FGP)がある。空腹時血糖測定値は、絶食の数時間(6〜8時間)後に得られる。空腹時血糖測定値は、典型的には午前中に朝食前に測定され、長時間作用性の基礎インスリンまたはインスリングラルギンなどの類似体の滴定量を評価するために使用されるため、インスリン治療を受ける患者の間で最も一般的に実施されている検査である。この長時間作用性の基礎インスリンまたはインスリングラルギンの利点は、それらがNPHインスリンよりも低いピークプロファイルを有しつつ24時間以上またはさらにそれ以上の作用期間を有する点である。したがって、そのプロファイルは、正常な膵β細胞の基礎インスリン分泌により近似する。
【0008】
良好なまたは完璧な血糖管理のために、基礎インスリンまたはインスリングラルギンの用量は、達成すべき血糖レベルにしたがって各個人について調節されなければならない。通常は、インスリンまたはインスリングラルギンの用量は、最終的に典型的には空腹時血糖測定(FBG)値である特定の血糖レベルが達成されるまで、一定の時間間隔にわたって初期投薬から最終投薬にかけて増加される。実際には、かかる滴定は、医療専門家(HCP)により実施される。しかし、患者が、自身での滴定を行う権限を与えられ訓練を受けてもよい。かかる自己滴定は、第三者支援もしくはサービスまたは何らかの中間的組合せによる介入によって支援される。
【0009】
日常使用において、基礎インスリンまたはインスリングラルギンは、典型的には過少投薬される。したがって、初期投薬と、完璧またはほぼ完璧な血糖管理を達成するための最適投薬との間には差が残る。これは、複数のマイナスの効果を有し、より良好な滴定がその解消の助けとなり得る。例えば、患者が滴定されない場合には、彼らの血糖は下がらず、結果として短期間でより良い感覚を得られない。さらに、長期間においては、患者のHbA1cが高止まりし、健康が損なわれる。したがって、患者は、彼らにより治療が作用していないと感じ、治療への関心を失うまたは治療を中断する場合がある。
【0010】
ほぼピークレスのプロファイルにより、基礎インスリンおよびインスリングラルギンは、滴定が簡単となる。一方で、医師が滴定のために利用する一連のアプローチが存在する。一般的には、これらのアプローチは、目標FBGが達成されるまでのある特定の時間間隔内でのある特定の用量調節を示唆する。これらの各アルゴリズムは、例えば血糖値(BG値)が最終週に70mg/dl未満である(低血糖)の場合には用量が増加されるべきではないなどの特定のルールを有する。
【0011】
特許文献1の文献は、被検者に対する血糖管理を可能にする糖尿病管理システムについて説明している。この説明されるシステムは、インスリン送達ユニット、グルコースセンサ、および制御ユニットを含む。制御ユニットは、グルコースセンサからグルコース値の読取値を受け、将来の所定の時間におけるグルコース値を予測するアルゴリズムを実行し、予測されたグルコース値を所定のグルコース値範囲と比較し、予測されたグルコース値が所定のグルコース値範囲外となる場合に投与すべき修正インスリン量を決定する処理ユニットを含む。また、グルコースユニットは、送達ユニットに修正量を伝達する通信ユニットをさらに含む。
【0012】
特許文献2の文献では、血糖管理のために情報を提供するための医用デバイスが説明されている。このデバイスは、データを記憶するために配置された記憶手段と、血糖値データおよび安全データを受けるために配置された受領手段と、記憶手段から検索されたデータの修正のために第1の処理機能を実行するように、ならびに血糖値データおよび記憶手段から検索されたデータに基づく血糖管理のために情報を提供するための第2の処理機能を実行するために配置された処理手段と、受けた安全データを検証し受けた安全データの検証に対応する検証データを提供するために配置された検証手段と、検証データに基づいて第1の処理機能および第2の処理機能の中から少なくとも所定の機能の実行を制御するために配置された安全手段とを含む。第1の処理機能は、選択された用量調節プロファイルに対してプロファイルパラメータを調節するための処理機能である。第2の処理機能は、選択された用量調節プロファイルに少なくとも基づいてインスリン用量を段階的に適合化し、それにより設定されるべきインスリン用量の値を決定するための処理機能である。
【0013】
基礎インスリンまたはインスリングラルギンの滴定は、患者(ユーザ)にとって簡単であるように見えるが、時折のまたは短期間の高血糖測定値に起因して過剰滴定が観察される危険性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】EP1281351A2
【特許文献2】WO2010/089304A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、データ管理ユニット、医用デバイス、およびユーザにより安全に過剰滴定を回避させるそれぞれの方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の問題は、請求項1に記載の特徴を有するデータ管理ユニットによって解消される。
【0017】
特に、本発明のデータ管理ユニットは、
ユーザの生理学的パラメータ、好ましくは血糖レベルの複数の測定値、
好ましくはユーザによりそれぞれ測定または提供される、複数の適用される薬剤用量値、
生理学的値の測定時間および薬剤用量値の適用時間を含む、生理学的パラメータの複数の測定値に関するおよび薬剤用量値に関する時間情報、および
生理学的パラメータの1つまたはそれ以上の目標範囲
を記憶するように適用されたデータ記憶装置と、
プロセッサとを含み、該プロセッサは、
第1のモードまたは第2のモードで後続の薬剤用量値についての示唆を決定し、ここで、初めに、薬剤用量値決定は前記第1のモードにあり、
後続の用量値についての示唆の決定前に、複数の測定値の時間情報を使用して、複数の測定値が所定の時間間隔にわたりおよび/または所定数の最近の測定値にわたり1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かという第1の条件を確認し、第1の条件が真である場合には第1のモードから第2のモードに切り替えるように適用され、
ここで、第1のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆の決定は、生理学的パラメータの少なくとも1つの最近の測定値および少なくとも1つの最近の適用された薬剤用量値を使用して少なくとも1つの第1の所定の算出ルールに基づいており、
第2のモードにおいて、後続の薬剤用量値の示唆は、
第2の所定の算出ルールに基づいて決定され、ここで、後続の薬剤用量値についての示唆は、最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つに基づいて上限用量値以下となるように決定され、または
最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つと比較して安定したもしくは減少した用量を含む用量示唆を考慮する第3の所定の算出ルールに基づいて決定される。
【0018】
本発明のデータ管理ユニットは、好ましくはFBG値である血糖測定値が、第1のモード(例えば示唆された用量の完全な滴定が可能となるモード)において一貫して目標内またはその周辺となる、すなわち所定の時間間隔にわたり目標範囲内になる(第1の条件)とすぐに、プロセッサが、第2のモードに進み、示唆される薬剤用量値が、いくつかの測定値が目標外となっても、上限用量値を上回って増加されなくなるという利点をもたらす。第2のモードでは、薬剤用量値の若干の減少が可能となる。代替的には、第2のモードでは、限度用量値は、規定されないが、第1のモードと比較した場合に、用量増加を可能にするまたは考慮する少なくとも1つ算出ルールが、基本的にはオフに切り替えられ、したがって使用できなくなる。したがって、用量減少または安定的な用量を可能にするまたは考慮する少なくとも1つ第3の算出ルール(好ましくはこれは第1のモードの少なくとも1つの対応する算出ルールと同様であり得る)が、第2のモードにおいて適用される。すなわち、この場合には、用量示唆を与えることができないか、または与えられる用量示唆が最近に適用された用量値もしくは示唆された用量の一方以下となるかの、いずれかとなる。その場合に、最近適用された用量値/示唆された用量は、最後に適用された用量値/示唆された用量か、または所定数の最近適用された用量値/示唆された用量のもしくは所定の時間間隔にわたる最近適用された用量値/示唆された用量の平均値である。
【0019】
さらに、上限用量値は、薬剤用量についての以前の示唆の示唆された用量値として、または所定数の以前に示唆された用量の平均値として、または例えば2つの単位など所定の追加的な用量値を加えたこれらの両値の一方として規定される。さらに、上限用量値は、第2のモードにおける後続の示唆される用量値が、実上限用量値の決定のために使用される薬剤用量値についての以前の示唆未満となる場合に、これに対応して第2のモードで減少される。
【0020】
第1のモードにおいて、ユーザ(患者)は、生理学的パラメータの測定値が目標範囲に到達しそこに継続的に留まるという目的を有しつつ、少なくとも1つの第1の所定の算出ルールを使用して示唆された薬剤用量値を調節する。その場合に、糖尿病に関して、血糖測定値は、例えば90mg/dl〜130mg/dlの間などである目標範囲に到達するように滴定される。
【0021】
上述のように、第1の条件では、複数の測定値の時間情報を使用して、複数の測定範囲が、所定の時間間隔にわたりおよび/または所定数の最近の測定値にわたり1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かが確認される。これは、最少数の測定値が、1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かが確認される場合か、または所定範囲の最少数および最多数の測定値からの最少数の測定値が、1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かが確認される場合を含み、測定値は、最大時間フレーム内で集められ、測定値の個数は、例えば1日などの時間間隔当たりの最大量に限定され、1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満である。
【0022】
同様に、プロセッサが現時点において第2のモードにある場合には、後続の用量値についての示唆の決定前に、複数の測定値の時間情報を使用して、複数の測定値が、所定の時間間隔にわたるまたは所定数の最近の測定値にわたる1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限を上回るかまたは下限未満であるかという第2の条件が確認され、この第2の条件が真である場合には、プロセッサは、第2のモードから第1のモードに切り替わる。
【0023】
本発明では、「薬剤用量値」という用語は、例えば長時間作用性インスリンの単位などの絶対薬剤用量値を指す。したがって、この用語は、以前の薬剤用量値が考慮される場合には、それに対応して薬剤用量変化を含む。後続の(絶対)薬剤用量値についての示唆からの前回の(絶対)薬剤用量値の減算により薬剤用量変化を決定することは容易である。後続の薬剤用量値についての示唆は、次の薬剤用量値としてユーザに示唆される用量値である。ユーザは、例えば注射によってなど示唆された用量を適用してもよくまたはしなくてもよい。
【0024】
生理学的パラメータの複数の測定値に関するおよび薬剤用量値に関する時間情報は、生理学的値の測定時間および/または薬剤用量値の適用時間を含み得る。それは、例えば測定プロセスの完了またはデータ管理ユニットによる新規の測定値の受領などの、それぞれの測定値を結果としてもたらす測定プロセス中のある特定の時点の日時情報を含む各測定値に関連付けられるタイムスタンプによって実現される。通常は、タイムスタンプは、測定ユニットにより関連付けられ、それぞれの測定値と共にデータ管理ユニットに転送される。新規の測定値が、測定ユニットによりそれぞれのタイムスタンプに関連付けられない場合には、タイムスタンプは、測定値の受領後にプロセッサによって割り当てられる。薬剤用量値の時間情報は、薬剤用量値の決定の日時情報(ユーザが気づいて示唆された薬剤用量を即座に適用した場合)または適用時間としてそれぞれの薬剤用量に関してユーザにより提供される日時を含む時間情報を含むタイムスタンプであってもよい。
【0025】
好ましい一実施形態では、生理学的パラメータの測定値は、特にFBG値を含む。
【0026】
好ましい一実施形態では、プロセッサは、第2の算出ルールを実行するように適用され、初めに、生理学的パラメータの少なくとも1つの最近の測定値および少なくとも1つの最近の適用された薬剤用量値を使用して少なくとも1つの第1の所定の算出ルールに基づく後続の薬剤用量値についての示唆に関する中間結果が、決定され、次いで、中間結果が、上限用量値と比較され、その後、後続の薬剤用量値についての示唆が、
中間結果が上限用量値以上である場合に、上限用量値となるように、または
そうでない場合、中間結果もしくは中間結果と第3の所定の算出ルールにより算出された上限用量値との間の値となるように
決定される。
【0027】
例えば、第3の算出ルールにより、後続の薬剤用量値についての示唆は、中間結果および上限用量値の算術平均となるように算出される。
【0028】
別の実施形態では、プロセッサは、ユーザに関するさらなる生理学的パラメータおよび/またはイベントに関するさらなる情報に基づいて、少なくとも1つの第1の所定の算出ルールにより後続の薬剤用量値についての示唆を決定するようにさらに適用される。その場合に、ユーザに関するイベントは、イベントタグにより表される。好ましくは、血糖測定値についてのイベントタグは、空無イベント(タグなし)と、特に以下のイベント群、すなわち空腹時、食前、食後、朝食前、朝食後、昼食前、昼食後、夕食前、夕食後、夜間、および運動の中の少なくとも1つとを含む。
【0029】
好ましい一実施形態では、タグが、自動的に選択され、ユーザにより確定されることのみを必要とし、したがって本発明のデータ管理ユニットは、タグ選択のための工程数を減少させる。
【0030】
代替的な実施形態では、プロセッサは、「食前」または「食後」タグの一方がユーザにより選択された後に、少なくとも1つの食事イベントまたは空腹時タグの一方のタグを自動的に選択するように適用される。この実施形態では、データ記憶装置は、例えば「朝食」、「昼食」、および「夕食」などの食事のタグ付選択先読み(tagging preselection)のみのための時間範囲を含む。好ましくは、タグ選択のための「空腹時」時間範囲もまた提供される。また、この実施形態は、タグ付中にユーザを支援し、誤ったタグ付の危険性を軽減させる。
【0031】
生理学的パラメータに関するさらなる情報は、ユーザの食事摂取量および食事の種類か、または心拍数であってもよい。代替的にはまたは追加的には、プロセッサは、生理学的パラメータに関するデータ入力を受けるようにさらに適用され、データ入力は、以下の生理学的パラメータ、すなわち
例えばユーザによるデータ管理ユニットの最終使用、前回の測定値の時間情報、もしくは前回に決定された薬剤用量値の時間情報などの、所定の時点後の低血糖イベントの発生または回数、
例えばユーザによるデータ管理ユニットの最終使用、前回の測定値の時間情報、もしくは前回に決定された薬剤用量値の時間情報などの、所定の時点後の高血糖イベントの発生または回数
の中の少なくとも1つを含む。
【0032】
また、上記の問題は、同一の利点を有する上記で説明したデータ管理ユニットを含む医用デバイスによっても解消される。
【0033】
また、同じ理由により、上記の問題は、生理学的パラメータの1つまたはそれ以上の目標範囲を含むデータ記憶装置およびプロセッサを有するデータ管理ユニットを動作させるための方法であって、
第1のモードまたは第2のモードにおいて後続の薬剤用量値についての示唆を決定する工程であって、ここで、初めに、薬剤用量値決定は前記第1のモードにある、工程と、
後続の用量値についての示唆の決定前に、複数の測定値の時間情報を使用して、データ記憶装置に記憶された複数の測定値が所定の時間間隔にわたりおよび/または所定数の最近の測定値にわたり1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かという第1の条件を確認し、第1の条件が真である場合には第1のモードから第2のモードに切り替える工程と
を含み、
ここで、第1のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆の決定は、生理学的パラメータの少なくとも1つの最近の測定値および少なくとも1つの最近の適用された薬剤用量値を使用して少なくとも1つの第1の所定の算出ルールに基づいており、
第2のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆は、
第2の所定の算出ルールに基づいて決定され、ここで、後続の薬剤用量値についての示唆は、最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つに基づいて上限用量値以下となるように決定され、または
最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つと比較して安定したもしくは減少した用量を含む用量示唆を考慮する第3の所定の算出ルールに基づいて決定される、方法によっても解決される。
【0034】
本発明の方法の実施形態およびそれらの利点は、データ管理ユニットに関連して既に上記で説明された。したがって、本発明の方法の実施形態に関して、データ管理ユニットの説明を参照とする。
【0035】
上述したものと同一の利点により、問題は、生理学的パラメータの1つまたはそれ以上の目標範囲を含むデータ記憶装置およびプロセッサを有するデータ管理ユニットを動作させるためのコンピュータプログラムであって、
第1のモードまたは第2のモードにおいて後続の薬剤用量値についての示唆を決定するためのコードであって、ここで、初めに、薬剤用量値決定は前記第1のモードにある、コードと、
後続の用量値についての示唆の決定前に、複数の測定値の時間情報を使用して、複数の測定値が所定の時間間隔にわたりおよび/または所定数の最近の測定値にわたり1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かという第1の条件を確認し、第1の条件が真である場合には第1のモードから第2のモードに切り替えるためのコードと
を含み、
第1のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆の決定は、生理学的パラメータの少なくとも1つの最近の測定値および少なくとも1つの最近の適用された薬剤用量値を使用して少なくとも1つの第1の所定の算出ルールに基づいており、
第2のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆は、
第2の所定の算出ルールに基づいて決定され、ここで、後続の薬剤用量値についての示唆は、最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つに基づいて上限用量値以下となるように決定され、または
最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つと比較して安定したもしくは減少した用量を含む用量示唆を考慮する第3の所定の算出ルールに基づいて決定される、コンピュータプログラムによって、解消される。
【0036】
上記のコンピュータプログラムは、医用デバイスを動作させるための上記の本発明の方法に関連して上述したような実施形態によって実現される。
【0037】
さらに、上記の問題は、コンピュータを用いて使用するための、内蔵されたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、コンピュータプログラムコードが上述のコンピュータプログラムを含む、コンピュータプログラム製品によって解消される。
【0038】
本発明の様々な態様の上述の利点および他の利点は、添付の図面の説明と共に以下の詳細な説明を読むことにより当業者に明らかになろう。上記もしくは下記で説明されるおよび/または図示される全ての特徴は、特許請求の範囲またはそれらの後方参照に含まれるものとは無関係に、本発明の対象を本質的にもしくは任意の組合せで形成する。
【0039】
本明細書では、本発明の例示の実施形態が概略図を参照として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の好ましい一実施形態による医用デバイスの斜視図である。
図2図1に示すような医用デバイスのブロック図(diagram)である。
図3】「ログブック」ルートにおける図1に示すような医用デバイスのディスプレイの一例を示す図である。
図4図1に示すような医用デバイスのディスプレイ上に表示された場合のタグ記号のさらなる例を示す図である。
図5】特にそれぞれの流れ図による「BG測定」ルートにおける本発明の医用デバイスの機能を示す図である。
図6】「滴定」ルートにおいて本発明の医用デバイスによって実現される本発明の方法を構成する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の段落は、本発明の様々な実施形態を説明する。これらの実施形態は、もっぱら例示を目的として、血糖レベル測定に関する医用デバイスに関連して概説される。しかし、使用される術語および医用デバイスまたは方法に関する実施形態の説明は、本発明の原理および案をかかる単一のデバイスまたは方法に限定するようには意図されず、他の生理学的値に対して相応に適用される。
【0042】
図1は、本発明の好ましい一実施形態による医用デバイス100の概略図であり、図2は、本発明の好ましい一実施形態による医用デバイス100の概略ブロック図である。好ましくは、医用デバイス100は、血糖測定ユニット110を含み、この血糖測定ユニット110は、血糖レベルを測定するために配置される。さらに、測定ユニット110は、インターフェースと、検査ストリップを挿入するためのスロット112と含む。
【0043】
血糖測定ユニット110は、受領ユニット120に接続され、受領ユニット120は、例えば血糖測定ユニット110から受けた血糖測定データなどをデータ記憶装置130(記憶ユニットもしくは記憶手段)またはフラッシュメモリなどのメモリに送るために配置される。代替的には、受領ユニット120は、記憶装置130から例えばグルコース値データなどの記憶されたデータを検索し、マイクロコントローラもしくはマイクロプロセッサおよび/またはデジタル信号プロセッサ等のプロセッサ140(処理ユニットまたは処理手段)にそれを送り得る。代替的には、受領ユニット120は、血糖測定ユニット110から受けた血糖値データをプロセッサ140に直接的に送る。
【0044】
受領ユニット120は、ユーザインターフェースのユーザ入力ユニット150にさらに接続される。ユーザ入力ユニット150は、例えばキー151、確定キー(OKボタン)152、スクロールダウン用のキー153(下ボタン)、およびスクロールアップ用のキー154(上ボタン)などによる医用デバイス100のユーザからの入力を受けるために配置される。ユーザ入力データは、ユーザ入力ユニット150から受領ユニット120に送られ、受領ユニット120は、それをプロセッサ140にまたはデータ記憶装置130のいずれかに送る。
【0045】
さらに、医用デバイス100のユーザインターフェースは、ディスプレイ162を有するディスプレイユニット160を含み、このディスプレイ162もまた、受領ユニット120に接続される。好ましくは、ディスプレイユニット160は、受領ユニット120またはプロセッサ140からディスプレイ162により表示されるべきデータを受ける。
【0046】
好ましくは、医用デバイス100は、データを受信するおよび/またはデータを送信するために、例えばシリアルポートなどの有線インターフェース、ユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェース、ミニUSBインターフェース、あるいは赤外線(例えばIRDA)インターフェースおよび/またはブルートゥース(登録商標)インターフェース等の無線インターフェースなどの、さらなるインターフェース170を追加的に含む。インターフェース170は、受領ユニット120からデータを受けるためにおよび/または受領ユニット120にデータを送るために、好ましくは受領ユニット120に接続される。
【0047】
さらに、医用デバイス100は、好ましくはクロック発生器に基づいて、ディスプレイ162に表示される日時情報を提供するクロックユニット180を含む。さらに、クロックユニット180は、特に関連する血糖測定値または薬剤用量値に対してタイムスタンプを発生させるための日時情報を提供する。
【0048】
上記に概説したように、医用デバイス100は、好ましくは血糖測定ユニット110を含む。血糖測定ユニット110は、スロット112に挿入された検査ストリップ上で血液の液滴を検査することにより、例えばユーザの血液中の血糖レベルを測定するために配置される。この測定は、例えば電気化学的方法などを利用して実施することができる。スロット112への検査ストリップの完全な挿入が、それぞれのセンサにより検出される。測定された血糖値は、血糖値データへと変換され、好ましくは即座にまたは要求に応じて受領ユニット120に送られる。代替的には、血糖測定ユニット110は、赤外線診断または代替的な非接触測定方法によりユーザの血糖レベルを測定するために配置される。
【0049】
さらなる代替形態によれば(図1には図示せず)、血糖測定ユニット110は、医用デバイスのユーザの体内に植え込まれ、有線接続部または無線接続部のいずれかを介して受領ユニット120にデータを送る。一実施形態では、かかる植え込まれた血糖測定ユニット110は、例えば連続閉ループ制御を可能にするチップなどに基づいた連続測定センサである。後者の場合には、医用デバイスが2つの部分を含み、一方の部分は測定ユニット110を含み、他方の部分は医用デバイスの残りのユニットを含む。血糖測定ユニット110は、好ましくはインターフェース170を介して受領ユニット120に血糖測定値データを送る。さらなる代替形態によれば、医用デバイスは、血糖値を測定する血糖測定ユニットを含まず、外部ユニットから血糖値データを受ける。
【0050】
好ましくは、血糖測定値の測定は、血糖測定ユニット110にそれぞれの信号を送る受領ユニット120によって開始される。好ましい一代替形態によれば、受領ユニット120は、ユーザ入力ユニット150を経由して受けたユーザ入力によりまたは検査ストリップを検出するスロット112からの信号に基づいて生成されるトリガ信号を受ける。代替的には、トリガ信号は、クロックユニット180によりまたはプロセッサ140により自動的に生成される。
【0051】
好ましくは、受領ユニット120は、例えば複数の機能ユニット間のデータハンドリングを管理するマイクロプロセッサまたはバスシステムの入力ポートおよび出力ポートなどによって代表される。これは、例えばマイクロプロセッサまたはマイクロプロセッサに接続された外部バスシステムにおいて実装されたアドバンストマイクロプロセッサバスアーキテクチャ(AMBA)バスシステムなどのバスシステムを含む。受領ユニット120を介して、データは、要求に応じてデータ記憶装置130から検索され、プロセッサ140に、ディスプレイユニット160に、またはインターフェース170に送られる。さらに、受領ユニット120は、トリガ信号または制御信号などの制御信号を例えば血糖測定ユニット110、ディスプレイユニット160、またはインターフェース170などに送る。
【0052】
データ記憶装置130は、ユーザ入力ユニット150を介して入力されたデータ、各測定データに関連するタイムスタンプおよび/または少なくとも1つのイベントタグと共に血糖測定ユニット110から受けた複数の血糖測定データ、例えばユーザ入力ユニット150を介してユーザにより提供されるかまたは投与デバイスにより測定されインターフェース170を介して提供される複数の適用薬剤用量値、プロセッサ140により処理された複数の血糖測定値から算出されたデータ、および/またはインターフェース170を介して受けたデータを記憶するために配置される。さらに、データ記憶装置は、プロセッサ140により決定され、例えば確定キー152などを使用してユーザにより確定された薬剤用量値などのデータを実際に適用される薬剤用量値として記憶するために配置される。
【0053】
さらに、データ記憶装置130は、プロセッサ140に、ディスプレイユニット160に、および/またはインターフェース170に記憶したデータを提供するために配置される。好ましくは、データ記憶装置130は、フラッシュメモリなどの半導体メモリとして実装される。代替的には、データ記憶装置130は、ハードディスクメモリまたはプロセッサ140のオンチップメモリとして実装される。
【0054】
好ましくは、プロセッサ140は、プロセッサまたはデータを処理することが可能な任意の他の機能ユニットである。
【0055】
好ましくは、ユーザ入力ユニット150は、1つまたはそれ以上のプッシュボタン151、152、153、154を含むキーボードとして実装される。このキーボードは、1つまたはそれ以上のソフトキーを含んでもよく、この場合にソフトキーの機能は、ディスプレイ162上に表示される。代替的には、ユーザ入力ユニット150は、キーボードまたはタッチスクリーンである。代替的には、ユーザ入力ユニット150は、音声入力によるデータの入力が可能となるように、音声入力を受けるためのマイクロフォンを含む。
【0056】
血糖測定の円滑化の後に、タグが、生活様式データに関する測定値と自動的に関連付けられる。この自動選択されるタグは、上または下キー153、154を押すことにより、例えば空腹時血糖値、食前血糖値、食後血糖値、および前述の生活様式パラメータのいずれにも関連付けられない血糖値である測定値にそれぞれ関する空腹時タグ、食前タグ、食後タグ、およびタグなしなどの種々のタグを上または下にスクロールすることによって変更できる。
【0057】
好ましくは、ディスプレイユニット160は、LCDまたはLEDディスプレイ162を含む。好ましくは、ディスプレイは、例えば現時点において測定される血糖値がユーザに対する追加の指示と共に表示されるように、複数の英数字を表示する。代替的にはまたは追加的には、ディスプレイユニット160は、グラフまたはアイコンなどのグラフィックを表示するためのグラフィックディスプレイを備える。さらに、ディスプレイユニット160のディスプレイは、タッチスクリーンを含んでもよい。
【0058】
好ましくは、インターフェース170は、IRDA、ブルートゥース(登録商標)、GSM(登録商標)、UMTS、ZigBee、またはWI−FI等の無線インターフェースである。代替的には、インターフェースは、データを受信および送信するためのUSBポート、ミニUSBポート、シリアルデータポート、パラレルデータポート等の有線インターフェースである。さらなる代替的な実施形態では、医用デバイス100は、インターフェース170を含まない。
【0059】
別の代替的な実施形態によれば、医用デバイス100は、メモリカードリーダまたはメモリカードリーダインターフェースを含む。好ましくは、メモリカードリーダは、フラッシュメモリカードなどのメモリカード、または任意のタイプのSIMカードから情報を読み取るように適用される。これを目的として、メモリカードは、選択されるアルゴリズムの中の少なくとも1つが、対応するパラメータ、血糖値履歴、および/または投与インスリン用量等と共に記憶されるメモリを含む。したがって、医用デバイス100が欠陥を有する場合に、関連データは、医用デバイス100のメモリカードリーダから容易に取り出し、新規の医用デバイス100に移し替えることが可能なメモリカード上に依然として記憶される。さらに、メモリカード100は、例えばHCPなどに治療履歴に関する情報を提供するために使用される。
【0060】
メモリカードがモバイル通信ネットワークに加入者識別番号を提供するSIMカードであり、インターフェース170がさらにモバイル通信インターフェースである場合には、医用デバイス100の追加の機能が、電気通信チャンネルを介してSIMカードのプロバイダによってロック解除される。これにより、医用デバイス100が、UMTSまたはGSM(登録商標)などの所定のチャンネルを経由して他の電気通信デバイスと通信可能となる。SIMカードに記憶されたIMSIとも呼ばれる国際移動体加入者識別番号により、医用デバイス100は、ネットワーク内で自体を識別し、したがってネットワークを介してアドレス指定できる。かかる場合には、医用デバイス100は、例えば電話番号に結び付けてモバイル通信ユニットをアドレス指定することなどによって、インターフェースユニット170を介して容易に確認し、遠隔制御し、更新し、モニタリングすることができる等となる。
【0061】
さらに、医用デバイス100は、SMS、Eメール、またはモバイルインターネット接続を介してデータを送信することが可能である。さらに、これにより緊急時に医用デバイス100の位置特定をすることが可能となる。
【0062】
血糖測定ユニット110が例えば植え込まれたセンサである場合には、インスリンポンプまたは他の薬剤用のポンプと共に自動送達システムを形成する用量送達ユニットが、さらに用意される。この送達システムは、適用される薬剤用量を決定し、インターフェース170を介してデータ記憶装置130にそれぞれの適用タイムスタンプと共に用量を提供してもよい。
【0063】
図5に示すように、医用デバイス100のプロセッサ140は、複数のプロセス工程を実施することが可能である。一実施形態によれば、例えば、キー151、152、153、もしくは154、好ましくは所定時間に対する確定キー152を押すことによりオンに切り替えた後か、またはスロット112内に検査ストリップを検出した後に、医用デバイス100は、医用デバイス100の機能構成要素を初期化するための初期化工程310を実施する。この後に、好ましくは「BG測定」、「ログブック」、[設定」、および/または「滴定」などの動作ルートである、医用デバイス100において実施される種々の動作ルートが、ディスプレイ工程320において表示される。
【0064】
工程330では、ユーザは、例えば上または下にスクロールするためのキー153、154などによりユーザ入力ユニット150を介して表示された動作ルートの中の1つを選択し、確定キー152を使用してルートの選択を確定する。代替的には、例えば「投薬ヘルパー(dose helpe)キー」とも呼ばれる「滴定」ルート用のキーなど、動作ルートの中の1つまたはそれ以上に対する個別のキーが設けられてもよい。
【0065】
工程340で、選択された動作ルートが実行される。一例としては、ルート「BG測定」が、血糖測定を実行するために選択される。このルートの実行時に、ユーザ/ユーザは、血液試料を検査ストリップに供給することを要求される。
【0066】
「ログブック」ルートでは、以前の測定値および統計結果の履歴が算出および表示される。「設定」ルートは、例えば複数のプリセットイベントに対するタグ付選択先読みのための時間範囲などの医用デバイス100のいくつかのパラメータのユーザによる規定および決定を可能にする。「滴定」ルートでは、用量示唆が、第1のモードまたは第2のモードにおいて基礎インスリンまたは類似体に対して医用デバイス100により与えられる。
【0067】
ルート「BG測定」の選択後に、工程350で、血液液滴が、医用デバイス100のスロット112に挿入される検査ストリップの検査部分に配置される。
【0068】
代替的な動作プロセスによれば、ある特定の動作ルートが事前選択される場合に、工程310〜340が省略される。この場合には、初期化後に、ユーザにより事前選択されるか、または例えばスロット112への検査ストリップの完全な挿入の検出などのある特定のイベントにしたがって自動的に選択される事前選択された動作ルートのとき、動作プロセスは、続く工程350に進み、ユーザに血液液滴の配置を要求する。
【0069】
次いで、工程360で、測定ユニット110は、例えば電気化学的方法または光学的方法によって、血糖値を決定し、ディスプレイ162にそれぞれの新規の測定値を表示する。
【0070】
次いで工程370で、クロックユニット180は、日時情報を含む現時点の測定のタイムスタンプを生成する。タイムスタンプもまた、ディスプレイ162に表示され、現時点の血糖測定値および関連タイムスタンプが共に、受領ユニット120によりデータ記憶装置130に転送される。
【0071】
次の工程380において、ユーザは、食前タグの場合には図4b)に示すように完全なリンゴによって表され、食後タグの場合には図4c)に示すように齧られたリンゴによって表されるイベントタグ「食前」および「食後」の一方を選択し、タグを確定する。次いで、プロセッサ140は、好ましくはユーザによるさらなる確定を伴わずに、タイムスタンプの時間情報にしたがって食事時間に関する上記の時間範囲にしたがった関連する食事を自動的に選択してもよい。例えば、プロセッサは、現時点のタイムスタンプが午後7:35である場合には、「夕食」を選択する。したがって、タグは、情報「食前」または「食後」および「夕食」を含み、複合タグを形成し、この複合タグは、次いでプロセッサ140により始動されるデータ記憶装置130に記憶される。
【0072】
確定が必要であることを示すために、ディスプレイ162に表示されるタグ記号168が明滅/点滅する。次いで、ユーザは、例えば確定キー152を押すことなどにより空腹時タグを確定してもよい。代替的には、ユーザは、上および下キー153、154を使用して食前タグ、食後タグ、またはタグなし(空無)にタグを変更してもよい。正確なタグが選択されると、ユーザは、確定キー152を押すことによりタグを確定する。確定キー152によりタグを確定することによって、表示されたタグ記号の点滅が停止し、タグ記号が明滅することなく継続的に表示される。この状態において、上/下キー153、154を押してもタグは変化しない。次いで、プロセッサ140は、受領ユニット120を介してデータ記憶装置130に最近の測定値に関連付けられた確定済みタグの記憶を開始させる。
【0073】
次のオプションの工程390では、現時点の測定値に対するコメントが、上および下キー153、154を使用してユーザにより選択される。次いで、コメントは確定キー152を用いて確定され、次いで、選択されたコメントはやはり現時点の測定値に関連付けられてデータ記憶装置130に記憶される。
【0074】
代替的にはまたは追加的には、ユーザは、工程390で、医用デバイス100の最終測定または最終使用以来、低血糖イベント(低症状)が生じたか否かを尋ねられ、答えがはいである場合には、何回および/または高血糖イベント(高状態)が生じたか否かを尋ねられ、答えがはいである場合には、何回かを尋ねられる。代替的にはまたは追加的には、ユーザは、例えば医用デバイスの最終使用または最後(前回)の測定値のタイムスタンプなどの所定の時点の後に、注入された薬剤用量値に関する情報を提供しなければならず、好ましくは、注入された薬剤用量値は、滴定方法により最後(前回)に示唆された投薬の用量として自動的に選択される。
【0075】
医用デバイス100が「BG測定」ルートにある場合に、デバイスは、例えば新たな動作がないまま120秒が経過した後に自動的にスリープ状態(工程400)に切り替わり得る。デバイスが、新規の測定値を報告した場合には、デバイスは、例えばユーザ干渉のないまま60秒が経過した後に自動的にスリープ状態に切り替わる。
【0076】
上記で説明したように、医用デバイス100は、「ログブック」ルートと呼ばれる少なくとも1つのメモリ点検モードを実現する。「ログブック」ルートは、ユーザが例えば確定ボタン152などを押すことにより医用デバイス100を起動すると、開始される。次いで、図3に示すような表示が測定値を伴って示される。ここで、ユーザは、ディスプレイの左下の「ブック」記号165から、自身が「ログブック」ルートにエントリしたことを認識する。
【0077】
「ログブック」ルートでは、測定値は、好ましくはエントリがデバイスに入力された順序で、または代替的には測定値に割り当てられた日時にしたがって表示される。特に最新の血糖測定値が、「ログブック」ルートへのエントリ時に示される。上および下キー153、154を押すと、ユーザは、記録をスクロールすることができ、例えば下キー153を押すことにより、ユーザは、時間的に逆方向スクロールすることができ、上キー154を押すことにより、時間的に順方向にスクロールする。
【0078】
「ログブック」ルートにおいて、ディスプレイ162は、血糖測定値166を画面中央に最大サイズの数字としてさらに示す。測定値166の上方に、日時を含む関連付けられるタイムスタンプ167が表示される。右側には、関連付けられるタグが、記号168として示され、この記号は、例えば関連付けられるものが空腹時タグの場合には図3に示すように線引き削除された中身が空のリンゴを示し、関連付けられるものが食前タグの場合には図4b)に示すように完全なリンゴを示し、関連付けられるタグが食後タグの場合には図4c)に示すように齧られたリンゴを示し、関連付けられるタグがない場合には図4a)に示すように線引き削除された円を示す。さらに、ディスプレイ162の右下隅に、血糖値の測定単位が示される。
【0079】
「滴定」または「投薬ヘルパー」ルートでは、ユーザは、第1のモード(完全滴定)または第2のモード(部分滴定)において所定条件のいくつかが満たされると、好ましくは基礎インスリンまたは類似体について投薬示唆を与えられる。このルートで使用される方法は、少なくとも最新の空腹時グルコース値と、高状態および低状態の数および/または以前の投薬などの他の情報とに基づく。「滴定」ルートにおいてプロセッサ140により実行されるプロセス工程が、図6に示される。
【0080】
初めに、工程410で、ユーザは、動作メニュー中で上および下キー153、154を用いてスクロールすることにより「滴定」ルートを選択し、確定キー152を押すことによりこのルートを確定する。
【0081】
このルートの次の工程420で、ユーザは、空腹時タグでタグ付けされた1日以内に2つの空腹時測定値が存在する場合に、いずれの空腹時血糖測定値を滴定アルゴリズムに対して使用すべきかを尋ねられる。さらにこの工程では、以下のような追加データが、必要な場合またはまだ認識されていない場合に、ユーザから要求される。
・例えばユーザによるデータ管理ユニットの最終使用、前回の測定値の時間情報、もしくは前回に決定された薬剤用量値の時間情報などの、所定の時点後の低血糖イベントの発生または回数、
・例えばユーザによるデータ管理ユニットの最終使用、前回の測定値の時間情報、もしくは前回に決定された薬剤用量値の時間情報などの、所定の時点後の高血糖イベントの発生または回数、および/または
・例えば医用デバイスの最終使用もしくは最後(前回)の測定値のタイムスタンプなどの、ある特定の時点において注入された薬剤用量値。ここで、好ましくは、注入される薬剤用量は、最後(前回)に示唆された投薬の用量として自動的に選択される。
【0082】
さらに、工程420で、現在時間が最終既知投薬から所定の時間間隔内にあるか否か、または最終投薬が現在時間から所定の時間間隔未満の時間で、好ましくは18時間未満の時間で開始されたか否かが確認される。この場合に、続くプロセス工程は省略され、ディスプレイユニット160の表示は、投薬ヘルパーが最終インスリン投薬に近すぎるため使用できないというメッセージを示してもよいか、または投薬ヘルパーは、最終投薬の時間に関する別の質問を尋ね得る。この実施形態では、投薬ヘルパー機能は、用量投与に時間的に近い場合にのみ使用される。
【0083】
別の実施形態では、用量投与のために、1日の中のある特定の時間または時間範囲が予め定められる。例えば、通常投薬時間が午後7時となり、通常投薬時間範囲が午後4時〜午後10時の間となり得る。この場合には、現在時間が午後4時〜午後10時の間であるか否かに関する別の確認が、工程420の間に実施される。現在時間がこの範囲外である場合には、再び工程420が省略され、ディスプレイユニット160の表示は、投薬ヘルパーが通常投薬時にのみ作動可能となるため使用不可能であるというメッセージを示す。
【0084】
次に、工程430で、プロセッサは、実モードが第1のモードであるか否かを確認し、薬剤用量値は、例えば第1のモードでは0である第1のモードフラッグなどを使用して完全に調節される。図6のプロセスの第1の実行の間に、第1のモードフラッグは、第1のモードを示すゼロに設定される。
【0085】
その後、工程440で、実モードが第1のモードである場合には、所定の時間間隔にわたるおよび/または所定数の最近の測定値にわたるFBG値(例えば直近の30日間、直近の30日以内の最少で15個のFBG値など)が、目標範囲内にあるか否かという第1の条件が確認される。これに該当する(はいである)場合には、工程450で、プロセッサは、FBG値が安定化された様子である場合に、0から「滴定」ルートが現在第2のモードにあることを示す1へと第1のモードフラッグを変更する。さらに、実薬剤用量値(直近で適用されたもの)が、上限用量値として選択される。代替的には、上限用量値は、例えば直近5日間または直近30日間に適用された薬剤用量値の算術平均として決定される。次いで、プロセスは工程430に続く。
【0086】
工程440の第1の条件が「いいえ」で返答される場合には、プロセッサ140により実行されるプロセスが、第1のモードで継続され、工程460で少なくとも1つの所定の算出ルールを利用して、実薬剤用量値が変更されなければならないか否かを決定し、後続の薬剤用量値に関する示唆を、または薬剤用量が変更されなくてもよいという情報を、または例えばさらなる情報(例えばより最近のFBG値もしくは以前の薬剤用量値およびそれらの時間情報など)が必要となるため後続の薬剤用量値についての示唆が決定できないという情報をユーザに与える。
【0087】
好ましくは、この用量示唆は、以前の空腹時FBG値および/または他の測定された血糖値、以前に投与されたインスリン用量、および低血糖症状もしくは低血糖血などの他の生活様式情報に基づいてプロセッサ140によって決定される。さらに、運動情報、栄養成分表、および追加的な速効性インスリン用量ならびにストレス情報を考慮することができる。特に、単一のFBG値または例えば5日の期間の中の少なくとも3日の平均FBG値が、特定のユーザについて以前に規定された目標血糖範囲内であるか否かが決定される。単一または平均のFBG値が目標範囲を上回る場合には、通常は用量増加が示唆され、単一または平均のFBG値が目標範囲未満である場合には、用量減少が示唆される。
【0088】
例えば、以下の算出ルールが、第1のモードで使用され、目標範囲は、例えば90mg/dl(下限)〜130mg/dl(上限)となる。直近A日についてのFBG中間値(少なくともB FBG値の最小値が必須)が、所定のFBG目標範囲上限を上回る場合には、Y日ごとにX単位だけ薬剤(長時間作用性インスリン)用量値を増加させる(例えばA=5、B=3、X=2、Y=3)。さらに、直近D日についての少なくともC FBG値が、FBG目標下限未満である場合には、前回用量のZ1単位またはZ2%だけさらに薬剤用量値を減少させる(例えばC=2、D=3、Z1=2、Z2=5)。70mg/dl未満の低血糖測定値または低状態症状が存在する場合には、前回用量のE単位またはF%だけさらに薬剤用量値を減少させる(例えばE=4、F=10)。
【0089】
工程460におけるディスプレイユニット160の画面は、ユーザが示唆された用量を即座に投与した場合に、示唆されたインスリン用量を確定し保存することができることを示してもよい。この場合に、示唆され投与された用量は、記憶装置ユニット130に保存される。代替的には、ユーザは、示唆された用量を変更し、投与後にそれを保存してもよい。
【0090】
工程430で、第1のモードフラッグが0ではなく1である場合には、プロセスは第2のモードにあり、薬剤用量値は、部分的にのみ適用され、工程470に続き、後続の薬剤用量値の示唆が、少なくとも1つの第2の所定の算出ルールに基づいて決定される。そこで、例えば、直近A日についてのFBG平均値(少なくともB FBG値の最小値が必須)が、所定のFBG目標範囲上限を上回る場合には、後続の薬剤用量値についての示唆に関する中間結果が、Y日ごとにX単位だけ薬剤用量値を増加させた前回薬剤用量値によって決定される(例えばA=30、B=15、X=2、Y=15)。中間結果が上限用量値よりも高い場合には、前回薬剤用量値は変更されず、そのため後続の薬剤用量値についての示唆は、前回用量値と同一となる。中間結果が用量上限値以下である場合には、後続の薬剤用量値についての示唆は、中間結果として決定される。代替的には、前回薬剤用量値がY日ごとにX単位だけ薬剤用量値を増加されることを決定するルールは、第2のモードでは、用量の増加が示唆されないように使用されない。
【0091】
さらに、直近D日についての少なくともC FBG値が、FBG目標下限未満である場合には、中間結果は、前回薬剤用量値のZ1単位またはZ2%だけさらに減少された前回薬剤用量値として決定される(例えばC=7、D=20、Z1=2、Z2=5)。後続の薬剤用量値についての示唆は、中間結果または用量上限値および中間結果の算術平均として決定される。
【0092】
次いで、後続の薬剤用量値についての算出された示唆が、ディスプレイ162に表示される。提案されるインスリン用量は、ユーザが示唆用量を即座に投与した場合に、確定および保存される。この場合に、示唆され投与された用量は、記憶装置ユニット130に保存される。代替的には、ユーザは、示唆された用量を変更し、投与後にそれを保存してもよい。
【0093】
医用デバイス100が「滴定」ルートにある場合には、デバイスは、例えば新たな動作がないまま120秒が経過した後に自動的にスリープ状態に切り替わり得る。
【0094】
最後に、デバイス100は、2パーツデバイスとして実現できる点を指摘しておく。この場合に、データ記憶装置130、受領ユニット120、プロセッサ140、ユーザ入力ユニット150、ディスプレイユニット160、インターフェースユニット170、およびクロックユニット180は、スマートフォンまたは測定ユニット110とは別個の別のコンピュータなどのデバイスにおいて実現される。本発明の方法は、デバイスのハードウェア上においてソフトウェアプログラム(アプリケーションまたは「app」)として実行される。この場合には、キー151、152、153、および154は、タッチスクリーンのディスプレイ上にボタンフィールドとして実現される。
図1
図2
図3
図4a)】
図4b)】
図4c)】
図5
図6