【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の問題は、請求項1に記載の特徴を有するデータ管理ユニットによって解消される。
【0017】
特に、本発明のデータ管理ユニットは、
ユーザの生理学的パラメータ、好ましくは血糖レベルの複数の測定値、
好ましくはユーザによりそれぞれ測定または提供される、複数の適用される薬剤用量値、
生理学的値の測定時間および薬剤用量値の適用時間を含む、生理学的パラメータの複数の測定値に関するおよび薬剤用量値に関する時間情報、および
生理学的パラメータの1つまたはそれ以上の目標範囲
を記憶するように適用されたデータ記憶装置と、
プロセッサとを含み、該プロセッサは、
第1のモードまたは第2のモードで後続の薬剤用量値についての示唆を決定し、ここで、初めに、薬剤用量値決定は前記第1のモードにあり、
後続の用量値についての示唆の決定前に、複数の測定値の時間情報を使用して、複数の測定値が所定の時間間隔にわたりおよび/または所定数の最近の測定値にわたり1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かという第1の条件を確認し、第1の条件が真である場合には第1のモードから第2のモードに切り替えるように適用され、
ここで、第1のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆の決定は、生理学的パラメータの少なくとも1つの最近の測定値および少なくとも1つの最近の適用された薬剤用量値を使用して少なくとも1つの第1の所定の算出ルールに基づいており、
第2のモードにおいて、後続の薬剤用量値の示唆は、
第2の所定の算出ルールに基づいて決定され、ここで、後続の薬剤用量値についての示唆は、最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つに基づいて上限用量値以下となるように決定され、または
最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つと比較して安定したもしくは減少した用量を含む用量示唆を考慮する第3の所定の算出ルールに基づいて決定される。
【0018】
本発明のデータ管理ユニットは、好ましくはFBG値である血糖測定値が、第1のモード(例えば示唆された用量の完全な滴定が可能となるモード)において一貫して目標内またはその周辺となる、すなわち所定の時間間隔にわたり目標範囲内になる(第1の条件)とすぐに、プロセッサが、第2のモードに進み、示唆される薬剤用量値が、いくつかの測定値が目標外となっても、上限用量値を上回って増加されなくなるという利点をもたらす。第2のモードでは、薬剤用量値の若干の減少が可能となる。代替的には、第2のモードでは、限度用量値は、規定されないが、第1のモードと比較した場合に、用量増加を可能にするまたは考慮する少なくとも1つ算出ルールが、基本的にはオフに切り替えられ、したがって使用できなくなる。したがって、用量減少または安定的な用量を可能にするまたは考慮する少なくとも1つ第3の算出ルール(好ましくはこれは第1のモードの少なくとも1つの対応する算出ルールと同様であり得る)が、第2のモードにおいて適用される。すなわち、この場合には、用量示唆を与えることができないか、または与えられる用量示唆が最近に適用された用量値もしくは示唆された用量の一方以下となるかの、いずれかとなる。その場合に、最近適用された用量値/示唆された用量は、最後に適用された用量値/示唆された用量か、または所定数の最近適用された用量値/示唆された用量のもしくは所定の時間間隔にわたる最近適用された用量値/示唆された用量の平均値である。
【0019】
さらに、上限用量値は、薬剤用量についての以前の示唆の示唆された用量値として、または所定数の以前に示唆された用量の平均値として、または例えば2つの単位など所定の追加的な用量値を加えたこれらの両値の一方として規定される。さらに、上限用量値は、第2のモードにおける後続の示唆される用量値が、実上限用量値の決定のために使用される薬剤用量値についての以前の示唆未満となる場合に、これに対応して第2のモードで減少される。
【0020】
第1のモードにおいて、ユーザ(患者)は、生理学的パラメータの測定値が目標範囲に到達しそこに継続的に留まるという目的を有しつつ、少なくとも1つの第1の所定の算出ルールを使用して示唆された薬剤用量値を調節する。その場合に、糖尿病に関して、血糖測定値は、例えば90mg/dl〜130mg/dlの間などである目標範囲に到達するように滴定される。
【0021】
上述のように、第1の条件では、複数の測定値の時間情報を使用して、複数の測定範囲が、所定の時間間隔にわたりおよび/または所定数の最近の測定値にわたり1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かが確認される。これは、最少数の測定値が、1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かが確認される場合か、または所定範囲の最少数および最多数の測定値からの最少数の測定値が、1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かが確認される場合を含み、測定値は、最大時間フレーム内で集められ、測定値の個数は、例えば1日などの時間間隔当たりの最大量に限定され、1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満である。
【0022】
同様に、プロセッサが現時点において第2のモードにある場合には、後続の用量値についての示唆の決定前に、複数の測定値の時間情報を使用して、複数の測定値が、所定の時間間隔にわたるまたは所定数の最近の測定値にわたる1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限を上回るかまたは下限未満であるかという第2の条件が確認され、この第2の条件が真である場合には、プロセッサは、第2のモードから第1のモードに切り替わる。
【0023】
本発明では、「薬剤用量値」という用語は、例えば長時間作用性インスリンの単位などの絶対薬剤用量値を指す。したがって、この用語は、以前の薬剤用量値が考慮される場合には、それに対応して薬剤用量変化を含む。後続の(絶対)薬剤用量値についての示唆からの前回の(絶対)薬剤用量値の減算により薬剤用量変化を決定することは容易である。後続の薬剤用量値についての示唆は、次の薬剤用量値としてユーザに示唆される用量値である。ユーザは、例えば注射によってなど示唆された用量を適用してもよくまたはしなくてもよい。
【0024】
生理学的パラメータの複数の測定値に関するおよび薬剤用量値に関する時間情報は、生理学的値の測定時間および/または薬剤用量値の適用時間を含み得る。それは、例えば測定プロセスの完了またはデータ管理ユニットによる新規の測定値の受領などの、それぞれの測定値を結果としてもたらす測定プロセス中のある特定の時点の日時情報を含む各測定値に関連付けられるタイムスタンプによって実現される。通常は、タイムスタンプは、測定ユニットにより関連付けられ、それぞれの測定値と共にデータ管理ユニットに転送される。新規の測定値が、測定ユニットによりそれぞれのタイムスタンプに関連付けられない場合には、タイムスタンプは、測定値の受領後にプロセッサによって割り当てられる。薬剤用量値の時間情報は、薬剤用量値の決定の日時情報(ユーザが気づいて示唆された薬剤用量を即座に適用した場合)または適用時間としてそれぞれの薬剤用量に関してユーザにより提供される日時を含む時間情報を含むタイムスタンプであってもよい。
【0025】
好ましい一実施形態では、生理学的パラメータの測定値は、特にFBG値を含む。
【0026】
好ましい一実施形態では、プロセッサは、第2の算出ルールを実行するように適用され、初めに、生理学的パラメータの少なくとも1つの最近の測定値および少なくとも1つの最近の適用された薬剤用量値を使用して少なくとも1つの第1の所定の算出ルールに基づく後続の薬剤用量値についての示唆に関する中間結果が、決定され、次いで、中間結果が、上限用量値と比較され、その後、後続の薬剤用量値についての示唆が、
中間結果が上限用量値以上である場合に、上限用量値となるように、または
そうでない場合、中間結果もしくは中間結果と第3の所定の算出ルールにより算出された上限用量値との間の値となるように
決定される。
【0027】
例えば、第3の算出ルールにより、後続の薬剤用量値についての示唆は、中間結果および上限用量値の算術平均となるように算出される。
【0028】
別の実施形態では、プロセッサは、ユーザに関するさらなる生理学的パラメータおよび/またはイベントに関するさらなる情報に基づいて、少なくとも1つの第1の所定の算出ルールにより後続の薬剤用量値についての示唆を決定するようにさらに適用される。その場合に、ユーザに関するイベントは、イベントタグにより表される。好ましくは、血糖測定値についてのイベントタグは、空無イベント(タグなし)と、特に以下のイベント群、すなわち空腹時、食前、食後、朝食前、朝食後、昼食前、昼食後、夕食前、夕食後、夜間、および運動の中の少なくとも1つとを含む。
【0029】
好ましい一実施形態では、タグが、自動的に選択され、ユーザにより確定されることのみを必要とし、したがって本発明のデータ管理ユニットは、タグ選択のための工程数を減少させる。
【0030】
代替的な実施形態では、プロセッサは、「食前」または「食後」タグの一方がユーザにより選択された後に、少なくとも1つの食事イベントまたは空腹時タグの一方のタグを自動的に選択するように適用される。この実施形態では、データ記憶装置は、例えば「朝食」、「昼食」、および「夕食」などの食事のタグ付選択先読み(tagging preselection)のみのための時間範囲を含む。好ましくは、タグ選択のための「空腹時」時間範囲もまた提供される。また、この実施形態は、タグ付中にユーザを支援し、誤ったタグ付の危険性を軽減させる。
【0031】
生理学的パラメータに関するさらなる情報は、ユーザの食事摂取量および食事の種類か、または心拍数であってもよい。代替的にはまたは追加的には、プロセッサは、生理学的パラメータに関するデータ入力を受けるようにさらに適用され、データ入力は、以下の生理学的パラメータ、すなわち
例えばユーザによるデータ管理ユニットの最終使用、前回の測定値の時間情報、もしくは前回に決定された薬剤用量値の時間情報などの、所定の時点後の低血糖イベントの発生または回数、
例えばユーザによるデータ管理ユニットの最終使用、前回の測定値の時間情報、もしくは前回に決定された薬剤用量値の時間情報などの、所定の時点後の高血糖イベントの発生または回数
の中の少なくとも1つを含む。
【0032】
また、上記の問題は、同一の利点を有する上記で説明したデータ管理ユニットを含む医用デバイスによっても解消される。
【0033】
また、同じ理由により、上記の問題は、生理学的パラメータの1つまたはそれ以上の目標範囲を含むデータ記憶装置およびプロセッサを有するデータ管理ユニットを動作させるための方法であって、
第1のモードまたは第2のモードにおいて後続の薬剤用量値についての示唆を決定する工程であって、ここで、初めに、薬剤用量値決定は前記第1のモードにある、工程と、
後続の用量値についての示唆の決定前に、複数の測定値の時間情報を使用して、データ記憶装置に記憶された複数の測定値が所定の時間間隔にわたりおよび/または所定数の最近の測定値にわたり1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かという第1の条件を確認し、第1の条件が真である場合には第1のモードから第2のモードに切り替える工程と
を含み、
ここで、第1のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆の決定は、生理学的パラメータの少なくとも1つの最近の測定値および少なくとも1つの最近の適用された薬剤用量値を使用して少なくとも1つの第1の所定の算出ルールに基づいており、
第2のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆は、
第2の所定の算出ルールに基づいて決定され、ここで、後続の薬剤用量値についての示唆は、最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つに基づいて上限用量値以下となるように決定され、または
最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つと比較して安定したもしくは減少した用量を含む用量示唆を考慮する第3の所定の算出ルールに基づいて決定される、方法によっても解決される。
【0034】
本発明の方法の実施形態およびそれらの利点は、データ管理ユニットに関連して既に上記で説明された。したがって、本発明の方法の実施形態に関して、データ管理ユニットの説明を参照とする。
【0035】
上述したものと同一の利点により、問題は、生理学的パラメータの1つまたはそれ以上の目標範囲を含むデータ記憶装置およびプロセッサを有するデータ管理ユニットを動作させるためのコンピュータプログラムであって、
第1のモードまたは第2のモードにおいて後続の薬剤用量値についての示唆を決定するためのコードであって、ここで、初めに、薬剤用量値決定は前記第1のモードにある、コードと、
後続の用量値についての示唆の決定前に、複数の測定値の時間情報を使用して、複数の測定値が所定の時間間隔にわたりおよび/または所定数の最近の測定値にわたり1つまたはそれ以上の目標範囲の中の対応する目標範囲の上限未満であるか否かという第1の条件を確認し、第1の条件が真である場合には第1のモードから第2のモードに切り替えるためのコードと
を含み、
第1のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆の決定は、生理学的パラメータの少なくとも1つの最近の測定値および少なくとも1つの最近の適用された薬剤用量値を使用して少なくとも1つの第1の所定の算出ルールに基づいており、
第2のモードにおいて、後続の薬剤用量値についての示唆は、
第2の所定の算出ルールに基づいて決定され、ここで、後続の薬剤用量値についての示唆は、最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つに基づいて上限用量値以下となるように決定され、または
最近の適用された薬剤用量値の中の少なくとも1つと比較して安定したもしくは減少した用量を含む用量示唆を考慮する第3の所定の算出ルールに基づいて決定される、コンピュータプログラムによって、解消される。
【0036】
上記のコンピュータプログラムは、医用デバイスを動作させるための上記の本発明の方法に関連して上述したような実施形態によって実現される。
【0037】
さらに、上記の問題は、コンピュータを用いて使用するための、内蔵されたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、コンピュータプログラムコードが上述のコンピュータプログラムを含む、コンピュータプログラム製品によって解消される。
【0038】
本発明の様々な態様の上述の利点および他の利点は、添付の図面の説明と共に以下の詳細な説明を読むことにより当業者に明らかになろう。上記もしくは下記で説明されるおよび/または図示される全ての特徴は、特許請求の範囲またはそれらの後方参照に含まれるものとは無関係に、本発明の対象を本質的にもしくは任意の組合せで形成する。
【0039】
本明細書では、本発明の例示の実施形態が概略図を参照として説明される。