特許第6696983号(P6696983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696983
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】埋め込み可能な閉塞システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
   A61B17/12
【請求項の数】21
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-528940(P2017-528940)
(86)(22)【出願日】2015年11月25日
(65)【公表番号】特表2017-535382(P2017-535382A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】EP2015077586
(87)【国際公開番号】WO2016083428
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2018年10月12日
(31)【優先権主張番号】1461420
(32)【優先日】2014年11月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517184118
【氏名又は名称】ウロマム
【氏名又は名称原語表記】UROMEMS
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ラムラウィ、アミド
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−540964(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01584303(EP,A1)
【文献】 特表2016−510238(JP,A)
【文献】 特開2006−231061(JP,A)
【文献】 特表2012−515064(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/118335(WO,A1)
【文献】 特開2009−207893(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0211175(US,A1)
【文献】 米国特許第4222377(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
A61F 2/48
A61F 2/04
A61M 25/00
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人または動物の体内に埋め込み可能な閉塞システムであって、
・閉塞すべき自然導管の少なくとも一部分を取り囲むように意図された、可変容積の流体を含む膨張可能な閉塞スリーブ(3)と、
・流体で満たされる可変容積を有するリザーバ(5)であって、固定部分と、前記固定部分に対して直線的に変位させることで前記リザーバ内の容積を調節可能に構成される可動部分と、を備えるリザーバ(5)と、
・前記リザーバ(5)と前記閉塞スリーブ(3)との間の流体接続部(2)と
を備える流体回路と、
前記リザーバの容積を調節するために前記可動部分を前記固定部分に対して直線的に変位させるように、前記リザーバの前記可動部分に結合されたアクチュエータと
を備え、
前記アクチュエータと、可変容量を有する前記リザーバとが、ガスを含む密閉ケーシング(1)内に配置される閉塞システムにおいて、
前記閉塞システムは、
前記密閉ケーシング(1)内に配置され、前記アクチュエータおよび/または前記リザーバの前記可動部分に機械的に結合され、前記リザーバの前記可動部分の変位方向での牽引力および/または圧縮力を測定するように配置されたセンサ(21、22)であって、測定される前記牽引力および/または前記圧縮力が、少なくとも、
・前記流体回路内の流体圧力に関係する、可変容積を有する前記リザーバの前記可動部分に及ぼされる力(Foccl)と、
・前記密閉ケーシング内のガス圧力に関係する、可変容積を有する前記リザーバの前記可動部分に及ぼされる力(Fcasing)と、
により生じるセンサ(21、22)と、
前記流体回路内の前記流体圧力(P1)を測定するためのデバイスであって、前記センサ(21、22)によって測定される前記牽引力および/または前記圧縮力と、前記リザーバの前記可動部分の実効圧力表面積(Seff)と、前記密閉ケーシング内の前記ガス圧力に関係する、可変容積を有する前記リザーバの前記可動部分に及ぼされる前記力(Fcasing)とを少なくとも考慮に入れた計算から前記流体圧力(P1)を決定するように構成された処理ユニットを備えるデバイスと、
をさらに備えることを特徴とする閉塞システム。
【請求項2】
前記リザーバの前記容積によって前記流体回路内の前記流体圧力を制御するための前記デバイスは、
前記流体回路の前記流体圧力と前記リザーバの前記容積との関係が記録されたメモリと、
−前記流体回路内の設定された流体圧力値を受信し、
−前記メモリに記録された、前記流体回路の前記流体圧力と前記リザーバの前記容積との関係から、前記設定された流体圧力値を達成することが可能な前記リザーバの容積を決定し、
−前記決定された容積を定義する前記固定部分に対する前記可動部分の位置に前記リザーバの前記可動部分を変位させるために前記アクチュエータを制御する
ように構成された前記処理ユニットと、
(a)患者が静止しており、予め決められた姿勢にあるときに、前記リザーバの予め決められた容積をそれぞれ定義する複数の予め決められた位置に、前記リザーバの前記可動部分を変位させるために前記アクチュエータを制御し、
(b)設定された位置ごとに、
−前記流体回路内の前記流体圧力を測定するための前記デバイスで、前記流体回路内の前記流体圧力(P1)を測定し、
−前記リザーバの前記容積それぞれに関して、前記流体回路内の前記測定された流体圧力を記録することによって前記メモリを更新する
ように構成された較正ユニットと、
を備える請求項1に記載の閉塞システム。
【請求項3】
前記センサは、前記リザーバの前記可動部分の前記変位方向での牽引力および圧縮力を測定することが可能である、請求項1または2に記載の閉塞システム。
【請求項4】
前記センサは、前記リザーバの前記可動部分の前記変位方向での圧縮力のみを測定することが可能であり、前記閉塞システムは、予め決められた圧縮プレストレスを前記センサに及ぼすように配置されたプレストレスデバイスをさらに備える、請求項1または2に記載の閉塞システム。
【請求項5】
前記処理ユニットは、前記流体回路内の前記流体圧力(P1)を決定するために前記圧縮プレストレスを考慮に入れるように構成される、請求項4に記載の閉塞システム。
【請求項6】
前記プレストレスデバイスは、少なくとも1つの圧縮ばね、牽引ばね、および/またはエラストマーパッドを備える、請求項4または5に記載の閉塞システム。
【請求項7】
可変容積を有する前記リザーバの前記可動部分は、可動壁(6)に結合された駆動システム(10、17)と、前記可動壁の位置に応じて伸張し圧縮される変形可能なベローとを備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の閉塞システム。
【請求項8】
前記処理ユニットは、前記流体回路内の前記流体圧力(P1)を決定するために前記ベローの剛性を考慮に入れるように構成される、請求項7に記載の閉塞システム。
【請求項9】
−前記駆動システムは、前記可動壁(6)に固定されたねじ(17)と、前記ねじ(17)に結合され、二重効果ビード当接部(16)で、前記アクチュエータによる駆動作用の効果の下で前記ねじの軸周りで回転運動可能なナット(10)とを備え、前記ナット(10)は、前記ナット(10)の回転が前記可動部分(6)の前記変位方向への並進でのみ前記ねじ(17)を駆動するように、前記ねじ(17)に結合され、
−前記センサ(22)は、前記リザーバの前記可動部分の前記変位方向での少なくとも1つの牽引力および少なくとも1つの圧縮力を測定するように前記二重効果ビード当接部(16)に配置される、
請求項7または8に記載の閉塞システム。
【請求項10】
可変容積を有する前記リザーバの前記可動部分は、回転する膜に結合された駆動システム(17)を備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の閉塞システム。
【請求項11】
可変容積を有する前記リザーバは、前記リザーバの前記固定部分を形成するシリンダと、前記シリンダ内で摺動して、前記リザーバの前記可動部分を形成するピストンとを備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の閉塞システム。
【請求項12】
前記アクチュエータは、圧電アクチュエータ、電磁アクチュエータ、電気活性ポリマー、および形状記憶合金から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の閉塞システム。
【請求項13】
前記密閉ケーシング(1)内に配置された、前記密閉ケーシング内の前記ガス圧力を測定するためのガス圧力センサをさらに備え、前記処理ユニットは、前記密閉ケーシング内の前記ガス圧力に関係する、可変容積を有する前記リザーバの前記可動部分に及ぼされる前記力(Fcasing)の決定の際に、前記測定されたガス圧力を考慮に入れるように構成される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の閉塞システム。
【請求項14】
可変容積を有する前記リザーバの壁は、前記密閉ケーシングの壁によって形成され、前記密閉ケーシングの壁は、穿孔可能な穿刺ポート(4)を備える、請求項1〜13のいずれか一項に記載の閉塞システム。
【請求項15】
前記流体回路内の応力が予め決められた閾値を超えたときに前記応力を低下させるための応力低下デバイスをさらに備える、請求項1〜14のいずれか一項に記載の閉塞システム。
【請求項16】
加速度計をさらに備え、前記処理ユニットは、前記加速度計の測定データから、
患者が静止しており、予め決められた姿勢にあるかどうかを決定するように構成される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の閉塞システム。
【請求項17】
前記流体圧力を測定するための前記デバイスは、前記リザーバの前記容積の調節中に前記流体圧力を測定し、前記デバイスによって測定された前記リザーバの前記容積の調節中の前記流体圧力の測定値と期待値との合致を確かめるように構成される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の閉塞システム。
【請求項18】
人工尿道括約筋からなる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の閉塞システム。
【請求項19】
前記処理ユニットは、前記流体回路内の相対流体圧力(P2)を計算するように構成され、前記相対流体圧力は、前記流体回路内で決定される前記流体圧力(P1)と、患者に及ぼされる大気圧(Patm)との差に等しい、請求項1〜18のいずれか一項に記載の閉塞システム。
【請求項20】
前記患者の体外に配置されるように意図されるとともに前記患者に及ぼされる大気圧を測定するように適合された気圧センサをさらに備え、前記気圧センサは、前記流体回路内の前記流体の前記相対流体圧力を計算するための前記処理ユニットに前記気圧センサによって測定された大気圧の測定値を伝達することが可能である、請求項19に記載の閉塞システム。
【請求項21】
前記処理ユニットは、前記閉塞スリーブの所与の作動の際に、前記流体回路内の前記流体圧力と既知の前記相対流体圧力とから、前記患者に及ぼされる大気圧を決定するように構成される、請求項19に記載の閉塞システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人または動物の体内での埋め込み可能な閉塞システムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体内に埋め込み可能な閉塞システムによって解剖学的導管を閉塞する方法が知られている。
【0003】
解剖学的導管の閉塞は、流体で満たされる膨張可能なスリーブによって保証され、膨張可能なスリーブは、膨張可能なスリーブ内の流体の体積に応じて、閉塞すべき部分により強いまたはより弱い圧力を及ぼす。
【0004】
例えば、様々な人工尿道括約筋は、この原理に基づき、尿道に圧力を及ぼす。既知の製品のうち、American Medical SystemsによってAMS800として市販されているインプラント、またはZephyrによってZSI375として市販されているインプラントを挙げることができる。同様の原理は、胃の周りに配置される膨張可能なスリーブを含む胃リングなど他のタイプの用途でも見られる。
【0005】
流体で満たされる膨張可能なスリーブは、例えば閉塞すべき導管を完全にまたは一部取り囲む様々な形態で形成されてよく、埋め込み可能なシリコーンや埋め込み可能なポリウレタンなど様々な生体適合材料で形成されてよい。
【0006】
解剖学的部分の閉塞に必要とされる膨張可能なスリーブ内の流体の注入および吸引は、例えば人工尿道括約筋AMS800およびZSI375に関しては手動でもしくは受動的に実現することができ、またはより先進のインプラントに関しては自動でもしくは能動的に(例えば電源から)実現することができる。
【0007】
閉塞すべき導管に及ぼされる圧力の調整を可能にするために、膨張可能なスリーブは、流体のリザーバと流体接続し、リザーバは、(解剖学的導管に及ぼされる圧力を上昇させるために)リザーバからスリーブに、または(解剖学的導管に及ぼされる圧力を減少させるために)スリーブからリザーバに流体を注入するために構成されたアクチュエータと結合される。膨張可能スリーブと、リザーバと、それらの間の流体接続との全体が流体回路を形成する。
【0008】
そのような閉塞システムでは、膨張可能なスリーブ内または流体回路の別の点で圧力を測定する必要があり得て、例えば、アクチュエータが使用不可にされているときに圧力をチェックし、またはさらにそのアクチュエータによって発生される圧力を制御する。
【0009】
欧州特許第1 584 303号明細書は、閉塞スリーブに埋め込まれた圧力センサの使用を開示している。しかし、そのような解決策は、センサの集積、嵩張り、封止、および生体適合性の問題を生じるので、工業的に実現することができない。
【0010】
この目的で、様々なタイプの圧力センサがある。
【0011】
埋め込み可能なシステムにおいて企図されることがあるセンサのうち、流体と接触する可撓性の膜に基づく圧力センサを使用することができる。それにも関わらず、これらのセンサは、生体適合性があるとともに経時的に安定でなければならず、また、センサまたは関連の電子機器内への流体または湿気の浸入を避けるためにセンサの完全な封止を保証する必要がある。
【0012】
この問題の解決策は、システムの封止を保証する可撓性の金属膜を備える圧力センサの使用であり得る。しかし、そのようなセンサは、いくつかの欠点を有する。1つには、センサの金属膜が薄いので、製造方法が細心の注意を要するものになり得る。実際、膜での溶接の熱的影響による機械的応力が膜の剛性に影響を及ぼすことがあり、これは、膜の機械的特性の大きな不均衡を誘発することがある。さらに、このタイプのセンサは、一般に封止され、厳密に言えば圧力センサと接触する非圧縮性流体で満たされる。したがって、(数十の要素からなる)システムの様々な部分を組み立てるための方法は、細心の注意を要し、高価である。最後に、システムが埋め込まれるとき、インプラントの様々な要素を取り囲む線維形成は、膜の剛性の変化、したがって経時的な測定値のドリフトを誘発することがある。
【0013】
解決すべき別の問題は、最小限のエネルギー消費で、規定された特定の圧力を解剖学的導管に加えることができるようにすることである。
【0014】
単純な解決策は、測定された閉塞圧に基づくシステムを使用することである。閉塞圧を測定するための手段のうち、適切なセンサを介して流体回路内の圧力を直接測定するシステム、または米国特許第8,585,580号明細書に記載されているように例えばアクチュエータによって消費された電流から間接的に圧力を測定するシステムを挙げることができる。
【0015】
しかし、インビボでの試験[1]によって、閉塞中に流体回路内の圧力が強く永続的に変化することが実証されている。圧力調整に基づくシステムの場合、この変化は、所与の設定値で圧力を安定させるためにアクチュエータを半永続的に付勢するという影響を有し、その結果、システムの過大な電力消費を誘発する。
【0016】
他の原理も提案されており、例えば、米国特許第8,585,580号明細書は、測定された圧力が規定の閾値を超えるまで膨張可能なスリーブに流体を移送するシステムを提案している。この解決策は、加えられた閉塞圧に関して非常に正確なわけではないという欠点を有する。実際、閉塞段階中、圧力が強く上昇し、次いで、組織および閉塞デバイスの弛緩により、低下することがある。したがって、閉塞すべき解剖学的導管に接触する閉塞デバイスに提供される流体は、一般に、望みの圧力を発生するのに十分ではない。
【0017】
さらに、埋め込み可能なシステムができるだけ小さい寸法でなければならない一方で、そのシステムが、必然的に容積を有する流体移送デバイスと、同様に埋め込み可能なシステムの容積の大きな部分を占めるバッテリとをさらに備える限りにおいて、上記のようなセンサの嵩張りも問題を生じる。このシステムへのそのようなセンサの組込みは、センサの嵩張りにより、困難であり得る。さらに、このタイプのセンサは、外部と接触しなければならず、かつ圧力測定のために内部とも接触して電子モジュールと通信しなければならないので、レーザ溶接など高信頼性の気密製造プロセスを適用する必要がある。これは、製造段階での制約となることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、既存のシステムの欠点を取り除くことができる可能性を提供する埋め込み可能な閉塞システムを設計することである。特に、このシステムは、スリーブ内の圧力の測定を確実に可能にするとともに、生体適合性であり、封止されており、埋め込み可能なシステムの嵩張りとこの圧力を調整するのに必要なエネルギーの消費とを最小限にする。好ましくは、上記システムは、スリーブ内の圧力の制御も可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的のために、人または動物の体内に埋め込み可能な閉塞システムであって、
−流体回路であって、
・閉塞すべき自然導管の少なくとも一部分を取り囲むように意図された、可変容積の流体を含む膨張可能な閉塞スリーブと、
・流体で満たされる可変容積を有するリザーバであって、固定部分と可動部分とを備えるリザーバと、
・リザーバと閉塞スリーブとの間の流体接続部と
を備える流体回路と、
−リザーバの容積を調節するために上記可動部分を固定部分に対して直線的に変位させるように、リザーバの可動部分に機械的に結合されたアクチュエータと
を備え、
アクチュエータと、可変容量を有するリザーバとが、ガスを含む密閉ケーシング内に配置される閉塞システムが提案されている。
【0020】
本発明によれば、上記システムは、
−ケーシング内に配置され、アクチュエータおよび/またはリザーバの可動部分に機械的に結合され、リザーバの可動部分の変位方向での牽引力および/または圧縮力を測定するように配置されたセンサであって、測定される上記力が、少なくとも、
・流体回路内の圧力に関係する、可変容積を有するリザーバの可動部分に及ぼされる力Focclと、
・ケーシング内のガス圧力に関係する、可変容積を有するリザーバの可動部分に及ぼされる力Fcasing
により生じるセンサと、
−流体回路内の流体圧力を測定するためのデバイスであって、センサによって測定される力と、リザーバの可動部分の実効圧力表面積と、ケーシング内のガス圧力に関係する、可変容積を有するリザーバの可動部分に及ぼされる力Fcasingとを少なくとも考慮に入れた計算から流体圧力を決定するように構成された処理ユニットを備えるデバイスと
をさらに備える。
【0021】
このシステムは、以下の利点を有する。1つには、ケーシング内にセンサが配置されることが、(ケーシング外部の)遠隔要素なしでの圧力の測定を可能にし、したがってケーシングから出る複雑な接続部の適用をなくす。そのような接続部は、封止を保証しなければならない。さらに、生体適合性は、ケーシングによって保証され、したがってセンサの設計に関して特定の制約を生じない。最後に、センサがスリーブの加圧システムに組み込まれるので、必要な嵩張りが最小限に抑えられる。
【0022】
好ましい実施形態によれば、システムは、リザーバの容積によって流体回路内の流体圧力を制御するためのデバイスをさらに備え、
デバイスは、
・流体回路の圧力と上記リザーバの容積との関係が記録されたメモリと、
・処理ユニットであって、
−流体回路内の設定された流体圧力値を受信し、
−メモリに記録された、リザーバ内の圧力とリザーバの容積との関係から、設定された圧力値を達成することが可能なリザーバの容積を決定し、
−必要であれば、決定された容積を定義する位置にリザーバの可動部分を変位させるためにアクチュエータを制御する
ように構成された処理ユニットと、
・較正ユニットであって、
(a)患者が所定の状況にあるときに、リザーバの所定の容積をそれぞれ定義する複数の所定の位置にリザーバの可動部分を変位させるためにアクチュエータを制御し、
(b)上記の各位置ごとに、
−流体回路内の流体圧力を測定するための上記デバイスで、流体回路内の流体圧力を測定し、
−リザーバの容積それぞれに関して、流体回路内の上記測定された流体圧力を記録することによってメモリを更新する
ように構成された較正ユニットと
を備える。
【0023】
一実施形態によれば、センサは、リザーバの可動部分の変位方向での牽引力および圧縮力を測定することが可能である。
【0024】
別の実施形態によれば、センサは、リザーバの可動部分の変位方向での圧縮力のみを測定することが可能である;この場合、システムは、所定の圧縮プレストレスを上記センサに及ぼすように配置されたプレストレスデバイスをさらに備える。
【0025】
この場合、処理ユニットは、流体回路内の流体圧力を決定するためにプレストレスを考慮に入れるように構成される。
【0026】
プレストレスデバイスは、有利には、少なくとも1つの圧縮ばね、牽引ばね、および/またはエラストマーパッドを備える。
【0027】
一実施形態によれば、可変容積を有するリザーバの可動部分は、可動壁に結合された駆動システムと、上記可動壁の位置に応じて伸張し圧縮される変形可能なベローとを備える。
【0028】
この場合、処理ユニットは、有利には、流体回路内の流体圧力を決定するためにベローの剛性を考慮に入れるように構成される。
【0029】
有利な実施形態では、駆動システムは、可動壁に固定されたねじと、ねじに結合され、二重効果ビード当接部で、アクチュエータによる駆動作用の効果の下でねじの軸周りで回転運動可能なナットとを備え、ナットは、ナットの回転が可動部分の変位方向への並進でのみねじを駆動するように、ねじに結合され;さらに、センサは、リザーバの可動部分の変位方向での少なくとも1つの牽引力および少なくとも1つの圧縮力を測定するようにビード当接部に配置される。
【0030】
別の実施形態によれば、可変容積を有するリザーバの可動部分は、回転する膜と結合された駆動システムを備える。
【0031】
別の実施形態によれば、可変容積を有するリザーバは、リザーバの固定部分を形成するシリンダと、シリンダ内で摺動して、リザーバの可動部分を形成するピストンとを備える。
【0032】
有利には、アクチュエータは、圧電アクチュエータ、電磁アクチュエータ、電気活性ポリマー、および形状記憶合金から選択される。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、システムは、ケーシング内に配置された、ケーシング内のガス圧を測定するためのガス圧センサをさらに備え、処理ユニットは、力Fcasingの決定の際に、測定されたガス圧を考慮に入れるように構成される。
【0034】
有利には、可変容積を有するリザーバの壁は、ケーシングの壁によって形成され、上記壁は、穿刺可能な穿刺ポートを備える。
【0035】
有利には、システムは、流体回路内の応力が所定の閾値を超えたときに上記応力を低下させるためのデバイスをさらに備える。
【0036】
好ましい実施形態によれば、システムは、加速度計をさらに備え、処理ユニットは、加速度計の測定データから、患者が所定の状況にあるかどうかを決定するように構成される。
【0037】
より有利には、圧力を測定するためのデバイスは、リザーバの容積の調節中に流体圧力を測定し、測定値と期待値との合致を確かめるように構成される。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によれば、システムは人工尿道括約筋である。
【0039】
一実施形態によれば、処理ユニットは、流体回路内の相対流体圧力を計算するように構成され、相対圧力は、流体回路内で決定される流体圧力と、患者に及ぼされる大気圧との差に等しい。
【0040】
一実施形態によれば、システムは、患者の体外に配置されるように意図されるとともに患者に及ぼされる大気圧を測定するのに適した気圧センサを備えるデバイスをさらに備え、デバイスは、流体回路内の流体の上記相対圧力を計算するための処理ユニットに上記圧力測定値を伝達することが可能である。
【0041】
代替として、処理ユニットは、スリーブの所与の作動の際に、流体回路内の圧力と、流体回路内の流体の既知の相対圧力とから、患者に及ぼされる大気圧を決定するように構成される。
【0042】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】埋め込み可能な閉塞システムの全体図である。
図2】本発明の第1の実施形態による埋め込み可能な閉塞システムのケーシングの内部の断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態による埋め込み可能な閉塞システムのケーシングの断面図である。
図4】本発明の第3の実施形態による埋め込み可能な閉塞システムのケーシングの断面図である。
図5】本発明の第4の実施形態による埋め込み可能な閉塞システムのケーシングの内部の断面図である。
図6】プレストレスの存在下で圧縮力または牽引力センサによって測定することができる様々な力を示す図である。
図7】プレストレスが存在しない場合に圧縮力および牽引力センサによって測定することができる様々な力を示す図である。
図8】閉塞スリーブに注入される体積に応じた流体回路内の圧力の変化を示すグラフである。
図9】較正手順中に閉塞スリーブに注入される流体の様々な体積に関する、時間に対する流体回路内の圧力の変化を示すグラフである。
図10】本発明の第5の実施形態による埋め込み可能な閉塞システムのケーシングの断面図である。
図11】測定される力の例示を伴う、図10のシステムの力センサおよびアクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(埋め込み可能な閉塞システムの全般的な説明)
図1を参照すると、閉塞システムは、閉塞すべき自然導管(図示せず)の少なくとも一部を取り囲むように意図された、可変容積の流体を含む膨張可能な閉塞スリーブ3と、流体で満たされる可変容積を有するリザーバ5(図2〜5に示される)とを備える。
【0045】
閉塞スリーブは、生体適合性エラストマーで形成されてもよい(例えば、米国特許第4,222,377号明細書、カナダ特許第1,248,303号明細書、または米国特許第4,408,597号明細書参照)。
【0046】
上記リザーバは、固定部分と可動部分とを備え、可動部分の変位がリザーバの容積を変える。
【0047】
この目的で、閉塞システムは、リザーバの可動部分に機械的に結合されたアクチュエータを備え、上記可動部分を固定部分に対して直線的に変位させて、リザーバの容積を調節する。アクチュエータは、とりわけ、電磁モータおよび減速機を備えることがある。アクチュエータは、スリーブの圧力を制御するためのデバイス(詳細は後述する)によって制御される。
【0048】
リザーバの各容積に関して、可動部分は既知の実効圧力表面積を有し、この表面積は、実施形態に応じて一定でも可変でもよい。
【0049】
閉塞システムは、リザーバ5と閉塞スリーブ3との間に流体接続部2(典型的には配管)をさらに備える。
【0050】
したがって、リザーバ5の容積の変化は、スリーブ3内の流体の追加または引抜きを引き起こし、それにより、スリーブによって取り囲まれた導管に及ぼされる圧縮を増加または減少させる。
【0051】
可変容積のリザーバ、閉塞スリーブ、および流体接続部によって形成されたアセンブリを、以下の説明では流体回路と呼ぶ。
【0052】
閉塞スリーブの圧力を制御するためのデバイスに加えて、埋め込み可能なシステムは、所要の機能を全て生み出すことができる可能性を提供する1つまたは複数の電子モジュールを含む。さらに、埋め込み可能なシステムは、充電式電源を含んで、または含まずに、システムへの電力供給を可能にする。特定の構成では、電源は人体の外部にあり、埋め込み可能なシステムにエネルギーをワイヤレスで伝送する。
【0053】
可変容積を有するリザーバと、アクチュエータと、上記電子モジュールと、電源(必要であれば)とは、患者の体内に埋め込まれるように意図されたケーシング1内に配置される。ケーシング1は、気体、例えば空気を含み、上記ケーシングは、体内媒質の内外への流体または気体のいかなる伝達も避けるように封止されなければならない。ケーシングは、生体適合性材料で形成され、例えば埋め込み可能なチタンで形成されて、レーザ溶接によって封止されることがある。デバイスが埋め込まれている期間中のケーシングの完全な封止を保証にするために、とりわけヘリウム(例えば、ヘリウムの10−9mbar・L/s未満の漏れ速度)で封止のチェックを実現することができる。
【0054】
特定の実施形態によれば、ケーシングはガス圧センサを含むことがあり、ガス圧センサの機能は後述する。
【0055】
有利には、ケーシング1は、可変容積を有するリザーバを画定する壁に穿刺ポート4を備え、穿刺ポート4は、針で穿孔することができ、かつ針を引き抜いた後に封止可能に閉じることができ、リザーバの流体の注入または引抜きを可能にする。
【0056】
また、ケーシングは、アクチュエータおよび/または可変容積を有するリザーバの可動壁と機械的に接続するセンサも含み、このセンサは、リザーバの可動部分の変位方向での圧縮力および/または牽引力を測定することができる。
【0057】
この用途に適したセンサのうち、例えば、以下のものを挙げることができる:
−1つまたは複数の歪ゲージに基づくセンサ(そのようなゲージは牽引力と圧縮力の測定を可能にする);
−圧縮力を測定する、Interlink Electronicsによって市販されているFSR(商標)タイプ(「Force Sensing Resistor」の頭文字)の1つまたは複数のセンサ;および/または
−力の測定を可能にするメカニズムと結合された1つまたは複数の圧力センサ。例えば、流体が満たされたポケットと組み合わされ、所定の表面に対する圧力を測定するように配置され、それにより、測定表面に加えられる力の推測を可能にする油圧センサ
を挙げることができる。
【0058】
さらに、システムは、患者の周囲環境の大気圧の測定を可能にするデバイスを備えることがある。患者の身体に及ぼされている現在の大気圧を測定することが可能な気圧センサを、例えば患者が担持する外部デバイスに配置することができる。この測定結果は、埋め込み可能なケーシング内に配置された制御デバイスへのワイヤレスリンクによって送信することができる。
【0059】
(可変容積を有するリザーバ)
好ましい実施形態によれば、可変容積を有するリザーバは、ケーシング内に組み付けられたベローを備え、ベローおよびケーシングは、例えば埋め込み可能なチタンで形成される。ここで、可変容積を有するリザーバは、ベロー(可動部分として働く)と、ケーシングの壁と、ケーシングの上記壁と共に固定部分として作用するフードとからなる。さらに、リザーバは、リザーバの外部からの、および外部への流体の伝達を可能にするオリフィスを備える。
【0060】
可変容積を有するリザーバの機能を生み出すための金属製ベローの使用が当業者に知られている(例えば米国特許第4,581,018号明細書参照)。そのようなベローは、例えば、ServometerおよびWitzenmannによって市販されている。
【0061】
ベローは、可動壁の移動を可能にしながらインプラントの完全な封止を保証するという利点を有する。その実効圧力表面積は、ベローの全移動範囲にわたって一定と見なすことができる。
【0062】
それにも関わらず、デバイスの設計時にベローの機械的剛性を考慮に入れるべきである。ベローの機械的剛性は、デバイスの挙動に影響(力の生成や力の方向に対する影響など)を与えることがある。このパラメータを考慮に入れる方法については、以下に詳細に述べる。
【0063】
しかし、本発明は、可変容積を有するリザーバを形成するためにベローを使用することに限定されない。したがって、当業者は、可変容積を有するリザーバを形成するためにピストンまたは回転する膜を適用することもでき、これらは機械的剛性を有さないと考えられる。この場合、ベローの場合とは異なり、剛性は、圧力の計算においてゼロまたは無視できるとみなされる。
【0064】
リザーバの可動部分は、リザーバの実施形態に応じて一定でも可変でもよい実効圧力表面積を有する。
【0065】
ベローの場合、実効圧力表面積は一定とみなされ、製造業者によって与えられる。回転する膜の場合、実効圧力表面積は、回転する膜の位置に応じて変わり、様々な移動値に関して製造業者によって与えられる。
【0066】
シリンダ内で摩擦のない状態でピストンが摺動する場合、実効圧力表面積はピストンの前面表面積に等しい。
【0067】
(アクチュエータ)
アクチュエータは、可変容積を有するリザーバの可動部分を特定の力および所要の速度で変位させることを可能にするのに必要な力を有する機械的運動に電気的エネルギーを変換することを可能にする任意の電気機械システムから選択することができる。例えば、当業者に知られているアクチュエータのうち、圧電アクチュエータ、減速機と結合されたもしくは結合されていないブラシ付きモータもしくはブラシレスモータ(ブラシレスモータの場合、このモータは2極または4極からなることがある)、電気活性ポリマー、または形状記憶合金を挙げることができる。
【0068】
図2は、本発明の一実施形態を示し、ケーシング1の内部の一部の断面図を表す。
【0069】
可変容積を有するリザーバ5は可動部分を備え、可動部分は、この実施形態ではベロー9である。
【0070】
ベローはフランジ6を有し、フランジ6は、フランジ6に固定されたスポットホイール10を介して駆動ねじ17と結合され、ねじ17のねじ山と協働する雌ねじを有する。
【0071】
リザーバは、ケーシング1の壁の一部とベロー9とによって画定される。
【0072】
さらに、ケーシング1の壁は穿刺ポート4を備え、穿刺ポート4は、リザーバに流体を追加する、またはリザーバから流体を引き抜くために針によって穿孔することができる。
【0073】
リザーバ5は、閉塞スリーブ(図示せず)との流体接続を保証する配管用の接続部7をさらに備える。
【0074】
さらに、ケーシング1は、減速機8に結合されたモータ13を備えるアクチュエータを含む。コネクタ9は、リザーバの容積の増加または減少の必要に応じて一方向または他方向にモータを動作させるための命令を制御装置が送信するときに、モータ13が電力供給されるようにする。
【0075】
減速機は、歯付きホイール18に結合され、歯付きホイール18は、それ自体が駆動ねじ17に結合されて、モータ13の軸のトルクおよび回転を駆動ねじ17に伝達する。次いで、ねじ17の回転が、スポットホイール10を並進駆動し、これは、ねじ17の軸に平行な方向でフランジ6を並進に変位させる効果を有し、フランジ6の変位方向は、モータ13の回転方向に依存する。
【0076】
リザーバ5を取り囲むケーシングの内部空間11は、ガスを満たされる。
【0077】
したがって、リザーバ5の容積変化は、内部容積11、したがって上記容積11内のガス圧を変化させる効果を有する。
【0078】
任意選択で、ガス圧センサ(図示せず)を容積11内に配置して、この容積内の圧力を測定することができる。
【0079】
歯付きホイール18は、ボールベアリング16を介してブロック15内に収容され、ボールベアリング16は、ブロック15内での歯付きホイール18の回転を可能にする。歯付きホイール18が駆動ねじ17に固定されるので、ブロック15は、ねじ17によってケーシング内で並進駆動される。パッド20が、ケーシング1の壁からねじ17の回転軸に平行に延び、ブロック15の並進の案内を可能にする。
【0080】
リザーバ5とは反対側のブロック15の面に対面するケーシングの壁には、力センサが取り付けられる。マーク19は、圧力を測定および制御するためのデバイスにセンサの測定データを送信できるようにするコネクタを表す。
【0081】
この実施形態では、力センサ21は、圧縮力のみを測定する。
【0082】
それにも関わらず牽引力の測定を可能にするために、システムはプレストレスデバイス14を備え、プレストレスデバイス14は、所定の圧縮力を力センサに及ぼす。したがって、このプレストレスデバイスは、力センサに「オフセット」を生成し、これは、牽引力と圧縮力の両方の測定を可能にする。
【0083】
上記プレストレスデバイスは、案内パッド20と協働する1つまたは複数の調節ねじと、それぞれの調節ねじの頭部とブロック15との間に挿間された圧縮ばね、伸張ばね、および/またはエラストマーパッドとを備えることがある。
【0084】
この場合、スリーブの加圧システムへの力センサの組込みは特にコンパクトであり、したがって、埋め込み可能なシステムの嵩張りに関して不利益にはならない。
【0085】
図3は、本発明の別の実施形態を示し、ケーシング1の内部の一部の断面図を表す。
【0086】
図2と同じ参照符号を付された要素は同じ機能を果たし、したがって再度説明しない。
【0087】
この実施形態では、力センサ22は、例えば、歪ゲージを用いた測定に基づくものでよい。センサ22は、リザーバとは反対側で、ブロック15、および上記ブロックに面するケーシングの壁に取り付けられる。力センサ22は、圧縮力と牽引力との両方を測定することが可能である。この場合には、図2の実施形態のプレストレスデバイスは必要ない。
【0088】
図4は、本発明の一実施形態を示し、ケーシング1の内部の一部の断面図を表す。
【0089】
この実施形態では、リザーバ5の可動部分は、ベローではなく、回転する膜27である。図2と同様に、力センサ21は圧縮力のみを測定し、したがってプレストレスデバイス14に関連付けられる。
【0090】
図5は、本発明の別の実施形態を示し、ケーシング1の内部の一部の断面図を表す。
【0091】
図2と同じ参照符号を付された要素は同じ機能を果たし、したがって再度説明しない。
【0092】
この実施形態では、力センサ22は、例えば歪ゲージを用いた測定に基づくものでよい。力センサ22は、雌ねじ付きのスポットホイール10とフランジ6との間に組み込むことができる。また、雌ねじ付きのスポットホイール10と力センサ22とは、歪ゲージと雌ねじ付きの部分とを一体化した単一の完全なアセンブリを成すことができ、それにより、力測定と、駆動ねじ17による駆動とを実現する。力センサ22は、圧縮力と牽引力との両方を測定することができる。この場合、図2の実施形態のプレストレスデバイスは必要ない。
【0093】
図10は、本発明の別の実施形態を示し、ケーシング1の内部の一部の断面図を示す。
【0094】
図2と同じ参照符号を付された要素は同じ機能を果たし、したがって再度説明しない。
【0095】
この実施形態では、ねじ17は、ベロー9の可動フランジ6に固定され、回転しない。ベロー9の上側可動部分6の直線運動は、ねじ17を直線的に駆動させるナット10の回転によって行われる。ナット10は、減速機歯車8によって駆動されるホイール18に固定される。ナット10は、ねじ17の軸回りで1回転のみが許されるように配置される。このために、ビード16によって二重効果ビード当接部が力センサ22に配置され、ビード16により、ナット10が回転し、受ける力をねじ17の軸に沿って支えることが可能になる。ナット10に及ぼされる力は、他の構成において及ぼされる力と同じである。
【0096】
図11は、主な受ける力を示し、これらの力は、そこから流体回路内の圧力を推測する目的で力センサ22によって測定される。ねじ17の軸に沿った2つの方向での力を測定するために、力センサ22は、ビード当接部16に一体化されて、両方向の力を測定することができる。支持部29は、力センサ21を維持できる可能性を提供する。この実施形態では、力23、25、および26は、駆動ナット10に組み込まれたビード当接部16にある力センサによって測定される。この場合、力センサは、ベロー9のフランジ6に固定されたねじ17の軸に沿った両方向への力を測定するために配置された歪ゲージを備えるセンサでよい。
【0097】
図10および図11に示される実施形態は、スペースの面での利得を実現するという利点を有し、他の実施形態と比較して、同じ寸法のインプラントに関してベローのより大きな移動を実現できる可能性を提供する。さらに、機械的な一体化がより単純になる。
【0098】
(閉塞システムの流体回路内の圧力の決定)
流体回路内の圧力は、間接的に決定される。前段に示したように、可変容積のリザーバの壁の1つまたは流体回路の部分の1つへの圧力センサの組込みは制限因子となり、いくつかの欠点を有する。
【0099】
そのようなセンサの代わりに、本発明は、可変容積を有するリザーバの可動部分を使用して、閉塞システムの流体回路内の圧力を間接的に測定する。
【0100】
したがって、埋め込み可能なシステムは、流体回路内の流体圧力を測定するためのデバイスを備え、このデバイスは、上記力センサと、上記センサと結合された処理ユニット(例えばマイクロプロセッサ)とを備える。処理ユニットは、流体回路内の流体圧力を決定するために、上記センサによって獲得された力測定値、ならびにシステムの他の機械的、物理的、および寸法的パラメータを考慮に入れる。
【0101】
流体回路内の相対圧力を測定するために、高度および/または気象条件に関連する大気圧の変化を考慮に入れるために、現在の大気圧の測定を可能にするセンサ(例えば気圧センサ)を、患者が担持する外部デバイスに配置する。
【0102】
別の実施形態は、既知の相対圧力に等しい流体回路内の圧力(例えば、リザーバの可動部分の特定の位置に対する相対圧力がゼロ)を有するという所定の条件下であることが確実であるときには、流体回路から現在の大気圧を直接測定することに基づくことがある。
【0103】
ここで、以下に述べる両方の実施形態において大気圧の測定が考慮に入れられて、そこから、以下に述べるように絶対圧力の測定から相対圧力を推測する。
【0104】
以下の説明は、(牽引ではなく)圧縮のみを測定する力センサに基づいている。同じ原理を、圧迫および牽引を測定する力センサにも適用することができる。この場合、圧縮力と牽引力の両方を測定するために、力の「オフセット」の生成を可能にするプレストレスシステムはなくてよい。
【0105】
図6は、図2の実施形態の範囲内で、力センサによって測定される様々な力を示す:
−マーク23は、流体回路内の圧力に対応する力を表す;
−マーク24は、プレストレス力を表す;
−マーク25は、ベローの剛性に関係する力を表す;
−マーク26は、ケーシング内のガス圧に関係する力を表す。
【0106】
図7は、図5の実施形態の範囲内で、雌ねじ付きのスポットホイール10および可動壁6に配置された力センサによって測定される様々な力を示す:
−マーク23は、流体回路内の圧力に対応する力を表す;
−マーク25は、ベローの剛性に関係する力を表す;
−マーク26は、ケーシング内のガス圧に関係する力を表す。
【0107】
流体回路の圧力P1を推測するために、考慮するパラメータは以下のものである:
Seff:可変容積を有するリザーバの可動部分の実効圧力表面積(上記のように、この表面積は、システムの構成に応じて一定でも可変でもよい);
Fprest:プレストレスシステムによって生成された力;
K:可変容積を有するリザーバに関係する剛性(例えばベローの場合)。この剛性は、可変容積のリザーバの特定の構成(回転する膜またはピストンを備えるシステムの場合)では無視することができる;
i:基準位置に対する、可変容積を有するリザーバの可動部分の相対位置;
Flosses:力センサへの力の伝達中の、様々な機械部品の摩擦に関係する機械的損失;
Fsensor:力センサによって測定された力;
Pcasing:埋め込み可能な気密ケーシングに含まれるガスの圧力。この圧力は、基準位置に対する可動部分の位置および可動部分の実効圧力表面積から推測されるか、またはケーシング内に配置されたガス圧センサ(任意選択)によって測定されることがある。
【0108】
これらの要素から、可変容積を有するリザーバの可動壁に加えられるいくつかの力をそこから推測することができる:
Foccl:閉塞システムの流体回路内の圧力に関係する、可変容積のリザーバの可動部分での減少された(正または負の)力;
Fcasing:埋め込み可能な気密ケーシング内の圧力に関係する、可変容積のリザーバの可動部分での減少された(正または負の)力;
Fwall:可変容積のリザーバの可動部分の位置および剛性に関係する力。
【0109】
続いて、基準位置に対する可動部分の位置および可動部分の実効圧力表面積からケーシング内のガス圧が推測されると考えられる。
【0110】
力センサでの力のバランスは、以下のように表される:
Fsensor=Foccl+Fprest−Fwall−Fcasing−Flosses
ここで、
Foccl=P・Seff
Fwall=K・i
【数1】
ここで、PinitおよびVinitはそれぞれ、ケーシングが気密封止されているときのケーシング内の初期圧力および初期ガス体積に対応する定数である。
【0111】
例えば、Pinitは、ケーシングが気密封止されているときには大気圧に等しいことがある。
【0112】
プレストレスデバイスによって生成された力は、力センサでの「オフセット」の生成を可能にし、これが正および負の力の測定を可能にする。
【0113】
起点に対する可動壁の位置および可動壁の実効圧力表面積から、力Fcasingが推測される。この場合、ケーシングは完全に気密であるとみなされる。また、ケーシング外へのガスの損失は無視できると仮定することも可能であり、ガスの損失は無視されても、力Fcasingの計算において考慮に入れられてもよい。最後に、力Fcasingは、圧力センサによって直接測定され、表面積Seffを乗算することによって推測されることもある。
【0114】
したがって、そこから、閉塞システムの流体回路の圧力P1を推測することができる:
【数2】
【数3】
ここで、FprestおよびFlossesは、既知の定数である。
【0115】
力Fprestは、プレストレスのかかったばねによって発生されることがある。ブロック15の変位は非常に小さいので、ばねの移動はそれらの剛性に関して無視することができ、プレストレス力は一定であると考えることができる。
【0116】
Fprestは、所望の測定範囲全体にわたって負圧と正圧を測定することができるように選択される。
【0117】
力センサが圧縮力および牽引力を測定することができる場合には、プレストレスシステムを省くことが可能である(図3および図5で述べた実施形態の場合)。この場合、定数Fprestは、P1の計算において考慮に入れられない。
【0118】
流体回路内の相対圧力P2を推測するために、患者の身体に及ぼされている現在の大気圧を考慮に入れるべきである。圧力Patmの測定は、前の段落で述べたように実現することができる。
【0119】
この場合、P2は、以下のように計算される:
P2=P1+(Pinit−Patm)
【0120】
好ましい実施形態では、ケーシング内の空気体積を最大にするために(可変容積のリザーバでの最小容積となるようにリザーバの可動部分が初期位置にある)、ケーシングが封止される。これは、可動壁の位置に関係なく、ケーシング内のガスの圧力を常に正にすることができる可能性を提供する。
【0121】
以下の段落では、本発明で述べる方法による圧力の測定の2つの実施例を示す。
【0122】
以下の両方の実施例で述べるデバイスは、以下の特性を有する:
・Seff=1×10−3
・K=5N/mm
・Fprest=20N
・Vinit=10×10−5
・Pinit=1000hPa
・Patm=900hPa
・Flosses=0N
【0123】
これらの実施例では、ケーシングの封止中の大気圧(Pinit)が、流体回路内の圧力の測定中に患者の身体に及ぼされる大気圧(Patm)とは異なるとみなしている。
【0124】
(実施例1):圧縮力のみを測定する力センサを備える図2で述べた実施形態によるデバイスによる流体回路内の圧力の測定。
【0125】
i=0(リザーバの最小容積に対応するベローの上側位置)の場合、処理ユニットは、流体回路内の圧力P1を測定するために、以下の計算を行う:
【数4】
【0126】
例えば流体回路内の相対圧力がゼロの場合、力センサは、プレストレス(20N)の圧縮力と、患者の身体、したがって可撓性の閉塞スリーブに及ぼされる大気圧(900hPa)とケーシング内のガス圧(1000hPa)との差に関係する力とを測定し、すなわち、処理ユニットによって計算される値P1は、以下のようである:
Fsensor=20N+Seff×(Patm−Pinit)
Fsensor=20N+1.10−3×(90000−100000)=10N
【数5】
【0127】
そこから、流体回路内の相対圧力P2を推測することができる:
P2=P1+(Pinit−Patm)
P2=−10000+(100000−90000)=0Pa
【0128】
例えば流体回路内の相対圧力が5kPaの場合、力センサでの力は、流体回路での圧力Foccl(すなわち5N)と、プレストレスの力(すなわち20N)と、大気圧に関係する力(−10N)とによって生成されるものであり、すなわち、生じる力は15Nであり、すなわち、処理ユニットによって計算される値は以下のようである:
【数6】
【0129】
そこから、流体回路内の相対圧力P2を推測することができる:
P2=P1+(Pinit−Patm)
P2=−5000+(100000−90000)=5kPa
【0130】
例えば流体回路内の相対圧力が−5kPaの場合、力センサでの力は、流体回路での圧力Foccl(すなわち−5N)と、プレストレスの力(すなわち20N)と、大気圧に関係する力(すなわち−10N)とによって生成されるものであり、すなわち、生じる力は5Nであり、すなわち、処理ユニットによって計算される値は以下のようである:
【数7】
【0131】
そこから、流体回路内の相対圧力P2を推測することができる:
P2=P1+(Pinit−Patm)
P2=−15000+(100000−90000)=−5kPa
【0132】
例えばi=4mm(ベローの低い位置。ケーシング内でのガス圧縮と、ベローの剛性に関係する復元力とを生成する)の場合、処理ユニットは、流体回路内の圧力を測定するために以下の計算を行う:
【数8】
【数9】
【数10】
【0133】
例えば流体回路内の相対圧力がゼロの場合、力センサでの力は、Fprest(20N)と、Fwall(−20N)と、Fcasing(−4.167N)と、大気圧に関係する力(すなわち−10N)とであり、すなわち、生じる力は−14.167Nであり、すなわち、処理ユニットによって計算される値は以下のようである:
【数11】
【0134】
そこから、流体回路内の相対圧力P2を推測することができる:
P2=P1+(Pinit−Patm)
P2=−10000+(100000−90000)=0Pa
【0135】
例えば流体回路内の相対圧力が5kPaの場合、力センサでの力は、Foccl(5N)と、Fprest(20N)と、Fwall(−20N)と、Fcasing(−4.167N)と、大気圧に関係する力(すなわち−10N)とであり、すなわち、生じる力は9.167Nであり、すなわち、処理ユニットによって計算される値は以下のようである:
【数12】
【0136】
そこから、流体回路内の相対圧力P2を推測することができる:
P2=P1+(Pinit−Patm)
P2=−5000+(100000−90000)=5kPa
【0137】
例えば流体回路内の相対圧力が−5kPaの場合、力センサでの力は、Foccl(−5N)と、Fprest(20N)と、Fwall(−20N)と、Fcasing(−4.167N)と、大気圧に関係する力(すなわち−10N)とであり、すなわち、生じる力は−19.167Nであり、すなわち、処理ユニットによって計算される値は以下のようである:
【数13】
【0138】
そこから、流体回路内の相対圧力P2を推測することができる:
P2=P1+(Pinit−Patm)
P2=−15000+(100000−90000)=−5kPa
【0139】
(実施例2):圧縮力および牽引力を測定することが可能である力センサを備える図5で述べた実施形態に基づくデバイスによる流体回路内の圧力の測定。
【0140】
i=0の場合、処理ユニットは、流体回路内の圧力を測定するために以下の計算を行う:
【数14】
【0141】
例えば流体回路内の相対圧力がゼロの場合、力センサは、患者の身体、したがって可撓性の閉塞スリーブに及ぼされる大気圧(900hPa)とケーシング内のガス圧(1000hPa)との差に関係する力(−10Nの力に相当する)を測定し、すなわち、処理ユニットによって計算される値は、以下のようである:
【数15】
【0142】
そこから、流体回路内の相対圧力P2を推測することができる:
P2=P1+(Pinit−Patm)
P2=−10000+(100000−90000)=0Pa
【0143】
例えば流体回路内の相対圧力が5kPaの場合、力センサでの唯一の力は、流体回路での圧力Foccl(すなわち5N)と大気圧に関係する力(すなわち−10N)とによって生成されるものであり、すなわち、処理ユニットによって計算される値は以下のようである:
【数16】
【0144】
そこから、流体回路内の相対圧力P2を推測することができる:
P2=P1+(Pinit−Patm)
P2=−5000+(100000−90000)=5kPa
【0145】
例えば流体回路内の相対圧力が−5kPaの場合、力センサでの唯一の力は、流体回路での圧力Foccl(すなわち−5N)と大気圧に関係する力(すなわち−10N)とによって生成されるものであり、すなわち、処理ユニットによって計算される値は以下のようである:
【数17】
【0146】
そこから、流体回路内の相対圧力P2を推測することができる:
P2=P1+(Pinit−Patm)
P2=−15000+(100000−90000)=−5kPa
【0147】
i=4mmの場合、処理ユニットは、流体回路内の圧力を測定するために以下の計算を行う:
【数18】
【数19】
【0148】
例えば流体回路内の相対圧力がゼロの場合、力センサでの力は、Fwall(−20N)と、Fcasing(−4.167N)と、大気圧に関係する力(すなわち−10N)とであり、すなわち、生じる力は−34.167Nであり、すなわち、処理ユニットによって計算される値は以下のようである:
【数20】
【0149】
そこから、流体回路内の相対圧力P2を推測することができる:
P2=P1+(Pinit−Patm)
P2=−10000+(100000−90000)=0Pa
【0150】
例えば流体回路内の相対圧力が5kPaの場合、力センサでの力は、Foccl(5N)と、Fwall(−20N)と、Fcasing(−4.167N)と、大気圧に関係する力(すなわち−10N)とであり、すなわち、生じる力は−29.167Nであり、すなわち、処理ユニットによって計算される値は以下のようである:
【数21】
【0151】
そこから、流体回路内の相対圧力P2を推測することができる:
P2=P1+(Pinit−Patm)
P2=−5000+(100000−90000)=5kPa
【0152】
例えば流体回路内の相対圧力が−5kPaの場合、力センサでの力は、Foccl(−5N)と、Fwall(−20N)と、Fcasing(−4.167N)と、大気圧に関係する力(すなわち−10N)とであり、すなわち、生じる力は39.167Nであり、すなわち、処理ユニットによって計算される値は以下のようである:
【数22】
【0153】
そこから、流体回路内の相対圧力P2を推測することができる:
P2=P1+(Pinit−Patm)
P2=−15000+(100000−90000)=−5kPa
【0154】
上記の両方の実施例において、デバイスは、ケーシング内のガス圧を測定する圧力センサを備えていないものと仮定されている。
【0155】
デバイスが、ケーシング内のガス圧を測定する圧力センサを備える構成では、項
【数23】
をPsensorで置き換えれば十分であり、
ここで、Psensorは、ガス圧センサの測定値である。
【0156】
本発明は、ピストンまたは回転する膜タイプの機械的剛性を有さない可変容積を有するリザーバを含むデバイスにも適用することができることに留意されたい。この場合、圧力Pの計算での剛性Kは、ゼロまたは無視できるとみなされる。
【0157】
(閉塞システムの圧力制御)
システムの好ましい目標は圧力を制御することであるので、まず、圧力の閉ループ調整が、閉塞システムの加圧のための最も賢明な選択肢であると思われる。しかし、閉塞システム内の圧力は、加圧システムに依存するだけではない。例えば、患者の器官の動きまたは患者の呼吸に関係する外的影響が、前述した圧力測定システムによって測定される圧力を発生することがある。
【0158】
これは、圧力サーバ制御中に、アクチュエータの過度のストレス、したがって大きすぎる電力消費を誘発する影響を有することがある。実際、閉塞システムの圧力の変化中に外圧が変化することがあり、サーバ制御システムは、これらの変化を相殺することを試みる傾向があり、これは、アクチュエータの過度のストレスを発生させる。
【0159】
この問題に対する対応策を見出すために、本発明の目的の1つは、加圧システムの圧力を制御するための単純な方法を提案することである。圧力に関してシステムを従属させるのではなく、アクチュエータは、可変容積を有するリザーバの可動部分の位置サーバ制御によって制御される。したがって、各位置での可動部分の実効圧力表面積を知ると、これは、閉塞システムの容積サーバ制御に対応する。
【0160】
インビトロおよびインビボで行われた試験([1])から、流体回路内の圧力と閉塞システムに注入される体積との関係が、経時的に規定の再現可能な関係を有することが示されている。これは、患者の特定の状態の下で、すなわち患者が静止しており、所定の姿勢である(例えば伸展または起立している)ときに当てはまる。
【0161】
流体回路内の流体圧力を制御するためのデバイスは、とりわけ、流体回路内の圧力とリザーバからまたはリザーバに注入される体積との関係が記録されているメモリと、処理ユニット(任意選択で、流体回路内の圧力を測定するためのデバイスの処理ユニットと同一)と、較正ユニットとを備え、それらの動作については後述する。
【0162】
図8は、リザーバから流体回路に注入される体積に対する流体回路内の圧力の変化を示すグラフである。注入または除去された体積に対する圧力の依存関係はヒステリシスを有することがあり、すなわち、圧力上昇中の圧力曲線が圧力低下中の圧力曲線とは異なることがあることに留意すべきである。圧力に関してシステムを制御することができるように、加圧システムは、所与の注入体積に関して圧力測定を定期的に行う。この較正手順は、所定の条件下で行われる。例えば人工尿道括約筋の場合、排尿後数分で、患者が起立しており実質的に静止しているときに較正を実現することができる。この目的のために、加圧システムは、所定の注入体積に関して圧力を徐々に上昇させ、インプラントのメモリ内に局所化されたテーブルに測定値を記録する。この較正手順は、規定の期間、例えば毎週、または医師による検査の際に、インプラントとワイヤレス通信するプログラマによって実行されることもある。いずれにせよ、較正中に患者がいる場所の高度または気象条件に関係なく、流体回路内で正確な圧力測定を行うために現在の大気圧を回復することが可能であるべきである。
【0163】
図9は、較正手順中に閉塞スリーブに注入される様々な流体体積に関する、時間tに対する流体回路内の圧力P2の変化28を示すグラフである。
【0164】
追加として、較正は、患者が伸展姿勢であって実質的に静止しているときに行うこともできる。これは、患者の異なる高さに埋め込まれた埋め込み可能なケーシングと閉塞スリーブとの間の水柱により、患者が起立しているときに記録された圧力値とは異なる圧力値を記録できる可能性を提供する。
【0165】
較正は、流体回路内で存在することがあるヒステリシスを考慮に入れることもある。この場合、インプラントのメモリは、所与の圧力を達成するために注入すべき体積の値と、所与の圧力を達成するために引き抜くべき体積の値とを含むテーブルを含む。
【0166】
通常動作中、所与の圧力での加圧のためのコマンドが加圧システムに送信されると、設定された圧力値に対応する体積がメモリ内のテーブルでルックアップされ、閉塞システムを所望の圧力に加圧するために使用される。
【0167】
安全ステップとして、デバイスの適切な動作、および期待される圧力値との一致を保証するために、加圧段階中に圧力を測定することができる。
【0168】
患者の動きを測定し、患者が静止しているかどうかを決定するために、および患者の姿勢を測定し、患者が起立または伸展しているかを決定するために、加速度計を使用することができる。
【0169】
閉塞システム内の圧力に対する体積を較正するための手順を実現するために、クロックが使用される。例えば、クロックは、RTCタイプのものでよい。
【0170】
(安全システム)
流体回路内の圧力が非常に高くなり、流体回路の様々な要素の圧力強度に関する技術的推奨で規定された限界に近付く場合、処理ユニットは、閉塞スリーブを減圧するための命令を自動的に送信することがある。
【0171】
本発明の特に有利な実施形態によれば、スリーブを作動させるためのデバイスは、流体回路内の過大な圧力によって引き起こされる機械的応力を減少するための部材を含み、作動デバイスを劣化の危険から保護できる可能性を提供する。
【0172】
流体回路内の過大な圧力に起因する作動デバイスが受ける機械的応力は非常に大きくなることがあり、これは、作動デバイスの1つまたは複数の部分の劣化を引き起こすことがある。加圧システム、配管、スリーブ、圧力センサ、および/またはコネクタについて、この劣化が懸念されることがある。
【0173】
作動デバイスの劣化を避けるために、応力減少部材は、機械的応力(流体回路内の圧力)が所定の応力閾値を超えたときに、上記応力の一部を吸収し、作動デバイスが受ける応力を減少させるように設計される。
【0174】
応力減少部材は、作動デバイスに損傷を与えるリスクがないほど低いレベルまで応力を減少するが、スリーブによって及ぼされる圧縮を完全には解放しないように応力が十分に高くなるように寸法設定される。
【0175】
応力を減少させるための企図される方法および作動デバイスの構造に応じて、当業者は、これらの条件を満たす部材を設計することが可能である。
【0176】
一実施形態によれば、応力減少部材は膨張チャンバを備え、膨張チャンバは、油圧回路内に配置され、流体回路内の圧力が規定の閾値を超えたときに機械的にトリガされる。これは、油圧回路の流体の一部を膨張チャンバに向けて移動させて、膨張チャンバ内の圧力を低下させる効果を有する。
【0177】
代替として、応力減少部材は、油圧回路内の圧力がデバイスの通常動作圧力に対応するときには実質的に固定されたままであるように十分に高い剛性を有するとともに、より高い圧力の効果の下では可動であるばねシステムに結合されたピストンを備えることもある。
【0178】
応力減少部材は、様々な実施形態を有することがある。例えば、非限定的な例として以下のものを挙げることができる:
−ばねまたは膨張チャンバ内の特定の材料と結合された弁;
−特定の圧力閾値から変形する特性を有する可撓性材料で形成された油圧回路の構成要素;
−特定の圧力閾値を超えると、または加えられた圧力に応じて変形可能な膜;
−特定の圧力閾値を超えると、または加えられた圧力に応じて変形可能であるように設計された可変容積を有するリザーバ;
−特定の圧力閾値を超えると、または加えられた圧力に応じて変形可能であるように設計された作動メカニズム。
【0179】
(参考文献)
欧州特許第1 584 303号明細書
米国特許第8,585,580号明細書
米国特許第4,581,018号明細書
米国特許第4,222,377号明細書
カナダ特許第1 248 303号明細書
米国特許第4,408,597号明細書
[1] Lamraoui,H;Bonvilain,A;Robain,G;Combrisson,H;Basrour,S;Moreau−Gaudry,A;Cinquin,P;Mozer,P “Development of a Novel Artificial Urinary Sphincter: A Versatile Automated Device”,IEEE − ASME Transactions on Mechatronics,15,916−924,2010
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