特許第6696985号(P6696985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイアグノスティカ スターゴの特許一覧

特許6696985血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット
<>
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000002
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000003
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000004
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000005
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000006
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000007
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000008
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000009
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000010
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000011
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000012
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000013
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000014
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000015
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000016
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000017
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000018
  • 特許6696985-血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696985
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/86 20060101AFI20200511BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   G01N33/86
   G01N33/49 K
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-532633(P2017-532633)
(86)(22)【出願日】2015年12月9日
(65)【公表番号】特表2017-538941(P2017-538941A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】FR2015053399
(87)【国際公開番号】WO2016097536
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年9月19日
(31)【優先権主張番号】1462423
(32)【優先日】2014年12月15日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517019887
【氏名又は名称】ダイアグノスティカ スターゴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルソー アラン
(72)【発明者】
【氏名】ブリュット ノルベール
(72)【発明者】
【氏名】ギュイヨン ベルトラン
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−213572(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/068049(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0224292(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3150430(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第00325874(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0117005(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103069264(CN,A)
【文献】 特公昭50−014919(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象である血液サンプルの凝固時間を決定する方法であって、
分析対象である前記血液サンプル(33)を入れる反応キュベット(2)を用意する工程であって、前記反応キュベット(2)は、上向きに凹である、凹状軌道(9)を規定する底部(8)を有する、工程と、
前記反応キュベット(2)の前記軌道(9)上に強磁性ボール(11)を配置する工程と、
前記強磁性ボール(11)に磁界を印加することにより、前記強磁性ボールを前記軌道(9)に沿って揺動運動により変位させる工程と、
前記分析対象である前記血液サンプルに入射光ビーム(36)を照射する工程であって、前記入射光ビーム(36)は、前記強磁性ボールの前記軌道(9)に沿った前記揺動運動の少なくとも一部において前記強磁性ボール(11)により少なくとも部分的に遮蔽されるように構成される、工程と、
前記反応キュベット(2)を透過し、前記入射光ビーム(36)から生じた、少なくとも1つの光ビーム(38)を検出することにより、計測信号(S)を得る工程と、
前記計測信号(S)に対して第1の処理を行うことにより、前記強磁性ボール(11)の運動を表現する少なくとも1つの物理量の変化を表す第1の信号(S1)を得る工程と、
前記計測信号(S)に対して第2の処理を行うことにより、前記分析対象である血液サンプルの少なくとも1つの光学特性の変化を表す第2の信号(S2)を得る工程と、
前記第1の信号に基づいて、前記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第1の値(t1)を決定する工程と、
前記第2の信号に基づいて、前記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第2の値(t2)を決定する工程と、
を有する、決定方法。
【請求項2】
前記計測信号(S)に対する前記第1の処理は、前記得られた第1の信号(S1)が前記計測信号(S)の上包絡線および下包絡線間の間隔に対応するように行われる、請求項1に記載の決定方法。
【請求項3】
前記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す前記第1の値(t1)を決定する工程は、前記第1の信号(S1)のスライド平均に対応するベース信号を得る工程を有し、前記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す前記第1の値は、前記ベース信号に基づいて決定される、請求項1または2に記載の決定方法。
【請求項4】
前記計測信号(S)に対する前記第2の処理は、前記得られた第2の信号(S2)が前記計測信号の上包絡線のスライド平均に対応するように実行される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の決定方法。
【請求項5】
前記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す前記第2の値(t2)を決定する工程は、前記第2の信号(S2)の最大勾配を決定する工程を有しており、前記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す前記第2の値(t2)は、該最大勾配に対応する時刻である、請求項4に記載の決定方法。
【請求項6】
前記凝固時間を表す前記決定された第1および第2の値(t1、t2)同士を比較する工程をさらに有する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の決定方法。
【請求項7】
前記計測信号の初期値に依存して、前記入射光ビーム(36)の光強度を調整する工程をさらに有する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の決定方法。
【請求項8】
前記決定方法の初期段階において、前記強磁性ボール(11)に印加される磁界を表す少なくとも1つのパラメータを、前記計測信号(S)の初期値に依存して調整する工程をさらに有する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の決定方法。
【請求項9】
分析対象である血液サンプルの凝固時間を決定する装置(31)であって、
前記分析対象である血液サンプル(33)と、強磁性ボール(11)と、を入れる反応キュベット(2)を収容するように構成された収容筐体(32)であって、前記反応キュベット(2)は、上向きに凹であり、前記強磁性ボール(11)が配置される、凹状軌道(9)を規定する、収容筐体(32)と、
前記反応キュベット(2)が前記収容筐体内に収容される時に、前記強磁性ボール(11)を前記軌道(9)に沿って揺動運動により変位させることが可能な、磁界を発生するように構成された、磁界発生システム(34)と、
前記反応キュベット(2)が前記収容筐体(32)内に収容される時に、分析対象である血液サンプル(33)の方向に入射光ビーム(36)を出射するように構成された発光部材(35)であって、前記入射光ビーム(36)は前記軌道(9)に沿った前記強磁性ボールの前記運動の少なくとも一部において、前記強磁性ボール(11)により少なくとも部分的に遮蔽されるように構成される、発光部材(35)と、
前記反応キュベット(2)を透過し、前記入射光ビーム(36)から生じた、少なくとも1つの光ビーム(38)を検出することにより、計測信号(S)を出力するように構成された検出部材(37)と、
処理ユニット(39)であって、
前記計測信号(S)に対して第1の処理を行うことにより、前記強磁性ボール(11)の運動を表現する少なくとも1つの物理量の変化を表す第1の信号(S1)を得、
前記計測信号(S)に対して第2の処理を行うことにより、前記分析対象である血液サンプルの少なくとも1つの光学特性の変化を表す第2の信号(S2)を得、
前記第1の信号に基づいて、前記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第1の値(t1)を決定し、かつ
前記第2の信号に基づいて、前記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第2の値(t2)を決定する、処理ユニット(39)と、
を備える、決定装置。
【請求項10】
前記磁界発生システム(34)は、前記軌道(9)の略延長方向に対して、横方向にずらして配置される、請求項9に記載の決定装置(31)。
【請求項11】
前記反応キュベット(2)が前記収容筐体(32)内に収容され、前記強磁性ボール(11)が前記軌道(9)の最低点に位置する時、前記強磁性ボール(11)は、前記入射光ビーム(36)を部分的に遮蔽するように構成される、請求項9または10に記載の決定装置(31)。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法を実行するのに適した構成を有する反応キュベット(2)において、
分析対象である生物流体を入れるように構成された容器(3)であって、
上向きに凹である凹状軌道(9)を規定する底部(8)を有する下側部分(4)であって、前記軌道(9)はそのほぼ中央に最低点を有し、強磁性ボール(11)の揺動運動を案内するように構成されている、下側部分(4)と、
挿入口(14)を規定する上側部分(5)と、
前記反応キュベット(2)を第1の掛合方向(D1)において第1の隣接する反応キュベットに掛合させるように構成された、第1の掛合手段と、
前記反応キュベット(2)を、前記第1の掛合方向(D1)に対してほぼ直交する第2の掛合方向(D2)において第2の隣接する反応キュベットに掛合させるように構成された、第2の掛合手段と、を備える容器(3)を有し、
前記反応キュベット(2)は、前記軌道(9)の略延長方向に対して横方向に測定した前記容器(3)の前記下側部分(4)の幅が、前記軌道(9)の延長方向に対して横方向に測定した前記容器(3)の前記上側部分(5)の幅よりも小さく、前記軌道(9)は前記容器(3)の前記上側部分(5)の長手方向中央平面(P1)に対して横方向にずれていることを特徴とする、反応キュベット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象である血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置、ならびに反応キュベットに関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第0 325 874号明細書は、分析対象である血液サンプルの凝固時間を決定可能とする反応キュベットを開示している。この目的のため、反応キュベットは、その底部に上向きに凹である曲線状軌道を備えており、その軌道上には強磁性ボールが配置され得、軌道上で駆動により運動し得る。
【0003】
欧州特許出願公開第0 325 874号明細書は、さらに、凝固時間を決定する方法も開示している。その方法は、
分析対象である上記血液サンプルを上記反応キュベット内に導入する工程と、
上記反応キュベットの上記軌道上に強磁性ボールを配置する工程と、
上記強磁性ボールに磁界を印加することにより、上記強磁性ボールを上記軌道に沿って揺動運動により変位させる工程と、
上記強磁性ボールが上記軌道の最低点にあるときに、上記強磁性ボールに対して実質的に接線をなすように構成された入射光ビームを上記分析対象である血液サンプルに照射する工程と、
上記反応キュベットを透過し、上記入射光ビームから生じた、少なくとも1つの光ビームを検出することにより、上記強磁性ボールの運動の振幅および/または周波数の変化を表す計測信号を得る工程と、
上記計測信号に基づいて、上記分析対象である血液サンプルの凝固時間を決定する工程と、
を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記強磁性ボールの運動の振幅および/または周波数の変化が、上記分析対象である血液サンプルの粘性増加が原因ではなく、むしろ上記血液サンプル中に気泡および/または不純物が存在することが原因で起こる場合、このような決定方法により決定された凝固時間は不正確であり、このような決定方法の信頼性を損なうものである。
【0005】
本発明は、このような課題を解決することを目的とする。
【0006】
具体的には、本発明が解決しようとする技術上の課題は、分析対象である血液サンプルの凝固時間を信頼性良く、かつ高いコスト効率で決定可能とする、血液サンプルの凝固時間を決定する方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は分析対象である血液サンプルの凝固時間を決定する方法に関する。この方法は、
分析対象である上記血液サンプルを入れる反応キュベットを用意する工程であって、上記反応キュベットは、上向きに凹である、凹状軌道を規定する底部を有する、工程と、
上記反応キュベットの上記軌道上に強磁性ボールを配置する工程と、
上記強磁性ボールに磁界を印加することにより、上記強磁性ボールを上記軌道に沿って揺動運動により変位させる工程と、
上記分析対象である血液サンプルに入射光ビームを照射する工程であって、上記入射光ビームは、上記軌道に沿った上記揺動運動の少なくとも一部において、上記強磁性ボールにより少なくとも部分的に遮蔽されるように構成される、工程と、
上記反応キュベットを透過し、上記入射光ビームから生じた、少なくとも1つの光ビームを検出することにより、計測信号を得る工程と、
上記計測信号に対して第1の処理を行うことにより、上記強磁性ボールの運動を表現する少なくとも1つの物理量の変化を表す第1の信号を得る工程と、
上記計測信号に対して第2の処理を行うことにより、上記分析対象である血液サンプルの少なくとも1つの光学特性の変化を表す第2の信号を得る工程と、
上記第1の信号に基づいて、上記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第1の値を決定する工程と、
上記第2の信号に基づいて、上記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第2の値を決定する工程と、を有する。
【0008】
この決定方法によれば、凝固時間を異なる2種類の方法により定量化することが可能になる。これにより、得られた結果の確保が可能となる。実際に、例えば分析対象である血液サンプル中に気泡や不純物が存在することが原因で、強磁性ボールの運動が予想よりも早期に停止した場合、決定された第1および第2の値を比較することにより、決定された2つの凝固時間値の差を特定することが可能になる。その場合、操作者は、強磁性ボールの停止による影響がより少ない、決定された第2の値のみを考慮に入れてもよいし、凝固時間の測定を正確かつ確実に行うために、試験をやり直してもよい。このように本発明による決定方法によれば、凝固時間のそれぞれ独立した2つの測定値を得ることが可能になり、その結果、凝固時間測定をより信頼性の高いものとすることもできる。
【0009】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記得られた測定信号は、連続する信号を一定の間隔でサンプリングすることにより得られる。上記一定の間隔の長さは、15ms未満であることが好ましく、例えば10ms程度、または4ms程度である。
【0010】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記計測信号に対する上記第1の処理は、上記得られた第1の信号が上記計測信号の上包絡線と下包絡線との間の間隔(deviation)に対応するように行われる。
【0011】
本発明の別の実施の形態によれば、上記処理ユニットは、上記得られた第1の信号が、上記計測信号の上包絡線と下包絡線との間の間隔のスライド平均(sliding average)に対応するように構成され、より正確には、連続する計測時刻、またはサンプリング時刻、あるいは所定のスライド期間(sliding interval)に対応する、上記計測信号の上包絡線と下包絡線との間の間隔を表す、複数の値(例えば12個の値)からなる所定の集合において、上記計測信号の上包絡線と下包絡線との間の間隔のスライド平均に対応するように構成される。好適には、ある与えられた測定時刻またはサンプリング時刻に対する上記第1の信号のそれぞれの値は、与えられた複数の測定時刻またはサンプリング時刻に先行する、連続する複数の測定時刻またはサンプリング時刻に対応する、測定信号Sの上包絡線および下包絡線間の間隔を表す複数の値からなる所定の集合のスライド平均として決定される。好ましくは、ある与えられた測定時刻またはサンプリング時刻に対する上記第1の信号のそれぞれの値は、上記測定信号の上包絡線および下包絡線間の間隔を表す、複数の最近値のスライド平均として決定される。例えば、上記測定信号の上包絡線および下包絡線間の間隔を表す、12個の最近値のスライド平均として決定される。
【0012】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記測定信号の上包絡線は、上記測定信号の極大値同士を結ぶことにより決定され、上記測定信号の下包絡線は、上記測定信号の極小値同士を結ぶことにより決定される。
【0013】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記強磁性ボールの運動を表現する上記少なくとも1つの物理量は上記強磁性ボールの運動の振幅および/または周波数である。
【0014】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す上記第1の値を決定する工程は、上記第1の信号のスライド平均に対応するベース信号を得る工程を有する。上記第1の信号のスライド平均は、例えば所定のスライド期間において得られるか、または連続する複数の計測時刻あるいはサンプリング時刻に対応する、上記第1の信号の複数の値からなる集合から得られる。上記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第1の値は、上記ベース信号に基づいて決定される。
【0015】
上記決定方法のある実施の形態によれば、ある与えられた測定時刻またはサンプリング時刻に対する上記ベース信号のそれぞれの値は、ある時間間隔に含まれる連続する複数の測定時刻またはサンプリング時刻に対応する、上記第1の信号の複数の値からなる集合のスライド平均として決定される。ここで、上記ある時間間隔の始点および終点は、上記与えられた測定時刻またはサンプリング時刻に対して規定される。例えば、ある与えられた測定時刻またはサンプリング時刻に対する上記ベース信号のそれぞれの値は、上記与えられた測定時刻またはサンプリング時刻に先行する、ある時間間隔に含まれる複数の測定時刻またはサンプリング時刻に対応する、上記第1の信号の複数の値からなる集合のスライド平均として決定される。ここで、上記ある時間間隔は、好適には8〜12秒間、例えば約10秒間である。
【0016】
上記決定方法の別の実施の形態によれば、ある与えられた測定時刻またはサンプリング時刻に対する上記ベース信号のそれぞれの値は、与えられた複数の測定時刻またはサンプリング時刻における上記第1の信号の値を含み、かつ上記与えられた複数の測定時刻またはサンプリング時刻に先行する複数の測定時刻またはサンプリング時刻に対応する上記第1の信号のすべての値を含む、複数の値からなる集合のスライド平均として決定される。
【0017】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す上記第1の値を決定する工程は、上記第1の信号と上記ベース信号の所定の割合との間の交点を決定する工程を含む。上記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す上記第1の値は、上記決定された交点に対応する時間値である。
【0018】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記ベース信号の上記所定の割合は、30%から60%の範囲内である。
【0019】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記計測信号に対する上記第2の処理は、上記得られた第2の信号が上記計測信号の平均された上包絡線に対応するように行われる。
【0020】
上記決定方法の別の実施の形態によれば、上記処理ユニットは、上記得られた第2の信号が、上記計測信号の上包絡線のスライド平均に対応するように構成され、より正確にいうと、連続する複数の計測時刻またはサンプリング時刻、あるいは所定のスライド期間に対応する、上包絡線の複数の値(例えば12個の値)からなる所定の集合において、上記計測信号の上包絡線のスライド平均に対応するように構成される。好適には、ある与えられた測定時刻またはサンプリング時刻に対する上記第2の信号のそれぞれの値は、与えられた複数の測定時刻またはサンプリング時刻に先行する、連続する複数の測定時刻またはサンプリング時刻に対応する、上包絡線の複数の値からなる所定の集合のスライド平均として決定される。好ましくは、ある与えられた測定時刻またはサンプリング時刻に対する上記第2の信号のそれぞれの値は上包絡線の複数の最近値のスライド平均として決定される。例えば上包絡線の12個の最近値のスライド平均として決定される。
【0021】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す上記第2の値を決定する工程は、上記第2の信号の最大勾配を決定する工程を有しており、上記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す上記第2の値は、該最大勾配に対応する時刻である。
【0022】
上記決定方法のある実施の形態によれば、この決定方法は、上記凝固時間を表す上記決定された第1および第2の値を互いに比較する工程を有する。
【0023】
上記決定方法のある実施の形態によれば、この決定方法は、上記計測信号の初期値に依存して、上記入射光ビームの光強度を調整する工程をさらに有する。
【0024】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記反応キュベットは、上記軌道がそのほぼ中央に最低点を有するように設けられる。
【0025】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記測定信号の初期値は、上記軌道のほぼ最低点に位置する上記強磁性ボールの位置に対応する。
【0026】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記決定方法は、上記決定方法の初期段階において、上記強磁性ボールに印加される磁界を表す少なくとも1つのパラメータを、上記計測信号の初期値に依存して調整する工程をさらに有する。
【0027】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記強磁性ボールに印加される磁界を表す上記少なくとも1つのパラメータは、上記第1の信号の初期値に依存して調整される。
【0028】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記磁界を表現する上記少なくとも1つのパラメータは、上記強磁性ボールに印加される磁界の周期および/または強度である。
【0029】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記磁界の励起周波数は、上記強磁性ボールの揺動運動の固有振動数に近い。
【0030】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記磁界は、上記軌道の略延長方向に対して横方向にずらして配置された磁界発生システムを用いて発生される。上記磁界発生システムをこのように配置することにより、上記発光部材を上記反応キュベットの底部近傍に縦方向に配置することが可能になり、これにより、上記入射光ビームと上記反応キュベットの底部とを隔てる距離を低減することが可能になる。またこの効果は、磁界発生システムの存在に乱されることもない。これにより、また、それぞれの試験を行う際に上記反応キュベット内に導入される試薬と血液サンプルの量を減らすことができるようになり、その結果、それぞれの試験に要するコストも削減可能となる。
【0031】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記磁界発生システムは、上記軌道に対してほぼ平行に延びる上記反応キュベットの壁(例えば上記反応キュベットの長手方向の壁)に少なくとも部分的に面するように配置される。
【0032】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記磁界発生システムは、上記軌道の端部近傍にそれぞれ配置された第1および第2の電磁石を備える。これら第1および第2の電磁石は、例えば、上記軌道の同じ側に配置される。
【0033】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記磁界は、例えば上記電磁石のコイルに印加される電気パルスの間隔(deviations)および/または幅(length)を変化させることにより、調整され得る。
【0034】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記決定装置は、上記反応キュベットが上記収容筐体に収容され、上記強磁性ボールが上記軌道の最低点に位置する時、上記強磁性ボールが上記入射光ビームを部分的に遮蔽するように構成される。
【0035】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記透過された光ビームは、上記入射光ビームのほぼ軸上に位置する検出部材を用いて検出される。
【0036】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記入射光ビームは、発光部材を用いて出射される。上記発光部材と上記検出部材とは、例えば、上記軌道のほぼ軸上に配置される。
【0037】
本発明は、また、分析対象である血液サンプルの凝固時間を決定する装置にも関する。この決定装置は、
上記分析対象である血液サンプルと、強磁性ボールと、を含む反応キュベットを収容するように構成された収容筐体であって、上記反応キュベットは、上向きに凹であり、上記強磁性ボールが配置される、凹状軌道を規定する、収容筐体と、
上記反応キュベットが上記収容筐体内に収容される時に、上記強磁性ボールを上記軌道に沿って揺動運動により変位させることが可能な、磁界を発生するように構成された、磁界発生システムと、
上記反応キュベットが上記収容筐体内に収容される時に、上記分析対象である血液サンプルの方向に入射光ビームを出射するように構成された発光部材であって、上記入射光ビームは上記軌道に沿った上記強磁性ボールの上記運動の少なくとも一部において、上記強磁性ボールにより少なくとも部分的に遮蔽されるように構成される、発光部材と、
上記反応キュベットを透過し、上記入射光ビームから生じた、少なくとも1つの光ビームを検出することにより、計測信号を出力するように構成された検出部材と、
処理ユニットであって、
上記計測信号に対して第1の処理を行うことにより、上記強磁性ボールの運動を表現する少なくとも1つの物理量の変化を表す第1の信号を得、
上記計測信号に対して第2の処理を行うことにより、上記分析対象である血液サンプルの少なくとも1つの光学特性の変化を表す第2の信号を得、
上記第1の信号に基づいて、上記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第1の値を決定し、
上記第2の信号に基づいて、上記分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第2の値を決定する処理ユニットと、
を備える。
【0038】
上記決定装置のある実施の形態によれば、上記磁界発生システムは、上記軌道の略延長方向に対して横方向にずらして配置される。
【0039】
本発明のある実施の形態によれば、上記検出部材は、上記入射光ビームのほぼ軸上に位置する。
【0040】
本発明のある実施の形態によれば、上記軌道は、そのほぼ中央に最低点を有する。
【0041】
上記決定装置のある実施の形態によれば、上記強磁性ボールおよび上記軌道は、上記強磁性ボールが上記軌道の最低点に位置する時、上記強磁性ボールが上記入射光ビームを部分的に遮蔽するように構成される。
【0042】
本発明のある実施の形態によれば、上記入射光ビームの遮蔽率は、上記強磁性ボールが上記軌道の最低点にある時の位置に対応する最小値と、上記強磁性ボールが上記軌道の最低点から最も遠くにある時の位置に対応する最大値と、の間で変化する。ここで、最小値は、例えば、5%〜10%の範囲内である。
【0043】
本発明のある実施の形態によれば、上記検出部材は、光検出器、例えば光ダイオードである。
【0044】
本発明のある実施の形態によれば、上記発光部材は、発光ダイオードである。
【0045】
本発明のある実施の形態によれば、上記決定装置は、上記反応キュベットの底部に配置されるように構成された強磁性ボールを備える。
【0046】
本発明のある実施の形態によれば、上記決定装置は、複数の反応キュベットを上記収容筐体内に挿入・排出するように構成されたローディングシステムを備える。このローディングシステムは、好適には、リニアアクチュエータを備える。リニアアクチュエータは、例えば、電動ステッピングモータを備えていてもよい。
【0047】
本発明は、また、上記本発明による方法を実施するように構成された反応キュベットにも関する。この反応キュベットは、
分析対象である生物流体を入れるように構成された容器であって、
上向きに凹である凹状軌道を規定する底部を有する下側部分であって、前記軌道はそのほぼ中央に最低点を有し、強磁性ボールの揺動運動を案内するように構成されている下側部分と、
挿入口を規定する上側部分と、
上記反応キュベットを第1の掛合方向において第1の隣接する反応キュベットに掛合させるように構成された、第1の掛合手段と、
上記反応キュベットを、上記第1の掛合方向に対してほぼ直交する第2の掛合方向において第2の隣接する反応キュベットに掛合させるように構成された、第2の掛合手段と、を備える容器を有し、
上記反応キュベットは、上記軌道の略延長方向に対して横方向に測定した、上記容器の上記下側部分の幅が、上記軌道の延長方向に対して横方向に測定した上記容器の上記上側部分の幅よりも小さく、前記軌道は、上記容器の上記上側部分の長手方向中央平面に対して横方向にずれていることを特徴とする。
【0048】
したがって、上記軌道は、上記反応キュベットの第1の長手方向壁に反対側に位置する、上記反応キュベットの第2の長手方向壁よりも、第1の長手方向壁の近くに位置する。
【0049】
上記反応キュベットがこのような構成を有することにより、凝固時間の測定を、より少ない反応量(例えば90μL未満)で実行することが可能になり、その結果、回収した標本の量ならびに使用済み試薬の量を低減させることが可能になる。これにより、各試験を行う際に要する関連諸コストの大幅な削減が可能になる。
【0050】
また、磁性体粒子を用いた免疫学的測定に用いる状況では、上記反応キュベットがこのような構成を有することにより、それらの磁性体粒子の洗浄作業時において、磁石または電磁石を(上記反応キュベットの長手方向壁に実質的に接触させ、上記軌道の最も近くに配置することにより)上記反応キュベットの反応領域のできるだけ近くに配置することができる。これにより、それらの磁性体粒子を反応キュベットの長手方向壁に、最適な形で磁力により引き寄せることが可能となり、その結果、定量化すべき検体に結合した磁性体粒子の一部が、洗浄溶液により上記反応キュベットから除去されてしまうリスクを回避することも可能となる。
【0051】
また、磁性体粒子を用いた免疫学的測定に用いる状況では、上記反応キュベットがこのような構成を有することにより、光学読取部材を上記反応キュベットの反応領域のできるだけ近くに配置することも可能になる。その結果、正確で信頼性の高い測定結果が得られる。
【0052】
本発明のある実施の形態によれば、上記容器の上記上側部分は、上記挿入口の方向に押し広げ加工が施されている。
【0053】
本発明のある実施の形態によれば、上記容器の上記下側部分はほぼ直方体状であり、上記軌道の略延長方向に細長い形状を有する。
【0054】
本発明のある実施の形態によれば、上記第1の掛合手段は、上記容器の上記上側部分の上縁から下向きに延びる、少なくとも1つの掛合タブを備える。
【0055】
本発明のある実施の形態によれば、上記反応キュベットは、上記掛合タブが延びる上縁とは反対側の、上記容器の上記上側部分上端に形成された切れ込みを有する。反応キュベットの上記掛合タブは、隣接する反応キュベットの切れ込みと第1の掛合方向で連係するように構成される。
【0056】
本発明のある実施の形態によれば、上記第2の掛合手段は、第1の上向きに開口した掛合部と、第2の下向きに開口した掛合部と、を備える。上記第1の上向きに開口した掛合部は、隣接する反応キュベットの底部において第2の下向きに開口した掛合部と係合するように構成されている。第1および第2の掛合部は、上記掛合タブが延びる上縁の反対側でそれに直交する2つの縁部に沿って、上記反応キュベットの基部上に設けられる。
【0057】
本発明のある実施の形態によれば、上記軌道は、8〜10mmの半径を有する円筒形状を有する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は本発明による反応キュベットの斜視図である。
図2図2図1に示す反応キュベットの斜視断面図である。
図3図3は強磁性ボールを備える、図1に示す反応キュベットの縦断面図である。
図4図4は強磁性ボールを備える、図1に示す反応キュベットの断面図である。
図5図5は反応キュベットを備える、本発明による凝固時間決定装置の斜視図であって、その決定装置のある動作状態を示す図である。
図6図6は反応キュベットを備える、本発明による凝固時間決定装置の斜視図であって、その決定装置の別の動作状態を示す図である。
図7図7は反応キュベットを備える、本発明による凝固時間決定装置の斜視図であって、その決定装置のさらに別の動作状態を示す図である。
図8図8は反応キュベットを備える、本発明による凝固時間決定装置の斜視図であって、その決定装置のさらに別の動作状態を示す図である。
図9図9図5に示す決定装置の磁界発生システムと、この決定装置を備える反応キュベットとの間の相対的配置を示す模式的断面図である。
図10図10は、図5に示す決定装置の一部縦断面図であって、上記反応キュベットの軌道上に配置された強磁性ボールが占めるある位置を示す図である。
図11図11は、図5に示す決定装置の一部縦断面図であって、上記反応キュベットの軌道上に配置された強磁性ボールが占める別の位置を示す図である。
図12図12は、図5に示す決定装置の一部縦断面図であって、上記反応キュベットの軌道上に配置された強磁性ボールが占めるさらに別の位置を示す図である。
図13図13は、図5に示す決定装置の一部縦断面図であって、上記反応キュベットの軌道上に配置された強磁性ボールが占めるさらに別の位置を示す図である。
図14図14は、図5に示す決定装置の一部縦断面図であって、上記反応キュベットの軌道上に配置された強磁性ボールが占めるさらに別の位置を示す図である。
図15図15は、測定信号の振幅が経時的に変化する様子を示す図である。
図16図16は、上記測定信号の上下包絡線間の差分(amplitude)が経時的に変化する様子を示す図である。
図17図17は、上記測定信号の上下包絡線間の間隔、およびその測定信号の上下包絡線間の間隔から決定されるベース信号の所定の割合が変化する様子を示す図である。
図18図18は、上記測定信号の平均上包絡線の振幅が経時的に変化する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、添付する模式的図面を参照しながら述べる以下の詳細な説明を読むことにより、十分に理解可能であろう。なお添付の図面には、本発明による決定装置および反応キュベットの一実施の形態が図示されているが、これらはあくまでも例であり、本発明はそれらの例に限定されるわけではない。
【0060】
図1図4は、光ビームに対して透明なプラスチック材料からなる、一体型反応キュベット2を示す。この反応キュベット2は、例えば血液サンプルのような、分析対象である生物流体を入れるように構成された容器3を備える。容器3は、例えば22mmの程度の高さを有し、例えば600μL以下の生物流体を分析対象として入れることができる。
【0061】
容器3は、下側部分4と、下側部分4から延びる上側部分5と、を有する。下側部分4はほぼ直方体状であり、例えば8mm程度の長さを有し、3mm程度の幅を有する。下側部分4は、互いに平行な一対の長手方向壁6a、6bと、互いに平行な一対の横方向壁7a、7bと、底部8と、を有する。底部8は、上向きに凹である凹状軌道9を規定する。
【0062】
軌道9は、容器3の下側部分4の長手方向に細長く延びており、そのほぼ中央に最低点を有する。軌道9は、強磁性ボール11の揺動運動を案内するように構成される。軌道9は、例えば曲線状やほぼV字状であってもよく、また図3に示すように、円筒形状部分を有していてもよい。図面に示す実施の形態によれば、軌道9は、容器3の下側部分4の底部8に形成された2本の横方向レール12、13により規定される。これら2本の横方向レール12、13により、具体的には、反応キュベット2における強磁性ボール11の揺動運動を案内することが可能になる。
【0063】
容器3の上側部分5は、底部8の反対側で押し広げられ、挿入口14を規定する。上側部分5は、例えば、概略円錐台形状を有する。上側部分5は、互いに平行な一対の長手方向壁15a、15bと、それらの長手方向壁15a、15bを結合する一対の横方向壁16a、16bと、を有する。長手方向壁15a、15bおよび横方向壁16a、16bが挿入口14を規定する。
【0064】
図面に示された実施の形態では、上側部分5は、さらに長手方向壁6b、15bを接続する接続壁17を備える。接続壁17は長手方向壁6b、15bに対して傾斜している。本発明のこの実施の形態によれば、長手方向壁6a、15aは面一であるが、長手方向壁6b、15bは互いに平行でずれている。
【0065】
横方向D1が長手方向壁6a、6bに直交する方向として規定され、長手方向D2が横方向壁7a、7bに直交する方向として規定される。平面P1が容器3の上側部分5の長手方向中央平面として規定され、平面P2が容器3の下側部分4の長手方向中央平面として規定され、平面P3が容器の横方向中央平面P3として規定される(図3および図4を参照)。
【0066】
具体的には図2および図4から分かるように、軌道9の略延長方向に対して垂直に(すなわち方向D1において)測定した、容器3の下側部分4の幅は、軌道9の延長方向に対して垂直に(すなわち方向D1において)測定した、容器3の上側部分5の幅よりも小さい。
【0067】
また、容器3の下側部分4、具体的には軌道9は、容器3の上側部分5の長手方向中央平面P1に対して横方向にずれている。したがって、軌道9は、下側部分4の長手方向壁6bよりも長手方向壁6aの近くに位置する。
【0068】
図面に示された実施の形態では、反応キュベット2は、挿入口14の反対側で、長手方向壁6aの延長方向に延びる第1の終端壁18と、挿入口14の反対側で、長手方向壁15bの延長方向に延びる第2の終端壁19と、をさらに有する。
【0069】
反応キュベット2は、容器3の上側部分5の長手方向上縁22から下向きに延びる、掛合タブ21をさらに備える。反応キュベット2は、長手方向上縁22とは反対側の、上側部分5の長手方向上端24に形成された切れ込み23を有する。切れ込み23の寸法は、ある反応キュベット2の掛合タブ21が、隣接する別の反応キュベット2の切れ込み23と方向D1に連係することにより、2つの隣接する反応キュベット2同士を掛合させるように、掛合タブ21の寸法に合わせて調整される。
【0070】
また、反応キュベット2は、下側部分に基部25を有する。基部25には、方向D1に平行な両対向端部に沿って、第1の上向きに開口する掛合部を形成する第1の突出部26と、第2の下向きに開口する掛合部を形成する第2の突出部27と、が形成されている。第1の上向きに開口する掛合部は、方向D2において隣接する反応キュベット2の下向きに開口する掛合部と係合し、それら2つの反応キュベット2を掛合させるように構成される。
【0071】
これら掛合タブ21ならびに第1および第2の掛合部26、27の構造により、複数の反応キュベット2を2つの互いに直交する方向に、手動によるか、または自動的に掛合させ、複数の板を形成することが可能になる。また、これらの掛合部26、27を用いることにより、その上側部分5および下側部分4において実質的に同じである、複数の反応キュベット2をあらゆる寸法に結合し、それらの反応キュベット2が組み合わされた時に、一枚の平板を構成するようにできる。これにより、それらの反応キュベット2を簡単で省スペースなやり方で収納できるように配置するとともに、またそれらの反応キュベット2を対応する板から容易に除去可能とすることもできる。
【0072】
図5〜13は、分析対象である血液サンプルの凝固時間を決定するように構成された決定装置31を示す。
【0073】
この決定装置31は、分析対象である血液サンプル33と、軌道9上に配置された強磁性ボール11とを含む反応キュベット2を収容するように構成された収容筐体32を備える。
【0074】
この決定装置31は、また、反応キュベット2が収容筐体32内に収容された時に、強磁性ボール11を軌道9に沿って揺動運動により変位させることが可能な磁界を発生するように構成された、磁界発生システム34を備える。磁界発生システム34により発生された磁界の励起周波数は、好適には、強磁性ボール11の揺動運動の固有振動数に近く、例えば、3.125Hz程度(320ms程度の周期で)である。
【0075】
決定装置31は、反応キュベット2が収容筐体32内に収容された時に、磁界発生システム34が、軌道9の略延長方向に対して横方向にずらして配置されるように構成される。具体的には、決定装置31は、反応キュベット2が収容筐体32に収容された時に、磁界発生システム34が、容器3の長手方向壁(例えば長手方向壁6b)に少なくとも部分的に面して配置されるように構成される。
【0076】
磁界発生システム34は、好適には、反応キュベット2が収容筐体32内に収容された時に、軌道9の端部近傍であって、軌道9に対して同じ側にそれぞれ配置される2つの電磁石34a、34bを備える。磁界発生システム34により発生される磁界は、好適には例えば電磁石34a、34bのコイルに印加される電気パルスの間隔および/または幅(length)を変化させることにより、調整され得る。
【0077】
決定装置31は、反応キュベット2が収容筐体32内に収容される時に、分析対象である血液サンプル33の方向に入射光ビーム36を出射するように構成された発光部材35をさらに有する。発光部材35は、例えば発光ダイオードであり得る。
【0078】
添付する図面に図示された実施の形態によれば、決定装置31は、反応キュベット2が収容筐体32に収容され、強磁性ボール11が軌道9の最低点に位置する時、強磁性ボール11が入射光ビーム36を部分的に遮蔽するように構成される(図10および図12参照)。
【0079】
本発明のある実施の形態によれば、入射光ビーム36の遮蔽率は、強磁性ボール11が軌道9の最低点にある時の位置に対応する最小値(図10および図12参照)と、強磁性ボール11が軌道9の最低点から最も遠くにある時の位置に対応する最大値(図11および図13参照)と、の間で変化する。ここで、最小値は、例えば、5%から10%の範囲内である。
【0080】
決定装置31は、さらに、反応キュベット2を透過し、入射光ビーム36から生じた、少なくとも1つの光ビーム38を検出することにより、計測信号Sを出力するように構成された検出部材37を備える。図15は、測定信号Sの一例の振幅が経時的に変化する様子を示し、具体的には、測定信号Sの一例の相対光強度が経時的に変化する様子を示す図である。
【0081】
検出部材37は、光検出器、例えば光ダイオードであり得る。図面に示された実施の形態では、検出部材37は、入射光ビーム36のほぼ軸上に位置する。したがって、図面に示された実施の形態では、発光部材および検出部材は、反応キュベット2が収容筐体32内に収容された際に、軌道9の端部のいずれか一方の側に位置する。
【0082】
本発明のある実施の形態によれば、測定信号Sは、連続する信号を一定の間隔でサンプリングすることにより得られる。その一定の間隔(すなわち2つのサンプリング時刻間の間隔)の長さは例えば10ms程度である。
【0083】
決定装置31は、処理ユニット39をさらに備える。具体的には図5に示すように、処理ユニット39は、収容筐体32の近傍に配置されてもよいが、計測領域からある距離だけ離れた位置に配置されてもよい。
【0084】
処理ユニット39は、具体的には、
計測信号Sに対して第1の処理を行うことにより、強磁性ボール11の運動を表現する少なくとも1つの物理量の変化を表す第1の信号S1を得(強磁性ボール11の運動を表現する少なくとも1つの物理量とは、例えば、強磁性ボール11の運動の振幅および/または周波数である)、
計測信号Sに対して第2の処理を行うことにより、分析対象である血液サンプル33の少なくとも1つの光学特性の変化を表す第2の信号S2を得(分析対象である血液サンプル33の少なくとも1つの光学特性とは、例えば、分析対象である血液サンプル33の吸光度である)、
第1の信号S1に基づいて、分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第1の値t1を決定し、かつ
第2の信号S2に基づいて、分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第2の値t2を決定する、ように構成される。
【0085】
本発明のある実施の形態によれば、処理ユニット39は、得られた第1の信号S1が計測信号Sの上包絡線と下包絡線との間の間隔に対応するように構成される。測定信号の上包絡線は、測定信号Sの極大値同士を結ぶことにより決定され、測定信号の下包絡線は、測定信号Sの極小値同士を結ぶことにより決定される。図16は、上下包絡線EB、EH間の差分(amplitude)が経時的に変化する様子を示し、具体的には上下包絡線EB、EHの相対光強度が経時的に変化する様子を示す。
【0086】
本発明の別の実施の形態によれば、処理ユニット39は、得られた第1の信号S1が計測信号Sの上下包絡線間の間隔のスライド平均に対応するように構成される。より正確にいうと、連続する複数の計測時刻、またはサンプリング時刻に対応する、計測信号Sの上包絡線および下包絡線間の間隔を表す、複数の値(例えば12個の値)からなる所定の集合において、計測信号Sの上下包絡線間の間隔のスライド平均に対応するように構成される。好ましくは、ある与えられた測定時刻またはサンプリング時刻に対する第1の信号S1のそれぞれの値は、測定信号Sの上包絡線および下包絡線間の間隔を表す、複数の最近値のスライド平均として決定される。例えば、測定信号Sの上包絡線および下包絡線間の間隔を表す、12個の最近値のスライド平均として決定される。
【0087】
本発明のある実施の形態によれば、処理ユニット39は、所定のスライド期間に亘る第1の信号S1のスライド平均に対応するベース信号を得るように構成される。より具体的には、ある与えられた測定時刻またはサンプリング時刻に対するベース信号のそれぞれの値は、ある時間間隔に含まれる複数の測定時刻またはサンプリング時刻に対応する、第1の信号S1の複数の値からなる集合のスライド平均として決定される。ここで、上記ある時間間隔の始点および終点は、与えられた測定時刻またはサンプリング時刻に対して規定される。その時間間隔は、例えば10秒間であり、ベース信号のそれぞれの値について、与えられた複数の測定時刻またはサンプリング時刻に先行する。
【0088】
上記決定方法の別の実施の形態によれば、ある与えられた測定時刻またはサンプリング時刻に対するベース信号のそれぞれの値は、与えられた複数の測定時刻またはサンプリング時刻における第1の信号S1の値を含み、かつ与えられた複数の測定時刻またはサンプリング時刻に先行する複数の測定時刻またはサンプリング時刻に対応する第1の信号S1のすべての値を含む、複数の値からなる集合のスライド平均として決定される。本発明のある実施の形態によれば、処理ユニット39は、第1の信号S1と、ベース信号の所定の割合に対応する第3の信号S3との間の交点Piを決定するように構成される。処理ユニット39により決定された、分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第1の値t1は、決定された交点Piに対応する時刻である。本発明のある実施の形態によれば、第3の信号は、ベース信号の30%から60%の範囲内である。図17は、第1および第3の信号S1、S3間の差分(amplitude)が経時的に変化する様子を示し、具体的には、第1および第3の信号S1、S3の相対光強度が経時的に変化する様子を示す。なお、ベース信号の所定の割合は、実行すべき試験に依存してプログラム可能であり、例えば、使用した反応キュベットの反応量に依存してプログラム可能である。
【0089】
本発明のある実施の形態によれば、処理ユニット39は、得られた第2の信号S2が計測信号Sの平均上包絡線に対応するように構成される。例えば、処理ユニット39は得られた第2の信号S2が計測信号の上包絡線のスライド平均に対応するように構成され、より正確には、連続する複数の計測時刻またはサンプリング時刻に対応する、上包絡線の複数の値(例えば12個の値)からなる所定の集合において、計測信号の上包絡線のスライド平均に対応するように構成される。好ましくは、ある与えられた測定時刻またはサンプリング時刻に対する第2の信号S2のそれぞれの値は、上包絡線の複数の最近値のスライド平均として決定される。例えば、上包絡線の12個の最近値のスライド平均として決定される。
【0090】
図18は、平均上包絡線の振幅が経時的に変化する様子を示し、具体的には、平均上包絡線の相対光強度が経時的に変化する様子を示す図である。
【0091】
本発明のある実施の形態によれば、処理ユニット39は、第2の信号S2の最大勾配Pmを決定するように構成され、処理ユニット39により決定される、分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第2の値t2は、当該最大勾配に対応する時刻である。
【0092】
本発明のある実施の形態によれば、決定装置31は、上記入射光ビームの光路上に配置され、その入射光ビーム36を平行光にするように構成された光学レンズ41を備える。
【0093】
決定装置31は、複数の反応キュベット2を上記収容筐体内に挿入・排出するように構成されたローディングシステム42をさらに備える。ローディングシステム42は、好適には、リニアアクチュエータを備える。リニアアクチュエータは、例えば、電動ステッピングモータのような電動モータ43を備えていてもよい。
【0094】
決定装置31は、好適には、第1および第2の筐体部分32aおよび32bをそれぞれ規定する第1および第2の部材または本体部44a、44bをさらに備える。第1および第2の部材44a、44bは、挿入位置と排出位置との間で互いに移動可能なように配置される(図5参照)。ここで、第1および第2の部材44a、44bは、互いに間隔を隔てて配置されており、第1および第2の筐体部32a、32bに面し、第1および第2の部材44a、44bの測定位置が互いに近接し、収容筐体32を規定するまで、反応キュベット2の変位を許容する。
【0095】
以下、分析対象である血液サンプルの凝固時間を、決定装置31を用いて決定する方法について説明する。
【0096】
このような決定方法は、
分析対象である血液サンプル33を入れる反応キュベット2を用意する工程と、
反応キュベット2の軌道9上に強磁性ボール11を配置する工程と、
反応キュベット2を、決定装置31の収容筐体32内に配置する工程と、
磁界発生システム34を用いて磁界を発生させることにより、強磁性ボール11を軌道9に沿って揺動運動により変位させる工程であって、磁界は、2つの電磁石34a、34bのコイルに対して順次電流を流すことにより発生される、工程と、
発光部材36を用いて、分析対象である血液サンプル33へと入射光ビーム35を出射する工程と、
反応キュベット2を透過し、入射光ビーム36から生じた、光ビーム38を検出部材37を用いて例えば20ms毎に検出することにより、計測信号Sを得る工程と、
処理ユニット39を用いて計測信号Sに対して第1の処理を行うことにより、強磁性ボール11の運動の特に振幅の変化を表す第1の信号S1を得る工程と、
処理ユニット39を用いて、計測信号Sに対して第2の処理を行うことにより、分析対象である血液サンプル33の特に吸光度の変化を表す第2の信号S2を得る工程と、
処理ユニット39を用いて、第1の信号S1に基づいて、分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第1の値t1を決定する工程と、
処理ユニット39を用いて、第2の信号S2に基づいて、分析対象である血液サンプルの凝固時間を表す第2の値t2を決定する工程と、
凝固時間を表す決定された第1および第2の値t1、t2を比較する工程と、
を有する。
【0097】
上記決定方法のある実施の形態によれば、この決定方法は、軌道9のほぼ最低点にあるときの強磁性ボール11の位置に対応する、計測信号Sの初期値に依存して、入射光ビーム36の光強度を調整する(より正確にはサーボ制御する)工程をさらに有する。この構成により、分析対象である血液サンプルの初期吸光度に基づいて、入射光ビーム36の光強度をサーボ制御することが可能になる。例えば、分析対象である血液サンプルが初期段階において非常に吸光度が高い場合や、あるいはその逆の場合、具体的にはできるだけ高い参照信号を得ることにより、飽和のリスクを避けるために、入射光ビーム36の光強度を増加させることができる。
【0098】
上記決定方法のある実施の形態によれば、上記決定方法は、上記決定方法の初期段階において(例えば強磁性ボールの運動開始から1〜2秒間程度の間)、強磁性ボール11に印加される磁界を表す少なくとも1つのパラメータを計測信号Sの初期値に依存して(より具体的には第1の信号S1の初期値に依存して)調整する(より正確には、サーボ制御する)工程をさらに有する。上記磁界を表現する上記少なくとも1つのパラメータは、例えば磁界発生システム34により発生される磁界の周期および/または強度であり得る。このような構成により、強磁性ボール11の揺動を、分析対象である血液サンプル33の初期粘性に基づいて最適化することが可能になる。その結果、強磁性ボール11が反応キュベット2の壁に衝突することによる衝撃を避けることが可能になり、また逆に、強磁性ボール11の最大振幅が不十分である事態を避けることも可能になる。
【0099】
図14は、本発明の第2の実施の形態による決定装置31を示す。この決定装置31は図5〜13に示す決定装置とは本質的に異なり、ローディングシステム42および収容筐体32が、互いに接続された複数の反応キュベット2’を含む集合体またはブロックをそれぞれ挿入し、かつ収容するように構成されている。そのような集合体またはブロックに含まれる、異なる複数の反応キュベット2’は、例えば、プラスチック材料から1つの部品として成形される。これらの反応キュベット2’は、好適には、その長手方向壁が互いに平行になるように、互いに隣接して配置される。またこれらの反応キュベット2’は、例えば、横方向接続部45a、45bによりその上側部分において互いに接続される。
【0100】
なお当然ながら、本発明は、あくまで一例を挙げる目的で上に述べた決定装置や反応キュベットの実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の範囲はむしろそのあらゆる変形例にも及ぶものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18