特許第6697031号(P6697031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697031
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】3次元の物体を付加製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/245 20170101AFI20200511BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20200511BHJP
   B29C 64/379 20170101ALI20200511BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20200511BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20200511BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20200511BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20200511BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   B29C64/245
   B29C64/153
   B29C64/379
   B33Y30/00
   B33Y10/00
   B22F3/105
   B22F3/16
   B28B1/30
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-120526(P2018-120526)
(22)【出願日】2018年6月26日
(65)【公開番号】特開2019-111802(P2019-111802A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2018年6月26日
(31)【優先権主張番号】17210352.5
(32)【優先日】2017年12月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506154834
【氏名又は名称】ツェーエル・シュッツレヒツフェアヴァルトゥングス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ドメニク・ブラウンロート
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−506803(JP,A)
【文献】 特許第4054075(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F3/16
B29C64/153,64/245
B33Y10/00,30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー源によって固化することができる造形材料(3)の層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体(2)を付加製造する方法であって、形すべき物体(2)を運搬するように適合された運搬ユニット(5)が提供される方法において、
少なくとも1つの箔又は薄板状の運搬要素(7)が、前記運搬ユニット(5)に着脱可能に連結され、前記運搬要素(7)は、前記物体(2)が付加造形される表面(10)を提供し、前記運搬要素(7)の少なくとも1つの部分が、少なくとも1つの造形すべき物体(2)の一部であり、
前記少なくとも1つの運搬要素(7)の寸法が、前記造形すべき物体(2)の少なくとも1つの幾何パラメータに応じて画定され、前記少なくとも1つの幾何パラメータは、前記物体(2)の底面(19)に関する、
方法。
【請求項2】
前記運搬ユニット(5)の少なくとも1つの連結手段(12、13)が、前記運搬要素(7)を前記運搬ユニット(5)に着脱可能に連結するために使用される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの運搬要素(7)は、少なくとも1つの支持要素(18)を介して、前記運搬ユニット(5)に対して支持される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
記運搬要素(7)を支持する少なくとも1つの支持要素(18)の位置が、前記運搬要素(7)上の前記物体(2)の位置に応じて画定される請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの運搬要素(7)は、前記運搬要素(7)が前記運搬ユニット(5)に連結された状態で、前記運搬ユニット(5)内の少なくとも1つの凹部(15)内に少なくとも部分的に受け取られる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの開口(16)を備える凹部(15)を有する運搬ユニット(5)が使用される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記開口(16)は、吸引ユニット(17)に連結可能であり又は連結されており、前記吸引ユニット(17)を介して前記凹部(15)内に負圧及び/又は正圧が生成される請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記運搬要素(7)は、少なくとも1つのフォースロック、及び又はポジティブロック、及び/又は物質接合連結を介して、前記運搬要素(7)に着脱可能に連結される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記運搬要素(7)は、少なくとも1つの接着接合剤を介して前記運搬ユニット(5)に着脱可能に連結され、熱伝導性を有し且つ/又は温度安定性を有する接着剤が使用される請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの金属箔及び/又は少なくとも1つの金属薄板として構築され又はこれを備える運搬要素(7)が使用される請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
造形方向に0.01mm〜2mm延びる運搬要素(7)が使用される請求項1〜1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
3次元の物体(2)を付加製造する装置用の運搬ユニット(5)において、
前記運搬ユニット(5)は、少なくとも1つの箔又は薄板状の運搬要素(7)を備え、
前記少なくとも1つの箔又は薄板状の運搬要素(7)が、前記運搬ユニット(5)に着脱可能に連結されており又は連結可能であり、前記運搬要素(7)は、物体(2)が付加造形される表面(10)を提供し、前記運搬要素(7)の少なくとも1つの部分が、少なくとも1つの造形すべき物体(2)の一部であり、
前記少なくとも1つの運搬要素(7)の寸法が、前記造形すべき物体(2)の少なくとも1つの幾何パラメータに応じて画定され、前記少なくとも1つの幾何パラメータは、前記物体(2)の底面(19)に関する、
運搬ユニット
【請求項13】
エネルギー源によって固化することができる造形材料(3)の層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体(2)を付加製造する装置であって、運搬ユニット(5)を備える装置において、
前記装置は、少なくとも1つの箔又は薄板状の運搬要素(7)を備え、
前記少なくとも1つの箔又は薄板状の運搬要素(7)が、前記運搬ユニット(5)に着脱可能に連結されており又は連結可能であり、前記運搬要素(7)は、前記物体(2)が付加造形される表面(10)を提供し、前記運搬要素(7)の少なくとも1つの部分が、少なくとも1つの造形すべき物体(2)の一部であり、
前記少なくとも1つの運搬要素(7)の寸法が、前記造形すべき物体(2)の少なくとも1つの幾何パラメータに応じて画定され、前記少なくとも1つの幾何パラメータは、前記物体(2)の底面(19)に関する、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー源によって固化することができる造形材料の層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体を付加製造(積層造形)する方法に関し、造形すべき物体を運搬するように適合された運搬ユニットが提供される。
【背景技術】
【0002】
造形材料の層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体を製造することは、従来技術から概して知られている。典型的には、造形平面内に塗布された造形材料の層を選択的に照射及び固化するためにエネルギー源が使用され、造形材料の層の選択的な照射及び固化は、造形すべき物体の横断面に対応する。
【0003】
さらに、物体は、造形材料が連続して層ごとに塗布される表面を提供する運搬要素上に付加造形されることが、従来技術から知られている。造形材料の層の照射及び固化のため、物体は、運搬要素上に製造され、特に運搬要素に接合、たとえば溶融又は焼結される。付加造形された物体の製造プロセスが終了した後、典型的には、物体を運搬要素から取り出す必要があり、これは通常、物体を運搬要素からのこぎりで切り落とすことによって行われる。したがって、定義された物体要件、特に表面粗さなどの表面パラメータを満たすために、運搬要素に連結された物体の表面を処理する必要があるため、運搬要素からの物体の分離は厄介であり、時間がかかり、通常はさらなる後処理を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、付加造形された物体に必要とされる後処理がより少ない、3次元の物体を製造する改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明によれば、請求項1に記載の方法によって実現される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に準拠する。
【0006】
本明細書に記載の方法は、3次元の物体を付加製造する方法である。本発明の方法は、エネルギー源、たとえばエネルギービーム、特にレーザビーム又は電子ビームによって固化することができる粉末状の造形材料(「造形材料」)の層を連続して選択的に層ごとに固化することによって3次元の物体、たとえば技術的構成要素を付加製造する対応する装置上で実行することができる。それぞれの造形材料は、金属、セラミック、又はポリマー粉末とすることができる。それぞれのエネルギービームは、レーザビーム又は電子ビームとすることができる。それぞれの装置は、たとえば、選択的レーザ焼結装置、選択的レーザ溶融装置、又は選択的電子ビーム溶融装置とすることができる。別法として、造形材料を連続して層ごとに選択的に固化することは、少なくとも1つの結合材料を介して実行することができる。結合材料は、対応する塗布ユニットによって塗布することができ、たとえば適したエネルギー源、たとえばUV光源によって照射することができる。
【0007】
この装置は、その動作中に使用される複数の機能ユニットを備えることができる。例示的な機能ユニットには、処理チャンバ、処理チャンバ内に配置された造形材料層を少なくとも1つのエネルギービームで選択的に照射するように適合された照射デバイス、及び所与の流れ特性、たとえば所与の流れプロファイル、流速などで処理チャンバを通って少なくとも部分的に流れるガス状流体流を生成するように適合された流れ生成デバイスが挙げられる。ガス状流体流は、処理チャンバを通って流れる間に、固化されていない粒子状の造形材料、特に装置の動作中に生成された煙又は煙残留物で充填することが可能である。ガス状流体流は、典型的には不活性であり、すなわち典型的には、不活性ガス、たとえばアルゴン、窒素、二酸化炭素などの流れである。
【0008】
前述したように、本発明の方法は、3次元の物体が付加造形される運搬要素からのそれぞれの3次元の物体の分離が簡略化され、又はさらに省略することができるため、3次元の物体の後処理の必要が改善され、特に低減された、3次元の物体の付加製造プロセスに関する。特に、本発明による3次元の物体は、運搬要素から分離する必要はなく、特に切断された表面の必要な後処理に関して労力を要するのこぎりによる切り落としは必要ない。
【0009】
本発明は、少なくとも1つの箔又は薄板状の運搬要素が、運搬ユニットに着脱可能に連結され、運搬要素は、物体が付加造形される表面を提供し、運搬要素の少なくとも1つの部分が、少なくとも1つの造形すべき物体の一部であるという概念に基づいている。したがって、本発明によれば、箔状又は薄板状の運搬要素が使用され、その上に物体が付加造形される。運搬要素は、物体を付加造形することができる表面を提供する。運搬要素は、運搬ユニットに連結することができ、特に運搬ユニットに着脱可能に連結することができる。
【0010】
したがって、付加製造プロセスの前に、箔又は薄板状の運搬要素(「運搬要素」)が運搬ユニットに連結される。その後、運搬要素を運搬する運搬ユニットを付加製造プロセス内で使用することができ、物体は、運搬要素によって提供される表面上に付加造形される。付加製造プロセスが終了した後、運搬要素を運搬ユニットから取り外すことができ、運搬要素は、付加造形された物体の少なくとも一部を形成し、したがって物体を運搬要素からの厄介な分離は必要なく、特にのこぎりで切り落とす必要はなく、これは特に物体の底面の表面品質に影響を与える。
【0011】
たとえば、運搬ユニットに着脱可能に連結される運搬要素として金属箔又は金属薄板(有利には、付加造形された物体と同じ材料)を使用することが可能である。金属箔又は金属薄板上で物体が付加造形され、付加製造プロセスが終了した後、物体を薄板/箔とともに運搬ユニットから取り出すことができる。当然ながら、箔又は薄板のうち必要でない(物体の底面から突出する)部分は、物体から取り除くことができる。使用される運搬要素が箔又は薄板状であり、比較的薄いため、運搬要素は、物体品質に影響を与えることなく、物体から取り出すことができる。特に通常、本発明による運搬要素を物体から取り出した後、物体の(底)面を後処理する必要はない。
【0012】
本発明の第1の実施形態によれば、運搬ユニットの少なくとも1つの連結手段、特に連結表面が、運搬要素を運搬ユニットに特に着脱可能に連結するために使用される。前述したように、運搬要素は、運搬要素によって提供される表面上に物体を付加造形することができるように、運搬ユニットに(着脱可能に)取り付けられ又は連結される。運搬ユニット及び/又は運搬要素は、運搬要素を運搬ユニットに連結するために使用することができる1つ又は複数の連結手段を備える。したがって、付加製造プロセスにおいて必要とされる機械的安定性を提供する金属板などの機械的に安定した運搬ユニットを使用することができ、そこに運搬要素を着脱可能に連結することができる。運搬要素は、前述したように、箔状又は薄板状の運搬要素として構築されるために比較的薄いことから、運搬ユニットは、運搬要素に対する機械的安定性を提供するために、定義された程度に使用される。
【0013】
運搬要素の機械的安定性をさらに増大させるために、運搬要素は、少なくとも1つの支持要素を介して支持することができ、特に運搬ユニットに対して支持することができる。したがって、少なくとも1つの支持要素は、運搬ユニット上で運搬要素を支持することができ、少なくとも1つの支持要素は、好ましくは、運搬要素と運搬ユニットとの間に配置される。したがって、支持要素の少なくとも1つの区分は運搬要素に接触し、支持要素の別の区分は運搬ユニットに接触する。少なくとも1つの支持要素は、たとえば、運搬要素を運搬する運搬ユニット上に配置されたカラム又はピラーとして構築することができる。したがって、運搬要素は、運搬要素が運搬ユニットに連結された連結状態にあるとき、少なくとも1つの支持要素を介して支持される。さらに、少なくとも1つの支持要素はまた、前述したように、連結手段を備えることができる。
【0014】
本発明の方法の別の実施形態によれば、特に運搬要素を支持する少なくとも1つの支持要素の位置が、運搬要素上の物体の位置に応じて画定される。薄い金属箔又は薄い金属薄板など、運搬要素が比較的薄いとき、運搬要素上に付加造形される物体は、重力のために運搬要素にかかる力を生み出し、運搬要素を変形させる可能性が高い。運搬要素の変形を防止するために、運搬要素を支持する少なくとも1つの支持要素が提供される。付加造形された物体が、運搬要素上に位置する重量の定義された部分を生み出すため、少なくとも1つの支持要素の位置は、物体が付加造形される位置に応じて調整される。さらに、少なくとも1つの支持要素の位置は、運搬要素に関する応力分析に応じて調整することができ、たとえば付加造形された物体を取り囲む固化されていない造形材料も運搬要素にかかる力を生み出しうることを計算に入れることができる。
【0015】
少なくとも1つの運搬要素は、運搬要素が運搬ユニットに連結された状態で、運搬ユニット内の少なくとも1つの凹部を制限することができ、且つ/又は凹部内に少なくとも部分的に受け取られる。したがって、運搬要素が運搬ユニットに(着脱可能に)連結された連結状態にあるとき、運搬要素は、運搬ユニット内の1つ又は複数の凹部を制限する。したがって、運搬要素は、運搬要素内の凹部を囲む壁と見なすことができる。運搬ユニットは、運搬要素を凹部内に少なくとも部分的に受け取ることができるような手段を提供するようにさらに構築することができる。
【0016】
したがって、使用される運搬ユニットは、少なくとも1つの開口を有する凹部を備えることができる。したがって、運搬要素は、運搬ユニット上に配置することができ、又は運搬ユニットに連結することができ、運搬要素は、運搬ユニット内に提供された凹部を制限する。開口は、凹部の内部体積を別の体積、たとえば環境に連結する。開口は、特に、吸引ユニットに連結されており又は連結可能であり、吸引ユニットを介して凹部内に負圧及び/又は正圧を生成することができる。したがって、吸引ユニットは、凹部内に存在する圧力に影響を与えるために、凹部からガスを吸い出し、又は凹部内へガスを入れるように適合される。特に、吸引ユニットは、凹部内に負圧及び/又は正圧を生成するように適合することができる。
【0017】
凹部を制限する運搬要素は、運搬ユニット内の凹部内に印加される負圧を介して、運搬ユニットに着脱可能に連結することができる。したがって、運搬要素が運搬ユニット上に配置され又は運搬ユニットに連結された後、運搬ユニット内の凹部内に負圧を印加して、運搬ユニットと運搬要素との間の連結を固定し、又は連結を確立することができる。付加製造プロセスが終了した後、運搬要素を運搬ユニットから取り外す必要があるときは、開口を介して凹部内にガスを入れ又は通すように、運搬ユニットの凹部内の負圧を常態に戻すことができる。
【0018】
さらに、運搬要素は、少なくとも1つのフォースロックを介して、特にねじ連結及び/若しくはポジティブロック、特にさねはぎ連結並びに/又は物質接合、特に接着連結を介して、運搬要素に着脱可能に連結することができる。したがって、運搬要素を運搬ユニットに着脱可能に連結する様々なやり方が可能であり、特に2つ以上の異なる連結手段の組合せが実行可能である。たとえば、運搬要素は、少なくとも1つの接着接合剤を介して運搬ユニットに着脱可能に連結することができ、熱伝導性を有し且つ/又は特に200℃を上回ると温度安定性を有する接着剤が使用される。
【0019】
したがって、運搬要素は、運搬ユニットに接着させることができ、付加製造プロセスが終了した後、接合剤を溶解させて運搬ユニットを運搬要素から取り外すことができ、又は逆も同様である。好ましくは、接着剤が付加製造プロセス内の温度に対して安定するように、200℃を上回る剥離温度を有する接着剤が使用される。付加製造プロセスが終了した後、剥離温度を上回る温度を印加して接合剤を溶解させ、運搬要素を運搬ユニットから取り外すことができる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの運搬要素の寸法が、造形すべき物体の少なくとも1つの幾何パラメータ、好ましくは物体の底面に関する幾何パラメータに応じて画定される。したがって、造形すべき物体の少なくとも1つの幾何パラメータに応じて、運搬要素の寸法、たとえば運搬要素のサイズ、特にその上に造形すべき物体に提供される表面の面積を選択又は調整することができる。
【0021】
たとえば、少なくとも1つの運搬要素の寸法は、物体の底面の幾何形状、特に形状及び/又はサイズに応じて画定又は選択することができる。したがって、運搬要素は、運搬要素に接触する物体表面から突出する運搬要素に対して余分の材料が使用されないように、物体の底面にぴったり合うことができる。したがって、運搬要素が運搬ユニットから取り外された後、付加造形された物体が完成し、いかなる後処理も必要としない。「底面」という用語は、運搬要素に接触する付加造形された物体の表面を指す。典型的には、物体が下から上に造形されるとき、「底面」は、物体の底部に位置する表面を指す。
【0022】
また、物体キャリア、たとえば金属薄板上で物体を製造しなければならないことを考慮することも可能であり、少なくとも1つの運搬要素のサイズ又は少なくとも1つの寸法は、運搬要素が物体キャリアの所望のサイズに事前にぴったり合うように画定又は調整又は選択することができる。たとえば、付加造形された物体が、物体を運搬する矩形の金属薄板上に製造される場合、矩形の金属薄板の寸法にぴったり合う運搬要素を使用することができ、物体は、運搬要素として使用される矩形の金属薄板の上に付加造形される。したがって、運搬要素に対して余分の材料は使用されず、運搬ユニットからの分離後に物体、特に物体の底面を後処理するために厄介で時間のかかる後処理は必要とされない。
【0023】
付加製造プロセスがそれぞれ実行され又は終了した後、物体を運搬要素から取り出し、特に切り離すことができる。したがって、物体の底面の寸法に完全又は厳密にぴったり合わない運搬要素が使用される場合、運搬要素の少なくとも1つの余分の部分を取り除くことができる。運搬要素の余分の部分を付加造形された物体から取り除くために、余分の部分は、たとえば、物体から切り離し又は引き離し又は引き剥がすことができる。
【0024】
本発明の方法で使用される運搬要素は、少なくとも1つの金属箔及び/又は少なくとも1つの金属薄板、好ましくはチタン薄板又はアルミニウム薄板として構築することができ、又はこれを備えることができる。前述したように、好ましくは、付加製造プロセスにおいて造形材料として使用されるのと同じ材料、少なくとも付加造形された物体の底面を形成するために使用されるのと同じ材料が、運搬要素に対して使用される。したがって、付加製造プロセスにおいて、運搬要素と付加造形された物体の底面との間に均一の連結を実現するために、運搬要素及び造形材料に同じ材料を使用することができる。
【0025】
前述したように、本発明の製造プロセスで使用される運搬要素は、箔状又は薄板状の運搬要素とすることができ、運搬要素は、好ましくは、造形方向に0.01mm〜2mm、好ましくは0.05mm〜0.15mm延びる。したがって、運搬要素は、0.01mm〜2mm、好ましくは0.05mm〜0.15mmの範囲内の厚さを有することができる。したがって、(非常に)薄い金属薄板又は(非常に)薄い箔を使用することができ、好ましくは、運搬要素の材料の機械的安定性は、運搬要素の余分の部分、特に運搬要素のうち物体の底面から突出する部分を容易に取り除くことができるように画定又は選択される。
【0026】
さらに、本発明は、3次元の物体を付加製造する装置用の運搬ユニットに関し、少なくとも1つの箔又は薄板状の運搬要素が、運搬ユニットに着脱可能に連結されており又は連結可能であり、運搬要素は、物体が付加造形される表面を提供し、運搬要素の少なくとも1つの部分が、少なくとも1つの造形すべき物体の一部である。
【0027】
さらに、本発明は、エネルギー源によって固化することができる造形材料の層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体を付加製造する装置に関し、この装置は、運搬ユニット、特に前述した本発明の運搬ユニットを備え、少なくとも1つの箔又は薄板状の運搬要素が、運搬ユニットに着脱可能に連結されており又は連結可能であり、運搬要素は、物体が付加造形される表面を提供し、運搬要素の少なくとも1つの部分が、少なくとも1つの造形すべき物体の一部である。
【0028】
当然ながら、3次元の物体を付加製造する本発明の方法に関して記載するすべての詳細、特徴、及び利点は、本発明の運搬ユニット及び本発明の装置に完全に移行可能である。特に、3次元の物体を付加製造する本発明の方法は、本発明の装置上で、好ましくは本発明の運搬ユニットを使用して実行することができる。
【0029】
本発明の例示的な実施形態について、図を参照して説明する。これらの図は概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】3次元の物体を付加製造する本発明の装置を示す図である。
図2】第1の実施形態による図1の本発明の装置用の本発明の運搬ユニットを示す図である。
図3】第2の実施形態による図1の本発明の装置用の本発明の運搬ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、エネルギー源、たとえばレーザビーム4によって固化することができる造形材料3の層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体2を付加製造する装置1を示す。装置1は、たとえば造形モジュール11の造形チャンバ6内に受け取られる運搬ユニット5を備える。運搬ユニット5は、矢印9によって示すように、造形チャンバ6の壁8に対して垂直に可動である。運搬ユニット5は、物体2と、物体2を取り囲む固化されていない造形材料3、いわゆる粉末床とを運搬するために使用される。運搬ユニット5は、フレーム若しくは支持体とすることができ、又はフレーム状若しくは支持体状の形状を有することができる(すべての実施形態に当てはまる)。
【0032】
図1からさらに導出することができるように、運搬ユニット5は、運搬ユニット5に着脱可能に連結された運搬要素7を有する。運搬要素7は、箔状又は薄板状の運搬要素7(「運搬要素7」)として構築され、たとえば金属箔又は金属薄板として構築され、特に造形方向に0.01mm〜2mm、好ましくは0.05mm〜0.15mm延びる。運搬要素7は、たとえば、薄いアルミニウム箔又はチタン箔として構築することができ、運搬要素7は、好ましくは、付加造形すべき物体2の造形材料3と同じ材料である。物体2は、運搬要素7によって提供される表面10上に付加造形される。表面10は、運搬要素7の上面とすることができる。したがって、運搬要素7の表面10上に塗布される造形材料3の第1の層が固化され、それによって運搬要素7の表面10に連結され、たとえば焼結又は溶融される。
【0033】
付加製造プロセスが終了し、物体2が付加造形された後、物体2を取り囲む固化されていない造形材料3を取り除くことができ、運搬要素7を運搬ユニット5から取り外すことができる。運搬ユニット5からの取り外しを可能にするために、運搬ユニット5及び/又は運搬要素7は、対応する連結手段を備え、たとえば運搬要素7は、少なくとも1つのフォースロックを介して、特にねじ連結及び/若しくはポジティブロック、特にさねはぎ連結並びに/又は物質接合、特に接着連結を介して、運搬ユニット5に着脱可能に連結することができる。
【0034】
図2は、第1の例示的な実施形態による運搬ユニット5を示す。運搬ユニット5は4つの連結手段12を備え、連結手段12は、たとえば対応するねじに対する受け取り部分として構築され、このねじは、受け取り部分内へねじ込まれる。運搬ユニット5に連結すべき運搬要素7は、対応する連結手段13、たとえば貫通孔を備え、この貫通孔に対応するねじを通して、運搬ユニット5の連結手段12内に受け取ることができる。
【0035】
図2からさらに導出することができるように、運搬ユニット5は連結表面14を備え、連結表面14に運搬要素7を取り付けることができる。運搬要素7が取り付け位置にあるとき、運搬要素7は、運搬ユニット5内の凹部15を制限する。運搬ユニット5は、運搬ユニット5内の凹部15の内部体積を吸引ユニット17に連結する開口16をさらに備える。運搬要素7が連結位置で凹部15を制限しているとき、吸引ユニット17を介して、凹部15内に負圧及び/又は正圧を印加することができる。したがって、吸引ユニット17が凹部15内に負圧を生成し、運搬要素7に力を印加して運搬要素7を連結表面14に押し付けることによって、運搬要素7の連結を強化することができる。また、運搬要素7を取り外すために、凹部15内に正圧を印加して、運搬要素7にかかる力を生成することができ、その力は、運搬要素7を連結表面14から取り外すように誘導される。
【0036】
さらに、運搬ユニット5は、運搬要素7が取り付け位置にある状態で運搬要素7を支持する4つの支持要素18を備える。支持要素18は、運搬要素7のうち物体2が製造される部分の下に位置決めされる。したがって、たとえば運搬要素7が薄い箔である場合、物体2の重量は、支持要素18を介して支持される。当然ながら、運搬要素7上に位置する固化されていない造形材料3も、運搬要素7に重量をかける。したがって、運搬要素7を支持する運搬ユニット5にわたって、複数の支持要素18を分散させることができる。
【0037】
加えて、運搬要素7を運搬ユニット5に接着させるために、支持要素18の接触表面14又は上面に接着剤を提供することができる。接着剤は、好ましくは、温度安定性を有し、特に200℃を上回ると温度安定性を有する。付加製造プロセスが終了した後、接着剤は、剥離温度を上回る温度まで加熱することができ、剥離温度を上回ると、接合剤は溶解し、運搬要素7が運搬ユニット5から取り外される。
【0038】
運搬要素7が運搬ユニット5から取り外された後、物体2の底面19から突出する運搬要素7の余分の部分は、たとえば物体2から引き剥がし又は引き離し又は切り離すことによって、物体2から取り除くことができる。
【0039】
図3は、第2の実施形態による運搬ユニット5を示す。運搬ユニット5は接触表面14を備え、接触表面14に運搬要素7が着脱可能に連結され、たとえば前述したように、対応する接着剤を介して接着され、特に接合される。図3から導出することができるように、運搬要素7の寸法は、物体2の幾何パラメータ、特に造形すべき物体2の底面19のサイズ及び幾何形状に対して画定又は選択される。したがって、造形すべき物体2に提供される運搬要素7の表面10は、運搬要素7の表面10上に製造すべき物体2の底面19にぴったり合う。言い換えれば、運搬要素7は、物体2の底部区分として使用され、物体2は、運搬要素7上に付加製造される。したがって、前述したように、付加製造プロセスが終了し、運搬要素7上に物体2が製造された後、運搬要素7を運搬ユニット5から取り外すことができる。したがって、運搬要素7は物体2の所望の部分を事前に形成するため、物体2の底面19を後処理する必要はない。
【0040】
当然ながら、個々の実施形態に関して記載するすべての特徴、詳細、及び利点は、完全に移行可能である。特に、図2に示すように、運搬要素7を物体2の寸法にぴったり合わせ、支持要素18を介して運搬要素7を支持し、且つ/又は運搬要素7によって凹部15の範囲を定めることが可能である。本発明の方法は、装置1上で、好ましくは図2、3に示す運搬ユニット5を使用して実行することができることが自明である。
【符号の説明】
【0041】
1 装置
2 3次元の物体
3 造形材料
4 レーザビーム
5 運搬ユニット
6 造形チャンバ
7 運搬要素
8 造形チャンバ6の壁
10 表面
11 造形モジュール
12 連結手段
13 連結手段
14 連結表面
15 凹部
16 開口
17 吸引ユニット
18 支持要素
19 底面
図1
図2
図3