特許第6697032号(P6697032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6697032カッター刃及びコンクリートコアカッター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697032
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】カッター刃及びコンクリートコアカッター
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/12 20060101AFI20200511BHJP
   B28D 1/14 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   E02D29/12 B
   E02D29/12 E
   B28D1/14
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-122022(P2018-122022)
(22)【出願日】2018年6月27日
(65)【公開番号】特開2020-2595(P2020-2595A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2018年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000214847
【氏名又は名称】長野油機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229128
【氏名又は名称】ゼニス羽田株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】寒川 清徳
(72)【発明者】
【氏名】龍 実
(72)【発明者】
【氏名】中村 敏信
(72)【発明者】
【氏名】大黒 寛
(72)【発明者】
【氏名】荻原 廣
(72)【発明者】
【氏名】細見 和広
【審査官】 柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−031564(JP,A)
【文献】 特開2011−168982(JP,A)
【文献】 特開2001−329554(JP,A)
【文献】 特開平08−244025(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0035079(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12
B28D 1/14
B23B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートコアカッターのカッター刃であって、
環状を呈するように配置された複数の円弧状のピースであって複数のビットが取り付けられた前面及び該前面に相対する後面を有する複数の円弧状のピースと、
周方向に互いに隣接する2つのピースの後面上に配置され前記2つのピースを互いに連結する連結部材であって前記2つのピースに該2つのピースの後面の側から前面の側に向けて伸びる2つのボルトを介してそれぞれ解除可能に固定された連結部材とを備え
前記連結部材は、前記2つのピースにそれぞれ前記2つのボルトを介して解除可能に固定された2つの連結片からなり、前記2つの連結片は、前記2つのピースが規定する円弧の接線方向へ伸びるボルト及びこれに螺合されたナットを介して互いに連結されている、カッター刃。
【請求項2】
前記連結部材は、前記ピースの後面の側から前面の側に向けて伸びるねじ穴を有する、請求項1に記載のカッター刃。
【請求項3】
各連結片は各ピースに沿って円弧状に伸びる一片部と、該一片部に直交する他片部とからなり、
両連結片はこれらの一片部においてそれぞれ前記2つのピースに固定され、また、これらの他片部において互いに連結されている、請求項1又は2に記載のカッター刃。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のカッター刃と、
前記カッター刃の連結部材相互間において各ピースにその後面において解除可能に接続され前記カッター刃の軸線の伸長方向へ伸びる軸線方向部材及び該軸線方向部材に解除可能に接続され前記カッター刃の径方向内方に向けて伸びる径方向部材とを備える、コンクリートコアカッター。
【請求項5】
環状を呈するように配置された複数の円弧状のピースであって複数のビットが取り付けられた前面及び該前面に相対する後面を有する複数の円弧状のピースと、周方向に互いに隣接する2つのピースの後面上に配置され前記2つのピースを互いに連結する連結部材であって前記2つのピースに該2つのピースの後面の側から前面の側に向けて伸びる2つのボルトを介してそれぞれ解除可能に固定された連結部材とを備えるカッター刃と、
前記カッター刃の連結部材相互間において各ピースにその後面において解除可能に接続され前記カッター刃の軸線の伸長方向へ伸びる軸線方向部材及び該軸線方向部材に解除可能に接続され前記カッター刃の径方向内方に向けて伸びる径方向部材とを備える、コンクリートコアカッター。
【請求項6】
前記連結部材は、前記ピースの後面の側から前面の側に向けて伸びるねじ穴を有する、請求項5に記載のコンクリートコアカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッター刃及び該カッター刃を備えるコンクリートコアカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
地中に設置されたコンクリート構造物、例えばマンホールと、該マンホールに接続された下水道管との間に活荷重や地震力の作用に伴う相対移動が生じたとき、マンホールより強度が低い下水道管の破損を防止するため、マンホールと下水道管との接続部に可撓化処理を施すことが行われている。可撓化処理は、マンホールの壁(躯体)を切削して下水道管の周囲に環状の孔を形成し、後に前記環状の孔に弾性変形可能の止水材料を充填することにより行われる。
【0003】
前記可撓化処理のためのマンホールの壁の切削は、環状のカッター刃を含むコンクリートコアカッターと該コンクリートコアカッターに回転動力及び推進動力を与える駆動装置とをマンホールの入り口からその内部に搬入した後、前記駆動装置により前記コンクリートコアカッターをその軸線の周りに回転させ、マンホールの壁に前記カッター刃を押し当て、これをその軸線の伸長方向へ推進(前進)させることにより行われる。
【0004】
ところで、前記マンホールの壁内に埋設された鉄筋、形成途上にある前記環状の孔内への前記マンホール外からの流入砂礫等に対する前記カッター刃の食い込みのために、前記コンクリートコアカッターの回転及び推進が不能となる場合がある。この場合には、形成途上にある前記環状の孔から一旦前記カッター刃を引き抜くためにコンクリートコアカッターを逆方向へ推進(後進)させた後、前記コンクリートコアカッターを再度回転させ、前記形成途上の環状の孔に向けて前進させる。しかし、実際には、形成途上の前記環状の孔からの前記カッター刃の引き抜き作業は容易でなく、これに多大の労力と時間とを要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5904622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記従来の事情に鑑み、コンクリート構造物の躯体への環状の孔の形成を不能とする事態に遭遇したときの前記環状の孔からのカッター刃の引き抜き作業に要する時間及び労力の軽減に寄与するカッター刃及びこれを備えるコンクリートコアカッターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンクリートコアカッターのカッター刃及び該カッター刃を備えるコンクリートコアカッターに係る。
【0008】
前記カッター刃は、環状を呈するように配置された複数の円弧状のピースであって複数のビットが取り付けられた前面及び該前面に相対する後面を有する複数の円弧状のピースと、周方向に互いに隣接する2つのピースの後面上に配置され前記2つのピースを互いに連結する連結部材であって前記2つのピースに該2つのピースの後面の側から前面の側に向けて伸びる2つのボルトを介してそれぞれ解除可能に固定された連結部材とを備える。
【0009】
また、前記カッター刃を備えるコンクリートコアカッターは、前記カッター刃の連結部材相互間において各ピースにその後面において解除可能に接続され前記カッター刃の軸線の伸長方向へ伸びる軸線方向部材及び該軸線方向部材に解除可能に接続され前記カッター刃の径方向内方に向けて伸びる径方向部材とを備える。
【0010】
本発明によれば、マンホールのようなコンクリート構造物内において駆動装置に接続されたコンクリートコアカッターをそのカッター刃の軸線の周りに回転させ、前記コンクリート構造物の躯体に向けて推進する(前進させる)ことにより、前記コンクリート構造物の躯体に前記カッター刃の切削作用を及ぼし、前記躯体を貫通する環状の孔を形成することができる。
【0011】
ところで、前記コンクリート構造物の躯体(マンホールの壁)への環状の孔の形成途上において、前記コンクリート構造物の躯体に埋設された鉄筋、前記孔内への流入砂礫等に対する前記カッター刃のビットの食い込みのために前記コンクリートコアカッターの回転及び推進(前進)が不能となる事態が生じることがある。
【0012】
本発明に係るカッター刃にあっては、その周方向に互いに隣接し、対をなす2つのピースを相互に連結する連結部材が複数のビットの取り付け面である前面に相対する後面上に配置され、かつ、前記連結部材が各対のピースの後面の側から前面の側に向けて伸びる2つのボルトを介して解除可能に固定されている。このことから、前記コンクリート構造物の内部において、前記ボルトの頭部に工具を当てて前記ボルトを緩め、前記ピースに対する前記連結部材の固定を解除する作業を行うことができ、これにより各対のピースの相互連結を解除し、ピース相互を分離することができる。また、本発明に係るコンクリートコアカッターにあっては、これを構成する各軸線方向部材が前記カッター刃の連結部材相互間に配置されている。このことから、前記ピースに対する連結部材の固定を解除する作業において、軸線方向部材相互間を前記工具の差し入れ空間及び操作空間として利用することができる。
【0013】
したがって、前記コンクリートコアカッターの回転及び推進(前進)が不能となる事態が生じたとき、本発明によれば、前記コンクリートコアカッターに対する前記駆動装置を分離した後、前記カッター刃の各対のピースを互いに分離し、前記コンクリートコアカッターを複数のピースとこれらのピースにそれぞれ接続された複数の軸線方向部材及び径方向部材とに分解することができ、これにより、複数のピースを順次に前記孔から引き出し、該ピースとこれに接続された軸線方向部材及び径方向部材とを前記コンクリート構造物部に回収することができる。回収された複数のピースと複数の軸線方向部材及び径方向部材とは、これらを前記コンクリートコアカッターに組み立て直すことにより、前記形成途上の環状の孔の再掘削に使用することができる。
【0014】
これによれば、従来において形成途上の環状の孔内からのカッター刃の引き出しのために必要としたコンクリートコアカッターの逆方向への推進(後進)を不要とし、また、前記カッター刃の前記孔内からの引き出しに要する時間及び労力の軽減を図ることができる。さらに、従来において前記コンクリートコアカッターを後進させるために前記駆動装置が受ける過大な負荷に起因する前記駆動装置の駆動機構(例えばシリンダ)の破損や変形、これに伴う前記駆動装置の修理や交換、再設置、及びこれらに要する時間的及び労力的浪費の発生を回避することができる。
【0015】
各対のピースを相互に連結する前記連結部材は、ねじ穴を有するものとすることができる。前記ねじ穴は前記ピースの後面の側から前面の側に向けて伸びる。これによれば、前記コンクリート構造物の内部から、先端にねじ山を有する工具を前記ねじ穴にねじ込み、前記工具を介して、前記ピースから分離された前記連結部材を前記コンクリート構造物内に回収することができる。
【0016】
前記連結部材は各対の2つのピースにそれぞれ前記2つのボルトを介して解除可能に固定された2つの連結片からなるものとすることができる。前記2つの連結片は、前記2つのピースが規定する円弧の接線方向へ伸びるボルト及びこれに螺合されたナットを介して互いに連結されている。これによれば、好ましくは前記ボルト及びナットの一方をわずかに緩めた後、前記ボルト及びナットの軸線の周りに前記2つのピースの一方を他方に対して相対的に回転させることできる。これにより、複数のピースを、これらが環状を呈する形態から例えば上下方向に連続して連なる細長い鎖状の形態へと変形させることができる。変形後の形態は、前記カッター刃の前記コンクリート構造物内へのその入り口を通しての搬入を容易にすることに寄与する。
【0017】
各連結片は、各ピースに沿って円弧状に伸びる一片部と、該一片部に直交する他片部からなるものとすることができる。両連結片はこれらの一片部においてそれぞれ前記2つのピースに固定され、また、これらの他片部において相互に連結されている。
【0018】
前記コンクリートコアカッターは、複数のピースと複数の軸線方向部材と複数の径方向部材とに分解することができ、これにより、前記コンクリート構造物内へのその入り口を通しての前記コンクリートコアカッターの搬入を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】コンクリートコアカッターと、その駆動装置の一部とを示す斜視図である。
図2】コンクリートコアカッターの分解斜視図である。
図3】マンホールの壁に環状の孔を形成する途上にあるコンクリートコアカッターの概略的な断面図である。
図4】カッター刃の斜視図である。
図5】互いに隣接する2つのピースの相互連結を解除した状態にあるカッター刃の斜視図である。
図6】複数のピースが環状の形態から上下方向に連続して連なる細長い鎖状の形態に変形されたカッター刃の斜視図である。
図7】形成途上にある環状の孔内にあったピース、該ピースに接続された軸線方向部材及び径方向部材のマンホール内部への回収状況を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係るコンクリートコアカッターと、該コンクリートコアカッターに回転動力及び推進動力を与えるための駆動装置とがそれぞれ全体に符号10及び符号12で示されている。コンクリートコアカッター10はその軸線Lの周りに回転可能であるように、また、その軸線Lの伸長方向へ移動可能であるように駆動装置12に接続される。
【0021】
コンクリートコアカッター10は、切削機能を担う環状のカッター刃14と、カッター刃14に駆動装置12の回転動力及び推進動力を伝達する機能を担う複数(図示の例において4つ)の軸線方向部材16及び複数(軸線方向部材16と同数)の径方向部材18とを備える。軸線方向部材16及び径方向部材18の数量は、それぞれ、4つとする図示の例に代えて、例えば2つ、3つ、あるいは5つ以上とすることができる。
【0022】
4つの軸線方向部材16及び4つの径方向部材18は、それぞれ、はカッター刃14の軸線Lの周りに間隔をおいて配置されている。軸線方向部材16はカッター刃14(より詳細には、カッター刃14を構成する後記ピース50)に複数(図示の例において2つ)のボルト20を介して分離可能に接続され、コンクリートコアカッター10の軸線すなわちカッター刃14の軸線Lの伸長方向へ伸びている。また、各径方向部材18は複数(図示の例において2つ)のボルト22を介して各軸線方向部材16に分離可能に接続され、カッター刃14の径方向内方へ軸線Lに向けて伸びている。
【0023】
コンクリートコアカッター10は、その使用に際し、その部品であるカッター刃14、4つの軸線方向部材16及び4つの径方向部材18に分解され、地中に設けられたコンクリート構造物の一つである例えばマンホール100(図3参照)内にその入り口106(図6参照)を通して搬入される。駆動装置12もまた入り口106を通してマンホール100内に搬入される。
【0024】
コンクリートコアカッター10の前記部品は、マンホール100内において、図2に示すように駆動装置12に接続され、組み立てられる。
【0025】
コンクリートコアカッター10はその4つの径方向部材18において駆動装置12に接続される。このために、各径方向部材18が、駆動装置12の一部をなす環状のアダプタ24に、複数(図示の例において2つ)のボルト28を介して、解除可能に固定される。アダプタ24には、各径方向部材18につき2つのボルト28がそれぞれ通される2つのボルト穴30がアダプタ24の周方向に間隔をおいて設けられている。
【0026】
図示の径方向部材18は矩形状の平板からなり、径方向部材18には、カッター刃14の径方向における内方側の箇所及び外方側の箇所に、それぞれ、軸線Lと平行に伸びる2つのねじ穴32及び2つのねじ穴34が設けられている。ボルト28は、コンクリートコアカッター10の推進方向における後方から前方に向けてアダプタ24のボルト穴30に通され、径方向部材18のねじ穴32にねじ込まれる。
【0027】
図示の例においては、さらに、駆動装置12のアダプタ24に対する径方向部材18の回り止めを目的として、アダプタ24にダボ36が設けられまた各径方向部材18にダボ36を受け入れるダボ穴38とが設けられている。
【0028】
径方向部材18を駆動装置12のアダプタ24に固定した後、コンクリートコアカッター10の組み立てを行う。このために、軸線方向部材16が、各径方向部材18に解除可能に接続される。図示の軸線方向部材16は、円弧状の横断面形状を有する細長い湾曲板40と、該湾曲板の両端に固定された、円弧状に湾曲する一対の継手板42、44とからなる。湾曲板40及び両継手板42、44は、それぞれ、軸線Lを軸とする仮想円筒面(図示せず)上にある。軸線方向部材16の湾曲板40は、これに代えて、軸線Lの伸長方向へ伸びる比較的細長い平板あるいは棒状体(図示せず)からなるものとすることができる。
【0029】
軸線方向部材16の一方の継手板42にはその両端部に2つのボルト穴46が設けられ、他方の継手板44にはその両端部に2つのボルト穴48が設けられている。これらのボルト穴46、48はそれぞれ軸線Lと平行に伸びている。
【0030】
軸線方向部材16と径方向部材18とを相互に接続するボルト22は、それぞれ、前記推進方向における前方から後方に向けて、一方の継手板42の2つのボルト穴46に通され、径方向部材18の2つのねじ穴34にねじ込まれる。
【0031】
また、カッター刃14と軸線方向部材16とを接続するボルト20は、前記推進方向における後方から前方に向けて、軸線方向部材16の他方の継手板44のボルト穴48に通され、カッター刃14(より詳細には、ピース50)に螺合される。これにより、軸線方向部材16がピース50に解除可能に接続される。ここにおいて、軸線方向部材16は、カッター刃14の後記連結部材54相互間に位置する。
【0032】
図3に示すように、組み立てられたコンクリートコアカッター10は、マンホール100内において、駆動装置12により軸線Lの周りに回転駆動され、また、その軸線Lの伸長方向前方に位置する壁102に向けて推進駆動され、マンホール100の壁102に環状の孔104を形成する。
【0033】
コンクリートコアカッター10を構成するカッター刃14は、図4図6に示すように、複数(軸線方向部材16と同数。図示の例において4つ)の円弧状のピース50を有する。4つのピース50は環状(円環状)を呈するように配置され、これらの周方向に互いに隣接し、対をなす2つのピース50がこれらの両端面50aの一方同士において互いに当接している。
【0034】
各ピース50には、コンクリートコアカッター10の作動時にマンホール100の壁102に切削作用を及ぼし、壁102に環状の孔104を穿つ複数のビット52が取り付けられている。ピース50はビット52の取り付け面である一面と、該一面に相対する他面であって後記連結部材54の取り付け面である他面とを有する。なお、ピース50の前記一面及び前記他面は、それぞれ、コンクリートコアカッター10の推進方向における前方及び後方に面することとなることから、以下、前記一面及び他面をそれぞれ前面50b及び後面50cと称する。
【0035】
カッター刃14は、さらに、周方向に互いに隣接し、対をなす2つのピース50を相互に連結する連結部材54と、該連結部材を各対のピース50にそれぞれ解除可能に固定する2つのボルト、好ましくは六角穴付きボルト(以下、単に「ボルト」という。)56(図6参照)とを有する。
【0036】
連結部材54は、各対のピース50の後面50c上に配置されている。図示の連結部材54は2つの連結片58からなる。連結片58は全体にL字形を呈し、前記L字形を規定する一片部58a及び他片部58bからなる。連結片58の一片部58aは、各ピース50の両端面50aの一方から他方に向けて、その後面50cに沿って円弧状に伸び、他片部58bは一片部58aに直交している。両連結片58は、これらの2つの他片部58bにおいて、両他片部26bにそれぞれ設けられた2つのボルト穴60(図5)を貫通するボルト、好ましくはピンボルト62及び該ピンボルトに螺合するナット64を介して互いに連結されている。
【0037】
連結部材54を各対のピース50に固定する2つのボルト56は、それぞれ、各対のピース50の後面50cの側から前面50bの側に向けて伸び、各対のピース50に螺合している。より詳細には、2つのボルト56は、連結部材54の両一片部58aにそれぞれ設けられ軸線Lと平行に伸びる2つのボルト穴66(図7)を経て、各対のピース50に設けられた2つのねじ穴68(図7)にねじ込まれている。
【0038】
図5に示すように、両連結片58を相互に連結するピンボルト62は、カッター刃14を構成する各対のピース50が規定する円弧の接線方向へ伸びている。これによれば、任意の1つのピンボルト62及びこれに螺合するナット64を取り外して任意の一対のピース50の相互連結を解除すると、残りの3つのピンボルト62のそれぞれの周りに各対のピース50を例えば180度の角度で相対的に回転させることができる。
【0039】
これにより、4つのピース50を環状の形態(図4に示す形態)から上下方向に連続して連なる細長い鎖状の形態(図6に示す形態)へと変形することができる。変形後の形態は、カッター刃14のマンホール100内へのその入り口106を通しての搬入を容易にすることに寄与する。なお、好ましくは、ピンボルト62の周りの各対のピース50の相対的回転を容易にすべく、各ピンボルト62に螺合するナット64を予め僅かに緩めておく。連結部材54は、2つの連結片58からなるものとする図示の例に代えて、両連結片58が一体をなすもの、すなわち2つの他片部58bが一体をなし一つの部分からなるものとすることができる。
【0040】
また、連結部材54は、好ましくは、ピース50の後面50cの側から前面50bの側に向けて軸線Lと平行に伸びるねじ穴70(図5)を有する。ねじ穴70は、連結部材54を構成する各連結片58の一片部58aに設けられている。ねじ穴70は、ピース50に対する固定が解除された後の連結部材54すなわち両連結片58の回収に役立つ。
【0041】
さらに、連結部材54が各対のピース50に対する位置決めのために設けられた2つのダボ72(図3参照)を有し、また、各対のピース50がこれらの後面50cにそれぞれ開放し、両ダボ72を受け入れる2つのダボ穴73を有するものとすることができる。両ダボ72はそれぞれ両連結片58の一片部58aに設けられている。
【0042】
ところで、コンクリートコアカッター10によるマンホール100の壁102への環状の孔104の形成途上において(図3参照)、回転及び推進(前進)中のカッター刃14のビット52がマンホール100の壁102に埋設された鉄筋、孔104内への流入砂礫等に食い込み、このためにコンクリートコアカッター10の回転及び推進(前進)が不能となる事態が生じることがある。
【0043】
このような事態が発生したときは、コンクリートコアカッター10を駆動装置12から分離した後、図7に示すように、各対のピース50の相互連結を順次に解除する。各対のピース50の相互連結の解除は、例えば、1つのピース(説明の便宜上、これに符号Aを付す。)とこれに隣接する1つのピース(同じように符号Bを付す。)とから連結部材54を分離し、また、ピース50Aとこれに隣接する他の1つのピース(同じように符号Cを付す。)とから連結部材54を分離することにより行う。
【0044】
連結部材54の分離は、ピース50A及びピース50Bに対する2つのボルト56の螺合を解除し、また、ピース50A及びピース50Cに対する2つのボルト56の螺合を解除することにより行う。ボルト56は、ピース50の後面50cから前面50bに向けて伸びており、このためボルト56の頭部は前記推進方向の後方に面している。このことから、コンクリートコアカッター10の軸線方向部材16相互間からボルト56の頭部に向けて工具74を差し込み、ボルト56を緩め、さらにピース50及び連結部材54から抜き去り、マンホール100内に回収することができる。図示の工具74は、ボルト56の頭部の六角穴に係合する六角ビット75と、該六角ビットに接続されたエクステンションバー76と、該エクステンションバーに接続されたラチェットハンドル78とからなる。
【0045】
次いで、他の工具80を用いて、ピース50に対する螺合を解除された連結部材54をマンホール100内に回収する。回収は、マンホール100の内部から連結部材54のねじ穴70に工具80を螺合させ、工具80及び連結部材54をマンホール100の内部に引き寄せることにより行う。図示の工具80は、ねじ穴70のねじ溝に係合可能であるねじ山が設けられた先端部を有するロッド82と、該ロッドに接続されたラチェットハンドル84とからなる。
【0046】
次に、孔104内に残るピース50A及び該ピースに接続された軸線方向部材16の一部を順次に孔104内から孔104外へと矢印Aの方向に向けて引き出し、次いで、ピース50A、該ピースに接続された軸線方向部材16及び該軸線方向部材に接続された径方向部材18をマンホール100の内部へと引き寄せる。その後、残りのピース50B、50C、50D及びこれらにそれぞれ接続された3つの軸線方向部材16及び径方向部材18を順次にマンホール100内に収容する。
【0047】
これによれば、従来において必要とした孔104内からのコンクリートコアカッター10の逆方向への推進(後進)及びこれに伴う駆動装置12の作動を不要とし、また、これにより、カッター刃14の孔104内からの引き出し作業に要する時間及び労力の軽減を図ることが可能である。また、コンクリートコアカッター10を後進させる際に駆動装置12が受ける過大な負荷に起因する駆動装置12の駆動機構(例えばシリンダ)の破損や変形、これに伴う駆動装置12の修理や交換、再設置に要する時間的及び労力的浪費の発生が回避される。
【0048】
コンクリートコアカッター10は、マンホール100内における再組み立ての後、形成途上にある孔104の再掘削に供される。
【符号の説明】
【0049】
10 コンクリートコアカッター
12 駆動装置
14 カッター刃
16 軸線方向部材
18 径方向部材
50、50A、50B、50C ピース
50b及び50c ピースの前面及び後面
52 ビット
54 連結部材
56 ボルト
58 連結片
58a、58b 連結片の一片部及び他片部
62、64 ピンボルト及びナット
70 ねじ穴
L カッター刃の軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7