(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697035
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】耳珠下耳ユニット
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
H04R1/10 104A
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-137572(P2018-137572)
(22)【出願日】2018年7月23日
(62)【分割の表示】特願2015-524216(P2015-524216)の分割
【原出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2018-186557(P2018-186557A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2018年7月23日
(31)【優先権主張番号】12178314.6
(32)【優先日】2012年7月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】304029642
【氏名又は名称】フリービット・アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】FREEBIT AS
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】サンダンガー,ヴィダル
【審査官】
鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−004513(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/031238(WO,A1)
【文献】
特開2006−203420(JP,A)
【文献】
特開平04−233400(JP,A)
【文献】
特開2002−058086(JP,A)
【文献】
特開2005−244645(JP,A)
【文献】
特開平03−117999(JP,A)
【文献】
特開2012−249187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00−1/10
H04R 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳ユニット(100)であって、
アンカー(200)と、
前記アンカーへ接続されている聴音要素(350)と、を備え、
前記聴音要素には、音を提供する開口部が設けられており、
前記耳ユニットは、前記聴音要素が第1の内側の位置で外耳道の開口を閉塞することによって閉塞を提供するように構成され、前記聴音要素は、前記アンカーに対して当該聴音要素が第2の位置へ後退することによって当該聴音要素と耳甲介との間で通路が開くように構成されている、
ことを特徴とする耳ユニット。
【請求項2】
前記聴音要素の自動位置変更のための手段を更に備えている、請求項1に記載の耳ユニット。
【請求項3】
自動位置変更のための前記手段は電気機械的である、請求項2に記載の耳ユニット。
【請求項4】
前記アンカー(200)と前記聴音要素(350)の間の機械的インターフェースであるハウジング(300)を備えている、請求項1に記載の耳ユニット。
【請求項5】
前記聴音要素(350)は、電気音響要素(360)である、請求項1から4の何れか1項に記載の耳ユニット。
【請求項6】
前記聴音要素(350)には音声導管開口部(356)を有する音声導管(354)が設けられており、前記開口部は当該音声導管開口部である、請求項1から4の何れか1項に記載の耳ユニット。
【請求項7】
外の音を遮断するためのガスケット(370)を更に備えている、請求項1から6の何れか1項に記載の耳ユニット。
【請求項8】
前記耳ユニットが外部音緩衝要素(600)を更に備えており、前記音緩衝要素は前記アンカー(200)とハウジング(300)との少なくとも一方へ取り付けられている、請求項1から6の何れか1項に記載の耳ユニット。
【請求項9】
起立時の重力方向への下方延長部(400)を更に備えている、請求項1から6の何れか1項に記載の耳ユニット。
【請求項10】
耳ユニット(100)の位置を制御するための方法であって、
アンカー(200)と、
前記アンカーに接続されている聴音要素(350)と、を備え、
前記聴音要素には、音を提供する開口部が設けられており、
前記耳ユニットは、前記聴音要素が第1の内側の位置で外耳道の開口を閉塞することによって閉塞を提供するように構成され、前記聴音要素は、前記アンカーに対して当該聴音要素が第2の位置へ後退することによって当該聴音要素と耳甲介との間で通路が開くように構成されており、
前記聴音要素は、自動位置変更のための手段を更に備え、
入力に基づいて位置変更が行われる、方法。
【請求項11】
前記入力は警告音である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記入力は、音楽を聴く機能と電話をかける機能との切り替え機能である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には取り外しできる耳装着のためのシステムに、厳密には耳ユニットの快適装着のための耳珠下耳ユニットに、関する。
【背景技術】
【0002】
電話、音楽システム、スイッチボード、など、に対して無線であるか又は配線によって取り付けられるマイクロホン/耳部片の組合せはよく知られている。広範に多様な解が存在する。
【0003】
1つの解は、聴音要素としても知られている音放射装置を外耳道に進入させる「インイヤー式(in-ear:耳入れ式)」解として知られている。典型的には、聴音要素を備えるハウジングを耳珠及び対耳珠の内側の耳甲介内部に位置付けておき、漏斗が音を外耳道の中へ導くようにしている。漏斗には周囲音を緩衝するようにフランジを有するガスケットが設けられている。典型的には、その様な装置は外耳道を装着に使用している。当該解はコンパクトであり、周囲音を効率よく取り除き、十分な音声忠実度を可能にもさせるが、押圧に敏感な外耳道へ掛かる圧力のせいで不快であるという不都合に悩まされている。
【0004】
別の解は、聴音要素を耳甲介を有する耳に宛がって保持する「オンイヤー式(on-ear:耳あて式)」解である。これの幾何学形状は、広い聴音要素を耳甲介に当てて平たく設置させることができる。インイヤー式の解とは違い、この解は、聴音要素を耳甲介上方の位置に保持するための別体手段を要し、幾つかのその様な手段は当技術ではよく知られており、例えば、オーバーヘッド装着具、ヘッドバンド、及びオーバーイヤー装着具、などがある。この解は、単純ではあるが、保持のための手段によって耳へ掛かる圧力に因る長期不快に悩まされている。更に、音吸収クッションを使用しない限り周囲音が耳に入ってくるという問題が起こり、使用される音吸収クッションが耳をくまなく包囲するとなると、寸法が大きくなるといったような他の不都合が生じる。
【0005】
第3の解は、聴音要素を備えるハウジングユニットを耳甲介内部に位置付け耳珠と対耳珠によってその場に保持させる「イヤーバド式(ear-bud:耳差し込みイヤホン式)」解
である。このやり方では、ハウジングユニットが聴音要素をその場に保持するための手段も形成している。コンパクトではあるものの、不都合は、耳珠及び対耳珠へ掛かる圧力による不快であり、更に、周囲音を排除するのが難しい。耳珠及び対耳珠に対する圧力を小さくすれば、イヤーバドはやや緩くなり、簡単に外れ落ちないとも限らない。
【0006】
第4の解が、C字形状を有する耳部片に関する国際特許出願WO/2002/045390及び曲線と湾曲を有する改良型耳部片に関する国際特許出願WO/2008/147215に開示されている様に、本出願人によって提案されている。どちらも耳の対耳輪への安定装着のための快適な手段を開示している。前者は、耳道を周囲環境に対して或る一定の程度まで開放した状態にさせておくことのできる開放型の解を開示しており、耳道を封鎖又は閉鎖させるユニットよりも優れた快適性を提供する。これは空気循環を周囲音の進入を許すことと引き換えに提供する。
【0007】
第5の解として、国際特許出願WO/2009/143055に開示されている様に、聴音要素をオンイヤー式解の場合に対して直交に耳珠に対面して耳甲介の中へ設置させるインイヤー式スピーカーを挙げておきたい。問題は、聴音要素の安定した位置付けと、耳に位置付けたときに聴音要素の縁が耳甲介の内壁に押し付けられることに関係する不快である。
【0008】
参照しておきたい更なる文献は次の通り、即ち、
外耳道に進入するようになっている外耳道のための栓に関するイギリス特許GB833506、
ヘッドセットが使用者の口に向かって下に延びる管状延長部又は音声管を備えている耳甲介安定具に関する米国特許US5712453、
弓形リブと垂直リブを備えるD字形状を有する両利き耳部片であって、着用者の外耳道に嵌る隆起を設けた耳部片に関する国際特許出願WO2004/068896、
三日月形状の装置が耳珠から十分離れて後退していることを全ての図が示している三日月形状聴音強化支援に関する国際特許出願WO03/096745、
使用者の耳の中へ嵌るように個々に成形及び彫刻されているインサートに関する米国特許US3053061、
イヤリングのための耳装着具に関するフランス特許FR2437802、
耳装着具に関するドイツ特許DE8911607U1、及び、
耳ユニットと共に使用するための音緩衝装置に関するドイツ特許DE10117705、である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許出願WO/2002/045390
【特許文献2】国際特許出願WO/2008/147215
【特許文献3】国際特許出願WO/2009/143055
【特許文献4】イギリス特許GB833506
【特許文献5】米国特許US5712453
【特許文献6】国際特許出願WO2004/068896
【特許文献7】国際特許出願WO03/096745
【特許文献8】米国特許US3053061
【特許文献9】フランス特許FR2437802
【特許文献10】ドイツ特許DE8911607U1
【特許文献11】ドイツ特許DE10117705
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上より、本発明の目的は、外耳道の不快を引き起こさず且つ周囲音を排除する能力もある改善された装着を有するコンパクトで快適性のある解のためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
目的は、本発明によれば、請求項1の序文に定義されている耳ユニットであって請求項1の特徴付け部分の特徴を有する耳ユニットによって実現されている。
目的は、更に、本発明によれば、請求項5の序文に定義されている荷重支承アンカーであって請求項5の特徴付け部分の特徴を有する荷重支承アンカーによって実現されている。
【0012】
本発明は、装着具機能性と変換器機能性と随意的には閉塞機能性を2つの別々の部分、即ち、
耳への安定装着を提供するアンカーと、
当該アンカーへ接続されていて音を提供する変換器を備えている聴音要素であって、聴音要素には開きが設けられており、耳ユニットが耳甲介と耳珠を有する耳の中へ位置付けられたときに開きが耳珠下領域に進入し、而して音を耳珠下領域の中へ投射する、聴音要素
と、に分離することによって、上記目的を達成する。
【0013】
開きは、聴音要素による開口部とすることができる。
聴音要素には、更に、音声導管開口部を有する音声導管が設けられていてもよく、その場合、開きは当該音声導管開口部である。
【0014】
随意的には、聴音要素は閉塞を提供している。
随意的には、閉塞は、空気の拡散を許すのに十分に広いがなおも音の伝播を防止するのに十分に小さい孔が開けられているものであってもよい。
【0015】
本発明は、対耳輪及び耳珠を有する耳への安定した嵌りのための、上端と下端を有する曲線を備える荷重支承アンカーにおいて、曲線の部分が対耳輪の内側部分に沿って垂れ、下端は耳珠の下に部分的に位置付けられる延長下端へと延びていて、アンカーが耳の中へ位置付けられアンカーに珠間切痕の方向に力が加わったときに対耳輪を耳珠から実質的に一定した距離に引き留めることによって耳甲介の歪みを防止する、荷重支承アンカーによって、上記目的を達成する。
【0016】
先行技術に勝る技術差は、装着がアンカーによってもたらされており外耳道の中へ突き出る何らかの要素によってではない耳珠下システムが提供されるということである。
これらの効果は、ひいては、幾つかの更なる好都合な効果をもたらし、即ち、
・オンイヤー式の解の場合の様な嵩張る保持手段を回避し、代わりに、第4の解でのような軽量アンカーが使用できるようになる、
・外耳道に進入する要素に関係する不快を回避させる、
・軽量構造を可能にさせる、
・耳珠及び対耳珠に掛かる圧力に関係する不快を回避させる、
・耳甲介へ不快な押圧を掛けることなく耳に安定して位置付けることを可能にする、
という効果をもたらす。
【0017】
随意的には、本発明は、更に、別の好都合な効果を可能にさせ、即ち、
・耳周りの大きな吸収クッションの使用無しに周囲音を排除することを可能にさせる、及び、
・空気循環を可能にさせる、
という効果を可能にさせる。
【0018】
先行技術に勝る技術差は、アンカーが耳甲介全体を埋めるのではなく、代わりに、2つの分枝を備えており、第1の分枝が対耳輪の内側部分に沿って垂れ、第2の分枝が耳珠の下に部分的に位置付けられる延長下端へ延びている、ということである。普通は、人が立ち上がるとき力が耳甲介に下向き方向に加えられると、耳甲介は力の方向に引き伸ばされ当該力に直交の方向に狭まることによって僅かに変形し、その結果、耳珠と対耳珠がより近寄ることになる。但し、本発明によるアンカーが挿入された状態であれば、2つの分枝が狭まりに抵抗しようとする。同時に、力は広い面積に亘って分散される。
【0019】
これらの効果は、ひいては、幾つかの更なる好都合な効果をもたらし、即ち、
・装着のための軽量でより目立たない手段を使用することを可能にする、
・耳の変形がより少ないという点でより大きな快適性をもたらす、
・変形低減化は、耳甲介の変形を許してしまう手段よりも、より広い荷重支承を不快無しに可能にさせる、
という効果をもたらす。
【0020】
本願発明の実施形態は、例えば以下の通りである。
[実施形態1]
アンカー(200)と、
前記アンカーへ接続されている聴音要素(350)と、を備えていて、
前記聴音要素に開きが設けられている、耳珠下(sub-tragus)耳ユニット(100)において、
前記耳ユニットが耳甲介(24)と耳珠(21)を有する耳の中へ位置付けられたとき、前記開き(352、356)が耳珠下領域(28)に進入し、而して、音を前記耳珠下領域の中へ投射することを特徴とする、耳珠下耳ユニット。
[実施形態2]
前記ハウジング(300)は前記アンカー(100)と前記聴音要素(350)の間の機械的インターフェースである、実施形態1に記載の耳珠下耳ユニット。
[実施形態3]
前記開きは、電気音響要素(360)である前記聴音要素(350)による開口部(352)である、実施形態1−2に記載の耳珠下耳ユニット。
[実施形態4]
前記聴音要素(350)には音声導管開口部(356)を有する音声導管(354)が設けられており、前記開きは当該音声導管開口部である、実施形態1−2に記載の耳珠下耳ユニット。
[実施形態5]
外の音を遮断するためのガスケット(370)を更に備えている、実施形態1−4に記載の耳珠下耳ユニット。
[実施形態6]
前記耳珠下耳ユニットが外部音緩衝要素(600)を更に備えており、前記音緩衝要素は前記アンカー(200)と前記ハウジング(300)の少なくとも一方へ取り付けられている、実施形態1−4に記載の耳珠下耳ユニット。
[実施形態7]
起立時の重力方向への下方延長部(400)を更に備えている、実施形態1−4に記載の耳珠下耳ユニット。
本発明は、図面に概略的に示されている例としての実施形態と関連付けて以下に更に詳細に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】外から見たヒトの耳の解剖学的構造を示している。
【
図1B】ヒトの耳の解剖学的構造のA−Aに沿った断面を示している。
【
図2A】耳の中へ挿入された耳ユニットを外から見た状態で本発明の作動原理を示している。
【
図2B】第1の実施形態での本発明の作動原理をA−Aに沿った交差面に示している。
【
図2C】第2の実施形態での本発明の作動原理をA−Aに沿った交差面に示している。
【
図3】本発明の1つの好適な実施形態を示している。
【
図4】本発明の1つの好適な実施形態を示している。
【
図5A】耳の中へ挿入されている改良型荷重支承アンカーを示しており、装着部が曲線から耳甲介の上を延びている。
【
図5B】
図5Aの改良型荷重支承アンカーを曲線の平面に近接して示している。
【
図5C】
図5Cの改良型荷重支承アンカーを異なる角度で示している。
【
図6】荷重支承アンカーへ取り付けられている音緩衝要素を示している。
【
図7】荷重支承アンカーの代わりの使用を示しており、装着部が曲線から珠間切痕を通って延びている。
【
図8A】非閉塞位置にある聴音ユニットを示している。
【
図8B】閉塞位置にある聴音ユニットを示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ヒトの耳の解剖学的構造
本発明の背景の理解を得るためには、
図1Aに示されているヒトの耳の解剖学的構造、特に外耳の解剖学的構造の詳細を知ることが肝要である。耳介としても知られている外耳10は、重要な複数の特徴を備えている。最も外側には耳輪11があり、耳輪11は耳の周辺を上向きに頭蓋骨に向かって辿ってゆき頭蓋骨のところで耳輪脚12へ移行している。この内側には対耳輪13があり、対耳輪13は上向きの方向に、耳三角窩17によって隔てられた上脚15と下脚16を備える対耳輪脚14へと二股に分かれてゆく。対耳輪の下方には後耳介溝18があり、同じく更にその下方には珠間切痕23(英名でintertragica、若しくはintertragic notchとしても知られる)によって隔てられて耳珠21に向き
合う対耳珠22がある。同じくこれらの内側には、耳輪脚12によって隔てられた耳甲介艇25と耳甲介腔26を備える耳甲介24がある。
【0023】
耳珠のすぐ内側には、部分的に耳珠に覆われて、外耳道30への進入口がある。この進入口はなおも耳甲介腔の一部であると認識しておくことが肝要である。外耳道本体は耳甲介の最深部から鼓膜29まで延びており、距離は約2.5cm、耳珠からは大凡4cmである。外耳道は、大凡8mmの外側軟骨部と大凡16mmの内側骨部を備えている。外耳道に何か異物が入っていると典型的に極めて不快であることも指摘しておきたい。外耳道は、外から一部が覗け、
図1Aに表示されている。
【0024】
耳珠21のすぐ内側にあって耳珠21によって部分的に覆われているこの区域は、公式の解剖学的構造名称を持っていない。この区域は本発明にとって中核をなすものであり、音響特性及び快適着用に関係する他の顕著な特性を有しているので、本書の説明上、耳珠下(sub-tragus)領域28と呼ばれており、
図1Bに示されている。外耳道30は耳珠下領域の下方に位置している。
【0025】
本発明の根幹を成す原理
図2Aは、耳の中へ挿入された耳ユニットを外から見た状態で本発明の作動原理を示している。A−A線は、
図2B及び
図2Cの断面を表す。アンカー200は、上端212、下端214、及び湾曲218、を有する曲線210を備えている。角度のせいで、アンカーの全構成要素を全図に明確に示すことは無理である。
【0026】
根底をなす原理は、聴音要素350から固定機能200を切り離すことによって、聴音要素350を最適位置に不快を生じさせることなく位置付けることが可能になる、ということである。更に、聴音要素を、それが耳珠21の下に突き出して耳珠下区域28に進入するように位置付けることによって、外耳道への異物進入に付きまとう不快無しに、音は耳道の中へ方向決めされる。聴音要素350には聴音要素開口部352が設けられており、当該開口部又は開きは、耳珠下区域から延びている外耳道への開口部に面している。
【0027】
聴音要素が耳珠の下に突き出ることは、分離固定方式によって可能になることにも注目されたい。これは、幾つかのやり方で実現させることができる。
第1の実施形態では、電気音響変換器360の形態をしている聴音要素350が耳珠の下に位置付けられている。当該聴音要素は、耳珠下領域に嵌る寸法である。
図2Bは、上記構成を概略的に示している。
【0028】
第2の実施形態では、聴音要素350は、音声導管開口部356の設けられた音声導管354へ取り付けられている電気音響変換器360を備えている。音声導管が、典型的には15mの波長に対応する20Hzから15mmの波長に対応する20000Hzの周波数を有する音の波長より小さい限り、音は有意な歪なしに伝導され、有効な開きは音声導管の開口部になっている。
【0029】
この第2の実施形態は、電気音響変換器を耳珠から離して後退させることによって第1の実施形態のそれより大型化することを可能にさせる。有効な聴音要素は漏斗の端であり、この端が耳珠下領域の中へ突き出ているので、技術的効果は第1の実施形態と同じである。
図2Cは上記構成を概略的に示している。
【0030】
この第2の実施形態は、更に、電気音響変換器を音声導管開口部の平面に平行ではない角度に向き付けることを可能にさせる。この音声導管開口部は外耳道の上の進入口に直交であるのが好ましい。
【0031】
指摘しておきたいこととして、オンイヤー式の構成は、特に耳甲介の大きさに関係して、高周波音の波長程度とされる構造を伴うことになろうが、第5の解による聴音要素の構造を伴うことも見込まれる。
【0032】
1つの実施形態では、音声導管は耳甲介とも耳珠とも接触にない。離隔距離は音の波長に比べて小さくされているはずであり、このことは、ひいては、離隔距離、音声導管の長さ、及び音響インピーダンス不整合にも依るが、周囲音の緩衝につながる。
【0033】
発明を実施する最良の形態
図3及び
図4に示されている本発明による耳ユニットの実施形態は、本出願人の出願に類似のアンカー、厳密には、国際特許出願WO/2002/045390に開示されているC字形状及び国際特許WO/2008/147215に開示されている曲線210と湾曲218を有し曲線が上端212と下端214を有している改良型耳部片に類似のアンカーを備えている。電気音響変換器360の形態をしている聴音要素350はハウジング300の一部として形成されているものであって、ハウジング300自体は、耳ユニットが耳甲介及び耳珠を有する耳の中へ位置付けられるとき、耳甲介24が耳珠21によって覆われている耳珠下領域28に聴音要素を進入させるようにして当該アンカーへ取り付けら
れる。
【0034】
聴音要素350には、更に、聴音要素の位置を更に安定させることはもとより周囲音の追加緩衝を提供するためにも、実質的に聴音要素の周辺を廻って配設されているガスケット370が設けられている。ガスケットは、不快な圧力を掛けることなく耳の解剖学的構造の細部に簡単に自身の形状をなじませる弾性材料から作られているのが望ましい。当該ガスケットは、更に、周囲音が幾らか聞こえるのが好ましい場合又は最も快適な寸法及び形状を選択するために異なる寸法及び形状の間で変更するのが好ましい場合に使用者がそれを取り外すことができるように、脱着式であるのが望ましい。ガスケットは、1つ又はそれ以上のフランジ372を備えていてもよい。
【0035】
ハウジング300は、アンカー200と聴音要素350の間の機械的インターフェースであり、典型的には、電子部品、配線取付具、など、を保持するのに適している。
アンカーは先行技術では明確に定義されている下端を有するものとして示されているが、定義の範囲内として下端はハウジング部の様なより大きなユニットに埋め込まれていてもよい。
図3及び
図4はともにその様なより大きな部分が下端を取り囲んでいることを示している。角度のせいで、アンカーの全構成要素を全図に明確に示すことは無理である。
【0036】
代わりの実施形態
上記に対する数々の変型が構想され得る。例えば、周囲音の緩衝は、音緩衝ユニット600をアンカーへ取り付けることによって実現させることができる。当該音緩衝ユニットは、耳ユニットが耳の中へ位置付けられたときに音緩衝要素が耳甲介の上に来るように位置付けられる。このことは
図6に示されている。
【0037】
音緩衝要素は、典型的には、殻体610と装着部へのコネクタ620を備えている。装着部は装着端504への接続に適合されている。
この解は、オーバーヘッド装着具、ヘッドバンド、及びオーバーイヤー装着具の様な装着具としての外部手段を回避させる。
【0038】
音緩衝ユニットは、更に、耳三角窩17の中へ延びている部分及び/又は耳輪11の頂部の折り返しの下を延びている部分によって安定化させることができる。
音緩衝ユニットの寸法及び質量並びに使用者の予想される身体的活動に依存して、アンカーは、国際特許出願WO/2002/045390及び国際特許出願WO/2008/147215に開示されているよりも更に大きい荷重支承容量に適うように最適化されてもよい。先行技術は、軽量適用のための快適アンカーを開示している。この文脈での軽量とは、重さが非常に小さいので耳の中へ位置付けたときの耳甲介の歪みが微々たるものである、という重量を意味する。発明者は、アンカーを当該歪を補償するように又は防ぐように修正すれば、より大きな重量でも支えきれることを見出した。発明者は、より大きな重量は耳甲介を重量の方向に引っぱり下げることを見出した。使用者が横たわっているなら、圧力は対耳輪に掛かり、曲線が力を十分に広い面積に亘って分散させることになるので、これが問題となることは回避される。使用者が真っ直ぐに立ち上がれば、力は、代わりに珠間切痕の方向に働く。これは、耳甲介が下向きに引っぱられ狭められもして耳珠付近の区域が対耳珠付近の区域に接近してゆくという結果を生じさせる。
【0039】
発明者は、アンカー200の下端214を耳輪脚12の方向に延長下端216へとなおいっそう延長させれば、力をより広い面積に亘って分散させることによって、また耳甲介を狭める力に対抗することによって、歪の問題は克服されることを見出した。同時に、アンカーの上端は、耳の対耳輪の下節によって覆われる腔部の下側部分を覆うフラップの下に突き出る必要はないことも見出した。これが、改善された装着を提供できる曲線210の随意的な湾曲218を強調表示するように或る角度で5Bに示されている荷重支承アン
カーである。
図5Aは、耳の中へ挿入されている下向きに延びる部分を有する荷重支承アンカーを示しており、一方、
図5Cは下向きに延びる部分を持たないアンカーを示している。
【0040】
荷重支承容量は、アンカーの上端を耳輪前部及び/又は耳輪脚に係合させるようにすることによって更に改善することができる。
その様な構成は、音緩衝要素の保持に加え広範な適用を有する。例えば、それは、耳宝飾品を保持するのに使用すれば、装着目的で耳たぶに孔をあける必要を回避させることができよう。その様な宝飾品は、非常に重いので従来式耳装着では不快となるはずである。
【0041】
装着は、典型的には、第1端を曲線又はハウジング或いはそれら両方に接続されていて外部ユニットへの装着に適合されている装着部500と呼ばれるアダプタを介することになろう。典型的には、装着部には、装着を耳甲介から或る距離にオフセットさせられるように装着腕502が設けられている。装着部の第1端とは典型的に反対側の装着部の第2端には装着端504が設けられている。この装着端は、アンカーがなおも耳の中に挿入されたままの状態での外部ユニットの案内式装着及び/又は脱着を可能にさせる。
【0042】
多くの場合、装着部は、耳甲介のすぐ外側の区域から真っ直ぐ外へ延びている。更なる安定性又は更なる荷重支承容量が要求されている場合は、装着部は珠間切痕を通って随意的には珠間切痕に接触して延びている。
【0043】
荷重支承アンカーから延びる部分は便利で衛生的な装着を形成するものである。好適な実施形態では、装着部はアンカーから珠間切痕を通って延びていよう。このことは
図7に示されている。
【0044】
随意的に、耳ユニットには、バッテリ、電子部品、アンテナ、又は配線のための取付設備、のための空間を提供する下方延長部400が設けられていてもよい。これには重心を下げることによって安定性をもたらすという利点がある。この下方延長部は珠間切痕を通過しているのが望ましく、そうすれば追加の安定性がもたらされる。
【0045】
下方延長部は、更に、装着部にとって都合のよい基礎ともなる。
先行の様々な解は、閉塞性及び周囲音を排除する性能又は周囲音を含める性能の観点で異なる特性を有している。
【0047】
先行技術での閉塞性は設計の固有特性であり、イヤーバドに追加のガスケットを設ければ閉塞性の度合いが改善されるといったような非常に些細な調節でしかしか修正が効かないことが理解されるであろう。
【0048】
本発明の発明者は、装着機能性を聴音要素から切り離されたアンカーへ別けることによって、第1の内側の位置では聴音要素が外耳道への開口部を閉塞して閉塞を提供すること
ができ、また聴音要素をアンカーに対して第2の位置へ後退させて聴音要素と耳甲介の間に通路を開かせることができる、ということに気付いた。後退は、耳珠から離れることであってもよいし、耳甲介の耳珠とは反対の側から離れることであってもよいし、又はそれら両方から離れることであってもよい、ということを指摘しておく。この文脈での後退は、外に向かって動くことはもとより、例えばクッション要素の収縮又は随意的にフランジを備えるガスケットの格納によって聴音要素の断面が小さくなること、の両方を意味している。これの効果は、第1位置で閉塞を果たしている部分の周りに通り道が開くことである。
図8A及び
図8Bは非閉塞位置にある聴音ユニット及び閉塞位置にある聴音ユニットをそれぞれ示している。
【0049】
第1位置と第2位置の間での調節は、耳ユニットを耳から取り外すことなく行うことができる。例えば電気機械式に警告音の様な入力によるか又は音楽を聴く機能性と電話を掛ける機能性の間での機能性切り換えによる自動位置変更も構想され得る。
【0050】
アンカーは、耳での安定固定を外耳道装着具の必要性無しに提供していて尚且つ本発明の範囲内に留まる限り多くの形態をとり得る。その様な代わりのアンカーは、オーバーヘッド装着具、ヘッドバンド、又はオーバーイヤー装着具の様な、先行技術に基づくものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本願による発明は、聴音要素及び音緩衝要素の様な外側の要素を保持するための耳装着型ユニットに用途を見出している。
【符号の説明】
【0052】
10 耳介
11 耳輪
12 耳輪脚
13 対耳輪
14 対耳輪脚
15 上脚
16 下脚
17 耳三角窩
18 後耳介溝
21 耳珠
22 対耳珠
23 珠間切痕
24 耳甲介
25 耳甲介艇
26 耳甲介腔
27 舟状窩
28 耳珠下
29 鼓膜
30 外耳道
100 耳ユニット
200 アンカー
210 曲線
212 上端
214 下端
216 延長下端
218 湾曲
300 ハウジング
350 聴音ユニット
352 聴音要素開口部
354 音声導管
356 音声導管開口部
360 電気音響要素
370 ガスケット
372 フランジ
400 下方延長部
500 装着部
502 装着腕
504 装着端
600 音緩衝要素
610 殻体
620 装着部へのコネクタ