特許第6697041号(P6697041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6697041SIRT1発現誘導物質を含む医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697041
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】SIRT1発現誘導物質を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/21 20060101AFI20200511BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20200511BHJP
   A61P 37/06 20060101ALN20200511BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20200511BHJP
   A23L 33/17 20160101ALN20200511BHJP
【FI】
   A61K38/21
   A61P11/00
   A61P29/00
   A61P31/04
   !A61P43/00 117
   !A61P37/06
   !A23L2/00 F
   !A23L33/17
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-159014(P2018-159014)
(22)【出願日】2018年8月28日
(62)【分割の表示】特願2016-219996(P2016-219996)の分割
【原出願日】2012年2月17日
(65)【公開番号】特開2018-203758(P2018-203758A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2018年8月28日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0014474
(32)【優先日】2011年2月18日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0016524
(32)【優先日】2012年2月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513029921
【氏名又は名称】ステムディーアール インク.
【氏名又は名称原語表記】STEMDR INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ミョングァン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、チェファ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ウンギョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、スンオク
【審査官】 深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6441290(JP,B2)
【文献】 特表2008−540385(JP,A)
【文献】 特表2007−535903(JP,A)
【文献】 特開2010−184929(JP,A)
【文献】 特表2004−531546(JP,A)
【文献】 特表平03−501382(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/149199(WO,A1)
【文献】 特表2016−513253(JP,A)
【文献】 特表2009−511453(JP,A)
【文献】 特開2002−220343(JP,A)
【文献】 J.Biol.Chem.,2011年 1月,Vol.286,p.9856-9864
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血症に関わる多臓器不全症候群、又は敗血症に関わる急性呼吸困難症候群を改善又は除去するための医薬組成物であって、SIRT1(silent mating type information regulation 2 homolog)の発現を誘導する物質を有効成分として含み、該物質がインターフェロンベータ(IFN-β)である、医薬組成物。
【請求項2】
インターフェロンベータが、インターフェロンベータ1a、又はインターフェロンベータ1b、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
炎症誘発性サイトカインを減少させ、抗炎症性サイトカインを増加させる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
炎症誘発性サイトカインがIL−6、TNF−a、又はそれらの組み合わせである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
抗炎症性サイトカインがIL−10である、請求項3に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SIRT1(silent mating type information regulation 2 homolog)発現誘導物質を含む敗血症または敗血症性ショックの予防または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バクテリア感染及びその他の強力な刺激は、全身性炎症または全身性炎症反応症候群 (Systemic Inflammatory Response Syndrome,SIRS)を引き起こし得る免疫反応を開始する。深刻なSIRSは、種々の重症度の発熱、低毒素血症(hypotoxemia)、頻呼吸症(trachypnea)、頻搏、内皮炎症、心筋不全、過癒合、精神異常、血管虚脱及び、究極的には器官の損傷、例えば、急性呼吸困難症候群、凝固障害、心不全、腎不全、ショック及び/または昏睡を伴う多臓器不全症候群(multiple organ dysfunction syndrome,MODS)を起こす。
【0003】
敗血症は、全身炎症反応と共に感染が確認されるか、疑われる状況と定義される。重症の敗血症(severe sepsis)は、敗血症から臓器不全(organ dysfunction:低血圧、低酸素症、乏尿症、代謝性酸症、血小板減少症、意識障害)を伴う場合と定義される。敗血症性ショック(septic shock)は、重症の敗血症から水液療法や血液上昇剤を投与しても血圧が正常化しない場合と定義する。敗血症は、重症の敗血症及び究極的には敗血症性ショックの臨床的な段階に進むことができる。臨床的な敗血症は、広い意味で微生物性の作用剤による浸潤が感染の臨床的な症状に関連がある状態と定義される。敗血症の臨床的な症状としては、(1)体温>38℃または体温<36℃;(2)心拍数>1分当たり90回;(3)呼吸数>1分当たり20回またはPaCO<32mmHg;(4)白血球数>12000/cu mm、<4,000/cu mmまたは>10%非成熟(バンド)形状;(5)臓器不全、過癒合、または高血圧などがあるが、これに制限されない。
【0004】
感染が生じると、感染部位の大食細胞が活性化してTNF−α及びIL−1を分泌することにより、組織の血漿タンパク質の放出量が増加し、組織への食細胞とリンパ球の移動増加及び血管壁に対する血小板の付着増加を招く。このような方式で、局所血管が閉塞し、病原体が感染部位に集中する。特に、敗血症は、全身性感染が起こり、TNF−αによって誘導された激しい血管閉塞が伴う。また、TNF−αの全身性放出は、血管拡張及び血管の透過性増加による血漿体積の損失を引き起こしてショックを起こす。敗血症性ショックにおいて、TNF−αは播種性血管内凝固(血液凝固)をさらに触発して、小さい血管からの血餅の生成及び血液凝固タンパク質の大量の消耗を招く。患者の血液凝固能力が消失するため、例えば、腎臓、肝臓、心臓及び肺などのような重要な臓器が正常な還流の不全により損傷する。重症敗血症と敗血症性ショックの死亡率は、それぞれ25〜30%、40〜70%に達すると報告されている。
【0005】
種々の場合の敗血症では、大腸菌(E.coli)が病原体であるが、例えば、クレブシエラ(Klebsiella)−エンテロバクター(Enterobacter)−セラチア(Serratia)群及びシュードモナス(Pseudomonas)のような他のグラム陰性バクテリアも、このような状態を開始することができる。ブドウ球菌(Staphlococcus)などのグラム陽性微生物、全身性ウィルス及び真菌感染も、一部の場合において敗血症を開始する。
【0006】
泌尿生殖器官、胃腸器官及び気道が敗血症を引き起こす最も一般的な感染部位である。その他の敗血症関連感染部位としては、創傷、火傷及び骨盤感染部位及び静脈内カテーテル感染部位などがある。
【0007】
敗血症は、血流の侵入に敏感な基底疾患または症状のある入院患者、または火傷、外傷または手術患者から最もよくみられる。血流の侵入に敏感になるようにする因子としては、全体的に弱っている免疫系、例えば、新生児及び年寄りに存在する免疫系、及び感染に対する局所的な敏感性を増加させる症状または疾患、例えば、弱っている循環性、糖尿病、尿毒症及びAIDSが含まれる。結局、IL−1遺伝子の様々な対立遺伝子の存在から発生し得る弱った免疫反応に対する性向を持つ対象はまた敗血症の発病の危険性がさらに高い(米国特許第6,251,598号)。
【0008】
敗血症は、感染原因菌と宿主の免疫、炎症並びに凝固系の間の複雑な相互作用の結果として発生するものと理解されている。宿主の反応の程度と感染原因菌の特性の何れも敗血症の予後に重大な影響を及ぼす。敗血症から観察される臓器不全は、宿主の感染原因菌に反応が不適切な場合に発生し、もし、宿主の感染原因菌に対する反応が増幅し過ぎると、宿主自身の臓器損傷を引き起こすことができる。このような概念を基に、宿主の炎症反応に主導的な役割を行う炎症性サイトカイン(proinflammatory cytokines)のTNF−α、IL−1β、IL−6などに対する拮抗物質が敗血症の治療剤として試みられたが、殆どが失敗し、機械換気治療、活性タンパク質C(activated protein C)の投与、グルココルチコイド治療などが現在試みられているが、種々の限界点が指摘されている。従って、高い死亡率を示すにもかかわらず、未だに確実な治療剤が開発されていない敗血症及び敗血症性ショックを予防または治療するための新たな治療剤に関する必要性が求められている。
【0009】
SIRT1(silent mating type information regulation 2 homolog;sirtuin 1)は、NAD+依存的脱アセチル酵素であって、種々のタンパク質のリシン残基を脱アセチル化してタンパク質の機能を調節する酵素として知られており(Ageing Res,Vol.1ページ313−326、(2002))、NAD+依存的classIIIヒストン脱アセチル活性を有する酵母のSir2と最も類似である。特に、Nuclear factor−kB、p53などの転写因子に付いているアセチル基を切り取って、これらの機能を調節する(Cancer Res,Vol.64ページ7513−7525,(2004);Cell,Vol.107、ページ149−159、(2001);Trends Endocrinol Metab、Vol.17ページ186−191,(2006))。また、SIRT1は、遺伝子の発現抑制に係わるクロマチン再構成、DNA損傷反応、食餌制限に伴われる寿命延長などに係わる(Chen et al.,Science 310,1641,2005)。即ち、SIRT1は、酵母のSir2のようにヒストン脱アセチル化を通じてクロマチンを再構成して、遺伝子の発現を抑制し、ヒストンタンパク質の他にも細胞成長、ストレス反応、内分泌調節などに係わる様々な転写因子の脱アセチル化を誘導する。また、最近の研究によると、上記SIRT1の脱アセチル化の活性を増加させて、糖尿、肥満、神経退行性疾患または老化関連疾患などに適用する技術が報告されている。
【0010】
上記のように、SIRT1の脱アセチル化活性を増加させて、種々の疾患に適用できるという薬理効果については報告されているが、未だ敗血症または敗血症性ショックを予防または治療できる薬理効果に関する研究は全く無い状態である。従って、敗血症及び敗血症性ショックを予防または治療できる新たな治療剤に関する開発の必要性が強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは新たな敗血症または敗血症性ショックの治療剤の開発のために研究したところ、SIRT1発現誘導物質が炎症性サイトカインを減少させ、抗炎症性サイトカインを増加させることにより、敗血症による死亡率を著しく低めることができることを確認し、本発明を完成させた。
【0012】
従って、本発明の目的は、SIRT1発現誘導物質を含む敗血症または敗血症性ショックの予防または治療用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、SIRT1発現誘導物質を含む敗血症または敗血症性ショックの予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、SIRT1発現誘導物質を含む敗血症または敗血症性ショックの予防または改善用食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、SIRT1発現誘導物質は、炎症性サイトカインを減少させ、抗炎症性サイトカインを増加させることにより、敗血症または敗血症性ショックによる死亡率を著しく減らすことができ、敗血症または敗血症性ショックの予防または治療に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】マウス骨髄由来大食細胞に、LPS及びインターフェロンベータを処理(A)及びインターフェロンベータ遮断抗体(IFN−β blocking antibody,a−INF β)とLPSを共に処理(B)した後、SIRT1タンパク質の発現をウェスタンブロッティングにて分析した結果を示した図面である。
図2】マウス骨髄由来大食細胞にアデノウイルス−SIRT1及びインターフェロンベータを用いてSIRT1の過発現を誘導し、LPSを処理した後、分泌される炎症及び抗炎症サイトカインの量をELISAにて分析した結果を示した図面である(*,P<0.05;**,P<0.01(Student テスト))。
図3】マウスにアデノウイルス−SIRT1またはインターフェロンベータを前処理してから、LPSを投与した後、マウスの生存率を示した図面である。
図4】マウスにアデノウイルスドミナントネガティブSIRT1(Adenovirus−Dominant−negative SIRT1)及びインターフェロンベータを注射してから、LPSを処理した後、マウスの生存率を示した図面である。
図5】マウスにアデノウイルス−SIRT1またはインターフェロンベータを処理した後、盲腸結紮及び穿孔(cecal ligation and Puncture,以下、CLP)手術で敗血症を誘発した後、マウスの生存率を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、SIRT1(silent mating type information regulation 2 homolog)発現誘導物質を含む敗血症または敗血症性ショックの予防または治療用組成物を提供する。
【0018】
上記組成物は、薬学的組成物及び食品組成物を含む。
【0019】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0020】
本発明によるSIRT1発現誘導物質は、炎症性サイトカインを減少させ、抗炎症性サイトカインは増加させることにより、敗血症または敗血症性ショックによる死亡率を著しく低くする。従って、本発明によるSIRT1発現誘導物質は、敗血症または敗血症性ショックの予防または治療に有用に用いられることができる。
【0021】
上記SIRT1発現誘導物質は、インターフェロンベータ、cGMP(cyclic guanosine monophosphate)、アディポネクチン、ピルベート及び2−デオキシグルコースからなる群から選ばれた1種以上の物質を含むことができるが、これに限定されない。
【0022】
上記インターフェロンベータは、インターフェロンの2つのイソフォームであるインターフェロンベータ1a(IFN−β1a)またはインターフェロンベータ1b(IFN−β1b)を含む。インターフェロンベータ1aは、ヒトインターフェロンベータ遺伝子を含むチャイニーズハムスター卵巣(chinese hamster ovary,CHO)から生産され、166個のアミノ酸残基で構成されており、大きさが25kDの糖化した(glycosylated)タンパク質である。インターフェロンβ1bは、大腸菌から生産される165個のアミノ酸残基で構成されたタンパク質であるが、糖が欠如しており、アミノ酸1番メチオニン(methionine)残基が欠如しており、17番システイン(cysteine)残基がセリン(serine)に置き換わっている。上記インターフェロンベータ1a及びインターフェロンベータ1bは、多発性硬化症治療剤として使用できると知られているが、これを用いた敗血症または敗血症性ショックの予防または治療剤については知られていない。
【0023】
上記"敗血症または敗血症性ショックの予防または治療"とは、敗血症に係わる臨床症状及び多臓器不全症候群に係わる状態、例えば、様々な程度の熱、低毒素血症、声枯れ、貧脈、内皮炎、心筋梗塞、高度錯乱、変化性精神状態、血管虚脱及び臓器損傷、急性呼吸困難症候群、凝固障害、心不全、腎不全、ショック及び(または)昏睡状態を減少、改善または除去することを意味する。
【0024】
本発明の組成物は、SIRT1発現誘導物質と共に敗血症または敗血症性ショックの予防または治療効果を有する公知の有効成分を1種以上含有することができる。
【0025】
本発明の薬学的組成物は、投与のために上記記載した有効成分の他に、さらに薬学的に許容できる担体を1種以上含んで製造することができる。例えば、担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デクストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート、鉱物油からなる群から選ぶことができる。本発明の薬学的組成物を製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して製造することができる。
【0026】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、上記有効成分に少なくとも以上の賦形剤、例えば、澱粉、カルシウムカーボネート、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混合して調剤する。また、単純な賦形剤の他にもマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用できる。
【0027】
経口投与のための液状製剤には、懸濁剤、内溶液剤、乳剤、シロップ剤などが該当されるが、通常使用される単純希釈剤の水、リキッドパラピンの他に、種々の賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれることができる。
【0028】
非経口投与のための製剤には、滅菌した水溶液、非水生溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、座剤が含まれる。非水生溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性オイル、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。座剤の基剤としては、ウィテップゾール、マクロゴール、ツイン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用できる。
【0029】
本発明の薬学的組成物は、目的とする方法に応じて様々な経路にて投与することができるが、例えば、経口、直腸、静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射により投与することができる。
【0030】
本発明の薬学的組成物の有効投与量は、患者の状態及び体重、疾患の程度、薬物の形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適切に選択することができる。上記SIRT1発現誘導物質の一日投与量は、5000〜50000IU/kgが好ましく、一日に一回投与することもでき、数回に分けて投与することもでき、上記投与方法が本発明の範囲を限定するものではない。
【0031】
また、本発明の薬学的組成物は、抗炎症剤、解熱陣痛剤、血液凝固抑制剤、抗生剤、抗菌剤及び抗アレルギー剤などとともに製剤化するか、併用して使用できる。
【0032】
本発明の食品組成物は、食品学的に許容される担体をさらに含むことができる。一実施例として、食品組成物が飲料の場合は、必須成分としてSIRT1発現誘導物質を含有すること以外に、液体成分には特に制限はなく、通常の飲料と同様に、様々な風味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。この際、天然炭水化物の例としては、モノサッカリド、例えば、ブドウ糖、果糖、ジサッカリド、例えば、マルトース、スクロース、ポリサッカリド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールが挙げられる。また、上記風味剤としては、天然風味剤、例えば、タウマチン、ステビア抽出物、レバウディオサイド A、グリシルリジンと合成風味剤、例えば、サッカリン、アスパルテームなどを使用することができる。
【0033】
上記飲料の他に本発明の食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤、増進剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。
【0034】
上記食品組成物は、各種の食品類、キャンディ、チョコレート、ガム、茶、ビタミン複合剤、各種の健康補助食品類などから提供可能であり、粉末、顆粒、錠剤、丸剤、カプセルまたは飲料の形で提供することができる。
【0035】
上記食品組成物に含有されたSIRT1発現誘導物質の有効容量は、上記薬学的組成物の有効容量に準じて使用することができるが、健康及び衛生を目的とするか、或いは健康の調節を目的とする長期摂取の場合は、上記範囲以下であることができる。
【0036】
以下、本発明を実施例及び製剤例により詳しく説明する。ただし、下記の実施例及び製剤例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容が下記の実施例及び製剤例により限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
実施例1.マウス骨髄由来大食細胞にLPS及びインターフェロンベータ処理後のSIRT1の発現量測定
C57BL/6マウスの大腿骨と脛骨の骨髄細胞を、M−CSF(10ng/ml)が含まれた培養液で5〜7日間分化させた後、マウス大食細胞として使用した。大食細胞にLPS(0,100,500,1000ng/ml)とインターフェロンベータ(0,100,200,500units/ml)を濃度別に処理し、SIRT1発現量をウェスタンブロッティングにて比べた。また、LPSをインターフェロンベータ遮断抗体(IFN−β blocking antibody)とともに処理したときの、SIRT1タンパク質発現量を測定した。
【0038】
結果は図1に示した。
図1に示したように、マウス骨髄由来大食細胞にLPSを100ng/ml処理したとき、SIRT1タンパク質の発現が最も高く増加し、500ng/ml及び1000ng/mlを処理した場合、かえってSIRT1タンパク質の発現が減少した。また、インターフェロンベータを濃度別に処理した場合、100units/ml処理したとき、SIRT1発現が最も著しく増加した(A)。
【0039】
また、LPSにより増加したSIRT1発現は、インターフェロンベータ遮断抗体を共に処理することで、再び減少した。これを通して、LPSによって増加したSIRT1の分泌は、インターフェロンベータを通じて行われ、これを通してインターフェロンベータがSIRT1の発現を誘導することが分かる(B)。
【0040】
実施例2.アデノウイルス−SIRT1及びインターフェロンベータがLPSによる炎症性及び抗炎症性サイトカインの分泌量に及ぼす影響
大食細胞にアデノウイルス−SIRT1を10,000MOI(multiplicity of infection)で24時間感染させた後、LPS100ng/mlを24時間処理した。また、インターフェロンベータ100units/mlと共にLPS100ng/mlを24時間処理した後、細胞培養培地の炎症性及び抗炎症性サイトカインの量をELISAにて測定した。試験は3回行い、平均±標準偏差で示した。
【0041】
結果は図2に示した。
図2に示したように、LPS処理によって増加された炎症性サイトカインの量は、アデノウイルス−SIRT1とインターフェロンベータの前処理で、IL−6はそれぞれ40%、54%、TNF−αはそれぞれ22%、29%減少した。また、LPS処理によって増加するさらに異なる炎症性サイトカインであるMCP−1は、アデノウイルス−SIRT1とインターフェロンベータによってやや減少することを確認した。一方、抗炎症性サイトカインのIL−10の量はそれぞれ2.8倍、4.7倍増加した。従って、SIRT1の発現を促進させるサイトカインであるインターフェロンベータの処理は、LPSによる過度な炎症反応を抑制することができることが分かる。
【0042】
実施例3.マウスにSIRT1またはインターフェロンベータを前処理してから、LPS投与後マウスの生存率分析
対照遺伝子伝達体のアデノウイルス−LacZまたはSIRT1遺伝子伝達体のアデノウイルス−SIRT1をそれぞれ3X10pfu(plaque forming unit)ずつマウス尻尾静脈に注射し、48時間後にLPS15〜20mg/kgを処理した後、マウスの生存率を10日間観察した。
【0043】
また、マウスの重さ20gあたりインターフェロンベータ1000unitsまたは同じ量の食塩水をマウスの尻尾静脈に注射し、30分後にLPS15〜20mg/kgを処理した。LPS処理後、マウスの生存率を10日間観察した。
【0044】
結果は図3に示した。
図3に示したように、アデノウイルス−SIRT1を前処理したマウスにLPSを投与した場合、マウスの10日後の生存率は66%であって、対照群のアデノウイルス−LacZ投与マウスの生存率20%に比べて著しく高いことがわかる。また、マウスにインターフェロンベータを投与した後、LPSを投与したマウスの10日後の生存率は70%であって、対照群の食塩水投与マウスの生存率30%に比べて著しく高いことがわかる。このような結果は、Kaplan−Meier生存統計分析によっても有意性のある差をみせた(p<0.05)。従って、SIRT1発現を誘導する物質であるインターフェロンベータは、LPSによる過度な炎症反応を抑制させることにより、LPS処理によるマウスの死亡率を著しく低めることが分かる。
【0045】
実施例4.アデノウイルスドミナントネガティブSIRT1を処理した場合、マウスの生存率分析
内因性SIRT1の機能を妨げる遺伝子伝達体であるアデノウイルスドミナントネガティブSIRT1(Adenovirus−Dominant−negative SIRT1)(355番ヒスチジンをチロシンに変えた突然変異タンパク質を誘導するアデノウイルス)を3X10pfuずつマウスの尻尾静脈に注射し、48時間後、マウスの重さ20gあたり、インターフェロンベータ1000unitsをマウスの尻尾静脈に注射した。30分後、LPS15〜20mg/kgを処理した後、マウスの生存率を10日間観察した。
【0046】
結果は図4に示した。
図4に示したように、マウスにアデノウイルスドミナントネガティブSIRT1を48時間前処理し、インターフェロンベータを投与した後、LPSを投与した場合、10日経過後に50%の生存率を示した。これは、対照群の食塩水投与マウスの生存率50%と類似な結果であり、これを通じて、SIRT1発現を誘導する物質であるインターフェロンベータがLPSによるマウスの死亡率を著しく低めることが分かる。
【0047】
実施例5.マウス敗血症モデルにおいてSIRT1及びインターフェロンベータ処理による生存率分析
盲腸結紮及び穿孔(cecal ligation and Puncture、以下、CLP)手術を通じて誘導されたマウス敗血症モデルにおいて、SIRT1及びインターフェロンベータ投与による生存率の変化を確認するため、下記のような実験を行った。
【0048】
マウスにアデノウイルス−LacZまたはアデノウイルス−SIRT1を3X10pfuずつマウスの尻尾静脈に注射した。その後、24時間後、マウスに麻酔剤を腹腔注射して麻酔した後、CLPを通じて敗血症を誘発させた。即ち、マウスの腹腔真中部を切開した後、盲腸を外部に露出して回盲弁(ileocecal valve)の末端をシルク縫い目(silk suture)にて結紮し、針を利用して盲腸に2つの孔を明けた後、一定量の糞便(fecal material)を流出させた。糞便を含んで盲腸を再び腹腔内に入れて縫った後、生理食塩水を皮下注射を通じて注入した。CLP手術の2時間後、マウスの尻尾静脈にマウスの重さ20gあたりインターフェロンベータ1000unitsまたは同量の食塩水をマウスの尻尾静脈に注射した。
【0049】
結果は図5に示した。
図5に示したように、アデノウイルス−SIRT1を前処理したマウスに敗血症を誘導し、10日が過ぎた後、マウスの生存率は60%と表れた。これは、対照群のアデノウイルス−LacZを前処理した敗血症誘導マウスの生存率0%に比べて著しく高い生存率であることが分かる。
【0050】
また、敗血症誘導マウスにインターフェロンベータを投与した実験群の場合、マウスの生存率は76%を示した一方、対照群の食塩水処理マウスは生存率0%を示した。上記の結果は、いずれもKaplan−Meier生存統計分析によっても有意性のある差を示した(p<0.05)。
【0051】
従って、SIRTの発現を誘導するインターフェロンベータは、敗血症によるマウスの死亡率を著しく低めて、効果的な敗血症または敗血症性ショックの予防または治療に有用に用いられることができる。
【0052】
下記に本発明の組成物のための製剤例を例示する。
【0053】
製剤例1:薬学的製剤
1.散剤の製造
SIRT1発現誘導物質 2g
乳糖 1g
上記の成分を混合して機密袋に充填して散剤を製造した。
【0054】
2.錠剤の製造
SIRT1発現誘導物質 100mg
トウモロコシ澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
上記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法に従って打錠して錠剤を製造した。
【0055】
3.カプセル剤の製造
SIRT1発現誘導物質 100mg
トウモロコシ澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
上記の成分を混合した後、通常のカプセル剤の製造方法に従って、ゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0056】
製剤例2:食品の製造
本発明のSIRT1発現誘導物質を含む食品を次のように製造した。
【0057】
1.調味料の製造
SIRT1発現誘導物質20〜95重量%で健康増進用調味料を製造した。
【0058】
2.トマトケチャップ及びソースの製造
SIRT1発現誘導物質0.2〜1.0重量%をトマトケチャップまたはソースに添加して健康増進用トマトケチャップまたはソースを製造した。
【0059】
3.小麦粉食品の製造
SIRT1発現誘導物質0.5〜5.0重量%を小麦粉に添加し、この混合物を用いて、パン、ケーキ、クッキー、クラッカー及び麺類を製造して健康増進用食品を製造した。
【0060】
4.スープ及び肉汁(gravies)の製造
SIRT1発現誘導物質0.1〜5.0重量%をスープ及び肉汁に添加して健康増信用肉加工製品、麺類のスープ及び肉汁を製造した。
【0061】
5.グラウンドビーフ(ground beef)の製造
SIRT1発現誘導物質10重量%をグラウンドビーフに添加して健康増進用グラウンドビーフを製造した。
【0062】
6.乳製品(dairy products)の製造
SIRT1発現誘導物質5〜10重量%を牛乳に添加し、上記牛乳を用いてバター及びアイスクリームのような様々な乳製品を製造した。
【0063】
製剤例3:飲料の製造
1.炭酸飲料の製造
SIRT1発現誘導物質10〜15%、砂糖5〜10%、クエン酸0.05〜0.3%、キャラメル0.005〜0.02%、ビタミンC0.1〜1%の添加物を混合し、これに75〜80%の製剤水を混ぜてシロップを作った。上記シロップを85〜98℃で20〜180秒間殺菌して冷却水と1:4の割合で混合した後、炭酸ガスを0.5〜0.82%注入してSIRT1発現誘導物質を含有する炭酸飲料を製造した。
【0064】
2. 健康飲料の製造
SIRT1発現誘導物質(固形分2.5%、97.16%)、なつめエキス(65brix、2.67%)、果蔕複合抽出物(固形分70%、0.12%)、ビタミンC(0.02%)、パントテン酸カルシウム(0.02%)、甘草抽出物(固形分65%、0.01%)を均質に配合して瞬間殺菌をした後、これをガラス瓶、ペットボトルなどの小さい包装容器に入れて健康飲料を製造した。
【0065】
3.野菜ジュースの製造 SIRT1発現誘導物質0.5gをトマトまたはニンジンジュース1,000mlに加えて健康増進用野菜ジュースを製造した。
【0066】
4.フルーツジュースの製造
SIRT1発現誘導物質0.1gをリンゴまたはブドウジュース1,000mlに加えて健康増進用フルーツジュースを製造した。
図1
図2
図3
図4
図5