特許第6697044号(P6697044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 嘉聯益科技股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特許6697044電子装置及びその多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造
<>
  • 特許6697044-電子装置及びその多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造 図000002
  • 特許6697044-電子装置及びその多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造 図000003
  • 特許6697044-電子装置及びその多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造 図000004
  • 特許6697044-電子装置及びその多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697044
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】電子装置及びその多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/38 20060101AFI20200511BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20200511BHJP
   H01Q 5/30 20150101ALI20200511BHJP
   H01Q 21/30 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   H01Q1/38
   H01Q21/06
   H01Q5/30
   H01Q21/30
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-173247(P2018-173247)
(22)【出願日】2018年9月18日
(65)【公開番号】特開2019-213181(P2019-213181A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2018年9月18日
(31)【優先権主張番号】107119480
(32)【優先日】2018年6月6日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】506169908
【氏名又は名称】嘉聯益科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】李 謨霖
(72)【発明者】
【氏名】郭 加弘
(72)【発明者】
【氏名】洪 國瀛
【審査官】 福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05608413(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第103682646(CN,A)
【文献】 特開2012−151829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/38
H01Q 5/30
H01Q 21/06
H01Q 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂層を含む第1の基板層と、
第1のアンテナを構成するように前記第1の樹脂層に形成される第1の金属層と、
前記第1の基板層と積み重なるように配置され、第2の樹脂層を含む第2の基板層と、
第2のアンテナを構成するように前記第2の樹脂層に形成される第2の金属層と、
前記第1の基板層と前記第1の金属層とを貫通する第1の槽と、
前記第1の槽と互いに位置的に対応して、前記第2の基板層と前記第2の金属層とを貫通する第2の槽と、
を含み、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは垂直方向での投影が重なり合わないように形成され、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとに異なる通信帯域を持たせるように、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とが異なる誘電率を有し、
前記第1の基板層と前記第2の基板層との間に形成される第3の基板層と、
前記第3の基板層に形成されると共に、前記第1の金属層と前記第2の金属層とに電気的に接続される第3の金属層と、
をさらに含む、ことを特徴とする多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造。
【請求項2】
前記第1の基板層はさらに第1のコア層を含み、前記第1の樹脂層と前記第1の金属層とがそれぞれ前記第1のコア層における相対する両面に形成され、前記第2の基板層はさらに第2のコア層を含み、前記第2の樹脂層と前記第2の金属層とがそれぞれ前記第2のコア層における相対する両面に形成される、請求項1に記載する多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造。
【請求項3】
前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の材料は、変性液晶ポリマー、変性ポリイミン又は変性エポキシ樹脂であり、前記変性液晶ポリマー、前記変性ポリイミン及び前記変性エポキシ樹脂は修飾官能基を含み、かつ、前記修飾官能基はアミノ基、カルボキサミド基、イミド基、アミジノ基アミノカルボニルアミノ基、アミノチオカルボニル基、アミノカルボニルオキシ基、アミノスルホニル基、アミノスルホニルオキシ基、カルボン酸エステル、カルボン酸エステルアミノ基、アルコキシカルボニルオキシ、アルコキシアミノ、ヒドロキシアミノ、シアナトまたはイソシアナトから選ばれるものである、請求項1に記載する多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造。
【請求項4】
前記第1の金属層は第1の放射部、及び前記第1の放射部に連結される第1の接続層を含み、
前記第2の金属層は第2の放射部、及び前記第2の放射部に連結される第2の接続層を含み、
前記第1の接続層及び前記第2の接続層が前記第3の金属層と電気的に接続される、請求項に記載する多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造。
【請求項5】
前記第1の基板層を貫通して、両端部がそれぞれ前記第1の金属層の前記第1の接続層と前記第3の金属層とに接触する第1の導電性柱状体と、
前記第2の基板層及び前記第3の基板層を貫通して、両端部がそれぞれ前記第2の金属層の前記第2の接続層と前記第3の金属層とに接触する第2の導電性柱状体と、
をさらに含む、請求項に記載する多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造。
【請求項6】
請求項1から5のうち少なくとも1つの請求項に記載する多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造を使用する、ことを特徴とする電子装置。
【請求項7】
第1の樹脂層を含む第1の基板層と、
第1のアンテナを構成するように前記第1の樹脂層に形成される第1の金属層と、
前記第1の基板層と積み重なるように配置され、第2の樹脂層を含む第2の基板層と、
第2のアンテナを構成するように前記第2の樹脂層に形成される第2の金属層と、
前記第1の基板層と前記第1の金属層とを貫通する第1の槽と、
前記第1の槽と互いに位置的に対応して、前記第2の基板層と前記第2の金属層とを貫通する第2の槽と、
第3の基板層及び第3の金属層と、
を含み、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは垂直方向での投影が重なり合わないように形成され、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとに異なる通信帯域を持たせるように、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とが異なる誘電率を有し、
前記第2の基板層と前記第2の金属層が前記第3の基板層における一方の表面に形成され、
前記第1の基板層と第1の金属層が前記第2の金属層に形成され、
前記第3の金属層が前記第3の基板層における他方の表面に形成されると共に、前記第1の金属層と前記第2の金属層とに電気的に接続される、多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造。
【請求項8】
前記第1の金属層は、第1の放射部、及び前記第1の放射部に連結される第1の接続層を含み、前記第2の金属層は第2の放射部、及び前記第2の放射部に連結される第2の接続層を含み、かつ、前記第1の接続層及び前記第2の接続層が前記第3の金属層と電気的に接続される、請求項に記載する多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造。
【請求項9】
前記第1の基板層、前記第2の基板層及び前記第3の基板層を貫通して、両端部がそれぞれ前記第1の金属層の前記第1の接続層と前記第3の金属層とに接触する、第1の導電性柱状体と、
前記第2の基板層及び前記第3の基板層を貫通して、両端部がそれぞれ前記第2の金属層の前記第2の接続層と前記第3の金属層とに接触する、第2の導電性柱状体と、
をさらに含む、請求項に記載する多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造。
【請求項10】
請求項からのうち少なくとも1つの請求項に記載する多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造を使用する、ことを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナを使用する電子装置に関し、例えば、多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造及びそれを用いた電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信技術の発達により、電子機器(例えば、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなど)の機能要件がますます多様化している。例えば、近距離通信(Near Field Communication,NFC)、NFC)、GPS、3G、WIFI、ブルートゥース(登録商標)などの通信機能をサポートする必要がある。したがって、信号の送受信を行うためには、電子機器にアンテナを配置する必要がある。しかしながら、電子装置は小型化を目指しているが、その内部空間はアンテナのデザインを大きく制限し、最も直接的な効果は複数の異なる通信帯域で動作することができないということである。
【0003】
さらに、日本では領土の一部が高温多湿の亜熱帯地域にあり、高温多湿の環境下で高周波信号を伝送すると、ばらつきや信号の整合性に影響する可能性がある。また、既存のプリント回路基板の構造では、周波数10GHzで、高耐熱性、低吸湿性能はもちろん、低誘電損失を達成することは困難である。
【0004】
従って、複数の通信帯域を有し、電子装置内部の限られた空間の限界を克服し、厳しい環境条件下での高周波信号の伝送品質及び安定性を保証する多機能アンテナが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、現有の技術の不足に対し、アンテナ機能が単一であり、電子装置の内部空間を完全に利用することができないという問題を解決するための多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造を提供する。かつ、該多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造を使用する電子装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した技術的な課題を解決するために、本発明が採る1つの技術的手段は、第1の基板層、第1の金属層、第2の基板層、及び第2の金属層を含む多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造を提供する。前記第1の基板層は第1の樹脂層を含み、前記第1の金属層は第1のアンテナを構成するように前記第1の樹脂層に形成される。前記第2の基板層は前記第1の基板層と積み重なるように配置され、第2の樹脂層が含まれる。前記第2の金属層は第2のアンテナを構成するように前記第2の樹脂層に設けられる。中でも、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは垂直方向での投影が重なり合わないように形成される。前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とは異なる誘電率を備え、それにより、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとが異なる通信帯域を備える。
【0007】
さらに、前記多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造は第1の槽及び第2の槽を備え、前記第1の槽の位置は前記第2のアンテナと対応し、かつ、前記第1の槽が前記第1の基板層と前記第1の金属層とを貫通するように形成される。前記第2の槽の位置は前記第1のアンテナと対応し、かつ、前記第2の槽が前記第2の基板層と前記第2の金属層とを貫通するように形成される。
【0008】
さらに、前記第1の基板層は第1のコア層を含み、かつ、前記第1の樹脂層と前記第1の金属層とがそれぞれ前記第1のコア層と対応する両面に形成される。前記第2の基板層はさらに第2のコア層を含み、前記第2の樹脂層と前記第2の金属層とがそれぞれ前記第2のコア層と対応する両面に形成される。
【0009】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【0010】
さらに、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の材料は変性液晶ポリマー、変性ポリイミン又は変性エポキシ樹脂を含む。前記変性液晶ポリマー、前記変性ポリイミン及び前記変性エポキシ樹脂は修飾用官能基を有し、前記修飾用官能基は、アミン基、デシルアミノ基、イミド基、フルオレニル基、アミノカルボニルアミノ基、アミノチオカルボニル基、アミノカルボニルオキシ基、アミンスルホニウム基 カルボン酸エステル、カルボン酸アミン基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルコキシアミノ基、ヒドロキシルアミン基、シアナミド基またはイソシアネート基である。
【0011】
さらに、前記多帯域フレキシブル回路基板アンテナは第3の基板層及び第3の金属層を含む。前記第3の基板層が前記第1の基板層と前記第2の基板層との間に形成され、前記第3の金属層が前記第3の基板層に形成されると共に、前記第1の金属層と前記第2の金属層とに電気的に接続される。
【0012】
さらに、前記第1の金属層は第1の放射部、及び前記第1の放射部に連結される第1の接続層を含み、前記第2の金属層は第2の放射部、及び前記第2の放射部と連結される第2の接続層を含み、かつ、前記第1の接続層及び前記第2の接続層は前記第3の金属層と電気的に接続される。
【0013】
さらに、前記多帯域フレキシブル回路基板アンテナはさらに第1の導電性柱状体及び第2の導電性柱状体を含む。前記第1の導電性柱状体は前記第1の基板層を貫通して、かつ、前記第1の導電性柱状体の両端部はそれぞれ前記第1の金属層の前記第1の接続層と前記第3の金属層とに接触する。前記第2の導電性柱状体が前記第2の基板層と前記第3の基板層とを貫通して、かつ、前記第2の導電性柱状体の両端部はそれぞれ前記第2の金属層の前記第2の接続層と前記第3の金属層とに接触する。
【0014】
さらに、前記多帯域フレキシブル回路基板アンテナは第3の基板層及び第3の金属層を含む。前記第2の基板層及び前記第2の金属層は前記第3の基板層の一方の表面に形成され、前記第1の基板層及び第1の金属層は前記第2の金属層に形成される。前記第3の金属層は前記第3の基板層における前記一方の表面と相対する他方の表面に形成されると共に、前記第1の金属層及び前記第2の金属層と電気的に接続される。
【0015】
さらに、前記第1の金属層は第1の放射部、及び前記第1の放射部と連結される第1の接続層を含む。前記第2の金属層は第2の放射部、及び前記第2の放射部と連結される第2の接続層を含む。かつ、前記第1の接続層及び前記第2の接続層が前記第3の金属層と電気的に接続される。
【0016】
さらに、前記多帯域フレキシブル回路基板アンテナは第1の導電性柱状体及び第2の導電性柱状体をさらに含む。前記第1の導電性柱状体が前記第1の基板層、前記第2の基板層及び前記第3の基板層を貫通して、前記第1の導電性柱状体の両端部はそれぞれ前記第1の金属層の前記第1の接続層と前記第3の金属層とに接触する。前記第2の導電性柱状体は前記第2の基板層及び前記第3の基板層を貫通して、前記第2の導電性柱状体の両端部はそれぞれ前記第2の金属層の前記第2の接続層と前記第3の金属層とに接触する。
【発明の効果】
【0017】
上述した技術的な課題を解決するために、本発明が採る他の技術的手段は、前記多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造を使用する電子装置を提供する。
【0018】
本発明による有益な効果の1つとしては、本発明が提供する電子装置及びその多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造では、「前記第2の金属層と前記第1の金属層とは垂直方向での投影が重なり合わないように形成される」及び「前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とは異なる誘電率を有する」という技術的手段により、複数の異なる通信帯域のアンテナを同じフレキシブル回路基板における異なる層に配置して、オールインワンの構成が実現され、電子装置の内部空間を十分に活用することができ、より多くの機能をデザインする上で有益である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造を示す上面模式図である。
図2図1に示した多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造におけるI−I断面を示す断面模式図である。
図3図1に示した多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造におけるI−I断面に対応する異なる断面模式図である。
図4】本発明に係る多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造による電子装置を示す構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下、本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【0021】
フレキシブル回路基板(FPC)は、使用時には、自由に曲げることができ、空間レイアウト要件に従って任意に配置できるという利点があるため、本発明はFPCによりオールインワンアンテナの設計を実現し、電子製品の様々な機能要件を満足する。
【0022】
下記より、具体的な実施例で本発明が開示する「電子装置及びその多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造」に係る実施形態を説明する。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行又は応用できる。本明細書における各細節も様々な観点又は応用に基づいて、本発明の精神を逸脱しない限りに、均等の変形と変更を行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。
【0023】
また、本明細書において「第1の」、「第2の」、「第3の」等の語彙により各種の素子又は信号を示すが、それらの素子又は信号はそれらの語彙に制限されない。それらの語彙は主に一方の素子(信号)と他方の素子(信号)を区別するためにつけられる。また、明細書における「または」という語彙では、実際の状況に応じて、関連するリスト項目の1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0024】
[第1の実施形態]
図1及び図2を参照する。本発明に係る第1の実施形態には、多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造Bを提供する。それは少なくとも2種類の通信帯域が異なるアンテナを同一のフレキシブル回路基板における異なる層に配置することにより、電子装置の様々な機能要件を満足する。多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造Bは多層配線基板であり、それには少なくとも積み重なるように配置される、第1の基板層1、第1の金属層2、第2の基板層3、第2の金属層4、第3の基板層5、及び第3の金属層6を備える。
【0025】
第1の金属層2は第1の基板層1に設けられ、かつ一方の予定アンテナパターンを含む。それにより、第1の金属層2と第1の基板層1とは第1のアンテナA1を構成する。第2の金属層4は第2の基板層3に形成され、かつ、他方のアンテナパターンを備え、それにより、第2の金属層4と第2の基板層3とは第2のアンテナA2を構成する。第1のアンテナA1と第2のアンテナA2との間の相互干渉を防ぐために、多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造Bは第2のアンテナA2と対応する第1の槽S1と、第1のアンテナA1に対応する第2の槽S2とを含んでもよい。第1の槽S1は少なくとも第1の基板層1と第1の金属層2とを貫通して、第2の槽S2は少なくとも第2の基板層3と第2の金属層4とを貫通し、それにより第1の金属層2と第2の金属層4とは垂直方向での投影が重なり合わないように形成される。
【0026】
さらに言えば、第1の基板層1は第1のコア層11及び第1の樹脂層12を含む。第1の樹脂層12及び第1の金属層2はそれぞれ第1のコア層11における相対する両面に形成される。第2の基板層3は第2のコア層31及び第2の樹脂層32を含み、第2の樹脂層32及び第2の金属層4はそれぞれ第2のコア層31における相対する両面に形成される。説明に値するのは、第1のアンテナA1及び第2のアンテナA2をそれぞれ異なる層に形成させる構成では、電子装置におけるアンテナの機能要件に応じてさまざまな組み合わせを実現するために第1の樹脂層12及び第2の樹脂層32の誘電率を設定することができる。すなわち、第1の樹脂層12と第2の樹脂層32とが異なる誘電率を有する場合、第1のアンテナA1と第2のアンテナA2とは異なる通信帯域を有することができる。例えば、第1のアンテナA1としては、GPSアンテナ、NFCアンテナ、Bluetooth(登録商標)アンテナ、または無線LANアンテナのうちの一方の1つであり、第2のアンテナA2はGPSアンテナ、NFCアンテナ、Bluetooth(登録商標)アンテナ、または無線LANアンテナのうちの他方の1つであってもよい。なお、上述した例は可能な実施形態のうちの1つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0027】
本実施形態において、第1の樹脂層12と第2の樹脂層32との厚さはアンテナが要求する整合帯域幅に応じて調整することができる。第1の樹脂層12と第2の樹脂層32との厚さは12μm〜105μmとなるが、それに制限されない。第1の樹脂層12及び第2の樹脂層32は単層又は複数層に形成される。第1の樹脂層12及び第2の樹脂層32の材料としては、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPO/PPE)、アラルキルエポキシ樹脂、またはそれらの任意の組み合わせである。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)が挙げられる。アラルキルエポキシ樹脂としては、ビフェニルエポキシ樹脂が挙げられる。
【0028】
第1の樹脂層12及び第2の樹脂層32の材料としては変性液晶ポリマー(modified LCP)、変性ポリイミン(modified PI)又は変性エポキシ樹脂(modified epoxy)が好ましいが、それに制限されない。第1の金属層2及び第2の金属層4の厚さは2μm〜105μmとなるが、それに制限されない。第1の金属層2及び第2の金属層4の材料としては例えば、銅、ニッケル、銀、金またはそれらの合金などの高導電性金属であってもよいが、それに制限されない。
【0029】
また、第1の樹脂層12及び第2の樹脂層32は必要に応じてセラミック粉末を使用してもよい。セラミック粉末が第1の樹脂層12又は第2の樹脂層32で占める割合は、40重量%〜70重量%、好ましくは25重量%〜35重量%であってもよい。
【0030】
さらに言えば、第1の樹脂層12及び第2の樹脂層32は、変性液晶ポリマー、変性ポリイミン、又は変性エポキシ樹脂のいずれも、少なくとも1つ修飾官能基を備えなければならない。修飾官能基としては、アミノ基(amino)、カルボキサミド基(carboxamido)、イミド基(imido又はimino)、アミジノ基(amidino)、アミノカルボニルアミノ基(aminocarbonylamino)、アミノチオカルボニル基(amino thiocarbonyl)、アミノカルボニルオキシ基(aminocarbonyloxy)、アミノスルホニル基(aminosulfonyl)、アミノスルホニルオキシ基(aminosulfonyloxy)、カルボン酸エステル(carboxyl ester)、カルボン酸エステルアミノ基((carboxyl ester) amino)、アルコキシカルボニルオキシ(alkoxy carbonyloxy)、アルコキシアミノ(alkoxy amino)、ヒドロキシアミノ(hydroxyamino)、シアナト(cyanato)またはイソシアナト(isocyanato)が挙げられるが、それに制限されない。
【0031】
上述した変性液晶ポリマー、変性ポリイミン及び変性エポキシ樹脂は特定の溶媒と共に第1のコア層11又は第2のコア層31における一方の表面に塗布してから、特定の溶媒を除去した結果、第1の樹脂層12又は第2の樹脂層32を形成する。説明に値するのは、上記変性液晶ポリマー、変性ポリイミン及び変性エポキシ樹脂は修飾前と比較して特定の溶媒への溶解性が高いため、加工性を高めることができる。具体的な特定溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、γ−ブチロラクトン(GBL) ブトキシエタノール、2−エトキシエタノールなどが挙げられる。第1の樹脂層12又は第2の樹脂層32の材料において、変性液晶ポリマー、変性ポリイミン、又は変性エポキシ樹脂の固体含量は、1重量%〜85重量%であり、例えば、5重量%、15重量%、25重量%、35重量%、45重量%、55重量%、65重量%または75重量%が挙げられる。
【0032】
また、第1の樹脂層12及び第2の樹脂層32は変性液晶ポリマー、変性ポリイミン又は変性エポキシ樹脂により構成されるため、第1の樹脂層12及び第2の樹脂層32の吸水率は従来技術の樹脂層の吸水率(約2%)よりもはるかに小さい0.8%以下に低減することができ、それにより、多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造Bは過酷な高湿度環境に適応でき、すなわち、高湿度環境であっても、多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造Bは正常に使用することができる。
【0033】
また、第1の樹脂層12又は第2の樹脂層32の材料としては、必要に応じて1つ以上の添加剤と合わせて使用することができる。添加剤としては、高誘電性フィラー、無機フィラー、有機フィラー、ウィスカー(whisker)、デカンカップリング剤、酸化防止剤又は紫外線吸収剤のいずれか1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、これに限定されるものではない。高誘電性フィラーとしては、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムを用いることができる。無機フィラーとしては、酸化セリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムを用いることができる。有機フィラーとしては、硬化したエポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アクリル系ポリマーを用いることができる。ウィスカーとしては、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウムを用いることができる。なお、本発明は上述した例に制限されない。
【0034】
本実施形態において、第1のコア層11及び第2のコア層31の厚さは8μm〜200μmであるが、それに制限されない。第1のコア層11及び第2のコア層31の材料としては、第1の樹脂層12及び第2の樹脂層32と同じ材料とすることが好ましい。すなわち、第1のコア層11及び第2のコア層31の材料としては、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPO/PPE)、アラルキル型エポキシ樹脂、またはこれらの任意の組合せであり、その具体例は上記の通りであり、ここで再び説明しない。かつ、第1のコア層11及び第2のコア層31の材料としては上記の通り、変性液晶ポリマー、変性ポリイミン又は変性エポキシ樹脂を含むと共に、少なくとも1つ修飾官能基を備えるものが好ましいし、ここで説明を繰り返さない。
【0035】
図2を再び参照する。第3の基板層5は第1の基板層1と第2の基板層3との間に形成され、第3の金属層6が第3の基板層5における一方の表面に形成されると共に予定回路パターンを備える。第1の金属層2及び第2の金属層4がいずれも第3の金属層6と電気的に接続され、それにより、第3の金属層6が信号送信回路を構成する。実際に使用する場合では、第3の金属層6を介して、第3の金属層6の相対する両側に配置される第1のアンテナA1及び第2のアンテナA2に対して複合制御を行うことができる。
【0036】
さらに言えば、第1の金属層2は第1の放射部21、及び第1の放射部21に連結される第1の接続層22を含む。中でも、第1の接続層22は第1の基板層1を第1の導電性柱状体P1が貫通することにより第3の金属層6と電気的に接続することができる。第2の金属層4は第2の放射部41、及び第2の放射部41と連結される第2の接続層42を含む。中でも、第2の接続層42は第2の基板層3を第2の導電性柱状体P2が貫通することにより第3の金属層6と電気的に接続することができる。
【0037】
説明しなければならないのは、第3の基板層5における相対する他方の表面に第4の金属層7を別途に形成してもよい。かつ、第4の金属層7はより複雑な回路設計と機能要件に対応するために、別の予定回路パターンを備えている。
【0038】
本実施形態において、第3の基板層5は主に転送又はサポート役割を果たす。第3の基板層5の厚さは8μm〜200μmであってもよいが、それに制限されない。第3の基板層5の材料としては、第1の樹脂層12及び第2の樹脂層32の材料と同じように選ばれるものが好ましい。すなわち、第3の基板層5の材料としては変性液晶ポリマー、変性ポリイミン又は変性エポキシ樹脂を含むことが好ましい。それには上述した通り、少なくとも1つの修飾官能基を有すればよく、ここで説明を繰り返さない。第3の金属層6及び第4の金属層7の厚さは2μm〜105μmであってもよいが、それに制限されない。第3の金属層6及び第4の金属層7の材料としては銅、ニッケル、銀、金またはそれらの合金などの高導電性金属であってもよいが、それに制限されない。
【0039】
[第2の実施形態]
図3を参照する。本発明に係る第2の実施形態は、多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造Bを提供する。第2の実施形態の多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造Bは、少なくとも2種類の異なる通信帯域のアンテナを同じフレキシブル回路基板における異なる層に配置することにより、電子装置におけるアンテナ機能の多様性に対する要件を満足する。多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造Bは多層配線基板であり、少なくとも積み重なるように配置される、第1の基板層1、第1の金属層2、第2の基板層3、第2の金属層4、第3の基板層5及び第3の金属層6を含む。第1の基板層1、第2の基板層3、又は第3の基板層5、或いは、第1の金属層2、第2の金属層4、又は第3の金属層6に係る技術的な詳細は第1の実施形態を参照し、ここでは説明を繰り返さない。
【0040】
本実施形態と第1の実施形態との主な差異点は、第1のアンテナA1と第2のアンテナA2とがいずれも第3の基板層5の上方に配置される。さらに言えば、第2の基板層3と第2の金属層4とが第3の基板層5における一方の表面に形成され、第1の基板層1と第1の金属層2が第2の金属層4に形成され、第3の金属層6が第3の基板層5における相対する他方の表面に形成される。かつ、第1の金属層2の第1の接続層22は第1の基板層1、第2の基板層3、第3の基板層5を第1の導電性柱状体P1が貫通して、第3の金属層6と電気的に接続することができる。第2の金属層4の第2の接続層42は第2の基板層3及び第3の基板層5を第2の導電性柱状体P2が貫通して第3の金属層6と電気的に接続することができる。
【0041】
[第3の実施形態]
図4を参照する。本発明はさらに電子装置Dを提供する。電子装置Dは多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造Bを使用する。さらに言えば、電子装置Dは制御ユニットC、及び異なる通信帯域の、第1のアンテナA1、第2のアンテナA2、第3のアンテナA3及び第4のアンテナA4を含む。制御ユニット24は任意の種類のプロセッサまたはプログラマブル回路で構成することができる。第1のアンテナA1、第2のアンテナA2、第3のアンテナA3及び第4のアンテナA4はそれぞれ異なる層に配置されると共に、いずれも信号送信回路Lに電気接続される。それにより、制御ユニットCは信号送信回路Lを介して第1のアンテナA1、第2のアンテナA2、第3のアンテナA3及び第4のアンテナA4に対して複合制御を行うことができ、必要に応じて異なる通信帯域に切り替えて、さまざまな通信要件に対応できる。
【0042】
[実施形態による有益な効果]
本発明による有益な効果の1つとしては、本発明が提供する電子装置及びその多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造では、「第1のアンテナを形成するように第1の金属層を第1の樹脂層に形成し、第2のアンテナを形成するように、第2の金属層を第2の樹脂層に形成する構成」、及び「第1の樹脂層と第2の樹脂層とが異なる誘電率を有することにより、第1のアンテナと第2のアンテナとに異なる通信帯域を持たせる」という技術的手段により、異なる通信帯域のアンテナを同一のFPCに組み込むことにより、マルチインワンアンテナを実現するのみならず、電子装置の内部空間を十分に利用することができ、製品のより多くの機能の設計に有益である。
【0043】
さらに言えば、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを変性液晶ポリマー、変性ポリイミン又は変性エポキシ樹脂により形成することにより、吸水率は従来技術の樹脂層の吸水率(約2%)よりもはるかに小さい0.8%以下に低減することができる。それにより、本発明に係る多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造は過酷な高湿度環境にも対応可能となる。
【0044】
さらに言えば、本発明における多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造において、アンテナの数は、5Gアプリケーションに対応するために、電子装置の必要に応じて合わせて組み合わせることができ、ここでは制限されない。
【0045】
以上に開示される内容は本発明の好ましい実施可能な実施形態に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではないので、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき試された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0046】
D 電子装置
B 多帯域フレキシブル回路基板アンテナ構造
1 第1の基板層
11 第1のコア層
12 第1の樹脂層
2 第1の金属層
21 第1の放射部
22 第1の接続層
3 第2の基板層
31 第2のコア層
32 第2の樹脂層
4 第2の金属層
41 第2の放射部
42 第2の接続層
5 第3の基板層
6 第3の金属層
7 第4の金属層
A1 第1のアンテナ
A2 第2のアンテナ
A3 第3のアンテナ
A4 第4のアンテナ
C 制御ユニット
L 信号送信回路
P1 第1の導電性柱状体
P2 第2の導電性柱状体
S1 第1の槽
S2 第2の槽
図1
図2
図3
図4