(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定のアイドリングストップ条件が満足された場合にエンジンを自動的に停止するともに、所定の再始動条件が満足されたときにエンジンを再始動するアイドリングストップ制御装置において、
車両に搭載され、携帯機との間で無線通信により認証を行う認証手段と、
前記認証手段による認証結果及び認証時刻を認証履歴として記憶する記憶手段と、
乗員の降車を検知する降車検知手段と、
前記認証履歴、及び、前記乗員の降車情報に応じて、エンジンの再始動の許可・禁止を決定するエンジン再始動許可手段と、を備え、
前記認証手段は、車両が走行しているときに、所定時間毎に、繰り返して前記携帯機との間で認証動作を行い
前記記憶手段は、車両が走行しているときに、前記認証手段による認証結果及び認証時刻を認証履歴として記憶し、
前記エンジン再始動許可手段は、アイドリングストップ状態のエンジンを再始動する際に、前記認証手段による認証が成功した場合には、前記エンジンの再始動を許可し、前記認証手段による認証が失敗した場合には、
前記記憶手段に走行中に認証に成功した履歴が記憶されており、かつ、当該認証に成功した後、乗員の降車が検知されていない場合に、エンジンの再始動を許可し、
前記記憶手段に走行中に認証に成功した履歴が記憶されていない場合には、乗員の降車が検知されていなくても、前記エンジンの再始動を禁止する
ことを特徴とするアイドリングストップ制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、スマートエントリ・システム(SES)に対する所謂リレーアタックが問題となっている。リレーアタックでは、まず、2台の無線中継器を用意し、一方の無線中継機を携帯機の近くに、他方の無線中継機を車のドア近辺(車載機の近く)に配置する。そして、車載機から出ている微弱な電波を他方の無線中継器で受信して、増幅し、携帯機の近くにある無線中継機に中継し、この無線中継器が携帯機にID要求信号を伝達する。これに対して携帯機が正しいIDを返すと、2台の無線中継器はこれを中継して車(車載機)に返す。そして、車載機がIDを正規のものと認証すると、車両のドアが解錠されるとともに、スタートボタンを押すことによりエンジンの始動が可能となる。
【0008】
このようなリレーアタックを受けた場合、上述した特許文献1の技術では、乗車時に一度認証が成功すると、乗員が携帯機(スマートキー)を所持していなくても、乗員が乗車している間はエンジンの再始動が禁止されなくなる(すなわち運転継続可能となる)ため、防盗上好ましくない。そのため、アイドリングストップからの再始動性を改善しつつ、さらなる防盗性の向上を図ることのできる技術が望まれていた。
【0009】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、所謂スマートエントリ・システムを搭載した車両において、防盗性のさらなる向上と、認証失敗時(キーロスト時)のアイドリングストップからのエンジン再始動性とを両立することが可能なアイドリングストップ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るアイドリングストップ制御装置は、所定のアイドリングストップ条件が満足された場合にエンジンを自動的に停止するともに、所定の再始動条件が満足されたときにエンジンを再始動するアイドリングストップ制御装置において、車両に搭載され、携帯機との間で無線通信により認証を行う認証手段と、認証手段による認証結果及び認証時刻を認証履歴として記憶する記憶手段と、乗員の降車を検知する降車検知手段と、認証履歴、及び、乗員の降車情報に応じて、エンジンの再始動の許可・禁止を決定するエンジン再始動許可手段とを備え、認証手段が、車両が走行しているときに、所定時間毎に、繰り返して携帯機との間で認証動作を行い、記憶手段が、車両が走行しているときに、認証手段による認証結果及び認証時刻を認証履歴として記憶し、エンジン再始動許可手段が、アイドリングストップ状態のエンジンを再始動する際に、認証手段による認証が成功した場合には、エンジンの再始動を許可し、認証手段による認証が失敗した場合には、記憶手段に走行中に認証に成功した履歴が記憶されており、かつ、当該認証に成功した後、乗員の降車が検知されていない場合に、エンジンの再始動を許可することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るアイドリングストップ制御装置では、上記エンジン再始動許可手段が、アイドリングストップ状態のエンジンを再始動する際に、認証手段による認証が失敗した場合、記憶手段に走行中に認証に成功した履歴が記憶されていない場合には、乗員の降車が検知されていなくても、エンジンの再始動を禁止することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るアイドリングストップ制御装置によれば、車両が走行しているときに、所定時間毎に繰り返して携帯機との間で認証動作が行われる。ここで、走行中は周囲の車両との車間距離が拡がる。すなわち、例えば前後に大出力の無線機を搭載した車両があったとしても該無線機の電波の影響を受け難くなる。よって、走行中に繰り返し(所定時間毎に)認証を実行することにより、携帯機が車内にある場合には、高い確率で認証に成功すると考えられる。そこで、アイドリングストップ状態のエンジンを再始動する際に認証が失敗した場合であっても、走行中に認証に成功した履歴が記憶されており、かつ、当該認証に成功した後、乗員の降車が検知されていない場合、すなわち、直近の認証の失敗が周囲の電波環境などによる一時的なものである可能性が高い場合には、エンジンの再始動が許可される。これにより、認証失敗時(キーロスト時)のアイドリングストップの再始動性を向上できる。一方、乗員の降車が検知されていなくても、走行中に認証に成功した履歴が記憶されていない場合、すなわち、携帯機が車内にない可能性が高い場合には、エンジンの再始動が禁止される。よって、防盗性のさらなる向上を図ることができる。その結果、スマートエントリ・システムを搭載した車両において、防盗性のさらなる向上と、認証失敗時(キーロスト時)のアイドリングストップからのエンジン再始動性とを両立することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係るアイドリングストップ制御装置は、車両の平均車速、又は、平均車速と相関を有する指標値を取得する取得手段をさらに備え、認証手段が、平均車速が低いと判定されるほど、認証動作を繰り返して実行する時間間隔を長くすることが好ましい。
【0014】
この場合、平均車速が低いと判定されるほど、認証動作を繰り返して実行する時間間隔(上記所定時間)が長くされる。ここで、通常、平均速度が低いときには車間距離が詰まり、平均速度が高いときには車間距離が拡がる傾向がある。そのため、例えば、渋滞時などの平均速度が低いときには、自車両の前後に大出力の無線機を搭載した車両がある場合、電波環境が改善されるのに比較的長時間を要することが想定される。よって、このような場合には、認証実行間隔を長くすることにより、認証の確実性を向上させることが可能となる。
【0015】
本発明に係るアイドリングストップ制御装置は、車両の平均車速、又は、平均車速と相関を有する指標値を取得する取得手段をさらに備え、エンジン再始動許可手段が、アイドリングストップ状態のエンジンを再始動する際に、認証手段による認証が失敗した場合、車両停止前の平均車速が低いと判定されるほど、より古い認証履歴まで遡り、再始動の可否を判断することが好ましい。
【0016】
この場合、アイドリングストップ状態のエンジンを再始動する際に認証が失敗した場合、車両停止前の平均車速が低いと判定されるほど、より古い認証履歴まで遡って再始動の可否が判断される。ここで、上述したように、平均速度が低いときには車間距離が詰まり、平均速度が高いときには車間距離が拡がる傾向がある。そのため、例えば、渋滞時などの平均速度が低いときには、自車両の前後に大出力の無線機を搭載した車両がある場合、電波環境が改善されるのに比較的長時間を要することが想定される。よって、このような場合には、より古い認証履歴まで遡ることにより認証の確実性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係るアイドリングストップ制御装置では、記憶手段が、車両が停止しているときには、認証結果及び認証時刻を認証履歴として記憶する動作を停止することが好ましい。
【0018】
この場合、車両が停止しているときには、認証結果及び認証時刻を認証履歴として記憶する動作が停止される。すなわち、周囲の電波環境が悪化するおそれがあるときには認証結果(認証履歴)の記憶が停止される。そのため、認証結果(携帯機の有無)の正当性を高めることができる。
【0019】
なお、本発明に係るアイドリングストップ制御装置では、認証手段が走行中に認証に失敗した場合には、アイドリングストップを禁止してもよい。
【0020】
このようにすれば、認証失敗時(キーロスト時)のアイドリングストップからのエンジン再始動性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、所謂スマートエントリ・システムを搭載した車両において、防盗性のさらなる向上と、認証失敗時(キーロスト時)のアイドリングストップからのエンジン再始動性とを両立することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0024】
まず、
図1を用いて、実施形態に係るアイドリングストップ制御装置1の構成について説明する。
図1は、アイドリングストップ制御装置1の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、アイドリングストップ制御装置1を、所謂スマートエントリ・システム(SES)が適用された車両に搭載した。スマートエントリ・システムは、鍵を用いずにドアロックの解除が可能なキーレスエントリ機能、及び、鍵を用いずにエンジンを始動可能なキーレススタート機能を備えている。
【0025】
アイドリングストップ制御装置1は、例えば、信号待ちなどで一時的に停車しているときにエンジン10を自動的に停止するとともに、発進する際に、スマートエントリ・システムがID認証に成功(再始動を許可)している状態において、運転者のブレーキペダルの踏み込みの解除等を検知してエンジン10を自動的に再始動するアイドリングストップ機能を司る装置である。特に、アイドリングストップ制御装置1は、防盗性のさらなる向上と、認証失敗時(キーロスト時)のアイドリングストップからのエンジン再始動とを両立するする機能を有している。なお、当該機能の詳細については後述する。
【0026】
エンジン10は、例えば、水平対向型の4気筒ガソリンエンジンである。また、エンジン10は、シリンダ内(筒内)に燃料を直接噴射する筒内噴射式のエンジンである。エンジン10では、エアクリーナから吸入された空気が、吸気管に設けられたスロットルバルブにより絞られ、インテークマニホールド11を通り、エンジン10に形成された各気筒に吸入される。
【0027】
エンジン10の各気筒には、シリンダ内に燃料を噴射するインジェクタ12が取り付けられている。インジェクタ12は、高圧燃料ポンプにより加圧された燃料を各気筒の燃焼室内へ直接噴射する。
【0028】
また、各気筒のシリンダヘッドには、混合気に点火する点火プラグ13、及び該点火プラグ13に高電圧を印加するイグナイタ内蔵型コイル14が取り付けられている。エンジン10の各気筒では、吸入された空気とインジェクタ12によって噴射された燃料との混合気が点火プラグ13により点火されて燃焼する。燃焼後の排気ガスは排気管15を通して排出される。
【0029】
エンジン10のカムシャフト近傍には、エンジン10の気筒判別を行うためのカム角センサ16が取り付けられている。また、エンジン10のクランクシャフト10a近傍には、クランクシャフト10aの回転位置を検出するクランク角センサ17が取り付けられている。ここで、クランクシャフト10aの端部には、例えば、2歯欠歯した34歯の突起が10°間隔で形成されたタイミングロータ17aが取り付けられており、クランク角センサ17は、タイミングロータ17aの突起の有無を検出することにより、クランクシャフト10aの回転位置を検出する。なお、カム角センサ16及びクランク角センサ17としては、例えばホール素子やMR素子などを用いたものが好適に用いられる。
【0030】
これらのセンサは、エンジン・コントロールユニット(以下「ECU」という)20に接続されている。また、ECU20には、アクセルペダルの踏込量(アクセルペダル開度)を検出するアクセルセンサ21なども接続されている。ECU20は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するEEPROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。また、ECU20は、インジェクタ12を駆動するインジェクタドライバ、点火信号を出力する出力回路等を備えている。
【0031】
ECU20では、カム角センサ16の出力から気筒が判別され、クランク角センサ17の出力からエンジン回転数が求められる。また、ECU20では、各種センサから入力される検出信号に基づいて、吸入空気量、インテークマニホールド圧、アクセルペダル開度、混合気の空燃比、及びエンジン10の水温や油温等の各種情報が取得される。そして、ECU20は、取得したこれらの各種情報に基づいて、燃料噴射量や点火時期、並びに各種デバイスを制御することによりエンジン10を総合的に制御する。また、ECU20は、後述するアイドリングストップ・コントロールユニット40からのエンジン停止要求信号に基づいてエンジン10を自動停止(アイドリングストップ)し、エンジン再始動要求信号に基づいてエンジン10を再始動する。なお、詳細は後述する。
【0032】
ECU20は、例えばCAN(Controller Area Network)等の車内通信回線100を通して、SECU(スマートエントリ・コントロールユニット)30、アイドリングストップ・コントロールユニット(以下「ISCU」という)40、ビークルダイナミック・コントロールユニット(以下「VDCU」という)50、トランスミッション・コントロールユニット(以下「TCU」という)60、及び、運転支援装置70等と相互に通信可能に接続されている。ECU20は、取得したエンジン回転数やアクセル開度等の情報を、CAN100を介して、SECU30、ISCU40、TCU60などに送信する。また、ECU20は、CAN100を介して、ISCU40から、エンジン停止要求信号、及びエンジン再始動要求信号を受信する。
【0033】
VDCU50には、ブレーキアクチュエータ54のマスタシリンダ圧力(ブレーキ液圧(油圧))を検出するブレーキ液圧センサ51、前後・左右の加速度を検出する加速度センサ52、及び、車両の各車輪の回転速度(車速)を検出する車輪速センサ53等が接続されている。VDCU50は、ブレーキペダルの操作量に応じてブレーキアクチュエータ54を駆動して車両を制動するとともに、車両挙動を各種センサ(例えば、車輪速センサ53、加速度センサ52、操舵角センサ、ヨーレートセンサ等)により検知し、自動加圧によるブレーキ制御とエンジン10のトルク制御により、横滑りを抑制し、旋回時の車両安定性を確保する。VDCU50は、検出したマスタシリンダ圧力(ブレーキ液圧)等のブレーキング情報(制動情報)や車輪速(車速)等を、CAN100を介してSECU30、ISCU40などに送信する。なお、車輪速センサ53は、特許請求の範囲に記載の取得手段として機能する。
【0034】
TCU60には、シフトレバーの選択位置(シフトポジション)を検出するレンジスイッチ61等が接続されている。TCU60は、変速マップに従い、車両の運転状態(例えばアクセルペダル開度、車速、あるいはエンジン回転数)に応じて自動で変速比を変速する。なお、変速マップはTCU60内のEEPROMに格納されている。TCU60は、CAN100を介して、シフトレバーの選択位置(シフトポジション)等の情報をSECU30、ISCU40などに送信する。
【0035】
運転支援装置70は、車両の外部環境(例えば車両前方の走行環境)を検知して前方障害物に対する警報や自動制動(自動ブレーキ)を行う機能(自動制動機能/プリクラッシュブレーキ機能)を有している。また、運転支援装置70は、検知した先行車両に対して追従制御や警報制御を行うことにより運転者の運転操作を支援する機能なども有している。
【0036】
運転支援装置70は、車両前方の画像を取得する例えば一対のカメラからなるステレオカメラ71で撮像した画像データを処理して、例えば、走行路の状況や、先行車両、障害物等の車両外部の走行環境(外部環境)を検知する。その際に、運転支援装置70は、撮像した画像内からエッジ抽出やパターン認識処理などによって先行車を抽出し、左右の取得画像中における先行車位置の違いを基にして三角測量方式により先行車との車間距離を求めるとともに、前のフレーム時に求めた距離に対する変化量から相対速度を求める。また、運転支援装置70は、これらの情報から渋滞情報を生成する。運転支援装置70は、検知したこれらの外部環境情報や渋滞情報等を、CAN100を介して、ECU20、SECU30、ISCU40、VDCU50などに送信する。
【0037】
SECU30には、例えば、車両のインストルメントパネルに設けられたプッシュ式のスイッチであって、エンジン10の始動操作を受け付けるエンジンスタートスイッチ35、車両のドアの開閉状態を検出するドアスイッチ36、車両のドアを開閉するドアロック機構37、及び、電波の送受信を行うアンテナ等が接続されている。また、SECU30は、CAN100を介して、ECU20、VDCU50、TCU60、及び、運転支援装置70から、上述した、エンジン回転数、シフトポジション、車速情報、及び、渋滞情報等を受信する。
【0038】
SECU30は、基本的な機能として、乗員(運転者)が携帯機80(スマートキー)を携行している場合に、乗員(運転者)が車両に接近することによって自動的にドアロック機構37のロック解除(開錠)を行なうとともに、エンジン10を始動可能な状態にする。
【0039】
より具体的には、SECU30は、乗員(運転者)によって携行される携帯機80が接近した際に、携帯機80に対してIDコードの送信を促すリクエスト信号を送信するとともに、携帯機80が発信するIDコードを含む信号を受信する。SECU30は、携帯機80から受信したIDコードと、記憶しているIDコードとの照合を行い、双方のIDコードが一致した場合(すなわち、ID認証に成功した場合)は、ドアロック機構37に制御信号を出力してロックを解除するとともに、ECU20に制御信号(エンジン始動許可情報)を出力してエンジン10を始動可能な状態とする。そのため、その後、乗員(運転者)がエンジンスタートスイッチ35を押下すると、スタータモータ等によってエンジン10がクランキングされ、エンジン10が始動される。
【0040】
特に、SECU30、及び、後述するISCU40は、防盗性のさらなる向上と、認証失敗時(キーロスト時)のアイドリングストップからのエンジン再始動とを両立する機能を有している。
【0041】
そのため、SECU30は、認証部31、記憶部32、降車検知部33、エンジン再始動許可部34を機能的に備えている。SECU30は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するEEPROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。SECU30では、EEPROMに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、認証部31、記憶部32、降車検知部33、エンジン再始動許可部34の機能が実現される。
【0042】
認証部31は、携帯機80との間で無線通信を用いて、上述したようにID認証を行う。すなわち、認証部31は、特許請求の範囲に記載の認証手段として機能する。特に、認証部31は、車両が走行しているときに、所定時間毎に、繰り返して携帯機80との間でID認証動作を行う。その際に、認証部31は、平均車速が低いと判定されるほど、ID認証を繰り返して実行する時間間隔(上記所定時間)を長くすることが好ましい。なお、車両の平均車速は、車速情報や渋滞情報に基づいて求めることができる。認証部31による認証結果は、記憶部32等に出力される。
【0043】
記憶部32は、RAM等のメモリからなり、認証部31による認証結果及び認証時刻を認証履歴として記憶する。よって、記憶部32は、車両が走行しているときに、認証結果及び認証時刻を認証履歴として記憶する。すなわち、記憶部32は、特許請求の範囲に記載の記憶手段として機能する。なお、記憶部32は、車両が停止しているときに(停車中)は、認証結果及び認証時刻を認証履歴として記憶する動作を停止する。記憶部32に記憶されている認証履歴情報は、エンジン再始動許可部34によって読み出される。なお、認証時刻は、何時何分何秒といった絶対的な時刻の他、例えば、何分前といった相対的な時刻でもよい。
【0044】
降車検知部33は、乗員(運転者)の降車を検知する。すなわち、降車検知部33は、特許請求の範囲に記載の降車検知手段として機能する。なお、降車検知部33は、例えば、ドアスイッチ36の検出結果、ドアロック機構37の駆動履歴に加えて、着座センサの出力、ステアリングホイールの操作状態(又は接触)、監視モニタ(カメラ)の画像情報などに基づいて、乗員(運転者)が降車したか否かを検知することが好ましい。降車検知部33により取得された乗員(運転者)の降車情報は、エンジン再始動許可部34に出力される。
【0045】
エンジン再始動許可部34は、上述した認証履歴、及び、降車情報に基づいて、エンジン10の再始動の許可・禁止を決定する。すなわち、エンジン再始動許可部34は、特許請求の範囲に記載のエンジン再始動許可手段として機能する。より具体的には、エンジン再始動許可部34は、アイドリングストップ状態のエンジン10を再始動する際に、認証部31による認証が成功した場合には、エンジン10の再始動を許可する。
【0046】
一方、エンジン再始動許可部34は、アイドリングストップ状態のエンジン10を再始動する際に、認証部31による認証が失敗した場合、記憶部32に走行中に認証に成功した履歴が記憶されており、かつ、当該認証に成功した後、運転者(乗員)の降車が検知されていない場合には、エンジン10の再始動を許可する。しかしながら、エンジン再始動許可部34は、記憶部32に走行中に認証に成功した履歴が記憶されていないとき(又は、認証に失敗した旨の情報が記憶されているとき)には、運転者(乗員)の降車が検知されていなくても、エンジン10の再始動を禁止する。
【0047】
なお、平均車速が低くなるほど認証動作を繰り返して実行する時間間隔を長くすることに代えて(すなわち認証実行間隔を変えることなく)、アイドリングストップ状態のエンジン10を再始動する際に認証が失敗した場合に、エンジン再始動許可部34が、車両停止前の平均車速が低いと判定されるほど、より古い認証履歴まで遡り、再始動の可否を判断するようにしてもよい。なお、エンジン再始動許可部34により生成されたエンジン10の再始動を許可する許可情報、又は禁止する禁止情報は、CAN100を介してISCU40に出力される。
【0048】
ISCU40は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するEEPROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。
【0049】
ISCU40は、燃費を低減するとともに、排出されるエミッションを低減するために、所定のアイドリングストップ条件が満足された場合に、エンジン停止要求信号をCAN100を介してECU20に出力してエンジン10を自動的に停止する。その後、SECU30からのエンジン再始動許可情報が受信され、かつ、所定のアイドリングストップ解除条件(再始動条件)が満足されたときに、ISCU40は、エンジン再始動要求信号をCAN100を介してECU20に出力してエンジン10を再始動する。
【0050】
より詳細には、ISCU40は、例えば、ブレーキペダルが踏まれていること(すなわち、ブレーキ液圧が再始動許可ブレーキ液圧(再始動許可しきい値)よりも大きいこと)、車速がゼロであること、及び/又は、シフトポジションがD(ドライブ)レンジであること等が成立した場合に、エンジン停止要求信号をCAN100を介してECU20に送信し、エンジン10に対する燃料噴射及び点火を停止することにより、エンジン10を停止しアイドリングストップを実行する。一方、ISCU40は、SECU30からのエンジン再始動許可情報が受信されており、かつ、例えば、ブレーキペダルの踏み込みが解除されたとき(すなわち、ブレーキ液圧が再始動許可ブレーキ液圧以下になったとき)、又は、シフトポジションがP(パーキング)レンジに入れられたときに、エンジン10の再始動を要求するエンジン再始動要求信号をCAN100を介してECU20に送信し、エンジン10を再始動する。
【0051】
なお、SECU30を構成する認証部31が走行中に認証に失敗した場合には、アイドリングストップの実行を禁止する構成としてもよい。
【0052】
ECU20は、ISCU40からのエンジン再始動要求信号を受信したときに、エンジン10を再始動する。すなわち、ECU20は、例えばスタータモータを起動してエンジン10のクランキングを開始する。そして、所定の燃料噴射タイミングでインジェクタ12を駆動して燃料を噴射し、その後、所定の点火タイミングで燃料と空気の混合気に点火を行うことによりエンジンを再始動する。
【0053】
次に、
図2及び
図3を併せて参照しつつ、アイドリングストップ制御装置1の動作について説明する。
図2及び
図3は、アイドリングストップ制御装置1によるアイドリングストップ処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、主としてSECU30及びISCU40において、所定時間毎に繰り返して実行される。
【0054】
まず、ステップS100では、イグニッション・オン状態であるか否かについての判断が行われる。ここで、イグニッション・オン状態である場合には、ステップS102に処理が移行する。一方、イグニッション・オン状態でないときには、イグニッション・オン状態となるまで、本ステップが繰り返して実行される。
【0055】
次に、ステップS102では、走行中に、所定時間が経過したか否かについての判断が行われる。ここで、所定時間が経過した場合には、ステップS104に処理が移行する。一方、所定時間が経過していないときには、所定時間が経過するまで、本ステップが繰り返して実行される。
【0056】
続いて、ステップS104では、携帯機80(スマートキー)の存在確認(ID認証)が行われる。そして、ステップS106において、携帯機80が存在しているか否か(ID認証に成功したか否か)についての判断が行われる。ここで、携帯機80が存在している場合(ID認証に成功した場合)には、ステップS108に処理が移行する。一方、携帯機80が存在していないとき(ID認証に失敗したとき)には、ステップS110に処理が移行する。なお、ID認証に失敗した結果を認証履歴に追加(記憶)してもよい。
【0057】
ステップS108では、ID認証に成功した結果(確認履歴)が認証時間と併せて認証履歴に追加(記憶)される。その後、ステップS120に処理が移行する。
【0058】
ステップS110では、平均車速等に基づいて渋滞判定が行われる。そして、ステップS112において、渋滞しているか否かについての判断が行われる。ここで、渋滞していると判断された場合には、ステップS114に処理が移行する。一方、渋滞していないと判断されたときには、ステップS116に処理が移行する。
【0059】
ステップS114では、過去β秒内に確認履歴(ID認証に成功した履歴)があり、かつ、ID認証に成功した後に乗員の降車が未検知であるか否かについての判断が行われる。ここで、確認履歴があり、かつ、降車が未検知である場合には、ステップS120に処理が移行する。一方、確認履歴がない(又はID認証に失敗した履歴がある)場合、又は、降車が検知されているときには、ステップS118に処理が移行する。
【0060】
ステップS116では、α(<β)秒内に確認履歴(ID認証に成功した履歴)があり、かつ、ID認証に成功した後に乗員の降車が未検知であるか否かについての判断が行われる。ここで、確認履歴があり、かつ、降車が未検知である場合には、ステップS120に処理が移行する。一方、認証履歴がない(又はID認証に失敗した履歴がある)場合、又は、降車が検知されているときには、ステップS118に処理が移行する。
【0061】
ステップS118では、エンジン再始動禁止状態(キーロスト状態)とされる。一方、ステップS120では、エンジン再始動許可状態とされる。
【0062】
次に、ステップS122では、アイドリングストップ禁止フラグが「1」であるか否か(セットされているか否か)についての判断が行われる。ここで、アイドリングストップ禁止フラグが「1」である場合には、ステップS128に処理が移行する。一方、アイドリングストップ禁止フラグが「0」である場合には、ステップS124に処理が移行する。
【0063】
ステップS124では、エンジン10が稼働中であり、かつ、エンジン再始動禁止状態(キーロスト状態)であるか否かについての判断が行われる。ここで、上記条件が肯定された場合には、ステップS126に処理が移行する。一方、上記条件が否定されたときには、ステップS130に処理が移行する。
【0064】
ステップS126では、アイドリングストップ禁止フラグが「1」にセットされる。その後、ステップS128に処理が移行する。
【0065】
ステップS128では、アイドリングストップの実行が禁止され、エンジン10の稼働が継続される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0066】
ステップS130では、エンジン10が稼働しているか否かについての判断が行われる。ここで、エンジン10が稼働している場合は、ステップS132に処理が移行する。一方、エンジン10が停止しているとき(稼働していないとき)には、ステップS136に処理が移行する。
【0067】
ステップS132では、所定のアイドリングストップ条件が成立したか否かについての判断が行われる。ここで、所定のアイドリングストップ条件が成立した場合には、ステップS134に処理が移行する。一方、所定のアイドリングストップ条件が成立していないときには、本処理から一旦抜ける。なお、アイドリングストップ条件については、上述したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0068】
ステップS134では、アイドリングストップが実行されてエンジン10が自動的に停止される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0069】
アイドリングストップ中の場合、ステップS136では、所定の再始動条件が成立したか否かについての判断が行われる。ここで、所定の再始動条件が成立した場合には、ステップS138に処理が移行する。一方、所定の再始動条件が成立していないときには、本処理から一旦抜ける。なお、再始動条件については、上述したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0070】
ステップS138では、エンジン10が自動的に再始動される。そして、その後、本処理から一旦抜ける。なお、上述したステップS122,S126,S128の処理(アイドリングストップ禁止処理)を設けることは必須ではない。
【0071】
以上、説明したように、本実施形態によれば、車両が走行しているときに、所定時間毎に繰り返して携帯機80との間でID認証動作が行われる。ここで、走行中は周囲の車両との車間距離が拡がる。すなわち、例えば前後に大出力の無線機を搭載した車両があったとしても当該無線機の電波の影響を受け難くなる。よって、走行中に繰り返し(所定時間毎に)ID認証を実行することにより、携帯機80が車内にある場合には、高い確率でID認証に成功すると考えられる。そこで、アイドリングストップ状態のエンジン10を再始動する際にID認証が失敗した場合であっても、走行中にID認証に成功した履歴が記憶されており、かつ、当該認証に成功した後、運転者(乗員)の降車が検知されていない場合、すなわち、ID認証の失敗が周囲の電波環境などによる一時的なものである可能性が高い場合には、エンジン10の再始動が許可される。これにより、認証失敗時(キーロスト時)のアイドリングストップの再始動性を向上できる。一方、運転者(乗員)の降車が検知されていなくても、走行中にID認証に成功した履歴が記憶されていない場合(又は、ID認証に失敗した情報が記憶されている場合)、すなわち、携帯機80が車内にない可能性が高い場合には、エンジン10の再始動が禁止される。よって、防盗性のさらなる向上を図ることができる。その結果、所謂スマートエントリ・システムを搭載した車両において、防盗性のさらなる向上と、認証失敗時(キーロスト時)のアイドリングストップからのエンジン再始動性とを両立することが可能となる。
【0072】
本実施形態によれば、アイドリングストップ状態のエンジン10を再始動する際にID認証が失敗した場合、車両停止前の平均車速が低いと判定されるほど、より古い履歴まで遡って再始動の可否が判断されるため、ID認証の確実性を向上させることができる。
【0073】
本実施形態によれば、車両が停止しているときに(停車中)は、認証結果及び認証時刻を認証履歴として記憶する動作が停止される。すなわち、周囲の電波環境が悪化するおそれがあるときには認証結果(認証履歴)の記憶が停止される。そのため、認証結果(携帯機80の有無)の正当性を高めることができる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態のシステム構成は一例であり、本発明のシステム構成は上記実施形態には限られない。例えば、ECU20とSECU30とISCU40とを一つのユニットに統合してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、SECU30がCAN100を介して他のコントロールユニットからデータを取得する構成としたが、上述した各種センサを直接SECU30に接続(入力)する構成としてもよい。
【0076】
さらに、上記実施形態では、運転支援装置70から渋滞情報を取得したが、例えば、カーナビゲーションシステムなどから渋滞情報を取得する構成としてもよい。なお、上述した認証動作の繰り返し周期(所定時間)は任意に設定することができる。
【0077】
上記実施形態では、アイドリングストップ状態のエンジン10を再始動する際にID認証が失敗した場合、車両停止前の平均車速が低いと判定されるほど、より古い履歴まで遡って再始動の可否を判断したが、このような方法に代えて、例えば、走行中の平均車速が低いと判定されるほど、ID認証を繰り返して実行する時間間隔を長くしてもよい。このようにしても、ID認証の確実性を向上させることができる。