特許第6697048号(P6697048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6697048フッ素化有機化合物を製造するための反応システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697048
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】フッ素化有機化合物を製造するための反応システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/20 20060101AFI20200511BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20200511BHJP
   C07C 17/087 20060101ALI20200511BHJP
   C07C 17/25 20060101ALI20200511BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200511BHJP
【FI】
   C07C17/20
   C07C21/18
   C07C17/087
   C07C17/25
   !C07B61/00 300
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-179091(P2018-179091)
(22)【出願日】2018年9月25日
(62)【分割の表示】特願2016-509114(P2016-509114)の分割
【原出願日】2014年4月18日
(65)【公開番号】特開2019-14730(P2019-14730A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2018年10月25日
(31)【優先権主張番号】61/813,393
(32)【優先日】2013年4月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】ベクテセヴィック,セルマ
(72)【発明者】
【氏名】コプカリ,ハルク
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ハイユー
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−227675(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102001910(CN,A)
【文献】 特表2013−510148(JP,A)
【文献】 特開2010−043080(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/049744(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/126679(WO,A1)
【文献】 特開2005−305434(JP,A)
【文献】 米国特許第06388155(US,B1)
【文献】 米国特許第03410057(US,A)
【文献】 特表2009−535596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)液体状1,1,2,3−テトラクロロプロペン(1230xa)及び蒸気状1230xaを含む出発材料を与え;
(b)液体状1230xaから蒸気状1230xaを分離し;そして
(c)蒸気状1230xaを、1233xfを形成するのに有効な条件下でフッ化水素:HFと接触させる;
ことを含む、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)の製造方法。
【請求項2】
有効な条件がフッ素化触媒の存在を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フッ素化触媒が、Cr、FeCl/C、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/炭素、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、CoCl/AlF、NiCl/AlF、Crのフッ素化種、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
分離工程(b)を脱同伴装置内で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
脱同伴装置が、塔、ノックアウトポット、フィルター、又はこれらの組み合わせである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
脱同伴装置がノックアウトポットであり、ノックアウトポットが場合によって内部コアレッサーを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
内部コアレッサーが、充填材、メッシュ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
充填材がポールリングなどを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
塔が、充填塔、棚段塔、又はこれらの組み合わせである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
塔が充填塔を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
充填塔が、不規則充填材、規則充填材、羽根体アセンブリ、デミスター、又はこれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(a)液体状1,1,2,3−テトラクロロプロペン(1230xa)及び蒸気状1230xaを含む出発材料を与え;
(b)液体状1230xaから蒸気状1230xaを分離し;そして
(c)蒸気状1230xaを、1233xfを形成するのに有効な条件下でフッ化水素:HFと接触させることを含む方法によって、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)を製造する工程、ならびに
前工程で製造された2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)を、244bbを形成するのに有効な条件下でフッ化水素(HF)と接触させることを含む、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)の製造方法。
【請求項13】
(a)液体状1,1,2,3−テトラクロロプロペン(1230xa)及び蒸気状1230xaを含む出発材料を与え;
(b)液体状1230xaから蒸気状1230xaを分離し;そして
(c)蒸気状1230xaを、1233xfを形成するのに有効な条件下でフッ化水素:HFと接触させることを含む方法によって、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)を製造する工程、
前工程で得た2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)を、244bbを形成するのに有効な条件下でフッ化水素(HF)と接触させることを含む方法で、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)を製造する工程、ならびに
前工程で製造された2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)を、1234yfを形成するのに有効な条件下で脱塩化水素化触媒と接触させることを含む、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の製造方法。
【請求項14】
(a)1,1,2,3−テトラクロロプロペン(1230xaを気化させ、ここで1230xaの一部は非気化状態で保持され;
(b)1230xaの気化部分から1230xaの非気化部分を分離し;そして
(c)1230xaの気化部分を、HFの存在下、1233xfを形成するのに有効な条件下で蒸気相フッ素化触媒を含む反応器に供給する;
ことを含み、
ここで、蒸気相フッ素化触媒の寿命は、分離工程(b)を有しないで、気化及び非気化1230xaを反応器に供給する場合の触媒の寿命と比較して延びている、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xfの製造において用いる蒸気相フッ素化触媒に関する触媒寿命を延ばす方法。
【請求項15】
(a)液体状の2,3,3,3−テトラクロロプロペン(1230xf)及び蒸気状の1230xfを含む出発材料を与え;
(b)液体状の1230xfから蒸気状の1230xfを分離し;そして
(c)蒸気状の1230xfを、1233xfを形成するのに有効な条件下でフッ化水素:HFと接触させる;
ことを含む、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)の製造方法。
【請求項16】
(a)液体状の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(240db)及び蒸気状の240dbを含む出発材料を与え;
(b)液体状の240dbから蒸気状の240dbを分離し;そして
(c)蒸気状の240dbを、1233xfを形成するのに有効な条件下でフッ化水素:HFと接触させる;
ことを含む、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、フッ素化有機化合物を製造するための反応システム及び方法;より詳しくは、例えば2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の製造において用いることができる2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)のような化合物を製造するプロセスにおいて有用な脱同伴装置を含む反応システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]テトラフルオロプロペン(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)など)のようなヒドロフルオロオレフィン(HFO)は、有効な冷媒、熱伝達媒体、噴射剤、起泡剤、発泡剤、気体状誘電体、滅菌剤キャリア、重合媒体、粒状物除去流体、キャリア流体、バフ研磨剤、置換乾燥剤、及び動力サイクル作動流体であることが知られている。クロロフルオロカーボン(CFC)及びヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)(これらは両方とも地球のオゾン層を損傷する可能性がある)とは異なり、HFOは塩素を含まず、したがってオゾン層を脅威にさらさない。HFO−1234yfはまた、低い毒性を有する低地球温暖化化合物であることが示されており、したがって可動型空調における冷媒に関する益々厳しくなっている要求を満足することができる。したがって、HFO−1234yfを含む組成物は、上述の用途の多くにおいて用いるように開発されている材料の中に含まれる。
【0003】
[0003]HFO−1234yfに関する1つの製造方法は、出発原材料として1,1,2,3−テトラクロロプロペン(1230xa)を用いる。このプロセスは次の3つの工程から構成される。
【0004】
(1)固体触媒を充填した蒸気相反応器内において、1230xa+3HF→2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)+3HCl;
(2)液体触媒を充填した液相反応器内において、1233xf+HF→2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb);及び
(3)蒸気相反応器内において、244bb→1234yf+HCl。
【0005】
[0004]1つの方法においては、工程(1)は、当該技術において公知の酸化クロムなどのようなフッ素化触媒の存在下で行う。この触媒は一般に非常に活性及び選択性であるが、これは反応の過程中において時間経過と共にゆっくりと失活する(活性を失う)傾向がある。失活は次に収率損失を導き、経済的に不利なプロセスをもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0005]したがって、とりわけ1233xfへの1230xaの転化において触媒寿命及び安定性を延ばす反応器システム及び方法に対する継続した必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0006]本発明は、一態様においては、気化器;気化器と流体連絡しており、蒸気出口を有する脱同伴装置;及び、脱同伴装置の蒸気出口と流体連絡している蒸気相反応器;を含む反応器システムに関する。本発明によって意図されている脱同伴装置としては、例えば、限定なしに、充填塔及び棚段塔のような塔、ノックアウトポット、フィルターなど、又はこれらの組み合わせなどの液体−蒸気分離装置が挙げられる。
【0008】
[0007]本発明はまた、(a)液体状1,1,2,3−テトラクロロプロペン(1230xa)及び蒸気状1230xaを含む出発材料を与え;(b)例えば脱同伴装置内において、液体状1230xaから蒸気状1230xaを分離し;そして(c)蒸気状1230xaを、1233xfを形成するのに有効な条件下でフッ化水素:HFと接触させる;ことを含む、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)のようなフッ素化有機化合物の製造方法にも関する。かくして製造される1233xfは、244bbのような他のフッ素化有機化合物(これらは、次に1234yfを形成するために用いることができる)を形成するための供給材料として用いることができる。
【0009】
[0008]1230xaのような非気化(液体)供給材料は1230xaのような気化液体に同伴して、その後に触媒失活に寄与する可能性があることが見出されたので、本発明は、触媒との接触前に1230xaのような非気化(液体)供給材料の実質的に全部を除去することによって触媒寿命を有益に延ばす。好ましい実施においては、供給材料は1230xaであり、蒸気状態で触媒と接触させる。したがって、限定なしに、本発明は実質的に蒸気形態又は純粋な蒸気形態である1230xaのような供給材料を用いることによって触媒安定性を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0009]発明の上記の概要及び一般的記載並びに続く詳細な説明は例示及び例証であり、添付の特許請求の範囲において規定する発明を限定するものではない。他の特徴及び態様並びに修正は、本記載から明らかになり、発明の範囲内である。米国特許8258355及び8084653の全ての内容を参照として本明細書中に包含する。
【0011】
[0010]一態様においては、本発明は、気化器;気化器と流体連絡しており、蒸気出口及び好ましくは液体出口を有する脱同伴装置(この用語は、同じか又は異なっていてよい1以上の脱同伴装置を包含する);及び、脱同伴装置の蒸気出口と流体連絡しているフッ素化反応器のような蒸気相反応器;を含む反応器システムに関する。好ましくは、脱同伴装置は、限定なしに充填塔、棚段塔のような塔、ノックアウトポット、フィルター装置、又はこれらの組み合わせなどの当該技術において公知の液体−蒸気分離装置を含む。
【0012】
[0011]1つの実施においては、脱同伴装置は、単独か又は他の脱同伴装置と組み合わせて用いることができるノックアウトポット(この用語は、同じか又は異なっていてよい1以上のノックアウトポットを包含する)を含み;ノックアウトポットは、例えば、実質的に蒸気であるが、若干の非気化状態の1230xaを含む1203xaのような流体供給材料から液体粒子をスクラビング除去するためのコアレッサーのような内部装置を有するか又は有しないものであってよく;好ましい実施においては、脱同伴装置は、充填材(例えばポールリング)、メッシュなど、及びこれらの組み合わせのような内部コアレッサーを含むノックアウトポットである。限定なしに、ノックアウトポットは、好ましくは、例えば気化器と流体連絡している入口、及び2つの出口(1つは例えば反応器と流体連絡している蒸気出口、他は例えば排出又は再循環のための液体出口)を有する円筒形の形状のものである。1つの実施においては、入口はノックアウトポットの中央部又はその付近に配置される。入口は、円筒の面に対して垂直、或いは場合によっては円筒の面に対して接線方向であってよい。1つの実施においては、ノックアウトポットは、脱同伴された液体を排出するための出口として機能する、底部又はその付近に配置されている出口を有し;他の実施においては、ノックアウトポットは、気化供給材料、例えば1230xaを反応器中に送るための出口として機能する、頂部又はその付近に配置されている出口を有する。場合によっては、メッシュ、又はより好ましくは充填材(当該技術において公知なように、限定なしにポールリングなど、及びその組み合わせを包含する)の一部分を入口と頂部出口との間に設置して、更なる液体ミスト又は粒子の分離を促進することができる。1230xaのような供給材料がノックアウトポットに導入されると、その中の液体はポッ
トの底部において回収され、一方、蒸気は頂部出口を通って反応器に送られる。回収された液体は触媒と接触しないので、触媒寿命が向上する。
【0013】
[0012]他の態様においては、脱同伴装置は、単独か又は他の脱同伴装置、例えば上記に記載したノックアウトポット)と組み合わせて用いることができる塔(この用語は、同じか又は異なっていてよい1以上の塔を包含する)である。塔は、充填塔、棚段塔、又はこれらの組み合わせであってよく;1つの実施においては、塔は充填塔であり、充填材は、不規則充填材、規則充填材、羽根体アセンブリ(例えばFlexichevron(登録商標))、デミスターなど、或いはこれらの組み合わせを含む。
【0014】
[0013]他の態様においては、本発明は、工程(a)、(b)、及び(c)を含む2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)の製造方法に関する。工程(a)においては、好ましくは式I、II、及び/又はIII:
CX=CCl−CHX (式I);
CX−CCl=CH (式II);
CX−CHCl−CHX (式III);
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはFではない)
にしたがう1種類以上の塩素化化合物から選択される出発材料を与え;好ましくはこれらの化合物は少なくとも1つの塩素を含み、より好ましくはXの大部分は塩素であり、更により好ましくは全てのXは塩素である。好ましくは、この方法は、一般に少なくとも3つの反応工程を含む。1つの実施においては、出発材料は1,1,2,3−テトラクロロプロペン(1230xa、TCPとしても知られる)である。他の実施においては、出発材料は1,1,1,2−テトラクロロプロペン(1230xf)であり;他の実施においては、これは1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(240db)である。当該技術において公知の他の出発材料及びその組み合わせが意図される。出発材料、例えば1230xaは、蒸気及び液体(非気化)状態である。当業者に認められるように、1230xaは高い沸点(162℃)を有し、したがって、通常はそれを蒸気相フッ素化反応器に導入する前に気化器内で気化しなければならない。ここで、気化器から繰り越される非気化の液体1230xaが同伴して、触媒の失活を引き起こす可能性があることが見出され;更にここで、1230xaの気化中において若干のオリゴマーも形成される可能性があり、これも触媒を失活させる可能性があることが分かった。とりわけ、本発明の実施によって、この同伴された液体及び/又はオリゴマー、及び/又は気化器の温度よりも高い沸点を有する任意の化合物が(本発明の分離工程において)除去される。
【0015】
[0014]本発明方法の工程(b)は、液体出発材料(例えば1230xa)から蒸気状の出発材料(例えば1230xa)を分離することを含み;工程(c)は、蒸気状の出発材料(例えば1230xa)を、1233xfを形成するのに有効な条件下でフッ化水素:HFと接触させることである。好ましくは、有効な条件は、限定なしに、Cr、FeCl/C、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/炭素、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、CoCl/AlF、NiCl/AlF、Crのフッ素化種、及びこれらの混合物からなる群から選択されるフッ素化触媒の存在が挙げられる。Crのフッ素化種が好ましい。
【0016】
[0015]好ましい実施においては、分離工程(b)は、ここに記載する脱同伴装置(この用語は1以上の脱同伴装置を包含する)内で行う。
[0016]本発明は、例えば、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)のような化合物を製造するためのより大きなプロセスの一部として用いることができる。例
えば、本発明方法は、上記に記載の1234yfを製造するための3工程プロセスの第1工程であってよい。
【0017】
[0017]好ましい態様においては、本発明方法は、限定なしに次の工程:(a)気化器を通してHF及び1230xaを流し、定期的にノックアウトポットを開放してポット内に貯留された液体を排液し;(b)実質的に蒸気状(純粋)な1230xa供給材料を、1230xaの少なくとも一部をフッ素化してHFO−1233xfを含む反応生成物を生成させるのに有効な条件にかける;ことを含み;1つの実施においては、この反応生成物は、液体形態の若干の1230xaを含む1230xa供給材料を用いて、即ちここに記載する脱同伴装置にかけない供給材料を用いて製造される反応生成物と比べてより多いHFO−1233xfを含む。本発明を実施することにより、実質的に液体を含まない1230xaの供給材料は、触媒寿命を延ばすのに有効である。1230xaを製造する方法は、例えば米国特許3,823,195において開示されており;本発明は、例えば米国出願12/338,466(これらの両方の内容は参照として本明細書中に包含する)において開示されている1233xfを製造する方法に適用することができる。
【0018】
[0018]本発明の一態様においては、1233xfを製造するための蒸気相ヒドロフッ素化に関して、本発明にしたがって脱同伴した後、フッ化水素ガス(HF)及び1230xaを、蒸気相フッ素化反応器内の触媒床を通して連続的に供給する。HFと1230xaとのモル比は、約1:1〜約50:1、好ましくは約10:1〜約20:1である。HFと1230xaとの間の反応は、好ましくは、約150℃〜約400℃(好ましくは約150℃〜約350℃)の温度、及び約0psig〜約500psig(好ましくは約20psig〜約200psig)の圧力で行う。触媒は、非フッ素化又は好ましくはフッ素化酸化クロムである。触媒は、触媒の状態に応じて使用前に無水フッ化水素:HF(フッ化水素ガス)で活性化することができる(又は活性化しなくてもよい)。
【0019】
[0019]ヒドロフッ素化反応は、好ましくは約50%以上、好ましくは約90%以上の転化率を達成するように行う。転化率は、消費された反応物質(1230xa)のモル数を、反応器に供給された反応物質(1230xa)のモル数で割って100をかけることによって算出される。達成される1233xfへの選択率は、好ましくは約60%以上、より好ましくは約80%以上である。選択率は、形成された生成物(1233xf)のモル数を、消費された反応物質のモル数で割って100をかけることによって算出される。
【0020】
ヒドロフッ素化は、耐腐食性の反応容器内で行うことができる。耐腐食性の材料の例は、ハステロイ、ニッケル、インコロイ、インコネル、モネル、及びフルオロポリマーライニングである。容器は固定触媒床又は流動床である。所望の場合には、運転中に窒素又はアルゴンのような不活性ガスを反応器内において用いることができる。
【0021】
[0020]しかしながら、上記のヒドロフッ素化工程は必ずしも本発明に対する限定ではなく、当該技術において公知の他の派生形又は別の方法を含ませることもできる。
[0021]好ましくは、1230xaをフッ素化反応器中に供給する前に、それを乾燥する。乾燥媒体の非限定的な例は、3Aモレキュラーシーブ及びDrierite(登録商標)である。
【0022】
[0022]好ましくは、1230xaと触媒との接触時間は約15〜約60秒間の範囲であってよいが、より長いか又はより短い時間を用いることができる。
[0023]一般に、多段階反応器配列において存在する可能性がある任意の中間体流出流を含むフッ素化反応工程からの流出流は、処理して所望の分離度及び/又は他の処理度を達成することができる。例えば反応器流出流が1233xfを含む態様においては、流出流は一般に、HCl、HF、1232xf、244bb、及び未反応の1230xaも含む
。反応生成物のこれらの成分の幾つかの部分又は実質的に全部は、中和及び蒸留のような当該技術において公知の任意の分離又は精製法を用いて反応混合物から回収することができる。未反応の1230xa及びHFは、完全か又は部分的に再循環して、所望の1233xfの全収率を向上させることができると予測される。形成される1232xf及び任意の1231異性体も再循環することができる。場合によっては、しかしながら好ましくは、次にフッ素化反応の結果物から塩化水素を回収する。塩化水素の回収は通常の蒸留によって行い、それを留出物から除去する。
【0023】
[0024]或いは、HClは、水又は苛性スクラバーを用いることによって回収又は除去することができる。水抽出器を用いる場合には、HClは水溶液として除去される。苛性スクラバーを用いる場合には、HClは水溶液中の塩化物塩として系から除去される。
【0024】
[0025]HClはまた、係属中の出願の12/512,955及び12/611,288において開示されているように1233xfと一緒に次の反応工程に供給することもできる。
以下に本発明の実施態様を示す。
態様1
気化器;
気化器と流体連絡しており、蒸気出口を有する脱同伴装置;及び
脱同伴装置の蒸気出口と流体連絡している蒸気相反応器;
を含む反応器システム。
態様2
脱同伴装置が、塔、ノックアウトポット、フィルター、又はこれらの組み合わせである、態様1に記載の反応器システム。
態様3
塔が、充填塔、棚段塔、又はこれらの組み合わせである、態様1に記載の反応器システム。
態様4
脱同伴装置が液体出口を更に含む、態様1に記載の反応器システム。
態様5
ノックアウトポットが内部コアレッサーを更に含む、態様2に記載の反応器システム。
態様6
内部コアレッサーが、充填材、メッシュ、又はこれらの組み合わせを含む、態様5に記載の反応器システム。
態様7
充填材がポールリングなどを含む、態様6に記載の反応器システム。
態様8
脱同伴装置が充填塔を含む、態様3に記載の反応器システム。
態様9
充填塔が、不規則充填材、規則充填材、羽根体アセンブリ、デミスター、又はこれらの組み合わせを含む、態様8に記載の反応器システム。
態様10
(a)、液体状1,1,2,3−テトラクロロプロペン(1230xa)及び蒸気状1230xaを含む出発材料を与え;
(b)、液体状1230xaから蒸気状1230xaを分離し;そして
(c)蒸気状1230xaを、1233xfを形成するのに有効な条件下でフッ化水素:HFと接触させる;
ことを含む、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)の製造方法。
態様11
有効な条件がフッ素化触媒の存在を含む、態様10に記載の方法。
態様12
フッ素化触媒が、Cr、FeCl/C、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/炭素、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、CoCl/AlF、NiCl/AlF、Crのフッ素化種、及びこれらの混合物からなる群から選択される、態様11に記載の方法。
態様13
分離工程(b)を脱同伴装置内で行う、態様10に記載の方法。
態様14
脱同伴装置が、塔、ノックアウトポット、フィルター、又はこれらの組み合わせである、態様13に記載の方法。
態様15
脱同伴装置がノックアウトポットであり、ノックアウトポットが場合によって内部コアレッサーを含む、態様14に記載の方法。
態様16
内部コアレッサーが、充填材、メッシュ、又はこれらの組み合わせを含む、態様15に記載の方法。
態様17
充填材がポールリングなどを含む、態様16に記載の方法。
態様18
塔が、充填塔、棚段塔、又はこれらの組み合わせである、態様14に記載の方法。
態様19
塔が充填塔を含む、態様18に記載の方法。
態様20
充填塔が、不規則充填材、規則充填材、羽根体アセンブリ、デミスター、又はこれらの組み合わせを含む、態様19に記載の方法。
態様21
態様10にしたがって製造される2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)を、244bbを形成するのに有効な条件下でフッ化水素(HF)と接触させることを含む、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)の製造方法。
態様22
態様21にしたがって製造される2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)を、1234yfを形成するのに有効な条件下で脱塩化水素化触媒と接触させることを含む、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の製造方法。
態様23
(a)、1230xaを気化させ、ここで1230xaの一部は非気化状態で保持され;
(b)、1230xaの気化部分から1230xaの非気化部分を分離し;そして
(c)1230xaの気化部分を、HFの存在下、1233xfを形成するのに有効な条件下で蒸気相フッ素化触媒を含む反応器に供給する;
ことを含み、
ここで、蒸気相フッ素化触媒の寿命は、分離工程(b)を有しないで、気化及び非気化1230xaを反応器に供給する場合の触媒の寿命と比較して延びている、1233xfの製造において用いる蒸気相フッ素化触媒に関する触媒寿命を延ばす方法。
態様24
(a)液体状の1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(1230xf)及び蒸気状の1230xfを含む出発材料を与え;
(b)液体状の1230xfから蒸気状の1230xfを分離し;そして
(c)蒸気状の1230xfを、1233xfを形成するのに有効な条件下でフッ化水素:HFと接触させる;
ことを含む、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)の製造方法。
態様25
(a)液体状の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(240db)及び蒸気状の240dbを含む出発材料を与え;
(b)液体状の240dbから蒸気状の240dbを分離し;そして
(c)蒸気状の240dbを、1233xfを形成するのに有効な条件下でフッ化水素:HFと接触させる;
ことを含む、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)の製造方法。
【実施例】
【0025】
[0026]以下は本発明の実施例であり、限定と解釈すべきではない。
実施例1:
[0027]本実施例は、気化器と反応器との間に配置されたノックアウトポットの存在下での、1233xfを製造するための1230xaのフッ素化の連続運転に関する。実験で用いた触媒は、フッ素化酸化クロムであった。
【0026】
[0028]約6.5Lのフッ素化酸化クロムを、4インチのチューブ反応器内に装填した。反応は当初は200℃で行い、260℃に上昇した。反応圧力は70psigであった。HF及び1230xa/1233xf(重量比90:10)の流速は、それぞれ3.3及び1.6ポンド/時であった。1230xaの転化率は100%であった。1233xfへの平均選択率は約90%であった。実験は約6000時間連続的に運転した。実験後にノックアウトポットを排出した。約5.8gの暗褐色の溶液が回収された。暗褐色の溶液のGC分析によって、82.3%の1230xa、及び17.7%の不明物質が示された。GC−MS分析によって、1233xf、1232xf、242異性体、1231xd、1230xa、CHFCl、CCl等などの幾つかの成分が確認された。
【0027】
比較例1:
[0029]この実施例においてはノックアウトポットを用いなかった。約6.5Lのフッ素化酸化クロムを4インチのチューブ反応器内に装填した。反応は当初は200℃で行い、325℃に上昇した。反応圧力は70psigであった。HF及び1230xa/1233xf(重量比90:10)の流速は、それぞれ3.3及び1.67ポンド/時に設定した。1230xaの転化率は、当初は100%であった。触媒は、約100時間目において、1230xaの転化率の低下によって示されるように失活の兆候を示した。温度を5℃ずつ上昇させて、1233xfへの平均選択率を約90%に維持しながら約70%の転化率を維持した。約350時間後において300℃の温度に達した後、所望でない成分への選択率が増加した。約400時間後に実験を終了した。幾つかの原因の中でも、液体の同伴が触媒の迅速な失活に寄与したと結論づけられる。