(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置用ガラス基板、液晶表示装置用ガラス基板、太陽電池用パネル基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板、半導体ウエハ等の基板を処理する基板処理装置においては、処理室内において基板に各種の処理液や純水を供給することにより基板の処理が行われる。
【0003】
このような基板処理装置は、一般的に、複数の処理室を備え、複数の基板に対して並行して処理を行う構成となっている。また、このような基板処理装置は、基板に供給する処理液の貯留槽と、処理液をこの貯留槽から送出した後、再度、貯留槽に戻すための循環路とを備えた循環系を、基板に供給すべき処理液の種類に応じた数だけ備えている。そしてこのような基板処理装置は、各循環系に接続されるとともに、その先端に処理室内に配置されたノズルが接続された吐出経路から、処理室内の基板に対して処理液を供給する構成となっている。
【0004】
このような基板処理装置においては、装置を設置したときに、上述した貯留槽、循環路および吐出経路からなる処理液供給経路を清浄とするため、その洗浄を実行する必要がある。また、使用する処理液を変更する場合や、一定時間だけ装置を駆動した場合に、処理液供給経路を洗浄することも必要となる。
【0005】
このため、基板処理装置とは別に設けられた洗浄装置を利用し、この洗浄装置から基板処理装置の処理液供給路に対して洗浄液を供給することにより、処理液供給路を洗浄するようにした洗浄装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、砥粒スラリーの供給管を洗浄する洗浄方法として、配管内に複数の洗浄液のドメインと複数の気体のドメインとを交互かつパルス状に連続して通過させることにより、配管の内壁に付着した付着物を除去する配管の洗浄方法も提案されている(特許文献2参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された洗浄装置は、基板処理装置を効果的に洗浄し得るものではあるが、配管内の凹凸部や継手部分にパーティクルが残存して、十分な洗浄が行えない場合がある。
【0009】
このため、特許文献2に記載の洗浄方法を採用することも考えられる。しかしながら、配管内に複数の洗浄液のドメインと複数の気体のドメインとを交互かつパルス状に連続して形成するためには、配管の内径が小さいことが条件となる。一方、基板処理装置に使用される処理液供給用の配管は、一般的により大径であることから、配管内に複数の洗浄液のドメインと複数の気体のドメインとを交互かつパルス状に連続して形成することは不可能である。また、仮に、配管内に複数の洗浄液のドメインと複数の気体のドメインとを交互かつパルス状に連続して形成し得たとしても、物理力を受けやすい比較的大きなパーティクルは除去できたとしても、数十μm程度の微小なパーティクルを除去することは困難となる。
【0010】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、基板処理装置の処理液供給経路を十分清浄に洗浄することが可能な洗浄機能を有する基板処理装置および基板処理装置の配管洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、処理室内の基板に対して処理液を供給することにより基板を処理する基板処理装置であって、前記処理室内の基板に対して処理液を供給する処理液供給経路と、前記処理液供給経路に、当該処理液供給経路を洗浄する洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記洗浄液供給手段から供給され前記処理液供給経路内を流れる前記洗浄液に対して、単位時間当たりの洗浄液の供給量以上の量の気体を連続的に供給する気体供給手段と、を備え、前記処理液供給経路は、貯留槽と、処理液を前記貯留槽から送出した後、再度、前記貯留槽に戻すための循環路と、基板に処理液を供給するノズルと前記循環路とを開閉弁を介して接続する吐出経路と、を備
え、前記気体供給手段は、前記開閉弁を閉止した状態で、
前記循環路内を流れる前記洗浄液に対して気体を連続的に供給することにより、前記洗浄液を、前記循環路の配管の内径より小さい複数の液滴に分裂させるとともに、前記開閉弁を間欠的に開放することにより、前記循環路を循環する洗浄液を間欠的に前記ノズルより吐出させることを特徴とする。
【0012】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、前記処理室が複数個配設されるとともに、前記吐出経路は各処理室に対応して複数配設されており、複数の吐出経路に配設された複数の開閉弁は、互いにタイミングをずらせて開放される。
【0013】
請求項
3に記載の発明は、請求項
2に記載の発明において、前記気体供給手段は、複数の吐出経路における複数のノズルより気体が吐出されるように、前記洗浄液供給手段から前記処理液供給経路に単位時間当たりに供給される洗浄液の量より十分多量の気体を連続的に供給する。
【0014】
請求項
4に記載の発明は、請求項
1から請求項
3のいずれかに記載の発明において、前記気体供給手段は、前記循環路に対して、当該循環路を構成する管路より小さな内径を有する管路から、前記循環路を循環する洗浄液の流れと同方向に気体を供給する。
【0015】
請求項
5に記載の発明は、貯留槽と、
処理液を前記貯留槽から送出した後、再度、前記貯留槽に戻すための循環路と、前記循環路と接続され処理液をノズルを介して基板に供給するための
開閉弁が配設された吐出経路と、を備えた処理液供給
経路を有し、処理室内の基板に対して処理液を供給することにより基板を処理する基板処理装置の配管洗浄方法であって、前記貯留槽に洗浄液を貯留する洗浄液貯留ステップと、
前記開閉弁を閉止した状態で前記循環路に前記貯留槽に貯留された洗浄液を
循環させる洗浄液
循環ステップと、
前記循環路を循環する洗浄液に対して、単位時間当たりの洗浄液の供給量以上の量の気体を連続的に供給する
ことにより、前記洗浄液を、前記循環路の配管の内径より小さい複数の液滴に分裂させる気体供給ステップと、
前記開閉弁を間欠的に開放することにより、前記循環路を循環する洗浄液を
間欠的に前記ノズルより吐出させる洗浄液吐出ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1から請求項
5に記載の発明によれば、洗浄液に対して連続的に供給された気体の作用により、基板処理装置の処理液供給経路を十分清浄に洗浄することが可能となる。
【0017】
請求項1および請求項
5に記載の発明によれば、循環路を循環する洗浄液の流速を気体の作用により加速させることができ、この洗浄液を基板処理装置の処理液供給経路に供給することにより、処理液供給経路を効果的に洗浄することが可能となる。
【0018】
請求項
1に記載の発明によれば、循環路を循環する洗浄液の圧力や速度を低下させることなく、ノズルを含む吐出経路を十分清浄に洗浄することが可能となる。
【0019】
請求項
2に記載の発明によれば、複数の吐出経路から同時に洗浄液が吐出されることによる循環路を循環する洗浄液の圧力や速度の低下を防止して、各ノズルを含む吐出経路を十分清浄に洗浄することが可能となる。
【0020】
請求項
3に記載の発明によれば、多量に供給される気体の作用により、複数の吐出経路を有する処理液供給経路を効果的に洗浄することが可能となる。
【0021】
請求項
4に記載の発明によれば、循環される洗浄液に対して逆流や圧損を生じることなく気体を供給することができ、循環路を循環する洗浄液の循環速度を増加させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係る基板処理装置の洗浄ユニット1を基板処理装置2とともに示す概要図である。なお、基板処理装置の洗浄ユニット1は、基板処理装置2に対して着脱自在な構成となっているが、洗浄ユニット1を基板処理装置2に内在させてもよいため、
図1においては、両者の管路を一体として表現している。
【0024】
基板処理装置2は、図示しないスピンチャックに保持されて回転する半導体ウエハ等の基板に対して処理液を供給して処理する第1、第2の処理室11、12と、この処理室に処理液を供給する処理液供給機構とから構成される。この基板処理装置2は、例えば、HF等の酸性の処理液を貯留する第1貯留槽21と、例えば、SC1等のアルカリ性の処理液を貯留する第2貯留槽22とを備える。
【0025】
第1貯留槽21には、開閉弁51、ポンプ52、フィルタ53、開閉弁57を備え、酸性の処理液を第1貯留槽21から送出した後、再度、第1貯留槽21に戻すための酸性の処理液の循環路101が接続されている。そして、この酸性の処理液の循環路101は、開閉弁61、66を介して第1の処理室11に配設されたノズル13に至る酸性の処理液の吐出経路103と、開閉弁62、68を介して第2の処理室12に配置されたノズル15に至る酸性の処理液の吐出経路104とに接続されている。
【0026】
第2貯留槽22には、開閉弁54、ポンプ55、フィルタ56、開閉弁58を備え、アルカリ性の処理液を第2貯留槽22から送出した後、再度、第2貯留槽22に戻すためのアルカリ性の処理液の循環路102が接続されている。そして、このアルカリ性の処理液の循環路102は、開閉弁63、67を介して第1の処理室11に配設されたノズル14に至るアルカリ性の処理液の吐出経路105と、開閉弁64、69を介して第2の処理室12に配置されたノズル16に至るアルカリ性の処理液の吐出経路106とに接続されている。
【0027】
第1貯留槽21は、開閉弁46を介して排気部48に接続されたベント用配管111と接続されており、第2貯留槽22は、開閉弁47を介して排気部48に接続されたベント用配管111と接続されている。
【0028】
開閉弁46は通常は閉止されている。後述する窒素ガスの供給により、第1貯留槽21の内圧が所定値以上になると、開閉弁46が開放されて第1貯留槽21内の気体の一部がベント用配管111を経由して排出部48から外気に放出される。同様に、開閉弁47は通常は閉止されている。後述する窒素ガスの供給により、第2貯留槽22の内圧が所定値以上になると、開閉弁47が開放されて第2貯留槽22内の気体の一部がベント用配管111を経由して排出部48から外気に放出される。
【0029】
この基板処理装置2においては、第1貯留槽21内の酸性の処理液は、開閉弁51および開閉弁57が開放された状態でポンプ52が駆動されることにより、酸性の処理液の循環路101を循環する。すなわち、第1貯留槽21内に貯留された酸性の処理液は、ポンプ52によって第1貯留槽21から送出された後、酸性の処理液の循環路101内を移動し、第1貯留槽21に戻される。そして、この状態において、開閉弁61および開閉弁66が開放された場合には、酸性の処理液の循環路101内を循環している酸性の処理液は、酸性の処理液の吐出経路103を介して、ノズル13より第1の処理室11内において回転する基板に供給される。また、開閉弁62および開閉弁68が開放された場合には、酸性の処理液は、酸性の処理液の吐出経路104を介して、ノズル15より第2処理室12内において回転する基板に供給される。これらの酸性の処理液は、第1の処理室11または第2の処理室12より、図示を省略した回収管路を介して、第1貯留槽21に回収される。なお、基板の処理に供した酸性の処理液をそのまま廃棄するようにしてもよい。
【0030】
一方、第2貯留槽22内のアルカリ性の処理液は、開閉弁54および開閉弁58が開放された状態でポンプ55が駆動されることにより、アルカリ性の処理液の循環路102を循環する。すなわち、第2貯留槽22内に貯留されたアルカリ性の処理液は、ポンプ55により第2貯留槽22から送出された後、アルカリ性の処理液の循環路102内を移動し、第2貯留槽22に戻される。そして、この状態において、開閉弁63および開閉弁67が開放された場合には、アルカリ性の処理液は、アルカリ性の処理液の吐出経路105を介して、ノズル14より第1の処理室11内において回転する基板に供給される。また、開閉弁64および開閉弁69が開放された場合には、アルカリ性の処理液は、アルカリ性の処理液の吐出経路106を介して、ノズル16より第2処理室12内において回転する基板に供給される。これらのアルカリ性の処理液は、第1の処理室11または第2の処理室12より、図示を省略した回収管路を介して、第2貯留槽22に回収される。なお、基板の処理に供したアルカリ性の処理液をそのまま廃棄するようにしてもよい。
【0031】
なお、この実施形態においては、第1の処理室11および第2の処理室12という2個の処理室で基板を処理する場合について説明したが、この処理室の数は通常は4ないし12個程度である。例えば、基板処理装置2が8の処理室を有している場合には、酸性の処理液の吐出経路およびアルカリ性の処理液の吐出経路は、各々、8個必要となる。また、この実施形態においては、酸性とアルカリ性の2種類の処理液により基板を処理する場合について説明したが、実際には、さらに多数種の処理液が基板に供給され、それらの処理液により基板が処理される。
【0032】
基板処理装置2の洗浄ユニット1は、洗浄液を貯留する洗浄液貯留槽23を備える。洗浄液貯留槽23内の洗浄液は、開閉弁33およびポンプ34を介して洗浄液貯留槽23から送出された後、開閉弁32を有する洗浄液供給路107を介して第1貯留槽21に供給されるとともに、開閉弁31を有する洗浄液供給路108を介して第2貯留槽22に供給される。
【0033】
また、基板処理装置2の洗浄ユニット1は、不活性ガスとしての窒素ガスの供給部41を備える。この窒素ガスの供給部41は、開閉弁42を備えた窒素ガスの供給路109を介して酸性の処理液の循環路101と、接続部44において接続されている。このため、後述するように、酸性の処理液の循環路101に対して洗浄液を循環させた状態において、循環する洗浄液内に接続部44より窒素ガスを混入することが可能となる。
【0034】
同様に、この窒素ガスの供給部41は、開閉弁43を備えた窒素ガスの供給路110を介してアルカリ性の処理液の循環路102と、接続部45において接続されている。このため、後述するように、アルカリ性の処理液の循環路102に対して洗浄液を循環させた状態において、循環する洗浄液内に接続部45より窒素ガスを混入することが可能となる。
【0035】
さらに、基板処理装置2は、洗浄ユニット1および基板処理装置2を一体的に制御する制御部100を有している。この制御部100は、上述した、開閉弁31〜33、窒素ガスの供給部41、開閉弁42、43、46、47、51、54、57、58、61〜64、および66〜69、並びにポンプ34、52および55等を制御して、後述する基板処理装置2の配管の洗浄処理を実行する。
【0036】
図2は、接続部44、45において循環されている洗浄液内に窒素ガスを混入する状態を示す説明図である。
【0037】
接続部44、45には、一方が小径となったT字管71が使用される。このT字管71の大径部は、酸性の処理液の循環路101またはアルカリ性の処理液の循環路102を構成する管72と、ナット74により接続されている。また、このT字管71の小径部は、窒素ガスの供給路109、110を構成する管73と、ナット74により接続されている。また、
図2では、循環路101または102の内部を移動する酸性またはアルカリ性の処理液を符号Aで、窒素ガスの供給路73の内部を移動する窒素ガスを符号Bで図示している。このため、接続部44、45においては、酸性の処理液の循環路101またはアルカリ性の処理液の循環路102を構成する管72より小さな内径を有する管73から、管72を循環する洗浄液の流れと同方向に窒素ガスが供給されることになる。このため、酸性の処理液の循環路101またはアルカリ性の処理液の循環路102を構成する管72を循環する洗浄液Aに対して逆流や圧損を生じることなく窒素ガスBを供給することができ、管72を循環する洗浄液の循環速度を増加させることが可能となる。
【0038】
以上のような構成を有する基板処理装置の洗浄ユニット1により基板処理装置2を洗浄する場合においては、まず、洗浄ユニット1の洗浄液貯留槽23から第1貯留槽21および第2貯留槽22に必要な量の洗浄液を供給する。すなわち、制御部100は、全ての開閉弁を閉止した状態で、開閉弁33を開放するとともに、ポンプ34を駆動する。これと同時に、開閉弁32を開放することにより第1貯留槽21に洗浄液を供給するとともに、開閉弁31を開放することにより第2貯留槽22に洗浄液を供給する。第1貯留槽21および第2貯留槽22に必要な量の洗浄液が供給されれば、開閉弁31、32、33を閉止するとともに、ポンプ34の駆動を停止する。
【0039】
次に、開閉弁51および開閉弁57を開放するとともに、ポンプ52を駆動して、酸性の処理液の循環路101に対して洗浄液を循環させる。そして、洗浄液が循環した状態において、開閉弁42を開放して、接続部44より酸性の処理液の循環路101を循環する洗浄液中に窒素ガスを供給する。これにより、酸性の処理液の循環路101を循環する洗浄液の流速が窒素ガスの作用により加速する。なお、このときの窒素ガスの単位時間当たりの供給量(例えば7〜28リットル/分)は、酸性の処理液の循環路101に供給される単位時間当たりの洗浄液供給量(例えば7リットル/分)以上となっている。
【0040】
また、開閉弁54および開閉弁58を開放するとともに、ポンプ55を駆動して、アルカリ性の処理液の循環路102に対して洗浄液を循環させる。そして、洗浄液が循環した状態において、開閉弁43を開放して、接続部45よりアルカリ性の処理液の循環路102を循環する洗浄液中に窒素ガスを供給する。これにより、アルカリ性の処理液の循環路102を循環する洗浄液の流速が窒素ガスの作用により加速する。なお、このときの窒素ガスの単位時間当たりの供給量(例えば7〜28リットル/分)も、アルカリ性の処理液の循環路102に供給される単位時間当たりの洗浄液供給量(例えば7リットル/分)以上となっている。
【0041】
図3は、窒素ガスを供給しない場合の管72を流れる洗浄液の状態を示す比較例である。
図4は、酸性の処理液の循環路101またはアルカリ性の処理液の循環路102を構成する管72を流れる洗浄液の状態を示す模式図である。
【0042】
図3の比較例に示すように、窒素ガスを供給しない場合、洗浄液Wは管72の内壁に対して密着した状態で移動する。洗浄液Wがこのように低速で移動する場合、管72の内壁に付着したパーティクルPに大きな物理力が作用しないためこれらのパーティクルPを効率的に除去することができない。
【0043】
一方、
図2を用いて前述したように、接続部44(45)においては、循環路101(102)に供給される単位時間当たりの洗浄液供給量以上の体積の窒素ガスが、管72内を流れる洗浄液の中に向けて供給される。これによって、接続部44(45)で洗浄液は管72の内径より小さい複数の液滴dに分裂するとともに大きく加速する。
図4に示すように、複数の液滴dは、接続部44(45)より下流で管72の内壁に繰り返し衝突しながら高速に移動する。洗浄液の液滴dは、管72の内壁に衝突する度に管72の内壁に付着しているパーティクルPに大きな物理力を作用させる。これによりパーティクルPが管72の内壁から引きはがされて除去される(
図4では除去後のパーティクルに符号P’を付している)。
【0044】
図3の比較例の場合には、管72の内壁の凹凸部や継手部分などに付着した微小なパーティクルに大きな物理力を作用させることができず、これらのパーティクルを十分に除去することができなかった。これに対して、本実施形態では、接続部44および接続部45から供給される窒素ガスによって、洗浄液を管72の内径より小さく、かつ高速で移動する液滴に分裂させているため、管72の内壁の凹凸部や継手部分に付着した微小なパーティクルに大きな物理力を作用させることができる。これにより、管72内に付着した微小なパーティクルを高い効率で除去することができる。
【0045】
図5は、上述した洗浄ユニット1および基板処理装置2を用いた基板処理装置2の配管の洗浄手順を示すフローチャートである。
図1および
図5を用いて基板処理装置2の配管の洗浄手順を説明する。
【0046】
まず、上述したように、制御部100は、開閉弁51および54を閉止し、開閉弁31〜33を開放した状態で、ポンプ34作動させて、洗浄液貯留槽23から第1貯留槽21および第2貯留槽22に所定量の洗浄液を貯留させる(ステップS1)。
【0047】
次に、制御部100は、開閉弁51および57を開放し、開閉弁61および62を閉止した状態で、ポンプ52の作動を開始して、酸性の処理液の循環路101での洗浄液の循環を開始する。
【0048】
同時に、制御部100は、開閉弁54および58を開放し、開閉弁63および64を閉止した状態で、ポンプ55の作動を開始して、アルカリ性の処理液の循環路102での洗浄液の循環を開始する(ステップS2)。
【0049】
酸性の処理液の循環路101の内部が洗浄液で満たされ液密になると、制御部100は、開閉弁42を連続的に開放して酸性の処理液の循環路101への窒素ガスの供給を開始する。同様に、アルカリ性の処理液の循環路102の内部が洗浄液で満たされ液密になると、制御部100は、開閉弁43を連続して開放してアルカリ性の処理液の循環路102への窒素ガスの供給を開始する(ステップS3)。上述したように、液滴化した洗浄液により循環路101および102の内壁が効率的に洗浄され始める。
【0050】
なお、接続部44(45)における窒素ガスの供給により貯留槽21(22)を含む循
環路101(102)における窒素ガスの内部圧力が上昇する。しかし、制御部100が開閉弁46(47)を適宜のタイミングで開閉することにより、余分な窒素ガスを排気部48からベントしているため、窒素ガスの内部圧力が一定に保たれる。仮に、窒素ガスの内部圧力が高くなりすぎると接続部44および45からの窒素ガスの供給が不可能になるが、本実施形態では制御部100が開閉弁46および47を適宜のタイミングで開閉制御してベントを行うため、接続部44および45から循環路101および102への窒素ガスの供給が連続的に行えるようになっている。
【0051】
洗浄液が窒素ガスとともに酸性の処理液の循環路101またはアルカリ性の処理液の循環路102を十分に循環すれば、制御部100は開閉弁61および開閉弁66を開放してノズル13から洗浄液を吐出することにより第1の処理室11に配設されたノズル13に至る酸性の処理液の吐出経路103を洗浄する第1の吐出経路洗浄動作を実行する(ステップS4)。
【0052】
次に、制御部100は開閉弁62および開閉弁68を開放してノズル15から洗浄液を吐出することにより第2の処理室12に配設されたノズル15に至る酸性の処理液の吐出経路104を洗浄する第2の吐出経路洗浄動作を実行する(ステップS5)。
【0053】
仮に、開閉弁61、62、66および68が連続的に開放されると、ノズル13およびノズル15から洗浄液と窒素ガスが連続的に吐出する。こうなると、酸性の処理液の循環路101および酸性の処理液の吐出経路103、104内の窒素ガスの内部圧力が低下するおそれがある。
【0054】
また、開閉弁61(66)および開閉弁62(68)がそれぞれ間欠的に開閉されたとしても、ノズル13およびノズル15からの洗浄液等の吐出タイミングが重なってしまうと、酸性の処理液の循環路101および酸性の処理液の吐出経路103、104内の窒素ガスの内部圧力が低下するおそれがある。窒素ガスの内部圧力が低下すると、酸性の処理液の循環路101および酸性の処理液の吐出経路103、104内を流れる洗浄液の液滴の流速が下がるため、十分な洗浄効果が得られなくなる。この現象は、同一の酸性の処理液の循環路101に接続された酸性の処理液の吐出経路103、104の数が増えるほど顕著になる。
【0055】
本実施形態では、ノズル13およびノズル15からの洗浄液等が間欠的に吐出されるように、かつ、ノズル13およびノズル15からの洗浄液等の吐出タイミングが重ならないように、開閉弁61、62、66および68の開閉タイミングが制御されている。このため、酸性の処理液の循環路101および酸性の処理液の吐出経路103、104内の窒素ガスの内部圧力の低下、並びに洗浄液の液滴の流速低下を有効に防止することができる。
【0056】
ステップS4およびステップS5は、酸性の処理液の吐出経路103および酸性の処理液の吐出経路104の内壁の洗浄が完了するまで繰り返し実行される(ステップS6)。
【0057】
ステップS4〜S6と並行して、ステップS7〜S9が実行される。
【0058】
すなわち、開閉弁63および開閉弁67を開放してノズル14から洗浄液を吐出することにより第1の処理室11に配設されたノズル14に至るアルカリ性の処理液の吐出経路105を洗浄する第3の吐出経路洗浄動作が実行される(ステップS7)。
【0059】
次に、開閉弁64および開閉弁69を開放してノズル16から洗浄液を吐出することにより第2の処理室12に配設されたノズル16に至るアルカリ性の処理液の吐出経路106を洗浄する第4の吐出経路洗浄動作が実行される(ステップS8)。
【0060】
ステップS7およびステップS8の工程は、アルカリ性の処理液の吐出経路105およびアルカリ性の処理液の吐出経路106の内壁の洗浄が完了するまで繰り返し実行される(ステップS9)。
【0061】
このように、ノズル14およびノズル16は間欠的に洗浄液を吐出するように制御されている。また、ノズル14およびノズル16からの洗浄液等の吐出タイミングはずらされている。これは、ノズル13およびノズル15からの洗浄液等の吐出動作に関して前述したのと同じ理由からである。
【0062】
なお、ここで、酸性の処理液供給経路を洗浄した洗浄液とアルカリ性の処理液供給経路を洗浄した洗浄液とを別々に回収したい場合においては、第1の吐出経路洗浄動作(ステップS4)と第3の吐出経路洗浄動作(ステップS7)とをタイミングをずらせて実行すると共に、第2の吐出経路洗浄動作(ステップS5)と第4の吐出経路洗浄動作(ステップS8)とをタイミングをずらせて実行すればよい。
【0063】
なお、酸性の処理液の循環路101またはアルカリ性の処理液の循環路102を構成する管72内に供給する窒素ガスの供給量は、各ノズル13、14、15、16から洗浄液とともに十分な量の窒素ガスが吐出されるように、管72に単位時間当たりに供給される洗浄液の供給量より十分多量の窒素ガスを連続的に供給する必要がある。このため、管72に供給される単位時間当たりの窒素ガスの供給量は、管72に供給される洗浄液の供給量の数倍以上とすることが好ましい。なお、この供給量とは、大気圧下における窒素ガスおよび洗浄液の体積を指す。
【0064】
以上の動作が終了すれば、開閉弁42および43を閉止して窒素ガスの供給を終了する(ステップS10)。次に、ポンプ52および55を停止して循環路101および102での洗浄液の循環を停止する(ステップS11)。最後に、第1貯留槽21および第2貯留槽22から洗浄液を排出するとともに、全ての開閉弁を閉止して洗浄動作を終了する(ステップS12)。そして、必要に応じ、基板処理装置の洗浄ユニット1を基板処理装置2から取り外す。
【0065】
なお、上述した実施形態においては、酸性の処理液とアルカリ性の処理液との二種類の処理液で基板を処理する基板処理装置を洗浄する場合について説明したが、単一の処理液により基板を処理する基板処理装置をこの発明に係る洗浄ユニット1で洗浄してもよく、また、三種類以上の処理液で基板を処理する基板処理装置をこの発明に係る洗浄ユニット1で洗浄するようにしてもよい。