特許第6697065号(P6697065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697065
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】仮設足場用幅木装置の取付方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/00 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
   E04G5/00 301A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-242849(P2018-242849)
(22)【出願日】2018年12月26日
(62)【分割の表示】特願2015-213080(P2015-213080)の分割
【原出願日】2015年10月29日
(65)【公開番号】特開2019-49198(P2019-49198A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2019年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】395002098
【氏名又は名称】平和技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】内橋 洋介
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6463252(JP,B2)
【文献】 特開2011−153422(JP,A)
【文献】 特開2004−360268(JP,A)
【文献】 特開2011−047132(JP,A)
【文献】 特開2015−031104(JP,A)
【文献】 特開2012−207459(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/083197(WO,A1)
【文献】 特開2006−045829(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第106013760(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00−7/34
E04G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された間隔aで配置された対となる第1、第2の垂直パイプを予め設定された間隔bで2対有する単位垂直パイプ群と、間隔aでそれぞれ配置された前記第1、第2の垂直パイプを連結する長尺水平パイプと、間隔bでそれぞれ配置された隣り合う前記第1の垂直パイプ同士、及び隣り合う前記第2の垂直パイプ同士を連結する短尺の第1、第2の水平パイプと、隣り合う前記第1、第2の水平パイプに掛け渡される足場部材とを有する仮設足場に幅木装置を取付ける方法であって、
対となる前記第1、第2の垂直パイプ間に起立状態で配置される垂直幅木部、及び該垂直幅木部の下端部から前記足場部材に向けて延設され、該足場部材に載置される水平部材を備えた幅木本体を、
前記垂直幅木部の両端部にそれぞれ垂直軸を中心として回動可能に設けられ、それぞれが平面座と該平面座の両側に立設状態で平行に設けられた対となる側壁部とで断面コ字状に構成され、前記第1、第2の垂直パイプの外周面に一致する凹部をそれぞれ対となる前記各側壁部の前記平面座側とは反対側に備え、前記垂直幅木部の端部を該垂直幅木部を平面視して足場部材側である内側から外側に回動して、隣り合う前記第1、第2の垂直パイプに、該第1、第2の垂直パイプ間の中央側から係合可能となった対となる可動受け部材で支持し、
前記垂直幅木部の一方側端部に設けられた締結手段によって、一方側にある前記可動受け部材を前記垂直幅木部に沿って水平方向に移動し、該幅木装置を前記第1、第2の垂直パイプに固定することを特徴とする仮設足場用幅木装置の取付方法。
【請求項2】
請求項1記載の仮設足場用幅木装置の取付方法において、前記締結手段は、前記垂直幅木部の一方側端部に形成され、一方側にある前記可動受け部材に設けられた垂直軸を挿通した状態で該垂直軸を水平方向にスライド可能とするガイド孔と、前記垂直幅木部に設けられ、一方側にある前記可動受け部材を押圧する固定部材とを有し、
前記垂直軸を前記ガイド孔の一方側端部に寄せた状態で、前記可動受け部材を前記垂直幅木部の内側から外側に回動し、前記垂直軸を前記ガイド孔の他方側端部に寄せた状態で、対となる前記可動受け部材の前記凹部を前記第1、第2の垂直パイプに位置合わせし、前記固定部材で前記凹部を前記第1、第2の垂直パイプに押圧保持することを特徴とする仮設足場用幅木装置の取付方法。
【請求項3】
請求項2記載の仮設足場用幅木装置の取付方法において、前記固定部材は回動レバーであって、該回動レバーは、その基側に把持部が設けられ、その先側に前記可動受け部材の背面を押圧する作用部が設けられ、しかも、該作用部の長手方向中央部が前記垂直幅木部に水平軸を介して回動可能に取付けられていることを特徴とする仮設足場用幅木装置の取付方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の仮設足場用幅木装置の取付方法において、前記垂直幅木部には前記可動受け部材を該垂直幅木部を平面視して足場部材側に回動して納める収納部が設けられていることを特徴とする仮設足場用幅木装置の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築や土木工事の現場に構築する仮設足場(組立足場)に取付けられ、例えば、工具や資材等の落下、また、人の墜落を防止可能な仮設足場用幅木装置の取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築や土木工事の現場では、水平配置した隣り合う水平パイプ(横架材)の間に足場板(足場部材)を架設して、建築途中の建物の周囲に作業者の作業床を形成する仮設足場が構築される。
この作業床上で各種作業を行うに際し、作業者が足場板上から、工具や資材等を誤って落としてしまうことを防止するため、また、人の墜落を防止するため、起立状態となった幅木を、建物の反対側にあたる足場板の外側部に設けることが行われている。
仮設足場に設けられる幅木装置としては、例えば、以下のものがある。
【0003】
特許文献1には、足場板に立設された幅木本体と、この下部に設けられ、足場板に設けられた開口部に掛止する足場材掛止フックと、対向配置される横架材間に上から嵌入して横架材の内側に配置される横架材掛止金具と、この先側に設けられ、自重によって横架材の下側部位に回り込み、横架材掛止金具の上方への抜けを防止するロック部材とを有する幅木装置が開示されている。
また、特許文献2には、足場部材に立設される幅木本体と、この幅木本体に補強金具を介して取付けられ、足場部材に設けられた開口部に掛止されるL字状に屈曲した複数の掛止フックと、立設状態の幅木本体を足場部材の枠部に挟持して締結固定する幅木本体固定手段とを有する幅木装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−47132号公報
【特許文献2】特開2011−89260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の幅木装置においては、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の幅木装置は、幅木本体に、足場材掛止フック、横架材掛止金具、及び、ロック部材が、突出状態で設けられている。このため、幅木装置を現場まで、又は、現場から搬送する際に、複数の幅木装置を重ねようとすると、足場材掛止フック等が邪魔になってコンパクトにできず、作業効率が悪かった。なお、幅木装置の搬送ごとに、幅木本体に対する足場材掛止フック等の取付け取外しを行うこともできるが、作業性が悪い。
また、特許文献2に記載の幅木装置も、上記した特許文献1の幅木装置と同様、幅木本体に、掛止フックと幅木本体固定手段が、突出状態で設けられているため、幅木装置を搬送する際の作業効率が悪かった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、仮設足場への十分な取付け強度を有し、搬送時の作業効率の向上が図れると共に、仮設足場に対する取付け取外し操作も容易な仮設足場用幅木装置の取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る仮設足場用幅木装置の取付方法は、予め設定された間隔aで配置された対となる第1、第2の垂直パイプを予め設定された間隔bで2対有する単位垂直パイプ群と、間隔aでそれぞれ配置された前記第1、第2の垂直パイプを連結する長尺水平パイプと、間隔bでそれぞれ配置された隣り合う前記第1の垂直パイプ同士、及び隣り合う前記第2の垂直パイプ同士を連結する短尺の第1、第2の水平パイプと、隣り合う前記第1、第2の水平パイプに掛け渡される足場部材とを有する仮設足場に幅木装置を取付ける方法であって、
対となる前記第1、第2の垂直パイプ間に起立状態で配置される垂直幅木部、及び該垂直幅木部の下端部から前記足場部材に向けて延設され、該足場部材に載置される水平部材を備えた幅木本体を、
前記垂直幅木部の両端部にそれぞれ垂直軸を中心として回動可能に設けられ、それぞれが平面座と該平面座の両側に立設状態で平行に設けられた対となる側壁部とで断面コ字状に構成され、前記第1、第2の垂直パイプの外周面に一致する凹部をそれぞれ対となる前記各側壁部の前記平面座側とは反対側に備え、前記垂直幅木部の端部を該垂直幅木部を平面視して足場部材側である内側から外側に回動して、隣り合う前記第1、第2の垂直パイプに、該第1、第2の垂直パイプ間の中央側から係合可能となった対となる可動受け部材で支持し、
前記垂直幅木部の一方側端部に設けられた締結手段によって、一方側にある前記可動受け部材を前記垂直幅木部に沿って水平方向に移動し、該幅木装置を前記第1、第2の垂直パイプに固定する締結手段とを有する。
【0008】
本発明に係る仮設足場用幅木装置の取付方法において、前記締結手段は、前記垂直幅木部の一方側端部に形成され、一方側にある前記可動受け部材に設けられた垂直軸を挿通した状態で該垂直軸を水平方向にスライド可能とするガイド孔と、前記垂直幅木部に設けられ、一方側にある前記可動受け部材を押圧する固定部材とを有し、
前記垂直軸を前記ガイド孔の一方側端部に寄せた状態で、前記可動受け部材を前記垂直幅木部の内側から外側に回動し、前記垂直軸を前記ガイド孔の他方側端部に寄せた状態で、対となる前記可動受け部材の前記凹部を前記第1、第2の垂直パイプに位置合わせし、前記固定部材で前記凹部を前記第1、第2の垂直パイプに押圧保持することが好ましい。
ここで、前記固定部材は回動レバーであって、該回動レバーは、その基側に把持部が設けられ、その先側に前記可動受け部材の背面を押圧する作用部が設けられ、しかも、該作用部の長手方向中央部が前記垂直幅木部に水平軸を介して回動可能に取付けられているのがよい。
【0009】
また、前記垂直幅木部には前記可動受け部材を該垂直幅木部を平面視して足場部材側に回動して納める収納部が設けられていることが好ましい。
そして、前記水平部材の先端部が下方に折り返されているのがよい。
更に、前記水平部材には長手方向に補強リブを形成することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る仮設足場用幅木装置の取付方法は、仮設足場用幅木装置が、垂直幅木部及び水平部材を備えた幅木本体と、対となる可動受け部材と、締結手段とを有し、可動受け部材が、垂直幅木部の両端部に垂直軸を中心として回動可能に設けられているので、使用時や搬送時の状況に応じて、可動受け部材の位置を容易に調整できる。これにより、仮設足場用幅木装置の搬送の際に、複数の仮設足場用幅木装置を重ねてコンパクトにできるため、搬送時の作業効率を従来よりも向上できる。
また、可動受け部材は、垂直軸により回動して、隣り合う第1、第2の垂直パイプに、この間の中央側から係合可能となって、しかも、締結手段により、垂直幅木部に沿って水平方向に移動し、幅木装置を第1、第2の垂直パイプに固定できるので、仮設足場への十分な取付け強度を有すると共に、仮設足場に対する取付け取外し操作も容易にできる。
【0011】
ここで、締結手段が、垂直軸を水平方向にスライド可能にするガイド孔と、可動受け部材を押圧する固定部材とを有する場合、幅木装置の第1、第2の垂直パイプへの固定を、簡単な構成で実施できる。
なお、固定部材が回動レバーである場合、幅木装置の第1、第2の垂直パイプへの固定を容易にできる。
【0012】
また、垂直幅木部に可動受け部材の収納部を設ける場合、可動受け部材の収納位置が決まるため、複数の仮設足場用幅木装置を重ねる際の作業性が良好になる。
そして、水平部材の先端部が下方に折り返されている場合、例えば、作業者が水平部材の先端に引っ掛かるおそれがなくなる。これは、例えば、水平部材を成形する際、その先端部が切断面となるため、この尖った部分が表面に露出することになるが、これを下方に折り返すことで、尖った部分を隠すことができることによる。
更に、水平部材に補強リブを形成する場合、例えば、補強リブを形成しない場合と比較して、水平部材の剛性を向上できる。これにより、例えば、水平部材の薄肉化が図れ、その結果、軽量化が図れるため、仮設足場用幅木装置の搬送時の作業性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)〜(C)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る仮設足場用幅木装置の取付方法に用いる仮設足場用幅木装置の側面図、平面図、正面図である。
図2】(A)〜(C)はそれぞれ同仮設足場用幅木装置の幅木本体の平面図、正面図、側面図である。
図3】(A)〜(C)はそれぞれ同仮設足場用幅木装置の可動受け部材の側面図、正面図、底面図である。
図4】(A)〜(C)はそれぞれ同仮設足場用幅木装置の他方の可動受け部材の取付け部材の側面図、平面図、正面図である。
図5】(A)〜(C)は同仮設足場用幅木装置の他方の可動受け部材の動作状況を示す平面図である。
図6】(A)〜(D)はそれぞれ同仮設足場用幅木装置の一方の可動受け部材の取付け部材の左側面図、正面図、右側面図、底面図である。
図7】(A)、(B)はそれぞれ同仮設足場用幅木装置の回動レバーの正面図、平面図である。
図8】(A)〜(C)は同一方の可動受け部材の動作状況を示す平面図である。
図9】(A)、(B)は同一方の可動受け部材の動作状況を示す平面図である。
図10】(A)、(B)は同一方の可動受け部材の動作状況を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図10に示すように、本発明の一実施の形態に係る仮設足場用幅木装置の取付方法に用いる仮設足場用幅木装置(以下、単に幅木装置ともいう)10は、仮設足場11に取付けられ、作業者が足場板(足場部材の一例)12上で各種作業を行うに際し、作業者が足場板12上から工具や資材等を誤って落としてしまうこと、また、作業者が足場板12上から墜落することを、防止するための装置である。以下、詳しく説明する。
【0015】
図1(A)〜(C)に示す仮設足場用幅木装置10を設置する仮設足場11は、例えば、建築や土木工事の現場に構築されるものである。
仮設足場11は、地面に対して立設された単位垂直パイプ群を有している。
この単位垂直パイプ群は、予め設定された間隔aで配置された対となる第1、第2の垂直パイプ13、14を、予め設定された間隔bで2対有するものである。ここで、間隔aでそれぞれ配置された第1の垂直パイプ13と第2の垂直パイプ14は、長尺水平パイプ(図示しない)で連結されている。また、間隔bでそれぞれ配置された、隣り合う第1の垂直パイプ13同士は、短尺の第1の水平パイプ(図示しない)で連結され、隣り合う第2の垂直パイプ14同士は、短尺の第2の水平パイプ(図示しない)で連結されている。
【0016】
上記した隣り合う第1の垂直パイプ13と第2の垂直パイプ14の間隔aは、例えば、600mm以上1800mm以下(例えば、600mm、900mm、1200mm、1500mm、1800mm)である。また、隣り合う第1の垂直パイプ13(隣り合う第2の垂直パイプ14も同様)の間隔bは、上記した間隔aよりも狭くなっている。
なお、図1(B)、(C)と図2(A)、(B)は、間隔aが1800mmの場合について図示しており、図面上で省略した部分は26cmである。
また、上記した単位垂直パイプ群は、通常、仮設足場11を構築する対象物の周囲に、複数の単位垂直パイプ群を連続して設置することで使用するが、例えば、1つで使用することもできる。
【0017】
隣り合う第1、第2の水平パイプには、足場板12が掛け渡されている。
足場板12は、平面視して長方形となっており、例えば、金属製の板や、アングル材からなる枠体の内側にエキスパンドメタル(菱形開口を有する)が張設されたもので、構成されている。
これにより、足場板12は、平面視して、隣り合う第1の垂直パイプ13と第2の垂直パイプ14、隣り合う第1の垂直パイプ13と第1の垂直パイプ13、及び、隣り合う第2の垂直パイプ14と第2の垂直パイプ14で囲まれる領域内に、配置されることになる。
【0018】
図1図10に示す仮設足場用幅木装置10は、鋼材(例えば、普通鋼、炭素鋼、高張力鋼)からなり、その表面に亜鉛合金等のめっき処理がなされている。
この幅木装置10は、対となる第1、第2の垂直パイプ13、14間に起立状態で配置される垂直幅木部15a、及び、この垂直幅木部15aの下端部から足場板12に向けて延設される水平部材15bを備えた幅木本体15と、垂直幅木部15aの両端部に垂直軸16、17を中心として回動可能に設けられた対となる可動受け部材(即ち、一方の可動受け部材19及び他方の可動受け部材18)と、垂直幅木部15aの一方側端部(可動受け部材19側)に設けられた締結手段20とを有し、足場板12の長手方向に沿って配置されるものである。なお、幅木装置10は、足場板12の、仮設足場11を構築する対象物側のみ、対象物とは反対側のみ、又は、対象物側とその反対側の双方に、配置できる。以下、幅木本体10について説明する。
【0019】
幅木本体15は、図1(A)〜(C)、図2(A)〜(C)に示すように、薄板材(例えば、板厚が0.8〜1.2mm程度)を断面L字状に屈曲させることで形成されている。具体的には、L字状となった薄板材のうち、起立状態となった部分が垂直幅木部15aを構成し、水平状態となった部分が水平部材15bを構成する。
なお、断面L字状とは、90度(直角)を意味するが、例えば、±2度程度の範囲で傾斜してもよい。
【0020】
水平部材15bは、使用(幅木装置10を仮設足場11に取付けた状態)にあっては、足場板12上に載置されるものである。なお、垂直幅木部15aの高さ、即ち、水平部材15bの下面(足場板12の上面)から垂直幅木部15aの上端までの高さHは、例えば、10cm以上(更には15cm以上)となっている。
水平部材15bの幅(足場板12の長手方向に沿った長さ、即ち長手方向の長さ)は、図1(B)、(C)、図2(A)、(B)に示すように、足場板12へ向けて段階的に縮幅させているが、足場板12上に載置できれば、これに限定されるものではなく、例えば、徐々に縮幅させてもよく、また、同一幅でもよい。
【0021】
図1(A)〜(C)、図2(A)〜(C)に示すように、水平部材15bの先端部21にはヘム処理がなされ、下方に折り返されている。これにより、例えば、水平部材15bを成形する際の尖った部分を隠すことができ、安全性を向上できる。
また、水平部材15bには、その幅方向(長手方向、以下同様)に渡って円弧状のリブ加工がなされ、補強リブ22、23が形成されている。なお、ここでは、水平部材15bの幅方向と直交する方向に(足場板12へ向けて)間隔をあけて、2つの補強リブ22、23を形成しているが、1つでもよく、また、3つ以上の複数でもよい。
これにより、水平部材15bの剛性を向上できるため、例えば、水平部材15bの薄肉化が図れ、その結果、軽量化が図れる。
【0022】
垂直幅木部15aの上端部には、その幅方向(長手方向、以下同様)全体に渡って、垂直幅木部15aの内側(平面視して水平部材15b側、即ち、足場板12側、以下同様)へ向けて断面逆L字状の曲げ加工がなされ、垂直幅木部15aの両端部の内側に、可動受け部材18、19の収納部24、25が設けられている。
この曲げ加工された先端(下端)26の高さ位置は、図1(A)、(C)に示すように、回動時の可動受け部材18、19に接触しない位置となっている。また、曲げ加工された上面部27は、後述するように、平面視して、収納部24、25に納めた可動受け部材18、19の大部分と重なるようになっている(図5(A)、図8(A)参照)。
【0023】
可動受け部材18(可動受け部材19も同様)は、図3(A)〜(C)に示すように、長方形(正方形でもよい)の平面座28と、この平面座28の両側に立設状態で平行に設けられた対となる側壁部29、30とで構成されている。これにより、可動受け部材18は、断面コ字状となっている。
可動受け部材18(可動受け部材19も同様)の対となる両側壁部29、30の開放側(平面座28側とは反対側)中央部には、図1(A)〜(C)、図3(A)〜(C)に示すように、第1の垂直パイプ13の外周面31(可動受け部材19の場合は、第2の垂直パイプ14の外周面31)に一致する凹部32が形成されている。また、可動受け部材18は、両側壁部29、30の長手方向両側が、正面視して平面座28よりも突出し(H字状となって)、突出した両側壁部29、30のそれぞれの片側には貫通孔32aが形成され、この貫通孔32aに回動中心となる垂直軸16(可動受け部材19には垂直軸17)が取付けられている。
【0024】
他方の可動受け部材18は、図1(A)〜(C)に示すように、取付け部材33によって、垂直幅木部15aの他方側端部(ここでは、左側)に取付けられている。
この取付け部材33は、図4(A)〜(C)に示すように、T字状の平坦部37と、この平坦部37の幅狭となった部分(図4(B)、(C)では左側)の両側に立設された平行な対となる側壁部34、35とで構成されている。この両側壁部34、35にはそれぞれ軸孔36が形成され、この軸孔36に、可動受け部材18に取付け固定された垂直軸16が回動可能に挿通されている。なお、両側壁部34、35の間隔は、垂直軸16の長さよりも短くなっているため、可動受け部材18が両側壁部34、35を外側から覆う構成となっている。
【0025】
この取付け部材33は、図1(A)〜(C)、図4(A)〜(C)に示すように、両側壁部34、35が垂直幅木部15aの内側を向くように、その平坦部37が垂直幅木部15aの内側面に当接配置され、締結手段(例えば、ボルトとナット、以下同様)を用い、取付け孔38を介して取付け固定されている。なお、取付け部材33の他側端面(ここでは、幅狭となった左側端面)39は、正面視して垂直幅木部15aの幅方向端面40と一致させているが、ずれてもよい。
また、垂直幅木部15aには、図1(C)、図2(B)に示すように、取付け部材33の上側の側壁部34の上方位置と下側の側壁部35の下方位置に、垂直幅木部15aの幅方向に渡って切欠き溝41、42がそれぞれ形成されている。これにより、可動受け部材18が回動する際に、可動受け部材18の両側壁部29、30は切欠き溝41、42を挿通できる。
【0026】
ここで、可動受け部材18の動作状況を、図5(A)〜(C)を参照しながら説明する。
幅木装置10を使用しない場合(例えば、幅木装置10を搬送する場合)は、図5(A)に示すように、可動受け部材18を垂直幅木部15aの内側に回動させて収納部24に納める。
一方、幅木装置10を使用する場合は、図5(B)に示すように、可動受け部材18を垂直幅木部15aの内側から外側へ向けて回動させる。このとき、可動受け部材18の両側壁部29、30は、切欠き溝41、42内を通過する。
更に、図5(C)に示すように、可動受け部材18の平面座28の基端部が、垂直幅木部15aの外側面に当接するまで(平面視して、可動受け部材18の平面座28が垂直幅木部15aに対して直交する位置まで)、可動受け部材18を回動させる。これにより、可動受け部材18は、第1の垂直パイプ13に内側から(第1、第2の垂直パイプ13、14間の中央側から)係合可能となる。
【0027】
一方の可動受け部材19は、図1(A)〜(C)に示すように、取付け部材43によって、垂直幅木部15aの一方側端部(ここでは、右側)に取付けられている。
この取付け部材43は、図6(A)〜(D)に示すように、T字状の平坦部47と、この平坦部47の幅狭となった部分(図6(B)、(D)では右側)の両側に立設された平行な対となる側壁部44、45とで構成されている。この両側壁部44、45にはそれぞれガイド孔(長孔)46が形成され、このガイド孔46に、可動受け部材19に取付け固定された垂直軸17が、垂直幅木部15aの幅方向(長手方向、水平方向)に垂直幅木部15aに沿ってスライド可能かつ回動可能に挿通されている。なお、両側壁部44、45の間隔は、垂直軸17の長さよりも短くなっているため、可動受け部材19が両側壁部44、45を外側から覆う構成となっている。
【0028】
この取付け部材43は、図1(A)〜(C)、図6(A)〜(D)に示すように、両側壁部44、45が垂直幅木部15aの内側を向くように、その平坦部47が垂直幅木部15aの内側面に当接配置され、締結手段を用い、取付け孔48を介して取付け固定されている。なお、取付け部材43の一側端面(ここでは、幅狭となった右側端面)49は、正面視して垂直幅木部15aの幅方向端面50と一致させているが、ずれてもよい。
ここで、取付け部材43の平坦部47の幅広となった部分(図6(B)、(D)では左側)には、図1(B)、(C)、図6(A)〜(D)に示すように、垂直幅木部15a側へ突出する、回動レバー(固定部材の一例)51の取付け台52と、この回動レバー51の回動範囲を制限する支持部53とが形成されているが、これらは、垂直幅木部15aに形成された貫通孔54、55からそれぞれ突出する(図2(B)参照)。
【0029】
回動レバー51は、図1(B)、(C)に示すように、可動受け部材19を押圧し、対となる可動受け部材18、19の凹部32を第1、第2の垂直パイプ13、14にそれぞれ押圧保持するためのものである。具体的には、図7(A)、(B)に示すように、回動レバー51の基側に把持部56が設けられ、回動レバー51の先側に可動受け部材19の背面を押圧する作用部57が設けられている。また、作用部57の長手方向中央部に形成された貫通孔57aには、取付け部材43の取付け台52に取付けられた水平軸58が挿通され、回動レバー51の作用部57の長手方向中央部が垂直幅木部15aに水平軸58を介して回動可能に取付けられている。なお、水平軸58は、ボルトとナットで構成されているため、交換が容易である。
上記したガイド孔46と回動レバー51によって、幅木装置10を第1、第2の垂直パイプ13、14に固定する締結手段20が構成される。
また、垂直幅木部15aには、図1(C)、図2(B)に示すように、取付け部材43の上側の側壁部44の上方位置と下側の側壁部45の下方位置に、垂直幅木部15aの幅方向に渡って切欠き溝59、60がそれぞれ形成されている。これにより、可動受け部材19が回動する際に、可動受け部材19の両側壁部30、29は切欠き溝59、60を挿通できる。
【0030】
ここで、可動受け部材19の動作状況を、図8図10を参照しながら説明する。
幅木装置10を使用しない場合(例えば、幅木装置10を搬送する場合)は、図8(A)に示すように、可動受け部材19を垂直幅木部15aの内側に回動させて収納部25に納める。このとき、回動レバー51は、水平状態にしている。
一方、幅木装置10を使用する場合は、図8(B)、(C)に示すように、可動受け部材19を垂直幅木部15aの内側から外側へ向けて回動させる。
このとき、可動受け部材19に設けられた垂直軸17を、ガイド孔46の一方側端部(垂直幅木部15aの幅方向(長手方向)端部側)に寄せた状態とする。また、可動受け部材19の両側壁部30、29は、切欠き溝59、60内を通過する。なお、回動レバー51は、把持部56を上側とした垂直状態(可動受け部材19を押圧しない状態)にしている。
更に、図8(C)に示すように、可動受け部材19の平面座28の基端部が、垂直幅木部15aの外側面に当接するまで(平面視して、可動受け部材19の平面座28が垂直幅木部15aに対して直交する位置まで)、可動受け部材19を回動させる。
【0031】
次に、図9(A)、図10(A)に示すように、垂直軸17をガイド孔46に沿ってガイド孔46の他方側端部にスライドさせ、可動受け部材19を垂直幅木部15aに沿って、その幅方向(長手方向)中央部側へ移動させる。これにより、前記した図5(C)に示す可動受け部材18と、図9(A)、図10(A)に示す可動受け部材19との間隔を、対となる第1の垂直パイプ13と第2の垂直パイプ14の間隔よりも狭くできる。
そして、図9(B)、図10(B)に示すように、垂直軸17をガイド孔46に沿ってガイド孔46の一方側端部にスライドさせ、可動受け部材19を垂直幅木部15aに沿って、その幅方向端部側へ移動させた後、回動レバー51を回動させ、作用部57によって可動受け部材19の背面を押圧する。なお、可動受け部材19の移動は、回動レバー51を回動し、その作用部57によって可動受け部材19の背面を押圧しながら行ってもよい。ここで、回動レバー51は、支持部53の上端部に当接し、その回動が妨げられる。
これにより、可動受け部材19は、第2の垂直パイプ14に内側から(第1、第2の垂直パイプ13、14間の中央側から)係合可能となる。
【0032】
続いて、本発明の一実施の形態に係る仮設足場用幅木装置10の使用方法(仮設足場11への取付け方法)について、図1図5図8図10を参照しながら説明する。
幅木装置10の使用にあっては、まず、幅木装置10を現場まで搬送する。
このとき、幅木装置10の各可動受け部材18、19はそれぞれ、垂直幅木部15aの幅方向両端部の内側に設けられた収納部24、25内に配置されている(図5(A)、図8(A)参照)。また、回動レバー51は水平状態である。
これにより、幅木装置10の搬送の際に、各可動受け部材18、19が邪魔になることなく、複数の幅木装置10を重ねてコンパクトにできるため、搬送時の作業効率を従来よりも向上できる。
【0033】
続いて、幅木装置10を仮設足場11へ取付ける。
まず、幅木装置10を、足場板12上に配置する。
次に、幅木装置10に設けられた可動受け部材18を、可動受け部材18の平面座28の基端部が、垂直幅木部15aの外側面に当接するまで、垂直軸16を中心として回動させる。そして、可動受け部材18の凹部32を、第1の垂直パイプ13の外周面31に内側から当接させる(図5(B)、(C)参照)。
【0034】
また、幅木装置10に設けられた可動受け部材19を、可動受け部材19の平面座28の基端部が、垂直幅木部15aの外側面に当接するまで、垂直軸17を中心として回動させる(図8(B)、(C)参照)。このとき、垂直軸17は、ガイド孔46の一方側端部(垂直幅木部15aの幅方向端部側)に寄せた状態となっている。
次に、垂直軸17をガイド孔46の他方側端部(垂直幅木部15aの幅方向中央部側)に寄せ、可動受け部材19を垂直幅木部15aの幅方向中央部側へ移動させて、上記した可動受け部材18と可動受け部材19との間隔を、対となる第1の垂直パイプ13と第2の垂直パイプ14の間隔よりも狭くする(図9(A)、図10(A)参照)。
【0035】
そして、幅木装置10の垂直幅木部15aが、対となる第1の垂直パイプ13と第2の垂直パイプ14の間に位置するように、上記した可動受け部材18の凹部32が、第1の垂直パイプ13の外周面31に当接した状態を維持させながら、垂直軸17をガイド孔46の他方側端部に寄せた状態で、幅木装置10を移動させて、対となる可動受け部材18、19の凹部32を第1、第2の垂直パイプ13、14に位置合わせする。
続いて、可動受け部材19(垂直軸17)を一方側端部(垂直幅木部15aの幅方向端部側)へ移動させる。これにより、上記した可動受け部材18と可動受け部材19との間隔を広げて、可動受け部材19の凹部32を、第2の垂直パイプ14の外周面31に内側から当接させることができる。そして、回動レバー51を回動させ、作用部57によって可動受け部材19の背面を押圧する(図9(B)、図10(B)参照)。
【0036】
これにより、回動レバー51で各可動受け部材18、19の凹部32を、第1、第2の垂直パイプ13、14に押圧保持して、幅木装置10を仮設足場11へ取付けることができる(図1(A)〜(C)参照)。
また、幅木装置10の仮設足場11からの取外しは、上記した操作と逆の操作を行うことで実施できる。
従って、幅木装置10は、仮設足場11への十分な取付け強度を有すると共に、仮設足場11に対する取付け取外し操作も容易にできる。
なお、取外した幅木装置10は、各可動受け部材18、19をそれぞれ収納部24、25内に配置し、回動レバー51を水平状態にした後、複数重ねて現場から搬送する。
【0037】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の仮設足場用幅木装置の取付方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
そして、前記実施の形態においては、2つの取付け部材の垂直幅木部への取付けに、締結手段(例えば、ボルトとナット)を用いた場合について説明したが、垂直幅木部への取付けが可能であれば、例えば、溶接等でもよい。
【符号の説明】
【0038】
10:仮設足場用幅木装置、11:仮設足場、12:足場板(足場部材)、13:第1の垂直パイプ、14:第2の垂直パイプ、15:幅木本体、15a:垂直幅木部、15b:水平部材、16、17:垂直軸、18、19:可動受け部材、20:締結手段、21:先端部、22、23:補強リブ、24、25:収納部、26:先端、27:上面部、28:平面座、29、30:側壁部、31:外周面、32:凹部、32a:貫通孔、33:取付け部材、34、35:側壁部、36:軸孔、37:平坦部、38:取付け孔、39:他側端面、40:幅方向端面、41、42:切欠き溝、43:取付け部材、44、45:側壁部、46:ガイド孔、47:平坦部、48:取付け孔、49:一側端面、50:幅方向端面、51:回動レバー(固定部材)、52:取付け台、53:支持部、54、55:貫通孔、56:把持部、57:作用部、57a:貫通孔、58:水平軸、59、60:切欠き溝
図1
図2
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図8
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図10