(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697071
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】三次元複合強化構造体を含むドクターブレードまたは上板として使用する平板状要素
(51)【国際特許分類】
D21G 3/00 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
D21G3/00
【請求項の数】33
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-507593(P2018-507593)
(86)(22)【出願日】2016年8月15日
(65)【公表番号】特表2018-523025(P2018-523025A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】US2016047059
(87)【国際公開番号】WO2017027880
(87)【国際公開日】20170216
【審査請求日】2018年3月30日
(31)【優先権主張番号】62/204,738
(32)【優先日】2015年8月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502129531
【氏名又は名称】カダント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドレイパー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤラマン モーハン
(72)【発明者】
【氏名】トゥ カー ラン
【審査官】
平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−207094(JP,A)
【文献】
特開平05−338048(JP,A)
【文献】
特開平10−315343(JP,A)
【文献】
特開平03−045334(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/018524(WO,A1)
【文献】
特開平01−250456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00〜D21J7/00
B29C41/00〜41/36
41/46〜41/52
70/00〜70/88
B31F 1/00〜 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙システムで使用する平板状要素であって、前記平板状要素は、ドクターブレードまたは上板としての使用に適しており、
少なくとも3つの互いに直交する方向をそれぞれの長手方向として延びる、長手方向に延在する要素を含む三次元織物複合構造体と、
前記三次元織物複合構造体が内部に埋め込まれた樹脂と、
を備える、平板状要素。
【請求項2】
前記長手方向に延在する要素は、複数の繊維を含む、請求項1に記載の平板状要素。
【請求項3】
前記長手方向に延在する要素は少なくとも1つの糸を含む、請求項1に記載の平板状要素。
【請求項4】
前記複数の繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、アラミド繊維のいずれか、または無機繊維、有機繊維、合成繊維、改質合成繊維のうち少なくとも1つを含む、請求項2に記載の平板状要素。
【請求項5】
前記複数の繊維は、ガラス/ハイパフォーマンスサーモプラスチック(HPT)の糸または繊維、炭素/ハイパフォーマンスサーモプラスチックの糸または繊維、ガラス/炭素/HPTの糸または繊維のいずれかを含む、請求項2に記載の平板状要素。
【請求項6】
前記樹脂は、エポキシ樹脂か、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、またはポリフェニレンサルファイド(PPS)、またはポリエーテルイミド(PEI)、またはポリフタルアミド(PPA)、またはポリエーテルケトンケトン(PEKK)を含むハイパフォーマンス(HPT)樹脂か、のいずれかである、請求項1に記載の平板状要素。
【請求項7】
前記樹脂は、粉末、粒体、チューブ、繊維、および小板のいずれかのナノ粒子を含む、請求項1に記載の平板状要素。
【請求項8】
前記樹脂は、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属錯体、イオン構造体、および共有結合物のいずれかのナノ粒子を含む、請求項1に記載の平板状要素。
【請求項9】
前記樹脂は、粘土粒子、シリケート、セラミック材料、ガラス粒子、カーボンブラック、ヒュームドシリカ、炭酸カルシウム、球状シリカナノ粒子、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、多層カーボンナノチューブおよび単層カーボンナノチューブの両方を含むカーボンナノチューブ、ならびにセラミック粉末のナノ球体のうちのいずれかのナノ粒子を含む、請求項1に記載の平板状要素。
【請求項10】
前記樹脂は、前記樹脂の約0.5重量%〜75重量%であるナノ粒子を含む、請求項1に記載の平板状要素。
【請求項11】
前記樹脂は、前記樹脂の約3重量%であるナノ粒子を含み、前記ナノ粒子は本質的にカーボンナノチューブからなる、請求項1に記載の平板状要素。
【請求項12】
前記樹脂は、前記樹脂の1重量%〜5重量%であるナノ粒子を含み、前記ナノ粒子は本質的にカーボンナノチューブからなる、請求項1に記載の平板状要素。
【請求項13】
前記樹脂は、前記樹脂の30重量%〜50重量%であるナノ粒子を含み、前記ナノ粒子は本質的にシリカナノ粒子からなる、請求項1に記載の平板状要素。
【請求項14】
製紙システムで使用するドクターブレードであって、
少なくとも3つの互いに直交する方向をそれぞれの長手方向として延びる、長手方向に延在する要素を含む三次元織物複合構造体であって、前記長手方向に延在する要素のうちの少なくともいくつかが互いに織り合わされている、三次元織物複合構造体と、
前記三次元織物複合構造体が内部に埋め込まれた樹脂と、
を備える、ドクターブレード。
【請求項15】
前記三次元織物複合構造体が複数の繊維を含む、請求項14に記載のドクターブレード。
【請求項16】
前記複数の繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、アラミド繊維のいずれか、または無機繊維、有機繊維、合成繊維、改質合成繊維のうち少なくとも1つを含む、請求項15に記載のドクターブレード。
【請求項17】
前記複数の繊維は、ガラス/ハイパフォーマンスサーモプラスチック(HPT)の糸または繊維、炭素/ハイパフォーマンスサーモプラスチックの糸または繊維、ガラス/炭素/HPTの糸または繊維のいずれかを含む、請求項15に記載のドクターブレード。
【請求項18】
前記樹脂は、エポキシ樹脂か、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、またはポリフェニレンサルファイド(PPS)、またはポリエーテルイミド(PEI)、またはポリフタルアミド(PPA)、またはポリエーテルケトンケトン(PEKK)を含むハイパフォーマンス(HPT)樹脂か、のいずれかである、請求項14に記載のドクターブレード。
【請求項19】
前記樹脂は、粉末、粒体、チューブ、繊維、および小板のいずれかのナノ粒子を含む、請求項14に記載のドクターブレード。
【請求項20】
ドクターブレードを形成する方法であって、
3つの互いに直交する伸長方向のそれぞれに少なくとも部分的に延びる長手方向に延在する要素を含む三次元織物構造体を形成するステップと、
前記三次元織物構造体を樹脂で埋め込むステップと、
を含む、方法。
【請求項21】
前記三次元織物複合構造体は、3つの互いに直交する方向をそれぞれの長手方向として延びる、複数の長手方向に延在する要素の交差部分をさらに含む、請求項1に記載の平板状要素。
【請求項22】
前記複数の長手方向に延在する要素の交差部分は、織られた交差部分を含む、請求項21に記載の平板状要素。
【請求項23】
前記複数の長手方向に延在する要素の交差部分は、縫われた交差部分をさらに含む、請求項21に記載の平板状要素。
【請求項24】
前記平板状要素は非積層である、請求項21に記載の平板状要素。
【請求項25】
前記三次元織物複合構造体は、3つの互いに直交する方向にそれぞれ延びる、複数の長手方向に延在する要素の交差部分をさらに含む、請求項14に記載のドクターブレード。
【請求項26】
前記複数の長手方向に延在する要素の交差部分は、織られた交差部分を含む、請求項25に記載のドクターブレード。
【請求項27】
前記複数の長手方向に延在する要素の交差部分は、縫われた交差部分をさらに含む、請求項25に記載のドクターブレード。
【請求項28】
前記ドクターブレードが非積層である、請求項25に記載のドクターブレード。
【請求項29】
前記三次元織物構造体を形成するステップは、3つの直交する方向にそれぞれ延びる、複数の長手方向に延在する要素の交差部分を設けることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記複数の長手方向に延在する要素の交差部分は、織られた交差部分を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記複数の長手方向に延在する要素の交差部分は、全てが織られた交差部分である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記複数の長手方向に延在する要素の交差部分は、少なくともいくつかの縫われた交差部分を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記ドクターブレードが非積層である、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権情報
本出願は、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる、2015年8月13日に出願された米国仮特許出願第62/204,738号に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は全般的には製紙機械で使用するドクターブレードおよび上板などの平板状要素に関し、特に改良された剛性および性能を提供するドクターブレードおよび上板に関する。
【0003】
ドクターブレードホルダで使用するドクターブレードおよび上板は、一般に、製紙システムなど、ロール、ウェブ、またはシートを含む製造システムにおいて、移動面を処理するために用いられる。
【0004】
移動面の処理は、一般に、ドクターブレードホルダによって保持されたドクターブレードによって行われ、ドクターブレードホルダは上板を含むことがある。ドクターブレードホルダは、ドクターブレードと協働して、ドクターブレードの作用縁部を処理される表面に当てる。例えば、
図1は、ロール12の表面に隣接する、従来技術のドクタリング装置10を示す。ロールは、軸線A
1を中心として回動し、ドクタリング装置は、軸線A
1に平行な軸線A
2を中心として回動可能なドクターバック14を含む。ドクターブレードホルダ16は、ドクターバックの一部を形成する横梁18に支持されて示されている。ドクターブレードホルダ16は、取付調節アセンブリによって連結された上板20および底板22を含む。ドクターブレード24は、上板20の下面にある下顎開口部26内に受け入れられる。
【0005】
さらに、
図2を参照すると、取付調節アセンブリは、回動ロッド32によって互いに連結された複数の上板ブラケット28と複数の底板ブラケット30とを含む。また、取付調整アセンブリはロードチューブ34およびアンロードチューブ36を含み、各チューブ内の流体の量を調節することによって、ロードチューブ34およびアンロードチューブ36はそれぞれ、大きさが互い違いに増加または減少して、回動ロッド32の中心軸線である軸線A
3周りの上板の回動を制限する効果をもたらす。この制限された回動によって、ドクターブレード24が、ロール12に掛かりドクタリングをもたらすか、またはロール12から外れることが可能になる。ドクターブレード24をロール表面の付近におよびロール表面から離れて全体的に配置するために、ピストン/シリンダ部38が、クランクアーム40を介して軸線A
2を中心としてドクターバック14を回動させるよう動作する。
【0006】
ドクターブレードは、金属(高剛性および低厚みのため)、プラスチック(厚みが大きくなるという代償を払っても表面に対する適合性がよいため)、または強化プラスチックで形成することができる。米国特許第4,549,933号には、例えば、ドクターブレードを形成するために互いに積層された複数の層を形成するときに合成材料(例えば、一部が配向された繊維)を使用することが開示されている。実際に、米国特許第4,549,933号には、マシン方向における高剛性および高強度によって、反りが小さく許容不可能なブレード厚さの増加(電力損失になる)のない必要なブレード負荷を可能にしながら、マシン横断方向おける低剛性によって、必要なブレード負荷の大きな変化なくブレードがロール表面の凸凹に適合することを可能にすることが述べられている。
【0007】
米国特許出願公開第2009/0208706号には、ポリウレタン表面コーティングを有する、ポリアミドおよびコポリエステル繊維からなる厚いニードルフェルトからドクターブレードを作製する方法が開示されている。米国特許第6,977,029号には、ニードルパンチングされた複数の繊維バット層を有する織布ベース層から作製されたシュープレス用途のドクターブレードが開示されている。また、この構造は、ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、およびポリエステル繊維から作製されている。
【0008】
ある従来技術のドクターブレードおよび上板は、二次元強化織物からなるいくつかの個別の層をポリマー樹脂と共に適用することによって作製される。使用される二次元強化織物は、典型的には、ガラス繊維、炭素繊維、または両方の組み合わせを含む。ガラス繊維織物がドクターブレードに清掃特性と研磨特性を付与する一方で、ドクターブレードの摩耗寿命と上板の強度および剛性を改良するために炭素強化材が使用される。両方の様々な組み合わせが、特定のドクターブレードまたは上板の特性および性能要求に応じて使用される。例えば、
図3に示すように、200gsm(g/m
2)の平織り二次元ガラス繊維織物からなる8つの層を互いに結合させて、厚さ1.5mmのドクターブレードを製造することができる。
【0009】
また、ドクターブレードおよび上板の耐衝撃性を増大させるために、アラミド繊維を含有する織物強化材が含まれてもよい。また、樹脂をさらに強化してブレードにさらなる特性増進をもたらすために、ミクロンサイズの充填材がよく使用される。例えば、ドクターブレードにさらなる研磨特性を付与するために、炭化ケイ素がよく使用される。
【0010】
ポリマー樹脂を硬化させて個々の二次元強化層を互いに化学的に結合するためには、熱および圧力が使用されてきた。しかしながら、研磨性および侵襲性の紙充填材(例えば炭酸カルシウムおよび二酸化チタン)との接触、粘着性異物との衝突、および石油化学ベースのロール洗浄溶剤への暴露を含む、抄紙機でしばしば経験される極端な条件下では、この化学結合は機能しないことがあり、例えば、
図4に示すように、紙料繊維がブレードまたは上板の本体内に入り込むにつれて、個々の層が開裂され層間剥離されて、最終的には故障することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,549,933号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0208706号明細書
【特許文献3】米国特許第6,977,029号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、改良された性能および耐久性を提供するドクターブレードなどの平板状要素が、製紙機械での使用において依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施形態によれば、本発明は製紙システムで使用する平板状要素を提供する。この平板状要素はドクターブレードまたは上板としての使用に適しており、平板状要素は、少なくとも3つの直交する方向にそれぞれ延びる細長い要素を含む三次元複合構造体と、この三次元複合構造体が内部に埋め込まれた樹脂とを含む。
【0014】
別の実施形態によれば、本発明は製紙システムで使用するドクターブレードを提供する。このドクターブレードは、三次元織物複合構造体と、この三次元複合構造体が内部に埋め込まれた樹脂とを含み、三次元織物複合構造体は、少なくとも3つの直交する方向にそれぞれ延びる細長い要素を含み、これらの細長い要素のうちの少なくともいくつかは互いに織り合わされている。
【0015】
さらなる実施形態によれば、本発明はドクターブレードを形成する方法を提供する。この方法は、3つの伸長方向のそれぞれに少なくとも部分的に延びる細長い要素を含む三次元織物構造体を形成するステップと、この三次元織物構造体を樹脂で埋め込むステップとを含む。
【0016】
以下の説明は、添付の図面を参照してさらに理解することができる。図面は説明の目的でのみ示されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の平板状要素が使用され得る製紙システムの例示的な図である。
【
図2】本発明の平板状要素が使用され得るドクターブレードおよびドクターブレードホルダシステムの例示的な図である。
【
図3】従来技術の層間剥離しているドクターブレードの例示的な図である。
【
図4】従来技術の一部がすり切れているドクターブレードの例示的な図である。
【
図5】互いに縫い合わされた複数の織物を含む、本発明の一実施形態による平板状要素の例示的な図である。
【
図6】単一の三次元織物を含む、本発明の別の実施形態による平板状要素の例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
様々な実施形態によれば、本発明は、工学的繊維配向の単一の三次元強化織物から作製されたドクターブレードまたは上板を提供し、この工学的繊維配向は、(1)織物に捲縮がないように縫合することによって、または(2)繊維が三次元織物ネットワークに互いに織り合わされる三次元製織によって、互いに絡み合った(interlocked)繊維を用いて、重要な性能特性を付与するように設計されている。これらの単一の三次元織物強化構築物は、具体的には、(1)方向特性を付与し、(2)ドクターブレードまたは上板の故障モードとしての層間剥離をなくすように、設計されている。
【0019】
この織物の糸および繊維は、例えば、ガラス、炭素、セラミック、アラミド、またはこれらの任意の1つもしくは組み合わせであってよく、同様に、ガラスおよび/または炭素とハイパフォーマンスサーモプラスチックとの組み合わせ/混繊(comingled)糸および繊維であってもよい。他の強化織物を使用することもできるが、ポリアミド繊維およびコポリエステル繊維など、研磨をもたらさない柔らかい繊維は適していない。ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、およびポリウレタンコーティングは、本発明の実施形態によって提供される製紙用ドクターブレードまたは上板の用途に要求される清掃性能、耐摩耗性、マシン方向剛性およびマシン横断方向可撓性、または実際にベベルエッジに欠損がないことという特性を提供しない。
【0020】
本発明の様々な実施形態では、ブレード構築物内で熱硬化性樹脂またはハイパフォーマンスサーモプラスチック樹脂が使用される。さらなる実施形態では、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の両方について樹脂内でのナノ粒子の使用が提供され、特に、球状シリカナノ粒子および多層カーボンナノチューブの使用が提供される。
【0021】
工学設計された単一の三次元強化織物は、高性能なドクターブレードまたは上板に必要とされる特定の重要な特性を付与するように設計された固有の繊維配向を伴って構築することができる。ここで、単一の三次元工学設計織物は、従来ドクターブレード構築物において使用されてきた織物よりも重量および厚さが大きく、また重要な特性とは、十分なマシン方向剛性、マシン横断方向可撓性、最適な切断性、清掃性、摩耗寿命、およびベベルエッジに欠損がないことを含む。単一の三次元織物は、本明細書では板厚(through-thickness)寸法と呼ぶ、(z)寸法または厚さ寸法を含む複数の方向に強化される。単一の三次元織物を使用してドクターブレードを作製することによって、剥離する個別の織物層がない。したがって、単一の三次元織物強化材を含んで作製されたドクターブレードまたは上板は、層間剥離によって故障することはあり得ない。従来の層状の二次元強化製品では、樹脂マトリクスにおいて亀裂ができ、強化層間の樹脂が豊富な領域に沿って急速に広がることがある。これらの亀裂は、ドクターブレードまたは上板の各層にかかる差歪みから異物からの衝撃に至る様々な理由により生じ得るものであり、製品の開裂および剥離による故障をもたらす。三次元強化材を使用することによって板厚方向繊維を組み込むことで、亀裂の伝搬を妨げて著しく減少させ、従来のドクターブレードおよび上板と比較して、より良好な耐衝撃損傷性を提供する一方で、同時に、改善された衝撃後機械的特性を提供する。現在の二次元積層は、Z方向に整列した繊維を有していないので、Z方向結合剤が全く欠けている。
【0022】
三次元強化材における板厚方向繊維の重要な機能は、面内の織物および繊維に機械的結合を提供することである。三次元構造体とそれに付随する板厚方向結合剤との一体的性質により、開裂および剥離によるまたは層間剥離による故障に対する耐性が著しく改善されたドクターブレードおよび上板が製造されることになる。さらに、単一の三次元織物の使用は、様々な繊維配向を様々な組み合わせで組み合わせることによってドクターブレードまたは上板に固有の特性を組み込むことを可能にする。例えば、マシン横断方向に可撓性を維持しつつマシン方向に剛性を付与するために、90°の配向の繊維を含めることができ、ドクターブレードが、ロールの輪郭に適合し、なおかつロールを清掃するためにマシン方向に十分な剛性を有することができるようにする。
【0023】
さらに、ドクターブレードの切断および清掃効率を増大させるために、例えば、+45°/−45°または+60°/−60°など多軸配向された繊維を含めることができる。本発明のさらなる実施形態として、寿命を延ばし、研磨摩耗に対する耐性を増大させ、抄紙シリンダまたはロールに対するドクターブレードの摩擦抵抗を減少させるために、炭素繊維を含めることができる。これらは、組み合わせガラス−炭素繊維として個別の繊維または糸として含めることができ、この組み合わせガラス−炭素繊維は、混繊ガラス−炭素繊維および糸、または撚りガラス−炭素繊維および糸を含むが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の一実施形態では、次に、様々な配向の様々な繊維の組み合わせを、それらが工学設計されたオーダーメードの繊維配向の単一の三次元強化織物へと機械的に結合されるように、互いに縫い合わせることができる。縫い合わせプロセスは、三次元構造体を形成するために強化織物層または繊維の積み重なりにステッチ糸を担持する針を挿入することからなる。このタイプの構築物では、繊維は絡み合っているが捲縮はない。捲縮がないことでより良好な摩耗特性がもたらされ、キャステレーションの可能性が取り除かれて磨耗縁部はより清浄になる。単一の三次元強化織物は、次に、単一の織物として樹脂含浸されることができ、したがってドクターブレードに加工される前に単一の織物として樹脂硬化される。このドクターブレードは、個別の強化層から構成されていないため、剥がれたり層間剥離したりすることはあり得ない。
【0025】
例えば、
図5は、ドクターブレードまたは上板として使用する、本発明の一実施形態による平板状要素50を示す。平板状要素50は織物層52、54、56を含み、これらの層は、それぞれが異なり、本明細書で説明したコア層および外側層の所望特性のために選択される。織物層52、54、56は、58で示されるように互いに縫い合わされて複合織物材料を提供し、この複合織物材料が、次に、ナノ粒子を含む樹脂59内に含浸され、硬化されて平板状要素を形成する。
【0026】
本発明の別の実施形態では、三次元ネットワーク状の繊維の一体化、組み合わせ(interlacing)、および絡み合いを有する単一の三次元連続織物として繊維を織り合わせることができる。このタイプの三次元織り構造体を製造するためには、3組の直交する糸(例えば、多層たて糸と2組のよこ糸)が、織物の長手方向および幅方向(xおよびy)と共に織物の厚さ方向(z)で組み合わされる。繰り返しになるが、その結果得られる単一の三次元強化織物は、層間剥離し得ないドクターブレードに加工される前に、単一の織物として樹脂含浸され、次に、単一の織物として樹脂硬化されることができる。
【0027】
図6は、織物の長手方向(x)と幅(y)方向とに組み合わされた2組のよこ糸64、66と、厚さ(z)方向の織物62とを含む多層織布構造体を含む平板状要素60を示す。この多層織布構造体は、次に、ナノ粒子を含む樹脂69内に含浸され、硬化されて平板状要素を形成する。
【0028】
両方の実施形態で故障モードとしての層間剥離が取り除かれる。その結果得られるドクターブレード特性は特定の織物構築物および繊維配向に依存する一方で、三次元強化織物は、ドクターブレード構築物で現在使用されている従来の二次元織物と比較した場合に、強度、剛性、および亀裂伝播の抑制が改善されることになる。
【0029】
必要なドクターブレード特性要件を達成するために、単一の三次元強化織物は、典型的な標準ドクターブレードに使用される従来の200gsmの織物強化材よりも典型的にははるかに重くて厚い。例えば、現在の典型的なドクターブレード強化織物の重量200gsm、厚さ0.2mmと比較して、ほぼ重量1700gsm、厚さ1.5mmとすることができる。
【0030】
本発明で言及される三次元強化織物の典型的な例は次のとおりであるが、これらに限定されない。
1. 50gsm ガラスベール/ 200gsm 90° ガラス繊維/ 200gsm 0° ガラス繊維/ 200gsm +45° ガラス繊維/ 400gsm −45° ガラス繊維/ 200gsm +45° ガラス繊維/ 200gsm 0° ガラス繊維/ 200gsm 90° ガラス繊維/ 50gsm ガラス繊維ベール。総重量=1700gsm。
2. 50gsm ガラスベール/ 300gsm 90° 炭素繊維/ 200gsm 0° ガラス繊維/ 200gsm +45° ガラス繊維/ 400gsm −45° ガラス繊維/ 200gsm +45° ガラス繊維/ 200gsm 0° ガラス繊維/ 300gsm 90° 炭素繊維/ 50gsm ガラス繊維ベール。総重量=1800gsm。
3. 単一の三次元ガラス繊維織物。総重量=1800gsm。
4. 組み合わせガラス−炭素繊維(比率60:40)を含んで作製された単一の三次元ガラス−炭素繊維織物。総重量=1600gsm。
【0031】
樹脂の特性および最終的な織物強化複合ドクターブレードの特性の両方をさらに高めるために、ミクロンサイズの添加剤を樹脂に添加することができることが知られている。しかし、単一の三次元強化織物の場合、表面繊維がフィルタとして作用し、ミクロンサイズの添加剤を織物の本体内に浸透させない。添加剤は、表面上に残留することになり、最終的な複合ドクターブレード構築物の全体に均一に分散しないことになる。この結果、ドクターブレードは、添加剤の不均一な分散およびその断面全体にわたる性質の変化を有することになる。解決策は、ナノ粒子を使用することである。ナノサイズの添加剤は、表面繊維を通過するのに十分小さい。したがって、ナノサイズの添加剤は、ドクターブレード構築物の全体にわたって均一に分散することができ、ドクターブレード断面の全体にわたって定常状態性能を確保することができる。
【0032】
例1で説明したように、上記構築物の単一の三次元織物から製造されたドクターブレードは、マシン方向の高剛性を有する一方で、同時にマシン横断方向の可撓性を示すが、ドクターブレードホルダへのドクターブレードの取り付けの助けとなるのに十分なマシン横断方向剛性を備えていることが分かった。これらは、高性能なドクターブレードに最適な特性である。また、ドクターブレードは、多軸ガラス繊維を含むことにより最適な切断および清掃特性を示した。ドクターブレードが単一の織物からなるという事実は、標準的な従来のドクターブレード構築物と対照的に、個々の織物層が剥離し得ないことを意味する。
【0033】
したがって、様々な実施形態によれば、本発明は、固有の繊維配向を伴って構築された、工学設計された単一の三次元強化織物から作製されたドクターブレードまたは上板を提供し、この固有の繊維配向は、高性能製紙ドクターブレードまたは上板に必要とされる特定の重要な特性を付与するように設計されている。ここで、単一の三次元工学設計織物は、従来ドクターブレード構築物において使用されてきた織物よりも重量および厚さが大きく、また、重要な特性とは、十分なマシン方向剛性、マシン横断方向可撓性、最適な切断性、清掃性、摩耗寿命、およびベベルエッジに欠損がないことを含む。織物には、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、無機繊維、有機繊維、合成繊維および/または改質合成繊維が含まれ得る。織物には、ガラス繊維および/または炭素繊維および/またはアラミド繊維の組み合わせが全ての可能な組み合わせで含まれ得る。織物には、混繊ガラス−炭素糸または繊維および撚りガラス−炭素糸または繊維を含む、組み合わせガラス/炭素糸または繊維が含まれ得る。織物には、組み合わせガラス/ハイパフォーマンスサーモプラスチック(HPT)の糸もしくは繊維、および/または炭素/ハイパフォーマンスサーモプラスチック糸もしくは繊維、および/またはガラス/炭素/HPT糸もしくは繊維が全ての可能な組み合わせで含まれることができ、例えば、混繊糸および繊維ならびに/または撚り糸および繊維が含まれるが、これらに限定されない。例えば、ガラスとハイパフォーマンスサーモプラスチックとの混繊、炭素とハイパフォーマンスサーモプラスチックとの混繊、またはガラスと、カーボンと、ハイパフォーマンスサーモプラスチックとの混繊などを含み得る。
【0034】
ドクターブレードは、0°方向、90°方向、または、例えば、+45°/−45°および/もしくは+60°/−60°ならびにそれらの組み合わせなどの多軸方向に配向された繊維を含有し得る。ドクターブレードは、エポキシ樹脂などの熱硬化樹脂を含んでもよく、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフタルアミド(PPA)、またはポリエーテルケトンケトン(PEKK)などであるがこれらに限定されないハイパフォーマンスサーモプラスチック(HPT)樹脂を含んで作製することができる。
【0035】
樹脂は、粉末、粒体、チューブ、繊維、および小板からなる群から選択されたナノ粒子を含有し得る。ナノ粒子は、金属であってもよく、金属酸化物、金属炭化物または金属窒化物、金属錯体、イオン構造体、および共有結合物からなる群から選択されてもよい。ナノ粒子は、粘土粒子、シリケート、セラミック材料、ガラス粒子、カーボンブラック、ヒュームドシリカ、炭酸カルシウム、球状シリカナノ粒子、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、多層カーボンナノチューブおよび単層カーボンナノチューブの両方を含むカーボンナノチューブ、ならびにセラミック粉末のナノ球体からなる群から選択された非金属ナノ粒子および/または共有結合ナノ粒子であってもよい。ナノ粒子は、ナノ粒子のタイプによって、ポリマー樹脂の約0.5重量%〜75重量%とすることができる。ナノ粒子はポリマー樹脂マトリクスの約3重量%とすることができ、ここで、ナノ粒子は本質的にカーボンナノチューブから構成される。ナノ粒子はポリマー樹脂マトリクスの1重量%〜5重量%とすることができ、ここで、ナノ粒子は本質的にカーボンナノチューブから構成される。ナノ粒子はポリマー樹脂マトリクスの30重量%〜50重量%とすることができ、このナノ粒子は本質的にシリカナノ粒子から構成され得る。
【0036】
当業者であれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、上記開示された実施形態に多くの修正および変更を施すことができることを理解するであろう。