(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697072
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】力及びトルクを検出する装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/16 20200101AFI20200511BHJP
【FI】
G01L5/16
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-511621(P2018-511621)
(86)(22)【出願日】2016年7月25日
(65)【公表番号】特表2018-526651(P2018-526651A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】EP2016067605
(87)【国際公開番号】WO2017036671
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2018年5月2日
(31)【優先権主張番号】15183934.7
(32)【優先日】2015年9月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502281471
【氏名又は名称】キストラー ホールディング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーラー、デニス
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0120051(US,A1)
【文献】
特開昭63−134929(JP,A)
【文献】
米国特許第3640130(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00− 5/28
G01L 1/00− 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2端面(82、82’)に対して傾斜して配置されている、第1端面(81、81’)を含む、複数の端面を有する載置プラットフォーム(8)と、
力成分(Fx、Fy、Fz)を検出し、第1圧電ロードセル(A、B)と第2圧電ロードセル(C、D)を含む、複数の圧電ロードセルとを具備し、複数の圧電ロードセルの各々は、水平作業面(XY)に配置され、載置プラットフォームの複数の端面のそれぞれ1つに対して、機械的にプレロードされる、力及びモーメントを測定する装置であって、
前記第1圧電ロードセル(A、B)は、前記載置プラットフォーム(8)の前記第1端面(81、81’)に対して、プレロードされ、前記第2圧電ロードセル(C、D)は、前記載置プラットフォーム(8)の第2端面(82、82’)に対して、プレロードされ、
前記第1端面(81、81’)は、第2端面(82、82’)に対して垂直に配置され、第1座標軸(X)は、前記第1端面(81、81’)の法線の方向に延在し、第2座標軸(Y)は、前記第2端面(82、82’)の法線の方向に延在し、前記複数の圧電ロードセルの第1圧電ロードセル(A、B)は、第1端面(81、81’)に配置され、前記複数の圧電ロードセルの第2圧電ロードセル(C、D)は、第2端面(82、82’)に配置され、前記第1圧電ロードセル(A、B)は、縦効果によって第1力成分(Fx)を、かつ、せん断効果によって第2力成分(Fy)を測定するように構成し、前記第2圧電ロードセル(C、D)は、せん断効果によって第1力成分(Fx)を、かつ、縦効果によって第2力成分(Fy)を測定するように構成し、
各圧電ロードセル(A、B、C、D)は、プレロードねじ(10、10’、10’’、10’’’)によって機械的にプレロードされる、又は、各圧電ロードセル(A、B、C、D)は、プレロードねじ(10、10’、10’’、10’’’)を用いて機械的にプレロードされ、前記プレロードねじ(10、10’、10’’、10’’’)は、前記圧電ロードセル(A、B、C、D)の中央通路の中心を通って、前記端面(81、81’、82、82’)のスレッドにねじ込まれる、
ことを特徴とする、力及びモーメントを測定する装置。
【請求項2】
前記第1力成分(Fx)と第2力成分(Fy)はそれぞれ、一方ではせん断効果によって検出され、他方では縦効果によって検出されることにより、前記装置(1)は、前記水平作業面(XY)において等方性感度を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記第1圧電ロードセル(A、B)は、せん断効果によって第3力成分(Fz)を測定し、第2圧電ロードセル(C、D)は、せん断効果によって第3力成分(Fz)を測定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記載置プラットフォーム(8)は、水平作業面(XY)に配置された長方形のベース領域(83)を有する直方体であり、前記載置プラットフォーム(8)は、4つの長方形の端面(81、81’、82、82’)を有し、前記端面(81、81’、82、82’)が前記ベース領域(83)に対して垂直に延在し、2つの第1端面(81、81’)が第1垂直面(YZ)に配置され、2つの第2端面(82、82’)が第2垂直面(XZ)に配置されている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
圧電ロードセル(A、B、C、D)は、前記端面(81、81’、82、82’)のそれぞれに配置される、又は、ロードセル(A、B、C、D)は、各端面(81、81’、82、82’)の中央に配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記圧電ロードセル(A、B、C、D)は、前記端面(81、81’、82、82’)の凹部に配置される、又は、前記圧電ロードセル(A、B、C、D)は、前記端面(81、81’、82、82’)の凹部にほぼ完全に収容される、
ことを特徴とする請求項5に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記圧電ロードセル(A、B、C、D)は、互いに等距離(e)に配置され、及び/又は、前記圧電ロードセル(A、B、C、D)は、前記載置プラットフォーム(8)上に十字形状に配置される、
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の装置(1)。
【請求項8】
中空シリンダの形状を有している前記圧電ロードセル(A、B、C、D)の直径の面積の総和の、前記端面(81、81’、82、82’)の面積の総和に対する利用率は、25%以上である、
ことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
中空シリンダの形状を有している前記圧電ロードセル(A、B、C、D)の直径の面積の総和の、前記端面(81、81’、82、82’)の面積の総和に対する利用率は、50%である、
ことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記第1座標軸(X)に沿った剛性は、前記圧電ロードセル(A、B)の圧縮強度と前記圧電ロードセル(C、D)のせん断剛性の総和であり、前記第2座標軸(Y)に沿った剛性は、前記圧電ロードセル(C、D)の圧縮強度と前記圧電ロードセル(A、B)のせん断剛性の総和であり、それにより、前記装置(1)は、前記水平作業面(XY)において等方性の剛性を有し、前記装置(1)の固有振動数(f)は、前記水平作業面(XY)において等方性を有する、
ことを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項11】
各圧電ロードセル(A、B、C、D)は、複数の圧電変換器(6、6’、6’’)を備え、検出する力(F)及び/又は検出するモーメント(M)は、前記圧電変換器(6、6’、6’’)の表面に作用して、これらの表面に分極電荷を発生させ、信号電極は、前記圧電変換器(6、6’、6’’)の表面に関連し、前記信号電極が前記分極電荷をピックアップし、信号線(15)は、ピックアップされた分極電荷を信号として伝送する、
ことを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記第1圧電変換器(6)に関連する信号電極は、互いに直列に電気接続され、信号線(15)を介して、前記力(F)の第1力成分(Fx)に比例した分極電荷の総和である信号を伝送し、
前記第2圧電変換器(6’)に関連する信号電極は、互いに直列に電気接続され、信号線(15)を介して、前記力(F)の第2力成分(Fy)に比例した分極電荷の総和である信号を伝送し、
前記第3圧電変換器(6’’)に関連する信号電極は、互いに直列に電気接続され、信号線(15)を介して、前記力(F)の力成分(Fz)に比例した分極電荷の総和である信号を伝送する、
ことを特徴とする請求項11に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記第1圧電変換器(6)に関連する2つの第1信号電極は、互いに直列に電気接続され、信号線(15)を介して、前記力(F)の第1力成分(Fx)に比例した分極電荷の総和である信号を伝送し、
前記第2圧電変換器(6’)に関連する2つの第1信号電極は、互いに直列に電気接続され、信号線(15)を介して、前記力(F)の第2力成分(Fy)に比例した分極電荷の総和である信号を伝送し、
前記第1圧電変換器(6)に関連するさらに2つの信号電極と、前記第2圧電変換器(6’)に関連するさらに2つの信号電極とは、互いに直列に電気接続され、信号線(15)を介して、モーメント(M)の第3モーメント成分(Mz)に比例した分極電荷の総和である信号を伝送し、
前記第3圧電変換器(6’’)に関連する前記信号電極は、互いに直列に電気接続され、信号線(15)を介して、前記力(F)の力成分(Fz)に比例した分極電荷の総和である信号を伝送する、
ことを特徴とする請求項11に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記信号電極は、並列接続され、信号線(15)を介して、前記各圧電変換器(6、6’、6’’)からの分極電荷である個別信号をそれぞれ伝送する、
ことを特徴とする請求項11に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立項のプリアンブルに記載の力及びモーメントを測定する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械加工は、今もなお最も重要な成形方法であり、あらゆる種類の工業製品の製造プロセスにとって基本となるものである。機械加工の詳細な分析を行うことは、製造プロセスの最適化にとって重要である。従って、機械加工中に力及びモーメントの測定を行い、その結果得られた情報により、機械加工中に変換されたエネルギーの定量化、材料特性の判定、ツールの摩耗分析を行って、必要に応じた機械構造/部品の設計を可能にする。
【0003】
特許文献1には、力及びモーメントを測定する装置が開示されている。この装置が
図1に概略的に示されている。T字型の載置プラットフォーム8には、ツール5により機械加工が行われたワークピース4が載置されている。載置プラットフォーム8のステムは、U字型のスタンド9の2つの脚部間に支持されている。このスタンド9の各脚部と載置プラットフォーム8のステム間には、圧電ロードセルA、Bが配置されている。これらの圧電ロードセルA、Bは、プレロードねじ10によって機械的にプレロードされる。このプレロードねじ10は、圧電ロードセルA、B、載置プラットフォーム8のステム、スタンド9の脚部を通る。このワークピース4の機械加工中は、一方向の力Fがプレロードねじ10の前後面の方向に作用する。この一方向の力Fが圧電ロードセルA、B間に等しく分割される。圧電ロードセルAが+1/2Fの力によってアンロードされ、圧電ロードセルBが+1/2Fの力によってロードされる。各圧電ロードセルA、Bは、圧電変換器を備えている。この圧電変換器の結晶は、それらに作用する力によって分極電荷が生成されるよう配向される。圧電変換器は、それぞれ反対の分極方向を有する。従って、圧電ロードセルA、Bの分極電荷の総和は、それらに作用する力Fの大きさに比例する。
【0004】
タイプ指定9119AA1を有するこのタイプの力及びモーメントを測定する装置は、Kistlerグループから市販されている。その詳細がデータシート第9119AA1_003_060e−01.13号に記載されている。この装置は、4つの圧電ロードセルを備え、そのうちの2つが載置プラットフォームのステムの両側にそれぞれ配置されている。この圧電ロードセルは、力Fの3つの直交する力成分F
x、F
y、F
zを測定する。分極電荷が成分別にピックアップされ、信号線を介して電荷増幅器に伝送されて、電気的に増幅された後、評価ユニットへと送られて電圧に変換される。この装置は、測定範囲、感度、固有振動数、重さ、全ベース領域などのパラメータで特徴付けられている。装置の測定範囲は、力成分F
x、F
y、F
zについて、−4kNから+4kNの範囲である。装置の感度は、力成分F
x、F
zについては約26pc/N、力成分F
yについては約13pc/Nである。装置の固有振動数は、力成分F
xは約6.0kHZ、力成分F
yは約6.4kHZ、力成分F
zは約6.3kHZである。その重さは930gで、全ベース領域は、109×80mmである。
【0005】
しかしながら、従来技術のデータシート9119AA1_003_060e−01.13による力及びモーメントを測定する装置は、異なる力成分に対して異方性感度を示す。特に、載置プラットフォームの水平作業面では、26pc/Nの力成分F
xの感度は、13pc/Nである力成分F
yの感度の2倍高い。機械加工は、多くの場合、水平作業面に対して、回転対称に行われるため、作業面の装置の実際の感度は、力成分F
yに関して低感度で決定される。さらに、6.0kHZまでのF
xの最低の固有振動数は、装置の使用を、1分間で最大60,000回転までのスピンドルスピードに制限するため、装置の固有振動数の増加が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特出願公開第0806643号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、力及びモーメントを測定する装置の感度及び固有振動数のパラメータのうちの少なくとも一つを向上させることである。
【0008】
この目的は、独立項の特徴によって達成される。
【0009】
本発明は、力及びモーメントを測定する装置に関し、この装置は、水平作業面において載置プラットフォームの端面に対して機械的にプレロードされ、力成分を測定する圧電ロードセルを備え、載置プラットフォームの少なくとも一つの第1端面は、少なくとも一つの第2端面に対して傾斜して配置されている。
【0010】
圧電力センサーが互いに傾斜して配置されている場合、載置プラットフォームの水平作業面における感度の異方性を回避することができることが分かっている。つまり、一つの力成分をせん断効果によって検出し、他の力成分を縦効果によって検出する。このようにすることで、せん断効果の感度が縦効果の2倍になる。圧電ロードセルを傾斜して配置することにより、水平作業面の2つの力成分がそれぞれ、一方ではせん断効果によって検出され、他方では縦効果によって検出される。従って、本発明の装置は、水平作業面において等方性の感度を示す。
【0011】
以下の図面を参照しながら、一例として、本発明を以下にさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来知られている力及びモーメントを測定する装置を示す概略図である。
【
図2】本発明に係る力及びモーメントを測定する装置の第1実施例の一部を示す概略上面図である。
【
図3】
図2に示す本発明に係る装置の第1実施例の一部の水平座標軸に沿った概略断面図である。
【
図4】本発明に係る力及びモーメントを測定する装置の第2実施例の一部を示す概略上面図である。
【
図5】
図4に示す本発明に係る装置の第2実施例の一部の水平座標軸に沿った概略断面図である。
【
図6】
図2乃至
図5に示す本発明に係る装置の信号ピックアップ伝送の第1実施例を示す概略図である。
【
図7】
図2乃至
図5に示す本発明に係る装置の信号ピックアップ伝送の第2実施例を示す概略図である。
【
図8】
図2乃至
図5に示す本発明に係る装置の信号ピックアップ伝送の第3実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2乃至
図5は、本発明に係る力及びモーメントを測定する装置1の2つの実施例を示す。装置1は、座標軸x、y、zを有する直交座標系に配置されている。この装置1は、純金属、ニッケル合金、コバルト合金、鉄合金、セラミック、プラスチックなどの機械的に耐久性のある剛性材料でできた載置プラットフォーム8を備えている。この載置プラットフォーム8には、ワークピースやツールを載置することができる。このツールやワークピースは図示されていない。機械加工を行うには、載置プラットフォーム8を、同様に図示されていないアダプタによって機械上に設置してもよい。
【0014】
載置プラットフォーム8は、水平作業面XYに配置された長方形のベース領域83を有する直方体であることが好ましい。載置プラットフォーム8は、4つの長方形の端面81、81’、82、82’を有し、この端面81、81’、82、82’がベース領域83に対して垂直に延在している。第1座標軸Xは、第1端面81、81’の法線の方向に延在し、第2座標軸Yは、第2端面82、82’の法線の方向に延在している。第3座標軸Yは、水平作業面XYに垂直である。つまり、2つの第1端面81、81’が第1垂直面YZに配置され、2つの第2端面82、82’が第2垂直面XZに配置されている。第1垂直面YZは、第2垂直面XZに対して斜めに延在している。この「斜めに」という副詞は、2つの垂直面YZ、XZが互いに対して傾斜する、ゼロとは異なる角度を意味するものである。各第1端面81、81’の中央には、第1座標軸Xに沿って延在するプレロードねじ10、10’のスレッドが配置されている。各第2端面82、82’の中央には、第2座標軸Yに沿って延在するプレロードねじ10、10’のスレッドが配置されている。載置プラットフォーム8のベース領域83は、任意の大きさであってもよいが、100×100mm以下、好ましくは80×80mm以下、より好ましくは50×50mm以下、さらに好ましくは25×25mm以下、またさらに好ましくは20×20mm以下の寸法を有することが好ましい。載置プラットフォーム8の高さは、30mm以下、好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下である。従って、端面81、81’、82、82’の大きさは、100×30mm以下、好ましくは80×30mm以下、より好ましくは50×25mm以下、さらに好ましくは25×25mm以下、またさらに好ましくは20×20mm以下である。
【0015】
また、上記装置1は、純金属、ニッケル合金、コバルト合金、鉄合金、セラミック、プラスチックなどの機械的に耐久性のある剛性材料でできたプレート7、7’、7’’、7’’’を備えている。各プレート7、7’、7’’、7’’’は、水平作業面XYに配置された長方形のベース領域73を有している。このプレート7、7’、7’’、7’’’は、第1及び第2座標軸X、Yに沿って、プレロードねじ10、10’、10’’、10’’’の配向通路を有している。各プレート7、7’、7’’、7’’’のベース領域73は、任意の大きさであってもよいが、100×100mm以下、好ましくは80×80mm以下、より好ましくは50×50mm以下、さらに好ましくは25×25mm以下、またさらに好ましくは20×20mm以下であることが好ましい。各プレート7、7’、7’’、7’’’の高さは、30mm以下、好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下である。この装置1は、4つ以上のプレート7、7’、7’’、7’’’を備えていることが好ましい。
【0016】
上記装置1の全ベース領域は、載置プラットフォーム8のベース領域83と、4つのプレート7、7’、7’’、7’’’のベース領域73との総和であり、
図3に示す実施例における装置1では、75×75mmであることが好ましい。データシート9119AA1_003_060e−01.13に記載の従来から知られている力及びモーメントを測定する装置は、重さm’=900g、高さ25mmで、全ベース領域が109×80mmである。従って、本発明に係る装置1の全ベース領域は、既知の装置の全ベース領域よりも約35%小さい。そのため、本発明に係る装置1の重さmも約35%小さく、約580gである。これは、本発明に係る装置1の固有振動数fに影響を与える。本発明に係る装置1が線形振動を発生すると仮定した場合、固有振動数fは、重さmに比例する。
【0018】
本発明に係る装置1の重さmが既知の装置よりも約35%小さいので、本発明に係る装置1の固有振動数fが約25%高くなる。
【0019】
また、上記装置1は、複数の圧電ロードセルA、B、C、Dを備えている。この圧電ロードセルA、B、C、Dは、プレロードねじ10、10’、10’’、10’’’のための中央通路を有する中空シリンダの形状を有していることが好ましい。圧電ロードセルA、B、C、Dの中空シリンダは、10mm以下の高さを有する。また、圧電ロードセルA、B、C、Dの中空シリンダは、20mm以下の直径を有する。装置1は、4つの圧電ロードセルA、B、C、Dを備えていることが好ましい。圧電ロードセルA、B、C、Dはそれぞれ、水平作業面XY内における載置プラットフォーム8の各端面81、81’、82、82’に配置されている。第1圧電ロードセルA、Bは、第1座標軸Xに沿って第1端面81、81’の中央にそれぞれ配置され、第2圧電ロードセルは、第2座標軸Yに沿って第2端面82、82’の中央にそれぞれ配置されている。圧電ロードセルA、B、C、Dは、互いに等距離eに配置されている。そのため、装置1は、4つの圧電ロードセルA、B、C、Dが作業プラットフォーム8上の水平作業面XYにおいて十字形を形成するよう構成されている。圧電ロードセルA、B、C、Dの中空シリンダ直径の面積の総和と、端面81、81’、82、82’の面積の総和との利用率は、25%以上であり、好ましくは50%である。
図3及び
図4に示す実施例では、中空シリンダ直径の大きさが20mm、端面81、81’、82、82’の大きさが25×25mmである。これにより、利用率が50%となる。データシート9119AA1_003_060e−01.13に記載の従来から知られている力及びモーメントを測定する装置では、圧電ロードセルは、4つの端面のうちの2つだけにしか配置されておらず、さらに、これら2つの端面では、中空シリンダ直径の大きさが、端面の大きさの半分未満である。4つの端面のうちの残りの2つには圧電ロードセルが配置されない。これにより、利用率が25%未満となる。
【0020】
図2及び
図3に示すような装置1の第1実施例では、圧電ロードセルA、B、C、Dが、平坦な端面81、81’、82、82’に配置されている。
図4及び
図5に示すような装置1の第2実施例では、圧電ロードセルA、B、C、Dが、端面81、81’、82、82’の凹部に配置されている。圧電ロードセルA、B、C、Dは、端面81、81’、82、82’の凹部にほぼ完全に収容されるように配置されている。この点で、「ほぼ」という副詞は、各圧電ロードセルA、B、C、Dが、±10%の誤差で凹部に収まることを意味するものである。
図2及び
図3の第1実施例と比較して、圧電ロードセルA、B、C、Dが端面81、81’、82、82’の凹部に配置されることによって、装置1の外形寸法が圧電ロードセルA、B、C、Dの中空シリンダ高さの倍縮小することになる。さらに、端面81、81’、82、82’に凹部を設けることにより、載置プラットフォーム8が軽量化される。
図2に示す実施例と比較して、装置1の外形寸法の縮小と、載置プラットフォーム8の重さmの軽量化により、
図3に示す実施例において、装置1の固有振動数fが増大することになる。
【0021】
圧電ロードセルA、B、C、Dは、機械的プレロードにより載置プラットフォーム8に配置される。このため、第1圧電ロードセルA、Bは、第1及び第2プレロードねじ10、10’により、第1座標軸Xに沿って第1端面81、81’に機械的にプレロードされる。そして、第2圧電ロードセルC、Dは、第3及び第4プレロードねじ10’’、10’’’により、第2座標軸Yに沿って第2端面82、82’に機械的にプレロードされる。プレロードねじ10、10’、10’’、10’’’は、純金属、ニッケル合金、コバルト合金、鉄合金、セラミック、プラスチックなどの機械的に耐久性のある剛性材料でできている。プレロードねじ10、10’、10’’、10’’’は、プレート7、7’、7’’、7’’’の通路の中心及び圧電ロードセルA、B、C、Dの中央通路を通って、載置プラットフォーム8の端面81、81’、82、82’のスレッドにねじ込まれる。このプレロードねじ10、10’、10’’、10’’’のねじ頭部は、プレート7、7’、7’’、7’’’の通路に埋め込まれている。圧電ロードセルA、B、C、Dと載置プラットフォーム8は、プレロードねじ10、10’、10’’、10’’’によって、プレート7、7’、7’’、7’’’に支持されている。この機械的プレロードにより、力Fを圧縮力や張力として検出可能である。また、機械的プレロードにより、圧電変換器6、6’、6’’と電極との間に非常に良好な電気接続が得られることになる。
【0022】
各圧電ロードセルA、B、C、Dは、複数の圧電変換器6、6’、6’’を備えている。この圧電変換器6、6’、6’’は、円筒形状を有し、石英(SiO
2単結晶)、カルシウムガロゲルマニウム酸塩(Ca
3Ga
2Ge
4O
14又はCGG)、ランガサイト(La
3Ga
5SiO
14又はLGS)、トルマリン、ガリウムオルトリン酸塩などの圧電性結晶材料でできている。圧電変換器6、6’、6’’の切断は、力Fの検出やモーメントMの検出が行われる高い感度が得られる結晶配向で行われる。このような高い感度が得られる結晶配向は、分極方向と呼ばれる。圧電ロードセルA、Bの圧電変換器6、6’、6’’は、それぞれ反対の分極方向で第1座標軸Xに沿って配置され、圧電ロードセルC、Dの圧電変換器6、6’、6’’は、それぞれ反対の分極方向で第2座標軸Yに沿って配置されている。
【0023】
圧電変換器6、6’、6’’の表面は、力Fが作用するそれらの表面に負及び正の分極電荷が生成されるよう配向されることが好ましい。機械的負荷の場合、力Fは、圧縮力として作用し、負の分極電荷が生成される。一方、機械的解放の場合、力Fは、張力として作用し、正の分極電荷が生成される。この力Fは、垂直抗力又はせん断力であってもよい。従って、縦効果とせん断効果とが区別される。縦効果は、面法線が垂直抗力の有効軸に平行な面において分極電荷を生じさせる。せん断効果は、面法線がせん断力の有効軸と垂直な面において分極電荷を生じさせる。各ロードセルA、B、C、Dは、3つの圧電変換器6、6’、6’’を備えている。
【0024】
各圧電変換器6、6’、6’’は、力Fの3つの力成分F
x、F
y、F
zを検出する。第1座標軸Xに沿って延在する第1圧電ロードセルA、Bでは、第1圧電変換器6が縦効果によって第1力成分F
xを検出し、第2圧電変換器6’がせん断効果によって第2力成分F
yを検出し、第3圧電変換器6’’がせん断効果によって第3力成分F
zを検出する。第2座標軸Yに沿って延在する第2圧電ロードセルC、Dでは、第1圧電変換器6がせん断効果によって第1力成分F
xを検出し、第2圧電変換器6’が縦効果によって第2力成分F
yを検出し、第3圧電変換器6’’がせん断効果によって第3力成分F
zを検出する。従って、水平作業面XYの2つの力成分F
x、F
yは、一方ではせん断効果によって検出され、他方では縦効果によって検出される。このように、装置1は、水平作業面XYにおいて等方性感度を示す。
【0025】
装置1は、垂直抗力の有効軸に平行な圧縮強度を有し、せん断力の有効軸に平行なせん断剛性を有する。せん断力は、垂直抗力に対して垂直に作用する。しかしながら、圧縮強度は、せん断剛性より高いことが分かっている。このように、データシート9017C_000−960d−01.14には、3つの圧電ロードセルを備えた3成分力センサーに関して、約1400N/μmの圧縮強度と約300N/μmのせん断剛性について記載されている。よって、本発明に係る装置1の圧縮強度は、そのせん断剛性の約4.7倍である。装置1の4つの圧電ロードセルA、B、C、Dは、作業プラットフォーム8上の水平作業面XYにおいて十字形状に配置されている。剛性は、圧縮強度とせん断剛性の総和である。この剛性は、第1座標軸Xに沿った、2つの圧電ロードセルA、Bの圧縮強度と2つの圧電ロードセルC、Dのせん断剛性の総和である。また、この剛性は、第2座標軸Yに沿った、2つの圧電ロードセルC、Dの圧縮強度と2つの圧電ロードセルA、Bのせん断剛性の総和である。従って、本発明に係る装置1の剛性は、水平作業面XYにおいて等方性を有する。
【0026】
この点で、本発明に係る装置1は、特許文献1に記載の従来から知られている力及びモーメントを測定する装置とは異なる。この既知の装置は、4つの圧電ロードセルA、Bをすべて水平作業面XYの座標軸Yに沿って配置することを教示している。Y座標軸に沿った剛性は、4つの圧電ロードセルA、Bの圧縮強度の総和と等しい。また、X座標軸に沿った剛性は、4つの圧電ロードセルA、Bのせん断剛性の総和と等しい。そのため、既知の装置の剛性は、X座標軸よりもY座標軸に沿った方が高くなる。従って、既知の装置の剛性は、水平作業面XYにおいて異方性を有する。
【0027】
本発明に係る装置1の
等方性剛性は、固有振動数fに影響を与える。よって、データシート9119AA1_003_060e−01:13に記載の従来から知られている力及びモーメントを測定する装置は、力成分F
xに対して約6.0kHz、そして、力成分F
yに対して約6.4kHzの異方性固有振動数を有する。水平作業面XYにおいて回転対称的に機械加工が行われ、固有振動数が従来の装置と同様に異方性を有する場合、実際の固有振動数は、X座標軸の低い方の固有振動数によって決まる。従って、本発明に係る装置1の固有振動数fは、水平作業面XYにおいて等方性を有する。
【0028】
圧電ロードセルA、B、C、Dの圧電変換器6、6’、6’’は、ディスク形状であり、中央通路を有することが好ましい。圧電変換器6、6’、6’’のディスク面の高さは、圧電変換器6、6’、6’’のディスク直径の約10分の1である。力Fは、圧電変換器6、6’、6’’の2つの表面を介して加えられる。これらの表面は、圧電変換器6、6’、6’’のディスク直径の面に存在する。各表面は、分極電荷をピックアップするための電極と関連している。この電極は図示されていない。電極は、鋼、銅、銅合金などの導電性金属でできている。各電極は、それと関連する表面と2次元で電気的に接続する。電極は、ディスク形状であり、中央通路を有することが好ましい。各圧電変換器6、6’、6’’は、その表面と関連する2つの電極の間に配置されている。これらの電極は、信号電極と対電極とに細分化される。載置プラットフォーム8にも対向する圧電変換器6、6’、6’’の表面に関連する電極は、信号電極として機能する。載置プラットフォーム8に背を向ける圧電変換器6、6’、6’’の表面に関連する電極は、対電極として機能する。この対電極は、接地電位である。
【0029】
各圧電ロードセルA、B、C、Dは、純金属、ニッケル合金、コバルト合金、鉄合金、セラミック、プラスチックなどの機械的に耐久性のある剛性材料でできた円筒状のハウジングを備えている。このハウジングは、中央通路を有する中空シリンダであることが好ましい。ハウジングは、内側円周面と、外側円周面と、2つのベース領域とを有する。各圧電ロードセルA、B、C、Dの圧電変換器6、6’、6’’は、内側円周面と外側円周面との間の空間に配置されている。圧電変換器6、6’、6’’は、互いに積み重ねられている。この積み重ねられた圧電変換器の電極は、絶縁体によって、お互いに、かつハウジングに対して電気的に絶縁されている。この絶縁体は、中央通路を有するディスク形状であることが好ましい。この絶縁体は図示されていない。圧電ロードセルA、B、C、Dのハウジングは、動作中に生じ得る衝撃やインパクトから圧電変換器6、6’、6’’、電極、絶縁体を保護する。さらに、ハウジングは、不純物(粉塵、湿気など)などの周辺環境からの悪影響からも圧電変換器6、6’、6’’、電極、絶縁体を保護する。最後に、ハウジングは、電磁放射線状の電気的及び電磁的干渉効果から圧電変換器6、6’、6’’、電極、絶縁体を保護する。
【0030】
図6乃至
図8は、装置1の信号ピックアップ伝送の3つの実施例を概略的に示す。電極からピックアップされた分極電荷は、圧電ロードセルA、B、C、Dの各ハウジングから電気フィードスルーを介して、かつ、各ハウジングの外側から信号線15を介して電荷増幅器16へ、またそこから評価ユニット17へと伝達される。各圧電ロードセルA、B、C、Dは、4つの信号線15に電気的に接続されることが好ましい。各圧電ロードセルA、B、C、Dの3つの圧電変換器6、6’、6’’の信号電極の信号は、3つの信号線15によって伝送される。3つの圧電変換器6、6’、6’’の対電極は、第4信号線15を介して共通電位に接地される。
【0031】
図6に示す信号ピックアップ伝送の第1実施例では、信号電極と対電極が直列に接続されている。4つの圧電ロードセルA、B、C、Dの信号電極と対電極とは、プラグイン接続形式で、3つの信号線15を介して、互いに電気接続されている。第1圧電変換器6に関連する信号電極は、互いに直列に電気接続され、信号線15を介して、第1力成分F
xに比例した分極電荷の総和である信号を伝送する。
【0033】
ここで、2番目の添え字は、圧電ロードセルA、B、C、Dを示す。第2圧電変換器6’に関連する信号電極は、互いに直列に電気接続され、信号線15を介して、第2力成分F
yに比例した分極電荷の総和である信号を伝送する。
【0035】
第3圧電変換器6’’に関連する信号電極は、互いに直列に電気接続され、信号線15を介して、力成分F
zに比例した分極電荷の総和である信号を伝送する。
【0037】
これらの直列接続された信号電極を有する装置1は、力Fの3つの力成分F
x、F
y、F
zの3成分変換器である。
【0038】
図7に示す信号ピックアップ伝送の第2実施例では、信号電極と対電極が部分的に直列に、また部分的に並列に接続されている。4つの圧電ロードセルA、B、C、Dの信号電極と対電極とは、プラグ接続形式で、4つの信号線15によって互いに電気的に接続されている。第1圧電変換器6に関連する2つの第1信号電極は、互いに直列に電気接続され、信号線15を介して、第1力成分F
xに比例した分極電荷の総和である信号を伝送する。
【0040】
第2圧電変換器6’に関連する2つの第1信号電極は、互いに直列に電気接続され、信号線15を介して、第2力成分F
yに比例した分極電荷の総和である信号を伝送する。
【0042】
第1圧電変換器6に関連するさらに2つの信号電極と、第2圧電変換器6’に関連するさらに2つの信号電極とは、互いに直列に電気接続され、信号線15を介して、モーメントMの第3モーメント成分M
zに比例した分極電荷の総和である信号を伝送する。
【0044】
第3圧電変換器6’’に関連する信号電極は、互いに直列に電気接続され、信号線15を介して、第3力成分F
zに比例した分極電荷の総和である信号を伝送する。
【0046】
3つの圧電変換器6、6’、6’’の対電極は、第4信号線15を介して共通電位に接地される。これらの部分的に直列接続、また部分的に並列接続された信号電極を有する装置1は、力Fの3つの力成分F
x、F
y、F
zとモーメントMのモーメント成分M
zの4成分変換器である。
【0047】
図8に示す信号ピックアップ伝送の第3実施例では、圧電変換器6、6’、6’’に関連する信号電極が並列接続され、対電極が直列接続されている。4つの圧電ロードセルA、B、C、Dの3つの圧電変換器6、6’、6’’のそれぞれの分極電荷は、信号電極によってピックアップされ、12個の信号線15を介して個別信号として伝送される。これらの並列接続された信号電極を有する装置1は、12成分変換器である。個別信号は、電荷増幅器16で電気的に増幅され、評価ユニット17に伝送される。この増幅された信号は、評価ユニット17で処理される。このように、力Fの力成分F
x、F
y、F
zを測定する信号は、以下のように相互に関連付けることができる。
【0049】
ここで、2番目の添え字は、圧電ロードセルA、B、C、Dを示す。さらに、載置プラットフォーム8の中心に対してモーメントMのモーメント成分M
x、M
y、M
zを測定する信号は、以下のように相互に関連付けることができる。
【0051】
ここで、eは、圧電ロードセルA、B、C、Dの互いの距離である。
【0052】
本発明を知る当業者は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更を加えることができる。従って、当業者は、端面が3つしかない載置プラットフォームや、5つ以上の端面を有する載置プラットフォームを設けてもよい。さらに、当業者は、圧電変換器として、圧電性結晶材料の代わりに、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックスや、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの圧電フィルムを使用してもよい。また、当業者は、載置プラットフォームの一つの端面に複数の圧電ロードセルを設けてもよい。
【符号の説明】
【0053】
A、B、C、D 圧電ロードセル
e 距離
f 固有振動数
F 力
F
x、F
y、F
z 力成分
m、m’ 重さ
M モーメント
M
x、M
y、M
z モーメント成分
X、Y、Z 座標軸
XY 水平作業面
YZ、XZ 垂直面
1 装置
4 ワークピース
5 ツール
6、6’、6’’ 圧電変換器
7、7’、7’’、7’’’ プレート
8 載置プラットフォーム
9 スタンド
10、10’、10’’、10’’’ プレロードねじ
15 信号線
16 電荷増幅器
17 評価ユニット
73 プレートのベース領域
81、81’ 第1端面
82、82’ 第2端面
83 載置プラットフォームのベース領域