特許第6697096号(P6697096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697096
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】トップケース構造体
(51)【国際特許分類】
   B62J 9/00 20200101AFI20200511BHJP
   B62J 1/28 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   B62J9/00 B
   B62J1/28 Z
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-555115(P2018-555115)
(86)(22)【出願日】2017年3月1日
(65)【公表番号】特表2019-514776(P2019-514776A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】EP2017054695
(87)【国際公開番号】WO2017182184
(87)【国際公開日】20171026
【審査請求日】2018年10月29日
(31)【優先権主張番号】102016206776.1
(32)【優先日】2016年4月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト・ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ジーフェルス−パウルゼン・ヨハン
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許発明第102012202274(DE,B3)
【文献】 独国特許出願公開第102013207190(DE,A1)
【文献】 実開昭59−104880(JP,U)
【文献】 特開昭59−018075(JP,A)
【文献】 特開平11−263261(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0061269(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 9/00
B62J 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両、特にオートバイまたはオートバイに類する車両のためのトップケース構造体であって、トップケース(11,21)と、当該トップケース(11,21)の下方に配置されたベース支持体(12,22)とを有し、当該ベース支持体(12,22)は、車両構造(19,29)に接続するように形成されており、このベース支持体(12,22)に二つのアームレスト(18a,18b)を選択的に接続する二つの接続部(12a,12b,22b)を備え、アームレストが取り付けられた状態および取り外された状態のいずれの状態においてもトップケースが使用できるトップケース構造体において、
トップケース(11,21)は、下面(11a,21a)の領域に少なくとも一つの陥入部(13,23)を備え、その中に前記両方の接続部(12a,12b,22b)が配置されていることを特徴とするトップケース構造体。
【請求項2】
請求項1に記載のトップケース構造体において、
陥入部(13,23)は、アームレスト(18a,18b)が取り付けられていない状態でトップケース(11,21)が少なくとも一つの陥入部(13,23)によりベース支持体(12,22)の少なくとも両方の接続部(12a,12b,22b)のカバー部材を形成するように形成されていることを特徴とするトップケース構造体。
【請求項3】
請求項2に記載のトップケース構造体において、トップケース(11,21)は、二つの側壁(14,15,25)を備え、当該側壁は、陥入部(13,23)を形成するようにトップケース(11,21)の下面(11a,21a)を超えて突出し且つそれぞれ一つの部分壁部(14a,15a,25a)を有し、当該部分壁部が、両方の接続部(12a,12b,22b)の一方の、側方における少なくとも一つのカバー部材を形成することを特徴とするトップケース構造体。
【請求項4】
請求項3に記載のトップケース構造体において、部分壁部(14a,15a,25a)は、摩擦接続式及び/又は形状接続式の接続を介して、それぞれに対応するトップケース(11,21)の側壁(14,15,25)に、それぞれ取り外し可能に接続されていることを特徴とするトップケース構造体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のトップケース構造体において、ベース支持体(12,22)は、後部フレームとして構成された車両構造(19,29)に接続するように形成されていることを特徴とするトップケース構造体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のトップケース構造体において、両方の接続部(12a,12b,22b)のそれぞれが、形状接続式および/または摩擦接続式にそれぞれ一つのアームレスト(18a,18b)を接続するように形成されていることを特徴とするトップケース構造体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のトップケース構造体において、両方の接続部(12a,12b,22b)は、ベース支持体(12,22)の互いに対向する端部に配置されていることを特徴とするトップケース構造体。
【請求項8】
トップケース構造体(10,20)を有する車両、特にオートバイまたはオートバイに類する車両において、
トップケース構造体(10,20)は、請求項1から7のいずれかにより形成されていることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の前提部分によるトップケース構造体及びそのようなトップケース構造体を有して構成された車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一体化されたアームレストを有するトップケースが、米国特許文献である特許文献1および特許文献2より公知である。アームレストは、車両に固定的に組み付けられているので、この種のトップケース構造体は、必要に応じてアームレストを選択的に取り外す余地が使用者に与えられないことになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4915187号明細書
【特許文献2】米国特許第4600208号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、そのような車両に、簡単かつ不慣れな使用者にとっても必要に応じて取り付け可能または取り外し可能であり、取り外された状態でも使用者にとって車両がそのまま安全に使用できるアームレストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、特許請求項1の特徴部を有するトップケース構造体および特許請求項8に係る車両により解決される。有利な実施形態は、それぞれ従属する特許請求項により与えられる。
【0006】
すなわち、車両、特にオートバイまたはオートバイに類する車両のためのトップケース構造体であって、トップケースと、当該トップケースの下方に配置されたベース支持体とが用意され、ベース支持体は、車両構造に接続するように形成されており、このベース支持体に二つのアームレストを選択的に接続する二つの接続部を備える。さらに、トップケースは、下面の領域に少なくとも一つの陥入部を備え、その中にベース支持体の両方の接続部が配置されている。
【0007】
つまり、ベース支持体が少なくとも二つの接続部を有し、これらがそれぞれ選択的に両方のアームレストに接続するように形成されている。トップケースは、当該トップケースが、その下面上に、つまり底部の外方に面した表面上に、或いは少なくともこの下面の領域に、一つ又は複数の陥入部を備えるように形成されている。陥入部とは、例えば底部の開部、凹部、アンダーカット(Hinterschneidung)または段差部(Ruecksprung)のことであり、これらは、それら以外の部分では例えばトランクケース形ないし箱形になるトップケースの外側形状に設けられており、一つ又は両方の接続部を収容するための収容容積を提供する。
【0008】
つまり、収容容積は、陥入部により画定された空間であり、この空間が、一方では陥入部によって出来た壁部により画定されているとともに、他方では、外界に対して開放されている。この陥入部は、例えば下面を超えて突出するトップケースの側壁により画定される。ここで、これらの側壁は、下側に、つまりは下方に向けて突出している。
【0009】
基本的に、陥入部により画定された収容容積は、トップケース本来の荷物容積とは区別すべきである。荷物は、この荷物容積内に置くことができ、トップケースにより閉じ込められている。
【0010】
いずれにしても、少なくとも、トップケース構造体の状態であって、組み付けられた或いは組み付け可能な状態において、この少なくとも一つの陥入部の中に両方の接続部が置かれている。従って、両方の接続部は、同じ陥入部内に、或いはそれぞれ個別の陥入部内に配置されていてもよい。残りのベース支持体は、同じようにして一つ又は二つの陥入部内か或いは底部の下面の付加的な陥入部内か或いはこういった陥入部の外に配置されていてもよい。
【0011】
トップケース構造体は、接続部が少なくとも一つの陥入部内に配置されていることで、これらの接続部が少なくともトップケースの側方においてこの外側の輪郭形状から飛び出ないようにする特殊な手段を提供する。加えて、接続部はまた、少なくとも一つの陥入部内に完全に配置されていてもよい。これにより、トップケースの下面においても、接続部が、対応する陥入部から飛び出ず、ひいてはトップケースの輪郭形状を超えて飛び出ないようになっている。
【0012】
このようにして、アームレストが取り付けられているかどうかには係り無く、車両においてベース支持体を恒常的に固定する手段が実現される。接続部にアームレストが接続されずに、単にベース支持体だけが車両に設けられている場合には、トップケースを超えて接続部が突出することは避けられ、これにより、使用者の邪魔をしたり、これ無しでは突出してしまう接続部により怪我をしたりするおそれが効果的に取り除かれる。
【0013】
必要があれば、アームレストは、他に手間のかかる処置を行なうことなく、トップケース構造体に固定することができる。アームレストの取り外しないし取り付けは、こうしてベース支持体を同時に取り外したり取り付けたりすることなく行なうことができるので、不慣れな使用者にとっても、大した手間をかけることなく可能である。ベース支持体はむしろ、トップケース構造体の一部であることで使用者が使うときにいつでも車両に取り付けられたままにすることができる。
【0014】
一実施形態によれば、トップケースは、アームレストが取り付けられていない状態で、少なくとも一つの陥入部により、ベース支持体の少なくとも両方の接続部のカバー部材を形成する。
【0015】
そのために、例えばトップケースは、上述の二つの側壁を備えることができ、これらの壁部は、陥入部を形成するようにトップケースの下面を超えて突出し且つ付加的にそれぞれ一つの取外し可能な部分壁部を有し、この部分壁部が、両方の接続部の一方の、側方における少なくとも一つのカバー部材を形成する。つまり、トップケースの側壁は、下面を超えて側壁が突出していることで側方において陥入部を仕切り、収容容積を画定するのである。部分壁部は、取外し可能な側壁の一部分である。このことは、(少なくとも部分的に)陥入部内に配置された収容部分に関し、これらが少なくとも、下方に突出する側壁によって側方において覆われ且つ保護されていることを意味する。
【0016】
全ての空間的な記載、特に“上方”、“前方”、“後方”、“下方”および“側方”は、車両に組み付けられた状態でのトップケース構造体の向きに関するものであり、その方向に対応するものである。つまり、例えばトップケースの側壁は、相応の車両側面に合せて向きが整えられている。
【0017】
さらに、これらの取外し可能な部分壁部は、それぞれ、摩擦接続式(kraftftschluessig)及び/又は形状接続式(formschluessig)の接続を介して、それぞれに対応するトップケースの側壁(すなわち正確には:側壁のうちそれぞれの残りの部分)に、取り外し可能に接続されていてもよい。これにより、接続部の側方のカバー部材が必要に応じて取り除かれ、特に各アームレストとの接続のために接続部にアクセスできるようにする手段が提供される。この場合には、個々の取り外し可能な部分壁部を単に取り除くだけでよい。部分壁部は、取外し可能な遮蔽板(Blende)として然るべく形成されている。
【0018】
しかも、トップケースの下面は、ベース支持体を少なくとも部分的に収容するように一つまたは複数の他の開部(Ausnehmung)を有することが可能である。すなわち、ベース支持体は、トップケースの下側にて一つないし複数の開部に完全に組み込めるか或いは続きの部分だけが組み込めることで、コンパクトでモジュール式のトップケース構造体が提供される。これらの開部もまた、さらに別の凹部、陥入部またはアンダーカットとして形成されていてもよい。
【0019】
好ましくは、ベース支持体は、後部フレームとして構成された車両構造に接続するように形成されている。トップケースもまた、同様にしてベース支持体に接続することができ、特にベース支持体に固定することができる。
【0020】
さらに、両方の接続部のそれぞれが、形状接続式および/または摩擦接続式にそれぞれ一つのアームレストを接続するように形成されていてもよい。アームレストとは、例えばベース支持体と接続されているとともにベース支持体を介して車両構造に固定されている肘掛部(Armlehnenstummel)である。
【0021】
例えば、両方の接続部は、ベース支持体の互いに対向する端部に配置されている。アームレストは、これに応じて、トップケースの両側に、つまりは車両の両側ないし車両の上に腰掛けている車両使用者の両側に装着される。
【0022】
さらに、トップケース構造体を有する車両、特にオートバイまたはオートバイに類する車両であって、トップケース構造体が上記記載により形成されている車両が提案される。オートバイに類する車両とは、特にあらゆる単走行跡車両(轍が一本になる車両)だけでなく、複走行跡車両(轍が複数本になる車両)のことも意味し、これらはいずれも使用者のために合わせたサドル形シートないし腰掛を有するもので、特に好ましくは二輪、三輪または四輪の原付およびスクータ、さらにはクワッドないしトライクである。
【0023】
以下に、本発明を実施例に基づき図を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】明細書に記載のトップケース構造体の概略的な正面図である。
図2】トップケース構造体の一実施形態の部分断面図である。
図3】取り付けられた部分壁部を有する図2のトップケース構造体の部分斜視図である。
図4】部分壁部が取り除かれた図2および図3のトップケース構造体の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、概略的にのみ且つ極端に簡易化した示し方で、トップケース構造体10を正面視して図示している。トップケース構造体10は、車両(不図示)、例えばオートバイまたはオートバイに類する車両のために構成されており、そのためにトップケース11と、当該トップケース11の下方に配置されたベース支持体12を備える。
【0026】
ベース支持体12は、単に示唆されているに過ぎない車両構造19に接続するように形成されており、二つのアームレスト18a,18bをベース支持体12に選択的に接続するためにさらに二つの接続部12a,12bを備える。両方の接続部12a,12bは、ベース支持体12の互いに対向する端部に配置されている。わかり易くするために、二つのアームレスト18a,18bは、接続部12a,12bから離間した状態で示されているが、これらは、組み付けられた状態では接続部12a,12bに直に接続されている。両方の接続部12a,12bのそれぞれは、然るべく形状接続式および/または摩擦接続式にそれぞれアームレスト18a,18bの一つと接続するように形成されている。
【0027】
トップケース11は、さらに下面11aの領域に陥入部13を備え、これが収容容積を画定し、この中に両方の接続部12a,12bが配置されている。図示された実施形態において、さらに、ベース支持体12の全体も陥入部13内に配置されている。
【0028】
陥入部13は、トップケース11が、(図示されているように)アームレストが取り付けられていない状態で、陥入部13によりベース支持体12の両方の接続部12a,12bのカバー部材を形成するように形成されている。従って、接続部12a,12bは、少なくとも上からと両側から陥入部13の壁部によって覆われて保護されている。使用者が接続部12a,12bによって邪魔されることや、怪我をする危険が避けられる。
【0029】
そのために、トップケース11の二つの側壁14,15が設けられており、これらの側壁が、陥入部13を形成するようにトップケース11の下面11aを超えて下方に突出し、そこにそれぞれ一つの部分壁部14a,15aを有している。各部分壁部14a,15aは、両方の接続部12a,12bのそれぞれ側方におけるカバー部材を形成する。
【0030】
部分壁部14a,15aは、例えばそれぞれ摩擦接続式および/または形状接続式の接続により、トップケース11のそれぞれ対応する側壁14,15に接続されている。
【0031】
さらに、ベース支持体13は、後部フレームとして構成された車両構造19に接続するように形成されている。
【0032】
アームレスト18a,18bが接続部に接続されず、代わりにベース支持体12だけが車両に設けられている図示された場合について、接続部が側方においてトップケース11を超えて突出することが防止され、これにより、述べたように使用者の邪魔をしたり、或いはこれ無しでは突出してしまう接続部により怪我をしたりするするおそれが取り除かれる。
【0033】
図2は、さらに詳細に表されたトップケース構造体20の実施形態を、部分断面視によって、同じように前方から斜視して示している。トップケース構造体20のトップケース21は、局所的にいろいろと極端に形状が与えられた陥入部23を備えた下面21aを備える。この陥入部23内には、少なくとも部分的にベース支持体22が配置されており、このベース支持体が、その側方の端部に接続部22bを備える。この接続部22bは、トップケース21の下面21aによって、さらには側方の部分壁部25aによって覆われ、これにより陥入部23の内部に配置されている。部分壁部25aは、トップケース21の側壁25の、下面21aを超えて突出する一部分25aであり、この側壁25は、トップケース21の側方の滑らかに続く輪郭形状を作るために下方へと延びる。
【0034】
図3には、取り付けられた部分壁部25aを有する図2のトップケース構造体20の一部を斜めに視た図が示されており、トップケース構造体20は、後部フレームとして構成された車両構造29に接続されている。部分壁部25aは、側壁25の一部分を形成し、その後ろに位置するベース支持体22の接続部22b(不図示)を少なくとも側方で覆っていることが分かる。
【0035】
図4は、部分壁部25a(不図示)が取り除かれた図2及び図3のトップケース構造体20の一部を斜めに視た図を示す。ベース支持体22の覆われていない接続部22b(ここにアームレスト18b(不図示)が装着できる)が然るべく看取できる。
図1
図2
図3
図4