(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697188
(24)【登録日】2020年4月28日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】LEDストロボ点灯電源装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/00 20200101AFI20200511BHJP
【FI】
H05B37/02 J
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-113585(P2016-113585)
(22)【出願日】2016年6月7日
(65)【公開番号】特開2017-220349(P2017-220349A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】392026888
【氏名又は名称】京都電機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 幸男
【審査官】
安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/147026(WO,A1)
【文献】
米国特許第05956535(US,A)
【文献】
実開昭59−082997(JP,U)
【文献】
中国実用新案第203980200(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLED照明器具をそれぞれ独立したタイミングでストロボ点灯させるLEDストロボ点灯電源装置において、
a)前記複数のLED照明器具にそれぞれ対応して設けられ、各LED照明器具に供給する駆動電流をオン・オフする複数の半導体スイッチと、
b)商用交流電源による交流電圧を第1の直流電圧に変換する交流−直流変換回路と、
c)前記複数の半導体スイッチを通して前記複数のLED照明器具にそれぞれ駆動電流を供給するために該複数の半導体スイッチにそれぞれ対応して設けられ、前記交流−直流変換回路の出力電圧を受けて前記第1の直流電圧よりも低い電圧値である第2の直流電圧を出力する複数の定電圧回路と、
d)前記複数の定電圧回路のそれぞれにおいて正負の電圧入力端間に接続された電圧低下抑制用の複数のコンデンサと、
e)前記交流−直流変換回路の正電圧出力端と前記複数の定電圧回路の正電圧入力端との間にそれぞれ介挿された複数の抵抗器と、
を備え、前記第1の直流電圧の電圧値と前記第2の直流電圧の電圧値の差を前記複数のLED照明器具が同時にストロボ点灯したときの前記交流−直流変換回路の出力電圧の低下よりも大きく定めたことを特徴とするLEDストロボ点灯電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)が用いられたLED照明器具を間欠的に点灯させるつまりはストロボ点灯させるLEDストロボ点灯電源装置に関し、さらに詳しくは、複数のLED照明器具を異なるタイミングで以てストロボ点灯させることが可能なLEDストロボ点灯電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場における製品の外観検査や選別検査のために、製造ライン上を移動する製品を撮影し、それにより得られた画像に対して画像認識などのデータ処理を行って製品の欠陥を見つけ出したり製品形状を判定したりする検査装置が利用されている。こうした検査装置では、画像を取り込むに際して撮影対象物をごく短時間だけ照明する照明器具、即ち、ストロボ点灯させる照明器具が用いられることがある。照明器具としては従来はキセノン管などが用いられていたが、近年は、長寿命、省電力などの利点から、LEDを光源としたLED照明器具の利用が急速に進んでいる。
【0003】
LED照明器具用のストロボ点灯電源装置として例えば非特許文献1などがある。上記検査装置では、複数の製造ライン上で或いは一つの製造ライン上の異なる位置で並行して検査を行うために、複数のLED照明器具を異なるタイミングでストロボ点灯させることも求められる。そのため、非特許文献1のストロボ点灯電源装置では、点灯のタイミングや時間を独立に設定可能な2チャンネルの出力が設けられている。
【0004】
図4はこうした従来のLEDストロボ点灯電源装置のブロック構成の一例である。
このストロボ点灯電源装置100は、外部の商用交流電源2から供給される交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータ101と、AC/DCコンバータ101の直流電圧出力端に接続されるコンデンサ102と、制御部105によりそれぞれ制御される第1、第2である二つのパルス発生部103a、103bと、該パルス発生部103a、103bから与えられるパルス信号によってオン・オフ駆動される第1、第2である二つの半導体スイッチ104a、104bと、を含む。第1チャンネル(Ch.1)の照明器具に含まれるLED3aは、AC/DCコンバータ101の正電圧出力端と第1半導体スイッチ104aとの間に接続され、第2チャンネル(Ch.2)の照明器具に含まれるLED3bは、AC/DCコンバータ101の正電圧出力端と第2半導体スイッチ104bとの間に接続される。AC/DCコンバータ101は例えば十分な出力容量を有するスイッチング電源である。また、半導体スイッチ104a、104bは通常FETである。なお、通常、LED3a、3bはそれぞれ複数のLEDが直列及び/又は並列に接続されたものであるが、ここでは1個のLEDの記号で代表的に示す。
【0005】
図5は
図4に示したLEDストロボ点灯電源装置100の動作を説明するための概略波形図である。
Ch.1のLED3aをストロボ点灯させる際に、第1パルス発生部103aは制御部105から受けた制御信号に基づき、
図5(b)に示すような所定幅(例えば10〜1000μsec程度の時間幅)のパルス信号を生成する。このパルス信号がハイレベルである期間だけ第1半導体スイッチ104aはオンし、AC/DCコンバータ101の出力電圧に応じた駆動電流がLED3aに流れる。これによって、該LED3aは発光する。Ch.2のLED3bをストロボ点灯させる際も同様であり、第2パルス発生部103bは制御部105から受けた制御信号に基づき、
図5(b)に示すような所定幅のパルス信号を生成する。
【0006】
検査装置に用いられるストロボ点灯電源装置において特に重要なことは、ストロボ発光毎の光量のばらつきや時間的な変化が少ないことである。何故なら、ストロボ発光毎の発光光量がばらついたり発光光量が時間的に変化したりしてしまうと、全く同一の物体の画像を取り込んだ場合でも色相が微妙に異なってしまい、正確な画像認識に支障をきたすことがあるからである。
【0007】
上記ストロボ点灯電源装置100においてAC/DCコンバータ101にはスイッチング電源が利用されるが、出力の応答性が高速なスイッチング電源であっても10〜1000[μsec]といったごく短時間の負荷電流の変動には十分に追従できず、出力電圧が低下することがある。コンデンサ102はこうしたAC/DCコンバータ101の出力電圧の低下をカバーする機能を有しており、このコンデンサ102の容量を大きくしておくことで電圧低下は或る程度カバーできるものの、
図5(a)に示すように、LED3a、3bが発光している期間中にAC/DCコンバータ101の出力電圧が徐々に低下することがある。その結果、本来は
図5(c)中に点線で示すような矩形状のパルス電圧がLED3a、3bに印加される筈であるのに、
図5(c)中に斜線で囲んだように電圧が徐々に下がってしまう場合がある。LED3a、3bの1回のストロボ点灯中の発光光量は
図5に示したパルス電圧の面積に依存するから、点灯中に電圧が一定に維持される場合と電圧が徐々に下がる場合とでは発光光量に差が生じてしまう。
【0008】
また、二つのチャンネル(Ch.1、Ch.2)で一部又は全ての発光期間が重なるようにストロボ点灯のタイミングが設定された場合、
図6(a)に示すように、発光が重なる期間では出力電圧の低下速度が一層大きくなるため、点灯中の発光光量の変化が顕著になる。また特に、遅れて点灯した側のLED(
図6の例ではCh.2)が点灯している間に供給される駆動電力(つまりはエネルギー)は先に点灯した側のLED(
図6の例ではCh.1)が点灯している間に供給される駆動電力よりも少なくなるため、全く同じ仕様の照明器具を用いても発光光量に差が生じてしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「ストロボ制御点灯電源 LGA-302 series」、[online]、京都電機器株式会社、[平成28年5月31日検索]、インターネット<URL: https://www.kdn.co.jp/product/led/lga_302/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、複数のLED照明器具を異なるタイミングで以てストロボ点灯させることが可能なLEDストロボ点灯電源装置において、複数のLED照明器具の発光期間が重なる場合であっても、一つのLED照明器具の発光光量の変動を抑えるとともに、複数のLED照明器具間の発光光量のばらつきを抑えることをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明は、複数のLED照明器具をそれぞれ独立したタイミングでストロボ点灯させるLEDストロボ点灯電源装置において、
a)前記複数のLED照明器具にそれぞれ対応して設けられ、各LED照明器具に供給する駆動電流をオン・オフする複数の半導体スイッチと、
b)商用交流電源による交流電圧を第1の直流電圧に変換する交流−直流変換回路と、
c)前記複数の半導体スイッチを通して前記複数のLED照明器具にそれぞれ駆動電流を供給するために該複数の半導体スイッチにそれぞれ対応して設けられ、前記交流−直流変換回路の出力電圧を受けて前記第1の直流電圧よりも低い電圧値である第2の直流電圧を出力する複数の定電圧回路と、
d)前記複数の定電圧回路のそれぞれにおいて正負の電圧入力端間に接続された電圧低下抑制用の複数のコンデンサと、
e)前記交流−直流変換回路の正電圧出力端と前記複数の定電圧回路の正電圧入力端との間にそれぞれ介挿された複数の抵抗器と、
を備え、前記第1の直流電圧の電圧値と前記第2の直流電圧の電圧値の差を前記複数のLED照明器具が同時にストロボ点灯したときの前記交流−直流変換回路の出力電圧の低下よりも大きく定めたことを特徴としている。
【0012】
本発明に係るLEDストロボ点灯電源装置では、外部の商用交流電源による交流電圧は交流−直流変換回路により第1の直流電圧に変換される。第1の直流電圧の電圧値はストロボ点灯のためにLED照明器具に印加されるパルス状の駆動電圧の電圧値(第2の直流電圧の電圧値)よりも高い。この交流−直流変換回路の出力電圧はそれぞれ異なる抵抗器を通して複数の定電圧回路の正電圧入力端に与えられる。複数の定電圧回路はそれぞれ、入力された直流電圧を降圧して第2の直流電圧として出力する。複数のLED照明器具のうちの或る一つのLED照明器具が所定時間だけ点灯される際には、該一つのLED照明器具に対応して設けられている半導体スイッチが所定時間だけオンされる。すると、該半導体スイッチに対応して設けられている定電圧回路の出力電圧に基づき、対応するLED照明器具に駆動電流が供給され該照明器具が点灯する。
【0013】
駆動電流つまりは負荷電流が流れることによって、対応する定電圧回路の入力電圧つまりは交流−直流変換回路の出力電圧は低下するものの、その低下は該定電圧回路の電圧入力端に設けられているコンデンサに蓄えられたエネルギーにより抑えられる。また、仮に入力電圧が低下してもそれが第2の直流電圧の電圧値以下に下がることはない。そのため、定電圧回路の定電圧作用によって該定電圧回路の出力電圧は一定に維持される。また、交流−直流変換回路の正電圧出力端と各定電圧回路の正電圧入力端との間にそれぞれ抵抗器が設けられているため、或る一つの定電圧回路の正電圧入力端において電圧が低下しても他の定電圧回路の正電圧入力端における電圧には影響を及ぼしにくい。そのため、複数のLED照明器具の少なくとも一部の発光期間が重なるように点灯のタイミングが設定される場合でも、各定電圧回路の正電圧入力端における電圧低下はその定電圧回路のみが駆動電流を供給する場合と殆ど変わらない。その結果、各定電圧回路の定電圧作用により、いずれの定電圧回路の出力電圧も一定に維持される。
【0014】
また、LED照明器具が発光したあと放電によってエネルギーを失ったコンデンサを充電するために交流−直流変換回路から該コンデンサに充電電流が流れるが、その充電電流の経路に抵抗器があるため時定数によって大きな過渡電流が流れることが回避される。それにより、交流−直流変換回路の出力容量を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るLEDストロボ点灯電源装置によれば、複数のLED照明器具を少なくとも一部の発光期間が重なるようにストロボ点灯させた場合であっても、各LED照明器具に印加されるパルス状の駆動電圧の電圧値は一定に維持されるので、各LED照明器具の発光光量の変動を抑えることができる。また、複数のLED照明器具間の発光光量のばらつきも抑えることができる。さらにまた、本発明に係るLEDストロボ点灯電源装置では、LED照明器具の発光時やその直後に交流−直流変換回路から出力する電流を抑えることができるため、交流−直流変換回路として出力容量が比較的小さなスイッチング電源を用いることができ、当該装置のコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施例であるLEDストロボ点灯電源装置のブロック構成図。
【
図3】本実施例のLEDストロボ点灯電源装置の動作の際の波形図。
【
図4】従来のLEDストロボ点灯電源装置のブロック構成図。
【
図5】従来のLEDストロボ点灯電源装置の動作の際の波形図。
【
図6】従来のLEDストロボ点灯電源装置の動作の際の波形図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例であるLEDストロボ点灯電源装置について、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例のLEDストロボ点灯電源装置のブロック構成図、
図2は
図1中の定電圧回路のブロック構成図である。
【0018】
図1において、AC/DCコンバータ10、第1、第2であるバルス発生部14a、14b、第1、第2である半導体スイッチ15a、15b、及び制御部16はそれぞれ、
図4に示した従来装置におけるAC/DCコンバータ101、バルス発生部103a、103b、半導体スイッチ104a、104b、及び制御部105、と同じである。
【0019】
本実施例のLEDストロボ点灯電源装置1では、第1半導体スイッチ15aに対応して第1定電圧回路13aが設けられ、第2半導体スイッチ15bに対応して第2定電圧回路13bが設けられている。第1、第2定電圧回路13a、13bそれぞれの正負電圧入力端間には、
図4に示した従来装置におけるコンデンサ102と同様の機能を有する第1、第2コンデンサ12a、12bが接続されている。そして、AC/DCコンバータ10の正電圧出力端と第1、第2定電圧回路13a、13bの正電圧入力端の間にはそれぞれ第1、第2抵抗器11a、11bが接続されている。即ち、AC/DCコンバータ10の正負電圧出力端から負荷側を見たとき、第1抵抗器11a、第1コンデンサ12a、第1定電圧回路13a、第1パルス発生部14a、及び第1半導体スイッチ15aを含む第1のLED駆動部と、第2抵抗器11b、第2コンデンサ12b、第2定電圧回路13b、第2パルス発生部14b、及び第2半導体スイッチ15bを含む第2のLED駆動部と、が並列に接続された構成となっている。ここで、抵抗器11a、11bは例えば数Ω程度の小さな抵抗値を有するものである。
【0020】
図2に示すように、第1、第2定電圧回路13a、13bは電圧降下を利用した一般的な回路であり、トランジスタなどを含む定電圧駆動部131と、定電圧制御部132と、電圧検出部133と、を含む。電圧検出部133は定電圧回路13a、13bの出力電圧を検出してその検出値を定電圧制御部132にフィードバックする。定電圧制御部132はツェナーダイオードなどによる基準電圧回路を含み、検出電圧が基準電圧になるように例えば定電圧駆動部131に含まれるトランジスタのベース電流を制御する。本実施例のLEDストロボ点灯電源装置1では一例として、定電圧回路13a、13bは入力電圧が標準的に48[V]、出力電圧が36[V]であるものとしている。
【0021】
本実施例のLEDストロボ点灯電源装置1の動作を説明する。
図3は点灯動作の際の波形図である。
AC/DCコンバータ10は外部の商用交流電源2から供給される交流電力を直流電力に変換する。AC/DCコンバータ10の正電圧出力端から出力される直流電圧(本発明における第1の直流電圧)は標準的に48[V]である。この電圧は第1、第2抵抗器11a、11bを通して第1、第2定電圧回路13a、13bの正電圧入力端にそれぞれ入力される。また、この電圧により第1、第2コンデンサ12a、12bはそれぞれ充電される。第1、第2定電圧回路13a、13bは、入力された48Vの直流電圧を36V一定の直流電圧(本発明における第2の直流電圧)としてそれぞれ出力する。これにより、第1、第2半導体スイッチ15a、15bがいずれもオフであるとき、第1、第2定電圧回路13a、13bの出力端には約36[V]の直流電圧が出力されている。
【0022】
Ch.1のLED3aをストロボ点灯させるとき、制御部16の指示を受けた第1パルス発生部14aは設定された発光時間に応じた10〜1000[μsec]程度の幅のパルス信号を生成し第1半導体スイッチ15aのゲート端子に加える。第1半導体スイッチ15aはパルス信号がHレベルである期間だけオンする。すると、第1半導体スイッチ15aを介して第1定電圧回路13aの正負電圧出力端間にLED3aが接続されるから、第1定電圧回路13aの出力電圧に応じた駆動電流がLED3aに流れ、該LED3aは発光する。
【0023】
半導体スイッチ15aがオンして第1定電圧回路13aからLED3aに駆動電流が流れるとき、該電流を生成するためにAC/DCコンバータ10から第1定電圧回路13aへ電流が流れるため、AC/DCコンバータ10の出力電圧は下がろうとする。このとき、第1定電圧回路13aの電圧入力端に設けられた第1コンデンサ12aに蓄えられた電気エネルギーにより第1定電圧回路13aに電流が供給されるため、該定電圧回路13aの入力電圧の急な電圧低下は抑えられる。もちろん、AC/DCコンバータ10のもともとの出力電圧は48[V]であり、定電圧回路13aの入力電圧、出力電圧の差は十分に大きくなっているため、仮にAC/DCコンバータ10の出力電圧が下がったとしても定電圧回路13aの定電圧動作が機能しなくなるほど入力電圧が下がることはない。そのため、第1定電圧回路13aの出力電圧は一定に維持され、
図3中に示すようにLED3aに電圧値が一定であるパルス状の駆動電圧を印加することができる。
【0024】
Ch.2のLED3bをストロボ点灯させる場合の動作も全く同じであり、
図3中に示すようにLED3bに電圧値が一定であるパルス状の駆動電圧を印加することができる。
【0025】
先に説明した
図6(b)、(c)に示したように、Ch.1のLED3aとCh.2のLED3bを同時に又は少なくともその発光期間の一部が重なるようにストロボ点灯させるとき、本発明に係る
図1に示した本実施例の装置では、第1、第2定電圧回路13a、13は独立に動作し、それぞれ一定の直流電圧を出力する。二つの定電圧回路13a、13bは第1、第2抵抗器11a、11bを介して接続されているので、例えば第1定電圧回路13aの正電圧入力端で電圧が低下したとしても、その電圧低下の影響は第2定電圧回路13bの正電圧入力端に殆ど現れない。そのため、各定電圧回路13a、13から同時に駆動電流が流れた場合でも、各定電圧回路13a、13の正電圧入力端における電圧低下の状態は、
図3に示したように一つのLED3a又は3bが点灯した場合と殆ど同じである。したがって、各定電圧回路13a、13bへの入力電圧はそれら定電圧回路13a、13bによる定電圧動作に影響を及ぼさないレベル以上を維持し、この場合にも、定電圧回路13a、13bの出力電圧は36Vを維持しそれ以下には低下しない。したがって、各LED3a、3bに電圧値が一定であるパルス状の駆動電圧をそれぞれ印加することができる。
【0026】
また、LED3a、3bが発光する際に第1、第2コンデンサ12a、12bから第1、第2定電圧回路13a、13bに電流が流れるため、そのあと、それらコンデンサ12a、12bをそれぞれ充電するためにAC/DCコンバータ10から充電電流が流れる。仮に抵抗器11a、11bがないとすると、第1、第2半導体スイッチ15a、15bがオフされた直後にAC/DCコンバータ10から急に大きな充電電流が流れることになり、これを賄うような出力容量が必要となる。これに対し本実施例のLEDストロボ点灯電源装置1では、AC/DCコンバータ10の電圧出力端とコンデンサ12a、12bとの間に抵抗器11a、11bがあり、この抵抗器11a、11bのために充電電流が制限される。その結果、コンデンサ12a、12bの充電には或る程度の時間が掛かるものの、AC/DCコンバータ10の出力容量をそれほど大きくする必要はなく、比較的低コストのスイッチング電源を用いることができる。
【0027】
ここで、上記動作の際の具体的な数値例を示す。いま、LED照明器具を駆動する出力の仕様が、出力電流:5[A]、出力電圧:36[V]、最大点灯時間:1[msec]、であるとする。この場合、LED3a(又は3b)を1回発光させるときの発光エネルギーは、
5×36×0.001[sec]=0.18[J}
である。コンデンサ12a(又は12b)の容量が1000[μF]であるとすると、該コンデンサ12a(又は12b)の充電電圧は48[V]であるから、コンデンサ12a(又は12b)に蓄えられるエネルギーは、
(1/2)CV
2=(1/2)・1×10
-3[F]・48
2=1.152[J]
である。LED3a(又は3b)が1回発光して電圧が低下したときのコンデンサ12a(又は12b)の両端電圧つまりは定電圧回路13a(又は13b)の入力電圧をV
Lとすると、
(1/2)CV
2−(1/2)CV
L2=0.18[J]
これを解くと、V
L=44.09[V]である。即ち、1チャンネルのLED照明器具がストロボ点灯すると、定電圧回路13a、13bの入力電圧は4[V]程度低下することになる。
【0028】
上述したように、AC/DCコンバータ10の電圧出力端と定電圧回路13a、13bの電圧入力端との間にはそれぞれ抵抗器11a、11bがあるため、二つのLED3a、3bが同時に又は発光期間の一部が重なるように発光したときでも、一方の定電圧回路の正電圧入力端の電圧低下は他方の定電圧回路の正電圧入力端の電圧に殆ど影響を及ぼさない。そのため、二つのLED3a、3bが同時に又は発光期間の一部が重なるように発光した場合にも、各定電圧回路13a、13bの正電圧入力端の電圧は44[V]程度以上である。一般に定電圧回路13a、13bでは正常な定電圧動作のために出力電圧よりも3[V]程度以上高い電圧を入力する必要があるが、上述したように入力電圧が44[V]まで下がったとしても、出力電圧(36[V])よりも3[V]だけ高い39[V]以上を十分な余裕を以て確保することができる。したがって、定電圧回路13a、13bから一定の電圧を出力することができ、LED3a、3bの発光光量の変動を回避することができる。
もちろん、ここで示した電圧値やコンデンサの容量値などの数値は単に一例であり、適宜に変更できることは当然である。
【0029】
以上のように本実施例のLEDストロボ点灯電源装置では、単一のLED照明器具が点灯される場合はもちろんのこと、複数のLED照明器具が同時に又は発光期間の一部が重なるようにストロボ点灯される場合でも、各LED照明器具に対し電圧値が一定のパルス状の駆動電圧を印加することができる。それにより、各LED照明器具の発光光量のばらつきや時間変動をなくすことができる。
【0030】
なお、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正、追加を加えても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0031】
1…LEDストロボ点灯電源装置
10…AC/DCコンバータ
11a、11b…抵抗器
12a、12b…コンデンサ
13a、13b…定電圧回路
14a、14b…バルス発生部
15a、15b…半導体スイッチ
16…制御部
2…商用交流電源
3a、3b…LED