(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697210
(24)【登録日】2020年4月28日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】管状物品の内面めっき用の内面電極
(51)【国際特許分類】
C25D 17/12 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
C25D17/12 J
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-105995(P2016-105995)
(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公開番号】特開2017-210667(P2017-210667A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】松田 一平
【審査官】
萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−012791(JP,A)
【文献】
特開昭49−010827(JP,A)
【文献】
特開平11−131288(JP,A)
【文献】
実公昭50−011765(JP,Y1)
【文献】
特開昭63−020499(JP,A)
【文献】
特開2011−219811(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1365747(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状物品に電気めっきを行うときに、該管状物品の内面に電気めっきを施すために上記管状物品の内部に挿入されて使用される管状物品の内面めっき用の内面電極において、
該内面電極は、可撓性を有し、ステンレススチール製の多数のワイヤーを編んで形成され、電源と接続する内面電極接続部と、導電体で形成される長尺状の内面電極線を有し、該内面電極線は、上記内面電極線とめっき液が接触する部分で、且つ、上記管状物品の入口部に近接した上記内面電極線の部分に、導電性のステンレススチール製の内面電極線カバー部材を取付けたことを特徴とする管状物品の内面めっき用の内面電極。
【請求項2】
上記内面電極線と上記内面電極線カバー部材は、共にステンレススチール316(SUS316)製である請求項1に記載の管状物品の内面めっき用の内面電極。
【請求項3】
上記内面電極線カバー部材は、肉厚が0.5〜1.5mmである請求項1又は請求項2に記載の管状物品の内面めっき用の内面電極。
【請求項4】
上記管状物品は、湾曲して形成された請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の管状物品の内面めっき用の内面電極。
【請求項5】
上記管状物品は、自動車の燃料タンクに燃料を供給するフィラーパイプであり、上記内面電極線カバー部材は、電気めっき時に上記フィラーパイプの入口部に近接するように取付けられる請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の管状物品の内面めっき用の内面電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状物品の内面に電気めっきを施すために使用される内面めっき用の内面電極に関するものである。特に、長尺の管状物、例えば自動車のフィラーパイプ等の内面に電気めっきを施すために管状物品の内部に挿入されて使用される管状物品の内面めっき用の内面電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の物品に電気めっきを施すには、めっき槽内のめっき液に電極と被めっき物を浸漬して、電極を陽極、被めっき物を陰極にしてその間に通電して、めっき液中のイオン化した金属を被めっき物に析出させめっきを行っていた。
しかしながら、長尺の管状物品の内面側では、電気の流れが悪く、管状物品の内面へのめっき金属の析出状態はよくなかった。
【0003】
そのため、
図1に示すように、フィラーパイプ120の内部に内面電極110を挿入し、内面電極110により、フィラーパイプ120の内面をめっきしている。この内面電極110は、
図6に示すように、ハンガーに取付ける内面電極接続部116と内面電極線111を有している。
【0004】
内面電極線111は、フィラーパイプ120の屈曲に沿って屈曲可能に形成されており、導電性の金属線を編み込んだワイヤーで形成されている。内面電極線111の表面は、内面電極線111がフィラーパイプ120の内面に接触することがないように、ナイロン等の非導電性の合成樹脂糸117で網目状に覆われている。このため、めっき液2と内面電極線111は接触して、内面電極線111とフィラーパイプ120の内面との間で、電流が流れるように形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
図7に示すように、フィラーパイプ120をめっき液2に浸漬して、内面をめっきする時には、内面電極110に電気を給電するため、内面電極接続部116に電源から給電していた。この場合には、フィラーパイプ120のような管状物品の内面をめっきするときに、内面電極110の内面電極線111の根元部112(
図7において点線で囲みAで示す部分)が、電気が流れやすい。特に、フィラーパイプ120のように、入口側に内面に張り出すフランジ部を有する場合には、内面電極線111との間隔が狭くなり、一層電気が流れやすい。
【0006】
この場合には、
図8に示すように、内面電極線111の根元部112の陽極反応が大きくなり、根元部112のみが過剰にめっき液2に溶解して内面電極線凹部111aが生じて、内面電極線111が破断してしまうこととなる。
内面電極線111の根元部112以外の部分は、溶解はほとんど見られず、根元部112のみの溶解により、内面電極線111の寿命が短くなってしまうこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−219811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、本発明は、長尺の管状物品の内面をめっきする、寿命の長い管状物品の内面めっき用の内面電極を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、管状物品に電気めっきを行うときに、該管状物品の内面に電気めっきを施すために上記管状物品の内部に挿入されて使用される管状物品の内面めっき用の内面電極において、
内面電極は、
可撓性を有し、ステンレススチール製の多数のワイヤーを編んで形成され、電源と接続する内面電極接続部と、導電体で形成される長尺状の内面電極線を有し、内面電極線は、内面電極線とめっき液が接触する部分で、且つ、
管状物品の入口部に近接した内面電極線の部分に、導電性の
ステンレススチール製の内面電極線カバー部材を取付けたことを特徴とする管状物品の内面めっき用の内面電極である。
【0010】
請求項1の本発明では、内面電極は、電源と接続する内面電極接続部を有するため、内面電極接続部をめっきハンガー等に取付けることにより、内面電極接続部を経由して内面電極線に電流を流すことができる。
【0011】
内面電極は、内面電極は、導電体で形成される長尺状の内面電極線を有する。このため、長尺の管状物品の全長に亘り挿入されて、管状物品の内面に電流を確実に流すことができ、管状物品の内面の全長に亘り内部にめっきを施すことができる。。
内面電極線は、可撓性を有し、金属製の多数のワイヤーを編んで形成されている。このため、管状物品が屈曲して形成されていても、内面電極は屈曲に沿って柔軟に変形して、長尺の管状物品の全長に亘り挿入されることができ、管状物品の内面の全長に亘りめっきを施すことができる。
金属製の多数のワイヤーを編んで形成されているため、所定の剛性を有して、管状物品の先端まで挿入することが容易であり、導電性を有するとともに耐久性に優れている。
内面電極線は、ステンレススチール製であるため、内面電極線は、さびにくく、めっき液や他の薬品にも腐食されにくく、耐久性に優れている。
【0012】
内面電極線は、内面電極線とめっき液が接触する部分で、且つ、
管状物品の入口部に近接した内面電極線の部分に、導電性の
ステンレススチール製の内面電極線カバー部材を取付けている。このため、内面電極線の電流が多く流れる部分において、フ
ィラーパイプ等の管状物品の入口部が狭く形成されていたり、入口部に構造物が設けられていたりする場合においても、内面電極線の根元部分の溶解を防止して、内面電極線カバー部材が内面電極線よりも先に溶解して、内面電極線の溶解を防止して、内面電極線の破断を防止して、内面電極線の寿命を長くすることができる。
内面電極線カバー部材は、ステンレススチール製であるため、導電性を有して、めっき液や他の薬品にも腐食されにくく、剛性を有し、耐久性に優れている。
【0017】
請求項2の本発明は、内面電極線と内面電極線カバー部材は、共にステンレススチール316(SUS316)製である管状物品の内面めっき用の内面電極である。
【0018】
請求項2の本発明では、内面電極線と内面電極線カバー部材は、共にステンレススチール316(SUS316)製であるため、特に耐腐食性に優れて、耐久性に優れている。内面電極線と内面電極線カバー部材は、同じステンレススチール316(SUS316)製であるため、内面電極線カバー部材から確実に溶解させることができる。
【0021】
請求項3の本発明は、内面電極線カバー部材は、肉厚が0.5〜1.5mmである管状物品の内面めっき用の内面電極である。
【0022】
請求項3の本発明では、内面電極線カバー部材は、肉厚が0.5〜1.5mmであるため、内面電極線カバー部材を内面電極線に、かしめ等により取付けることが容易であるとともに、内面電極線カバー部材がメッキ液に溶解する時間を長くすることができ、内面電極の寿命を長くすることができる。肉厚が0.5mm未満の場合には、内面電極線カバー部材がメッキ液に溶解する時間が短くなり、内面電極線11に寿命が短くなり、肉厚が1.5mmを超える場合には、内面電極線カバー部材を内面電極線に取付けにくくなる。
【0023】
請求項4の本発明は、管状物品は、屈曲して形成された管状物品の内面めっき用の内面電極である。
【0024】
請求項4の本発明では、管状物品は、屈曲して形成されたため、管状物品の屈曲に沿って可撓性を有する内面電極線を内部に挿入して、屈曲した管状物品の内面の全長に亘りめっきすることができる。
【0025】
請求項5の本発明は、管状物品は、自動車の燃料タンクに燃料を供給するフィラーパイプであり、内面電極線カバー部材は、電気めっき時にフィラーパイプの入口部に近接するように取付けられる管状物品の内面めっき用の内面電極である。
【0026】
請求項5の本発明では、管状物品は、自動車の燃料タンクに燃料を供給するフィラーパイプであり、内面電極線カバー部材は、電気めっき時にフィラーパイプの入口部に近接するように取付けられている。このため、三次元的に屈曲したフィラーパイプにおいても内部を確実にめっきすることができるとともに、フィラーパイプの入口部にリテーナ等を取付けて入口部が狭くなっても、内面電極線カバー部材により内面電極の寿命を長くすることができる。
【発明の効果】
【0027】
内面電極線は、内面電極線とめっき液が接触する部分で、且つ、電流が内面電極線の他の部分よりも多く流れる部分の外面に導電性の内面電極線カバー部材を取付けているため、内面電極線カバー部材が内面電極線よりも先に溶解して、内面電極線の溶解を防止して、内面電極線の破断を防止して、内面電極線の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施の形態で使用するめっき装置の概念図である。
【
図2】本発明の実施の形態で使用するめっきハンガーの側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態で使用する内面電極を管状物品に挿入した状態の断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態である内面電極に内面電極線カバー部材を取付けた状態の内面電極線の部分断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態である内面電極に内面電極線カバー部材を取付けて内面電極線カバー部材が溶解した状態の内面電極線の部分断面図である。
【
図7】従来の内面電極を管状物品に挿入した状態の断面図である。
【
図8】従来の内面電極線が溶解した状態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態について、管状物品である自動車用のフィラーパイプ20の内面に亜鉛めっきをする場合を例に取り、そのめっきに使用する内面電極10とめっき方法について、
図1〜
図5に基づき説明する。
なお、本発明の内面電極10は、フィラーパイプ20以外にも、管状物品の内面にめっきをする場合に広く使用することができる。また、亜鉛めっき以外の他のめっきにも使用することができる。
【0030】
まず、内面電極10について、
図3〜
図5に基づき説明する。
図3に示すように、内面電極10は、後述する陽極板端部37に接続される内面電極接続部16と、内面電極接続部16に接続される内面電極線11から構成されている。内面電極線11は、内面電極接続部16に近接する内面電極線根元部12と、内面電極線11の中央部の内面電極線中央部13と、内面電極線11の先端部の内面電極線先端部14と、内面電極線根元部12に取付けられる内面電極線カバー部材15を有する。
【0031】
内面電極線11は、直線状のものも使用することができるが、屈曲した管状物品、例えば、フィラーパイプ20へ挿入するため、柔軟に屈曲可能な可撓性を有することが好ましい。可撓性を有するものとして、金属製の細い多数のワイヤーを編んで形成されたものを使用することができる。
【0032】
可撓性を有する内面電極線11の場合には、管状物品が屈曲して形成されていても、内面電極線11は屈曲に沿って柔軟に変形して、長尺の管状物品の全長に亘り挿入されることができ、管状物品の内面の全長に亘りめっきを施すことができる。
【0033】
なお、内面電極線11の内面電極線中央部13と内面電極線カバー部材15の表面には、フィラーパイプ20の内面と内面電極線11が接触することを防止するため、絶縁部材で且つ、めっき液とめっき電流が流れることができる部材が取付けられている。絶縁部材として、内面電極線中央部13と内面電極線カバー部材15に巻き付けられる合成樹脂製のスペーサや網目部材を使用することができる。
【0034】
また、内面電極線11が金属製の多数のワイヤーを編んで形成されている場合には、所定の剛性を有して、長尺状のフィラーパイプ20等に挿入するときに、フィラーパイプ20の形状に応じて、フィラーパイプ内面21に沿って、他方の出口端まで押し込むことが容易である。また、めっき液2のアルカリ性にも耐久性を有することができる。また、金属製のため、導電性を有するとともに耐久性に優れている。
【0035】
図3に示すように、内面電極線11は、内面電極線11とめっき液2が接触する部分で、且つ、電流が内面電極線11の他の部分よりも多く流れる部分の外面に導電性の内面電極線カバー部材15を取付けている。本実施の形態では、内面電極線根元部12に取付けられている。
【0036】
本実施の形態では、内面電極線11の内面電極線11とめっき液2が接触する部分で、且つ、電流が内面電極線11の他の部分よりも多く流れる部分は、管状物品であるフィラーパイプ20の入口部に近接した内面電極線11の内面電極線根元部12である。フィラーパイプ20の入口部には、給油ガンの先端を保持するためのリテーナが取付けられていたり、タンクキャップを取付けるねじ部が形成されていたりして、入口部が狭くなり、内面電極線11と近接しやすくなっている。
【0037】
このような場合には、内面電極線カバー部材15は、電気めっき時にフィラーパイプ20の入口部に近接するように取付けられている。このため、三次元的に屈曲したフィラーパイプ20においても内部を確実にめっきすることができるとともに、フィラーパイプ20の入口部にリテーナ等を取付けても、内面電極線カバー部材15により内面電極10の寿命を長くすることができる。
【0038】
内面電極線カバー部材15は、円筒状に形成されて、内面電極線根元部12にかしめることにより取付けられている。
内面電極線11に取付けできるように、内面電極線カバー部材15の内径は、内面電極線11の外径よりも若干大きく形成され、内面電極線カバー部材15は、30〜50mm程度の長さを有している。
【0039】
内面電極線カバー部材15の肉厚は、0.5〜1.5mm程度であることが好ましい。この場合には、内面電極線カバー部材15を内面電極線11に、かしめ等により取付けることが容易であるとともに、内面電極線カバー部材15がメッキ液に溶解する時間を長くすることができ、内面電極10の寿命を長くすることができる。
【0040】
肉厚が0.5mm未満の場合には、内面電極線カバー部材15がメッキ液に溶解する時間が短くなり、
図5に示すように、内面電極線11が溶解してしまうこととなり、肉厚が1.5mmを超える場合には、内面電極線カバー部材15の剛性が大きくなりすぎて、内面電極線カバー部材15を内面電極線11にかしめにくくなる。
【0041】
内面電極線11と内面電極線カバー部材15は、ステンレススチール製であることが好ましい。この場合には、内面電極線11と内面電極線カバー部材15は、さびにくく、めっき液や他の薬品にも腐食されにくく、耐久性に優れている。
【0042】
内面電極線11と上記内面電極線カバー部材15は、同じ材料を使用することが好ましい。特に、共にJISに規定する、ステンレススチール316(SUS316)を使用することが好ましい。ステンレススチール316(SUS316)は、特に耐腐食性に優れて、耐久性に優れている。
内面電極線11と内面電極線カバー部材15は、同じステンレススチール316(SUS316)で形成されている場合には、内面電極線カバー部材15から確実に溶解させることができる。
【0043】
次に、内面電極10を使用した管状物品のめっきの方法について、フィラーパイプ20の亜鉛めっきを例にとり説明する。
フィラーパイプ20等の管状物品のめっきは、
図1に示すように行われる。
めっき槽1内にめっき液2が入れられて、めっき液2内には水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムと亜鉛イオンが含まれている。さらに、めっき槽1内には亜鉛板で形成される陽電極3、4が挿入され、被めっき物であるフィラーパイプ20の内部には内面電極10が挿入されている。
なお、フィラーパイプ20は、めっき工程の前に、脱脂工程、洗浄工程により表面を清浄にされる。
【0044】
陽電極3、4には、陽極リード線5が取り付けられ、内面電極10には内面電極リード線6が取り付けられている。フィラーパイプ20には陰極リード線7が取り付けられている。陽極リード線5と内面電極リード線6はめっき電流の供給装置である外面用電源からの陽極に、陰極リード線7は外面用電源の陰極に接続されて、外面用電源から電流が供給されてめっきが行われる。
【0045】
このとき、フィラーパイプ20はめっき槽1内に並んで多数浸漬されて、めっきが行われるが、めっき槽1内のフィラーパイプ20の保持は
図2に示すようにめっきハンガー30により行われる。
フィラーパイプ20は、めっきハンガー30に取り付けられてめっき槽1内に浸漬される。めっきハンガー30は、フィラーパイプ20に電流を供給する陰極板31と、内面電極10に電流を供給する陽極板35から構成され、陰極板31と陽極板35は中央付近で相互に絶縁されて接合されている。
【0046】
陰極板31の上方の先端は、断面略U字形に曲げられて陰極板係合部32を形成している。陰極板係合部32は、めっき槽1に設けられた陰極バー8に係合され、めっきハンガー30とフィラーパイプ20は、めっき槽1内に保持される。陰極バー8には外面用電源から陰極電流が供給され、めっきハンガー30の陰極板31と電気的に接続される。
【0047】
陰極板31の下方の先端には陰極板保持部33が形成され、管状物品であるフィラーパイプ20が保持される。陰極板保持部33は、フィラーパイプ20を保持するとともに、フィラーパイプ20に陰極電流を供給し、フィラーパイプ20の外周面部と内面(フィラーパイプ内面21)を電気めっきすることができる。
フィラーパイプ20の保持は、開口部を有するリング状に形成された陰極板保持部33に嵌め込んで保持したり、フィラーパイプ20の外面に形成されたブリーザーパイプ等に引っ掛けたりしてもよい。
【0048】
この時、フィラーパイプ20の入口部に近接した内面電極線11の内面電極線根元部12には内面電極線カバー部材15が取付けられているため、内面電極線根元部12付近でめっき電流が多く流れても、
図5に示すように、内面電極線カバー部材15がまず溶解するため、内面電極線11の溶解を防止することができ、内面電極10の寿命を長くすることができる。
【0049】
なお、上述のように、内面電極線11の内面電極線中央部13と内面電極線カバー部材15の表面には、フィラーパイプ20の内面と接触することを防止するため、絶縁部材が取付けられている。このため、屈曲したフィラーパイプ20に、長尺状の内面電極線11を挿入しても、電流が短絡することなく、めっきを行うことができる。
【0050】
陽極板35の上方の先端は、陽極板接続部36を形成し、陽極板接続部36を介して内面用電源から陽極電流が供給される。陽極板35の下方の先端は、陽極板端部37が形成され、陽極板端部37には、内面電極10の内面電極線根元部12に形成される内面電極接続部16が内面電極止め具18に取りつけられる。これにより、陽極板35から陽極電流が内面電極10に供給される。
【0051】
このとき、
図2に示すように、内面電極補助リード線9の根元側が陽極板端部37に取付けられることができる。この場合には、内面電極補助リード線9の取付けは、内面電極線接続部16の取付けと同様に、内面電極止め具18で取付けられることができる。内面電極補助リード線9は、陽極板35から陽極電流が供給される。
【0052】
内面電極補助リード線9の先端側は、内面電極線先端部14に取付けられており、取付けられた内面電極10の内面電極線11の部分が内面電極線先端給電点17となる。
内面電極線先端給電点17は、内面電極線11の内面電極線先端部14に設けられたため、内面電極10は、内面電極線根元部12と内面電極線先端部14の両側から電流を流すことができ、内面電極線11の全長に亘り電流分布を均一化することができ、フィラーパイプ20の内面のめっき厚分布を均一化することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 めっき槽
2 めっき液
10 内面電極
11 内面電極線
15 内面電極線カバー部材
20 フィラーパイプ(管状物品)