特許第6697212号(P6697212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697212
(24)【登録日】2020年4月28日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】フィラーパイプの溶着取付部の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/04 20060101AFI20200511BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20200511BHJP
   B29C 49/42 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   B60K15/04 C
   F02M37/00 301M
   B29C49/42
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-208618(P2016-208618)
(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公開番号】特開2018-69786(P2018-69786A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 祐治
(72)【発明者】
【氏名】酒井 孝典
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】中島 孝司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩一
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−010121(JP,U)
【文献】 特開2006−001365(JP,A)
【文献】 特開2002−276882(JP,A)
【文献】 特開2007−008352(JP,A)
【文献】 特開2005−254802(JP,A)
【文献】 特開2008−207761(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0284126(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/00 − 15/10
F02M 37/00
B29C 49/42 − 49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形品の外壁にフィラーパイプの溶着取付部を溶着して取付けるフィラーパイプの取付構造であって、
上記フィラーパイプの溶着取付部は、上記フィラーパイプと一体的に形成され、上記ブロー成形品の外側に位置する外筒部と、上記ブロー成形品の内側に位置する内筒部と、上記外筒部と上記内筒部の接続部分から外面の幅方向にリング状に張り出して一体的に形成されたフランジ部を有し、該フランジ部は、外面の幅方向にリング状に張り出した部分の断面形状が三角形であるか、又は上記フランジ部は、外面の幅方向にリング状に張り出した部分の断面形状が横U 字形であり、上記ブロー成形品の外壁の外面に溶着された後は、張り出した部分はつぶれて上記横U字形の上側部と下側部が密着しており、上記フランジ部は、上記ブロー成形品の外壁の外面に溶着されていることを特徴とするフィラーパイプの溶着取付部の取付構造。
【請求項2】
上記ブロー成形品の外壁の外面に溶着されている上記フランジ部は、補強プレートで保持されて、該補強プレートは、リング状に形成されるとともに、リング状の部分は、断面L字形に形成され、一方の辺が補強プレート溶着部を形成し、該補強プレート溶着部の先端が上記ブロー成形品の外壁の外面に溶着され、他方の辺が上記フランジ部を保持する補強プレート保持部を形成する請求項1に記載のフィラーパイプの溶着取付部の取付構造。
【請求項3】
上記補強プレート保持部の先端に、上記フランジ部に当接するリング状の補強プレート先端突起部が形成された請求項2 に記載のフィラーパイプの溶着取付部の取付構造。
【請求項4】
上記補強プレートは、変性ポリエチレン又は高密度ポリエチレン( H D P E ) で形成された請求項2又は請求項3に記載のフィラーパイプの溶着取付部の取付構造。
【請求項5】
上記フィラーパイプは、複数の層から形成されている請求項1 乃至請求項4のいずれか一項に記載のフィラーパイプの溶着取付部の取付構造。
【請求項6】
上記ブロー成形品は、自動車用燃料タンクであり、該自動車用燃料タンクの外壁は、多層構造で形成されて、上記フィラーパイプは、上記自動車用燃料タンクに液体または気体を注入又は排出するフィラーパイプである請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のフィラーパイプの溶着取付部の取付構造。
【請求項7】
上記燃料タンクの外壁の表層は、導電性材料で形成された請求項6に記載のフィラーパイ
プの溶着取付部の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形品の外壁にフィラーパイプを溶着して取付けるフィラーパイプの取付構造に関する。特に、ブロー成形により成形される自動車用燃料タンクに取付けるフィラーパイプに使用することができる。
【背景技術】
【0002】
自動車用燃料タンクには、燃料タンク内に燃料を注入するフィラーチューブが燃料タンクに取付けられている。
このような燃料タンクは、従来、金属製のものが用いられていたが、近年車両の軽量化や、錆が発生しないこと、所望の形状に成形しやすいことなどによって熱可塑性樹脂製のものも用いられるようになってきた。
【0003】
そして、その製造が容易なため、ブロー成形により製造された熱可塑性樹脂製のブロー成形品である燃料タンク1が使用されている。このような熱可塑性樹脂製のブロー成形品である燃料タンク1においても、図8に示すように、各種のホースやケーブルとともに、燃料タンク1に液体又は気体を注入又は排出するための各種のチューブやパイプを取付けるためのフィラーパイプ120が、燃料タンク1のタンク外壁2に取付けられている。
【0004】
例えば、図9図11に示すように、燃料タンク201の外壁202にフィラーパイプ取付部材240を取付けて、フィラーパイプ取付部材240にフィラーパイプ220を取付けるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
この場合には、燃料タンク201の外壁202にフィラーパイプ取付孔211を設けたフィラーパイプ取付面210を形成し、フィラーパイプ取付孔211にフィラーパイプ取付部材240を挿入する。フィラーパイプ取付部材240の外周には、フィラーパイプ取付面210に当接するフランジ部241を形成して、フィラーパイプ取付部材240をフィラーパイプ取付面210に保持する。
【0005】
フィラーパイプ220の先端にフィラーパイプフランジ部242を形成して、フィラーパイプフランジ部242がフィラーパイプ取付部材240のフランジ部241を覆い、フィラーパイプフランジ部242を燃料タンク201の外壁202のフィラーパイプ取付面210に溶着して取り付けて、フィラーパイプ取付部材240のフランジ部241を保持している。
【0006】
また、図10に示すように、燃料タンク301の外壁302にフィラーパイプ取付孔311を設けたフィラーパイプ取付面310を形成し、フィラーパイプ取付孔311にフィラーパイプ取付部材340を挿入する。フィラーパイプ取付部材340の外周には、フィラーパイプ取付面310に当接するフランジ部341を形成して、フィラーパイプ取付部材340のフランジ部341をフィラーパイプ取付面310に溶着する。
【0007】
その後、フィラーパイプ取付部材340の外筒部342にフィラーパイプ320を挿入してホースバンド350で締結するものもある。
しかしながら、いずれの場合にも、フィラーパイプ取付部材240、340を使用しており、部品点数が多くなり、コストと手間が増加することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−231286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、部品点数が少なく、コストと手間を削減したフィラーパイプの取付構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、ブロー成形品の外壁にフィラーパイプの溶着取付部を溶着して取付けるフィラーパイプの取付構造であって、
フィラーパイプの溶着取付部は、フィラーパイプと一体的に形成され、ブロー成形品の外側に位置する外筒部と、ブロー成形品の内側に位置する内筒部と、外筒部と内筒部の接続部分から外面の幅方向にリング状に張り出して一体的に形成されたフランジ部を有し、フランジ部は、外面の幅方向にリング状に張り出した部分の断面形状が三角形であるか、又はフランジ部は、外面の幅方向にリング状に張り出した部分の断面形状が横U 字形であり、ブロー成形品の外壁の外面に溶着された後は、張り出した部分はつぶれて横U 字形の上側部と下側部が密着しており、フランジ部は、ブロー成形品の外壁の外面に溶着されていることを特徴とするフィラーパイプの溶着取付部の取付構造である。
【0011】
請求項1の本発明では、ブロー成形品の外壁にフィラーパイプの溶着取付部を溶着して取付けるフィラーパイプの取付構造であり、フィラーパイプの溶着取付部は、フィラーパイプと一体的に形成され、ブロー成形品の外壁にフィラーパイプの溶着取付部を溶着して取付けるフィラーパイプの取付構造であるため、フィラーパイプをブロー成形品に取付けるための取付部材が不要であり、取付部材にフィラーパイプを取付ける手間も不要であるため、コストを削減することができる。
【0012】
フィラーパイプの溶着取付部は、ブロー成形品の外側に位置する外筒部と、ブロー成形品の内側に位置する内筒部と、外筒部と内筒部の接続部分から外面の幅方向にリング状に張り出して一体的に形成されたフランジ部を有する。このため、フランジ部をブロー成形品の外壁に取付けることにより、内筒部をブロー成形品の内部に位置させて、外筒部をブロー成形品の外部に位置されることにより、フィラーパイプをブロー成形品に取付けることができる。フィラーパイプの入口部は、ブロー成形品の外側に位置する外筒部と、ブロー成形品の内側に位置する内筒部と、外筒部と内筒部の接続部分から外面の幅方向にリング状に張り出して一体的に形成されたフランジ部を有する。このため、フランジ部をブロー成形品の外壁に取付けることにより、内筒部をブロー成形品の内部に位置させて、外筒部をブロー成形品の外部に位置されることにより、フィラーパイプをブロー成形品に取付けることができる。
【0013】
フランジ部は、外面の幅方向にリング状に張り出した部分の断面形状が三角形である場合には、三角形の底辺部分をブロー成形品の外壁に溶着すると、三角形の斜辺の部分が底辺部分である溶着部分を保持して、フランジ部の剛性を向上させて、フランジ部の強度を向上させることができる。フランジ部は、外面の幅方向にリング状に張り出した部分の断面形状が横U字形であり、ブロー成形品の外壁の外面に溶着された後は、張り出した部分はつぶれて横U字形の上側部と下側部が密着している場合には、フランジ部をブロー成形品の外壁の外面に溶着するときに、フランジ部を強くブロー成形品の外壁の外面に押圧することができ、確実に溶着させて、溶着強度を向上させることができる。
また、フランジ部の横U字形の上側部と下側部が密着して剛性を向上させて、フランジ部がフィラーパイプの入口部を保持する強度を向上させることができる。
フランジ部は、ブロー成形品の外壁の外面に溶着されているため、フランジ部を直接にブロー成形品の外壁の外面に溶着することにより、フィラーパイプ取付部材を別部品として使用することがなく、溶着作業も容易であり、フィラーパイプとブロー成形品の外壁の間のシール性も優れている。また、内筒部の長さをフィラーパイプの種類ごとに自由に設定することができる。
【0020】
請求項2の本発明は、ブロー成形品の外壁の外面に溶着されているフランジ部は、補強プレートで保持されて、補強プレートは、リング状に形成されるとともに、リング状の部分は断面L字形に形成され、一方の辺が補強プレート溶着部を形成し、補強プレート溶着部の先端がブロー成形品の外壁の外面に溶着され、他方の辺がフランジ部を保持する補強プレート保持部を形成するフィラーパイプの溶着取付部の取付構造である。
【0021】
請求項2の本発明では、ブロー成形品の外壁の外面に溶着されているフランジ部は、補強プレートで保持されて、補強プレートは、リング状に形成されるとともに、リング状の部分は断面L字形に形成されているため、補強プレートによりフランジ部を全周に亘り保持することができる。
【0022】
補強プレートの一方の辺が補強プレート溶着部を形成し、補強プレート溶着部の先端がブロー成形品の外壁の外面に溶着されているため、補強プレートを確実にブロー成形品の外壁の外面に固着させることができる。
補強プレートの他方の辺がフランジ部を保持する補強プレート保持部を形成するため、リング状の補強プレート保持部でフランジ部を全周に亘り押圧して、保持することができる。
【0023】
請求項3の本発明は、補強プレート保持部の先端に、フランジ部に当接するリング状の補強プレート先端突起部が形成されたフィラーパイプの溶着取付部の取付構造である。
【0024】
請求項3の本発明では、補強プレート保持部の先端に、フランジ部に当接するリング状の補強プレート先端突起部が形成されたため、補強プレート先端突起部がフランジ部に強く押圧されて、補強プレートとフランジ部の間を全周に亘りシールして、シール性を向上させることができる。
【0025】
請求項4の本発明は、補強プレートは、変性ポリエチレン又は高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されたフィラーパイプの溶着取付部の取付構造である。
【0026】
請求項4の本発明では、補強プレートは、変性ポリエチレン又は高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されたため、剛性も強く、耐油性や耐久性に優れている。補強プレートがポリオレフィン系の材料で形成されている場合には、ブロー成形品の外壁の外面に補強プレートを強く溶着することができる。
【0027】
請求項5の本発明は、フィラーパイプは、複数の層から形成されているフィラーパイプの溶着取付部の取付構造である。
【0028】
請求項5の本発明では、フィラーパイプは、複数の層から形成されているため、内層をブロー成形品に注入される液体に対して耐久性に優れた材料を選択し、外層をブロー成形品の外壁と溶着しやすい材料や剛性の高い材料や耐候性の優れた材料等を選択することができる。
【0029】
請求項6の本発明は、ブロー成形品は、自動車用燃料タンクであり、自動車用燃料タンクの外壁は、多層構造で形成されて、フィラーパイプは、自動車用燃料タンクに液体または
気体を注入又は排出するフィラーパイプであるフィラーパイプの溶着取付部の取付構造である。
【0030】
請求項6の本発明では、ブロー成形品は、自動車用燃料タンクであり、自動車用燃料タンクの外壁は、多層構造で形成されているため、フィラーパイプと自動車用燃料タンクの間のシール性が向上して、燃料や燃料蒸気の漏れを防止することができる。
また、自動車用燃料タンクの剛性を向上させるとともに、燃料タンクからの燃料の透過を防止することができる。
フィラーパイプは、自動車用燃料タンクに液体または気体を注入又は排出するフィラーパイプであるため、車体に取り付けた給油口から、燃料を燃料タンク内に確実に注入することができる。
【0031】
請求項7の本発明は、燃料タンクの外壁の表層は、導電性材料で形成されたフィラーパイプの溶着取付部の取付構造である。
【0032】
請求項7の本発明では、燃料タンクの外壁の表層は、導電性材料で形成されたため、燃料タンクに生じる静電気を確実に外部に放出することができる。
【発明の効果】
【0033】
フィラーパイプの溶着取付部は、フィラーパイプと一体的に形成され、部品点数を少なくすることができる。フィラーパイプの溶着取付部は、外筒部と、内筒部と、外筒部と内筒部の接続部分から外面に幅方向に張り出して一体的に形成されたフランジ部を有するため、フランジ部をブロー成形品の外壁に取付けることにより、内筒部をブロー成形品の内部に取付けて、外筒部をブロー成形品の外部に保持することができる。
フランジ部は、ブロー成形品の外壁の外面に溶着されているため、フランジ部を直接にブロー成形品の外壁の外面に溶着することにより、溶着作業も容易であり、フィラーパイプとブロー成形品の外壁の間のシール性も優れている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1の実施の形態を示すもので、フィラーパイプの溶着取付部を燃料タンクの外壁に取付けた部分の断面図である。
図2】本発明の第2の実施の形態を示すもので、フィラーパイプの溶着取付部の断面図である。
図3】本発明の第2の実施の形態を示すもので、フィラーパイプの溶着取付部を燃料タンクの外壁に取付けた部分の断面図である。
図4】本発明の第3の実施の形態を示すもので、フィラーパイプの溶着取付部を燃料タンクの外壁に取付けた部分の断面図である。
図5】本発明の第3の実施の形態を示すもので、フィラーパイプの溶着取付部を燃料タンクの外壁に取付けて、補強プレートを取付けた部分の断面図である。
図6】本発明の第3の実施の形態を示すもので、補強プレートを取付けた部分の拡大断面図である。
図7】本発明の第3の実施の形態を示すもので、フィラーパイプの溶着取付部を燃料タンクの外壁に取りつける工程を示す分解斜視図である。
図8】燃料タンクの断面図である。
図9】従来の燃料タンクのフィラーパイプ取付部材の取付け部分の断面図である。
図10】従来の他の燃料タンクのフィラーパイプ取付部材の取付け部分の断面図である。
図11】従来の他のフィラーパイプ取付部材を燃料タンクの外壁に取りつける工程を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明を、ブロー成形品である燃料タンク1のタンク外壁2にフィラーパイプ20のフィラーパイプ溶着取付部21を取付けた取付構造を例にとり説明するが、燃料タンク1以外の他のブロー成形品にフィラーパイプを取付ける場合にも広く実施することができる。
本発明の実施の形態を図1図8に基づき説明する。
【0036】
まず、本発明の実施の形態のフィラーパイプ20の取付構造について図1図8に基づき説明する。
図8は本発明の実施の形態のフィラーパイプ20の取付構造が使用される燃料タンク1の断面図である。
【0037】
図1は、第1の実施の形態のフィラーパイプ溶着取付部21をブロー成形品である燃料タンク1のタンク外壁2に取付けた取付構造の断面図である。図2及び図3は、第2の実施の形態のフィラーパイプ溶着取付部21をブロー成形品である燃料タンク1のタンク外壁2に取付けた取付構造の断面図である。図4図6は、第3の実施の形態のフィラーパイプ溶着取付部21をブロー成形品である燃料タンク1のタンク外壁2に取付けた取付構造の断面図である。
【0038】
図8に示すように、燃料タンク1は、ブロー成形で形成され、タンク外壁2は一体に形成されている。タンク外壁2は、熱可塑性合成樹脂の1層で形成することもできるし、熱可塑性合成樹脂の複数の層を有するように形成することもできる。
複数の層で形成された場合は、剛性を有する層と、燃料透過性の低い層を組み合わせて形成することができる。
【0039】
複数の層で形成された場合は、例えば、中央の層がエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)又はナイロンで形成された燃料透過を防止するバリヤー層と、そのバリヤー層の上下に変性ポリエチレンから形成される接着層と、その接着層のそれぞれの外面に高密度ポリエチレン(HDPE)から形成される外層から構成される。
タンク外壁2の表層は、導電性材料で形成することができる。導電性材料とは例えば、合成樹脂にカーボン粉末を混入したものである。この場合には、燃料タンク1に生じる静電気をタンク外壁2から確実に外部に放出することができる。
【0040】
タンク外壁2の上部には、図1に示すフィラーパイプ20のフィラーパイプ溶着取付部21が一体的に形成されている。本発明では、フィラーパイプ溶着取付部21をブロー成形品であるタンク外壁2に取付けるためのフィラーパイプ20の取付部材が不要であり、取付部材にフィラーパイプ20を取付ける手間も不要であるため、コストを削減することができる。
【0041】
また、タンク外壁2の上部には、ブリーザポート取付部7も形成されている。ブリーザポート取付部7は、燃料給油時に燃料タンク1内のガスをタンク外に逃がすためブリーザホース(図示せず)を取付けるものである。また、8は燃料タンク1から車輌転倒時の燃料漏れを防ぐカットオフバルブである。
なお、タンク外壁2の上面には、燃料移送用ホース等の各種のホースを保持するホースクランプを設けてもよい。
【0042】
タンク外壁2の上面には、さらに開口部6が形成され、開口部6からタンク外壁2の下部の内面にサブタンク5が取付けられる。開口部6は、蓋体60で塞がれて、蓋体60はロックプレート51で開口部6に周囲を螺着される。開口部6と蓋体60の間にはシールリング52が取付けられて、開口部6と蓋体60の間がシールされる。
【0043】
そして、サブタンク5内に燃料ポンプユニット4が取付けられている。サブタンク5は、車両が傾いたり振動したりしたときに、燃料タンク1内の燃料を燃料ポンプユニット4が確実にエンジンに送り出すことができるように設けられている。燃料ポンプユニット4は蓋体60に取付けられて、修理やメンテナンスが行われる。燃料ポンプユニット4からパイプが延びて、タンク外壁2の上部の蓋体60にフューエルメインポート取付部9が接続している。フューエルメインポート取付部9にはエンジンに燃料を送る燃料パイプ(図示せず)が取付けられている。
【0044】
図7に示すように、燃料タンク1のタンク外壁2の上部に、フィラーパイプ取付部10が形成されている。フィラーパイプ取付部10は、フィラーパイプ取付孔11が形成されて、後述するフィラーパイプ溶着取付部21を取付ける燃料タンク1のタンク外壁2に、燃料タンク1をブロー成形するときに形成されている。フィラーパイプ取付孔11の周囲の外面は、フィラーパイプ入口部21が溶着される平面状のフィラーパイプ溶着面12を形成している。
【0045】
次に、図1に基づき、本発明の第1の実施の形態であるフィラーパイプ20のフィラーパイプ溶着取付部21について説明する。
第1の実施の形態において、フィラーパイプ20を燃料タンク1のタンク外壁2に取付けるフィラーパイプ溶着取付部21は、燃料タンク1のタンク外壁2の外側に位置する外筒部22と、燃料タンク1のタンク外壁2の内側に位置する内筒部23と、外筒部22と内筒部23の接続部分から外面の幅方向にリング状に張り出して一体的に形成されたフランジ部24を有する。
【0046】
フランジ部24は、燃料タンク1のタンク外壁2の外面に溶着される。フランジ部24によりフィラーパイプ取付孔11を塞ぎ、フランジ部24を燃料タンク1のタンク外壁2の外面に溶着することにより、内筒部23を燃料タンク1の内部に挿入して、外筒部22を燃料タンク1のタンク外壁2の外部に保持することができる。
【0047】
また、フランジ部24を燃料タンク1のタンク外壁2のフィラーパイプ溶着面12に全周に亘り溶着することにより、フィラーパイプ20を取付けるための取付部材を溶着して、取付部材にフィラーパイプ20を取付けるよりも、組付け作業も容易であり、フィラーパイプ取付部材との間のシールが不要であり、フィラーパイプ20と燃料タンク1のタンク外壁2の間のシール性も優れており、コストも低減できる。
【0048】
第1の実施の形態では、フランジ部24は、外面の幅方向にリング状に張り出した部分の断面形状が三角形に形成されている。内筒部23をフィラーパイプ取付孔11に挿入して、三角形の底辺部分であるフランジ部下側部24bをタンク外壁2のフィラーパイプ溶着面12に溶着すると、三角形の斜辺の部分であるフランジ部上側部24aが、フランジ部下側部24bの先端のフランジ部屈曲部24cと外筒部22を接続して、溶着部分であるフランジ部下側部24bを保持して、フランジ部24の剛性を向上させて、フランジ部24の強度を向上させることができる。
【0049】
フランジ部24の溶着は、フィラーパイプ溶着面12とフランジ部下側部24bの両面或いはいずれか一方の面を加熱して溶融状態にして行う。
内筒部23は、フランジ部24の溶着により、燃料タンク1の内部に保持される。内筒部23の長さはフィラーパイプ20の種類ごとに自由に設定することができる。
【0050】
フィラーパイプ20は、燃料タンク1とは別にブロー成形や射出成形により成形される。その材料は、耐燃料油性の熱可塑性合成樹脂が使用され、例えば変性ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミド等の合成樹脂を使用することができるが、燃料タンク1を成形する材料と溶融可能な材料が使用される。
【0051】
また、フィラーパイプ20は、異なる材料から構成される複数の層から形成することができる。この場合には、内層を燃料タンク1に注入される燃料に対して耐久性に優れた材料を選択し、外層を燃料タンク1のタンク外壁2と溶着しやすい材料や剛性の高い材料や耐候性の優れた材料等を選択することができる。
【0052】
次に、図2図3に基づき、本発明の第2の実施の形態であるフィラーパイプ20のフィラーパイプ溶着取付部部21について説明する。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態とはフランジ部24の形状が異なり他の部分は、同様であるため、異なる部分について説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0053】
第2の実施の形態では、フランジ部24は、外面の幅方向にリング状に張り出した部分の断面形状が横U字形である。このため、溶着前はフランジ部上側部24aとフランジ部下側部24bは、フランジ部屈曲部24cで連結されて、略平行に形成されている。フランジ部下側部24bは、燃料タンク1のタンク外壁2のフィラーパイプ溶着面12と平行に平面状に形成されているため、溶着強度を向上させることができる。
【0054】
第2の実施の形態では、フランジ部24は、燃料タンク1のタンク外壁2のフィラーパイプ溶着面12に溶着されたのちは、フランジ部屈曲部24cは、潰れてフランジ部上側部24aとフランジ部下側部24bは密着している。
フランジ部24を燃料タンク1のタンク外壁2のフィラーパイプ溶着面12に溶着するときに、フランジ部24を強くタンク外壁2の外面に押圧することができ、フランジ部24を確実に溶着させて、溶着強度を向上させることができる。
また、フランジ部上側部24aとフランジ部下側部24bが密着して、フランジ部24の剛性を向上させて、フランジ部24がフィラーパイプ溶着取付部21を保持する強度を向上させることができる。
【0055】
次に、図4図7に基づき、本発明の第3の実施の形態であるフィラーパイプ20のフィラーパイプ溶着取付部21について説明する。
第3の実施の形態は、第2の実施の形態とはフランジ部24の外周に補強プレート30を取付ける点が異なり他の部分は、同様であるため、異なる部分について説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0056】
図4に示すように、第2の実施の形態と同様に、燃料タンク1のタンク外壁2のフィラーパイプ取付孔11にフィラーパイプ溶着取付部21の内筒部23が挿入されて、フィラーパイプ溶着面12にフィラーパイプ溶着取付部21のフランジ部24が溶着される。
さらに、図5に示すように、フィラーパイプ溶着取付部21のフランジ部24が溶着された後、或いは溶着と同時に、フランジ部24を保持するようにリング状の補強プレート30が取付けられる。
【0057】
補強プレート30は、リング状に形成され、リング状の部分の断面形状がL字形に形成されている。図5におけるL字形の上方のフランジ部24と平行な辺は、フランジ部24を保持する補強プレート保持部31を形成する。L字形のフランジ部24と直角な辺は、補強プレート30をフィラーパイプ溶着面12に溶着する補強プレート溶着部32を形成する。
補強プレート溶着部32の溶着は、フィラーパイプ溶着面12と補強プレート溶着部32の先端面の両面或いはいずれか一方の面を加熱して溶融状態にして行う。
【0058】
補強プレート溶着部32の先端が燃料タンク1のタンク外壁2のフィラーパイプ溶着面1
2に溶着されているため、補強プレート保持部31は、フランジ部24を全周に亘り押圧して、フランジ部24を保持することができる。補強プレート溶着部32の先端がフィラーパイプ溶着面12に全周に亘り溶着されているため、フィラーパイプ溶着取付部21とフィラーパイプ取付部10のフィラーパイプ溶着面12の間のシール性を全周に亘り向上させることができる。
【0059】
図6に示すように、フィラーパイプ20のフィラーパイプ溶着取付部21を燃料タンク1に取付けたときに、フランジ部24のフランジ部屈曲部24cやフランジ部上側部24aとフランジ部下側部24bが接合する内面であるフランジ部ノッチ部24dの部分に、外部からの衝撃や繰り返し荷重がかかると、劣化する恐れがあるため、補強プレート30の補強プレート保持部31で、フランジ部屈曲部24cやフランジ部ノッチ部24dに係る応力を分散させて、フランジ部24を保持して補強することができる。
【0060】
補強プレート保持部31の先端のフランジ部24と対向する面に全周に亘り補強プレート先端突起部33を形成することができる。この場合には、補強プレート先端突起部33がフランジ部上側部24aに当接するため、補強プレート先端突起部33がフランジ部24に強く押圧されて、補強プレート30とフランジ部24の間のシール性を向上させることができるとともに、フランジ部24を確実に保持することができる。
【0061】
補強プレート保持部31の先端の外側の面に補強プレート先端屈曲部34を形成することができる。この場合には、補強プレート先端屈曲部34は、フィラーパイプ溶着取付部21の外筒部22を保持して、外部からの衝撃に対してフランジ部24を保護することができるとともに、補強プレート保持部31の剛性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 燃料タンク
2 タンク外壁
10 フィラーパイプ取付部
12 フィラーパイプ溶着面
20 フィラーパイプ
21 フィラーパイプ溶着取付部
22 外筒部
23 内筒部
24 フランジ部
30 補強プレート
31 補強プレート保持部
32 補強プレート溶着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11