【文献】
福田純夫,江原邦宏,中村成充,関岡信明,超大形バルクキャリアにおける省エネルギ推進プラントの開発,日本舶用機関学会誌,日本,日本舶用機関学会,1984年10月,第19巻第10号
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主機回転数指令値に従って回転数制御される主機と、主発電機と、電動発電機と、船内母線と、翼角指令値に従って翼角制御される可変ピッチプロペラと、を備え、前記可変ピッチプロペラは前記主機と前記電動発電機とに機械的に接続され、前記船内母線は前記主発電機と前記電動発電機とに電気的に接続されている船舶の推進システムであって、
前記翼角指令値に基づいて当該翼角指令値が増加方向に変化している最中には発電電力が減少又は電動電力が増加するように前記電動発電機の電力補正指令値を演算し、前記翼角指令値に基づいて当該翼角指令値が減少方向に変化している最中には発電電力が増加又は電動電力が減少するように前記電動発電機の電力補正指令値を演算する電力補正器と、
前記電力補正指令値に従って、前記電動発電機を制御する電動発電機制御器と、を備え、
前記電力補正器は、
前記主機回転数指令値の増加方向の変化時には発電電力が減少又は電動電力が増加するように前記電動発電機の電力補正指令値を演算し、
前記主機回転数指令値の減少方向の変化時には発電電力が増加又は電動電力が減少するよう、電動発電機の電力補正指令値を演算する、船舶の推進システム。
前記船舶の推力需要及び電力需要と、前記主機の推力供給能力及び前記主発電機の電力供給能力とを比較し、電力と推力の過不足を調整するように、前記電動発電機が電動又は発電する電力配分指令値を演算する電力管理器を更に備え、
前記電動発電機制御器は、前記電力補正指令値と前記電力配分指令値とを足し合わせた電力指令値に従って、前記電動発電機を制御する、請求項1又は請求項2に記載の船舶の推進システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の電動発電機を有する船舶推進システムを備える船舶、すなわち、軸発電機を持つ機械推進船又はハイブリッド船では、主機は回転数制御され、主機と可変ピッチプロペラが機械的に接続されており、主機を一定回転数指令で駆動しつつ可変ピッチプロペラの翼角指令を変化させる、又は、回転数指令と翼角指令をコンビネータカーブに従って同時に変化させることにより船速を調整することが一般的である。ところで、可変ピッチプロペラの翼角の変更は、主機の負荷変動の主要な要因である。船舶の燃費低減には、主機の負荷変動を抑制して、翼角指令の変化に伴う燃料供給量の変化を緩やかにすることが重要である。
【0005】
しかし、上記従来の技術では、軸の負荷又は回転数の検出後、制御器が電動発電機電力を演算し、電動発電機がトルクを出力するまでには時間遅れが生じる。一方で、主機の回転数制御は、回転数の検出後直ちに燃料供給量指令を変化させるため、燃料供給量指令の変化に遅れて電動発電機による負荷変動補償が起こるので、効果は限定的なものとなる。
【0006】
このような課題は、発電機及び電動機の一方又は双方の機能を備えた電動発電機を持つ船舶の推進システムで共通する課題である。
【0007】
そこで、本発明は、電動発電機を有する船舶の推進システムにおいて主機の負荷変動を抑制し、燃費を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る、船舶の推進システムは、主機回転数指令値に従って回転数制御される主機と、主発電機と、電動発電機と、船内母線と、翼角指令値に従って翼角制御される可変ピッチプロペラと、を備え、前記可変ピッチプロペラは前記主機と前記電動発電機とに機械的に接続され、前記船内母線は前記主発電機と前記電動発電機とに電気的に接続されている船舶の推進システムであって、
前記翼角指令値に基づいて当該翼角指令値
が増加方向
に変化
している最中には発電電力が減少又は電動電力が増加するように前記電動発電機の電力補正指令値を演算し、
前記翼角指令値に基づいて当該翼角指令値
が減少方向
に変化
している最中には発電電力が増加又は電動電力が減少するように前記電動発電機の電力補正指令値を演算する電力補正器と、前記電力補正指令値に従って、前記電動発電機を制御する電動発電機制御器と、を備える。
【0009】
上記構成によれば、入力された主機回転数指令値に従って主機が回転数制御され、入力された可変ピッチプロペラの翼角指令に従って、可変ピッチプロペラの翼角が翼角制御される。従って、翼角指令値の増加又は減少に応じて可変ピッチプロペラの負荷が増加または減少する。翼角指令値の増加方向の変化時には発電電力が減少又は電動電力が増加するように電動発電機を制御するので、主機の負荷の増加速度は可変ピッチプロペラの負荷の増加速度よりも緩和される。一方、翼角指令値の減少方向の変化時には発電電力が増加又は電動電力が減少するように電動発電機を制御するので主機の負荷の減少速度は可変ピッチプロペラの負荷の
減少速度よりも緩和される。これにより、主機の負荷変動を抑制することができるので、主機に供給される燃料供給量の変化が小さくなって、燃費が改善する。
【0010】
従来例のように可変ピッチプロペラの駆動軸に加わる負荷トルクを検出し、検出した負荷トルクに基づいて電動発電機を制御する構成であると、電動発電機による負荷変動補償が主機の回転数制御より遅れてしまい、効果が限定的なものになる。一方、翼角指令値の変更から軸の負荷変動の発生までには、翼角を操作する油圧系統(アクチュエータ)及び流体力の伝達に要する時間に起因する大きな遅れ時間がある。上記構成によれば、翼角指令値の変動に応じて電動発電機を制御するので、上記の大きな遅れ時間の分だけ制御時間に余裕があるから、電動発電機による負荷変動補償が主機の回転数制御より遅れることはなく、上記従来技術よりも補償の性能が改善する。
【0011】
また、従来技術の負荷及び歪み量を用いる方法では、負荷計や歪みセンサ等の追加の装置が必要となるが、上記構成によれば、追加の装置を必要としない。
【0012】
上記船舶の推進システムにおいて、前記電力補正器が、前記主機回転数指令値の増加方向の変化時には発電電力が減少又は電動電力が増加するように前記電動発電機の電力補正指令値を演算し、前記主機回転数指令値の減少方向の変化時には発電電力が増加又は電動電力が減少するよう、電動発電機の電力補正指令値を演算してもよい。
【0013】
主機の負荷は、主機回転数の増加または減少に応じて増加または減少する。上記構成によれば、主機回転数指令値の増加方向の変化時には発電電力が減少又は電動電力が増加するように電動発電機を制御するので、主機の負荷の増加速度が緩和される。一方、主機回転数指令値の減少方向の変化時には発電電力が増加又は電動電力が減少するように電動発電機を制御するので、主機の負荷の減少速度が緩和される。このように、翼角指令値だけでなく、主機回転数指令値の変動に応じて電動発電機の動作を制御することにより、主機の負荷変動を抑制することができるので、主機回転数が回転数指令値により近づき、主機に供給される燃料供給量の変化が小さくなって、燃費が更に向上する。
【0014】
上記船舶の推進システムにおいて、前記主機回転数指令値と
前記翼角指令値は、船速指令値に従って同時に生成されるものであって、前記電力補正器が、前記船速指令値の増加方向の変化時には発電電力が減少又は電動電力が増加するように前記電動発電機の電力補正指令値を演算し、前記船速指令値の減少方向の変化時には発電電力が増加又は電動電力が減少するように前記電動発電機の電力補正指令値を演算してもよい。
【0015】
上記構成によれば、例えば翼角指令値と主機回転数指令値は、船速指令値の関数であり、船速に対応して予め定められたコンビネータカーブに従って同時に変化するように設定される。これにより、船舶の推進システムにおいてコンビネータ制御が実現され、船速指令値に応じた最適な運転が可能になる。この場合、船速指令値の増加または減少に応じて主機の負荷が増加または減少する。そして、船速指令値の増加方向の変化時には発電電力が減少又は電動電力が増加するように電動発電機を制御するので、主機の負荷の増加速度が緩和される。一方、船速指令値の減少方向の変化時には発電電力が増加又は電動電力が減少するように電動発電機を制御するので、主機の負荷の減少速度が緩和される。このように、コンビネータ制御において入力される船速指令値の変動に応じて電動発電機の動作を制御することにより、主機の負荷変動を抑制することができるので、主機回転数が回転数指令値により近づき、主機に供給される燃料供給量の変化が小さくなって、燃費が向上する。
【0016】
上記船舶の推進システムは、前記船舶の推力需要及び電力需要と、前記主機の推力供給能力及び前記主発電機の電力供給能力とを比較し、電力と推力の過不足を調整するように、前記電動発電機が電動又は発電する電力配分指令値を演算する電力管理器を更に備え、前記電動発電機制御器が、前記電力補正指令値と前記電力配分指令値とを足し合わせた電力指令値に従って、前記電動発電機を制御してもよい。
【0017】
上記構成によれば、船舶において主機の推力が不足する場合には電動発電機を電動動作するように制御する一方、船舶において主発電機の発電電力が不足する場合には電動発電機を発電動作するように制御することができる。このように、電動発電機の電動又は発電の切り替えにより船舶の電力と推力の過不足を調整して、船舶のパワマネジメント制御との両立を図ることができる。
【0018】
上記船舶の推進システムは、前記船内母線上、又は船内母線と前記電動発電機との間の電路上に接続された電力貯蔵装置と、前記電力補正指令値が前記電動発電機の発電動作指令を含む場合は充電し、前記電力補正指令値が前記電動発電機の電動動作指令を含む場合は放電するように、前記電力貯蔵装置を制御する電力貯蔵装置制御器と、を更に備えてもよい。
【0019】
上記構成によれば、電動発電機が発電動作する場合は電力貯蔵装置が充電する一方、電動発電機が電動動作する場合は電力貯蔵装置が放電するので、電動発電機の電力変動が電力貯蔵装置で吸収され、系統の周波数・電圧変動を抑制することができる。
【0020】
上記船舶の推進システムが、前記翼角指令値、前記主機回転数指令値及び前記船速指令値のうち少なくとも一の指令値の増加又は減少を検出する指令値増減検出器を更に備えてもよい。
【0021】
上記構成によれば、入力される指令値の増減を抽出し、電動発電機の制御を好適に実現することができる。また、指令値の増減を抽出できるような演算手法であれば、ハイパスフィルタ又はその他のフィルタでもよい。また通常、翼角指令値、および船速指令値は操作卓のレバーから与えられるので、レバー位置の変化を抽出してもよい。
【0022】
上記船舶の推進システムにおいて、前記電力補正器は、前記指令値の変動が検出された時点から前記主機の軸負荷変動が生じる時点までの第一の所要時間から、前記
電力補正指令値が演算された時点から前記電動発電機のトルク出力が生じる時点までの第二の所要時間を差し引いた値を遅れ要素として予め記憶しておき、前記指令値に前記遅れ要素を
付加する演算器を更に備えてもよい。
【0023】
上記構成によれば、電動発電機のトルク変化のタイミングを主機の負荷変動に正確に合わせることができる。つまり、指令値の変動に応じた電動発電機の動作を正確なタイミングで制御することにより、主機の負荷変動が正確に抑止され、燃料供給量の変化をより小さくすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電動発電機を有する船舶の推進システムにおいて主機の負荷変動を抑制し、燃費を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る船舶推進システム100のハードウェア構成を示すブロック図である。
図1に示すように、船舶推進システム100は、主機1と、主発電機2と、電動発電機3と、船内母線4と、可変ピッチプロペラ5と、電力変換装置6と、電力貯蔵装置9とを備える。太線は機械的接続を示し、細線は電気配線を示している。
【0028】
主機1は推進器としての可変ピッチプロペラ5を回転駆動する主動力源である。本実施の形態では、主機1は例えば重油やLNGを燃料として可変ピッチプロペラを駆動するディーゼルエンジンである。主機1はその他の動力源(例えばガスタービン、ガスエンジン、蒸気タービン)でもよい。このディーゼルエンジンの回転軸が減速装置8を介して可変ピッチプロペラ5に動力伝達可能に接続され、可変ピッチプロペラ5を駆動する。船舶推進システム100において、主機1は主機回転数指令値に従って回転数制御される。
【0029】
主発電機2は、例えばディーゼルエンジンまたはその他の動力源(例えばガスタービン、ガスエンジン、蒸気タービン)と発電機を回転軸で接続した装置であり、動力源の回転軸の回転により発電機を駆動して発電するように構成されている。主発電機2により発電された電力は、船内母線4から船内電力系統に給電される。主発電機2は船内母線4を介して電力変換装置6に接続されている。
【0030】
電動発電機3は、発電動作又は電動動作するように制御される。電動発電機3は発電動作する場合には、主機1から減速装置8を介して伝達される動力により発電した電力を電力変換装置6に供給する。電動発電機3は電動動作する場合には、主発電機2により発電された電力により発生した動力で可変ピッチプロペラ5を駆動する。本実施の形態では、電動発電機3は、回転軸が減速装置8を介して可変ピッチプロペラ5に機械的に接続され、電力変換装置6を介して船内母線4に電気的に接続されている。
【0031】
船内母線4は、主発電機2又は電動発電機3からの電力を船内電力系統に伝送する。本実施の形態では、船内母線4は、主発電機2と電力変換装置6とに電気的に接続されている。船内母線4は主発電機2に電気的に接続され、電力変換装置6を介して電動発電機に電気的に接続される。
【0032】
可変ピッチプロペラ5は、船舶に推力を与える推進機であって、1つまたは複数、船舶に設けられている。可変ピッチプロペラ5は、動力伝達機構としての減速装置8を介して主機1と電動発電機3とに機械的に接続される。可変ピッチプロペラ5は、主機1および電動動作する電動発電機3の一方又は双方から出力される回転動力を、減速装置8を介して受けて、回転動力を推力に変換する。可変ピッチプロペラ5の推力は、減速装置8により調整される可変ピッチプロペラ5の回転数、および、ピッチ角調整機構(図示せず)により調整される可変ピッチプロペラ5のピッチ角(翼角)によって制御される。このピッチ角調整機構は、例えば油圧式のアクチュエータを備え、翼角指令値に従ってアクチュエータを駆動して可変ピッチプロペラ5の翼角を変更する。
【0033】
電力変換装置6は、その一方の端子が船内母線4に接続され、他方の端子が電動発電機3に接続されている。電力変換装置6は、交流電力を一旦直流電力変換し、その変換により得られた直流電力を交流電力に変換して、電力系統および電動発電機3の交流の周波数および電圧を相互に変換する機器である。電力変換装置6は、発電状態では、電動発電機3から電力が供給されて船内電力系統にこの電力を供給し、電動状態では主発電機2により発電された電力が船内電力系統から供給されてこの電力を電動発電機3に供給するように構成されている。
【0034】
電力変換装置6は、第1電力変換器6aと、第2電力変換器6bを備えている。第1電力変換器6aは、系統側電力変換器であって、たとえば双方向インバータで構成されている。第1電力変換器6aの交流端が船内母線4(電力系統側)に接続され、かつ、直流端が直流中間部に接続されている。第1電力変換器6aは、直流中間部から入力された直流電力を交流電力に変換して船内母線4(電力系統側)に出力する。また船内母線4(電力系統側)から入力された交流電力を直流電力に変換して直流中間部に出力する。
【0035】
第2電力変換器6bは、電動発電機側電力変換器であって、たとえば双方向インバータで構成されている。第2電力変換器6bの直流端が直流中間部に接続され、かつ、交流端が電動発電機3に接続されている。第2電力変換器6bは、電動発電機3から入力された交流電力を直流電力に変換して直流中間部へ出力する。また、直流中間部から入力された直流電力を交流電力に変換して電動発電機3に出力する。
【0036】
電力貯蔵装置9は、電力変換装置6の直流中間部に接続されており、直流中間部の電圧(直流中間電圧)の変動を平滑化する。電力貯蔵装置9は、例えばリチウムイオン電池等の二次電池である。なお、電力貯蔵装置9と電力変換装置6の直流中間部とを電力変換器(図示せず)を介して接続してもよい。
【0037】
図2は、船舶推進システム100の制御系のブロック図である。
図2に示すように、船舶推進システム100の制御系は、回転数制御器22と、燃料供給器23と、電力補正器24と、電動発電機制御器25と、加減算器30と、を備える。ここでシステム100の制御系は、例えば、FPGA(field programmable gate array)、PLC(programmable logic controller)、マイクロコントローラ等の演算装置で構成され、回転数制御器22、電力補正器24、電動発電機制御器25及び加減算器30は、上記演算装置においてそれに内蔵されているプログラムが実行されることにより実現される機能ブロックである。なお、以下では、加算器、減算器及び加減算器を区別せずに、加減算器と記載する。
【0038】
加減算器30は、主機回転数指令値から主機回転数を減算し、減算した値(偏差)を回転数制御器22に出力するように構成される。ここで主機回転数指令値は、例えば運転者のレバー操作を通じて入力されてもよいし、制御系のメモリに予め記憶されてもよい。主機回転数は、主機1の主軸に設けられた回転数検出器10(たとえば、回転センサ等)により主軸の回転数を検出した値である。
【0039】
回転数制御器22は、加減算器30の出力に基づいて、主機1の燃料供給指令値を演算し、演算した燃料供給指令値を燃料供給器23に出力するように構成される。本実施の形態では、回転数制御器22は、主機1の回転数を主機回転数指令値に近づけるように、主機1の燃料供給指令値を演算する。
【0040】
燃料供給器23は、回転数制御器22から入力された燃料供給指令値にしたがって燃料を主機1に供給するように構成されている。本実施の形態では、燃料供給器23は、例えば重油やLNG燃料をディーゼルエンジン(主機1)に供給する。
【0041】
電力補正器24は、可変ピッチプロペラ5の翼角指令値に基づいて電動発電機3の電力補正指令値を演算し、電動発電機制御器25に出力するように構成される。ここで翼角指令値は、例えば運転者のレバー操作を通じて入力されてもよいし、制御系のメモリに予め記憶されてもよい。電力補正器24は、可変ピッチプロペラ5の翼角指令値の増加時には発電電力が減少又は電動電力が増加するように電動発電機3の電力補正指令値を演算し、可変ピッチプロペラ5の翼角指令値の減少時には発電電力が増加又は電動電力が減少するように電動発電機3の電力補正指令値を演算する。
【0042】
電動発電機制御器25は、電力補正器24から入力された電力補正指令値に基づいて電力指令値を演算し、これを電動発電機3に出力するように構成されている。電動発電機3は、電動発電機制御器25から入力された電力指令値により発電動作又は電動動作が制御される。
【0043】
次に、船舶推進システム100の動作を説明する。まず、船速を調整する場合の一般的な動作を説明する。本実施の形態では主機1は一定回転数で駆動しつつ可変ピッチプロペラ5の翼角を変化させて船速を調整する。
図2に示すように、例えば運転者のレバー操作等を通じて、システム100の制御系に主機回転数指令値(一定値)及び翼角指令値(可変値)が入力される。まず、加減算器30は、入力された主機回転数指令値に対する主機回転数の偏差を回転数制御器22に出力する。回転数制御器22は、この主機回転数の偏差に応じて燃料供給指令値を生成し、これを燃料供給器23に出力する。燃料供給器23は、燃料供給指令値に従って燃料を主機1に供給する。これにより、主機1は、回転数が主機回転数指令値に近づくようにフィードバック制御される。
【0044】
一方、入力された翼角指令値に従って、可変ピッチプロペラ5のピッチ角調整機構(図示せず)が翼角を変更する。このようにして船速を調整する場合、入力された翼角指令値の増加又は減少に応じて主機1の負荷が増加または減少する。
【0045】
本実施形態では、上記船速調整制御において電動発電機3を、主機1の負荷変動を抑制するように制御する。可変ピッチプロペラ5の翼角指令値の増加方向の変化時には、電力補正器24は、電動発電機3の発電電力が減少又は電動電力が増加するように電力補正指令値を演算する。電動発電機制御器25は、演算した電力補正指令値に従って、電動発電機3を制御する。つまり、翼角指令値の増加時には可変ピッチプロペラ5の負荷が増加するが、発電電力が減少又は電動電力が増加するように電動発電機3を制御するので、主機1の負荷の増加速度は可変ピッチプロペラ5の負荷の増加速度よりも抑制される。
【0046】
一方、可変ピッチプロペラ5の翼角指令値の減少方向の変化時には、電力補正器24は、電動発電機3の発電電力が増加又は電動電力が減少するように電力補正指令値を演算する。電動発電機制御器25は、演算した電力補正指令値に従って、電動発電機3を制御する。つまり、翼角指令値の減少時には可変ピッチプロペラ5の負荷が減少するが、発電電力が増加又は電動電力が減少するように電動発電機3を制御するので、主機1の負荷の増加速度は可変ピッチプロペラ5の負荷の
減少速度よりも抑制される。これにより、主機1の負荷変動を抑制することができ、主機1に供給される燃料供給量の変化が小さくなって、燃費が改善する。
【0047】
従来例のように可変ピッチプロペラ5の駆動軸に加わる負荷トルクを検出し、検出した負荷トルクに基づいて電動発電機3を制御する構成であると、電動発電機3による負荷変動補償が主機1の回転数制御より遅れてしまい、効果が限定的なものになる。一方、翼角指令値の変更から可変ピッチプロペラ5の軸の負荷変動の発生までには、翼角を操作する油圧系統(アクチュエータ)及び流体力の伝達に要する時間に起因する大きな遅れ時間がある。本実施形態によれば、翼角指令値の変動に応じて電動発電機3を制御するので、上記の大きな遅れ時間の分だけ制御時間に余裕があるから、電動発電機3による負荷変動補償が主機1の回転数制御より遅れることはなく、上記従来技術よりも補償の性能が改善する。
【0048】
また、従来技術の負荷及び歪み量を用いる方法では、負荷計や歪みセンサ等の追加の装置が必要となるが、本実施形態によれば、追加の装置を必要としない。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図3を用いて説明する。本実施形態の船舶推進システムのハードウェア構成は、
図1の構成と同様である。以下では、第1実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0050】
図3は、第2実施形態に係る船舶推進システムの制御系のブロック図である。
図3に示すように、第1実施形態(
図2)と比較すると、電力補正器24が入力された翼角指令値及び主機回転数指令値に基づいて電動発電機3の電力補正指令値を演算する点が異なる。
【0051】
本実施形態では船舶推進システム101の主機1の回転数を変化させて駆動しつつ可変ピッチプロペラ5の翼角を変化させて船速を調整する。この場合、可変ピッチプロペラ5の負荷は、翼角指令値だけでなく主機回転数指令値の増加または減少に応じて増加または減少する。
【0052】
本実施形態では、上記船速調整制御において電動発電機3を、主機1の負荷変動を抑制するように制御する。翼角指令値だけでなく主機回転数指令値の増加時においても、電力補正器24は電動発電機3の発電電力が減少又は電動電力が増加するように電力補正指令値を演算する。電動発電機制御器25は、演算した電力補正指令値に従って、電動発電機3を制御する。つまり、翼角指令値だけでなく主機回転数指令値の増加時においても可変ピッチプロペラ5の負荷が増加するが、発電電力が減少又は電動電力が増加するように電動発電機3を制御するので、主機1の負荷の増加速度は可変ピッチプロペラ5の負荷の増加速度よりも抑制される。
【0053】
一方、翼角指令値だけでなく主機回転数指令値の減少時においても電動発電機3の発電電力が増加又は電動電力が減少するように電力補正指令値を演算する。電動発電機制御器25は、演算した電力補正指令値に従って、電動発電機3を制御する。つまり、翼角指令値だけでなく主機回転数指令値の減少時においても可変ピッチプロペラ5の負荷が減少するが、発電電力が増加又は電動電力が減少するように電動発電機3を制御するので、主機1の負荷の減少速度は可変ピッチプロペラ5の負荷の減少速度よりも抑制される。
【0054】
これにより、翼角指令値だけでなく、主機回転数指令値の変動に応じて電動発電機3の動作を制御することにより、主機1の負荷変動を抑制することができるので、本実施形態によれば、第1実施の形態と比べて、主機回転数が回転数指令値により近づき、主機1に供給される燃料供給量の変化が小さくなって、燃費が更に向上する。
【0055】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態の船舶推進システムのハードウェア構成は、第1実施形態と同様である。以下では、第1実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0056】
図4は、第3実施形態に係る船舶推進システムの制御系のブロック図である。
図4に示すように、第1実施形態(
図2)と比較すると、船舶推進システム102が、船舶の電力と推力の過不足を調整するために電力配分指令値を演算する電力管理器26を更に備える点が異なる。
【0057】
電力管理器26は、船舶の推力需要及び船舶の電力需要と推力供給能力及び電力供給能力とをそれぞれ比較し、船舶推進システム102における電力と推力の過不足を調整するように、電動発電機3が電動又は発電する電力配分指令値を演算する。
【0058】
電動発電機制御器25は加減算器31を有する。加減算器31は、電力補正器24から入力される電力補正指令値に電力管理器26から与えられる電力配分指令値を加算して、電力指令値を演算し、これを電動発電機3に出力する。
【0059】
以上のような構成により、船舶の電力系統から現在の船舶の推力需要、電力需要、推力供給能力、及び電力供給能力を含む情報が電力管理器26に入力される。電力管理器26は、船舶の推力需要及び船舶の電力需要と推力供給能力及び電力供給能力とをそれぞれ比較し、船舶において主機1の推力が不足する場合には電動発電機3を電動動作するような電力配分指令値を演算する。一方、船舶において主発電機2の発電電力が不足する場合には電動発電機3を発電動作するような電力配分指令値を演算する。
【0060】
そして、電動発電機3は、電力管理器26から与えられる電力配分指令値に電力補正器24から入力される電力補正指令値を加算して生成された電力指令値に従って制御される。つまり、電動発電機3は、船舶推進システム102における電力と推力の過不足を調整するように、電動動作又は発電動作するように制御される。
【0061】
このように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様な効果に加えて、電動発電機3の電動又は発電の切り替えにより船舶の電力と推力の過不足を調整することができ、船舶のパワマネジメント制御との両立を図ることができる。
【0062】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態の船舶推進システムのハードウェア構成は、第1実施形態と同様である。以下では、第1実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0063】
図5は、第4実施形態に係る船舶推進システムの制御系のブロック図である。
図5に示すように、第1実施形態(
図2)と比較すると、船舶推進システム103が、電力補正指令値に基づいて電力貯蔵装置9を制御する電力貯蔵装置制御部27を更に備える点が異なる。
【0064】
電力貯蔵装置制御部27は、電力補正指令値が電動発電機3の発電動作指令を含む場合は充電し、電力補正指令値が電動発電機3の電動動作指令を含む場合は放電するように、電力貯蔵装置9を制御する。
【0065】
これにより、電動発電機3が発電動作する場合は電力貯蔵装置9が充電する一方、電動発電機3が電動動作する場合は電力貯蔵装置9が放電するので、電動発電機3の電力変動が電力貯蔵装置9で吸収され、系統の周波数・電圧変動を抑制することができる。
【0066】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態の船舶推進システムのハードウェア構成は、第2実施形態と同様である。以下では、第2実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0067】
図6は、第5実施形態に係る船舶推進システム104の制御系のブロック図である。
図6に示すように、第2実施形態(
図3)と比較すると、電力補正器24が、第1ハイパスフィルタ40と、第2ハイパスフィルタ41と、第1増幅器42と、第2増幅器43と、加減算器32を備える点が異なる。
【0068】
第1ハイパスフィルタ40は、入力された主機回転数指令値の増加又は減少を検出し、これを第1増幅器42に出力するように構成される。第1増幅器42は、第1ハイパスフィルタ40の出力値を、予め設定した所定のゲインで調整して、これを加減算器32に出力する。ここで第1ハイパスフィルタ40の出力値の単位は主機回転数[rpm]から電力に変換される。
【0069】
第2ハイパスフィルタ41は、翼角指令値の増加又は減少を検出し、これを第2増幅器43に出力するように構成される。第2増幅器43は、第2ハイパスフィルタ41の出力値を、予め設定した所定のゲインで調整して、これを加減算器32に出力する。ここで第2ハイパスフィルタ41の出力値の単位は翼角[deg]から電力に変換される。加減算器32は、第1増幅器42と、第2増幅器43の出力値を加算して電力補正指令値を生成し、これを電動発電機制御器25に出力するように構成されている。
【0070】
本実施形態によれば、第1ハイパスフィルタ40及び第2ハイパスフィルタ41により、主機回転数指令値及び翼角指令値の変動成分を抽出し、これに基づいて、電力補正指令値を生成するので、第2実施形態と比べて、電動発電機3の制御を好適に実現できる。
【0071】
尚、上記第1、第3及び第4実施形態における電力補正器24が本実施形態と同様の第1ハイパスフィルタ40及び第1増幅器42を備える構成でもよい。
【0072】
尚、本実施形態ではハイパスフィルタを用いたが、指令値の増減を抽出できるような演算手法であれば、バンドパスフィルタ又はその他のフィルタでもよい。
【0073】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。本実施形態の船舶推進システムのハードウェア構成は、第5実施形態と同様である。以下では、第5実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0074】
ところで主機1の回転数制御では、回転数が主機回転数指令値に近づくように燃料供給量を増すが、主機回転数指令値の変更から主機1の軸負荷変動の発生までには応答遅れがある。一方、可変ピッチプロペラ5の翼角制御では、入力された翼角指令値に従って、ピッチ角調整機構が翼角を変更するが、翼角指令値の変更から主機1の軸負荷変動の発生までには、翼角を操作する油圧系統(アクチュエータ)及び流体力の伝達に要する時間に起因する遅れ時間がある。
【0075】
図7は、第6実施形態に係る船舶推進システム105の制御系のブロック図である。
図7に示すように、第5実施形態と比較すると、電力補正器24が、第1遅れ補償器44及び第2遅れ補償器45を更に備える点が異なる。
【0076】
第1遅れ補償器44は、主機回転数指令値の増減を検出する第1ハイパスフィルタ40の出力値を第1むだ時間だけ遅らせ、これを第1増幅器42に出力する。ここで第1むだ時間は、主機回転数指令値の変化が検出された時点から主機1の軸負荷変動が生じる時点までの第一の所要時間から、主機回転数指令値の変化が検出された時点から電動発電機3のトルク出力が生じる時点までの第二の所要時間を差し引いた値である。第1むだ時間は、予め制御系のメモリに記憶される。
【0077】
第2遅れ補償器45は、翼角指令値の増減を検出する第2ハイパスフィルタ41の出力値を第2むだ時間だけ遅らせ、これを第2増幅器43に出力する。ここで第2むだ時間は、翼角指令値の変化が検出された時点から主機1の軸負荷変動が生じる時点までの第一の所要時間から、翼角指令値の変化が検出された時点から電動発電機3のトルク出力が生じる時点までの第二の所要時間を差し引いた値である。第2むだ時間は、予め制御系のメモリに記憶される。
【0078】
第1増幅器42、第2増幅器43は、それぞれ第1遅れ補償器44、第2遅れ補償器45の出力値を、予め設定した所定のゲインで調整して、これを加減算器32に出力する。加減算器32は、第1増幅器42と、第2増幅器43の出力値とを加算して電力補正指令値を生成し、これを電動発電機制御器25に出力する。これにより、電動発電機3は、そのトルク変化のタイミングを主機1の負荷変動に正確に合うように制御される。
【0079】
つまり、本実施形態によれば、主機回転数指令値及び翼角指令値の変動に応じて、電動発電機3の動作を正確なタイミングで制御することにより、主機1の負荷変動が正確に抑止され、燃料供給量の変化をより小さくすることができる。
【0080】
尚、上記第1、第3及び第4実施形態における電力補正器24が、本実施形態と同様に、主機回転数指令値の増加又は減少を検出する第1ハイパスフィルタ40と、第1遅れ補償器44と、第1増幅器42を備える構成でもよい。
【0081】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明する。本実施形態の船舶推進システムのハードウェア構成は、第6実施形態と同様である。以下では、第6実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0082】
図8は、第7実施形態に係る船舶推進システムの制御系のブロック図である。
図8に示すように、船舶推進システム106は、本実施形態では、第6実施形態と比較すると、電力管理器26及び電動発電機制御器25の加減算器31(
図4)と、電力貯蔵装置制御部27(
図5)とを更に備える点が異なる。
【0083】
つまり、本実施形態の船舶推進システム106は、上述の実施形態の全ての特徴を備えている。各特徴の動作について従来技術と比較しつつ
図9のグラフを用いて説明する。ここでは比較例として従来の主機の回転数制御技術を備えた船舶推進システムを想定する。
図9は、翼角指令値に応じた主機回転数、主機出力、電力補正指令値及び電力貯蔵装置9の充放電状態の時間変化を模式的に示している。
【0084】
図9Aは、翼角指令値の時間変化を模式的に示している。
図9Bは、主機1の回転数の時間変化を示している。
図9Cは、主機1の出力の時間変化を模式的に示している。
図9Dは、電力補正指令値の時間変化を示している。電力補正指令値が正の場合は電動発電機3の電動動作指令であり、負の場合は発電動作指令である。
図9Eは、電力貯蔵装置9の充放電状態を示している。正の場合は電力貯蔵装置9が放電状態であることを示し、負の場合は充電状態であることを示している。
【0085】
まず、
図9Aに示すように、時刻t
0において翼角指令値が一定値から増加に転じた場合を想定する。この場合は、少し遅れて可変ピッチプロペラ5のアクチュエータが作動する。比較例では、
図9Bの点(1)を含む破線のように、主機回転数は、翼角変化指令から第一所要時間t
1経過後に主機1の軸の負荷が増加して急激に減少する。これに伴って回転数制御が作動して、
図9Cの点(3)を含む破線のように、主機の出力(燃料供給量)は急激に増加する。
【0086】
これに対し、本実施形態では、翼角指令値の増加方向の変化時には、電力補正器24は、発電電力が減少又は電動電力が増加するよう電力補正指令値を演算する。また、翼角指令値の減少方向の変化時には、電力補正器24は発電電力が増加又は電動電力が減少するように電力補正指令値を演算する。
図9Aに示すように、時刻t
0における翼角指令値の増加時には、電力補正器24は、電動発電機3の電動電力が増加するよう電力補正指令値を演算する。
【0087】
更に、電力補正器24は、
図9Dの点(5)を含む実線のように、遅れ要素を付加して電力補正指令値を演算する。つまり、電力補正器24は、翼角指令値が増加した時刻t
0から時間t
w経過後に電力補正指令値を演算し、電動発電機3に出力することにより、電力指令補正値の演算から第二の所要時間t
2経過後に電動発電機3にトルク出力が生じる。これによって翼角指令値の変化から軸の負荷変動のタイミングに正確に合わせて電動発電機3のトルクを補償することができ、
図9Bの点(2)を含む実線のように、主機1の回転数の急激な減少が抑制される。これに伴って、
図9Cの点(4)を含む実線のように、主機1の出力(燃料供給量)の急激な増加が抑制されて燃費が改善する。
【0088】
更に、本実施形態では、電力管理器26は、船舶の推力需要、電力需要と主機の推力供給能力、主発電機の電力供給能力を比較し、電力と推力の過不足を調整するように、電動発電機3が電動または発電する電力配分指令値を演算する。例えば推力が不足する場合、電動発電機3を電動動作すべく、電力配分指令値は正の値aとなる。一方、電力が不足する場合、電動発電機3を発電動作すべく、電力配分指令値は負の値bとなる。つまり、推力が不足する場合、正の電力配分指令値aが足し合わされ、電力補正指令値は
図9Dの点(6)を含む実線となる。これにより、電動発電機3は電動動作するように制御される。一方、電力が不足する場合、負の電力配分指令値bを足し合わされ、電力補正指令値は
図9Dの点(7)を含む実線となる。これにより、電動発電機3は発電動作するように制御される。従って、船舶の電力と推力の過不足が調整され、船舶のパワマネジメント制御との両立を図ることができる。
【0089】
更に、本実施形態では、電力貯蔵装置制御部27が電力補正指令値に従って、電力貯蔵装置9を制御する。電力貯蔵装置制御部27は、電力補正指令値が電動発電機3の発電動作指令を含む場合は充電し、電力補正指令値が電動発電機3の電動動作指令を含む場合は放電するように、電力貯蔵装置9を制御する。
図9Dの点(5)を含む実線のように、電動動作指令を含む正の値の電力補正指令値が演算された場合、
図9Eに示すように、電力貯蔵装置制御部27は、放電指令を電力貯蔵装置9に出力し、電力貯蔵装置9は放電動作を行う。このように、電動発電機3の電力変動が電力貯蔵装置9で吸収することができ、系統の周波数・電圧変動を抑制することができる。
【0090】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について説明する。本実施形態の船舶推進システムのハードウェア構成は、第1実施形態と同様である。以下では、第1実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0091】
図10は、第8実施形態に係る船舶推進システムの制御系のブロック図である。
図10に示すように、船舶推進システム107は、第1実施形態と比較すると、指令値生成器28を更に備え、指令値生成器28が、入力された船速指令値に従って主機回転数指令値と翼角指令値を同時に生成する点が異なる。
【0092】
本実施の形態では、翼角指令値と主機回転数指令値は、船速指令値の関数である。指令値生成器28は、例えば運転者のレバー操作を通じて入力された船速指令値に対応して予め定められたコンビネータカーブに従って、主機回転数指令値と翼角指令値を同時に生成する。
【0093】
電力補正器24は、船速指令値の増加時には、指令値生成器28により生成された翼角指令値に基づいて発電電力が減少又は電動電力が増加するように電動発電機3の電力補正指令値を演算する。船速指令値の減少時には、指令値生成器28により生成された翼角指令値に基づいて発電電力が増加又は電動電力が減少するように電動発電機3の電力補正指令値を演算するように構成される。
【0094】
従って、本実施形態によれば、船舶推進システム107においてコンビネータ制御が実現され、船速指令値に応じた最適な運転が可能になるとともに、船速指令値の変動に応じて電動発電機3の動作を制御することにより、第1実施形態と同様に、主機1の負荷変動を抑制することができる。
【0095】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態について説明する。本実施形態の船舶推進システムのハードウェア構成は、第7実施形態と同様である。以下では、第7実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0096】
図11は、第7実施形態に係る船舶推進システム108の制御系のブロック図である。
図11に示すように、船舶推進システム108は、第7実施形態と比較すると、第8実施形態に示した指令値生成器28を更に備え、指令値生成器28が、入力された船速指令値に従って主機回転数指令値と翼角指令値を同時に生成する点が異なる。つまり、本実施形態の船舶推進システム108は、第7実施形態及び第7実施形態の特徴を備えている。
【0097】
従って、本実施形態によれば、船舶推進システム107においてコンビネータ制御が実現され、船速指令値に応じた最適な運転が可能になるとともに、船速指令値の変動に応じて電動発電機3の動作を制御することにより、第7実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0098】
(その他の実施形態)
上述の各実施形態の船舶推定システムのハードウェア構成は、
図1に示した構成に限定されない。以下、上述の各実施形態に適用可能なその他のハードウェア構成について説明する。
図12は、第10実施形態に係る船舶推進システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図12に示すように、船舶推進システム109は、上述のハードウェア構成(
図1)と比較すると、主機1が減速装置8ではなく、電動発電機3に機械的に接続される点が異なる。本実施形態では電動発電機3は電動動作する場合は主発電機2により発電された電力により発生した動力で可変ピッチプロペラ5を駆動し、発電動作する場合には主機1から直接伝達される動力により発電した電力を電力変換装置6に供給する。
【0099】
図13は、第11実施形態に係る船舶推進システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図13に示すように、船舶推進システム110は、上述のハードウェア構成(
図1)と比較すると、電力貯蔵装置9が電力変換装置6における直流中間部ではなく、船内母線4上に電気的に接続される点が異なる。本実施形態では、船内母線4と電力貯蔵装置9との間には電力変換器6cが、電気的に接続され、船内母線4から供給される交流を直流に変換するように構成されている。
【0100】
図14は、第12実施形態に係る船舶推進システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図14に示すように、船舶推進システム111は、上述のハードウェア構成(
図13)と比較すると、電動発電機3の代わりに電動機3aを備える点が異なる。つまり、本実施形態では、主機1と電動機3aの双方から出力される回転動力が可変ピッチプロペラ5に推力として供給される。
【0101】
図15は、第13実施形態に係る船舶推進システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図15に示すように、船舶推進システム112は、上述のハードウェア構成(
図13)と比較すると、電動発電機3の代わりに発電機3bを備える点が異なる。つまり、本実施形態では、主機1から出力される回転動力が可変ピッチプロペラ5に推力として供給される。一方で、発電機3bは主機1からの回転動力を受けて発電し、電力を電力変換装置6に供給する。
【0102】
図16は、第14実施形態に係る船舶推進システム113のハードウェア構成を示すブロック図である。
図16に示すように、船舶推進システム113は、上述のハードウェア構成(
図15)と比較すると、電力変換装置6と主発電機2を備えていない点が異なる。つまり、本実施形態では、主機1から出力される回転動力が可変ピッチプロペラ5に推力として供給される。一方で、軸発電機3bは主機1からの回転動力を受けて発電する。発電された電力は船内母線4に供給される。本構成において、第13実施形態と同様、船内母線4と接続された主発電機2を備えてもよい。
【0103】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び機能の一方又は双方の詳細を実質的に変更できる。