(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乾燥室及び燃焼室と、前記乾燥室内の下方と前記燃焼室内の下方とにわたって流動する流動媒体を含む流動床と、前記乾燥室の前記流動床の上方空間と前記燃焼室の前記流動床の上方空間とを仕切り且つ下端が前記流動床内に配置された仕切壁と、を有する湿潤バイオマス焼却炉と、
前記乾燥室側の前記流動床の下方から、前記乾燥室内でバイオマスを前記流動媒体と混合しながら乾燥するための乾燥剤ガスを前記乾燥室内に供給する乾燥剤ガス供給路と、
前記燃焼室側の前記流動床の下方から、前記乾燥室内で乾燥された前記バイオマスを前記燃焼室内で前記流動媒体と混合しながら燃焼するための燃焼剤ガスを前記燃焼室内に供給する燃焼剤ガス供給路と、
前記乾燥室の前記上方空間と連通する乾燥排ガス排出路に設けられ、前記乾燥室の前記上方空間から前記乾燥室外に排出される乾燥排ガスの流量を調節する第1流量調節弁と、
前記燃焼室の前記上方空間と連通する燃焼排ガス排出路に設けられ、前記燃焼室の前記上方空間から前記燃焼室外に排出される燃焼排ガスの流量を調節する第2流量調節弁と、を備え、
前記第1流量調節弁及び前記第2流量調節弁のうち、一方の弁の開度が、他方の弁の開度よりも絞られることで、前記乾燥室及び前記燃焼室のうち、前記一方の弁が設けられた一方の室側における前記流動床の流動層高と、前記他方の弁が設けられた他方の室側における前記流動床の流動層高とが、前記一方の室の前記上方空間のガス圧と、前記他方の室の前記上方空間のガス圧との差が縮小される方向に相対変位するように調整され、
前記乾燥室内の前記バイオマスの水分量値が、予め定められた第1水分量上限値よりも大きい値であり、且つ、前記バイオマスの固形分の単位重量当たりの発熱量値が、予め定められた第1発熱量下限値以上の値である場合、前記一方の弁が前記第2流量調節弁となる、湿潤バイオマス焼却システム。
前記燃焼室内の前記バイオマスの水分量値が、予め定められた第2水分量上限値以下の値であり、且つ、前記バイオマスの固形分の単位重量当たりの発熱量値が、予め定められた第2発熱量下限値未満の値である場合、前記一方の弁を前記第1流量調節弁とする、請求項7に記載の湿潤バイオマス焼却炉の運転方法。
前記一方の前記室の前記ガス圧と、前記一方の前記室側における前記流動床の底部に上方から下方に向けて及ぶ圧との差圧変化、及び、前記他方の前記室の前記ガス圧と、前記他方の前記室側における前記流動床の底部に上方から下方に向けて及ぶ圧との差圧変化の少なくともいずれかにより前記流動媒体及び前記バイオマスの移動量を測定するための差圧計を用いて、前記相対変位に伴う前記流動媒体及び前記バイオマスの移動を確認する、請求項7〜11のいずれか1項に記載の湿潤バイオマス焼却炉の運転方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
湿潤バイオマス焼却炉は、適正な温度で運転できることが、温室効果ガスや、ダイオキシン類の排出量を低くするために望ましい。しかしながら、バイオマスの水分量やバイオマスの固形分の単位重量当たりの発熱量が変動することにより、燃焼室の温度が不安定になり、温室効果ガスやダイオキシン類の発生量が増大する恐れがある。また、乾燥室の温度が上昇すると、温度によってはガス化反応を引き起こし、焼却炉後段の設備にタール類が付着する等のトラブルが発生する可能性がある。また、乾燥排ガスや燃焼排ガスにより発電を行う場合、湿潤バイオマス焼却炉の温度が不安定になると、発電効率が低下する。
【0006】
このような問題に対し、乾燥室内に供給する乾燥剤ガスや、燃焼室内に供給する燃焼剤ガスの供給量を調節しても、各室の温度を迅速に調節することが難しい場合がある。
【0007】
そこで本発明は、乾燥室及び燃焼室を有する内部循環流動層式の湿潤バイオマス焼却炉において、湿潤バイオマス焼却炉に供給されるバイオマスの水分量やバイオマスの固形分の単位重量当たりの発熱量が一時的に変動しても、湿潤バイオマス焼却炉の乾燥室及び燃焼室の温度を迅速に調節し易くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る湿潤バイオマス焼却システムは、乾燥室及び燃焼室と、前記乾燥室内の下方と前記燃焼室内の下方とにわたって流動する流動媒体を含む流動床と、前記乾燥室の前記流動床の上方空間と前記燃焼室の前記流動床の上方空間とを仕切り且つ下端が前記流動床内に配置された仕切壁と、を有する湿潤バイオマス焼却炉と、前記乾燥室側の前記流動床の下方から、前記乾燥室内でバイオマスを前記流動媒体と混合しながら乾燥するための乾燥剤ガスを前記乾燥室内に供給する乾燥剤ガス供給路と、前記燃焼室側の前記流動床の下方から、前記乾燥室内で乾燥された前記バイオマスを前記燃焼室内で前記流動媒体と混合しながら燃焼するための燃焼剤ガスを前記燃焼室内に供給する燃焼剤ガス供給路と、前記乾燥室の前記上方空間と連通する乾燥排ガス排出路に設けられ、前記乾燥室の前記上方空間から前記乾燥室外に排出される乾燥排ガスの流量を調節する第1流量調節弁と、前記燃焼室の前記上方空間と連通する燃焼排ガス排出路に設けられ、前記燃焼室の前記上方空間から前記燃焼室外に排出される燃焼排ガスの流量を調節する第2流量調節弁と、を備え、前記第1流量調節弁及び前記第2流量調節弁のうち、一方の弁の開度が、他方の弁の開度よりも絞られることで、前記乾燥室及び前記燃焼室のうち、前記一方の弁が設けられた一方の室側における前記流動床の流動層高と、前記他方の弁が設けられた他方の室側における前記流動床の流動層高とが、前記一方の室の前記上方空間のガス圧と、前記他方の室の前記上方空間のガス圧との差が縮小される方向に相対変位するように調整される。
【0009】
上記構成によれば、第1流量調節弁及び第2流量調節弁のうち、一方の弁の開度を他方の弁の開度よりも絞ることで、流動媒体の流動性を利用して、前記一方の室側における流動層高と、前記他方の室側における流動層高とを、前記一方の室内のガス圧と前記他方の室内のガス圧との差が縮小される方向に相対的に迅速に変位できる。
【0010】
従って、湿潤バイオマス焼却炉の乾燥室側の温度を高めたい場合には、第2流量調節弁の開度を第1流量調節弁の開度よりも絞ることで、燃焼室内の流動媒体及びバイオマスの一部を乾燥室内に移動させて、乾燥室内の流動媒体の量をバイオマスの量と共に増大させることができる。よって、燃焼室側から乾燥室側へ移動した高温の流動媒体及びバイオマスを、乾燥室内の流動媒体及びバイオマスと混合させることで、乾燥剤ガス供給量を増やす方法に比べて、迅速にバイオマスの乾燥を効率よく促進しながら湿潤バイオマス焼却炉の乾燥室側の温度を高め易くすることができる。
【0011】
また、湿潤バイオマス焼却炉の燃焼室側の温度を高めたい場合には、第1流量調節弁の開度を第2流量調節弁の開度よりも絞ることで、乾燥室内の流動媒体及びバイオマスの一部を燃焼室内に移動させて、燃焼室内のバイオマスの量を流動媒体の量と共に増大させることができる。よって、乾燥室側から燃焼室側へ移動した流動媒体及びバイオマスを、燃焼室内の流動媒体及びバイオマスと混合させることで、燃焼剤ガス供給量を増やす方法に比べて、迅速にバイオマスの燃焼を効率よく促進しながら湿潤バイオマス焼却炉の燃焼室側の温度を高め易くすることができる。
【0012】
よって、湿潤バイオマス焼却炉に供給されるバイオマスの水分量やバイオマスの固形分の単位重量当たりの発熱量が一時的に変動しても、乾燥室側及び燃焼室側の流動層高を相対的に変位させることで、湿潤バイオマス焼却炉の乾燥室及び燃焼室の温度を迅速に調節し易くすることができる。
【0013】
前記乾燥室外に排出される前記乾燥排ガスの蒸気流量を測定する蒸気流量計を更に備えてもよい。これにより、蒸気流量計の測定値から、乾燥室内のバイオマスの水分量を容易に確認できる。
【0014】
前記燃焼室内に配置された燃焼室温度計を更に備えてもよい。これにより、燃焼室温度計の測定値から、燃焼室内のバイオマスの固形分の単位重量当たりの発熱量を容易に確認できる。
【0015】
前記乾燥室内に配置された乾燥室温度計を更に備えてもよい。これにより、乾燥室温度計の測定値から、乾燥室内のバイオマス及び流動媒体の温度を容易に確認できる。
【0016】
前記一方の前記室の前記ガス圧と、前記一方の前記室側における前記流動床の底部に上方から下方に向けて及ぶ圧との差圧変化、及び、前記他方の前記室の前記ガス圧と、前記他方の前記室側における前記流動床の底部に上方から下方に向けて及ぶ圧との差圧変化の少なくともいずれかにより前記流動媒体及び前記バイオマスの移動量を測定するための差圧計を更に備えてもよい。これにより、前記第1流量調節弁及び前記第2流量調節弁のうち、一方の弁の開度が、他方の弁の開度よりも絞られた際に、差圧計の測定値の変化から、乾燥室と燃焼室との間における流動媒体及びバイオマスの移動を容易に確認できる。
【0017】
本発明の一態様における湿潤バイオマス焼却炉の運転方法は、乾燥室及び燃焼室と、前記乾燥室内の下方と前記燃焼室内の下方とにわたって流動する流動媒体を含む流動床と、前記乾燥室の前記流動床の上方空間と前記燃焼室の前記流動床の上方空間とを仕切り且つ下端が前記流動床内に配置された仕切壁と、を有する湿潤バイオマス焼却炉と、前記乾燥室側の前記流動床の下方から、前記乾燥室内でバイオマスを前記流動媒体と混合しながら乾燥するための乾燥剤ガスを前記乾燥室内に供給する乾燥剤ガス供給路と、前記燃焼室側の前記流動床の下方から、前記乾燥室内で乾燥された前記バイオマスを前記燃焼室内で前記流動媒体と混合しながら燃焼するための燃焼剤ガスを前記燃焼室内に供給する燃焼剤ガス供給路と、前記乾燥室の前記上方空間と連通する乾燥排ガス排出路に設けられ、前記乾燥室の前記上方空間から前記乾燥室外に排出される乾燥排ガスの流量を調節する第1流量調節弁と、前記燃焼室の前記上方空間と連通する燃焼排ガス排出路に設けられ、前記燃焼室の前記上方空間から前記燃焼室外に排出される燃焼排ガスの流量を調節する第2流量調節弁と、を備える湿潤バイオマス焼却システムにおいて、前記第1流量調節弁及び前記第2流量調節弁のうち、一方の弁の開度を他方の弁の開度よりも絞ることで、前記乾燥室及び前記燃焼室のうち、前記一方の弁が設けられた一方の室側における前記流動層高と、前記他方の弁が設けられた他方の室側における前記流動層高とを、前記一方の室の前記上方空間のガス圧と、前記他方の室の前記上方空間のガス圧との差が縮小される方向に相対変位させる。
【0018】
前記乾燥室内の前記バイオマスの水分量値が、予め定められた第1水分量上限値よりも大きい値であり、且つ、前記バイオマスの固形分の単位重量当たりの発熱量値が、予め定められた第1発熱量下限値以上の値である場合、前記一方の弁を前記第2流量調節弁としてもよい。
【0019】
上記方法によれば、乾燥室内のバイオマスの水分量値が第1水分量上限値よりも大きい値であるために湿潤バイオマス焼却炉の乾燥室側の温度が低い場合において、固形分の単位重量当たりの発熱量値が第1発熱量下限値以上の値であるために発熱量値が比較的高く、燃焼室内の高温の流動媒体を、燃焼室内において高温で燃焼されているバイオマスの一部と共に乾燥室内に移動させることで、乾燥室内のバイオマスの乾燥を迅速且つ効率的に促進しながら湿潤バイオマス焼却炉の乾燥室側の温度を高め易くすることができる。
【0020】
前記燃焼室内の前記バイオマスの水分量値が、予め定められた第2水分量上限値以下の値であり、且つ、前記バイオマスの固形分の単位重量当たりの発熱量値が、予め定められた第2発熱量下限値未満の値である場合、前記一方の弁を前記第1流量調節弁としてもよい。
【0021】
上記方法によれば、バイオマスの固形分の単位重量当たりの発熱量値が第2発熱量下限値未満の値であるために湿潤バイオマス焼却炉の燃焼室側の温度が低い場合において、乾燥室内の水分量値が第2水分量上限値以下の値であることにより水分量値が比較的低いバイオマスの一部を、乾燥室内の流動媒体の一部と共に燃焼室内に移動させることで、燃焼室内のバイオマスの燃焼を迅速且つ効率的に促進しながら湿潤バイオマス焼却炉の燃焼室側の温度を高め易くすることができる。
【0022】
前記乾燥室内の前記バイオマスの水分量を、前記乾燥室外に排出される前記乾燥排ガスの蒸気流量を測定する蒸気流量計により確認してもよい。
【0023】
前記燃焼室内の温度を、前記燃焼室内に配置された燃焼室温度計により測定してもよい。
【0024】
前記乾燥室内の温度を、前記乾燥室内に配置された乾燥室温度計により測定してもよい。
【0025】
前記一方の前記室の前記ガス圧と、前記一方の前記室側における前記流動床の底部に上方から下方に向けて及ぶ圧との差圧変化、及び、前記他方の前記室の前記ガス圧と、前記他方の前記室側における前記流動床の底部に上方から下方に向けて及ぶ圧との差圧変化の少なくともいずれかにより前記流動媒体及び前記バイオマスの移動量を測定するための差圧計を用いて、前記相対変位に伴う前記流動媒体及び前記バイオマスの移動を確認してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の各態様によれば、乾燥室及び燃焼室を有する内部循環流動層式の湿潤バイオマス焼却炉において、湿潤バイオマス焼却炉に供給されるバイオマスの水分量やバイオマスの固形分の単位重量当たりの発熱量が一時的に変動しても、湿潤バイオマス焼却炉の乾燥室及び燃焼室の温度を迅速に調節し易くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、各図を参照しながら説明する。
【0029】
[湿潤バイオマス焼却システム1の構成]
図1は、実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システム1の全体図である。
図1に示すように、湿潤バイオマス焼却システム1は、湿潤バイオマス焼却炉2、バイオマス供給路R1、乾燥剤ガス供給路R2、燃焼剤ガス供給路R3、乾燥排ガス排出路R4、燃焼排ガス排出路R5、燃焼灰排出路R6、補助燃料供給路R7、第1流量調節弁V1、第2流量調節弁V2、及び制御装置3を備えている。
【0030】
湿潤バイオマス焼却炉2は、乾燥室2a、燃焼室2b、仕切壁2c、炉床2d、複数のノズル2e、流動床2f、風箱2g、2h、上方空間15、16、蒸気流量計D1、乾燥室温度計D2、燃焼室温度計D3、乾燥室差圧計D4、及び燃焼室差圧計D5を有する。
【0031】
乾燥室2aと燃焼室2bとは、湿潤バイオマス焼却炉2の内部に仕切壁2cを隔てて設けられている。乾燥室2aでは、乾燥室2aの上方に設けられたバイオマス供給口2a1を介して外部から供給されるバイオマス25が乾燥される。燃焼室2bでは、乾燥室2a内で乾燥されたバイオマス25が燃焼される。
【0032】
湿潤バイオマス焼却炉2の運転時において、乾燥室2a内の温度は、バイオマス25を乾燥させるために適した温度範囲の値に設定され、燃焼室2b内の温度は、バイオマス25を燃焼させるために適した温度範囲の値に設定される。このときの乾燥室2a内の温度と燃焼室2b内の温度とは、適宜設定が可能である。
【0033】
仕切壁2cは、乾燥室2a側の流動床2fの上方空間15と、燃焼室2b側の流動床2fの上方空間16とを仕切っている。仕切壁2cの下端は、流動床2f内に配置されている。これにより上方空間(フリーボード)15、16は、互いに隔離されている。
【0034】
炉床2dは、乾燥室2aと燃焼室2bとの下方にわたって配置されている。複数のノズル2eは、炉床2dの上面に乾燥室2a側と燃焼室2b側とにわたって分散して配置されている。流動床2fは、炉床2dの上方で、乾燥室2aの下方と燃焼室2bの下方とにわたって配置されている。流動床2fは、乾燥室2aの下方と燃焼室2bの下方とにわたって流動する流動媒体(粒子状物質)20を含む。流動媒体20は、例えば珪砂であるが、これに限定されない。湿潤バイオマス焼却炉2の運転時において、例えば、乾燥室2a内の流動床2fの温度は、バイオマス25の熱分解温度以下の温度範囲の値に設定されることが望ましく、燃焼室2b内の流動床2fの温度は、500℃以上、800℃以下の温度範囲の値に設定されることがより望ましい。風箱2g、2hは、内部が中空の箱体である。風箱2gは、乾燥室2a側の炉床2dの下方に設けられている。風箱2hは、燃焼室2b側の炉床2dの下方に設けられている。
【0035】
バイオマス供給路R1は、外部から乾燥室2a内にバイオマス25を供給する。バイオマス供給路R1は、バイオマス供給口2a1に接続されている。乾燥剤ガス供給路R2は、乾燥室2a内でバイオマス25を流動媒体20と混合させながら乾燥させるための乾燥剤ガスを乾燥室2a内に供給する。乾燥剤ガス供給路R2は、風箱2gに接続されている。乾燥剤ガスは過熱蒸気であるが、これに限定されない。燃焼剤ガス供給路R3は、乾燥室2a内で乾燥されたバイオマス25を燃焼室2b内で流動媒体20と混合しながら燃焼するための燃焼剤ガスを燃焼室2b内に供給する。燃焼剤ガス供給路R3は、風箱2hに接続されている。燃焼剤ガスは空気であるが、これに限定されない。
【0036】
乾燥排ガス排出路R4は、上方空間15中のバイオマス25の乾燥により生じた乾燥排ガスを乾燥室2a外に排出する。乾燥排ガス排出路R4は、乾燥室2aに接続されている。燃焼排ガス排出路R5は、上方空間16中のバイオマス25の燃焼により生じた燃焼排ガスを燃焼室2b外に排出する。燃焼排ガス排出路R5は、燃焼室2bに接続されている。燃焼灰排出路R6は、バイオマス25の燃焼により生じた燃焼灰を燃焼室2b外に排出する。燃焼灰排出路R6は、燃焼室2bに接続されている。補助燃料供給路R7は、バイオマス25の燃焼を補助するための補助燃料を燃焼室2b内に供給する。補助燃料供給路R7は、燃焼室2bの壁部に接続されている。補助燃料は可燃性ガスであるが、これに限定されない。
【0037】
第1流量調節弁V1は、上方空間15から乾燥室2a外に排出される乾燥排ガスの流量を調節する。第1流量調節弁V1は、上方空間15と連通して設けられている。第1流量調節弁V1は乾燥排ガス排出路R4の途中に設けられ、乾燥排ガス排出路R4を流通する乾燥排ガスの流量を調節する。第1流量調節弁V1は、例えば、乾燥室2aの壁部に直接設けられてもよい。第1流量調節弁V1は、湿潤バイオマス焼却システム1の設定では全開状態に設定される。上方空間15内のガス圧(以下、乾燥室フリーボード圧と称する。)は、第1流量調節弁V1の乾燥排ガス流量を絞ると上昇し、開放すると低下する。
【0038】
第2流量調節弁V2は、上方空間16から燃焼室2b外に排出される燃焼排ガスの流量を調節する。第2流量調節弁V2は、上方空間16と連通して設けられている。第2流量調節弁V2は燃焼排ガス排出路R5の途中に設けられ、燃焼排ガス排出路R5を流通する燃焼排ガスの流量を調節する。第2流量調節弁V2は、例えば、燃焼室2bの壁部に直接設けられてもよい。第2流量調節弁V2は、湿潤バイオマス焼却システム1の設定では全開状態に設定される。上方空間16内のガス圧(以下、燃焼室フリーボード圧と称する。)は、第2流量調節弁V2の燃焼排ガス流量を絞ると上昇し、開放すると低下する。
【0039】
蒸気流量計D1は、上方空間15から乾燥室2a外に排出される乾燥排ガスの蒸気流量を測定する。蒸気流量計D1は、本実施形態では乾燥排ガス排出路R4の第1流量調節弁V1が配置された位置よりも下流側の位置に配置され、乾燥排ガス排出路R4を流通する乾燥排ガスの蒸気流量を測定する。
【0040】
乾燥室温度計D2は、乾燥室2a内に配置されて乾燥室2a内の温度を測定する。燃焼室温度計D3は、燃焼室2b内に配置されて燃焼室2b内の温度を測定する。乾燥室温度計D2は、乾燥室2aの上方空間15に露出する壁部に配置され、乾燥室2a内の代表温度を測定する。燃焼室温度計D3は、燃焼室2bの上方空間16に露出する壁部に配置され、燃焼室2b内の代表温度を測定する。乾燥室温度計D2及び燃焼室温度計D3の各々は、室内の最高温度または最低温度を測定するように配置されてもよい。
【0041】
湿潤バイオマス焼却システム1は、乾燥室フリーボード圧と、乾燥室2a側における流動床2fの底部に上方から下方に向けて及ぶ圧との差圧変化、及び、燃焼室フリーボード圧と、燃焼室2b側における流動床2fの底部に上方から下方に向けて及ぶ圧との差圧変化の少なくともいずれかにより流動媒体20及びバイオマス25の移動量を測定するための差圧計を有する。
【0042】
本実施形態では、湿潤バイオマス焼却システム1は、前記差圧計として、乾燥室差圧計D4及び燃焼室差圧計D5を有する。乾燥室差圧計D4は、乾燥室フリーボード圧と、乾燥室2a側における流動床2fの底部に上方から下方に向けて及ぶ圧との差圧変化を測定する。燃焼室差圧計D5は、燃焼室フリーボード圧と、燃焼室2b側における流動床2fの底部に上方から下方に向けて及ぶ圧との差圧変化を測定する。
【0043】
制御装置3は、一例として、CPU、ROM、及びRAM等を備えたコンピュータであり、第1流量調節弁V1と第2流量調節弁V2との各流量を制御する。前記ROMには、所定の制御プログラムが格納されている。制御装置3は、前記制御プログラムに基づいて、蒸気流量計D1、各温度計D2、D3、及び各差圧計D4、D5の検出値を監視し、第1流量調節弁V1と第2流量調節弁V2との各流量を所定のタイミングで調節する。
【0044】
図1に示すように、湿潤バイオマス焼却炉2の運転時には、乾燥室2a側に配置された各ノズル2eから、乾燥剤ガス供給路R2を通過した乾燥剤ガスが風箱2gを経由して乾燥室2a内に噴出される。乾燥剤ガスは、流動媒体20及びバイオマス25中に複数の気泡となって混入する。各ノズル2eから噴出する乾燥剤ガスにより、バイオマス25は、流動媒体20と混合されながら乾燥される。これにより乾燥されたバイオマス25は、流動媒体20と共に乾燥室2a側から燃焼室2b側へ移動する。上方空間15内の乾燥排ガスは、乾燥排ガス排出路R4及び第1流量調節弁V1を流通して乾燥室2a外に排出される。乾燥剤ガスに過熱蒸気などの非酸化性ガスを用いた場合、乾燥室2a内ではバイオマス25は燃焼せず、乾燥排ガスに酸素成分が含まれるのが防止される。
【0045】
また、湿潤バイオマス焼却炉2の運転時には、燃焼室2b側に配置された各ノズル2eから、燃焼剤ガス供給路R3を通過した燃焼剤ガスが、風箱2hを経由して燃焼室2b内に噴出される。燃焼剤ガスは、流動媒体20及びバイオマス25中に複数の気泡となって混入する。各ノズル2eから噴出する燃焼剤ガスにより、バイオマス25は、流動媒体20と混合されながら燃焼される。上方空間16内の燃焼排ガスは、燃焼排ガス排出路R5及び第2流量調節弁V2を介して燃焼室2b外に排出され、燃焼灰は、燃焼灰排出路R6を流通して燃焼室2b外に排出される。燃焼室2bにおいてバイオマス25の燃焼により生じた熱は、流動媒体20と共に燃焼室2b側から乾燥室2a側へ移動し、乾燥室2a内におけるバイオマス25の乾燥に用いられる。
【0046】
ここで湿潤バイオマス焼却炉2では、仕切壁2cの下端が流動床2fの内部に配置された状態で、乾燥室フリーボード圧が第1流量調節弁V1により調整され、燃焼室フリーボード圧が第2流量調節弁V2により調節される。これにより湿潤バイオマス焼却炉2は、第1流量調節弁V1及び第2流量調節弁V2のうち、一方の弁の開度が、他方の弁の開度よりも絞られることで、乾燥室2a及び燃焼室2bのうち、前記一方の弁が設けられた一方の室側における流動床2fの流動層高(流動床2fの上面の高さ位置)と、前記他方の弁が設けられた他方の室側における流動床2fの流動層高とが、前記一方の室の上方空間のガス圧と、前記他方の室の上方空間のガス圧との差が縮小される方向に相対変位するように調整される。
【0047】
流動媒体20及びバイオマス25が全体として高い流動性を有していることにより、第1流量調節弁V1または第2流量調節弁V2を調節して、上方空間15、16のいずれかのガス圧を例えば通常運転時よりも数kPa程度高めることで、流動床2fの乾燥室2a側及び燃焼室2b側の各流動層高は、スムーズに相対的に変位させられる。
【0048】
[湿潤バイオマス焼却炉2の運転方法]
湿潤バイオマス焼却炉2の運転方法を例示する。
図2は、
図1の湿潤バイオマス焼却炉2のバイオマス25の発熱量及び水分量の関係に応じた運転方法を例示する図である。
図2に示すように、バイオマス25の固形分の単位重量当たりの発熱量値(以下、単にバイオマス25の発熱量値と称する。)が、発熱量の基準範囲の下限値以上の値であり、且つ、乾燥室2a内のバイオマス25の水分量値が、水分量の基準範囲の上限値以下の値である場合、湿潤バイオマス焼却炉2は、第1流量調節弁V1及び第2流量調節弁V2が全開状態に設定された通常の運転方法で運転される。
【0049】
バイオマス25の発熱量値が、発熱量の基準範囲の下限値以上の値であり、且つ、乾燥室2a内のバイオマス25の水分量値が、水分量の基準範囲の上限値よりも大きい値である場合、湿潤バイオマス焼却炉2は、第2流量調節弁V2を調節して、以下に示す第1運転方法により運転される。
【0050】
また、バイオマス25の発熱量値が、発熱量の基準範囲の下限値未満の値であり、乾燥室2a内のバイオマス25の水分量値が、水分量の基準範囲の上限値以下の値である場合、湿潤バイオマス焼却炉2は、第1流量調節弁V1を調節して、以下に示す第2運転方法により運転される。
【0051】
また、バイオマス25の発熱量値が、発熱量の基準範囲の下限値未満の値であり、且つ、水分量値が、水分量の基準範囲の上限値よりも大きい値である場合、湿潤バイオマス焼却炉2は、補助燃料を使用して、以下に示す第3運転方法により運転される。
【0052】
このように湿潤バイオマス焼却システム1では、バイオマス25の発熱量及び水分量の関係に応じて湿潤バイオマス焼却炉2の運転方法を変更することで、湿潤バイオマス焼却炉2の乾燥室2a及び燃焼室2bの温度が効率よく安定化される。
【0053】
次に、湿潤バイオマス焼却炉2の第1運転方法を具体的に例示する。
図3は、
図1の湿潤バイオマス焼却炉2の第1運転方法のプロセスを示す図である。
図4は、
図1の湿潤バイオマス焼却炉2を第1運転方法で運転した際に乾燥室2a側及び燃焼室2b側の流動床2fの各流動層高が相対変位した様子を示す図である。
図4では、湿潤バイオマス焼却炉2の通常運転時の乾燥室2a側及び燃焼室2b側の流動床2fの各流動層高を破線Lで示している。
【0054】
図3に示すように、第1運転方法では、制御装置3は、前記制御プログラムに基づき、まず第1流量調節弁V1及び第2流量調節弁V2を全開状態に設定する(ステップS1)。この状態で制御装置3は、湿潤バイオマス焼却炉2を通常運転するように制御しながら、蒸気流量計D1、乾燥室温度計D2、及び燃焼室温度計D3の各測定値を監視する。
【0055】
制御装置3は、蒸気流量計D1の測定値が、蒸気流量の基準範囲の上限値である蒸気流量上限値F
MAXよりも大きい値であることから、乾燥室2a内のバイオマス25の水分量値が、予め定められた第1水分量上限値(本実施形態では水分量の基準範囲の水分量上限値M
MAX)よりも大きい値であると判定すると共に、乾燥室温度計D2の測定値から、乾燥室2a内の温度が基準温度範囲の下限温度Q
MIN未満であると判定した場合、一時的にバイオマス25の水分量が多くなったために湿潤バイオマス焼却炉2の乾燥室2a内の温度が上がりにくくなっており、湿潤バイオマス焼却炉2の乾燥室2a側の温度を高める必要があると判定する。また制御装置3は、燃焼室温度計D3の測定値から、燃焼室2b内の温度が基準温度範囲の下限温度T
MIN以上であると判定することにより、バイオマス25の発熱量値が、予め定められた第1発熱量下限値(本実施形態では発熱量の基準範囲の発熱量下限値C
MIN)以上の値であると判定する(ステップS2)。
【0056】
このように、乾燥室2a内のバイオマス25の水分量値が、予め定められた第1水分量上限値よりも大きい値であり、且つ、バイオマス25の発熱量値が、予め定められた第1発熱量下限値以上の値である場合、制御装置3は、前記一方の弁を第2流量調節弁V2とする。具体的に制御装置3は、第2流量調節弁V2を制御し、第2流量調節弁V2の開度が所定量となるように、第2流量調節弁V2の開度を第1流量調節弁V1の開度よりも絞る(ステップS3)。ここで制御装置3は、例えば、第1流量調節弁V1を全開状態に保持しつつ、第2流量調節弁V2の燃焼排ガス流量値が所定範囲の値となるように第2流量調節弁V2の開度を絞る。このときの燃焼排ガス流量値は、適宜調整が可能であるが、例えば、第2流量調節弁V2の全開状態の60%以上98%以下の範囲の値が望ましく、70%以上95%以下の範囲の値がより望ましく、80%以上90%以下の範囲の値が一層望ましい。
【0057】
ここで、乾燥室2a内には、乾燥剤ガス供給路R2を流通した乾燥剤ガスが連続的に供給され、燃焼室2b内には、燃焼剤ガス供給路R3を流通した燃焼剤ガスが連続的に供給されている。従って、制御装置3が第2流量調節弁V2の開度を第1流量調節弁V1の開度よりも絞ることで、乾燥室フリーボード圧に比べて、燃焼室フリーボード圧を上昇させることができる。これにより制御装置3は、流動媒体20の流動性を利用して、乾燥室2a側における流動床2fの流動層高と、燃焼室2b側における流動床2fの流動層高とを、乾燥室フリーボード圧と燃焼室フリーボード圧との差が縮小される方向に迅速に相対変位させる。
図4に示すように、具体的に制御装置3は、第2流量調節弁V2の開度を第1流量調節弁V1の開度よりも絞ることで、燃焼室2b内の流動媒体20及びバイオマス25の一部を燃焼室2b側から乾燥室2a側へ迅速に移動させ、乾燥室2a側における流動層高h1を、燃焼室2b側における流動層高h2よりも高く変位させる。
【0058】
制御装置3は、前記相対変位に伴って流動媒体20及びバイオマス25が移動したことを、乾燥室2a及び燃焼室2bのうちの少なくとも一方における流動床2fの下方に配置された差圧計により判定する(ステップS4)。具体的に制御装置3は、ステップS3における第2流量調節弁V2の制御前に比べて、乾燥室差圧計D4の測定値が所定の測定値よりも大きくなったと判定し、あるいは燃焼室差圧計D5の測定値が所定の測定値より下がったと判定することで、燃焼室2b内の流動媒体20及びバイオマス25の一部が乾燥室2aへ移動したと判定する。
【0059】
このように第1運転方法では、乾燥室2a内のバイオマス25の水分量値が第1水分量上限値よりも大きい値であるために湿潤バイオマス焼却炉2の乾燥室2a側の温度が低い場合において、バイオマス25の発熱量値が第1発熱量下限値以上の値であるために発熱量値が比較的高く、燃焼室2b内において高温で燃焼されているバイオマス25の一部を、燃焼室2b内の高温の流動媒体20の一部と共に乾燥室2a内に移動させることで、乾燥室2a内のバイオマス25の乾燥を迅速且つ効率的に促進しながら湿潤バイオマス焼却炉2の乾燥室2a側の温度を高め易くする。
【0060】
具体的には、湿潤バイオマス焼却炉2の乾燥室2a側の温度を高めたい場合には、第2流量調節弁V2の開度が第1流量調節弁V1の開度よりも絞られるように第2流量調節弁V2を調節することで、燃焼室2b内の流動媒体20及びバイオマス25の一部を乾燥室2a内に移動させて、乾燥室2a内のバイオマス25の量を流動媒体20の量と共に増大できる。よって、燃焼室2b側から乾燥室2a側へ移動した高温の流動媒体20及びバイオマス25を、乾燥室2a内の流動媒体20及びバイオマス25と混合して、バイオマス25の乾燥を効率よく促進しながら湿潤バイオマス焼却炉2の乾燥室2a側の温度を迅速に高め易くすることができる。これにより、湿潤バイオマス焼却炉2の温度変動の耐性が高められる。
【0061】
また、仕切壁2cの下端を通って乾燥室2a側から燃焼室2b側へ移動する流動媒体20及びバイオマス25の移動速度を一定に維持することで、上記のように第2流量調節弁V2を調節することにより、燃焼室2b側から乾燥室2a側へ移動した高温の流動媒体20及びバイオマス25の乾燥室2a内での滞留時間を増大させることができ、湿潤バイオマス焼却炉2の乾燥室2a側のバイオマスの乾燥時間を長くすることができる。
【0062】
制御装置3は、蒸気流量計D1の測定値が蒸気流量上限値F
MAX以下の値になったことから、バイオマス25の水分量値が水分量上限値M
MAX以下の値になったと判定すると共に、乾燥室温度計D2の測定値から、乾燥室2a内の温度が下限温度Q
MIN以上となったと判定する。これにより制御装置3は、バイオマス25の性状が適正な状態に戻ったと判定する(ステップS5)。
【0063】
その後、制御装置3は、第2流量調節弁V2の開度を緩やかに全開状態に戻す(ステップS6)。これにより、乾燥室2a側における流動層高h1と、燃焼室2b側における流動層高h2との差を縮小させて、湿潤バイオマス焼却炉2の状態を通常運転の状態に移行させる。
【0064】
なお、バイオマス25の発熱量値がある程度低いと、ステップS3を開始しても、乾燥室2a内の温度が上がりにくくなることが考えられる。この場合、制御装置3が、ステップS3を開始してから、ステップS5において乾燥室温度計D2の測定値から乾燥室2a内の温度が下限温度Q
MIN以上になったと判定するまでの時間を長めに設定することで対応できる。
【0065】
また、制御装置3がステップS3を行ってから、ステップS5において乾燥室温度計D2の測定値から乾燥室2a内の温度が下限温度Q
MIN以上になったことを確認するまでの時間が長く掛かる場合、制御装置3は、補助燃料供給路R7から燃焼室2b内に補助燃料を供給し、燃焼室2bの温度を上昇させてもよい。この場合、制御装置3は、燃焼室2b側から乾燥室2a側へ燃焼室2b内の流動媒体20及びバイオマス25の一部が移動したことにより、乾燥室温度計D2の測定値から、乾燥室2a内の温度が下限温度Q
MIN以上になったと判定すると、補助燃料の供給を停止させ、湿潤バイオマス焼却炉2の状態を通常運転の状態に移行させる。
【0066】
次に、湿潤バイオマス焼却炉2の第2運転方法を具体的に例示する。
図5は、
図1の湿潤バイオマス焼却炉2の第2運転方法のプロセスを示す図である。
図6は、
図1の湿潤バイオマス焼却炉2を第2運転方法で運転した際に乾燥室2a側及び燃焼室2b側の流動床2fの各流動層高が相対変位した様子を示す図である。
図6では
図4と同様に、湿潤バイオマス焼却炉2の通常運転時の乾燥室2a側及び燃焼室2b側の流動床2fの各流動層高を破線Lで示している。
【0067】
図5に示すように第2運転方法では、制御装置3はステップS1と同様に、まず第1流量調節弁V1及び第2流量調節弁V2を全開状態に設定する(S11)。この状態で制御装置3は、湿潤バイオマス焼却炉2を通常運転するように制御しながら、蒸気流量計D1及び燃焼室温度計D3の各測定値を監視する。
【0068】
制御装置3は、蒸気流量計D1の測定値が蒸気流量上限値F
MAX以下の値であることから、燃焼室2b内のバイオマス25の水分量値が、予め定められた第2水分量上限値(本実施形態では水分量上限値M
MAX)以下の値であると判定すると共に、燃焼室温度計D3の測定値から、燃焼室2b内の温度が下限温度T
MIN未満であると判定した場合、一時的にバイオマス25の発熱量値が、予め定められた第2発熱量下限値(本実施形態では発熱量下限値C
MIN)未満の値になっているために、湿潤バイオマス焼却炉2の燃焼室2b内の温度が上がりにくくなっており、湿潤バイオマス焼却炉2の燃焼室2b側の温度を高める必要があると判定する(ステップS12)。
【0069】
このように、燃焼室2b内のバイオマス25の水分量値が、予め定められた第2水分量上限値以下の値であり、且つ、バイオマス25の発熱量値が、予め定められた第2発熱量下限値未満の値である場合、制御装置3は、前記一方の弁を第1流量調節弁V1とする。具体的に制御装置3は、第1流量調節弁V1を制御し、第1流量調節弁V1の開度が所定量となるように、第1流量調節弁V1の開度を第2流量調節弁V2の開度よりも絞る(ステップS13)。ここで制御装置3は、例えば、第2流量調節弁V2を全開状態に保持しつつ、第1流量調節弁V1の乾燥排ガス流量値が所定範囲の値となるように第1流量調節弁V1の開度を絞る。このときの乾燥排ガス流量値は、適宜調整が可能であるが、例えば、第1流量調節弁V1の全開状態の55%以上93%以下の範囲の値が望ましく、65%以上90%以下の範囲の値がより望ましく、75%以上85%以下の範囲の値が一層望ましい。
【0070】
制御装置3は、第1流量調節弁V1の開度を第2流量調節弁V2の開度よりも絞ることで、燃焼室フリーボード圧に比べて乾燥室フリーボード圧を上昇させる。
図6に示すように、これにより制御装置3は、第1運転方法とは逆に、乾燥室2a内の流動媒体20及びバイオマス25の一部を乾燥室2a側から燃焼室2b側へ迅速に移動させ、燃焼室2b側における流動層高h2を、乾燥室2a側における流動層高h1よりも高く変位させる。
【0071】
制御装置3は、ステップS13における第1流量調節弁V1の制御前に比べて、燃焼室差圧計D5の測定値が所定値よりも大きくなったと判定し、あるいは乾燥室差圧計D4の測定値が所定値よりも小さくなったと判定することで、乾燥室2a内の流動媒体20及びバイオマス25の一部が燃焼室2bへ移動したと判定する(ステップS14)。
【0072】
このように第2運転方法では、バイオマス25の発熱量値が第2発熱量下限値未満の値であるために湿潤バイオマス焼却炉2の燃焼室2b側の温度が低い場合において、乾燥室2a内の水分量値が第2水分量上限値以下の値であることにより水分量値が比較的低いバイオマス25の一部を、乾燥室2a内の流動媒体20の一部と共に燃焼室2b内に移動させることで、燃焼室2b内のバイオマス25の燃焼を迅速且つ効率的に促進しながら湿潤バイオマス焼却炉2の燃焼室2b側の温度を高め易くする。
【0073】
具体的に湿潤バイオマス焼却炉2の燃焼室2b側の温度を高めたい場合には、第1流量調節弁V1の開度が第2流量調節弁V2の開度よりも絞られるように第1流量調節弁V1を調節することで、乾燥室2a内の流動媒体20及びバイオマス25の一部を燃焼室2b内に移動させて、燃焼室2b内のバイオマス25の量を流動媒体20の量と共に増大できる。よって、乾燥室2a側から燃焼室2b側へ移動した流動媒体20及びバイオマス25を、燃焼室2b内の流動媒体20及びバイオマス25と混合して、バイオマス25の燃焼を効率よく促進しながら湿潤バイオマス焼却炉2の燃焼室2b側の温度を迅速に高め易くすることができる。これにより、湿潤バイオマス焼却炉2の温度変動の耐性が高められる。
【0074】
制御装置3は、燃焼室温度計D3の測定値から、燃焼室2b内の温度が下限温度T
MIN以上になったと判定することで、バイオマス25の発熱量値が発熱量下限値C
MIN以上の値になったと判定する。これにより制御装置3は、バイオマス25の性状が適正な状態に戻ったと判定する(ステップS15)。
【0075】
その後、制御装置3は、第1流量調節弁V1の開度を緩やかに全開状態に戻し(ステップS16)、乾燥室2a側における流動層高h1と、燃焼室2b側における流動層高h2との差を縮小させて、湿潤バイオマス焼却炉2の状態を通常運転の状態に移行させる。
【0076】
なお、バイオマス25の水分量がある程度多いと、ステップS13を開始しても、燃焼室2b内の温度が上がりにくくなることが考えられる。この場合、ステップS15において、制御装置3がステップS13を開始してから、燃焼室温度計D3の測定値から燃焼室2b内の温度が下限温度T
MIN以上になったと判定するまでの時間を長めに設定することで対応できる。
【0077】
次に、湿潤バイオマス焼却炉2の第3運転方法を具体的に例示する。
図7は、
図1の湿潤バイオマス焼却炉2の第3運転方法のプロセスを示す図である。
図7に示すように、第3運転方法では、制御装置3はステップS1と同様に、まず第1流量調節弁V1及び第2流量調節弁V2を全開状態に設定して(ステップS21)、湿潤バイオマス焼却システム1を運転するように制御しながら、蒸気流量計D1及び燃焼室温度計D3の各測定値を監視する。
【0078】
制御装置3は、蒸気流量計D1の測定値が、蒸気流量上限値F
MAXよりも大きい値であることから、乾燥室2a内のバイオマス25の水分量値が、予め定められた第3水分量値(本実施形態では水分量上限値M
MAX)よりも大きい値であると判定すると共に、燃焼室温度計D3の測定値から、燃焼室2b内の温度が下限温度T
MIN未満であると判定することにより、バイオマス25の発熱量の値が、予め定められた第3発熱量下限値(本実施形態では発熱量下限値C
MIN)未満の値であると判定する。これにより制御装置3は、バイオマス25の発熱量値が発熱量下限値C
MIN未満の値であり、且つ、水分量値が水分量上限値M
MAXよりも大きい値であるために、燃焼室2b内の温度が上がりにくくなっており、湿潤バイオマス焼却炉2の燃焼室2b側の温度を高める必要があると判定する(ステップS22)。
【0079】
制御装置3は、補助燃料供給路R7から燃焼室2b内に補助燃料を供給し、バイオマス25の燃焼を促進して燃焼室2b内の温度を上昇させる(ステップS23)。制御装置3は、燃焼室温度計D3の測定値から、燃焼室2b内の温度が下限温度T
MIN以上になったと判定することにより、バイオマス25の性状が適正な状態に戻ったと判定する(ステップS24)。その後、制御装置3は、補助燃料供給路R7から燃焼室2b内への補助燃料の供給を停止させ、湿潤バイオマス焼却炉2の状態を通常の運転状態に移行させる(ステップS25)。
【0080】
ここで、下限温度Q
MIN、T
MIN、蒸気流量上限値F
MAX、水分量上限値M
MAX、及び発熱量下限値C
MINは、湿潤バイオマス焼却炉2の通常の運転状態における湿潤バイオマス焼却炉2の乾燥室2a及び燃焼室2bの各基準温度範囲、乾燥室2a及び燃焼室2bの各容積、及びバイオマス25の特性等に応じて適宜設定できる。水分量上限値M
MAXは、例えば、バイオマス25が燃焼室2bで自燃可能な水分量上限値よりも大きい値に設定できる。また、発熱量下限値C
MINは、例えば、水分量上限値M
MAX以下のバイオマス25を燃焼室2b内で燃焼させたときに、燃焼室2b内の温度が800℃を下回らない発熱量値に設定できる。
【0081】
以上説明したように湿潤バイオマス焼却炉2では、通常の運転方法または第3運転方法に加えて、第1運転方法または第2運転方法による運転が可能であるため、湿潤バイオマス焼却炉2に供給されるバイオマス25の水分量やバイオマス25の発熱量が一時的に変動しても、乾燥室2a側及び燃焼室2b側の流動床2fの各流動層高を相対的に変位させることで、湿潤バイオマス焼却炉2の乾燥室2a及び燃焼室2bの温度を迅速に調節し易くすることができる。よって、湿潤バイオマス焼却炉2を安定した温度で駆動でき、ランニングコストが低く、良好な燃焼効率で湿潤バイオマス焼却システム1を運転できる。
【0082】
また、湿潤バイオマス焼却システム1が蒸気流量計D1を備えているので、蒸気流量計D1の測定値から、乾燥室2a内のバイオマス25の水分量を容易に確認できる。また、湿潤バイオマス焼却システム1が燃焼室温度計D3を備えているので、燃焼室温度計D3の測定値から、燃焼室2b内のバイオマス25の発熱量を容易に確認できる。また、湿潤バイオマス焼却システム1が乾燥室温度計D2を備えているので、乾燥室温度計D2の測定値から、乾燥室2a内のバイオマス25及び流動媒体20の温度を容易に確認できる。
【0083】
また、湿潤バイオマス焼却システム1が前記差圧計(本実施形態では乾燥室差圧計D4及び燃焼室差圧計D5)を備えているので、第1流量調節弁V1及び第2流量調節弁V2のうち、一方の弁のガス流量が所定値より少なくなった際に、前記差圧計の測定値の変化から、乾燥室2aと燃焼室2bとの間における流動媒体20及びバイオマス25の移動を容易に確認できる。
【0084】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成を変更、追加、または削除できる。第1水分量、第2水分量、及び第3水分量のうちの少なくとも2つの水分量は、異なる値であってもよい。また、第1流量調節弁V1と第2流量調節弁V2との少なくとも一方は、湿潤バイオマス焼却システム1のオペレータが手動で制御してもよい。