(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両ドアパネルに取り付けられたガイドレールと、ウインドガラスを支持して上記ガイドレールに沿って移動可能なスライダベースとを有する車両用のウインドレギュレータにおいて、
上記スライダベースは、
上記ガイドレールに摺動可能に支持される樹脂部材と、
上記ウインドガラスを固定する金属製のホルダ部材と、
を備え、
上記樹脂部材は、
上記ホルダ部材に対して、車幅方向にクリアランスをもって支持される本体部と、
上記本体部が上記ホルダ部材に対して上記クリアランスをもつように上記車幅方向に付勢されて上記ホルダ部材に当接する弾性当接部と、
上記ガイドレールの上記車幅方向に延びる壁部が嵌合する嵌合溝を備えたガイド部と、
を備え、
上記ガイド部は車両前後方向に弾性変形して上記ホルダ部材に当接することを特徴とするウインドレギュレータ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び
図2に示すウインドレギュレータ10は、長尺部材であるガイドレール11を有し、ガイドレール11は、長手方向に位置を異ならせて設けたブラケット12,13を介して、図示を省略する車両のドアパネル(インナパネル)の内部に取り付けられる。ガイドレール11は、車両のドアパネルへの取付状態で、長手方向を概ね車両の上下方向(高さ方向)に向けて配置される。ウインドレギュレータ10が取り付けられるドアパネルは車両の側面ドアであり、車両の完成状態では、
図1及び
図2の左右方向が車両前後方向となる。
【0014】
ウインドレギュレータ10は、ガイドレール11に沿って車両上下方向に昇降自在に支持され且つウインドガラス(図示略)を支持するスライダベース(ガラスキャリア)14を有している。スライダベース14には一対の駆動ワイヤ15,16のそれぞれの一端が接続されている。
【0015】
ガイドレール11の長手方向の上端近傍にはプーリブラケット17が固定されており、このプーリブラケット17上にガイドプーリ18がプーリ支持軸19を介して回転可能に支持されている。駆動ワイヤ15は、スライダベース14からガイドレール11に沿って該ガイドレール11の上方向に延び、ガイドプーリ18の外周面上に形成したワイヤガイド溝によって支持される。駆動ワイヤ15の進退に応じて、ガイドプーリ18はプーリ支持軸19を中心とした回転を行う。
【0016】
ガイドレール11の長手方向の下端近傍にはワイヤガイド部材20が設けられている。駆動ワイヤ16は、スライダベース14からガイドレール11に沿って該ガイドレール11の下方向に延びてワイヤガイド部材20に案内される。ワイヤガイド部材20は、ガイドレール11に対して固定されており、ワイヤガイド部材20に形成したワイヤガイド溝に沿って進退可能に駆動ワイヤ16が支持される。
【0017】
ガイドプーリ18から出た駆動ワイヤ15は、管状のアウタチューブ15T内に挿通され、アウタチューブ15Tが接続されるドラムハウジング21内に設けた駆動ドラム22に巻回される。ワイヤガイド部材20から出た駆動ワイヤ16は、管状のアウタチューブ16T内に挿通され、アウタチューブ16Tが接続されるドラムハウジング21内に設けた駆動ドラム22に巻回される。駆動ドラム22の外周面には、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16が巻回される螺旋溝が形成されている。駆動ドラム22はモータ23によって回転駆動される。
【0018】
ドラムハウジング20はドアパネル(インナパネル)に固定されている。モータ22の駆動力によって駆動ドラム21が正逆に回転すると、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16の一方が駆動ドラム22の螺旋溝への巻回量を大きくし、他方が巻取ドラムの螺旋溝から繰り出され、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16の牽引と弛緩の関係によってスライダベース14がガイドレール11に沿って移動する。スライダベース14の移動に応じてウインドガラスが昇降する。
【0019】
以下、ガイドレール11とスライダベース14の構造について詳細に説明する。
図4、
図6、
図7、
図9及び
図10には、ウインドレギュレータ10を車両のドアに取り付けた状態での車外側と車内側の向きを矢線で示しており、この車外側と車内側を結ぶ方向を車幅方向とする。
【0020】
図4、
図6及び
図9に示すように、ガイドレール11は、車内側と車外側に向く面を有する板状部11aの一方の側部に、車外側に向けて突出する(車幅方向に延びる)側壁11bを有し、側壁11bから側方に支持フランジ11cを突出させている。側壁11bと支持フランジ11cの表裏には摺動面11dと摺動面11eが形成されている。支持フランジ11cにおいては、摺動面11dが車外側に向き、摺動面11eが車内側を向く面となる。ガイドレール11はさらに、板状部11aの他方の側部に、車外側に向けて突出するコ字状断面形状の突出部11fを有している。
【0021】
スライダベース14は、合成樹脂製の摺動部材30(樹脂部材)と、金属製のホルダ部材60を組み合わせて構成されている。
図5は摺動部材30を単体で示したものである。
【0022】
まず、摺動部材30の構成を説明する。
図5に示すように、摺動部材30は本体部30aを有し、本体部30aの車両上下方向の上端にガイドシュー31(ガイド部)を有し、本体部30aの下端にガイドシュー32(ガイド部)を有する。
図4及び
図11に示すように、ガイドシュー31は、車両前後方向に離間する側壁80及び側壁81と、側壁80と側壁81を接続する底壁82と、側壁81の一部を側壁80側に突出させた形状の凸部83とを有しており、側壁80と凸部83の間に細溝部84(嵌合溝)が形成され、側壁80と側壁81の間に細溝部84よりも幅の広い幅広溝部85が形成される。側壁80と側壁81の両側にはガイドシュー31の幅を部分的に狭くさせる狭窄部86が形成される。狭窄部86は、側壁80と側壁81のうち底壁82に近い一部領域に形成されている。ガイドシュー31は弾性変形可能であり、特に側壁80と側壁81(凸部83)の間隔を変化させる車両前後方向に弾性変形しやすくなっている。
図11に自由状態でのガイドシュー31を示している。自由状態でのガイドシュー31は、底壁82から離れるにつれて側壁80と側壁81の間隔を広くする形状になっている。ガイドシュー32については詳細構造の図示を省略しているが、ガイドシュー31と同様の構成を備えていて弾性変形可能である。ガイドシュー32においてガイドシュー31と共通する箇所については、ガイドシュー31と共通の符号を付している。
【0023】
図5に示すように、摺動部材30は、車両上下方向においてガイドシュー31とガイドシュー32の間に位置する一対のワイヤガイド溝33,34を有している。ワイヤガイド溝33,34はそれぞれ摺動部材30の本体部30aの一方の側部に開口するワイヤ導入口33a,34aを有し、摺動部材30の本体部30aの他方の側部にワイヤエンド収納部35,36が形成されている。ワイヤガイド溝33はワイヤ導入口33aとワイヤエンド収納部35を連通する溝部である。ワイヤ導入口33aはワイヤエンド収納部35よりも上方に位置しており、ワイヤガイド溝33はワイヤ導入口33aからワイヤエンド収納部35に向けて斜め下方に延びている。ワイヤガイド溝34はワイヤ導入口34aとワイヤエンド収納部36を連通する溝部である。ワイヤ導入口34aはワイヤエンド収納部36よりも下方に位置しており、ワイヤガイド溝34はワイヤ導入口34aからワイヤエンド収納部36に向けて斜め上方に延びている。ワイヤガイド溝33とワイヤガイド溝34は、ワイヤ導入口33aとワイヤ導入口34aの近傍の交差部37で交差している。
【0024】
ワイヤエンド収納部35,36はそれぞれワイヤガイド溝33,34の溝幅よりも幅広の凹部である。ワイヤエンド収納部35はワイヤガイド溝33の延長上に位置して摺動部材30の本体部30aの側部から斜め下方に突出しており、ワイヤエンド収納部36はワイヤガイド溝34の延長上に位置して摺動部材30の本体部30aの側部から斜め上方に突出している。また、摺動部材30の本体部30a上には、ワイヤガイド溝33と交差する差込溝38と、ワイヤガイド溝34と交差する差込溝39が形成されている。
【0025】
図5と
図6に示すように、摺動部材30の本体部30aには、ワイヤガイド溝33,34と差込溝38,39に囲まれて交差部37を頂点とする扇状の領域に、グリス注入部40が形成されている。グリス注入部40は車幅方向に摺動部材30を貫通する注入空間を有しており、この注入空間の車外側の開口40aと車内側の開口40bを有している。グリス注入部40の注入空間内に一対の振れ止め突起41とグリス受け突起42が設けられている。
【0026】
一対の振れ止め突起41は車両上下方向に位置を異ならせて設けられている。
図6に示すように、振れ止め突起41は、グリス注入部40の注入空間の内面のうち車外側の開口40aに近い位置に基端部が接続する片持ち状の突起であり、該基端部から離れて先端側に進むにつれて車内側に向かう傾斜形状を有している。振れ止め突起41は基端部を支点として車幅方向に弾性変形可能である。
【0027】
グリス受け突起42は、車両上下方向において一対の振れ止め突起41の間に位置している。
図6に示すように、グリス受け突起42は、グリス注入部40の注入空間の内面のうち車内側の開口40bに近い位置に基端部が接続する片持ち状の突起であり、該基端部から離れて先端側に進むにつれて車内側に向かう傾斜部42bと、傾斜部42bの先端を車内側に向けて曲げた先端曲げ部42bとを有している。振れ止め突起41は、傾斜部42bの基端部を支点として車幅方向に弾性変形可能である。
【0028】
図5に示すように、摺動部材30には、交差部37を挟んだ車両上下方向の両側に締結座43と締結座44が設けられ、差込溝38と差込溝39の側方(グリス注入部40と反対側の側方)に締結座45が設けられている。各締結座43,44及び45には、車幅方向に貫通する挿通穴43a,44a及び45aが形成されている。
【0029】
摺動部材30はさらに、本体部30aから突出する部位として、2つの固定支持部46,47と、3つの弾性当接部48,49及び50と、4つの上下方向弾性変形部51,52,53及び54を有している。固定支持部46は締結座43の側方に位置し、固定支持部47は締結座44の側方に位置しており、それぞれ車外側を向く支持面46a,47aを有している。弾性当接部48,49及び50と、上下方向弾性変形部51,52,53及び54は、それぞれ後述する各方向に弾性変形が可能な部位である。固定支持部46,47は各弾性当接部48,49及び50や各上下方向弾性変形部51,52,53及び54のような弾性変形を生じない一定形状の部位である。
【0030】
図5に示すように、弾性当接部48は、交差部37の側方に位置し、車両上下方向において固定支持部45と固定支持部46の間に位置する。
図6に示すように、弾性当接部48は、摺動部材30の車外側の面に基端部が接続する片持ち状の突出片であり、車外側に向く当接面48aを有し、車幅方向に弾性変形可能である。
図6は弾性当接部48の自由状態を示しており、自由状態における弾性当接部48は、基端部から先端側に進むにつれて車外側への突出量を大きくしている。
【0031】
図5に示すように、弾性当接部49は、ワイヤエンド収納部35から斜め上方に向けて突出する片持ち状の突出片であり、車外側を向く当接面49aを有する。弾性当接部50は、ワイヤエンド収納部36から斜め下方に向けて突出する片持ち状の突出片であり、車外側を向く当接面50aを有する。弾性当接部48と同様に、弾性当接部49,50はそれぞれ車幅方向に弾性変形可能であり、自由状態における弾性当接部49,50は、基端部から先端側に進むにつれて車外側への突出量を大きくしている。
【0032】
図5に示すように、上下方向弾性変形部51は車両前後方向においてガイドシュー31とワイヤエンド収納部36の間に位置し、上下方向弾性変形部52は車両前後方向においてガイドシュー32とワイヤエンド収納部35の間に位置している。
図7に示すように、上下方向弾性変形部51は、摺動部材30の上縁部から車内側に向けて突出する片持ち状の突出片であり、上方を向く当接面51aを有する。上下方向弾性変形部52は、摺動部材30の下縁部から車内側に向けて突出する片持ち状の突出片であり、下方を向く当接面52aを有する。上下方向弾性変形部51,52はそれぞれ車両上下方向に弾性変形可能であり、
図5と
図7は上下方向弾性変形部51,52の自由状態を示している。自由状態における上下方向弾性変形部51は、先端側(車内側)に進むにつれて上方への当接面51aの突出量が大きくなる湾曲形状をなし、自由状態における上下方向弾性変形部52は、先端側(車内側)に進むにつれて下方への当接面52aの突出量が大きくなる湾曲形状をなしている。別言すれば、自由状態において上下方向弾性変形部51,52は、先端側(車内側)に進むにつれて徐々に車両上下方向の間隔を広くしている。
【0033】
図5に示すように、上下方向弾性変形部53は、車両前後方向においてガイドシュー31を挟んで上下方向弾性変形部51の反対側(締結座43の上方)に位置している。上下方向弾性変形部51と同様に、上下方向弾性変形部53は、摺動部材30の上縁部から車内側に向けて突出する片持ち状の突出片であり、上方(斜め上方)を向く当接面53aを有する。上下方向弾性変形部54は、固定支持部47の下縁部から車内側に向けて突出する片持ち状の突出片であり、下方を向く当接面54aを有する。上下方向弾性変形部53,54はそれぞれ車両上下方向に弾性変形可能であり、
図5は上下方向弾性変形部53,54の自由状態を示している。自由状態における上下方向弾性変形部53は、先端側(車内側)に進むにつれて上方への当接面53aの突出量が大きくなる湾曲形状をなし、自由状態における上下方向弾性変形部54は、先端側(車内側)に進むにつれて下方への当接面54aの突出量が大きくなる湾曲形状をなしている。別言すれば、自由状態において上下方向弾性変形部53,54は、先端側(車内側)に進むにつれて徐々に車両上下方向の間隔を広くしている。
【0034】
続いて、ホルダ部材60の構成を説明する。
図3に示すように、ホルダ部材60は、板状のカバー部61と、カバー部61の両側に位置するガラス取付部62,63とを有する。ガラス取付部62とガラス取付部63には、ウインドガラスを締結固定するボルト(図示略)が挿入されるボルト挿通穴62a,63aが形成されている。
【0035】
カバー部61の車両前後方向の中央付近には、上端側に挟持部64が設けられ、下端側に挟持部65が設けられている。
図4に示すように、挟持部64は、車両前後方向に離間して対向する一対の側壁87,88と、該一対の側壁87,88を接続する底壁89を有するコ字状断面部であり、底壁89と反対の車内側が開放されている。挟持部65は挟持部64と同様の構成を備えており、挟持部65において挟持部64と共通する箇所については、挟持部64と共通の符号を付している。
【0036】
ホルダ部材60の上縁部には、挟持部64の側壁87に連続してガラス取付部62まで延びるフランジ66と、挟持部64の側壁88に連続してガラス取付部63まで延びるフランジ部67が形成されている。ホルダ部材60の下縁部には、挟持部65の側壁87に連続してガラス取付部62まで延びるフランジ68と、挟持部65の側壁88に連続してガラス取付部63まで延びるフランジ69が形成されている。フランジ66,67,68及び69はいずれも、カバー部61の周縁を車内側に曲げた形状をなしている(
図10参照)。
【0037】
カバー部61の中央付近には、車両上下方向に位置を異ならせて対をなす差込片70と差込片71が形成されている。差込片70と差込片71は、カバー部61の一部を車内側に向けて切り起こして形成され、その先端部分に溝部を有する二股状の突出部である。カバー部61には、差込片70と差込片71を形成する際の切り起こしによって貫通穴72が形成されている。
【0038】
カバー部61にはさらに、貫通穴72を囲む位置に3つの締結穴73,74及び75が形成されている。締結穴73,74及び75は、摺動部材30の挿通穴43a,44a及び45aに対応する位置関係で配されている。
【0039】
摺動部材30とホルダ部材60を組み合わせる前に、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16が摺動部材30に組み付けられる。
図5に示すように、駆動ワイヤ15の端部には駆動ワイヤ15よりも大径のワイヤエンド76が設けられており、ワイヤエンド76をワイヤエンド収納部35に挿入すると共に、駆動ワイヤ15をワイヤガイド溝33に挿入する。駆動ワイヤ16の端部には駆動ワイヤ16よりも大径のワイヤエンド77が設けられており、ワイヤエンド77をワイヤエンド収納部36に挿入すると共に、駆動ワイヤ16をワイヤガイド溝34に挿入する。ワイヤエンド収納部35とワイヤエンド収納部36の内部にはそれぞれ、ワイヤエンド76とワイヤエンド76を牽引方向(ワイヤガイド溝33,34と反対方向)に付勢するバネ(図示略)が挿入される。ワイヤガイド溝33内に挿入された駆動ワイヤ15と、ワイヤガイド溝34内に挿入された駆動ワイヤ16はそれぞれ、交差部37を通り、ワイヤ導入口33aとワイヤ導入口34aを通して摺動部材30の外側に引き出される。
図6及び
図9に示すように、交差部37において駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16は車幅方向に位置を異ならせて配策されており、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16は互いに干渉しない。
【0040】
図5に示すように、摺動部材30の固定支持部46は、ワイヤ導入口33aから摺動部材30の外側に引き出されて上方(ガイドプーリ18側)に向かう駆動ワイヤ15の配策位置よりも、摺動部材30の側方に突出する形状になっている。固定支持部47は、ワイヤ導入口34aから摺動部材30の外側に引き出されて下方(ワイヤガイド部材20側)に向かう駆動ワイヤ16の配策位置よりも、摺動部材30の側方に突出する形状になっている。
【0041】
ホルダ部材60は、フランジ66,67,68及び69や差込片70,71が突出する側を車内側に向けて、摺動部材30に対してカバー部61を車外側から被せて組み付けられる。
図4や
図8に示すように、ホルダ部材60を摺動部材30に組み付けた状態では、ホルダ部材60に設けた挟持部64と挟持部65の内部に摺動部材30のガイドシュー31とガイドシュー32が挿入される。ガイドシュー31は、挟持部64内に挿入されることで、
図11に示す自由状態から
図4に示す弾性変形状態に変化する。具体的には、挟持部64の側壁87と側壁88の対向する面の間隔よりも、自由状態にあるガイドシュー31の側壁80から側壁81までの最大幅の方が大きいため、側壁87と側壁88によって車両前後方向の広がりが規制された側壁80と側壁81が互いに接近する状態に弾性変形される。このとき、
図4に示すように、ガイドシュー31のうち狭窄部86の形成箇所では、挟持部64の側壁87と側壁88に対して車両前後方向の隙間が存在している。ガイドシュー31と同様に、ガイドシュー32は、挟持部65内に挿入されることで、側壁80と側壁81を互いに接近させる弾性変形状態になる。ガイドシュー32のうち狭窄部86の形成箇所では、挟持部65の側壁87と側壁88に対して車両前後方向の隙間が存在している。
【0042】
ホルダ部材60を摺動部材30に組み付けると、摺動部材30の弾性当接部48,49及び50の当接面48a,49a及び50aが、ホルダ部材60のカバー部61に当接して支持される。
図9に示すように、弾性当接部48は、当接面48aをカバー部61に当接させた状態で車内側に向けて弾性変形している。このとき弾性当接部48の基端側の一部とカバー部61との間に隙間があり、弾性当接部48は先端側の一部をカバー部61に当接させている。
図9には表れていないが、弾性当接部49,50も同様に、車内側に向けて弾性変形された状態で当接面49a,50aをカバー部61に当接させる。弾性当接部49,50は、基端側の一部とカバー部61との間に隙間があり、先端側の一部をカバー部61に当接させている。
【0043】
さらに、ホルダ部材60を摺動部材30に組み付けると、上下方向弾性変形部51,52,53及び54の当接面51a,52a,53a及び54aがそれぞれ、ホルダ部材60のフランジ66,67,68及び69に当接して支持される(
図8)。
図10に示すように、上下方向弾性変形部51は、自由状態(
図7)から曲率を変化させながら下方に向けて弾性変形された状態で当接面51aをフランジ67に当接させ、上下方向弾性変形部52は、自由状態(
図7)から曲率を変化させながら上方に向けて弾性変形された状態で当接面52aをフランジ69に当接させる。このとき上下方向弾性変形部51の基端側の一部とフランジ67との間に隙間があり、上下方向弾性変形部52の基端側の一部とフランジ69との間に隙間があり、上下方向弾性変形部51,52はそれぞれの先端側の一部を対応するフランジ67,69に当接させている。
図10には表れていないが、上下方向弾性変形部53は、上下方向弾性変形部51と同様に、自由状態から曲率を変化させながら下方に向けて弾性変形された状態で当接面53aをフランジ66に当接させ、上下方向弾性変形部54は、上下方向弾性変形部52と同様に、自由状態から曲率を変化させながら上方に向けて弾性変形された状態で当接面54aをフランジ68に当接させる。上下方向弾性変形部53の基端側の一部とフランジ66との間に隙間があり、上下方向弾性変形部54の基端側の一部とフランジ68との間に隙間があり、上下方向弾性変形部55,54はそれぞれの先端側の一部を対応するフランジ66,68に当接させている。
【0044】
ガイドシュー31,32が挟持部64,65によって挟持されることでホルダ部材60に対する摺動部材30の車両前後方向の位置が定まり、弾性当接部48,49及び50の当接面48a,49a及び50aがカバー部61に当接することでホルダ部材60に対する摺動部材30の車幅方向の位置が定まり、上下方向弾性変形部51,52,53及び54の当接面51a,52a,53a及び54aがフランジ66,67,68及び69に当接することでホルダ部材60に対する摺動部材30の車両上下方向の位置が定まる。これらの各部分では、摺動部材30側の当接部分が弾性変形した状態で当接することにより、摺動部材30とホルダ部材60の部品精度や組付精度のばらつきを吸収しながら、摺動部材30とホルダ部材60の間の振動や異音を抑制することができる。
【0045】
また、ホルダ部材60を摺動部材30に組み付けると、摺動部材30の固定支持部46,47の支持面46a,47aがホルダ部材60のカバー部61に対向すると共に、固定支持部46の上縁部がフランジ66に対向し、固定支持部47の下縁部がフランジ68に対向する(
図8)。ホルダ部材60に対して摺動部材30を車両上下方向や車幅方向に大きく傾かせようとする荷重が加わったときには、固定支持部46と固定支持部47がホルダ部材60側の対向部位に当接して剛性の高いホルダ部材60で荷重を受けることができる。
【0046】
また、ホルダ部材60を摺動部材30に組み付けると、差込片70が差込溝38に挿入され、差込片71が差込溝39に挿入される。差込片70,71はいずれも先端部分に溝部を有しており、差込片70の溝部内に駆動ワイヤ15が挿通され、差込片71の溝部内に駆動ワイヤ16が挿通される。
【0047】
摺動部材30とホルダ部材60は、3つの金属製のかしめピン78(固定部材)によって締結固定される。
図9に示すように、かしめピン78は、頭部78aと中間径部78bと小径部78cを有している。各かしめピン78は、小径部78cをホルダ部材60の締結穴73,74及び75に挿入し、中間径部78bを摺動部材30の挿通穴43a,44a及び45aに挿入し、頭部78aを摺動部材30の締結座43,44及び45に当接させた状態で、小径部78cの先端をかしめてかしめ部78dを形成することで、摺動部材30とホルダ部材60を締結させる(
図9参照)。
図9は締結座45と締結穴75の箇所でのかしめピン78による締結を示しているが、締結座43と締結穴73の箇所と、締結座44と締結穴74の箇所でも、
図9と同様にかしめピン78による締結が行われる。
図9や
図10に示すように、各かしめピン78により摺動部材30とホルダ部材60を締結固定した状態で、この締結固定箇所以外の部分で、摺動部材30の本体部30aとホルダ部材60のカバー部61との間に車幅方向のクリアランスがあり、摺動部材30の本体部30aとホルダ部材60のフランジ67,69の間に車両上下方向のクリアランスがある。
図10には表れていないが、摺動部材30の本体部30aとホルダ部材60のフランジ66,68の間にも車両上下方向のクリアランスがある。
【0048】
以上のように構成したスライダベース14をガイドレール11に組み付ける。スライダベース14のうち、上下のガイドシュー31,32と、その中間に位置する一対の振れ止め突起41及びグリス受け突起42は、ガイドレール11に対して摺動可能に当接することができる。
図4に示すように、ガイドシュー31(32)は、細溝部84に側壁11bを嵌合させ、幅広溝部85内に支持フランジ11cを挿入させる。細溝部84の両側を構成する側壁80と凸部83によって側壁11bの摺動面11d,11eを挟持することで、ガイドレール11に対するスライダベース14の車両前後方向の位置が定まる。幅広溝部85は、支持フランジ11cを車幅方向に余裕をもって挿入させるサイズになっている。
図4や
図6に示すように、支持フランジ11cの車外側の摺動面11dに対して一対の振れ止め突起41が弾性変形した状態で当接しており、支持フランジ11cは、車内側の摺動面11eがガイドシュー31(32)の凸部83側に寄せられた状態で幅広溝部85内に位置する。従って、スライダベース14は、車両上下方向に位置を異ならせて配したガイドシュー31(32)凸部83と一対の振れ止め突起41とよって摺動面11dと摺動面11eを挟むことによって、支持フランジ11cに対する車幅方向の位置が定まる。そして、スライダベース14は、側壁11bと支持フランジ11cに対してガイドシュー31,32と一対の振れ止め突起41を摺動させながら、ガイドレール11の長手方向に移動することができる。ガイドシュー31,32は、車両前後方向へのスライダベース14の姿勢を制御して、同方向へのスライダベース14の傾きを防ぐ。
【0049】
図6に示すように、スライダベース14をガイドレール11に組み付けた状態で、スライダベース14のグリス受け突起42は、傾斜部42aが支持フランジ11cの摺動面11eの車内側に対向して位置し、先端曲げ部42bが側壁11bの摺動面11eに対向して位置する。傾斜部42aと支持フランジ11cの摺動面11eとの間には車幅方向に所定のスペースがあり、先端曲げ部42bは側壁11bの摺動面11eに近接して位置する。
【0050】
図1と
図2は、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16の配索が完了し、かつガイドレール11に対してスライダベース14を摺動可能に支持させたウインドレギュレータ10の完成状態である。この完成状態でドラムハウジング21内の駆動ドラム22を回転させると、その回転方向に応じて駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16の一方が牽引され他方が弛緩される。牽引された側の駆動ワイヤ15,16では、ワイヤエンド76,77が対応するワイヤエンド収納部35,36の端面(ワイヤガイド溝33,34に接続する側の端部)に力を伝える。ワイヤエンド76,77はワイヤエンド収納部35,36の端面との当接によってスライダベース14に対するそれ以上の移動(駆動ドラム22側への移動)が規制されるため、牽引された側の駆動ワイヤ15,16からスライダベース14に対して、ガイドレール11の長手方向へ移動させる力が作用する。差込片70は、駆動ワイヤ15が牽引されたときにワイヤエンド76からワイヤエンド収納部35の端面に加わる荷重の作用方向の延長上に位置し、差込片71は、駆動ワイヤ16が牽引されたときにワイヤエンド77からワイヤエンド収納部36の端面に加わる荷重の作用方向の延長上に位置している。各駆動ワイヤ15,16によって付与される牽引方向の荷重を金属製のホルダ部材60の一部である差込片70,71で受けることにより、スライダベース14の耐荷重性能の向上に寄与する。弛緩した側の駆動ワイヤ15,16は、ワイヤエンド収納部35,36内に配したバネ(図示略)の力によってワイヤエンド70,72の端面から離れる方向に押圧されて弛みが除去される。
図1と
図2は、ガイドレール11の長手方向に沿う可動範囲の最も下方にスライダベース14が位置する状態を示している。
【0051】
図3に示すように、スライダベース14をガイドレール11に対して摺動可能に支持させた状態で、ホルダ部材60の貫通穴72を通して、摺動部材30のグリス注入部40を車外側から視認することができる。そして、貫通穴72と開口40aを通してグリス注入部40内へ潤滑用のグリスを注入する。
図6と
図9に示すように、車両前後方向において、グリス注入部40の略中央にガイドレール11の側壁11bと支持フランジ11cが位置しており、グリス注入部40内に注入したグリスは側壁11bと支持フランジ11cの周りに貯留される。特に、グリス注入部40に設けたグリス受け突起42に沿って、支持フランジ11cの摺動面11e側にも確実にグリスを供給することができる。そして、グリス注入部40にグリスを注入した状態で、ガイドレール11に沿ってスライダベース14を車両上下方向に移動させると、スライダベース14の移動に伴ってグリス注入部40内のグリスがガイドレール11の摺動面(側壁11bと支持フランジ11cの摺動面11d,11e)に塗布される。
【0052】
グリスの塗布後に、ホルダ部材60のガラス取付部62とガラス取付部63に対して車外側からウインドガラスを当て付け、ボルト挿通穴62a,63aを通してガラス締結用のボルトを挿入してウインドガラスを固定し、スライダベース14がウインドガラスを支持する状態にする。
【0053】
以上のウインドレギュレータ10のスライダベース14では、ウインドガラスに対して金属製のホルダ部材60を固定し、合成樹脂製の摺動部材30は、ウインドガラスに対して直接に固定せずにホルダ部材60を介して間接的にウインドガラスと結合されている。そのため、ウインドガラスに対して働く力を、剛性の高いホルダ部材60で受けて、摺動部材30への応力の集中を防ぐことができる。摺動部材30はガイドレール11に対する摺動や駆動ワイヤ15,16の接続を担う部位であるため、摺動部材30への応力集中による撓みや変形を防ぐことで、ウインドレギュレータ10の性能を維持できる。特に、車両上下方向に離間させてホルダ部材60に設けた挟持部64と挟持部65のそれぞれの側壁87,88によって摺動部材30のガイドシュー31,32を車両前後方向に挟持することで、車両前後方向へのウインドガラスの傾きに対するスライダベース14の回転剛性を高めることができる。
【0054】
上述のように、
図4に示す摺動部材30とホルダ部材60の組み合わせ状態では、ガイドシュー31(32)は挟持部64(65)によって挟持されて弾性変形して、
図11の自由状態よりも側壁80,81の間隔を狭くしている。そして、
図4に示すように、ガイドシュー31(32)のうち狭窄部86については挟持部64(65)の側壁87,88との間に隙間があり、この隙間によって、ガイドシュー31(32)は挟持部64(65)に対して車両前後方向の相対的な位置変化や変形が許容されている。
【0055】
図12は、挟持部64(65)の側壁87と側壁88に対するガイドシュー31(32)の狭窄部86の隙間が、車両前後方向の両側で略均等な嵌合状態を示している。
図13は、ガイドシュー31(32)が挟持部64(65)に許容される範囲で車両前後方向の一方に最大に移動した(偏った)状態を示しており、
図14は、ガイドシュー31(32)が挟持部64(65)に許容される範囲で車両前後方向の他方に最大に移動した(偏った)状態を示している。
図13の状態では、ガイドシュー31(32)が
図12の状態からさらに弾性変形して、側壁81の略全体に亘って側壁88との間に隙間がなくなっている。その一方で、側壁87に対する側壁80(狭窄部86)の隙間は大きくなっている。
図14の状態では、ガイドシュー31(32)が
図12の状態からさらに弾性変形し、側壁80の略全体に亘って側壁87との間に隙間がなくなっている。その一方で、側壁88に対する側壁81(狭窄部86)の隙間は大きくなっている。このように、ガイドシュー31(32)は、部分的に隙間を空けながら弾性変形して挟持部64(65)に当接するので、摺動部材30とホルダ部材60の間の車両前後方向の精度のばらつきや、温度変化による摺動部材30とホルダ部材60の車両前後方向の変形量のばらつき等を吸収することができる。
【0056】
上述のように、摺動部材30とホルダ部材60の組み合わせ状態では、摺動部材30の本体部30aとホルダ部材60のカバー部61との間に車幅方向のクリアランスがある。そして、本体部30aから突出する3つの弾性当接部48,49及び50がそれぞれカバー部61に当接して車内側に向けて弾性変形し、弾性当接部48,49及び50は、カバー部61に対して本体部30aが車幅方向のクリアランスをもつように付勢力を与えながら摺動部材30を弾性的に支持する。より詳しくは、
図9に示すように、弾性当接部48(49,50)は、基端側の一部領域が対向するカバー部61との間に隙間を空けつつ、先端側で当接面48a(49a,50a)をカバー部61に当接させる。弾性当接部48,49及び50は、これらの隙間によって、ホルダ部材60に対する車幅方向の相対的な位置変化や変形が許容されている。以上の構成によって、摺動部材30とホルダ部材60の間の車幅方向の精度のばらつきや、温度変化による摺動部材30とホルダ部材60の車幅方向の変形量のばらつき等を吸収することができる。
【0057】
車両前後方向で、ガイドシュー31,32を挟んだ一方の側(ガラス取付部62側)に弾性当接部48を設け、他方の側(ガラス取付部63側)に弾性当接部49,50を設けている。この配置により、ガイドシュー31,32の両側でホルダ部材60に対する摺動部材30の車幅方向の傾きを防いで、高い安定性を得ることができる。
【0058】
かしめピン78により締結座43と締結穴73を固定した箇所を第1の固定部、かしめピン78により締結座44と締結穴74を固定した箇所を第2の固定部、かしめピン78により締結座45と締結穴75の固定箇所を第3の固定部とする。
図8に示すように、弾性当接部48は、車両前後方向において第1の固定部と第2の固定部よりも側方(ガラス取付部62側)に突出した位置にあり、車両上下方向において第3の固定部と略同じ位置(第1の固定部と第2の固定部の間)にある。弾性当接部49は、車両前後方向において第3の固定部よりも側方(ガラス取付部63側)に突出した位置にあり、車両上下方向において第2の固定部と略同じ位置にある。弾性当接部50は、車両前後方向において第3の固定部よりも側方(ガラス取付部63側)に突出した位置にあり、車両上下方向において第1の固定部と略同じ位置にある。別言すれば、
図8のようにスライダベース14を平面視したときに、弾性当接部48,49及び50は、第1から第3の固定部における3つのかしめピン78の軸線を頂点とする三角形の各辺の外側に位置している。この配置により、弾性当接部48,49及び50による本体部30aへの付勢力の偏りを抑えて、ホルダ部材60に対する摺動部材30の車幅方向での支持の安定性を高めることができる。
【0059】
また、ワイヤエンド76,77から摺動部材30に牽引力が加わるワイヤエンド収納部35,36の近傍に弾性当接部49,50を設け、ワイヤ導入口33a,34aから延出された駆動ワイヤ15,16から摺動部材30に対して車両上下方向への力が加わる着力部の近傍に弾性当接部48を設け、これら3つの弾性当接部48ないし50でホルダ部材60に対する車幅方向の当接を行うことにより、駆動ワイヤ15,16の牽引時における摺動部材30の車幅方向の姿勢も効率的に安定させることができる。
【0060】
上述のように、摺動部材30とホルダ部材60の組み合わせ状態では、摺動部材30の本体部30aとホルダ部材60のフランジ66,67,68及び69との間に車両上下方向のクリアランスがある。そして、本体部30aから突出する4つの上下方向弾性変形部51,52,53及び54がそれぞれ、フランジ67,69,66及び68に当接して、車両上下方向においてスライダベース14の中心側に向けて弾性変形し、上下方向弾性変形部51,52,53及び54はそれぞれ、フランジ67,69,66及び68に対して本体部30aが車両上下方向のクリアランスをもつように上下両側から付勢力を与えながら摺動部材30を弾性的に支持する。より詳しくは、
図10に示すように、スライダベース14の上部に位置する上下方向弾性変形部51(53)は、基端側の一部領域が対向するフランジ67(66)との間に隙間を空けつつ、先端側で当接面51a(53a)がフランジ67(66)に当接する。また、スライダベース14の下部に位置する上下方向弾性変形部52(54)は、基端側の一部領域が対向するフランジ69(68)との間に隙間を空けつつ、先端側で当接面52a(54a)がフランジ69(68)に当接する。上下方向弾性変形部51,52,53及び54は、これらの隙間によって、ホルダ部材60に対する車両上下方向の相対的な位置変化や変形が許容されている。以上の構成によって、摺動部材30とホルダ部材60の間の車両上下方向の精度のばらつきや、温度変化による摺動部材30とホルダ部材60の車両上下方向の変形量のばらつき等を吸収することができる。
【0061】
図8に示すように、車両前後方向で、上方のガイドシュー31を挟んだ両側に一対の上下方向弾性変形部51,53を設け、下方のガイドシュー32を挟んだ両側に一対の上下方向弾性変形部52,54を設けている。この配置により、上下方向弾性変形部51,52,53及び54による本体部30aへの付勢力の偏りを抑えて、ホルダ部材60に対する摺動部材30の車両上下方向での支持の安定性を高めることができる。
【0062】
図7に示すように、上下方向弾性変形部51,52(53,54)はいずれも、自由状態において基端側から先端側にかけて湾曲した片持ち状の突出片である。このような湾曲形状に設定することで、基端側から先端側まで直線的な形状にした場合に比して、弾性変形する際に基端部に加わる応力が小さくなり、上下方向弾性変形部51,52(53,54)の耐久性を向上させることができる。
【0063】
以上のようにスライダベース14では、摺動部材30とホルダ部材60の間の精度誤差を吸収して容易な組み付けを行うことができる。また、摺動部材30とホルダ部材60を組み合わせてかしめピン78により固定した状態で、摺動部材30のガイドシュー31,32や弾性当接部48,49及び50や上下方向弾性変形部51,52,53及び54は、温度変化等に起因とする摺動部材30とホルダ部材60の変形量の相違や、かしめピン78による固定箇所以外での摺動部材30とホルダ部材60の部分的な相対移動に追随して変形してこれらを吸収するため、摺動部材30とホルダ部材60の間の振動や異音の発生を効果的に防ぎ、スライダベース14の品質を高めることができる。
【0064】
以上、図示実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は図示した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて改良や改変が可能である。例えば、実施形態のスライダベース14では、弾性当接部48,49及び50によって、摺動部材30の本体部30aがホルダ部材60に対して車幅方向にクリアランスをもつように弾性的に支持(付勢)し、上下方向弾性変形部51,52,53及び54によって、摺動部材30の本体部30aがホルダ部材60に対して車両上下方向にクリアランスをもつように弾性的に支持(付勢)している。このうち弾性当接部48,49及び50による車幅方向の支持構造のみを備える変形例を採用することも可能である。
【0065】
また、弾性当接部48,49及び50や上下方向弾性変形部51,52,53及び54は、実施形態の摺動部材30とホルダ部材60に最適化したものであるが、スライダベースを構成する摺動部材とホルダ部材の構成に応じて弾性当接部や上下方向弾性変形部の数と配置を異ならせることも可能である。
【0066】
実施形態のスライダベース14は、かしめピン78によって摺動部材30とホルダ部材60を締結固定しているが、摺動部材30とホルダ部材60の固定を異なる箇所や異なる手段によって行うことも可能である。
【0067】
実施形態のスライダベース14は、上下方向弾性変形部51,52,53及び54が自由状態において湾曲形状を有しているが、弾性当接部48,49及び50を同様の湾曲形状に設定することも可能である。