特許第6697323号(P6697323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697323
(24)【登録日】2020年4月28日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/26 20060101AFI20200511BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20200511BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20200511BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20200511BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20200511BHJP
【FI】
   H01M2/26 A
   H01M2/02 K
   H01M10/0566
   H01M10/0525
   H01M10/0585
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-103538(P2016-103538)
(22)【出願日】2016年5月24日
(65)【公開番号】特開2017-212075(P2017-212075A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2018年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社エンビジョンAESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】木村 愛佳
(72)【発明者】
【氏名】水田 政智
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−082011(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/125271(WO,A1)
【文献】 特開2013−041851(JP,A)
【文献】 特開2004−087260(JP,A)
【文献】 特開2011−071109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/26
H01M 2/02
H01M 10/0525
H01M 10/0566
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素と電解液とを外装体内に備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記発電要素は、集電体の表面に活物質層が形成された複数の電極と、それら複数の電極間に介装される複数のセパレータとが積層されるとともに、前記集電体の表面が露出してなる複数のタブが、外部負荷と電気的に接続されるリード端子に積層状態で接続されており、
前記複数のタブは、積層方向で中央寄りに配置されるタブの端部が、積層方向で外側寄りに隣接配置される他のタブの端部よりも前記集電体の延在方向で前記リード端子の導出側に張り出すように前後しており、
前記リード端子とは反対の側から前記複数のタブの最も外側寄りに位置するタブに当接するように前記外装体内に配置される金属製の当て板を更に備え、
前記当て板の前記リード端子の導出側先端は、前記外装体内に収容前の状態において、前記積層方向で最も中央寄りに位置するタブの端部よりも前記延在方向で外側に位置することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記複数のタブは、積層方向で最も中央寄りに位置するタブの端部と最も外側寄りに位置するタブの端部との前記延在方向での位置のずれ量が0.6〜1.8mmである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記外装体は、ラミネートシートから形成されている請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
車両に用いられる請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された複数のタブを備えるリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の積層電池では、例えば特許文献1に記載の技術のように、複数のタブの端部を積層して(束ねて)おり、積層された複数のタブの端部と外部負荷と電気的に接続するためのリード端子とを相互に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5846932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、リード端子と複数のタブの端部との接続部には大電流が流れる。そのため、この接続部での発熱量が多くなれば、電池の劣化が進みやすくなり耐久性が低下するおそれがある。
そこで、本発明は、リード端子と複数のタブの端部との接続部での放熱性を向上させ得るリチウムイオン二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池は、発電要素と電解液とを外装体内に備える。発電要素は、集電体の表面に活物質層が形成された複数の電極と、それら複数の電極間に介装される複数のセパレータとが積層されるとともに、集電体の表面が露出してなる複数のタブが、外部負荷と電気的に接続されるリード端子に積層状態で接続されている。そして、複数のタブは、積層方向で中央寄りに配置されるタブの端部が、積層方向で外側寄りに隣接配置される他のタブの端部よりも集電体の延在方向でリード端子の導出側に張り出すように前後している。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数のタブのうち、最も温度が上昇する中央寄りのタブをリード端子の導出側に張り出すことで、積層された複数のタブの端部での放熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の斜視図である。
図2図1のリチウムイオン二次電池のZ−Z断面を模式的に示す図である。
図3図2のA部における複数のタブの端部部分を拡大して示す詳細図である。
図4】複数のタブの端部部分の変形例(第一変形例)を示す図である。
図5】複数のタブの端部部分の変形例(第二変形例)を示す図である。
図6】第二変形例において、ラミネート外装体との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0009】
<リチウムイオン二次電池の構成について>
まず、本実施形態のリチウムイオン二次電池の構成について説明する。なお、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載されるものである。
図1に示すように、このリチウムイオン二次電池1(以下、単に「電池」ともいう)は、平面視が略矩形をなすシート状の外観形状を有する積層型電池である。電池1は、ラミネートフィルムによって形成された外装体30を備える。外装体30の周縁部には、負極端子21及び正極端子22が設けられている。本実施形態の電池1では、略矩形の外装体30の周縁部の一辺に、矩形板状の負極端子21及び正極端子22が隣り合って設けられている。また、負極端子21及び正極端子22は、それぞれ外装体30の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。
【0010】
電池1は、図2に示すように、負極11及び正極12がセパレータ13を介して積層された発電要素10と、発電要素10に浸潤された電解液40とを外装体30内に備える。負極11、正極12及びセパレータ13は、いずれも膜状であり、発電要素10は平面視が平板状をなしている。負極11、正極12及びセパレータ13は空孔を有し、電解液40と接触すると電解液40が浸潤する。
【0011】
発電要素10は、同図に示すように、負極11と正極12とがセパレータ13を介して交互に複数積層された構造を有する。負極11は、負極集電体11Aの両主面上に負極活物質層11B、11Bを有する。負極活物質層11Bは、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る負極活物質を含有している。正極12は、正極集電体12Aの両主面上に正極活物質層12B、12Bを有する。正極活物質層12Bは、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る正極活物質を含有している。
【0012】
発電要素10は、隣接する負極活物質層11B、セパレータ13及び正極活物質層12Bが1つの単電池層14を構成する。発電要素10は、外装体30となる一対のラミネートフィルムで上下から挟まれている。一対のラミネートフィルムは、周縁部同士が熱融着されて袋状の外装体30となっている。
【0013】
リード端子である負極端子21及び正極端子22の先端は、それぞれラミネートフィルムの外部に突出するように位置している。負極端子21及び正極端子22の端部のうち、外装体30内に配される各リード端子の端部は、外装体30内に封入された発電要素10の負極集電体11A及び正極集電体12Aそれぞれの端部が積層されたタブ(同図では、負極集電体11Aのタブ11Atを示す。)に、例えば超音波溶接によって電気的に接続される。
【0014】
これにより、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、単電池層14が複数積層されて、電気的に並列接続される。両極のタブは、各集電体11A、12Aの端部において活物質層が形成されない集電体表面が露出してなる部分である。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池1において、図2の符号A部分に示すように、積層構造を有する複数のタブ11Atは、複数のタブ11Atの端部の相互の位置が、負極端子21の導出側に張り出すように前後している。
【0015】
なお、同図に示す例では、複数の負極11のタブ11Atと負極端子21との接続部を示しているが、本実施形態では、複数の正極12のタブ(不図示)と正極端子22との接続部についても同様の構成を有する。そのため、以下、複数の負極11のタブ11Atと負極端子21との接続部について説明し、正極側についての図示およびその説明は省略する。
【0016】
また、図2では、全体構成の理解を容易にするために、3枚の負極11と2枚の正極12とが4枚のセパレータ13を介して交互に複数積層された例を模式的に示しているが、負極11、正極12及びセパレータ13の数は、これに限定されるものではない。例えば本実施形態のように、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載されるリチウムイオン二次電池では、図3以降に要部詳細図を示すように、実際には、より多くの電極が積層された構造を有することは勿論である。
【0017】
詳しくは、図3に、図2の符号A部分の詳細を示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池1では、複数のタブ11Atは、積層方向Lで中央寄りに配置されるタブの端部11nが、積層方向Lで外側寄りに隣接配置される他のタブの端部(11a〜d・・・)よりも負極集電体11Aの延在方向Eで負極端子21の導出側に張り出すように前後している。
【0018】
同図では、9枚の集電体11Aそれぞれのタブ11Atが積層され、複数のタブ11At全体として見ると、中央部が凸となる尖頭状に配置されている。なお、同図において、符号Mで示す範囲は超音波溶接部であり、複数のタブ11Atと負極端子21とは、超音波溶接部Mで全体が溶接されて電気的に接続されている。
【0019】
本実施形態のタブ積層構造は、同図に示すように、複数のタブ11Atのうち、積層方向Lで中央に位置するタブ11Atの端部11nが、最も負極端子21の導出側に張り出している。そして、他のタブ11Atについては、中央のタブ11Atの端部11nを中心に上下対称に順に後退するように配置される。
つまり、他のタブ11Atの端部11d〜11aは、端部11nを中心に、積層方向Lの中央から外側に離れるにつれて負極端子21の導出側とは反対側(同図右側)に後退している。
【0020】
ここで、本実施形態のような中央が凸の尖頭状タブ積層構造とする上では、複数のタブを積層する際の基準位置が重要である。つまり、略同一形状且つ同一寸法に裁断された負極集電体11Aを積層した場合、積層方向での発電要素10の厚みと各電極11、12の配置された位置との関係によって、各電極11、12のタブ端部のずれ量および複数のタブ11At全体の尖頭形状を決めることができる。
【0021】
具体的には、複数のタブ11At全体の尖頭形状は、負極端子21の当接面(溶接される接合面)に対し、各タブ11Atの負極集電体11Aの主面の積層方向での位置(高さ)によって規定可能である。つまり、仮に負極端子21の当接面と、これに当接するタブ11Atの負極集電体11Aの主面(タブの当接面)との積層方向での位置(高さ)を同じにした場合、当接面から積層方向Lに離隔した負極集電体11Aほどタブ部端部の延在方向Eでのずれ量が大きくなる。そのため、この場合、当接面に近い側が最も凸となり当接面から離れるにつれて後退した尖頭状となる(例えば特許文献1の図2を参照)。
【0022】
そこで、本実施形態では、中央が凸の尖頭状タブ積層構造とする上で、積層方向Lで中央に位置させるべき負極集電体11Aは、図3に示すように、負極集電体11Aの主面とタブ11Atの面とが同じ高さ(一平面上)に配置される。そして、他の負極集電体11Aは、中央に位置させるべき負極集電体11Aを中心として、上下対称に配置されるように発電要素10が構成され、その状態を維持した発電要素10に対して負極端子21の溶接位置(高さ)を設定している。
【0023】
また、各負極集電体11Aのタブ11Atの端部(11a、b、c、d・・・n)の延在方向Eでのずれ量(La、Lb、Lc、Ld・・・Ln)は、例えばシグモイド関数を用いて近似させることにより、所定のずれ量として管理できる。本実施形態では、発電要素10の厚さと、その厚さに対して中心となる負極集電体11Aの主面位置および積層方向での負極端子21の接続位置の高さとの関係を上記のように規定した上で、シグモイド関数を用いた近似式にて各タブ11Atの端部(11a、b、c、d・・・n)のずれ量(La、Lb、Lc、Ld・・・Ln)を所望に設定している。
【0024】
より具体的には、本実施形態では、電気自動車やハイブリッド車に搭載されるリチウムイオン二次電池として、積層方向Lで最も中央寄りに位置するタブ11Atの端部11nと最も外側寄りに位置するタブ11Atの端部11aとの延在方向Eでの位置のずれ量Lnが0.6〜1.8mmになるようにタブ前後量を管理している。
【0025】
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池1の作用効果について説明する。
上述したように、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、接続部において、積層タブ全体として中央部が凸となる尖頭状に配置されているので、リード端子21、22と複数のタブの端部との接続部での放熱性を向上させることができる。
【0026】
つまり、本実施形態の電池1によれば、図3に示したように、積層方向Lで中央寄りに位置するタブ11Atの端部11nが、積層方向Lで外側寄りに隣接配置される他のタブ11Atの端部(11a〜d・・・)よりも負極集電体11Aの延在方向Eに張り出すように前後しているので、積層タブ全体として中央部が凸となる尖頭状に配置され、複数のタブ11Atの束の厚さが負極端子21側に向かうにつれて徐々に薄くなる。
【0027】
これにより、本実施形態の電池1によれば、積層されたタブ11At相互が接触していない部分の面積を大きくできる。そのため、接続部での放熱性を向上させることができる。さらに、本実施形態の電池1によれば、複数のタブ11Atのうち、最も温度が上昇する中央寄りのタブ11Atを、他のタブ11Atよりも負極端子21の導出側に張り出させているため、積層された複数のタブ11Atの端部での放熱性を向上させる上で優れている。特に、本実施形態の電池1は、車両用のリチウムイオン二次電池として、電池容量・出力大で発熱が大きい電池なので、積層されたタブ相互が接触していない部分の面積が比較的に大きくなるため、接続部での放熱性を向上させる対象として好適である。
【0028】
ここで、この種のリチウムイオン二次電池1にあっては、積層数が多いため、あるいは電極の厚さが厚いために、発電要素10の積層方向での振動によってタブ11Atが変位する範囲が広くなる。そのため、電池1が振動した際、タブ11Atの変位によってタブ11Atと負極端子21との接続部の耐久性が劣化するおそれがある。
また、外装体30は、強度が比較的に弱いラミネートシートから形成されているところ、外装体30とタブ11Atの端部との接触による応力集中等も問題となり得る。特に、自動車用電池では、小型の電池に比べて、使用の頻度、変位ともに大きいことから、より高い耐久性が要求される。
【0029】
このような問題に対し、本実施形態の電池1によれば、積層タブ全体として中央部が凸となる尖頭状に配置されることにより、強度が比較的に弱い外装体30であっても、タブ11Atの端部と外装体30との応力集中部分が鋭角的な接触をしにくくなる。そのため、外装体30の耐久性を向上させる上でも優れている。
【0030】
[第一変形例]
次に、上記実施形態の第一変形例について図4を参照しつつ説明する。なお、以下説明する変形例では、上記実施形態と同様または対応する構成には同一の符号を付すとともに重複する内容については説明を省略する。
【0031】
図4に示す第一変形例では、金属製の当て板50を更に備える点が上記実施形態とは異なっている。当て板50は、外装体30内に配置され、積層方向Lにおいて、リード端子21とは反対側から、複数のタブ11Atのうち、最も外寄りのタブ11Atの外側面に溶接によって一体に装着される。当て板50は、同図に示すように、最も外寄りに位置するタブ11Atの端部11aに対して、リード端子21の導出側(同図左側)の端部の位置が、タブ11Atの端部11aよりも延在方向Eで内側に位置している。
この第一変形例の構成であれば、当て板50が、リード端子21との協働によって、積層された複数のタブ11Atをその上下両面から挟持するので、上記実施形態の作用効果に加え、リード端子21と複数のタブ11Atとの接続部での接合強度を向上させることができる。
【0032】
[第二変形例]
次に、上記実施形態の第二変形例について図5を参照しつつ説明する。
図5に示す第二変形例は、上記第一変形例に対して、当て板50が、負極端子21の導出側に張り出している点が異なる。
つまり、第二変形例の当て板50は、同図に示すように、外装体30内に収容前の状態において、最も外寄りに位置するタブ11Atの端部11aに対し、リード端子21の導出側(同図左側)の端部の位置が、タブ11Atの端部11aよりも延在方向Eで外側に張り出している。同図に示す例では、当て板50の端部の張り出し量は、中央のタブ11Atの端部11nの位置よりも僅かに(例えばL1〜L2程度の長さ)負極端子21の導出側に張り出している。
【0033】
この第二変形例の構成であれば、図6に電池の要部断面を示すように、外装体30内に発電要素10が収容されたときに、張り出した当て板50の先端側が、外装体30への収容時の力によって曲げられて、積層中心方向に向かって傾斜する。なお、同図の符号60は、リード端子21と外装体30との間に介装される樹脂接着剤部分である。
この第二変形例の構成であれば、同図に示すように、最も外側のタブ11Atの端部11aが当て板50の先端よりも延在方向Eで内側に位置するので、外装体30との応力集中部分が鋭角的な接触をしにくくなるため、外装体の耐久性がより向上する。
【0034】
さらに、最も外側のタブ11Atに隣接する他のタブ11Atの各端部11b、11cについても、当て板50の先端よりも延在方向Eで内側に位置する。そして、当て板50は、リード端子側先端が収容時の力によって内側に曲がり、隣接する他のタブ11Atの端部を外側から覆うため、他のタブ11Atの各端部11b、11cについても、外装体30との応力集中部分が鋭角的な接触をしにくくなる。そのため、外装体30との接触部での応力集中を積層タブ全体に亘って抑制できる。そのため、リチウムイオン二次電池1の耐久性を向上させる上でより好適である。
【0035】
以下、上述した実施形態のリチウムイオン二次電池1を構成する各構成要素について、さらに詳細に説明する。
【0036】
<負極端子21及び正極端子22について>
負極端子21及び正極端子22は、例えば導電性金属箔により構成される。金属箔の具体例としては、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル等の単一金属からなる金属箔や、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の合金からなる金属箔があげられる。なお、負極端子21の材質と正極端子22の材質は同一でもよいし、異なっていてもよい。また、別途に準備した負極端子21及び正極端子22を、負極集電体11A及び正極集電体12Aの各タブにそれぞれ接続してもよい。
【0037】
<負極11について>
負極11は、負極集電体11Aの両方の主面上に、負極活物質層11B、11Bが形成された構造を有する。負極活物質層11Bは、例えば、負極活物質と導電助剤と結着剤(バインダー)とを含有する。導電助剤は、負極活物質層11B中に分散された状態で含まれる。また、負極11における結着剤の含有率を、所定の好ましい範囲とすることにより、結着剤が負極活物質の粒子の少なくとも一部を被覆した状態で、負極活物質同士を結着することができる。
【0038】
(1) <負極集電体11Aについて>
負極集電体11Aの材質としては、例えば、銅、ニッケル、チタン等の金属や、これらの金属を1種以上含有する合金(例えばステンレス鋼)を用いることができる。
【0039】
(2) <負極活物質について>
負極活物質としては、例えば、黒鉛等の結晶性炭素材料を用いることができる。黒鉛の具体例としては、天然黒鉛や、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の人造黒鉛や、MCF(メソカーボンファイバ)があげられる。これらの結晶性炭素材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
(3) <導電助剤について>
導電助剤としては、例えば、カーボンブラック等の非晶性炭素材料や黒鉛等の結晶性炭素材料を用いることができる。カーボンブラックの具体例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラックがあげられる。黒鉛の具体例は、上記(2)項において示したものと同様である。これらの炭素材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
(4) <結着剤について>
結着剤としては、負極活物質の粒子と導電助剤の粒子とを結着可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えばフッ素樹脂を用いることができる。フッ素樹脂の具体例としては、ポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンと他のフッ素系モノマーとを共重合させたフッ化ビニリデン系重合体があげられる。なお、結着剤は、電解液が浸透しうるものであれば、フッ素樹脂のみからなるものでもよいし、フッ素樹脂と他の成分の混合物からなるものでもよい。
【0042】
<正極12について>
正極12は、正極集電体12Aの両方の主面上に、正極活物質層12B、12Bが形成された構造を有する。正極活物質層12Bは、例えば、正極活物質と、必要に応じて添加される導電助剤及び結着剤とを含有する。導電助剤や結着剤としては、従来のリチウムイオン二次電池に一般的に用いることができるもの(例えば上記負極11での(3)項、(4)項において示したもの)を適宜選択して用いることができる。
【0043】
(1) <正極集電体12Aについて>
正極集電体12Aの材質としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属や、これらの金属を1種以上含有する合金(例えばステンレス鋼)を用いることができる。
【0044】
(2) <正極活物質について>
正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)等のリチウム含有酸化物を用いることができる。これらの正極活物質は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
<セパレータ13について>
セパレータ13は、多数の微細な孔を有する微多孔性膜であり、その孔内に電解液を収容することにより、外装体30内に封入された電解液を保持する。セパレータ13の樹脂基材層の材質は、電気絶縁性を有し、電気化学的に安定で且つ電解液に対して安定であれば特に限定されるものではない。
【0046】
例えば、セパレータ13の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂や、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルや、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド(アラミド)等のポリアミドからなる微多孔性膜があげられる。
【0047】
また、セパレータ13の材質として、上記の樹脂とフィラーとを含有する樹脂組成物を用いることもできる。フィラーの種類は、電気化学的に安定で且つ電解液に対して安定であれば特に限定されるものではないが、例えば、無機粒子や有機粒子があげられる。無機粒子の具体例としては、酸化鉄、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、ジルコニア等の金属酸化物や、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等のセラミックの微粒子があげられる。有機粒子の具体例としては、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン等の樹脂の微粒子があげられる。
【0048】
<電解液について>
電解液としては、例えば、電解質であるリチウム塩を非水溶媒(有機溶媒)に溶解した溶液を用いることができる。電解液は、液状に限らずゲル状であってもよい。電解液は慣用の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0049】
リチウム塩の種類は、非水溶媒中で解離してリチウムイオンを生成するものであれば特に限定されるものではない。リチウム塩の具体例としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)、四塩化アルミニウムリチウム(LiAlCl)、過塩素酸リチウム(LiClO)、四フッ化ホウ素酸リチウム(LiBF)、六フッ化アンチモン酸リチウム(LiSbF)、LiPOF、LiCFSO、LiCFCFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFCFCO)があげられる。
【0050】
これらのリチウム塩の中でも、特に、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ素酸リチウムを用いることが好ましい。これらのリチウム塩は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
非水溶媒としては、例えば、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ラクトン類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、及びこれらのフッ化誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒があげられる。
【0052】
環状カーボネート類の具体例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、及びこれらのフッ化誘導体等があげられる。鎖状カーボネート類の具体例としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(MEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、及びこれらのフッ化誘導体等があげられる。
【0053】
脂肪族カルボン酸エステル類の具体例としては、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、及びこれらのフッ化誘導体があげられる。γ−ラクトン類の具体例としては、γ−ブチロラクトンやこのフッ化誘導体等があげられる。環状エーテル類の具体例としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等があげられる。鎖状エーテル類の具体例としては、1,2−エトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエチルエーテル、及びこれらのフッ化誘導体等があげられる。
【0054】
その他の非水溶媒の具体例としては、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアルデヒド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イルエーテル、1,3−プロパンスルトン、アニソール、N−メチル−2−ピロリドン、フッ素化カルボン酸エステル等があげられる。これらの非水溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
<外装体30について>
外装体30は、例えば、熱融着層と金属層と保護層との積層体からなる可撓性のラミネートフィルムにより形成したラミネート外装体であってもよいし、金属、樹脂等からなる角形、円筒形等の容器により形成した外装体であってもよい。ラミネート外装体は、軽量化と、電池エネルギー密度の向上という観点から好ましい。また、外装体30としてラミネート外装体を用いたラミネート型リチウムイオン二次電池は、放熱性にも優れる。
【0056】
金属層は、例えば金属箔(例えばアルミニウム箔、SUS箔)からなり、その内側面を覆う熱融着層は、熱融着が可能な樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)からなり、金属層の外側面を覆う保護層は、耐久性に優れた樹脂(例えば、上述のポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン)からなる。なお、さらに多数の層を有するラミネートフィルムを用いることもできる。
【0057】
上述した実施形態の電池1の外装体30は、発電要素10の下面側に配置される1枚のラミネートフィルムと上面側に配置される他の1枚のラミネートフィルムとの2枚構造を有する。外装体30は、これら2枚のラミネートフィルムの周縁部の4辺を重ね合わせ、互いに熱融着した袋状となっている。
【0058】
ただし、外装体30は、このような2枚構造に限らず、1枚構造としてもよい。すなわち、外装体30は、比較的に大きな1枚のラミネートフィルムを折り曲げた(2つ折りにした)状態とし、その内側に発電要素10を配置し(ラミネートフィルムの間に発電要素10を挟み)、周縁部の3辺を重ね合わせて、互いに熱融着した袋状としてもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施形態のリチウムイオン二次電池1によれば、複数のタブ11Atは、積層方向Lで中央寄りに配置されるタブの端部11nが、積層方向Lで外側寄りに隣接配置される他のタブの端部(11a〜d・・・)よりも集電体の延在方向Eでリード端子21の導出側に張り出すように前後しているので、リード端子21と複数のタブ11Atの端部との接続部での放熱性を向上させることができる。
【0060】
なお、本発明に係るリチウムイオン二次電池は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、略矩形のシート状の外観形状を有する積層型電池を製造する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、円筒状の外観形状を有する捲回型のリチウムイオン二次電池にも、本発明に係るリチウムイオン二次電池を採用できる。なお、発電要素の捲回形状は必ずしも真円形である必要はなく、横断面を楕円とした長円筒形でもよい。
【0061】
また、例えば上記実施形態では、両極の端子21、22が、略矩形の外装体30の周縁部側方の同一の辺上に設けられたリチウムイオン二次電池1を例に説明したが、両極端子21、22の配置もこれに限定されず、例えば、両極の端子21、22を、外装体30の異なる辺上に設けるとともに、導出方向を反対方向としてもよい。
【0062】
また、本発明に係るリチウムイオン二次電池1は、種々の用途に使用可能である。例えば、上述した電気自動車、ハイブリッド車(原動機として内燃機関と電動機を併用する自動車)の他、自動二輪車、電動アシスト自転車、鉄道車両等の各種車両に使用できる。また、航空機、船舶、農業機械、建設機械、運搬用機械、電動工具、医療機器、福祉用機器、ロボット、蓄電装置等にも使用できる。さらに、ノート型パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、携帯電話端末、携帯型ゲーム機端末等の携帯機器にも使用できる。
【0063】
特に、電気自動車やハイブリッド車に搭載されるリチウムイオン二次電池は、使用期間が長く、また、充放電を頻繁に行うので長寿命が要求されるところ、本発明に係る電池1であれば、リード端子と複数のタブの端部との接続部での放熱性を向上させ得るリチウムイオン二次電池を提供できるため、耐久性をより向上させることが可能となる。よって、電気自動車やハイブリッド車に搭載されるリチウムイオン二次電池として特に好適である。
【符号の説明】
【0064】
1 リチウムイオン二次電池
10 発電要素
11 負極
12 正極
13 セパレータ
14 単電池層
21 負極端子(リード端子)
22 正極端子(リード端子)
30 外装体
40 電解液
50 当て板
60 樹脂接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6