特許第6697400号(P6697400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697400
(24)【登録日】2020年4月28日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】弁尖サイザー
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/76 20060101AFI20200511BHJP
   A61F 2/24 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   A61F2/76
   A61F2/24
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-568353(P2016-568353)
(86)(22)【出願日】2015年12月28日
(86)【国際出願番号】JP2015086525
(87)【国際公開番号】WO2016111231
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2018年12月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-1193(P2015-1193)
(32)【優先日】2015年1月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513249851
【氏名又は名称】株式会社日本医療機器開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】599055382
【氏名又は名称】学校法人東邦大学
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 重之
【審査官】 白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0074486(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0191416(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0172989(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00−2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁における2つの交連部に当てられる第1及び第2の交連部指示部(11,13)と,前記2つの交連部の中央部に当てられるヘッド(29,54,66)とを有し,前記心臓弁のサイズを決定するための弁尖サイザー(15)であって,
所定の基準点を中心として,前記第1及び第2の交連部指示部及び前記ヘッドのうち少なくとも2つの相対位置が可変であり、
第1及び第2の交連部指示部(11,13)と接続された弁尖サイザー本体(31)と,
前記弁尖サイザー本体(31)に接続されたハンドル(33)を,更に有し
前記ハンドル(33)は,第1及び第2の交連部指示部(11,13)の一方に近接した位置に存在する,
弁尖サイザー。
【請求項2】
請求項1に記載の弁尖サイザーであって,
前記第1の交連部指示部を支える第1の支持部(21)を有し,
第1の支持部は,伸縮可能である,
弁尖サイザー。
【請求項3】
請求項2に記載の弁尖サイザーであって,
前記第1の支持部(21)が伸縮した際に,前記2つの交連部の距離に対応した指標を表示する指標表示部(25)を更に有する,
弁尖サイザー。
【請求項4】
請求項2に記載の弁尖サイザーであって,
第1の支持部(21)をスライドできるように収容するための収容部(27)を有する弁尖サイザー本体を有する,
弁尖サイザー。
【請求項5】
請求項1に記載の弁尖サイザーであって,
第1のアーム(51)と,
第2のアーム(52)と,
第1及び第2のアーム(51,52)の交差点において,第1及び第2のアーム(51,52)を開閉可能に連結する連結支点部(53)と,
前記連結支点部(53)によって,前記第1のアーム(51)及び前記第2のアーム(52)に連結された第3のアーム(55)と,を更に有し,
前記第1の交連部指示部(11)は,前記第1のアーム(51)の先端に設けられ,
前記第2の交連部支持部(13)は,前記第2のアーム(52)の先端に設けられ,
前記第1の交連部指示部(11)と前記第2の交連部指示部(13)との間に位置する前記ヘッド(54)が,前記第3のアーム(55)の先端に取り付けられており,
前記第1及び第2のアーム(51,52)を展開させると,前記第1及び第2の交連部指示部(11,13)の頂点の位置(P2,P3)が,前記連結支点部(53)を中心とする円の円周上を移動する弁尖サイザー。
【請求項6】
請求項1に記載の弁尖サイザーであって,
ベース部(61)と,
前記ベース部(61)に差し込まれ,前記ベース部(61)の内部を進退可能なロッド(62)と,
前記ベース部(61)に連結され,前記ロッド(62)の進退に伴って開閉する第1のアーム(63),第2のアーム(64),及び第3のアーム(65)と,を更に有し,
前記第1の交連部指示部(11)は,前記第1のアーム(63)の先端に設けられ,
前記第2の交連部支持部(13)は,前記第2のアーム(64)の先端に設けられ,
前記ヘッド(66)は,前記第3のアーム(65)の先端に設けられており,
前記第1から第3のアーム(63,64,65)を展開させると,前記ベース部(61)を中心とする円の半径が拡大するように,前記ヘッド(66)の頂点の位置(P1),前記第1の交連部指示部(11)の頂点の位置(P2),及び前記第2の交連部支持部(13)の頂点の位置(P3)が変化する弁尖サイザー。
【請求項7】
請求項5に記載の弁尖サイザーであって,
前記第3のアーム(55)は不動であり,
前記第1のアーム(51)と前記第2のアーム(52)は,前記連結支点部(53)を支点として,不動状態の前記第3のアーム(55)の左右に移動するように,開閉する弁尖サイザー。
【請求項8】
請求項6に記載の弁尖サイザーであって,
前記ヘッド(66)の頂点の位置(P1),前記第1の交連部指示部(11)の頂点の位置(P2),及び前記第2の交連部支持部(13)の頂点の位置(P3)の拡大幅はすべて均一である 弁尖サイザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,心臓弁のサイズを測定するための弁尖サイザーに関する。弁尖サイザーは,例えば,大動脈弁形成術や大動脈弁再建術といった心臓弁を人工膜又は生体膜から弁尖素材を形成する際に用いられる。
【背景技術】
【0002】
特許第5106019号公報(下記特許文献1)には,弁尖形成器が開示されている。この弁尖形成器は,複数の弁尖サイザーと,テンプレートとを有する。そして,弁尖サイザーの例は,この公報の図2に示されている。すなわち,この公報における弁尖サイザーは,サイザーブロックとハンドルとを有しており,サイザーブロックには,円柱を交連部の中心角に応じた角度で切断した円弧面が形成されている(請求項2)。また,サイザーブロックには,円弧面の両端部を交連部に位置決めする触針部が設けられている。この公報に開示される弁尖形成器は,その図1に示されるように,複数種類のサイズのサイザーブロックが,それぞれハンドルと接続された形状を有している。
【0003】
大動脈弁形成術は,例えば,尾崎重之「自己心膜を使用した大動脈弁形成術」人工臓器39巻3号2010年157頁〜161頁(非特許文献1)において紹介されている。この文献においても,上記のとおり,サイザーブロックとハンドルとを有する弁尖サイザーが用いられている(例えば,図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5106019号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】尾崎重之「自己心膜を使用した大動脈弁形成術」人工臓器39巻3号2010年157頁〜161頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大動脈弁形成術は,画期的な治療方法である。一方,上記の弁尖形成器は,複数のサイズの弁尖サイザーを必要とする。1つの弁尖形成器に複数の弁尖サイザーが含まれていても,実際に1回の施術で用いる弁尖サイザーは1つ又は2つ程度である。このため,多くの弁尖サイザーが無駄になるという問題がある。
【0007】
また,本来,弁尖形成器は使い捨てされる医療機器である。しかしながら,上記のとおり,多くの弁尖サイザーが施術に際して用いられないため,弁尖形成器を再利用される可能性がある。
【0008】
さらに,従来の弁尖サイザーは,サイザーヘッドを扇形とすると扇の要部分にハンドルが角度をつけて取り付けられていた。このため,従来の弁尖サイザーを動脈の奥に挿入する際に,大動脈前壁にハンドルが当り,深部へサイザーを挿入しにくいという問題がある。
【0009】
そこで,本発明は,弁尖サイザーが再利用される事態を防止できる弁尖サイザーを提供することを目的とする。また,本発明は,施術の際に大動脈に挿入しやすく,そのために弁尖のサイズを図りやすい弁尖サイザーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は,ひとつ又は少ない数の弁尖サイザーで,従来の複数の弁尖サイザーの機能を有する弁尖サイザー(又は弁尖サイザーセット)に関する。弁尖サイザーは,心臓弁における2つの交連部に当てられる第1及び第2の交連部指示部11,13を有する。これにより,弁尖サイザーは,心臓弁のサイズを決定することができる。そして,本発明の第1の態様の弁尖サイザー15は,第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置が可変である。
【0011】
第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置が可変な弁尖サイザーの例は,弁尖サイザーが,第1の交連部指示部11を支える第1の支持部21を有しており,第1の支持部21が,伸縮可能なものがあげられる。この場合,弁尖サイザーが,第2の交連部指示部13を支える第2の支持部23をさらに有していてもよい。また,第2の支持部23も伸縮可能なものであってもよい。
【0012】
第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置が可変な弁尖サイザーの例は,第1の支持部21が伸縮した際に,2つの交連部の距離に対応した指標を表示する指標表示部25を更に有するものである。
【0013】
第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置が可変な弁尖サイザーにおける,伸縮機能の例は,第1の支持部をスライドできるように収容するための収容部27を有する弁尖サイザー本体を有するものである。
【0014】
弁尖サイザーの好ましい例は,第1及び第2の交連部指示部11,13と接続された弁尖サイザー本体31と,弁尖サイザー本体31に接続されたハンドル33を,更に有しており,そして,ハンドル33は,第1及び第2の交連部指示部11,13の一方に近接した位置に存在するものである。
【0015】
他の実施形態において,本発明の弁尖サイザーは,第1のアーム51と,第2のアーム52と,連結支点部53を有していてもよい。第1のアーム51と第2のアーム52は,その中頃において交差している。連結支点部53は,第1及び第2のアーム51,52の交差点において,第1及び第2のアーム51,52を開閉可能に連結する。この実施形態において,第1の交連部指示部11は,第1のアーム51の先端に設けられ,第2の交連部支持部13は,第2のアーム52の先端に設けられる。このようにして,第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置を可変にしてもよい。
【0016】
さらに別の実施形態において,本発明の弁尖サイザーは,ベース部61と,ロッド62と,第1のアーム63と,第2のアーム64を有していてもよい。ベース部61には,ロッド62が差し込まれている。このロッド62は,ベース部61によってガイドさるように,そのベース部61内を進退可能となっている。また,このベース部61には,第1のアーム63と第2のアーム64とが連結されている。第1及び第2のアーム部63は,ロッド62がベース部61を進退する動作に連動して開閉するように構成されている。この実施形態において,第1の交連部指示部11は,第1のアーム63の先端に設けられ,第2の交連部支持部13は,第2のアーム64の先端に設けられる。このようにして,第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置を可変にしてもよい。
【0017】
本発明の第2の態様は,複数の弁尖サイザーヘッド15a,15b,15cを有する弁尖サイザーセット17に関する。弁尖サイザーヘッド15a,15b,15cは,それぞれ,心臓弁における2つの交連部に当てられる第1及び第2の交連部指示部11a,13aを有し,心臓弁のサイズを決定するための医療機器である。そして,複数の弁尖サイザーヘッド15a,15b,15cは,それぞれ第1及び第2の交連部指示部の相対位置が異なっている。すなわち,弁尖サイザーセット17は,複数のサイズの弁尖サイザーヘッドを有する。そして,複数の弁尖サイザーのそれぞれは,複数の弁尖サイザーヘッドを連結するための連結穴41a,41b,41cを有し,複数の弁尖サイザーヘッドは,連結穴を貫通する束縛体43により一体とされている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の態様の弁尖サイザーは,ひとつ又は少ない数の弁尖サイザーで,従来の複数の弁尖サイザーの機能を有する。このため全く使用されずに捨てられる弁尖サイザーを減らすことができる。その結果,弁尖サイザーを再利用しようとすることを防ぐことができる。
【0019】
この弁尖サイザーのうちハンドルが一方の交連部支持部に近接したものは,従来のサイザーと比べハンドル33が大動脈壁に近接する位置にあるためサイザーを大動脈に挿入する際に,大動脈前壁にハンドルが当たりづらくなり,その結果サイザーを大動脈深部へ挿入しやすくなる。
【0020】
本発明の第2の態様の弁尖サイザーは,複数のサイザーが一体となっているので,一部のサイザーを利用した場合であっても,その一部のみ廃棄することが難しい。このため,弁尖サイザーを再利用しようとすることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は,本発明の弁尖サイザーの例を示す概念図である。
図2図2は,本発明の弁尖サイザーの例を示す概念図である。
図3図3は,本発明の弁尖サイザーの例を示す概念図である。
図4図4は,本発明の弁尖サイザーの例を示す概念図である。
図5図5は,交差開閉型の弁尖サイザーの外観の例を示す斜視図である。
図6図6は,交差開閉型の弁尖サイザーが閉じた状態を示す拡大図である。
図7図7は,交差開閉型の弁尖サイザーが開いた状態を示す拡大図である。
図8図8は,交差開閉型の弁尖サイザーの動作範囲を示す模式図である。
図9図9は,ロッド開閉型の弁尖サイザーが閉じた状態を示す斜視図である。
図10図10は,ロッド開閉型の弁尖サイザーが開いた状態を示す斜視図である。
図11図11は,ロッド開閉型の弁尖サイザーの動作範囲を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0023】
本発明の第1の態様は,ひとつ又は少ない数の弁尖サイザーで,従来の複数の弁尖サイザーの機能を有する弁尖サイザーに関する。弁尖サイザーは,上記した特許文献1(特許第5106019号公報)及び非特許文献1(尾崎重之「自己心膜を使用した大動脈弁形成術」人工臓器39巻3号2010年157頁〜161頁)に開示されるとおり,公知の医療機器である。
【0024】
図1は,本発明の弁尖サイザーの例を示す概念図である。図1に示されるように,弁尖サイザーは,心臓弁における2つの交連部に当てられる第1及び第2の交連部指示部11,13を有する。この第1及び第2の交連部指示部11,13は,特許文献1(特許第5106019号公報)における触針部に相当する。第1及び第2の交連部指示部11,13は,施術の際に,切除された弁輪部分に挿入されて,両端に位置する交連部をそれぞれ指し示すための部位である。この第1及び第2の交連部指示部11,13により,弁尖サイザーは,心臓弁のサイズを決定できる。そして,本発明の第1の態様の弁尖サイザー15は,第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置が可変である。
【0025】
第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置が可変な弁尖サイザーの例は,弁尖サイザーが,第1の交連部指示部11を支える第1の支持部21を有しており,第1の支持部21が,伸縮可能なものがあげられる。この場合,弁尖サイザーが,第2の交連部指示部13を支える第2の支持部23をさらに有していてもよい。また,第2の支持部23も伸縮可能なものであってもよい。伸縮可能とは,第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置が可変であることを意味する。
【0026】
第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置が可変な弁尖サイザーの例は,第1の支持部21が伸縮した際に,2つの交連部の距離に対応した指標を表示する指標表示部25を更に有するものである。たとえば,収容部27内に,弁尖サイザー本体31のうち収容部27内に存在する端部を測定する装置を有し,これが端部の位置を測定することで,第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置を把握し,把握した相対位置を指標表示部25に表示させるようにしてもよい。
【0027】
第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置が可変な弁尖サイザーにおける,伸縮機能の例は,第1の支持部21をスライドできるように収容するための収容部27を有する弁尖サイザー本体31を有するものである。弁尖サイザー本体31が,収容部27内部をスライドすることで,第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置を変化させることができる。
【0028】
弁尖サイザーの好ましい例は,第1及び第2の交連部指示部11,13と接続された弁尖サイザー本体31と,弁尖サイザー本体31に接続されたハンドル33を,更に有しており,そして,ハンドル33は,第1及び第2の交連部指示部11,13の一方に近接した位置に存在するものである。第1及び第2の交連部指示部11,13のx座標をそれぞれ0(x)及びxとし,ハンドル33のx座標をxとした場合,xは0以上0.4x以下が好ましく,0以上0.3x以下でもよく,0以上0.2x以下でもよく,0以上0.1x以下でもよい。また,ハンドルを第1の交連指示部11からずらした方がサイザーのバランスがよくなるため,xは0.05x以上0.3x以下でもよく,0.1x以上0.2x以下でもよい。ハンドル33の収容部27又は弁尖サイザー本体31と接する部位は,収容体27又は弁尖サイザー本体31の中央であってもよいが,その場合はハンドルが第1及び第2の交連部指示部11,13のいずれかに向けて傾斜しているものが好ましい。
【0029】
弁尖サイザーの好ましい例は,縁部の中心部分に印29が存在するものである。この印は施術の際に目印をつけるのに役立つこととなる。
【0030】
図1に示される例は,円柱の縁部分にサイザー本体31が存在する。そして,その縁部分の両端(または両端付近)から,第1及び第2の支持部21,23が上方に曲がった構造を有する。この例では,第1の交連部指示部11及び第1の支持部21は,図1における本体部分の中心より左側に存在し,第2の交連部指示部13及び第2の支持部23は,図1における本体部分の中心より右側に存在する。そして,第1及び第2の支持部21,23のうち縁部分に存在する部分は,その一部又は全部が収容部27に収容されている。この例では,収容部27は,第1及び第2の支持部21,23のうち縁部分を収容できるように,縁部分の外形と同じか又はそれより大きな内径を有する筒体を有する。
【0031】
特に図示しないが,第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置が可変な弁尖サイザーにおける,伸縮機能の上記とは例は,第1の支持部21及び第2の支持部のいずれか又は両方の少なくとも縁部分が伸縮可能なものである。その例は,縁部分がバネ構造のもの,蛇腹構造のもの,及び弾性体のものである。弾性体の例は,ゴムである。
【0032】
たとえば,ハンドル33に力を加えると,収容部27に収容されていた第1の支持体21が図1における左方向(又は右方向)に移動し,第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置が広がる。図1に示される例の好ましいものは,第1の支持体21が図1における左方向又は右方向に移動すると,第2の支持体23が第1の支持体21とは逆方向に移動するものである。これは,第1の支持体21が移動すると,第2の支持体23が反対方向に移動する機構により実現できる。
【0033】
図2に示す例では.第1の支持部21及び第2の支持部のいずれか又は両方が中空であり,その中空部分に連結部30が挿入されるものである。そして,連結部分上を,第1の支持部21及び第2の支持部のいずれか又は両方がスライドできる。このようにして第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置を調整できる。この例では,連結部30の中心から中心指示のための印29のための棒が延びている。図2に示す例では,各要素が棒状のように記載されている。しかし,図2に示す例では,第1及び第2の支持部21,23が,連結部30の外側に位置するため,第1及び第2の支持部21,23を滑らかな構造(太めな構造)とすることができる。このため,この例は,実際の施術がしやすい立体形状をとりやすくなる。具体的には,第1及び第2の支持部21,23を血管内壁に沿うような形状にすることができる。
【0034】
本発明の第2の態様は,複数の弁尖サイザーヘッド15a,15b,15cを有する弁尖サイザーセット17に関する。弁尖サイザーヘッド15a,15b,15cは,それぞれ,心臓弁における2つの交連部に当てられる第1及び第2の交連部指示部11a,13aを有し,心臓弁のサイズを決定するための医療機器である。そして,複数の弁尖サイザーヘッド15a,15b,15cは,それぞれ第1及び第2の交連部指示部の相対位置が異なっている。すなわち,弁尖サイザーは,複数のサイズの弁尖サイザーヘッドを有する。そして,複数の弁尖サイザーのそれぞれは,複数の弁尖サイザーヘッドを連結するための連結穴41a,41b,41cを有し,複数の弁尖サイザーヘッドは,連結穴を貫通する束縛体43により一体とされている。
【0035】
図3は,弁尖サイザーを示す概念図である。この例は,複数の弁尖サイザーヘッド15a,15b,15cが束縛体43を軸として回転可能に接続されている。束縛体の上部には,ハンドル33が形成されている。そして,施術においては,施術者が適切と判断した弁尖サイザーヘッド(たとえば15b)が選択されると,その弁尖サイザーヘッド15bを,連結穴41bを用いて,束縛体43を軸として回転移動させる。すると,所望の弁尖サイザーヘッド15bのみを取り出すことができる。残りの弁尖サイザーヘッドも連結穴41a,43cを介して,束縛体43と軸固定されている。この残りの弁尖サイザーヘッド15a,15cは,実際の施術の際に,動脈などを押さえ,弁尖サイズを測定試薬するように作用する。
【0036】
図4は,弁尖サイザーを示す概念図である。図4に示される弁尖サイザーは,複数の弁尖サイザーヘッド15a,15b,15cを有している。そして,それぞれの弁尖サイザーヘッド15a,15b,15cは,心臓弁における2つの交連部に当てられる第1及び第2の交連部指示部11a,13aを有する。複数の弁尖サイザーヘッド15a,15b,15cは,それぞれ第1及び第2の交連部指示部の相対位置が異なっている。すなわち,弁尖サイザーは,複数のサイズの弁尖サイザーヘッドを有する。そして,複数の弁尖サイザーのそれぞれは,複数の弁尖サイザーヘッドを連結するための連結穴41aを有し,複数の弁尖サイザーヘッドは,連結穴を貫通する束縛体43により一体とされている。図4の例では,弁尖サイザーヘッドにサイズを示す表記がなされており,実際の測定において,弁尖サイズがわかるようにされている。この例では,それぞれの弁尖サイザーヘッドが固定穴45aを有しており,ループ状の束縛体43の一端を固定穴45aに通すことで,束縛体43をハンドルとして利用することができる。
【0037】
続いて,図5図6図7,及び図8を参照して,他の実施形態に係る弁尖サイザーについて説明する。図5図8に示された弁尖サイザーは,本願明細書では「交差開閉型の弁尖サイザー」と称されている。
【0038】
図5に示されるように,交差開閉型の弁尖サイザーは,互いに交差する第1のアーム51と第2のアーム52を有している。第1のアーム51の先端には,第1の交連部指示部11が設けられ,第1のアーム62の先端には,第2の交連部指示部13が設けられている。また,第1のアーム51と第2のアーム52の交差点には,連結支点部53が形成されている。この連結支点部53は,第1のアーム51と第2のアーム52とが開閉可能なように,両者を連結している。例えば,連結支点部53は,第1のアーム51と第2のアーム52の交差点を貫通するピンなどによって構成すればよい。なお,開閉可能とは,第1と第2のアーム51,52の先端(すなわち,第1及び第2の交連部指示部11,13)の相対位置が可変であることを意味する。
【0039】
また,本実施形態において,弁尖サイザーは,第1の交連部指示部11と第1の交連部指示部13との間に,ヘッド54を有している。図5に示されるように,第1及び第2の交連部指示部11,13が閉じた状態において,これらの指示部11,13はヘッド54の側面に当接することが好ましい。また,このヘッド54は,第3のアーム55の先端に取り付けられたものである。第3のアーム55は,連結支点部53によって,第1のアーム51及び第2のアーム52に連結されている。本実施形態では,第3のアーム55は,基本的に不動である。つまり,第1のアーム51と第2のアーム52は,連結支点部53を支点として,不動状態の第3のアーム55の左右に移動するように,開いたり閉じたりするようになっている。これにより,第3のアーム55(ヘッド54)を中心として,第1のアーム51(第1の交連部指示部11)と第2のアーム52(第2の交連部指示部13)の相対位置を変化させることができる。
【0040】
さらに,図5に示されるように,交差開閉型の弁尖サイザーは,ハンドル33とガイド56を備えている。ハンドル33は,術者が弁尖サイザーを持つときの把持部となる。このハンドル33の一部は,ガイド56の内部に差し込まれている。そして,ガイド56の内部に入り込んだハンドル33の一部には,ネジ山が形成されており,ガイド56の内部に形成されたネジ孔に嵌め合わされている。このため,ハンドル33を一定方向にネジ回すことにより,ハンドル33の一部をガイド56の内部に深く進行させることができ,他方で,ハンドル33を反対方向にネジ回すことによって,ハンドル33の一部をガイド56の内部から引き出すことができるようになっている。
【0041】
また,図5に示されるように,ガイド56の内部には,ハンドル33とは反対側から,第1のアーム51,第2のアーム52,及び第3のアーム55が差し込まれている。つまり,図示されるように,第1〜第3のアーム51,52,55は,指示部11,13やヘッド54が設けられた先端とは反対の他端側が,ガイド56の内部に差し込まれた状態となる。また,第1〜第3のアーム51,52,55の他端は,ハンドル33の一部と連結している。さらに,第1及び第2のアーム51,52のうち,少なくともこのガイド56の内部に差し込まれている部位は,押圧力を加えることによって湾曲する可撓性材料で形成されている。なお,第1及び第2のアーム51,52の全体を可撓性材料によって形成することもできる。従って,ハンドル33をネジ回して,ハンドル33の一部をガイド56の内部に深く進行させると,その押圧力に応じて,ガイド56の内部で第1及び第2のアーム51,52が湾曲する。
【0042】
さらに,図5に示されるように,第1及び第2のアーム51,52のうちのガイド56内に差し込まれた部位には,突起状のスライドピン57が形成されている。また,ガイド56には,このスライドピン57を案内(ガイド)するためのレール58が形成されている。図5に示した例において,レール58は,ガイド56に形成された切り込み(スリット)である。ただし,レール58は,ガイド56に形成された溝などであってもよい。また,レール58は,ハンドル56が進退する方向に対して所定角度で傾斜するように設けられている。さらに,図示は省略されているが,第1のアーム51に形成されたスライドピン57を案内するためのレール58と,第2のアーム52に形成されたスライドピン(図示省略)を案内するためのレール(図示省略)は,反対方向,すなわち交差する方向に傾斜している。従って,ハンドル33をガイド56内に向かって徐々に進行させると,第1のアーム51と第2のアーム52は,レール58によって案内されるようにして,互いの相対位置が徐々に離れていく。このように第1及び第2のアーム51,52の他端側の相対位置を離す方向に付勢することで,連結支点部53を支点として,その先端側に設けられた第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置も離れることとなる。反対に,第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置を近づけるためには,上述した操作と逆の操作を行えばよい。これにより,ハンドル33をネジ回すという簡単な操作によって,第1及び第2の交連部指示部11,13の相対位置を変化させることができる。
【0043】
図6には,第1及び第2のアーム51,52の先端,すなわち第1及び第2の交連部指示部11,13の閉じた状態が示されている。また,図7には,第1及び第2のアーム51,52の先端,すなわち第1及び第2の交連部指示部11,13の開いた状態が示されている。第1及び第2のアーム51,52は,図6に示された閉じた状態から,図7に示された開いた状態へと徐々に展開していく。このため,第1及び第2の交連部指示部11,13の位置関係を調整しながら患者の心臓弁の交連部にあてがうことで,心臓弁のサイズを測定することができる。
【0044】
また,図8には,第1の交連部指示部11,第2の交連部指示部13,及びヘッド54の相対位置の関係性が,第1及び第2のアーム51,52の開閉に伴って変化する様子が模式的に示されている。図8において,ヘッド54の頂点の位置が符号P1で示され,第1の交連部支持部11の頂点の位置が符号P2で示され,第2の交連部指示部13の頂点の位置が符号P3で示されている。図8に示されるように,交差開閉型の弁尖サイザーは,第1及び第2のアーム51,52を展開させると,第1及び第2の交連部指示部11,13が,連結支点部33を中心とする円の円周上を移動する。つまり,第1の交連部支持部11は,P2からP2´まで移動するが,P2から連結支点部33までの距離と,P2´から連結支点部33までの距離は等しい。第2の交連部支持部13についても同様である。また,交差開閉型の弁尖サイザーにおいて,ヘッド54の頂点位置P1は不動である。交差開閉型の弁尖サイザーを用いて患者の弁尖のサイズを測定する際には,このようなP1,P2,及びP3の相対位置関係の特性に注意する必要がある。
【0045】
続いて,図9図10,及び図11を参照して,さらに別の実施形態に係る弁尖サイザーについて説明する。図9図11に示された弁尖サイザーは,本願明細書では「ロッド開閉型の弁尖サイザー」と称されている。
【0046】
図9に示されるように,ロッド開閉型の弁尖サイザーは,ロッド62を進退可能に支持するためのベース部61を有している。このベース部61は,例えば棒状のハンドル33の先端に固定されている。ベース部61は,その内部に上下方向に貫通する貫通穴を有しており,その貫通穴にロッド62が差し込まれている。ロッド62は,ベース部61によって案内されて上下に進退する。
【0047】
また,ベース部61の外部には,第1のアーム63及び第2のアーム64が連結されている。また,第1及び第2のアーム63,63のうち,ベース部61に対する連結端とは反対側の先端に,ぞれぞれ,第1の交連部指示部11と第2の交連部指示部13が取り付けられている。さらに,本実施形態において,ベース部61の外部には第3のアーム65が連結されており,この第3のアーム65は第1のアーム63及び第2のアーム64の間に位置している。また,第3のアーム65の先端には,ヘッド66が取り付けられている。
【0048】
また,ロッド開閉型の弁尖サイザーは,ロッド62と第1から第3のアーム63,64,65を連動させる連動機構(図示省略)を有している。このような連動機構は,当業者が適宜設計することができ特に限定されるものではない。すなわち,図9及び図10に示されるように,連動機構は,ロッド62の進退動作と第1から第3のアーム63,64,65の開閉動作を連動させる。例えば,図8に示されるように,ロッド62がベース部61に対して下方に押し込まれた状態にあるときには,第1から第3のアーム63,64,65は閉じた状態となる。他方,ロッド62がベース部61に対して上方に持ち上げられた状態にあるときには,第1から第3のアーム63,64,65は開いた状態となる。第1から第3のアーム63,64,65が開くことで,第1の交連部指示部11と第2の交連部指示部13の相対位置が離れることとなる。このように,ロッド62を進退させることで,第1から第3のアーム63,64,65の開閉状態を自由に調節することができる。このため,第1及び第2の交連部指示部11,13の位置関係を調整しながら患者の心臓弁の交連部にあてがうことで,心臓弁のサイズを測定することができる。
【0049】
図11には,ロッド開閉型の弁尖サイザーにおいて,第1の交連部指示部11,第2の交連部指示部13,及びヘッド66の相対位置が変化する様子が模式的に示されている。図11において,ヘッド66の頂点の位置が符号P1で示され,第1の交連部支持部11の頂点の位置が符号P2で示され,第2の交連部指示部13の頂点の位置が符号P3で示されている。図11に示されるように,ロッド開閉型の弁尖サイザーは,P1,P2,P3が,連結支点部33を中心とする円周上に位置している。そして,第1から第3のアーム63,64,65を展開させると,ベース部11を中心とする円の半径が拡大するように,P1,P2,P3の各位置がP1´,P2´,P3´へと変化する。また,ロッド開閉型の弁尖サイザーは,P1,P2,P3の拡大幅はすべて均一である。つまり,P1からP1´までの距離,P2からP2´までの距離,及びP3からP3´までの距離が常に等しくなる。このように,ロッド開閉型の弁尖サイザーを用いることで,術者は相似の扇形を想定して弁尖のサイズを測定することができる。
【0050】
続いて,患者の自己の心膜で形成した弁尖素材を用いて大動脈弁を形成する大動脈再建術の例を説明する。この場合,胸骨を露出させた後,胸骨正中切開を行う。その後,心膜を切開する。心臓を露出させた状態で人工心肺による体外循環を行い,心拍を停止させた後大動脈弁を露出させる。一方,先に取得した心膜を糸により拡張し,固定させた状態で,組織固定溶液(例えば,グルタールアルデヒドを含む液)に漬ける。
【0051】
次に,大動脈弁の三枚の弁尖のうち除去するものを切除する。切除した部位に,弁尖サイザーを当て,切除した弁尖の大きさ(交連部間の距離に基づく)を測定する。組織固定溶液から心膜を取り出す。そして,テンプレートのうち,弁尖サイザー(切除した弁尖の交連部に対応した大きさのもの)に対応したものにもとづいて,心膜に線を描画する。心膜を裁断し,弁尖素材を得る。弁尖素材は,例えば生理食塩水に浸しておく。
【0052】
次に,得られた弁尖素材を用いて弁尖を形成する。具体的な施術方法の基本作業は,特許第5106019号公報と同様である。すなわち,弁尖の中心点と対応する位置に形成されている指標を目印として,その指標が指し示す位置に糸をかけ,中心点を縫合する。この中心点を基準として,交連部に向けて縫い進める。弁尖基部25の下端領域においては,針の間隔を細かくすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は,医療機器の分野において利用されうる。
【符号の説明】
【0054】
11…第1の交連部指示部 13…第2の交連部指示部
15…弁尖サイザー 21…第1の指示部
25…指標表示部 27…収容部
31…弁尖サイザー本体 33…ハンドル
51…第1のアーム 52…第2のアーム
53…連結支点部 61…ベース部
62…ロッド部 63…第1のアーム
64…第2のアーム
図1
図2
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図11