特許第6697549号(P6697549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6697549分子ふるいSSZ−105、その合成および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697549
(24)【登録日】2020年4月28日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】分子ふるいSSZ−105、その合成および使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20200511BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20200511BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20200511BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20200511BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20200511BHJP
   C07C 11/08 20060101ALI20200511BHJP
   C07C 1/20 20060101ALI20200511BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200511BHJP
【FI】
   C01B39/48
   B01J29/70 A
   B01J29/70 Z
   B01J37/10
   C07C11/04
   C07C11/06
   C07C11/08
   C07C1/20
   !C07B61/00 300
【請求項の数】16
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-519294(P2018-519294)
(86)(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公表番号】特表2018-531869(P2018-531869A)
(43)【公表日】2018年11月1日
(86)【国際出願番号】US2016053911
(87)【国際公開番号】WO2017065967
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2019年4月3日
(31)【優先権主張番号】14/884,845
(32)【優先日】2015年10月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/884,859
(32)【優先日】2015年10月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/242,352
(32)【優先日】2015年10月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シエ、ダン
(72)【発明者】
【氏名】リュー、クリストファー マイケル
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−153114(JP,A)
【文献】 SHIMAZU, Mitsuo et al.,LEVYNE AND ERIONITE FROM CHOJABARU, IKI ISLAND, NAGASAKI PREFECTURE, JAPAN,J.Japan.Assoc.Min.,1972年,vol.67,p.418-424
【文献】 PASSAGLIA, E et al.,Crystal chemistry of the zeolites erionite and offretite,American Mineralogist,1998年,vol.83,p.577-589
【文献】 WISE, William S et al.,The chemical composition and origin of the zeolites offretite, erionite, and levyne,American Mineralogist,1976年,vol.61,p.853-863
【文献】 PASSAGLIA, E et al.,Chemistry of levynes and epitaxially overgrown erionites,N. Jb. Miner. Mh.,1999年,vol.12,p.568-576
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
B01J 29/70
B01J 37/10
C07C 1/20
C07C 11/04
C07C 11/06
C07C 11/08
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ERI骨格タイプ分子ふるいおよびLEV骨格タイプ分子ふるいを含む少なくとも1種の連晶相を含む、アルミノケイ酸塩分子ふるい組成物であって、SiO/Alモル比が10〜50である、アルミノケイ酸塩分子ふるい組成物
【請求項2】
SiO/Alモル比が10〜25である、請求項1に記載の分子ふるい組成物。
【請求項3】
前記ERI骨格タイプ分子ふるいが、DIFFaX分析による測定で、前記LEV骨格タイプ分子ふるいに対する割合が5〜95%で、前記少なくとも1種の連晶相に存在する、請求項1に記載の分子ふるい組成物。
【請求項4】
前記ERI骨格タイプ分子ふるいが、DIFFaX分析による測定で、前記LEV骨格タイプ分子ふるいに対する割合が10〜90%で、前記少なくとも1種の連晶相に存在する、請求項1に記載の分子ふるい組成物。
【請求項5】
前記ERI骨格タイプ分子ふるいが、DIFFaX分析による測定で、前記LEV骨格タイプ分子ふるいに対する割合が20〜80%で、前記少なくとも1種の連晶相に存在する、請求項1に記載の分子ふるい組成物。
【請求項6】
前記ERI骨格タイプ分子ふるいが、DIFFaX分析による測定で、前記LEV骨格タイプ分子ふるいに対する割合が30〜70%で、前記少なくとも1種の連晶相に存在する、請求項1に記載の分子ふるい組成物。
【請求項7】
前記ERI骨格タイプ分子ふるいが、DIFFaX分析による測定で、前記LEV骨格タイプ分子ふるいに対する割合が40〜60%で、前記少なくとも1種の連晶相に存在する、請求項1に記載の分子ふるい組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のアルミノケイ酸塩分子ふるい組成物を調製する方法であって、
(a)以下の成分:
(1)ケイ素酸化物の少なくとも1種の供給源;
(2)アルミニウム酸化物の少なくとも1種の供給源;
(3)カリウム、ならびに、ナトリウムおよびカリウムの組み合わせからなる群から選択される、第1族金属の金属(M)の少なくとも1種の供給源;
(4)ヒドロキシドイオン;
(5)N,N−ジメチルピペリジニウムカチオン(Q);および
(6)水
を含む反応混合物を調製する工程;ならびに、
(b)前記反応混合物を、前記分子ふるい組成物の結晶を形成するのに十分な結晶化条件にかける工程
を含み、
アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物の供給源がY−ゼオライトを含み、そして
前記反応混合物は、モル比で以下の組成を含む方法。
【表1】
【請求項9】
前記分子ふるい組成物の調製のための前記反応混合物が、モル比で以下の組成を含む、請求項8に記載の方法。
【表2】
【請求項10】
前記結晶化条件が、125℃〜200℃の温度を包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
有機化合物を含む供給原料を転化生成物に転化する方法であって、有機化合物転化条件で、請求項1の分子ふるいの活性形態を含む触媒に前記供給原料を接触させる工程を含む方法。
【請求項12】
前記有機化合物が有機酸素化物を含み、そして、前記の有機化合物転化方法が前記有機酸素化物をオレフィンを含む生成物に転化する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記有機酸素化物が、メタノール、ジメチルエーテル、またはこれらの組み合わせを含み、前記オレフィンが、エチレン、プロピレン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
窒素酸化物(NO)を選択的に還元する方法であって、請求項1記載の分子ふるいを含む触媒に窒素酸化物を含む気体流を接触させることを含む、方法。
【請求項15】
前記触媒が、Cr、Mn、Fe、Co、Ce、Ni、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Re、IrおよびPtから選択される遷移金属の1種以上をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記遷移金属が、前記分子ふるいの総重量に基づいて0.1〜10重量%の量で存在する、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、SSZ−105と称される新規な結晶性分子ふるい(モレキュラーシーブ)、その調製のための方法、ならびに、触媒的および収着性のプロセスにおけるSSZ−105の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
天然および合成の両方の分子ふるい材料は、吸着剤として有用であり、様々なタイプの有機転化反応のための触媒特性を有することが過去に実証されている。ゼオライト、アルミノホスフェート、およびメソポーラス材料などのある種の分子ふるいは、X線回折によって決定されるような明確な結晶性構造を有する規則正しい多孔質結晶性材料である。結晶性分子ふるい材料内には、多数のチャネルまたは細孔によって相互接続され得る多数の空洞(cavities)が存在する。これらの空洞および細孔は、特定の分子ふるい材料内でサイズが均一である。これらの細孔の寸法は、より大きな寸法のものを排除しながら特定の寸法の吸着分子を受容するようなものであるため、これらの材料は「分子ふるい」として知られるようになっており、様々な工業プロセスで利用されている。
【0003】
多くの異なる結晶性分子ふるいが発見されているが、ガス分離および乾燥、有機転化反応、ならびに他の用途に望ましい特性を有する新しい分子ふるいの必要性が引き続き存在する。新しい分子ふるいは、新規な内部細孔構造を含み、これらのプロセスにおける選択性を高めることができる。
【0004】
分子ふるいは、ゼオライト命名法に関するIUPAC委員会(IUPAC Commission on Zeolite Nomenclature)の規則に従って、国際ゼオライト協会の構造委員会によって分類される。この分類によれば、構造が確立された骨格(フレームワーク)タイプのゼオライトおよび他の結晶性微多孔質分子ふるいは、3文字コードが割り当てられ、「アトラス・オブ・ゼオライトフレームワークタイプ」(“Atlas of Zeolite Framework Types”)第6改訂版、Elsevier(2007年)に説明されている。
【0005】
分子ふるいは、秩序だっていてよいし、無秩序でもあり得る(規則的または不規則的であり得る)。秩序だった分子ふるいは、周期的ビルディングユニット(Period Building Units:PerBUs)と呼ばれる構造的に不変なビルディングユニットから構築され、周期的に3次元で秩序付けて配列される。PerBUsから構築された結晶性構造は、3次元全てで周期的な秩序化(順序付け)が達成されれば、エンド−メンバー構造(end−member structures)と呼ばれる。一方、無秩序な構造は、3次元未満の周期的な秩序化を示す。このような無秩序な構造の一つは、2つ以上の骨格タイプからのビルディングユニットが存在する無秩序で平面的な連晶成長(intergrowth:相互成長)である。そのような連晶成長は、しばしば、それらのエンド−メンバー(末端部)とは著しく異なる触媒特性を有する。例えば、ゼオライトZSM−34は、ERIおよびOFF骨格タイプの周知の連晶成長であり、個々の成分材料よりも優れたメタノールからオレフィンへの転化性能を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書に開示されるのは、ERI骨格タイプの分子ふるいおよびLEV骨格タイプの分子ふるいの少なくとも1つの連晶相(intergrowth phase:相互成長相)を含むSSZ−105と呼ばれるユニークな無秩序化アルミノケイ酸塩分子ふるいである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、本明細書中で「分子ふるいSSZ−105」または単に「SSZ−105」と称する独特な特性を有する結晶性分子ふるいの新しいファミリーを対象とする。分子ふるいSSZ−105は、ERI骨格タイプ分子ふるいとLEV骨格タイプ分子ふるいの少なくとも1つの連晶相を含む。
【0008】
そのか焼された形態では、分子ふるいSSZ−105は、モル比で以下の成分を含む化学組成を有する:
Al:(n)SiO
式中、nは10〜50の値を有する。
【0009】
1つの態様では、(a)(1)少なくとも1種のケイ素酸化物供給源、(2)少なくとも1種のアルミニウム酸化物供給源と、(3)第1族金属(M)の少なくとも1種の供給源(Mは、カリウムおよびナトリウムとカリウムとの組み合わせからなる群から選択される);(4)水酸化物イオン;(5)N,N−ジメチルピペリジニウムカチオン;および(6)水を含む反応混合物を調製する工程、ならびに、(b)この反応混合物を、分子ふるいの結晶を形成するのに十分な結晶化条件にかける工程によって、分子ふるいSSZ−105を調製する方法が提供される。
【0010】
その合成されたままの無水の形態で、分子ふるいSSZ−105は、モル比で以下の化学的組成を有する。
【表1】

ここで、Qは、N,N−ジメチルピペリジニウムカチオンを含み、Mは、カリウムおよびナトリウムとカリウムとの組み合わせからなる群から選択される第1族金属である。
【0011】
さらに、本明細書に開示された分子ふるいは、分離プロセスを含む広範なプロセスにおいて、および有機転化反応における触媒として有用である。更なる態様では、有機化合物を含む供給原料を転化生成物に転化するプロセスであって、有機化合物転化条件でこの供給原料を触媒と接触させる工程を含み、この触媒は本明細書に記載の分子ふるいの活性形態を含むプロセスが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、例1で調製された、合成されたままの分子ふるいの粉末X線回折(XRD)パターンである。
【0013】
図2図2は、例1で調製された、合成されたままの分子ふるいの走査電子顕微鏡写真(Scanning Electron Micrograph:SEM)の画像である。
【0014】
図3図3は、例1で調製された分子ふるいのか焼形態の、いくつかのDIFFaX生成シミュレーションXRDパターンおよび粉末XRDパターンのプロットである。
【0015】
図4図4は、例2で調製された、合成されたままの分子ふるいのSEM画像である。
【0016】
図5図5は、例2で調製された分子ふるいのか焼形態の、いくつかのDIFFaX生成シミュレーションXRDパターンおよび粉末XRDパターンのプロットである。0017
【0017】
図6図6は、例3で調製された、合成されたままの分子ふるいのSEM画像である。
【0018】
図7図7は、例3で調製された分子ふるいのか焼形態の、いくつかのDIFFaX生成シミュレーションXRDパターンおよび粉末XRDパターンのプロットである。
【0019】
図8図8は、例4で調製された、合成されたままの分子ふるいのSEM画像である。
【0020】
図9図9は、例4で調製された分子ふるいのか焼形態の、いくつかのDIFFaX生成シミュレーションXRDパターンおよび粉末XRDパターンのプロットである。
【0021】
図10図10は、例5で調製された、合成されたままの分子ふるいのSEM画像である。
【0022】
図11図11は、例5で調製された分子ふるいのか焼形態の、いくつかのDIFFaX生成シミュレーションXRDパターンおよび粉末XRDパターンのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
導入
以下の用語は、本明細書を通して使用され、他に示されない限り以下の意味を有する。
【0024】
「骨格タイプ」(“framework type”:骨格型)という用語は、「アトラス・オブ・ゼオライトフレームワークタイプ」(“Atlas of Zeolite Framework Types”)第6改訂版、Elsevier(2007年)に記載された意味で使用される。
【0025】
本明細書中で使用される場合、周期表の番号付けスキームは、Chem.Eng.News,63(5),26−27(1985)に開示されているとおりである。
【0026】
連晶成長した分子ふるい相は、分子ふるい骨格の無秩序で平面的な連晶成長である。連晶成長した分子ふるい相の詳細な説明について、国際ゼオライト協会の構造委員会によって発行された「無秩序ゼオライト構造のカタログ」(“Catalog of Disordered Zeolite Structures”)2000年版、および、国際ゼオライト協会の構造委員会に代わって発行された「ゼオライトのシミュレーションXRD粉末パターンの収集」(“Collection of Simulated XRD Powder Patterns for Zeolites”)第5改訂版、Elsevier(2007年)を参照する。
【0027】
本明細書に記載されている分子ふるいは、エンドメンバー(末端部)の構造ERIおよびLEVの無秩序で平面的な連晶成長である。これらの2つの骨格タイプは両方とも、二次的なビルディングユニットとして2重6リング(d6r)を有するグループに属する。連晶成長したERI/LEV分子ふるいは、ERI骨格タイプ配列の領域およびLEV骨格タイプ配列の領域を含む。ERIからLEV骨格タイプ配列への各々の変化は、すたっキング(積み重ね)の不備・欠陥につながる。
【0028】
分子ふるいSSZ−105の調製において、N、N−ジメチルピペリジニウムカチオンは、結晶化テンプレートとしても知られている構造指向剤(「SDA」)として使用される。SSZ−105を製造するのに有用なSDAは、以下の構造(1)を有する。
【0029】
SDAカチオンは、SSZ−105の形成に有害でないいかなるアニオンであってもよいアニオンと会合している。代表的なアニオンは、周期表の第17族からの元素(例えば、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物)、水酸化物、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、酢酸塩、カルボン酸塩などを含む。
【0030】
反応混合物
一般に、分子ふるいSSZ−105は、(a)以下の成分:(1)ケイ素酸化物の少なくとも1種の供給源;(2)アルミニウム酸化物の少なくとも1種の供給源;(3)カリウム、ならびに、ナトリウムおよびカリウムの組み合わせからなる群から選択される、第1族金属(M)の少なくとも1種の供給源;(4)水酸化物イオン;(5)N,N−ジメチルピペリジニウムカチオン;および(6)水を含む反応混合物を調製する工程;ならびに(b)前記反応混合物を、この分子ふるいの結晶を形成するのに十分な結晶化条件にかける工程によって調製される。
【0031】
当該分子ふるいがそこから形成される反応混合物の組成は、モル比で、以下の表1に示される。
【表2】

ここで組成変数MおよびQは、本明細書中で上述されているとおりである。
【0032】
ケイ素酸化物の好適な供給源には、ヒュームドシリカ、沈降ケイ酸塩、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイド状シリカ、テトラアルキルオルトケイ酸塩(例えばテトラエチルオルトケイ酸塩)およびシリカ水酸化物が含まれる。
【0033】
アルミニウム酸化物の適切な供給源には、水和アルミナおよび水溶性アルミニウム塩(例えば、硝酸アルミニウム)が含まれる。
【0034】
追加的または代替的に、ケイ素およびアルミニウムの混合供給源を使用することができ、これには、アルミノケイ酸塩ゼオライト(例えば、ゼオライトY)およびクレイまたは処理クレイ(例えば、メタカオリン)が包含され得る。
【0035】
本合成方法において、第1族金属(M)は、カリウムおよびナトリウムとカリウムとの組み合わせからなる群から選択される。ナトリウム供給源は水酸化ナトリウムであってよい。カリウム供給源は水酸化カリウムであってよい。実施形態では、第1族金属(M)がナトリウムとカリウムの混合物である場合、反応混合物中のナトリウムのモル比(m)をカリウムのモル比(m)で割った値は2.0以下であるか、または1.0以下であり、好ましくは0.1〜2.0の範囲内であり、好都合には0.1〜0.5の範囲である。
【0036】
反応混合物はまた、前の合成からのSSZ−105結晶などの分子ふるい材料の種子(シード)を、反応混合物の0.1〜10重量%または0.5〜5重量%の量で含んでいてよい。
【0037】
本明細書に記載の各実施形態について、分子ふるいの反応混合物は、複数の供給源によって供給することができる。また、2つ以上の反応成分を1つの供給源によって提供することができる。
【0038】
反応混合物は、回分式または連続式のいずれかで調製することができる。本明細書に記載される分子ふるいの結晶サイズ、形態(morphology)および結晶化時間は、反応混合物の性質および結晶化条件によって変化し得る。
【0039】
結晶化および合成後の処理
本明細書に開示された分子ふるいの結晶化は、例えばポリプロピレンジャーまたはテフロン(登録商標)ライナーまたはステンレススチール製のオートクレーブのような適当な反応容器中で静的、タンブルまたは撹拌条件下で、125℃〜200℃(例えば140℃〜180℃)の温度で、この使用される温度で結晶化が起こるのに十分な時間、例えば1日〜28日の間行うことができる。結晶化は、通常、閉鎖系にて、自己発生圧力で行われる。
【0040】
いったん分子ふるい結晶が形成されると、固体生成物は、遠心分離またはろ過のような標準的な機械的分離技術によって反応混合物から回収される。結晶を水洗し、次いで乾燥して、合成されたままの分子ふるい結晶を得る。乾燥工程は、典型的には200℃未満の温度で行われる。
【0041】
結晶化プロセスの結果として、回収された結晶性分子ふるい生成物は、その多孔構造内に、合成に使用される構造指向剤の少なくとも一部を含む。
【0042】
構造指向剤は、典型的には、使用前にか焼によって分子ふるいから少なくとも部分的に除去される。か焼は、酸素含有ガスの存在下、場合によりスチームの存在下で200℃〜800℃の温度で構造指向剤を含む分子ふるいを加熱することから本質的になる。構造指向剤は、米国特許第6,960,327号に記載されているような光分解技術によっても除去することができる。
【0043】
所望される範囲で分子ふるいの組成に依存して、合成されたままのまたはか焼された分子ふるい中の任意のカチオンを、他のカチオンとのイオン交換によって当技術分野で周知の技術に従って置換することができる。好ましい置換カチオンとしては、金属イオン、水素イオン、水素前駆体、例えばアンモニウムイオンおよびそれらの混合物が挙げられる。特に好ましいカチオンは、特定の有機転化反応のための触媒活性を調整するカチオンである。これらには、水素、希土類金属、および元素周期表の第2族〜15族の金属が含まれる。本明細書で使用される場合、用語「合成されたままの」(“as−synthesized”)とは、結晶化後、SDAカチオンの除去前の形態の分子ふるいを指す。
【0044】
本明細書に開示された分子ふるいは、完成した触媒にさらなる硬度または触媒活性を提供するバインダーおよび/またはマトリックス材料などの他の材料と組み合わせることによって、触媒組成物中に処方することができる。このような成分とブレンドすると、SSZ−105分子ふるいおよびマトリックスの相対的な割合は、SSZ−105の含有量が触媒全体の1〜99重量%(例えば、10〜90重量%または20〜80重量%)の範囲で大きく変化し得る。
【0045】
分子ふるいの特徴付け
分子ふるいSSZ−105は、ERI及びLEV結晶構造の連晶成長である。2つの純粋な材料のサンプルを混合することによって調製された2相ERIおよびLEVの物理的混合物は、分子ふるいSSZ−105として定義されない。
【0046】
その合成されたままの無水の形態において、分子ふるいSSZ−105は、表2に記載されたとおりの、モル比の化学的組成を有する。
【表3】

ここで、組成変数QおよびMは、本明細書にて上述されたとおりである。
【0047】
本明細書中に開示される分子ふるいの合成されたままの形態は、その合成されたままの形態を調製するために使用される反応混合物の反応物質のモル比と異なるモル比を有し得ることに留意されたい。この結果は、(反応混合物から)形成された結晶への反応混合物の反応物質の100%の不完全な組み込みに起因して生じ得る。
【0048】
そのか焼された形態では、分子ふるいSSZ−105は、以下のモル関係式を含む化学的組成を有する。
Al:(n)SiO
式中、nは、少なくとも10の値(例えば、10〜50、10〜45、10〜40、10〜35、10〜30、10〜25、12〜50、12〜45、12〜40、12〜35、12〜30、12〜25、15〜50、15〜45、15〜40、15〜35、15〜30、または15〜25)である。
【0049】
一実施形態では、本明細書に開示された連晶成長の結晶性分子ふるいは、1%〜99%(例えば、5%〜95%、10%〜90%、20%〜80%、30%〜70%、または40%〜60%)のERI結晶構造を有し得る。同様に、本明細書に開示された連晶成長の結晶性分子ふるいは、1%〜99%(例えば、5%〜95%、10%〜90%、20%〜80%、30%〜70%、または40%〜60%)のLEV結晶構造を有し得る。これらの相の各々の相対的な割合は、X線回折によって分析することができ、特に、観察されたパターンを、積み重ね(stacking:スタッキング)の無秩序の効果をシミュレートするアルゴリズムを使用して生成された計算パターンと比較することによって分析することができる。DIFFaXは、欠陥から強度を計算するための数学的モデルに基づくコンピュータプログラムである(M.M.J.Treacy et al.,Proc.R.Soc.Lond.A 1991,433,499−520を参照)。DIFFaXは、ランダムに連晶成長した相の粉末XRDパターンをシミュレートするために国際ゼオライト協会(International Zeolite Association)によって選択されかつそれから入手されるシミュレーションプログラムである(「ゼオライトのシミュレーションXRD粉末パターンの収集」(“Collection of Simulated XRD Powder Patterns for Zeolites”)第5改訂版、Elsevier(2007年)を参照)。
【0050】
本明細書に提示される粉末X線回折パターンは、標準的な技術によって収集された。放射線はCuKα線であった。2θの関数(ここでθはブラッグ角である)としてのピークの高さおよび位置は、ピークの相対強度(バックグラウンドを調整する)から読み取られ、記録された線に対応する面間隔dが計算され得る。
【0051】
格子定数の変化に因る特定の試料の骨格種のモル比の変化から、回折パターンの小さな変動が生じることがある。さらに、十分に小さな結晶がピークの形状および強度に影響を与え、有意なピークの広がり(ブロードニング)をもたらす。回折パターンのわずかな変動はまた、調製に使用される有機化合物の変動に起因し得る。か焼はまた、XRDパターンのわずかなシフトを引き起こす可能性がある。これらのわずかな摂動にもかかわらず、基本的な結晶格子構造は変化しないままである。
【0052】
SSZ−105を用いるプロセス
分子ふるいSSZ−105は、気体および液体を乾燥させるため;サイズおよび極性特性に基づく選択的分子分離のため;イオン交換体として;化学物質キャリアとして;ガスクロマトグラフィーにおいて;有機転化反応における触媒として使用することができる。適切な触媒使用の例には、酸素化物(oxygenates)の1つ以上のオレフィンへの接触転化、モノアルキルアミンおよびジアルキルアミンの合成、および窒素酸化物の接触還元が含まれる。
【0053】
ガス分離
分子ふるいSSZ−105を用いてガスを分離することができる。例えば、天然ガスから二酸化炭素を分離するためにそれを使用することができる。典型的には、この分子ふるいは、ガスを分離するために使用される膜の成分として用いられる。このような膜の例は、米国特許第6,508,860号に開示されている。
【0054】
酸素化物(oxygenate)の転化
分子ふるいSSZ−105は、有機酸素化物を1種以上の軽質オレフィン、特にエチレンおよび/またはプロピレンに接触転化するのに有用である。本明細書で使用される「酸素化物」(“oxygenates”)という用語は、脂肪族アルコール、エーテル、カルボニル化合物(アルデヒド、ケトン、カルボン酸、カーボネートなど)、およびヘテロ原子を含む化合物、例えばハロゲン化物、メルカプタン、硫化物、アミン、並びにそれらの混合物を含むものとして定義される。脂肪族部分は、通常1〜10個の炭素原子、例えば1〜4個の炭素原子を含む。
【0055】
代表的な有機酸素化物は、低級直鎖または分枝脂肪族アルコール、それらの不飽和対応物、ならびにそれらの窒素、ハロゲンおよび硫黄同族体を含む。適切な酸素化物の例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、C〜C10アルコール、メチルエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ホルムアルデヒド、ジメチルカーボネート、ジメチルケトン、酢酸、3〜10個の炭素原子の範囲を含むn−アルキル基を有するn−アルキルアミン、3〜10個の炭素原子の範囲を含むn−アルキル基を有するn−アルキルハロゲン化物、3〜10個の炭素原子の範囲を含むn−アルキル基を有するn−アルキルスルフィド、およびそれらの混合物から選択される。特に好適な有機酸素化物は、メタノール、ジメチルエーテル、またはそれらの混合物であり、最も好ましくはメタノールである。本明細書で使用される場合、「酸素化物」という用語は、供給原料として使用される有機材料のみを示す。反応領域への供給原料の装入物の全体は、希釈剤のような追加の化合物を含有してもよい。
【0056】
本発明の酸素化物転化プロセスでは、場合により1種以上の希釈剤を伴う有機酸素化物を含む供給原料を、反応領域中、気相で、本明細書に開示された分子ふるいを含む触媒と有効なプロセス条件で接触させて所望のオレフィンを生成する。あるいは、この方法は、液相または混合気/液相中で行うことができる。プロセスが液相または混合気/液相で行われる場合、異なる転化率および供給原料対生成物の選択率が、触媒および反応条件に依存して生じることがある。
【0057】
存在する場合、希釈剤(単数種または複数種)は、一般に、供給原料または分子ふるい触媒組成物に対して非反応性であり、典型的には供給原料中の酸素化物の濃度を低下させるために使用される。適切な希釈剤の非限定的な例には、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水、本質的に非反応性のパラフィン(特にアルカン、例えばメタン、エタンおよびプロパン)、本質的に非反応性の芳香族化合物、ならびにこれらの混合物が含まれる。最も好ましい希釈剤は水および窒素であり、水が特に好ましい。希釈剤(単数種または複数種)は、全供給混合物の1〜99モル%を構成してよい。
【0058】
酸素化物転化プロセスに使用される温度は、例えば200℃〜1000℃(例として250℃〜800℃、250℃〜750℃、300℃〜650℃、350℃〜600℃、または400℃〜600℃)の広い範囲にわたって変化させてよい。
【0059】
軽質オレフィン生成物は、必ずしも最適量ではないが、0.1〜10MPaの範囲内の自己発生圧力および圧力(例えば、7kPa〜5MPa、または50kPa〜50MPa)を含む広い範囲の圧力で形成する。前述の圧力は、存在する場合には希釈剤を除き、供給原料(例えば酸素化物および/またはその混合物に関する)の分圧を指す。圧力の下限および上限は、選択率、転化率、コーキング速度、および/または反応速度に悪影響を与える可能性がある。しかし、エチレンのような軽質オレフィンもなお生成する可能性がある。
【0060】
本方法は、所望のオレフィン生成物を生成するのに十分な時間継続されるべきである。反応時間は、10分の1秒から数時間まで変化させてよい。反応時間は、主に、反応温度、圧力、選択された触媒、重量時空間速度、相(液体または気体)および選択されたプロセス設計特性によって決定される。
【0061】
供給原料の広範囲の重量時空間速度(WHSV)が、本発明のプロセスにおいて機能するであろう。WHSVは、分子ふるい触媒の全反応体積(不活性物質および/または充填剤を除く)の重量当たり1時間当たりの供給原料の重量(希釈剤を除く)として定義される。このWHSVは、一般に0.01h−1から500h−1(例えば0.5から300h−1、または1から200h−1)の範囲にあるべきである。
【0062】
固体粒子中に分子ふるい触媒を組み込むことができ、ここで触媒は、酸素化物の軽質オレフィンへの所望の転化を促進するのに有効な量で存在する。一態様では、固体粒子は、触媒有効量の触媒と、バインダー材料、充填剤材料およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のマトリックス材料とを含み、所望の特性(1つまたは複数)、例えば所望の触媒希釈、機械的強度等を固体粒子に付与する。このようなマトリックス材料は、ある程度は本質的に多孔質であることが多く、所望の反応を促進するのに効果的であるかまたは効果的でない可能性がある。充填剤材料およびバインダー材料としては、例えば、金属酸化物、クレイ、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリアなどの合成物質および天然物質が挙げられる。マトリックス材料が触媒組成物に含まれる場合、分子ふるいは、望ましくは全組成物の1〜99重量%(例えば10〜90重量%、または20〜80重量%)を構成する。
【0063】
アミンの合成
分子ふるいSSZ−105は、メチルアミンまたはジメチルアミンを製造するための触媒中で使用することができる。ジメチルアミンは、一般に、シリカ−アルミナ触媒の存在下でメタノール(および/またはジメチルエーテル)とアンモニアとを連続的に反応させることによって工業的な量で調製される。反応物質は、典型的には、300℃〜500℃の温度で、かつ高められた圧力にて気相中で組み合わせられる。このようなプロセスは、米国特許第4,737,592号に開示されている。
【0064】
触媒は、その酸の形態で使用される。分子ふるいの酸形態は、様々な技術によって調製することができる。望ましくは、ジメチルアミンを調製するために使用される分子ふるいは、水素形態であるか、またはその中にイオン交換されたNa、K、RbまたはCsなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属を有する。
【0065】
本明細書で開示されたプロセスは、0.2〜1.5(例えば、0.5〜1.2)の炭素/窒素(C/N)比を提供するのに十分な量のメタノール、ジメチルエーテルまたはそれらの混合物とアンモニアとを反応させることを含む。この反応は、250℃〜450℃(例えば、300℃〜400℃)の温度で行われる。反応圧力は、7〜7000kPa(例えば、70〜3000kPa)で変動させてよい。0.01〜80h−1(例えば、0.10〜1.5h−1)のメタノールおよび/またはジメチルエーテルの空間時間が典型的に使用される。この空間時間は、触媒の質量を反応器に導入されたメタノール/ジメチルエーテルの質量流量で割ったものとして計算される。
【0066】
窒素酸化物の還元
分子ふるいSSZ−105は、ガス流中の窒素酸化物の選択的還元のために使用することができる。このプロセスでは、分子ふるいSSZ−107を含む触媒および還元剤の存在下で、窒素酸化物(NO)を含むガス流を選択的に還元する。窒素酸化物(主にNOおよびNO)は、還元剤が酸化されている間にNに還元される。アンモニアが還元剤である場合、Nも酸化生成物である。理想的には、唯一の反応生成物は水およびNであるが、NHの一部は通常空気でNOまたはNOに酸化される。
【0067】
触媒は、分子ふるい担体上に担持された1種以上の金属を含んでいてもよい。任意の適切な金属を選択することができる。選択的接触還元の間に使用するのに特に有効な金属は、Cr、Mn、Re、Mo、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Agおよびそれらの混合物からなる群から選択される金属を含む。一実施形態では、この1種以上の金属は、Cr、Mn、Fe、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Cu、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、金属は、Mn、Fe、Co、PtおよびCuから選択される。より好ましくは、この1種以上の金属は、Fe、Cu、およびそれらの混合物からなる群から選択されてよい。例示的な実施形態では、金属はCuである。
【0068】
任意の適切で有効な量の少なくとも1種の金属を触媒中に使用することができる。分子ふるいに含まれ得る金属(1種または複数種)の総量は、触媒の全重量を基準にして、0.01〜20重量%(例えば、0.1〜10重量%、0.5〜5重量%、1〜3重量%、または1.5〜2.5重量%)であってよい。
【0069】
分子ふるいは、金属のための担体として作用し、例えば、金属は細孔(1つまたは複数)の内部にあってもよく、および/または分子ふるいの外部表面上にあってもよい。例示的な実施形態では、有意な量の金属(1種または複数種)が細孔の内部に存在する。
【0070】
金属(1種または複数種)はまた、分子ふるいに含まれていてもよく、および/または任意の実現可能な方法を用いて分子ふるいによって担持されてもよい。例えば、金属は、分子ふるいが合成された後に、例えば初期湿潤プロセスまたは交換プロセスによって添加することができる。あるいは、金属は、分子ふるい合成中に添加することができる。
【0071】
分子ふるい触媒は、任意の適切な形態で使用することができる。例えば、分子ふるい触媒は、粉末形態で、押出物として、ペレットとして、または任意の他の適切な形態で使用することができる。
【0072】
本明細書で使用するための分子ふるい触媒は、適切な基材モノリス上にコーティングすることができ、または押出型触媒として形成することができるが、好ましくは触媒コーティングに使用する。一実施形態では、分子ふるい触媒は、フロースルーモノリス基材(すなわち、全体的な部分を通じて軸方向に走る多数の小さい平行なチャネルを有するハニカム型モノリス触媒担体構造)上に、またはフィルターモノリス触媒(例えばウォールフローフィルター等)上にコーティングされる。本明細書で使用するための分子ふるい触媒は、例えばウォッシュコート成分として、適切なモノリス基材上に、例えば金属製もしくはセラミック製のフロースルーモノリス基材上に、あるいは、フィルター基材上に、例えばウォールフローフィルターまたはか焼された金属もしくは部分的フィルター(例えば、WO01/80978またはEP1057519に開示されているもの)上にコーティングされてよい。代替的に、本明細書で使用するための分子ふるいは、基材上に直接合成されてもよく、および/または押出型フロースルー触媒中に形成されてもよい。
【0073】
押出型基材モノリスを製造するためにモノリス基材上にコーティングする目的で本明細書で使用される分子ふるいを含むウォッシュコート組成物は、結合剤、例えばアルミナ、シリカ、(非分子ふるい)シリカ−アルミナ、天然クレイ(例えばTiO、ZrO、SnO、CeO、またはそれらの混合物)を含んでよい。
【0074】
一実施形態によれば、触媒を使用する方法は、化学プロセスにおいて触媒を少なくとも1種の反応物質を暴露することを含む。換言すれば、気体中のNOを還元する方法は、NOのような少なくとも1種の反応物質を有する気体を触媒に暴露することを含む。本明細書で使用される場合、気体中のNOを還元するための化学プロセスは、分子ふるいまたはゼオライトを含む触媒を用いる任意の適切な化学プロセスを包含し得る。典型的な化学プロセスには、限定はしないが、排気ガス処理、例えば、窒素還元剤、希薄(lean:リーン、欠乏)NO触媒、触媒物質利用すすフィルター、または、これらのいずれか1つとNO吸着剤触媒または三元触媒(TWC)との組み合わせ(例えば、NAC+(下流)SCRまたはTWC+(下流)SCR)を用いる選択的接触還元が含まれる。
【0075】
希薄(リーン)燃焼内燃機関の排気ガス中のNOを処理する方法は、希薄ガスからのNOを塩基性物質内に貯蔵し、次いで塩基性物質からこのNOを放出させ、リッチガスを用いてこれを周期的に還元することである。塩基性物質(アルカリ金属、アルカリ土類金属または希土類金属のような)と貴金属(例えば白金)との組み合わせ、およびさらに場合によっては還元触媒成分(例えばロジウム)との組み合わせは、典型的には、NO吸着剤触媒(NAC:NO吸蔵触媒)、希薄NOトラップ(LNT)、またはNO貯蔵/還元触媒(NSRC:NO吸蔵/還元触媒)と称される。本明細書で使用される場合、NO貯蔵/還元触媒、NOトラップ、およびNO吸着剤触媒(またはそれらの頭字語)は、交換可能に使用されてもよい。
【0076】
特定の条件下では、周期的にリッチな再生事象中に、NHがNO吸着剤触媒上に生成されてもよい。NO吸着剤触媒の下流にSCR触媒を添加することにより、系全体のNO還元効率を改善することができる。複合系では、SCR触媒は、リッチな再生事象中にNAC触媒から放出されたNHを貯蔵することができ、貯蔵されたNHを利用して、通常の希薄運転条件の間にNAC触媒を通過(スリップスルー)するNOの一部または全部を選択的に還元する。本明細書で使用されるように、このように結合されたシステムは、それぞれの略語の組み合わせ、例えばNAC+SCRまたはLNT+SCRとして示されてよい。
【0077】
触媒は、例えばエンジン排出物に遭遇するような還元性条件または希薄条件で有効であり得る。例えば、サイクルの希薄部分は、N中の約200ppmのNO、10%のO、5%のHO、5%のCOへの暴露からなっていてよく、そして、サイクルのリッチな部分は、N中の約200ppmのNO、5000ppmのC、1.3%のH、4%のCO、1%のO、5%のHO、5%のCOへの暴露からなっていてよい。還元性雰囲気は、1未満のラムダ値を有する雰囲気であり、すなわちその酸化還元(レドックス)組成物は正味還元性である。希薄(リーン)雰囲気は、1より大きいラムダ値を有するものであり、すなわちその酸化還元組成物は正味酸化性である。本明細書に記載された触媒は、還元性雰囲気に暴露されたときに特に有効であり得、希薄(リーン)/リッチ・変動サイクルのリッチ相の間に遭遇するような高温の還元性雰囲気に暴露されたときにさらに特に有効であり得る。
【0078】
気体中のNOを還元する方法は、少なくとも1種の反応物質を有する気体を触媒に暴露することを含む。反応物質は、上記の化学プロセスにおいて典型的に遭遇する任意の反応物質を含んでいてよい。反応物質は、アンモニアなどの選択的接触還元剤を含んでいてよい。選択的接触還元は、(1)アンモニアまたは窒素還元剤を使用すること、または(2)炭化水素還元剤(後者は希薄NO触媒としても知られている)を用いることを含み得る。他の反応物質は、窒素酸化物および酸素を含み得る。例示的な実施形態では、本明細書に記載の触媒は、アンモニアによるNOの選択的接触還元の間に使用される。
【0079】
少なくとも1種の反応物質、例えば窒素酸化物は、少なくとも100℃(例えば、150℃〜750℃、または175℃〜550℃)の温度で還元剤で還元される。
【0080】
窒素酸化物を含む反応物質の場合、窒素酸化物の還元は、酸素の存在下または酸素の不存在下で行うことができる。窒素還元剤の供給源は、アンモニア、ヒドラジン、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、ギ酸アンモニウムまたは任意の適切なアンモニア前駆体、例えば尿素であり得る。
【0081】
この方法は、内燃機関(移動式であろうと固定式であろうと)、ガスタービンおよび石炭または石油燃焼発電所からのような燃焼プロセスに由来するガスに対して実施することができる。この方法は、石油精製、精油所ヒーターおよびボイラー、炉、化学処理産業、コークス炉、地方廃棄物プラントおよび焼却炉、コーヒー焙焼プラントなどの工業プロセスからのガスを処理するためにも使用することができる。
【0082】
特定の実施形態では、この方法は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、または液体石油ガスもしくは天然ガスによって動力を与えられるエンジンなどの希薄/リッチサイクルを伴う車両内燃機関からの排気ガスを処理するために使用される。
【0083】
窒素酸化物を含む反応物質の場合、窒素還元剤は、所望の効率以上で分子ふるい触媒がNO還元を触媒することができると判定された場合にのみ、例えば100℃超、150℃超、または175℃超にて、窒素還元剤を流入排気ガス中に計量供給することができる。制御手段による判定は、排気ガス温度、触媒床温度、加速器位置、系内の排気ガスの質量流量、マニホールドの減圧、着火タイミング、エンジンの速度、排気ガスのラムダ値、エンジンに噴射される燃料の量、排気ガス再循環(EGR)バルブの位置、並びにそれによるEGRの量およびブースト圧力からなる群から選択されるエンジンの条件を示す、1つ以上の好適なセンサー入力事項によってアシストされ得る。
【0084】
直接的に(適切なNOセンサーを使用して)決定された、又は制御手段に格納された事前相関ルックアップテーブル又はマップ(エンジンの状態を示す上述の入力事項のうちのいずれか1つ以上を、排気ガスの予測されるNO含有量と相関させるもの)を使用するなど間接的に決定された排気ガス中の窒素酸化物の量に応じて、計量供給(metering)を制御することができる。
【0085】
本明細書に記載された分子ふるい担持金属触媒は、改善されたNH−SCR活性、良好な熱安定性、良好な水熱安定性を示し、繰り返し希薄/リッチ高温エージングに耐えることができる。
【0086】
エンジン排気物質の処理(コールドスタートエミッション)
分子ふるいSSZ−105は、炭化水素トラップとして、特に炭化水素燃料の燃焼に伴う排出物を低減するためにも使用することができる。
【0087】
自動車の排気ガス基準がますます低くなると、自動車および触媒製造業者は、コールドスタート(冷間始動)期間中に炭化水素排出の大部分が発生するため、コールドスタート炭化水素の排出を削減することに専念するようになっている。その結果、内燃機関を含む車両のコールドスタート運転中の排出物の制御が不可欠である。従来の三元触媒コンバータを装備した車両は、典型的にはウォッシュコート層上に担持された貴金属を含み、これはモノリス担体上にデポジットされる。新鮮な触媒は約170℃で作動し始め、エージングした触媒は約200℃〜225℃でのみ作動する。これらの触媒は、通常、そのような温度に達する前に少なくとも1〜2分間を必要とし、この「コールドスタート」期間中、テールパイプ炭化水素の排出物の70%〜80%が発生する。このようなコールドスタート排出物は、2つのシミュレートされた環境(新たな車両モデルのプロトタイプが訓練されたドライバーによって実験室内にてダイナモメーター上で駆動される市街地および高速道路)に基づいた新しい車両試験のための標準化された実験室法である米国連邦試験手順(FTP)のサイクルを失敗させることがよくある。触媒コンバータの触媒が不完全燃焼した炭化水素を最終燃焼生成物に効果的に転化することができないより低温では、炭化水素吸着剤系は、不完全燃焼した炭化水素を吸着することにより触媒コンバータに到達する前にエンジンから排出される炭化水素を捕捉するべきである。理想的な場合には、触媒の失活(light−off)を超える温度で脱着が起こるはずである。
【0088】
任意の排出炭化水素トラップの重要なファクターは、吸着剤の吸着能力、吸着された炭化水素が脱着されて触媒コンバータに送られる脱着温度(触媒運転温度より高くなければならない)、および吸着剤の水熱安定性である。ゼオライトなどの分子ふるいは、一般に、他の材料と比較して、これらの条件下での水熱安定性に部分的に起因して、この用途のための有用な吸着剤であることが分かっている。
【0089】
炭化水素燃焼生成物を含む排気ガスの処理方法が開示される。この方法は、以下の工程を含む:分子ふるいによる炭化水素燃焼生成物の吸着を促進するのに有効な時間、排気ガスを分子ふるいSSZ−105と接触させる工程;パージガスを分子ふるいに通してそこから吸着された炭化水素燃焼生成物を除去する工程;および、除去された炭化水素燃焼生成物を含有するパージガスを炭化水素転化触媒と接触させる工程。「排気ガスを処理する方法」という句は、一般に、排気ガス汚染物質、特に炭化水素燃料の不完全燃焼に関連する排気ガス汚染物質の排出を低減する方法を指す。これに限定されるものではないが、この処理方法は、内燃機関のコールドスタート運転中に生じるような、不完全燃焼した排気ガス成分の排出を低減することに主に向けられている。
【0090】
内燃機関の炭化水素燃料の燃焼から生成された排気ガスは、典型的には、直鎖および分枝鎖の非芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、多環式炭化水素およびそれらの混合物、ならびに二酸化炭素、水、窒素酸化物、二酸化硫黄などの非炭化水素成分を包含する複数の燃焼成分を含む。そのような排出物の化合物の例としては、芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ベンゼンおよびそれらの混合物;メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンのような直鎖状および分岐状の炭化水素;シクロヘキサンのような脂環式炭化水素;ならびに、アルコールおよびメチル第三級ブチルエーテル(MTBE)などの追加の燃料添加剤が包含される。本明細書で開示される方法は、特定の炭化水素燃料に必ずしも限定されることなく、特に内燃機関のコールドスタート運転中に、そのような炭化水素の排出を低減するために有利に利用され得る。本発明の恩恵を受ける典型的な炭化水素燃料としては、ガソリン、ディーゼル燃料、航空燃料などが挙げられる。
【0091】
この方法は、吸着剤をバッチ式に排気ガスに接触させるバッチプロセスとして、または排気ガスが分子ふるいを通じて連続的もしくは半連続的に流れる連続的もしくは半連続的プロセスとして適用することができる。例えば、本方法は、炭化水素燃料が燃焼される内燃機関からの排気ガスを浄化するための連続プロセスとして適用されてもよい。このような連続プロセスでは、排気ガスを内燃機関などの供給源から吸着剤分子ふるい(すなわちSSZ−105)に最初に通過させることができるので、排気ガス中の成分、特に炭化水素は分子ふるいによって吸着される。用途に応じて、吸着された成分は、典型的にはその後、分子ふるいから脱着され、触媒と接触させられる。排気ガス浄化システムの場合、SSZ−105は、分子ふるいを触媒コンバータの上流の排気ガスと接触させることによって、内燃機関の排気ガスから部分的に燃焼した炭化水素成分を吸着するために利用され得る。分子ふるいおよび触媒は、排気ガスの連続的な貫流のために引き続き加熱されるので、分子ふるい上に吸着された成分は、排気ガス流中に脱着され、転化器に送られる。次いで、脱着された炭化水素成分は、より高い操作温度で触媒の改良された炭化水素転化効率のために触媒によって転化される。
【0092】
本明細書に開示される方法は、流れている排気ガスを用いて順次、連続的に実施されてよく、すなわち、ここでは排気ガスが分子ふるいを通って、次に下流の触媒コンバータを通って連続的に流れる。これに関して、排気ガスは、分子ふるいから脱着された排気成分を除去するためのパージガスとして本質的に機能することもできる。別のパージガス流、または排気ガス流に関連する別個のパージガス流を使用して、脱着された排気ガス成分を除去してもよく、このパージガス流として、特に限定されないが、排気ガス流に加えられる二次空気などの空気、不活性ガス、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0093】
バッチ及び半連続系におけるSSZ−105の使用も、本開示の範囲内である。例えば、バッチプロセスでは、SSZ−105を排気ガスの一部と接触させて、内燃機関のコールドスタート運転中に生成される排気ガス成分、特に不完全燃焼炭化水素成分を分子ふるい上に吸着させてよい。その後、触媒コンバータにおけるような触媒の操作温度に達したとき、吸着された成分は、パージガスを用いてパージされ、排気ガスの排出生成物に転化するために触媒に送られてよい。同様に、半連続プロセスでは、排気ガスは最初に分子ふるいを通過し、続いて下流の触媒を通過することができる。ある期間の後(例えば、触媒の失活温度に達したとき)、排気ガスは、分子ふるいがバイパスされるように、触媒のみを通るように再度の方向付けをされてよい。次いで、空気などのパージガスを分子ふるいに通して、分子ふるい上に吸着された排気ガス成分を脱着させることができる。
【0094】
一実施形態において、SSZ−105分子ふるいはまた、希土類、第2族金属、第6〜12族金属、およびそれらの混合物から選択される金属カチオンを含んでよい(例えば、金属カチオンは、Mg、Ca、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、およびこれらの混合物から選択されてよい)。別の実施形態では、分子ふるいは、Cu、Ag、Auおよびそれらの混合物から選択される金属を含む。
【0095】
分子ふるいは、排気ガス成分をそれ自体で吸着するために利用することができるが、結合剤およびクレイのような追加の材料と組み合わせて分子ふるいを含む吸着剤材料に利用することもできる。吸着材料はまた、分子ふるいと共に1種以上の触媒を含んでよい。そのような触媒は、当技術分野で一般的に知られており、本明細書では吸着剤材料と組み合わせて使用するために特に限定されない。他の吸着剤材料は、所望により、分子ふるいSSZ−105と共に含まれてよく、限定されないが、例えば、AEI、AFX、BEA、CHA、CON、IFR、MTT、MWW、MTW、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFS、SFV、SSY、STF、STT、−SVR、およびそれらの混合物等のような骨格タイプを有する分子ふるいが包含される。
【実施例】
【0096】
以下の例示的な諸例は、非限定的なものであることが意図される。
【0097】
例1
0.80gの45%KOH溶液、0.13gの50%NaOH溶液、9.56gの脱イオン水および2.00gのCBV760 Y−ゼオライト粉末(Zeolyst International、SiO/Alモル比=60)を、テフロンライナー中で一緒に混合した。次いで、20%N、N−ジメチルピペリジニウムヒドロキシド溶液8.45gを混合物に添加した。得られたゲルを均一になるまで撹拌した。次いで、このライナーをキャップし、Parr鋼製オートクレーブ反応器内に置いた。次いでオートクレーブをオーブンに入れ、150℃で4日間加熱した。固体生成物を遠心分離によって回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥させた。
【0098】
得られた生成物は、ICP元素分析によって測定して、15.8のSiO/Alモル比を有していた。
【0099】
得られた生成物を粉末XRDおよびSEMで分析した。粉末XRDパターンを図1に示す。SEM画像が図2に示されており、これは均一な結晶場であることを明らかにしている。この合成されたままの生成物の特徴的なXRDピークのリストが以下の表3に示される。
【表4】
【0100】
か焼された生成物から収集された粉末XRDパターンの実験結果と様々なERI/LEV連晶成長比を有するDIFFaXシミュレーション粉末XRDパターンとの比較が、図3に示されている。DIFFaX計算により、この生成物は、約50〜60%のERIスタッキングシーケンス(積み重ねシーケンス)および40〜50%のLEVスタッキングシーケンスを有する連晶成長物質であることが明らかにされている。
【0101】
例2
3.21gの45%KOH溶液、0.52gの50%NaOH溶液、32.46gの脱イオン水および8.00gのCBV780 Y−ゼオライト粉末(Zeolyst International、SiO/Alモル比=80)を、テフロンライナー中で一緒に混合した。次いで、20%N、N−ジメチルピペリジニウムヒドロキシド溶液41.05gを混合物に添加した。得られたゲルを均一になるまで撹拌した。次いで、このライナーをキャップし、Parr鋼製オートクレーブ反応器内に置いた。次いでオートクレーブをオーブンに入れ、150℃で3日間加熱した。固体生成物を遠心分離によって回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥させた。
【0102】
得られた生成物は、ICP元素分析によって測定して、17.1のSiO/Alモル比を有していた。
【0103】
粉末XRDおよびSEMにより、得られた生成物を純粋なSSZ−105として同定した。SEM画像を図4に示す。この合成されたままの生成物についての特徴的XRDピークのリストを、以下の表4に示す。
【表5】
【0104】
か焼された生成物から収集された粉末XRDパターンの実験結果と様々なERI/LEV連晶成長比を有するDIFFaXシミュレーション粉末XRDパターンとの比較が、図5に示されている。DIFFaX計算により、この生成物は、約50〜60%のERIスタッキングシーケンスおよび40〜50%のLEVスタッキングシーケンスを有する連晶成長物質であることが明らかにされている。
【0105】
例3
0.80gの45%KOH溶液、0.13gの50%NaOH溶液、9.56gの脱イオン水および2.00gのCBV720 Y−ゼオライト粉末(Zeolyst International、SiO/Alモル比=30)を、テフロンライナー中で一緒に混合した。次いで、20%N、N−ジメチルピペリジニウムヒドロキシド溶液8.45gを混合物に添加した。得られたゲルを均一になるまで撹拌した。次いで、このライナーをキャップし、Parr鋼製オートクレーブ反応器内に置いた。次いでオートクレーブをオーブンに入れ、150℃で4日間加熱した。固体生成物を遠心分離によって回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥させた。
【0106】
得られた生成物は、ICP元素分析によって測定して、12.7のSiO/Alモル比を有していた。
【0107】
粉末XRDおよびSEMにより、得られた生成物を純粋なSSZ−105として同定した。SEM画像を図6に示す。この合成されたままの生成物についての特徴的XRDピークのリストを、以下の表5に示す。
【表6】
【0108】
か焼された生成物から収集された粉末XRDパターンの実験結果と様々なERI/LEV連晶成長比を有するDIFFaXシミュレーション粉末XRDパターンとの比較が、図7に示されている。DIFFaX計算により、この生成物は、約80〜90%のERIスタッキングシーケンスおよび10〜20%のLEVスタッキングシーケンスを有する連晶成長物質であることが明らかにされている。
【0109】
例4
3.21gの45%KOH溶液、32.72gの脱イオン水および8.00gのCBV760 Y−ゼオライト粉末(Zeolyst International、SiO/Alモル比=60)を、テフロンライナー中で一緒に混合した。次いで、20%N、N−ジメチルピペリジニウムヒドロキシド溶液41.05gを混合物に添加した。得られたゲルを均一になるまで撹拌した。次いで、このライナーをキャップし、Parr鋼製オートクレーブ反応器内に置いた。次いでオートクレーブをオーブンに入れ、150℃で3日間加熱した。固体生成物を遠心分離によって回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥させた。
【0110】
得られた生成物は、ICP元素分析によって測定して、19.7のSiO/Alモル比を有していた。
【0111】
粉末XRDおよびSEMにより、得られた生成物を分析した。これは、純粋なSSZ−105分子ふるいとして同定した。SEM画像を図8に示す。この合成されたままの生成物についての特徴的XRDピークのリストを、以下の表6に示す。
【表7】
【0112】
か焼された生成物から収集された粉末XRDパターンの実験結果と様々なERI/LEV連晶成長比を有するDIFFaXシミュレーション粉末XRDパターンとの比較が、図9に示されている。DIFFaX計算により、この生成物は、約20〜30%のERIスタッキングシーケンスおよび70〜80%のLEVスタッキングシーケンスを有する連晶成長物質であることが明らかにされている。
【0113】
例5
0.80gの45%KOH溶液、8.18gの脱イオン水および2.00gのCBV780 Y−ゼオライト粉末(Zeolyst International、SiO/Alモル比=80)を、テフロンライナー中で一緒に混合した。次いで、20%N、N−ジメチルピペリジニウムヒドロキシド溶液10.26gを混合物に添加した。得られたゲルを均一になるまで撹拌した。次いで、このライナーをキャップし、Parr鋼製オートクレーブ反応器内に置いた。次いでオートクレーブをオーブンに入れ、150℃で4日間加熱した。固体生成物を遠心分離によって回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥させた。
【0114】
得られた生成物は、ICP元素分析によって測定して、21.6のSiO/Alモル比を有していた。
【0115】
粉末XRDおよびSEMにより、得られた生成物を分析した。これは、純粋なSSZ−105分子ふるいとして同定した。SEM画像を図10に示す。この合成されたままの生成物についての特徴的XRDピークのリストを、以下の表7に示す。
【表8】
【0116】
か焼された生成物から収集された粉末XRDパターンの実験結果と様々なERI/LEV連晶成長比を有するDIFFaXシミュレーション粉末XRDパターンとの比較が、図11に示されている。DIFFaX計算により、この生成物は、約10〜20%のERIスタッキングシーケンスおよび80〜90%のLEVスタッキングシーケンスを有する連晶成長物質であることが明らかにされている。
【0117】
例6
SSZ−105のか焼
合成されたままの分子ふるい生成物を、540℃に加熱された空気流の下、マッフル炉内で1℃/分の速度でか焼し、5時間540℃で保持し、冷却し、次いで粉末XRDによって分析した。
【0118】
図3図5図7図9、および図11は、それぞれ、か焼されたSSZ−105分子ふるい生成物1、2、3、4、および5のXRDパターンを示し、これは、当該材料が、有機SDAを除去するためのか焼の後に安定であり続けることを明らかにしている。
【0119】
例7
細孔容積分析
例6で得られたか焼された材料を、10mL(分子ふるい1gあたり)の1Nアンモニア硝酸塩溶液を用いて、90℃にて2時間処理した。この溶液を、冷却し、デカンテーションして、同じプロセスを繰り返した。
【0120】
アンモニア交換分子ふるい生成物(NH−SSZ−105)に対して、BET法により、吸着剤としてNを用いた細孔容積分析を行った。この分子ふるいは、0.25cm/gの微細孔容積を示し、SSZ−105が微細孔特性を有することが分かった。
【0121】
例8
メタノール転化
アンモニア交換SSZ−105を5kpsiでペレット化し、粉砕して、20〜40のメッシュにかけた。0.20gの触媒(アランダムで4:1v/vに希釈)を、分割管炉(スプリットチューブファーネス)中のステンレス鋼ダウンフロー反応器内の中心に配置した。この触媒を400℃にて窒素流下、インサイチューで(in−situで)予熱した。キャリアガスとしての30cm/分の窒素流中で、1.3h−1のWHSV(重量時空間速度)にて、0.324cm/時の速度で純粋なメタノール供給物を反応器内に導入した。
【0122】
反応器から出た生成物流からの反応生成物を、FID検出器を備えたオンラインAgilentガスクロマトグラフィー中に自動的に注入し、インサイチューで分析した。
【0123】
例1に記載された分子ふるいについての結果を、表8に要約する。
【表9】
【0124】
例2に記載された分子ふるいについての結果を、表9に要約する。
【表10】
【0125】
メタノールが主にC〜Cサイズのオレフィンに触媒的に転化される反応における生成物形状選択率の点において、表8に示されたこれら2つのサンプルの各々からの生成物は、微細孔のゼオライトについての生成物と整合する。芳香族生成物は、観察されなかった。
【0126】
本明細書で使用されているとおり、用語「含む」(“comprising”)は、その用語に続いて同定される要素群または工程群を包含することを意味するが、これらの要素群または工程群はいずれも排他的ではなく、ある実施形態は、他の要素群または工程群を包含し得る。
【0127】
他に特に指定しない限り、そこから個々の要素または複数の要素の混合物が選択され得る要素群、材料群または他の構成要素群の上位概念の記述は、列挙された構成要素群およびそれらの混合物の下位概念の全ての可能な組み合わせを包含することを意図する。
【0128】
本願中で引用された全ての文献は、その開示が本文書と不整合ではない限度内において、全体として参照することにより本明細書中に組み込まれる。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
ERI骨格タイプ分子ふるいおよびLEV骨格タイプ分子ふるいを含む少なくとも1種の連晶相を含む、アルミノケイ酸塩分子ふるい組成物。
[2]
SiO/Alモル比が10〜25である、[1]に記載の分子ふるい組成物。
[3]
前記ERI骨格タイプ分子ふるいが、DIFFaX分析による測定で、前記LEV骨格タイプ分子ふるいに対する割合が5〜95%で、前記少なくとも1種の連晶相に存在する、[1]に記載の分子ふるい組成物。
[4]
前記ERI骨格タイプ分子ふるいが、DIFFaX分析による測定で、前記LEV骨格タイプ分子ふるいに対する割合が10〜90%で、前記少なくとも1種の連晶相に存在する、[1]に記載の分子ふるい組成物。
[5]
前記ERI骨格タイプ分子ふるいが、DIFFaX分析による測定で、前記LEV骨格タイプ分子ふるいに対する割合が20〜80%で、前記少なくとも1種の連晶相に存在する、[1]に記載の分子ふるい組成物。
[6]
前記ERI骨格タイプ分子ふるいが、DIFFaX分析による測定で、前記LEV骨格タイプ分子ふるいに対する割合が30〜70%で、前記少なくとも1種の連晶相に存在する、[1]に記載の分子ふるい組成物。
[7]
前記ERI骨格タイプ分子ふるいが、DIFFaX分析による測定で、前記LEV骨格タイプ分子ふるいに対する割合が40〜60%で、前記少なくとも1種の連晶相に存在する、[1]に記載の分子ふるい組成物。
[8]
[1]に記載のアルミノケイ酸塩分子ふるい組成物を調製する方法であって、
(a)以下の成分:
(1)ケイ素酸化物の少なくとも1種の供給源;
(2)アルミニウム酸化物の少なくとも1種の供給源;
(3)カリウム、ならびに、ナトリウムおよびカリウムの組み合わせからなる群から選択される、第1族金属の金属(M)の少なくとも1種の供給源;
(4)ヒドロキシドイオン;
(5)N,N−ジメチルピペリジニウムカチオン(Q);および
(6)水
を含む反応混合物を調製する工程;ならびに、
(b)前記反応混合物を、前記分子ふるい組成物の結晶を形成するのに十分な結晶化条件にかける工程
を含み、
前記反応混合物は、モル比で以下の組成を含む方法。
【表1】

[9]
前記分子ふるい組成物の調製のための前記反応混合物が、モル比で以下の組成を含む、[8]に記載の方法。
【表2】

[10]
前記結晶化条件が、125℃〜200℃の温度を包含する、[8]に記載の方法。
[11]
有機化合物を含む供給原料を転化生成物に転化する方法であって、有機化合物転化条件で、[1]の分子ふるいの活性形態を含む触媒に前記供給原料を接触させる工程を含む方法。
[12]
前記有機化合物が有機酸素化物を含み、そして、前記の有機化合物転化方法が前記有機酸素化物をオレフィンを含む生成物に転化する、[11]に記載の方法。
[13]
前記有機酸素化物が、メタノール、ジメチルエーテル、またはこれらの組み合わせを含み、前記オレフィンが、エチレン、プロピレン、またはこれらの組み合わせを含む、[12]に記載の方法。
[14]
窒素酸化物(NO)を選択的に還元する方法であって、[1]に記載の分子ふるいを含む触媒に窒素酸化物を含む気体流を接触させることを含む、方法。
[15]
前記触媒が、Cr、Mn、Fe、Co、Ce、Ni、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Re、IrおよびPtから選択される遷移金属の1種以上をさらに含む、[14]に記載の方法。
[16]
前記遷移金属が、前記分子ふるいの総重量に基づいて0.1〜10重量%の量で存在する、[15]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11