(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
MEMSジャイロスコープは、駆動モード共振周波数とセンスモード共振周波数を有するように設計されうる。MEMSジャイロスコープの1つ以上のマスは、駆動モード共振周波数で、様々なマスを相互接続するばねの設計と配置に基づいて駆動され、MEMSジャイロスコープの1つ以上のセンス振動子(例えば、センスマス、プルーフマス、コリオリマス又はこれらの任意の適切な組み合わせ)は、ジャイロスコープの回転によって生じるコリオリ力に応じてセンス方向に運動できる。ジャイロスコープの回転の角速度は、固定電極に対するセンスマスの運動電極の運動に基づいて決定されてもよく、この運動は、駆動周波数で測定されうる。
【0010】
一実施形態で、センス振動子は、例えばセンス振動子に取り付けられた追加の補助電極によって、複数の試験周波数(例えば、2つの試験周波数)で振動される。試験周波数は、駆動周波数及びセンスモード共振周波数とは異なる。また、試験周波数は互いに異なる。試験周波数によるセンス振動子の周波数応答は、試験周波数で、センス(運動又は固定)電極又は追加のセンス電極によって測定されうる。
【0011】
試験周波数に対するセンス振動子の周波数応答は、センス振動子の周波数応答がどちらの試験周波数で変化したかを決定するために、ベースライン値、しきい値及び/又は前の値と比較されうる。周波数応答が試験周波数で変化した場合、これは、センスモード共振周波数が変化したこと、利得が変化したこと、又はこれらの両方が変化したことを示しうる。各試験周波数で受けた周波数応答の相対変化の比較に基づいて、様々なタイプの変化を区別できる。更に、この結果を様々なしきい値と比較して、ジャイロスコープが故障したかどうか、又はジャイロスコープの周波数応答の変化を補償できるかどうかを決定できる。
【0012】
図1は、本開示の幾つかの実施形態による典型的な運動処理システム10を示す。
図1に特定の構成要素が示されているが、センサ、処理構成要素、メモリ及び他の回路の任意の適切な組み合わせが、必要に応じて様々な用途及びシステムに利用されうることを理解されよう。本明細書に記載されたような一実施形態では、運動処理システムは、少なくともMEMSセンサ12と、処理回路14やメモリ16などの支援回路を含みうる。幾つかの実施形態では、統合運動処理ユニット(「MPU」)(例えば、3軸のMEMSジャイロスコープ検出、3軸のMEMS加速度計検出、マイクロフォン、圧力センサ、及びコンパスを含む)を提供するために、運動処理システム10内に、1つ以上の追加センサ18(例えば、追加MEMSジャイロスコープ、MEMS加速度計、MEMSマイクロフォン、MEMS圧力センサ及びコンパス)が含まれうる。
【0013】
処理回路14は、運動処理システム10の要件に基づいて必要な処理を提供する1つ以上の構成要素を含みうる。幾つかの実施形態では、処理回路14は、ジャイロスコープ12の動作を制御しかつジャイロスコープ12の処理の一部を実行するために、ジャイロスコープ12などのセンサのチップ内(例えば、MEMSジャイロスコープの基板又はキャップ上、或いはジャイロスコープに対するチップの隣接部分上)に組み込まれうるハードウェア制御ロジックを含みうる。幾つかの実施形態では、ジャイロスコープ12は、(例えば、レジスタの値を修正することによって)ハードウェア制御ロジックの動作の一部(例えば、駆動大きさ、試験周波数、測定信号に適用される利得係数など)を修正することを可能にする1つ以上のレジスタを含みうる。他のセンサ18は、同じように動作できる。幾つかの実施形態では、処理回路14は、例えばメモリ16に記憶されたソフトウェア命令を実行するマイクロプロセッサなどのプロセッサを含みうる。マイクロプロセッサは、ハードウェア制御ロジックと相互作用することによってジャイロスコープ12の動作を制御し、ジャイロスコープ12から受け取った測定信号を処理できる。マイクロプロセッサは、他のセンサと同じように相互作用できる。
【0014】
幾つかの実施形態(
図1に示されていない)では、ジャイロスコープ12又は他のセンサ18は、外部回路と(例えば、シリアルバスを介して、又はセンサ出力及び制御入力への直接接続によって)直接通信してもよく、一実施形態では、処理回路14は、ジャイロスコープ12及び他のセンサ18から受け取ったデータを処理し、通信インタフェース20(例えば、SPI又はI2Cバス、或いは、自動車アプリケーション、コントローラエリアネットワーク(CAN)又はローカルインターコネクトネットワーク(LIN)バス)を介して外部構成要素と通信できる。処理回路14は、ジャイロスコープ12及び他のセンサ18から受け取った信号を適切な測定ユニットに変換し(例えば、通信バス20によって通信する他の計算処理ユニットによって提供される設定に基づいて)、より複雑な処理を実行して向きやオイラー角度などの測定値を決定し、幾つかの実施形態では、特定の活動(例えば、徒歩、走行、制動、滑り、ローリングなど)が行われているかどうかをセンサデータから決定できる。
【0015】
幾つかの実施形態では、特定のタイプの情報は、複数のジャイロスコープ12とセンサ18からのデータに基づいて、センサフュージョンと呼ばれうるプロセスで決定されうる。様々なセンサからの情報を組み合わせることによって、画像安定化、ナビゲーションシステム、自動車制御及び安全性、推測航法、リモート制御及びゲーム装置、活動センサ、三次元カメラ、産業オートメーション、及び多数の他の用途など、様々な用途に役立つ情報を正確に決定できる。
【0016】
MEMSジャイロスコープは、典型的には、軸のまわりの回転(例えば、ピッチ、ロール及び/又はヨー)を測定するために使用される複数の微小機械構成要素を有しうる。微小機械構成要素の1つ以上は、典型的には駆動電極や駆動櫛歯などの静電駆動システムによって、駆動周波数で振動させられる。構成要素(例えば、駆動マスなどの駆動振動子)は、駆動方向に駆動周波数で振動させられる。この駆動周波数は、駆動振動子の駆動モード共振周波数に対応する。駆動振動子から回転を測定できるが、多くのジャイロスコープでは、センス振動子(例えば、コリオリマス、プルーフマス、センスマスなど)が、ばねによって駆動振動子に結合され、このばねは、多くの場合、ばねの設計と配置に基づいて、マスの運動自由度を特定方向に制限する。
【0017】
駆動方向に振動しているマス(例えば、コリオリマス又はセンス振動子のセンスマス)は、軸のまわりのジャイロスコープの回転の結果として力を受けうる。このコリオリの力は、マスに対して、駆動方向とジャイロスコープがまわりを回転している軸の両方に対して垂直の方向(即ち、センス方向)に加えられる。コリオリの力を受けるマス(例えば、センス振動子のセンスマス)が、センス方向に自由に動くとき(例えば、センス振動子の構成に基づいて)、このマスは、センス方向に駆動周波数で振動する。コリオリ力により生じるセンス方向の周波数応答は、検出伝達関数に基づきうる。検出伝達関数は、特定のジャイロスコープの設計に基づいており、ジャイロスコープ設計のセンスモード共振周波数及びQ値と関連付けられうる。センスモード共振周波数とQ値に基づいて、利得曲線は、様々な周波数でジャイロスコープ設計が受ける利得を示しうる。幾つかの実施形態では、駆動周波数と試験周波数は、利得が予測可能でかつ容易に測定されるように十分に高い利得曲線の位置に対応するように選択されうる。
【0018】
幾つかの実施形態では、試験周波数と駆動周波数は、類似した利得範囲内になるように選択され、その結果、各試験周波数と特定のセンスモード共振周波数の駆動周波数との予想利得差は、特定用途の許容範囲内になる。一実施形態では、各試験周波数での予想利得は、試験周波数が駆動周波数における利得に対して有用な測定値を提供するために、駆動周波数における利得の75%以内でよい(例えば、駆動周波数での利得が10の場合、両方の試験周波数は、少なくとも2.5又は17.5未満の利得を有する)。しかしながら、多くの実施形態では、試験周波数は、50%、33%、25%、10%、5%などのより小さい利得差を可能にするように選択されうる。幾つかの実施形態では、試験周波数におけるセンス振動子の駆動が互いに干渉するか駆動周波数に対する検出応答を妨げる可能性などの他の要素が考慮されうる。利得の最適化に加えて、試験周波数が、センスモード共振周波数、駆動周波数及び互いから最小周波数差を少なくとも有するかどうかを考慮したいことがある。幾つかの実施形態では、試験周波数の範囲は、本明細書に記載されたように、駆動周波数におけるセンス測定に影響を及ぼすことなく所望の相対利得特性を提供できる。
【0019】
一実施形態では、各試験周波数は、センスモード共振周波数に近いがセンスモード共振周波数と関連付けられた利得曲線の高利得部分に近づくほど近くない利得曲線上の位置にあるように選択される。駆動モード共振周波数とセンスモード共振周波数は、本開示による任意の適切な方法(例えば、分離モード、一致モードなど)で構成されてもよいが、本明細書に記載された一実施形態では、ジャイロスコープが、異なるセンスモード共振周波数と駆動モード共振周波数を有する分離モードジャイロスコープとして機能できる。
【0020】
本開示により任意の適切な数の試験周波数が利用されうるが、一実施形態では、2つの試験周波数が、例えば周波数シフト、利得変化又はこれらの両方の結果として、様々なエラー及び故障モードの識別を可能できうる。しかしながら、幾つかの実施形態では、1つの試験周波数を使用して周波数応答の変化を識別でき、その機能は、様々なエラー又は故障モードの識別を可能としうる仕方で最適化されうる(例えば、様々な時間における試験周波数を変化させ、結果を比較する)。更に、追加の試験周波数(例えば、3つ以上)を利用して、周波数応答に対する変化についての追加情報を決定できる。
【0021】
一実施形態では、本明細書で述べるように、試験周波数は、駆動周波数からのセンスモード共振周波数から反対側にあってもよい。換言すると、駆動周波数がセンスモード共振周波数より大きい場合は、試験周波数がセンスモード共振周波数より小さくなり、その逆の場合も同様である。しかしながら、幾つかの実施形態では、試験周波数の1つ以上は、センスモード共振周波数の駆動周波数と同じ側にあってもよいことを理解されよう。換言すると、駆動周波数がセンスモード共振周波数より大きい場合は、試験周波数の1つ以上が、やはりセンスモード共振周波数より大きくてもよく、その逆の場合も同様である。いずれの場合も、幾つかの実施形態では、試験周波数は、駆動周波数での検出との干渉を防ぐために必要に応じて、駆動周波数及びセンスモード共振周波数から十分に異なる周波数にあってもよい。一実施形態では、試験周波数を駆動周波数からのセンスモード共振周波数の反対側にすることにより、望ましくない干渉が制限されうる。
【0022】
多くのMEMSジャイロスコープでは、センス振動子の運動(例えば、センスマス)に基づいて大きさと角速度が測定される。この運動は、駆動周波数でのセンスマスの運動電極と固定センス電極との相対距離に基づいて測定される。幾つかの実施形態では、センス電極は、センスマス(例えば、センス電極として)の下の平行基板に取り付けられてもよく、基板に固定されセンスマス(例えば、センス電極又はセンス櫛歯として)の平面内にあってもよい。センスマスとその反対側のセンス電極は、実質的にキャパシタを構成し、その電圧は、センスマスとセンス電極の間の距離によって変化する。電圧変化の大きさは、コリオリ力の大きさによって変化し、その大きさと角速度を決定するために使用される(例えば、処理回路14の処理によって)。
【0023】
ジャイロスコープの実際の周波数応答は、ジャイロスコープの設計周波数応答と必ずしも一致しないことがある。製造工程における欠陥は、ジャイロスコープの周波数応答(例えば、モード共振周波数、Q値及び/又は利得曲線)の変化をもたらしうる。場合によって、ジャイロスコープは、動作中に時間の経過と共にある程度の摩耗を受けるか、1つ以上の構成要素(例えば、ばね)が破損することがある。同様に、この摩耗又は破損は、ジャイロスコープのセンスモード共振周波数応答を変化させうる。
【0024】
ジャイロスコープの周波数応答は、様々な形で設計周波数応答と異なりうる。場合によって、周波数応答のセンスモード共振周波数は、周波数応答の中心周波数が異なるようにシフトしうる。他の場合、センスモード共振周波数は同じままでもよいが、周波数応答と関連した利得は変化してもよい。更に他の場合、周波数応答のQ値が変化してもよく、その結果、利得曲線の形(例えば、傾き)が修正される。更に他の場合、周波数応答に対するこれらの変化は同時に起こりうる。これらの変化又はその組み合わせはどれも、測定されたマグニチュードと角速度の精度を変化させうる。
【0025】
本明細書に述べるように、一実施形態では、ジャイロスコープのセンス振動子(例えば、センスマス)が、駆動及びセンスモード共振周波数の両方と異なる1つ以上の試験周波数で駆動されうる。そのような試験周波数でのセンス振動子の応答が測定され、そのような測定値に基づいて、処理回路(例えば、処理回路14)は、周波数応答が不適当か変化したかを決定できる。幾つかの実施形態では、この決定は、試験周波数における応答の大きさの測定と比較に基づいて行われる。センスモード共振周波数に関する問題が識別された場合は、更に、修正されたセンスモード共振周波数応答を補償できるかどうか、又はジャイロスコープを故障と識別すべきかどうかが決定されうる。幾つかの実施形態では、駆動力の大きさ、補償センス力(例えば、センス電極からの)、スケーリングファクタ(例えば、センス電極からの測定値の)、増幅器利得(例えば、ハードウェア制御ロジックへの入力に基づき、センス電極の出力に適用される)、センス電極ギャップ、他の適切な要素、又はこれらの任意の組み合わせなどの操作要素が、試験周波数における測定値に基づいてジャイロスコープの動作を補償するために修正されうる。
【0026】
図2は、本開示により利用される典型的なジャイロスコープ設計を示す。特定のジャイロスコープ設計は、本明細書に例示のために描かれ記述されるが、本開示に記述されたシステム及び方法が、例えば、ジャイロスコープのセンス振動子を1つ以上の試験周波数で駆動でき、それらの試験周波数におけるセンス応答を測定できる限り、様々なジャイロスコープ設計と共に利用されうることを理解されよう。したがって、本明細書に示された考察が、ジャイロスコープ設計に一般的であり、特定の設計が単に説明のために提供されることを理解されよう。
【0027】
典型的なジャイロスコープ100は、基板101に平行なX−Y平面内に配置される。Z方向は、X−Y平面に垂直であり、基板101は、Z方向のジャイロスコープ100の下にある。ジャイロスコープ100は、少なくとも1つのアンカー点106aによって、ばね108a及び108bによって基板101に柔軟に結合されたガイドアーム104a及び104bを有する。2つのガイドアーム104aと104bが、ばね103a及び103bを介してピッチセンスマス102に柔軟に結合される。一実施形態では、ピッチセンスマス102は、駆動振動子とセンス振動子の両方として機能できる。ピッチセンスマス102は、ばね120a、120b、120c及び120dを介してヨーセンスマス112などの別のセンス振動子に次には結合される。
【0028】
ピッチセンスマス102、ガイドアーム104a及104b、アンカー点106a、及びばね103a、103b、108a及び108bが、平面4棒リンク機構を構成する。各ばね103a、103b、108a及び108bは、軸のまわりでZ方向に平面内で従順であり、それにより、各ガイドアーム104a及び104bは、平面内で回転でき、同時に、センスマス102が、例えばY軸のまわりのピッチ回転によって生じるZ方向のコリオリ力に応じて、X方向に並進する。
【0029】
ばね108a及び108bは、ピッチセンス軸のまわりにX方向に従順であり、したがって、ガイドアーム104a及び104bは、平面外で回転できる。ばね103aと103bは、Z方向に堅く、それにより、ガイドアーム104a及び104bの平面外回転によって、ピッチセンスマス102が、ガイドアーム104a及び104bによって平面外で動く。
【0030】
櫛歯駆動部111a及び111bなどの静電アクチュエータが、アンカー109a及び109b並びにピッチセンスマス102に接続される。櫛歯駆動部111a及び111bは集合的に、ピッチセンスマス102をX軸に沿ってX方向に駆動する。この実施形態では、2つの静電アクチュエータが利用される。しかしながら、当業者は、1つの静電アクチュエータを提供でき、1つの静電アクチュエータの使用が、本発明の趣旨及び範囲内にあり、追加の静電アクチュエータが、ピッチセンスマス102に関連した様々な位置に配置されうることを容易に理解する。更に、
図2の典型的実施形態に示されていないが、一実施形態では、1つ以上の駆動マスが、ピッチセンスマス102に結合されてもよく、その結果、駆動マスが、櫛歯駆動部111a及び111bによって駆動され、駆動マスとピッチセンスマス102の間に結合されX方向に剛性である追加ばね(
図2に示されていない)によって、駆動運動がピッチセンスマス102に与えられる。
【0031】
更に、静電アクチュエータは、本明細書全体にわたって、ガイドマスシステムを駆動するために使用されるアクチュエータとして述べられるが、当業者は、この機能のために様々なアクチュエータを利用でき、使用が本発明の趣旨及び範囲内にあることを理解する。例えば、アクチュエータは、圧電式、温度式又は電磁気式などでよい。
【0032】
一実施形態では、ピッチセンスマス102は、駆動振動子の駆動モード共振周波数で、アクチュエータ109a及び109bに結合された1つ以上の駆動回路によって駆動されうる。本明細書に記述されたような一実施形態では、駆動周波数は、十分な利得を維持しながらジャイロスコープ100のセンスモード共振周波数に対して適切な周波数差にある周波数でよい。典型的な実施形態では、周波数差は、センスモード共振周波数の少なくとも3%でよく、幾つかの実施形態では、センスモード共振周波数の7〜15%の範囲内でよい。他の最小差又は差の範囲が、様々なジャイロスコープ設計・用途に適用されうることを理解されよう。一実施形態では、駆動周波数とセンスモード共振周波数との差の選択は、利得と解像度の所望の範囲に基づいてもよく、駆動周波数における利得は、駆動周波数がセンスモード共振周波数に近いほど上昇し、解像度は、駆動周波数がセンスモード共振周波数から遠いほど上昇する。
【0033】
ジャイロスコープ100が駆動されるとき、ガイドアーム104a及び104bは、平面内で回転し、ピッチセンスマス102は平面内でX方向に並進する。基板の平面内にありかつX方向に直角なY方向のピッチ入力軸のまわりの角速度は、コリオリ力をZ方向のピッチセンスマス102に作用させる。コリオリ力は、ジャイロスコープピッチセンスマス102並びにガイドアーム104a及び104bをピッチセンス軸のまわりに平面外で回転させる。ジャイロスコープ100の回転の振幅は、ピッチ入力軸のまわりの角速度に比例する。ピッチ変換器110は、センスマスの運動を検出でき、容量式、圧電式、光学トランスデューサなどの任意の適切なピッチ変換器110でよい。一実施形態では、ピッチセンスマス102の下のセンス電極110は、ピッチセンスマス102(例えば、運動電極を含むか運動電極として働く)とセンス電極110との距離の変化による静電容量の変化に基づいて、ピッチセンス軸のまわりのジャイロスコープ100の回転を検出するために使用される。静電容量のこの変化は、ピッチ入力軸のまわりの角速度の大きさを提供する。
【0034】
ジャイロスコープ100は、また、Z軸のまわりの回転に対応するヨーセンスマス112などのヨーセンス振動子を含む。一実施形態では、ヨーセンスマス112は、ばね120a、120b、120c及び120dによってピッチセンスマス102に結合されうる。
図2に4つのばね120a〜120dが示されているが、本開示によれば、任意の適切な数のばねが、駆動力をヨーセンスマス112に伝達できることが理解されよう。一実施形態では、ばね120a〜120dが、駆動方向(即ち、X方向)に剛性でセンス方向(即ち、Y方向)に柔軟になるように構成されうる。更に、幾つかの実施形態(
図2に示されていない)では、ヨー振動子は、ピッチセンスマス102から駆動力を受け取るように結合されたコリオリマスと、ヨー回転によりコリオリマスに与えられコリオリ力の方向(例えば、Y方向)に剛性である追加ばねによってコリオリマスに接続された追加プルーフマスなどの、複数のマスとして実現されうることを理解されよう。
【0035】
本明細書に記述されたように、駆動櫛歯111a及び111bは、ピッチセンスマス102をX方向に振動させる。このX方向振動は、X方向に剛性のばね120a〜120dによってヨーセンスマス112に伝達される。ジャイロスコープ100が、Z軸のまわりに回転されたとき、ヨーセンスマス112上に、駆動周波数のY軸振動を引き起こすY軸コリオリ力が生じる。ばね120a〜120dがY方向に柔軟なので、ヨーセンスマス112は、コリオリ力及びしたがって角速度に比例する大きさでY方向に振動する。ヨー変換器114は、センスマスの運動を検出でき、容量式、圧電式、光学トランスデューサなどの任意の適切なヨー変換器110でよい。一実施形態では、センス電極114は、ヨーセンスマス112(例えば、移動電極を含むか移動電極として機能する)とセンス電極114の間の距離の変化による静電容量の変化に基づいて、ヨーセンス軸のまわりのジャイロスコープ100の回転を検出するために、ヨーセンスマス112(例えば、基板にしっかり固定され、アンカー115を介してセンス回路に電気的に接続された)と共に平面内にある平板電極(幾つかの実施形態では、櫛歯電極などの様々な電極がセンス電極114に利用されうるが)でよい。幾つかの実施形態(
図2には示されていない)では、センス電極114は、ヨーセンスマス112の内部キャビティ内にあってもよい。しかしながら、センス電極114は、センス電極114とヨーセンスマス112の間の相対運動による静電容量の変化が、ヨー入力軸のまわりの角速度の大きさを提供するように、実現され構成される。
【0036】
一実施形態では、ヨーセンスマス112は、1つ以上の試験信号によって駆動されるように構成されうる。
図2の典型的実施形態にはピッチセンスマス102が描かれていないが、試験信号がピッチセンスマス102上にも同様に加えられることを理解するであろう(例えば、ピッチセンスマス102の上又は下にある補助電極に基づいて)。1つ以上の試験信号は、ヨーセンスマス112を1つ以上の試験周波数で振動させるために、ヨーセンスマス112に加えられてもよい。任意の適切な数の試験信号が、任意の適切な周波数でヨーセンスマス112に加えられうるが、一実施形態では、2つの試験信号が、センスモード共振周波数の駆動周波数と反対側の周波数でセンスマスに加えられうる。試験周波数は、センスモード共振周波数に対して任意の適切な周波数にあってもよいが、一実施形態では、両方の試験周波数が、センスモード共振周波数より少なくとも2パーセント高いか低くてもよく、幾つかの実施形態では、センスモード共振周波数より4パーセント高いか低くてもよい。試験周波数は、互いに対して任意の適切な周波数にあってもよいが、一実施形態では、試験周波数の間の周波数差は、センスモード共振周波数の1〜10パーセントでよく、幾つかの実施形態では、センスモード共振周波数の2〜6パーセントでよい。本明細書に記載されたように、テストモード周波数の適切な周波数は、駆動周波数における利得に対して適切な利得や、駆動周波数におけるセンスマスの応答に対する不干渉などの要素に基づいて選択されてもよく、したがって、特定のジャイロスコープ設計及びその予想周波数応答に基づいて様々な値を有しうる。
【0037】
幾つかの実施形態(
図2に示されていない)では、試験信号は、センス電極114によってヨーセンスマス112に与えられうる。センス電極114は、試験信号の提供、試験応答の測定及びコリオリ力の測定を能動的に切り替えるように機能的に多重化されうる。コリオリ力と試験応答を受け取り処理するように設計されたセンス回路に加えて、センス電極は、また、ヨーセンスマス112に試験信号を加えるために必要な電圧を提供する駆動回路を含みうる。一実施形態では、補助アクチュエータ132a〜132dが、ヨーセンスマス112に試験信号を加えうる。補助アクチュエータ132a〜132dは、試験信号をヨーセンスマス112に加える任意の適切な方法(例えば、圧電、温度、電磁など)を利用でき、一実施形態では、補助アクチュエータ132a〜132dは、平面内でかつヨーセンスマス112の周囲にある静電気櫛歯アクチュエータでよい。他の実施形態では、補助アクチュエータ132a〜132dは、ヨーセンスマス112の内部キャビティ内などの他の適切な場所に配置されうる。
【0038】
一実施形態では、櫛歯補助アクチュエータ132a〜132dは、それぞれのアンカー130a〜130dを介して、基板にしっかり固定され、駆動及び/又はセンス回路に接続されうる。4つのアクチュエータは、
図2では2つの試験信号を提供するように描かれているが、様々な実施形態では、任意の適切な数の試験信号を提供するために、任意の適切な数のアクチュエータが利用されうる。例えば、試験信号の数より少ない数のアクチュエータを提供でき、試験信号は多重方式で提供されうる。幾つかの実施形態では、センス電極114における試験応答を検出せずに、櫛歯電極132a〜132dの1つ以上が、専用又は多重式(例えば、試験信号の作動及び/又は他の試験応答の測定と多重化される)に、試験応答のセンス櫛歯として機能できる。
【0039】
櫛歯補助アクチュエータ132a〜132dによってヨーセンスマス112に加えられる力は、Y軸に沿って印加され検出され、これは、Y軸方向のばね120a〜120dの柔軟性により可能にされる。本明細書に記載されているように、ジャイロスコープの1つ以上の構成要素(駆動電極111a若しくは111b、又はばね103a、103b、108a、108b、120a、120b、120c若しくは120dのいずれか)は、時間の経過と共に摩耗又は破損することがあり、ヨーセンスマス112の予想周波数応答を変化させうる。本明細書に記載されているように、補助アクチュエータ132a〜132d(又は、幾つかの実施形態では、センス電極114)は、ヨーセンスマス112を試験周波数で駆動する試験信号を提供でき、センス電極114又は補助アクチュエータ132a〜132dによって各試験周波数の試験応答が測定されうる。試験応答は、ジャイロスコープ100の回路と、幾つかの実施形態では処理回路12とによって処理されうる。試験応答の分析に基づいて、ジャイロスコープ100が故障したかどうか、又はジャイロスコープ挙動の変化を補償できるかどうかが決定されうる。補償が可能な場合、櫛歯電極111a及び111bによって提供される駆動信号の大きさ、アナログ検出回路(例えば、ジャイロスコープ114のセンス回路の1つ以上の増幅器)の動作、又は1つ以上のデジタルスケーリングファクタ(例えば、ジャイロスコープ100又は処理回路14における)などの、ジャイロスコープ100の1つ以上の操作パラメータが修正されうる。
【0040】
幾つかの実施形態では、ジャイロスコープ100などのジャイロスコープが、ジャイロスコープの操作のパラメータを設定するために、様々な時間(例えば、生産中)に試験されうる。試験信号の操作パラメータ(例えば、周波数、大きさなど)は、そのような試験の結果として修正されうる。製造試験の一実施形態では、周波数と大きさは、測定されたセンスモード共振周波数又は利得などの要素と、他のパラメータ(例えば、駆動信号の大きさ)の設定に基づいて修正されうる。
【0041】
図3〜
図5は、本開示の幾つかの実施形態によるジャイロスコープの典型的センス振動子の典型的周波数応答を示す。24kHzの設計センスモード共振周波数と600のQ値を有する典型的ジャイロスコープの周波数応答が示されているが、他のジャイロスコープ設計は、様々なセンスモード共振周波数及び周波数応答を有するが、ジャイロスコープ動作の故障又は変化の結果として同じように(例えば、センスモード共振周波数及び利得の変化)応答しうることを理解されよう。
【0042】
図3は、本開示の幾つかの実施形態によるジャイロスコープの典型的センス振動子の典型的周波数応答を示す。
図3に表された特性を有する典型的センス振動子では、典型的センスモード共振周波数が24kHzであり、典型的Q値が600であるが、本開示が、本開示による異なるセンスモード共振周波数、Q値及び利得を有する他のジャイロスコープ設計に適用されうることを理解されよう。
図3に表されたグラフの横座標は、キロヘルツの単位であり、縦座標は、標準化された利得値である。
【0043】
図3に表されたように、ジャイロスコープ設計のセンスモード共振周波数F
SMは、24kHzでよい。このセンスモード共振周波数又はこの付近(例えば、
図3の特定のセンス振動子の場合は、プラス又はマイナス1kHz〜1.5kHzの範囲内)で、利得は、この周波数範囲で周波数応答の高い勾配に基づいて、比較的不安定か測定困難なことがある。他の範囲が他のジャイロスコープ設計に適用されうることを理解されよう。従って、駆動及び試験周波数を周波数応答上の異なる位置にすることが望ましいことがある。駆動周波数F
Dは、本明細書に記載されたような任意の適切な周波数にあってもよいが、一実施形態では、駆動周波数は27kHzでよく、例えば、センスモード共振周波数より3kHz高いか、センスモード共振周波数より12.5%高くてもよい。一実施形態では、駆動周波数F
Dは、ジャイロスコープの駆動モード共振周波数に対応できる。駆動周波数は、ジャイロスコープを駆動しコリオリ力を検出するために利用されることがあり、駆動力の大きさ、スケーリングファクタ(例えば、デジタルスケーリング)及び利得値(例えば、増幅器の)などの駆動周波数の操作パラメータは、駆動周波数におけるジャイロスコープの利得が、
図3に表されたものであるという仮定に基づいてもよい(例えば、
図3に表された正規化目盛で約5)。
【0044】
本明細書に記載されているように、1つ以上(例えば2つ)の試験信号が、ジャイロスコープ(例えば、ジャイロスコープのセンス振動子)に適用され、試験信号に対するセンス振動子の応答が測定されうる。試験周波数F
T1,T2は、本明細書に記載されているようにセンスモード共振周波数F
SMに対して任意の適切な周波数にあってもよいが、一実施形態では、最も近い試験周波数F
T1は、22kHzでよく、例えば、センスモード共振周波数F
SMより2kHz低いか、センスモード共振周波数F
SMより8.2%低くてもよい。このようにして、試験周波数F
T1,T2は、利得を一貫して測定するために周波数応答曲線上で、かつ駆動周波数との干渉を回避するためにセンスモード共振周波数の駆動周波数と反対側の適切な位置でありうる。
【0045】
一実施形態では、2つの試験信号は、2つの異なる周波数でセンス振動子(例えば、ジャイロスコープのセンスマス)に印加されうる。試験信号の周波数は、本明細書に記載されているような任意の適切な仕方で選択されうるが、一実施形態では、試験信号周波数F
T1及びF
T2は、正常条件下で、駆動周波数における利得の所望範囲内にとどまりながら利得曲線上の実質的に異なる位置になるように、互い対して適切な周波数離隔距離にあってもよい。
図3に表されているように、典型的実施形態では、第1の試験信号周波数F
T1は、21.5kHzでよく、約6の正規化利得と関連付けられてもよく、一方、第2の試験信号周波数F
T2は、22kHzでよく、約8の正規化利得と関連付けられてもよい。
図3の典型的実施形態では、この結果、第1の試験周波数F
T1と駆動周波数F
Dの利得差が1になり、第2の試験周波数F
T2と駆動周波数F
Dの利得差が3になりうる。しかしながら、
図3に提供された試験周波数値は代表例に過ぎず、本明細書に記載されたような任意の適切な仕方で駆動周波数に対して利得を最適化するために、他の試験周波数が選択されうることを理解されよう。
【0046】
図4と
図5に示されたように、ジャイロスコープの周波数応答の様々な変化によって、2つの試験周波数での利得の様々な相対変化が生じうる。一実施形態では、試験周波数F
T1とF
T2のそれぞれにおける試験信号に対するセンスマスの測定応答(例えば、1つ以上のセンス電極によって検出された電圧の変化)のベースラインの大きさが決定されてもよく、この測定された大きさは、
図3に表された正規化利得に比例する。
【0047】
図4は、本開示の幾つかの実施形態による典型的な利得変化を示す。
図4の縦座標と横座標は同じ単位(キロヘルツで表した周波数と正規化利得)であり、駆動周波数F
D、センスモード共振周波数F
SM、第1の試験周波数F
T1及び第2の試験周波数F
T2は全て、
図3に示されたものと同じ周波数にある。
図4の実線は、
図3に表されたようなジャイロスコープの元の周波数応答を示す。
図4の点線は、例えばある期間にわたるジャイロスコープの1つ以上の構成要素の摩耗により、変化した周波数応答を示す。
【0048】
図4で分かるように、駆動周波数の利得は、ジャイロスコープの周波数応答の変化の結果として変更されうる(例えば、高くされうる)。幾つかの実施形態では、そのような利得変化はきわめて大きいので、角速度の測定を失敗させうる。例えば、利得が大きく上昇するとセンス回路が飽和することがあり、その結果、特定の所望範囲の角速度を検出できなくなる。同様に、利得が大きく低下するとセンス回路の分解能が不十分になることがあり、その結果、角速度の所望の変化を正確に検出できなくなる。幾つかの実施形態では、利得が変化した結果、ジャイロスコープが角速度を測定できなくならない場合でも、その利得変化は、例えば検出された電圧変化(利得に比例する)と角速度値の予想相関関係に基づいて、角速度用に受け取った値を修正できる。利得が上昇又は低下するとしきい値との比較に誤りが生じることがあり、しきい値がジャイロスコープの周波数応答の利得に正確に対応しなくなる。
【0049】
駆動周波数における検出電圧が外力によって変化するので(例えば、ジャイロスコープの回転による角速度が、駆動周波数でセンス方向にコリオリ力を発生させる)、駆動周波数での測定値に基づいて利得の変化が生じたかどうか決定できないことがある。駆動周波数での検出電圧の大きく厳しい変化がない限り(例えば、ジャイロスコープの破局的故障により)、利得が正常動作条件下のジャイロスコープの回転の正常変動と区別されるように変化する可能性は低い。
【0050】
試験信号は、ジャイロスコープの周波数応答の変化を識別するために多くの仕方でジャイロスコープ(例えばジャイロスコープのセンス振動子)に適用されうる。一実施形態では、各試験信号は一定の大きさを有することがあり、その結果、ジャイロスコープの周波数応答の変化により利得の大きさの変化が分かりうる。幾つかの実施形態では、各試験周波数は、ある期間にわたって比較されうる複数の一定の大きさで提供されうる。いずれの場合も、試験信号を一定の大きさで提供することによって、利得の変化に基づいて周波数応答の変化が正確に決定されうる(例えば、試験周波数におけるセンス電極での測定電圧変化に基づいて)。
【0051】
図4の実施形態では、各試験周波数で類似の利得変化が検出されうる。これは、利得が変化したが、ジャイロスコープのセンスモード共振周波数が変化しなかったことを示しうる。この利得変化は、1つ以上のしきい値と比較されて、周波数応答の変化を本明細書に記載されたように補償しなければならないか、又はジャイロスコープが故障しておりもう使用すべきでないかどうかが決定されうる。
【0052】
図5は、本開示の幾つかの実施形態による典型的なセンスモード共振周波数変化を示す。
図5の縦座標と横座標は同じ単位(キロヘルツで表した周波数と正規化利得)であり、駆動周波数F
D、第1の試験周波数F
T1及び第2の試験周波数F
T2は全て、
図3に示されたものと同じ周波数にある。
図5で、センスモード共振周波数が、約24kHz(F
SM−A)から24.5kHz(F
SM−Β)に変化した。
図5の実線は、
図3に表されたようなジャイロスコープの元の周波数応答を示す。
図5の点線は、例えばある期間にわたるジャイロスコープの1つ以上の構成要素の摩耗により、変化した周波数応答を示す。
【0053】
図5で分かるように、駆動周波数の利得は、ジャイロスコープの周波数応答の変化の結果として変更されうる(例えば、高められうる)。
図4に関して述べたように、そのような利得変化は、きわめて大きいので、角速度の測定失敗を引き起こし、角速度のために受け取った値を修正し、しきい値を実質的に変化させることがある。更に、駆動周波数における測定値に基づいて周波数応答が変化したかどうかを決定できないことがある。また、利得の変化(例えば、
図4に表されたような)とセンスモード共振周波数の変化(例えば、
図5に表されたような)を識別できないことがある。例えば、測定された駆動周波数F
Dでの周波数応答の変化は、
図4と
図5の両方でほぼ同じである。
【0054】
図4と同じように、試験信号は、ジャイロスコープの周波数応答の変化を識別するためにジャイロスコープに適用されうる。
図5の実施形態では、試験周波数のそれぞれで異なる利得変化が検出されうる。例えば、第1の試験周波数F
T1における利得変化は、第2の試験周波数F
T2における利得変化より小さいことがある。2つの試験周波数で検出された利得変化は、ほとんど比例しないので(例えば、ある利得変化が他の利得変化をしきい値以上に超える)、これは、ジャイロスコープのセンスモード共振周波数が変化したことを示しうる。更に、利得変化の符号(正又は負)と、2つの試験周波数における利得変化の相対差を使用して、センスモード共振周波数がどれだけシフトしたかを近似的に決定できる。この推定された周波数シフトは、1つ以上のしきい値と比較されて、本明細書に記載されたような周波数応答の変化を補償しなければならないかどうか、又はジャイロスコープが故障しておりもう使用すべきでないかどうかが決定されうる。
【0055】
図6〜
図8は、本開示の幾つかの実施形態による周波数応答試験、故障検出及び補償の典型的なステップを示す。
図6〜
図8は、本開示の文脈(例えば、運動処理システム10、ジャイロスコープ100、及び
図3〜
図5に表されたような周波数応答を有するジャイロスコープ)で述べられているが、
図6〜
図8に示された方法及びステップは、任意の適切なジャイロスコープ設計に適用されうることは理解される。
図6〜
図8に特定の順序及び流れのステップが示されているが、幾つかの実施形態では、ステップの1つ以上が、修正、移動、除去又は追加されてもよく、
図6〜
図8に表された流れが修正されてもよいことを理解されよう。
【0056】
図6は、本開示の幾つかの実施形態による周波数応答試験の典型的なステップを表す。
【0057】
ステップ602で、本明細書に記載されたような周波数応答の試験に使用するために試験周波数が取得されうる。典型的実施形態では、ジャイロスコープの設計センスモード共振周波数は、約24kHzなどの周波数でよい。任意の適切な数の試験周波数が提供されうるが、典型的実施形態では、22kHz及び21.5kHzの2つの試験周波数が使用されうる。幾つかの実施形態では、試験周波数と振幅は、例えば、処理回路内の修正可能値又はジャイロスコープチップのレジスタ設定に基づいて修正されうる。次に、処理は、ステップ604に進みうる。
【0058】
ステップ604で、センス振動子のベースライン応答が設定されたかどうか決定されうる。幾つかの実施形態では、ベースライン応答は、製造中の最終試験中、動作中に定期的、ジャイロスコープが電力を受け取るたび、又は他の適切な時間などの様々な時間に設定されうる。このベースラインは、将来の試験結果が測定される利得を表わしうる。適切なベースラインが設定されていない場合、処理はステップ606に進んでもよい。ベースラインが設定された場合、処理はステップ608に進んでもよい。
【0059】
ステップ606で、各試験周波数におけるジャイロスコープのベースラインが決定されうる。センス振動子(例えば、センス振動子の任意のセンスマス)は、所定の大きさ(又は、幾つかの実施形態では、複数の所定の大きさ)を有する試験信号によって、試験周波数(例えば、21.5kHz及び22kHz)で駆動されうる。利得は、測定され(例えば、センスマスのセンス電極による測定に基づいて)、(例えば、ジャイロスコープチップ又は処理回路の)メモリに記憶されうる。次に、処理は、ステップ608に進みうる。
【0060】
ステップ608で、ジャイロスコープは、例えば、駆動周波数(例えば、27kHz)の駆動信号を提供してジャイロスコープの1つ以上のマス(例えば、駆動マス、コリオリマス、及び/又はセンスマス)を駆動することによって、正常に動作できる。ジャイロスコープが、軸のまわりに回転するとき、駆動方向と回転軸に垂直なコリオリ力が、駆動周波数で検出されうる(例えば、センスマスに隣接した(例えば、センスマスのキャビティの隣又はその内側の)センス電極によって)。センス回路は、外部回路及び装置(例えば、運動処理システムの処理回路)に提供される信号を処理でき、その結果が、しきい値と比較され、他のデータと融合され、及び本明細書に記載されたような様々な用途に他の方法で利用されうる。次に、処理は、ステップ610に進みうる。
【0061】
ステップ610〜616で、試験信号が、センス振動子に印加され(例えば、ジャイロスコープのセンスマスを駆動するために補助アクチュエータの駆動櫛歯によって)、測定される(例えば、1つ以上の共有センス電極又は専用センス電極によって)。これらのステップは、連続に行われるように示されているが、ジャイロスコープが、試験周波数で同時に駆動されてもよく任意の適切なシーケンス又は順序で駆動されてもよいことを理解されよう。
【0062】
ステップ610で、センス振動子(例えば、ジャイロスコープのセンスマス)は、補助駆動回路及び補助アクチュエータ(例えば、センスマス及びアンカーにそれぞれ取り付けられた駆動櫛歯)によって第1の試験周波数(例えば、21.5kHz)で駆動されうる。これにより、センス振動子の構成要素(例えば、センスマス)が第1の試験周波数で振動することがあり、この振動の程度は、ジャイロスコープの利得によって変化する。処理は、次に、ステップ612に進みうる。
【0063】
ステップ612で、センス振動子(例えば、ジャイロスコープのセンスマス)の応答が、センス電極(例えば、平面内にありかつセンスマスに隣接したセンス電極板)によって第1の試験周波数(例えば、21.5kHz)で測定されうる。結果信号は回路を検出するために提供されるかもしれない。それは信号を処理し、第1の周波数のベースライン信号と同じ方法において変倍された大きさの値を提供するかもしれない。処理は、次に、ステップ614に進みうる。
【0064】
ステップ614で、センス振動子(例えば、ジャイロスコープのセンスマス)は、駆動回路及び補助アクチュエータ(例えば、センスマス及びアンカーにそれぞれ取り付けられた駆動櫛歯)によって、第2の試験周波数(例えば、22kHz)で駆動されうる。これにより、構成要素(例えば、センスマス)が第2の試験周波数で振動でき、この振動の程度は、ジャイロスコープの利得によって変化する。処理は、次に、ステップ616に進みうる。
【0065】
ステップ616で、センス振動子(例えば、ジャイロスコープのセンスマス)の応答が、センス電極(例えば、平面内にありかつセンスマスに隣接した(センスマスのキャビティの隣又は内側の)センス電極板)によって第2の試験周波数(例えば、22kHz)で測定されうる。得られた信号は、センス回路に提供されてもよく、センス回路は、その信号を処理し、第1の周波数のベースライン信号と同じように変倍された大きさの値を提供できる。次に、処理は、
図7のステップに進みうる。
【0066】
図7は、本開示の幾つかの実施形態による周波数応答自己試験の典型的ステップを表す。自己試験は、任意の適切な方法で実行されうるが、一実施形態では、試験周波数からの結果を比較して、利得変化又は周波数シフト試験を行うかどうかを決定できる。各試験は、適用されうる様々なしきい値を有してもよい。
図7には試験が特定の順序で行われるように表されているが、自己試験が同時又は任意の適切な順序で行われうることを理解されよう。
【0067】
ステップ702で、第1の試験周波数(例えば、21.5kHz)におけるセンス振動子の駆動に対して測定された応答が、第1の試験周波数のベースラインと比較されうる。一実施形態では、測定結果とベースライン結果との差の大きさの変化率及び絶対値などの値が決定されうる。処理は、ステップ704に進みうる。
【0068】
ステップ704で、第2の試験周波数(例えば、22
kHz)におけるセンス振動子の駆動に対して測定された応答が、第2の試験周波数のベースラインと比較されうる。一実施形態では、測定結果とベースライン結果の差の大きさの変化率と絶対値などの値が決定されうる。処理は、ステップ706に進みうる。
【0069】
ステップ706で、第1と第2の試験周波数での変化の比率が決定されうる。一実施形態で、比率は、各試験周波数の変化の比率又は各試験周波数での絶対値の変化の比率に基づきうる。比率がステップ706で計算された後、処理は、ステップ708に進みうる。
【0070】
ステップ708で、各試験周波数における利得変化が、1つ以上のしきい値と比較されうる。一実施形態で、どちらかの試験周波数の利得変化が単一しきい値を超える場合、自己試験が失敗することがあり、処理が、ステップ710に進みうる。別の実施形態では、両方の利得変化が、自己試験が不合格になるしきい値を超えなければならない。更に別の実施形態では、両方の利得変化が、第1の(例えば、下側)しきい値を超えなければならず、利得変化のうちの1つが、自己試験が不合格になる第2の(例えば、もっと高い)しきい値を超えなければならない。そのような実施形態には、比率と絶対値利得変化のどちらか又は両方が使用され、更に他の実施形態では、しきい値及び値比較の他の組み合わせが利用されうる。ステップ708で自己試験が不合格の場合、処理は、ステップ710に進みうる。ステップ708で自己試験が不合格でなかった場合、処理は、ステップ712に進みうる。
【0071】
ステップ710で、ジャイロスコープは、利得変化試験に失敗する可能性がある。幾つかの実施形態では、2つの試験周波数(例えば、ステップ706で決定されたような)の利得変化の比率を分析して周波数シフトが生じたかどうかを決定できる。一実施形態では、利得変化の比率が高いほど、周波数シフトが生じた可能性が高いことを示すことがある。従って、比率は、周波数シフトが生じたかどうか決定するためにしきい値と比較されうる。自己試験の結果が報告され(例えば、処理回路又は他の装置に)、故障したジャイロスコープの動作を停止するなどの修正動作が行われうる。多軸ジャイロスコープの典型的実施形態では、まだ正常に機能している軸が動作し続けることができ、幾つかの実施形態では、センサフュージョン(例えば、複数のジャイロスコープ及び加速度計からの)が、見えない軸の値を推定する試みで使用されうる。次に、
図7のステップの処理は、ステップ710から終了できる。
【0072】
ステップ712で、各試験周波数における利得変化の比率が、1つ以上のしきい値と比較されうる。一実施形態では、比率をしきい値と比較する前に、最初に、試験周波数のうちの1つと関連付けられた利得変化がしきい値(例えば、周波数シフト利得しきい値)を超えるかどうかを決定しなければならない。どちらの利得変化もそのようなしきい値を超えない場合、大きな周波数シフトがあった可能性は低い。次に、ステップ706で決定された利得変化の比率が分析されてもよい(例えば、しきい値と比較された)。
図5に表されたように、ジャイロスコープのセンスモード共振周波数の変化によって、2つの試験周波数に利得変化の変動が生じる可能性が高い。比率をしきい値と比較することによって、周波数シフトがジャイロスコープが故障したことを示すしきい値を超えたかどうかが決定されうる。ステップ712で自己試験が不合格だった場合、処理は、ステップ714に進みうる。ステップ712で自己試験が不合格でなかった場合、処理は、ステップ716に進みうる。
【0073】
ステップ714で、ジャイロスコープは、利得遷移試験に不合格だった可能性がある。自己試験の結果が報告され(例えば、処理回路又は他の装置に)、故障したジャイロスコープの動作を停止するなどの修正動作が行われうる。多軸ジャイロスコープの典型的実施形態では、まだ正常に機能している軸が動作し続けることができ、幾つかの実施形態では、センサフュージョン(例えば、複数のジャイロスコープ及び加速度計からの)が、見失った軸の値を推定する試みで使用されうる。次に、
図7のステップの処理は終了できる。
【0074】
ステップ716で、ジャイロスコープは、利得変化と周波数シフト試験の両方に合格した可能性がある。自己試験の結果が報告され(例えば、処理回路又は他の装置に)、処理はステップ718に進みうる。
【0075】
ステップ718で、ジャイロスコープが、例えば、ジャイロスコープの1つ以上の操作パラメータを修正して、ジャイロスコープを自己試験に不合格にしなかった利得又は周波数の変化を補償する補償を実行できるかどうかが決定されうる。補償が行われる場合、処理は、
図8に進みうる。補償が行われない場合、
図7の処理は終了できる。
【0076】
図8は、本開示の幾つかの実施形態による周波数応答試験の典型的ステップを表す。
図8には特定の試験及び補償技術が示されているが、本開示及び当業者により任意の適切な試験及び技術が適用されうることを理解されよう。一実施形態では、利得変化の値と2つの試験周波数の比率は、例えば
図7のステップ702〜706で既に決定されていることがある。
【0077】
ステップ802で、各試験周波数における利得変化が、1つ以上のしきい値と比較されうる。一実施形態では、どちらかの試験周波数の利得変化が単一しきい値を超える場合、補償が必要とされることがあり、処理は、ステップ804に進みうる。別の実施形態では、両方の利得変化は、補償が必要とされるしきい値を超えなければならない。更に別の実施形態では、両方の利得変化が、第1の(例えば、下側)しきい値を超えなければならず、利得変化のうちの1つが、補償が必要とされる第2の(例えば、より高)しきい値を超えなければならない。更に他の実施形態では、様々なしきい値及び様々なしきい値技術を適用して、様々な補償技術を使用すべきかどうかを決定できる。そのような実施形態には、比率及び絶対値利得変化のどちらか又は両方が使用され、更に他の実施形態で、しきい値と値比較の他の組み合わせが利用されうる。ステップ802で補償が必要とされる場合、処理は、ステップ804に進みうる。ステップ802で補償が必要とされない場合、処理は、ステップ806に進みうる。
【0078】
ステップ804で、ジャイロスコープが受ける利得変化を補償する補償技術がジャイロスコープに適用されうる。補償技術の典型的な実施形態は、ジャイロスコープに適用される駆動信号の大きさ(例えば、ジャイロスコープの駆動マスを駆動する駆動櫛歯の駆動電圧)を修正すること、ジャイロスコープのセンス回路の操作パラメータ(例えばセンス回路の1つ以上の増幅器利得)を修正すること、又は検出信号と関連付けられたスケーリングパラメータ(例えば、ジャイロスコープ又は処理回路の処理回路における検出信号と関連付けられたデジタルスケーリングファクタ)を修正することを含みうる。幾つかの実施形態では、これらのパラメータの複数が修正されうる。ステップ804で操作パラメータが更新された後、処理は、ステップ806に進みうる。
【0079】
ステップ806で、各試験周波数における利得変化の比率が、1つ以上のしきい値と比較されうる。一実施形態では、比率をしきい値と比較する前に、最初に、試験周波数のうちの1つと関連付けられた利得変化がしきい値(例えば、周波数シフト利得しきい値)を超えるかどうかを決定しなければならない。どちらの利得変化もそのようなしきい値を超えない場合、大きな周波数シフトがあった可能性は低い。次に、ステップ706で決定された利得変化の比率が分析されてもよい(例えば、しきい値と比較された)。幾つかの実施形態では、様々なしきい値及び様々なしきい値技術を適用して、様々な補償技術を使用すべきかどうかを決定できる。どれかの比率比較しきい値を超えた場合、処理は、ステップ808に進みうる。比率比較しきい値を超えない場合、
図8の処理は終了できる。
【0080】
ステップ808で、比率の変化によって示されたような、ジャイロスコープが受ける周波数シフトを補償する補償技術がジャイロスコープに適用されうる。補償技術の典型的な実施形態は、ジャイロスコープに適用される駆動信号の大きさ(例えば、ジャイロスコープの駆動マスを駆動する駆動櫛歯の駆動電圧)を修正すること、ジャイロスコープのセンス回路の操作パラメータ(例えばセンス回路の1つ以上の増幅器利得)を修正すること、又は検出信号と関連付けられたスケーリングパラメータ(例えば、ジャイロスコープ又は処理回路の処理回路における検出信号と関連付けられたデジタルスケーリングファクタ)を修正することを含みうる。幾つかの実施形態では、これらのパラメータの複数が修正されうる。ステップ808で、操作パラメータが更新された後、
図8の処理は終了できる。
【0081】
以上の説明は、本開示による典型的実施形態を含む。これらの例は、説明のためのものであり、限定するためのものではない。本開示が、本明細書に明示的に記述され表された形態と異なる形態で実施されてもよく、以下の特許請求の範囲と一致する様々な修正、最適化及び変形が、当業者によって実現されうることを理解されよう。