【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、電気アーク(製鋼)炉などの冶金炉に、第1の時間間隔(以下、Δtと称する)の間にコンベヤによって排出される原料の質量を決定する方法に関する。方法は、
コンベヤの特定のゾーン内で、原料の連続したデジタル画像(第1の時間間隔Δtよりも短い持続時間の第2の時間間隔(以後δtと称する)(δt<Δt)によって区切られた2つの連続した画像)を撮影することと、
第2の時間間隔δtの各々について、
第2の時間間隔δtに関連する2つの連続した画像を数値処理することによって、コンベヤの特定のゾーン内の第2の時間間隔δtの間の原料のサブボリュームの前進距離を計算することと、
原料のサブボリュームの少なくとも1つの横断高さプロファイルを決定することと、
原料のサブボリュームに関する有効原料密度を決定することと、
第2の時間間隔δtの各々について計算されたか決定された前進距離、少なくとも1つの横断高さプロファイルおよび有効原料密度に基づいて、第1の時間間隔Δtの間にコンベヤによって炉内に排出された原料の質量を計算することと
を含む。
【0007】
本明細書で使用される場合、表現「原料」は、炉内に装入される固体材料を示す。例えば、鋼鉄生産のための電気アーク炉の場合、原料は鉄含有材料であり、特に(鋼鉄)スクラップおよびDRIを包含する。欧州特許第2606305号明細書では、異なる装入部分の最初に測定された重量の情報に頼っており、その後の原料の質量の計算については何も言及していないことに注目すべきである。
【0008】
好ましくは、方法は、コンベヤ上の原料のサブボリュームの前進速度および/または原料のサブボリュームの炉への到着時間を計算することを含む。
【0009】
本発明の第1の態様による方法は、カメラによって撮影されたデジタル画像から(各第2の時間間隔δtについて)原料の前進距離を抽出することが理解されよう。所与の第2の時間間隔内にコンベヤの特定のゾーンを通過する原料の質量により、その質量が炉の入口にいつ到着してそこに排出されるのか、システムが導出することが可能になる。したがって、システムは、炉の装入物を追跡し、また、その後の装入を事前に予測することができる。予測期間(forecasting horizon)は、測定が行われるコンベヤの特定のゾーンと、炉への入口との間の距離、ならびに原料の前進速度によって決まる。前進速度は変化する可能性があるため、予測期間も変化する可能性がある。それにもかかわらず、その時間を使用して、(容量および/または電力消費および/または運転コストに関して)炉の効率を最適化するように炉の運転パラメータを調整することができる。
【0010】
本明細書で使用される場合、「時間間隔」とは、開始時間、終了時間および持続時間(開始時間と終了時間との間の差)を有する期間である。「第1の時間間隔」および「第2の時間間隔」という表現では、「第1」および「第2」の序数は、両方の種類の時間間隔を区別するためにのみ使用され、時間的にいかなる階層または順序も暗示するものではない。実際、上述したように、本発明の第1の態様による方法は、その後の第1の時間間隔の間にコンベヤによって排出される原料の質量を予測する方法の1つとすることができる。
【0011】
これが単純化のために好ましい場合があるものの、第1の時間間隔Δtの持続時間も第2の時間間隔δtの持続時間も一定である必要がないことに注目すべきである。実際に、持続時間Δtおよびδtの両方を動的に調整することができる。
【0012】
第2の時間間隔の持続時間は、カメラの2つの連続した画像間の時間またはその整数倍であり得る(この場合、上記の2つの連続した画像は、カメラによって撮影された画像のシーケンス中で最も近いものではない)。第2の時間間隔の持続時間は、数値処理のために保持される各画像の後に廃棄される画像の数を選択することによって変更することができる。カメラのフレームレートが調整可能である場合、第2の時間間隔の持続時間は、フレームレートの変化を介して調整することができる。
【0013】
好ましくは、第1の時間間隔Δtの間に排出される原料の質量を計算することは、
各第2の時間間隔δtについて、決定された前進距離、少なくとも1つの横断高さプロファイルおよび有効原料密度に基づいて、原料のサブボリュームの質量を計算することと、
第1の時間間隔Δtの間に、炉に到着する原料のサブボリュームの質量を合計することと
を含む。
【0014】
方法は、好ましくは、原料の粒径分布(粒度測定)を決定するために、例えば各第2の時間間隔δtの間に、コンベヤの特定のゾーン内の原料を撮影したデジタル画像の数値解析を含む。
【0015】
各サブボリュームの有効原料密度は、原料の粒径分布に基づいて決定されてもよい。サブボリュームの有効原料密度は、例えば、光学粒度測定によって決定された原料の粒径分布に基づいて、有効原料密度が原料粒径分布に相関するルックアップテーブルを使用して決定されてもよい。代替として、方法は、対応するデジタル画像に基づいて、原料の各サブボリュームに有効原料密度を割り当てるように訓練された分類器を使用することができる。コンベヤの特定のゾーン内で撮影されたデジタル画像は、好ましくは、光学粒度測定による粒径分布の基礎として使用される。
【0016】
第2の時間間隔δtの持続時間は、原料の粒径分布に基づいて動的に調整されてもよい。細断された原料に伴う問題には、第2の時間間隔が長すぎると、カメラが捉える原料の表面が著しく変化し得るというものがある。これは、基礎となる振動伝達機構によって生じる振動に起因する。原料の山の上に横たわる原料粒子は、容易に移動し、以前の画像ではまだ目に見えていた他の粒子を覆うことがある。したがって、微細な原料の場合には、第2の時間間隔δtの持続時間を短縮することが有効となり得るが、大きな原料の場合には、第2の時間間隔δtの持続時間を増大させてもよい。
【0017】
好ましくは、カメラによって撮影された画像がカラー画像である場合、前進距離を計算する数値処理は、カラー画像をグレースケール画像に変換することを含む。例えば、クロッピング、コントラスト調整および/またはフィルタリングなどの他の画像補正が、数値処理の一部とともに実行されてもよい。
【0018】
前進距離を計算するための数値処理は、好ましくは、2つの連続した画像のうち一方の画像内の原料の一部を選択することと、2つの連続した画像のうち他方の画像内の原料の対応する部分を識別することとを含む。選択された原料の部分は、好ましくは、2つの連続した画像のうち一方の区切られた領域(例えば、関心領域)に含まれる。選択された原料の部分を含む関心領域は、長方形もしくは円形または任意の他の好適な形状であってよい。関心領域は、画像内の固定サイズおよび位置を有してもよい。あるいは、関心領域は、画像の内容、すなわちその時点で撮影されている原料に応じて動的に調整することができる。2つの連続した画像のうち他方の画像内の原料の選択された部分の識別は、例えば、第1の画像内の関心領域と第2の画像との相互相関によって行うことができる。2つの連続した画像のうち他方の画像内の原料の部分の位置が(相互相関または他の好適な方法、例えば画像位置合わせ、または特徴の検出によって)発見されると、原料のその部分の前進距離がカメラのピクセル単位で識別される。(移動方向の)距離を正確にスケーリングし、2つの画像間の時間間隔で除算することによって、原料の前進速度が容易に計算される。別の選択肢には、例えば一方の画像の異なる領域内などで1つ以上の個々の原料片を選択し、他方の画像内のこれらの原料片を識別するというものがある。個々の原料片が異なる距離を移動したと判定された場合、これらの距離の平均を原料の前進距離として使用することができる。
【0019】
原料の前進距離および/または前進速度のスケーリングは、好ましくは、前進距離および/または前進速度の計算のために、その時点で考慮されているカメラと原料(の一部)との間の距離に基づいて実行される。その距離(以下、「照準線」距離と呼ぶ)は、カメラによって画像化された原料に対応する横断高さプロファイルから推定されてもよい。前進距離をピクセル単位から長さ単位に変換するスケーリング係数は、照準線距離に応じて決まる。動的スケーリングは好ましく、高さプロファイルの変動が照準線距離と比較して顕著である場合には、前進距離および/または前進速度の計算で所望の精度を達成するために必要でさえある場合がある。しかしながら、コンベヤ上の原料の高さレベルがほぼ一定であれば、考慮される画像間の正確なシフトを決定し、その結果、原料の正確な前進距離または速度を計算するのには、平均スケーリング係数で十分である。
【0020】
本方法の一実施形態によれば、2つの連続した画像のうち一方の画像内の原料の一部の選択は、画像全体の原料の粒径分布を光学的に決定することと、粒径分布に応じて原料の一部を選択することとを含む。好ましくは、システムは、粒径分布が良好な相互相関を可能にする原料の一部を選択する。例えば、小さな原料片のみを含む画像領域は、第2の画像に対して不十分な識別結果をもたらす可能性がある。動的選択が実施される場合、幾分大きな原料片を有する領域が好ましい場合がある。原料の一部を動的に選択するための別の基準は、画像内のその位置であってよい。その移動のために他方の画像に現れない可能性が高い原料の一部は選択されない。2つの連続した画像のうち一方の画像内の原料の一部を選択することは、代替的にまたは追加的に、粒径分布とは異なる1つ以上の基準(例えば、明るい領域および暗い領域の分布、認識可能なエッジの存在など)を用いて画像のうち一方の内容を分析することと、次いで、この分析の結果に応じて原料の一部を選択することとを含んでもよい。
【0021】
本発明の第1の態様による方法は、振動型(oscillating−type)(または振動型(vibrating−type))コンベヤと組み合わせるのに特に適している。振動コンベヤ上の原料の動きは平行移動ではないため、これは驚くべき発見である。実際、原料が前進するにつれて、原料片の間には顕著な相対的な動きが見られる。各原料片がそれ自体の個々の軌道に従うため、有用な結果を生み出しながら、妥当な計算時間で前進距離(または前進速度)を光学的に検出することが可能であるとは考えられなかった。しかしながら、驚くべきことに、前進距離の検出に相関ベースのパターン認識が使用された事例が判明した。
【0022】
本発明の第2の態様は、電気アーク炉などの冶金炉に、第1の時間間隔Δtの間にコンベヤによって排出される原料の質量を決定するシステムに関する。システムは、
コンベヤの特定のゾーン内で、原料の連続した画像(第2の時間間隔δt<Δtによって区切られた2つの連続した画像)を撮影するように構成および配置された1つ以上のカメラと、
特定のゾーン内の原料のサブボリュームの少なくとも1つの横断高さプロファイルを決定するための少なくとも1つのレーザスキャナまたはレンジカメラ(例えば、3−D飛行時間型カメラ)と、
データ処理システムであって、
各第2の時間間隔δtについて、第2の時間間隔δtに関連する2つの連続した画像を数値処理することによって、第2の時間間隔δtの間の原料の各サブボリュームの前進距離を計算し、
第2の時間間隔δtの各々について計算されたか決定されたか固定された前進距離、少なくとも1つの横断高さプロファイルおよび有効原料密度に基づいて、第1の時間間隔Δtの間にコンベヤによって炉内に排出された原料の質量を計算する
ように構成されたデータ処理システムと
を含む。
【0023】
システムは、十分に短い露光時間を可能にし、信号対雑音比を低減し、画像のコントラストを高めるために、1つ以上のカメラの視野を照明するための少なくとも1つの照明モジュールを含んでもよい。
【0024】
好ましくは、1つ以上のカメラは、十分な画像解像度を確保するように、選択されたコンベヤから一定の距離を置いて、コンベヤの上に配置される。例えば、1つ以上のカメラが標準的な光学系を備えている場合、1つ以上のカメラのコンベヤからの距離が、コンベヤの横幅の1倍から3倍であることが適している場合がある。
【0025】
システムは、好ましくは、本発明の第1の態様による方法を実行するように構成され、「連続」装入設備を備えた冶金炉、例えば、電気アーク炉に特に適している。
【0026】
本発明の第3の態様は、原料がコンベヤによって排出される冶金炉(例えば電気アーク炉)を運転する方法に関する。本発明の第3の態様による方法は、
本発明の第1の態様の方法を使用して、第1の時間間隔Δtの間に炉内に排出される原料の質量を予測することと、
原料の予測された質量に基づいて炉の運転パラメータを修正することと、および/または
炉の目標運転パラメータに基づいて炉内に排出される原料の質量流量を修正することと
を含む。
【0027】
このように、炉の運転方法は、予測を使用して、手動または自動のいずれかで炉の運転を制御し、および/または(連続的な)装入プロセスを修正する。好ましくは、炉を最適な状態で運転するために、両方の種類の調整が組み合わされる。
【0028】
添付の図面は、本発明のいくつかの態様を示し、詳細な説明とともに、その原理を説明する役割を果たす。