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特許6697561コンベヤ上の原料の質量を決定するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697561
(24)【登録日】2020年4月28日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】コンベヤ上の原料の質量を決定するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   F27D 21/00 20060101AFI20200511BHJP
   F27D 3/00 20060101ALI20200511BHJP
   F27B 3/18 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   F27D21/00 Z
   F27D3/00 Z
   F27B3/18
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-532760(P2018-532760)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公表番号】特表2019-504277(P2019-504277A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】IB2016057719
(87)【国際公開番号】WO2017109657
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2019年5月30日
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2015/059871
(32)【優先日】2015年12月22日
(33)【優先権主張国】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボーメール,ジャン−クロード
(72)【発明者】
【氏名】チボー,ジャン−クロード
(72)【発明者】
【氏名】ピッコ,マルコ
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06004504(US,A)
【文献】 特表2013−538292(JP,A)
【文献】 特表2015−507093(JP,A)
【文献】 特開2002−005637(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103308127(CN,A)
【文献】 特開2015−111088(JP,A)
【文献】 特表2008−512672(JP,A)
【文献】 特開2010−066127(JP,A)
【文献】 特開平05−164677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 21/00
F27B 3/18
F27D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の時間間隔Δtの間にコンベヤによって冶金炉内に排出される原料の質量を決定する方法であって、前記方法が、
前記コンベヤの特定のゾーン内で原料のデジタル画像を撮影することであって、2つの連続した画像が第2の時間間隔δt<Δtによって区切られる、撮影することと、
前記第2の時間間隔δtの各々について、
前記第2の時間間隔δtに関連する2つの連続した画像を数値処理することによって、前記コンベヤの前記特定のゾーン内の前記第2の時間間隔δtの間の原料のサブボリュームの前進距離を計算することと、
原料の前記サブボリュームの少なくとも1つの横断高さプロファイルを決定することと、
原料の前記サブボリュームに関する有効原料密度を決定することと、
前記第2の時間間隔δtの各々について計算されたか決定された、前記前進距離、前記少なくとも1つの横断高さプロファイルおよび前記有効原料密度に基づいて、第1の時間間隔Δtの間に前記コンベヤによって炉内に排出された原料の前記質量を計算することと
を含む方法。
【請求項2】
第1の時間間隔Δtの間に前記コンベヤによって排出される原料の前記質量を計算することが、
各第2の時間間隔δtについて、決定された、前記前進距離、前記少なくとも1つの横断高さプロファイルおよび前記有効原料密度に基づいて、原料のサブボリュームの質量を計算することと、
第1の時間間隔Δtの間に炉に到着する原料のサブボリュームの質量を合計することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンベヤの前記特定のゾーン内で原料を撮影したデジタル画像を数値解析して、原料の粒径分布を決定することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記サブボリュームの前記有効原料密度が、原料の前記粒径分布に基づいて決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記サブボリュームの前記有効原料密度が、原料の前記粒径分布に基づいて、有効原料密度が原料粒径分布に相関するルックアップテーブルを使用して決定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の時間間隔δtの持続時間が、原料の前記粒径分布に基づいて動的に調整される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
前記画像がカラー画像であり、前進距離を計算する前記数値処理が、前記カラー画像をグレースケール画像に変換することを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前進距離を計算するための前記数値処理が、
2つの連続した画像のうち一方の画像内の原料の一部を選択することと、
前記2つの連続した画像のうち他方の画像内の原料の対応する部分を識別することと
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
2つの連続した画像のうち一方の画像内の原料の一部を選択することが、前記画像内の原料の粒径分布を決定することと、
前記粒径分布に基づいて原料の前記一部を選択することと
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記コンベヤ上の原料の前記サブボリュームの前進速度が計算される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記コンベヤが振動型である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前進距離および/または前進速度の計算に対して、その時点で考慮されているカメラと原料との間の距離に基づいて、原料の前進距離および/または前進速度をスケーリングすることを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記スケーリングが、横断高さプロファイルに応じて動的に実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1の時間間隔Δtの間にコンベヤによって冶金炉内に排出される原料の質量を決定するシステムであって、前記システムが、
前記コンベヤの特定のゾーン内で原料の連続した画像を撮影することができる少なくとも1つのカメラであって、2つの連続した画像は第2の時間間隔δt<Δtによって区切られる、カメラと、
前記特定のゾーン内の原料のサブボリュームの少なくとも1つの横断高さプロファイルを決定するための少なくとも1つのレーザスキャナまたはレンジカメラと、
データ処理システムであって、
各第2の時間間隔δtについて、前記第2の時間間隔δtに関連する2つの連続した画像を数値処理することによって、前記第2の時間間隔δtの間の原料の各サブボリュームの前進距離を計算し、
前記第2の時間間隔δtの各々について計算されたか決定されたか固定された前記前進距離、前記少なくとも1つの横断高さプロファイルおよび前記有効原料密度に基づいて、前記第1の時間間隔Δtの間に前記コンベヤによって炉内に排出された原料の前記質量を計算する
ように設計されたデータ処理システムと
を含むシステム。
【請求項15】
信号対雑音比を低減し、前記画像のコントラストを高めるように、前記少なくとも1つのカメラの視野を照明するための少なくとも1つの照明モジュールを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのカメラが、コンベヤの横幅の1倍から3倍の距離で前記コンベヤの上方に配置される、請求項14または15に記載のシステム。
【請求項17】
原料がコンベヤによって排出される冶金炉を運転する方法であって、前記方法が、
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法に従って、第1の時間間隔Δtの間に炉内に排出される原料の質量を予測することと、
前記第1の時間間隔Δtの間に前記炉内に排出された原料の質量に基づいて、前記炉の運転パラメータを修正することと、および/または
前記炉の目標運転パラメータに基づいて前記炉内に排出される原料の質量流量を修正することと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、冶金炉、例えば電気アーク炉に、(鋼鉄)スクラップおよび/または他の原料、例えば、直接還元鉄(DRI、海綿鉄とも呼ばれる)または場合により銑鉄を装入するための方法およびシステムに関する。さらに具体的には、本発明は、コンベヤによって冶金炉に供給される原料の量を決定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクラップなどの原料を連続的または非連続的に装入される冶金炉の技術は十分に確立されている。
【0003】
欧州特許第2606305号明細書は、冶金炉の連続的な供給コンベヤによって搬送される材料の装入を制御および追跡するためのシステムを記載している。システムは、所定の装入方法に従って、予め定められた重量の材料を連続供給コンベヤ上に装入するための投入セクションを含む。システムは、識別手段を介して装入物を記録する。投入された装入物の全体的な寸法が検出され、投入された装入物の前進速度が計算される。欧州特許第2606305号明細書は、前進速度を検出するための手段が、遅延時間内に装入物の複数の画像を取得するための手段を含み、画像および相対取得時間が互いに相関され、処理されることを説明している。欧州特許第2606305号明細書のシステムは、それぞれの投入ステーションで装入部分がコンベヤ上に排出される前に、各装入部分の重量を1回だけ決定する。最後に、システムは、炉への装入物の到着時間を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第2606305号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の開示にもかかわらず、実際には、冶金炉に入る原料の質量流量を十分な精度で決定することは、依然として解決すべき課題である。実際、欧州特許第2606305号明細書のシステムの計算の根底にある仮定の1つに、コンベヤ上に投入された各装入物が一緒にとどまり、1つの単位として進行するという点がある。現実には、特にコンベヤが振動型である場合そうはならない。この型のコンベヤでは、スクラップの進行は、モデル化することは不可能ではないにしても複雑である。例えば、同じ装入物の様々な部分が、いくつかの要因に応じて様々な速度で進行することがあることが分かる。さらに、炉の各供給後、コンベヤ上に装入物が残っていて、次に炉に投入されることがある。これらの理由から、コンベヤ上に最初に投入された装入部分の重量の情報は、典型的には、任意の時間にどれほどの原料が炉に供給されるかを決定するのに十分ではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、電気アーク(製鋼)炉などの冶金炉に、第1の時間間隔(以下、Δtと称する)の間にコンベヤによって排出される原料の質量を決定する方法に関する。方法は、
コンベヤの特定のゾーン内で、原料の連続したデジタル画像(第1の時間間隔Δtよりも短い持続時間の第2の時間間隔(以後δtと称する)(δt<Δt)によって区切られた2つの連続した画像)を撮影することと、
第2の時間間隔δtの各々について、
第2の時間間隔δtに関連する2つの連続した画像を数値処理することによって、コンベヤの特定のゾーン内の第2の時間間隔δtの間の原料のサブボリュームの前進距離を計算することと、
原料のサブボリュームの少なくとも1つの横断高さプロファイルを決定することと、
原料のサブボリュームに関する有効原料密度を決定することと、
第2の時間間隔δtの各々について計算されたか決定された前進距離、少なくとも1つの横断高さプロファイルおよび有効原料密度に基づいて、第1の時間間隔Δtの間にコンベヤによって炉内に排出された原料の質量を計算することと
を含む。
【0007】
本明細書で使用される場合、表現「原料」は、炉内に装入される固体材料を示す。例えば、鋼鉄生産のための電気アーク炉の場合、原料は鉄含有材料であり、特に(鋼鉄)スクラップおよびDRIを包含する。欧州特許第2606305号明細書では、異なる装入部分の最初に測定された重量の情報に頼っており、その後の原料の質量の計算については何も言及していないことに注目すべきである。
【0008】
好ましくは、方法は、コンベヤ上の原料のサブボリュームの前進速度および/または原料のサブボリュームの炉への到着時間を計算することを含む。
【0009】
本発明の第1の態様による方法は、カメラによって撮影されたデジタル画像から(各第2の時間間隔δtについて)原料の前進距離を抽出することが理解されよう。所与の第2の時間間隔内にコンベヤの特定のゾーンを通過する原料の質量により、その質量が炉の入口にいつ到着してそこに排出されるのか、システムが導出することが可能になる。したがって、システムは、炉の装入物を追跡し、また、その後の装入を事前に予測することができる。予測期間(forecasting horizon)は、測定が行われるコンベヤの特定のゾーンと、炉への入口との間の距離、ならびに原料の前進速度によって決まる。前進速度は変化する可能性があるため、予測期間も変化する可能性がある。それにもかかわらず、その時間を使用して、(容量および/または電力消費および/または運転コストに関して)炉の効率を最適化するように炉の運転パラメータを調整することができる。
【0010】
本明細書で使用される場合、「時間間隔」とは、開始時間、終了時間および持続時間(開始時間と終了時間との間の差)を有する期間である。「第1の時間間隔」および「第2の時間間隔」という表現では、「第1」および「第2」の序数は、両方の種類の時間間隔を区別するためにのみ使用され、時間的にいかなる階層または順序も暗示するものではない。実際、上述したように、本発明の第1の態様による方法は、その後の第1の時間間隔の間にコンベヤによって排出される原料の質量を予測する方法の1つとすることができる。
【0011】
これが単純化のために好ましい場合があるものの、第1の時間間隔Δtの持続時間も第2の時間間隔δtの持続時間も一定である必要がないことに注目すべきである。実際に、持続時間Δtおよびδtの両方を動的に調整することができる。
【0012】
第2の時間間隔の持続時間は、カメラの2つの連続した画像間の時間またはその整数倍であり得る(この場合、上記の2つの連続した画像は、カメラによって撮影された画像のシーケンス中で最も近いものではない)。第2の時間間隔の持続時間は、数値処理のために保持される各画像の後に廃棄される画像の数を選択することによって変更することができる。カメラのフレームレートが調整可能である場合、第2の時間間隔の持続時間は、フレームレートの変化を介して調整することができる。
【0013】
好ましくは、第1の時間間隔Δtの間に排出される原料の質量を計算することは、
各第2の時間間隔δtについて、決定された前進距離、少なくとも1つの横断高さプロファイルおよび有効原料密度に基づいて、原料のサブボリュームの質量を計算することと、
第1の時間間隔Δtの間に、炉に到着する原料のサブボリュームの質量を合計することと
を含む。
【0014】
方法は、好ましくは、原料の粒径分布(粒度測定)を決定するために、例えば各第2の時間間隔δtの間に、コンベヤの特定のゾーン内の原料を撮影したデジタル画像の数値解析を含む。
【0015】
各サブボリュームの有効原料密度は、原料の粒径分布に基づいて決定されてもよい。サブボリュームの有効原料密度は、例えば、光学粒度測定によって決定された原料の粒径分布に基づいて、有効原料密度が原料粒径分布に相関するルックアップテーブルを使用して決定されてもよい。代替として、方法は、対応するデジタル画像に基づいて、原料の各サブボリュームに有効原料密度を割り当てるように訓練された分類器を使用することができる。コンベヤの特定のゾーン内で撮影されたデジタル画像は、好ましくは、光学粒度測定による粒径分布の基礎として使用される。
【0016】
第2の時間間隔δtの持続時間は、原料の粒径分布に基づいて動的に調整されてもよい。細断された原料に伴う問題には、第2の時間間隔が長すぎると、カメラが捉える原料の表面が著しく変化し得るというものがある。これは、基礎となる振動伝達機構によって生じる振動に起因する。原料の山の上に横たわる原料粒子は、容易に移動し、以前の画像ではまだ目に見えていた他の粒子を覆うことがある。したがって、微細な原料の場合には、第2の時間間隔δtの持続時間を短縮することが有効となり得るが、大きな原料の場合には、第2の時間間隔δtの持続時間を増大させてもよい。
【0017】
好ましくは、カメラによって撮影された画像がカラー画像である場合、前進距離を計算する数値処理は、カラー画像をグレースケール画像に変換することを含む。例えば、クロッピング、コントラスト調整および/またはフィルタリングなどの他の画像補正が、数値処理の一部とともに実行されてもよい。
【0018】
前進距離を計算するための数値処理は、好ましくは、2つの連続した画像のうち一方の画像内の原料の一部を選択することと、2つの連続した画像のうち他方の画像内の原料の対応する部分を識別することとを含む。選択された原料の部分は、好ましくは、2つの連続した画像のうち一方の区切られた領域(例えば、関心領域)に含まれる。選択された原料の部分を含む関心領域は、長方形もしくは円形または任意の他の好適な形状であってよい。関心領域は、画像内の固定サイズおよび位置を有してもよい。あるいは、関心領域は、画像の内容、すなわちその時点で撮影されている原料に応じて動的に調整することができる。2つの連続した画像のうち他方の画像内の原料の選択された部分の識別は、例えば、第1の画像内の関心領域と第2の画像との相互相関によって行うことができる。2つの連続した画像のうち他方の画像内の原料の部分の位置が(相互相関または他の好適な方法、例えば画像位置合わせ、または特徴の検出によって)発見されると、原料のその部分の前進距離がカメラのピクセル単位で識別される。(移動方向の)距離を正確にスケーリングし、2つの画像間の時間間隔で除算することによって、原料の前進速度が容易に計算される。別の選択肢には、例えば一方の画像の異なる領域内などで1つ以上の個々の原料片を選択し、他方の画像内のこれらの原料片を識別するというものがある。個々の原料片が異なる距離を移動したと判定された場合、これらの距離の平均を原料の前進距離として使用することができる。
【0019】
原料の前進距離および/または前進速度のスケーリングは、好ましくは、前進距離および/または前進速度の計算のために、その時点で考慮されているカメラと原料(の一部)との間の距離に基づいて実行される。その距離(以下、「照準線」距離と呼ぶ)は、カメラによって画像化された原料に対応する横断高さプロファイルから推定されてもよい。前進距離をピクセル単位から長さ単位に変換するスケーリング係数は、照準線距離に応じて決まる。動的スケーリングは好ましく、高さプロファイルの変動が照準線距離と比較して顕著である場合には、前進距離および/または前進速度の計算で所望の精度を達成するために必要でさえある場合がある。しかしながら、コンベヤ上の原料の高さレベルがほぼ一定であれば、考慮される画像間の正確なシフトを決定し、その結果、原料の正確な前進距離または速度を計算するのには、平均スケーリング係数で十分である。
【0020】
本方法の一実施形態によれば、2つの連続した画像のうち一方の画像内の原料の一部の選択は、画像全体の原料の粒径分布を光学的に決定することと、粒径分布に応じて原料の一部を選択することとを含む。好ましくは、システムは、粒径分布が良好な相互相関を可能にする原料の一部を選択する。例えば、小さな原料片のみを含む画像領域は、第2の画像に対して不十分な識別結果をもたらす可能性がある。動的選択が実施される場合、幾分大きな原料片を有する領域が好ましい場合がある。原料の一部を動的に選択するための別の基準は、画像内のその位置であってよい。その移動のために他方の画像に現れない可能性が高い原料の一部は選択されない。2つの連続した画像のうち一方の画像内の原料の一部を選択することは、代替的にまたは追加的に、粒径分布とは異なる1つ以上の基準(例えば、明るい領域および暗い領域の分布、認識可能なエッジの存在など)を用いて画像のうち一方の内容を分析することと、次いで、この分析の結果に応じて原料の一部を選択することとを含んでもよい。
【0021】
本発明の第1の態様による方法は、振動型(oscillating−type)(または振動型(vibrating−type))コンベヤと組み合わせるのに特に適している。振動コンベヤ上の原料の動きは平行移動ではないため、これは驚くべき発見である。実際、原料が前進するにつれて、原料片の間には顕著な相対的な動きが見られる。各原料片がそれ自体の個々の軌道に従うため、有用な結果を生み出しながら、妥当な計算時間で前進距離(または前進速度)を光学的に検出することが可能であるとは考えられなかった。しかしながら、驚くべきことに、前進距離の検出に相関ベースのパターン認識が使用された事例が判明した。
【0022】
本発明の第2の態様は、電気アーク炉などの冶金炉に、第1の時間間隔Δtの間にコンベヤによって排出される原料の質量を決定するシステムに関する。システムは、
コンベヤの特定のゾーン内で、原料の連続した画像(第2の時間間隔δt<Δtによって区切られた2つの連続した画像)を撮影するように構成および配置された1つ以上のカメラと、
特定のゾーン内の原料のサブボリュームの少なくとも1つの横断高さプロファイルを決定するための少なくとも1つのレーザスキャナまたはレンジカメラ(例えば、3−D飛行時間型カメラ)と、
データ処理システムであって、
各第2の時間間隔δtについて、第2の時間間隔δtに関連する2つの連続した画像を数値処理することによって、第2の時間間隔δtの間の原料の各サブボリュームの前進距離を計算し、
第2の時間間隔δtの各々について計算されたか決定されたか固定された前進距離、少なくとも1つの横断高さプロファイルおよび有効原料密度に基づいて、第1の時間間隔Δtの間にコンベヤによって炉内に排出された原料の質量を計算する
ように構成されたデータ処理システムと
を含む。
【0023】
システムは、十分に短い露光時間を可能にし、信号対雑音比を低減し、画像のコントラストを高めるために、1つ以上のカメラの視野を照明するための少なくとも1つの照明モジュールを含んでもよい。
【0024】
好ましくは、1つ以上のカメラは、十分な画像解像度を確保するように、選択されたコンベヤから一定の距離を置いて、コンベヤの上に配置される。例えば、1つ以上のカメラが標準的な光学系を備えている場合、1つ以上のカメラのコンベヤからの距離が、コンベヤの横幅の1倍から3倍であることが適している場合がある。
【0025】
システムは、好ましくは、本発明の第1の態様による方法を実行するように構成され、「連続」装入設備を備えた冶金炉、例えば、電気アーク炉に特に適している。
【0026】
本発明の第3の態様は、原料がコンベヤによって排出される冶金炉(例えば電気アーク炉)を運転する方法に関する。本発明の第3の態様による方法は、
本発明の第1の態様の方法を使用して、第1の時間間隔Δtの間に炉内に排出される原料の質量を予測することと、
原料の予測された質量に基づいて炉の運転パラメータを修正することと、および/または
炉の目標運転パラメータに基づいて炉内に排出される原料の質量流量を修正することと
を含む。
【0027】
このように、炉の運転方法は、予測を使用して、手動または自動のいずれかで炉の運転を制御し、および/または(連続的な)装入プロセスを修正する。好ましくは、炉を最適な状態で運転するために、両方の種類の調整が組み合わされる。
【0028】
添付の図面は、本発明のいくつかの態様を示し、詳細な説明とともに、その原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、製鋼用の電気アーク炉の装入機構の概略図である。
図2図2は、カメラによって異なる時間に撮影された2つの画像を含み、コンベヤ上の原料の動きを示す。
図3図3は、コンベヤ上の大きな原料片から構成された原料の概略断面図である。
図4図4は、コンベヤ上の小さな原料片から構成された原料の概略断面図である。
図5図5は、コンベヤ上の原料の山の検出された高さプロファイルのグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1から図5は、製鋼電気アーク炉16に装入するための単純化されたシステム10の態様を示す。装入システム10は、コンベヤ14上に原料、特にスクラップを投入する投入ステーション12を含む。コンベヤ14は振動型であり、その目詰まり防止特性および自己洗浄特性のために、原料を搬送するのに最も適している。
【0031】
コンベヤ14上で炉16に向かって搬送されている間に、原料は原料特性決定ステーション18を通過する。原料特性決定ステーション18は、プロセッサ20に接続されている。プロセッサ20は、原料に関する情報を制御センター22に送信する。制御センター22のコントローラは、原料特性決定ステーション18から受信した情報に基づいて、電気アーク炉16の運転パラメータを修正し、および/または原料のその後の質量流量を調整してもよい。両手段は、電気アーク炉16を可能な限り効率的に動作させるのに役立つ。
【0032】
原料投入ステーション12は、典型的には、コンベヤ14上に投入された原料の量を制御していないか、少なくとも正確に制御していないクレーンホイストまたは同様の設備を含む。したがって、時間間隔Δtの間に電気アーク炉16内に排出される原料の質量は、例えあったとしても、原料投入ステーション12からの情報のみに依存して決定することはできない。さらに、原料部分の形状、サイズ、ならびにアスペクト比は、経時的に大きく変化し得る。
【0033】
原料特性決定ステーション18は、コンベヤ14の長手方向で原料の質量の前進速度および分布を光学的に決定する目的を果たす。原料特性決定ステーション18は、投入ステーション12と電気アーク炉16との間に配置され、コンベヤ14から好ましくはコンベヤ14の横幅の1倍から3倍の距離を置いて、コンベヤ14の上方に固定されたデジタルカメラ24とレーザスキャナ26とを主要部品として有する。2mの横幅を有するコンベヤ14の場合、カメラ24およびレーザスキャナ26は、例えば、コンベヤ14の上方2から6mに固定されてもよい。
【0034】
デジタルカメラ24は、好ましくは、好ましくは1Hzから30Hzの範囲内に含まれるフレームレートで、原料特性決定ステーション18を通過する原料のデジタル画像を撮影する。カメラ24の視野28は、コンベヤ14の全幅およびコンベヤ14の長手方向の一部分を対象とする。一例として、カメラ24が対象とするゾーンは、2メートル×2メートルのコンベヤ14のサイズであり得る。原料特性決定ステーション18は、カメラ24の視野28を照明するために、例えばLEDを含む照明モジュール30をさらに含む。
【0035】
好ましくは、露出される環境条件に耐えるように構成された頑丈なカメラであることを除いて、カメラ24の種類に関する特定の要件はない。
【0036】
カメラ24によって撮影された画像は、原料の前進速度、粒径分布および原料の有効密度を抽出するために処理される。
【0037】
前進速度の抽出は、いわゆる「画像位置合わせ」技術に基づいている。2つの画像32−34が、カメラ24によって配信される画像シーケンス内で選択される。画像32−34は直接的に連続する画像であってよいが、特にカメラ24が高いフレームレートを有する場合には必ずしも好ましいものではない。これらの画像32−34の間の時間間隔δtは、原料の少なくとも一部が、異なる位置にあるが両画像32−34内に存在するように、十分に小さく選択される。画像32のうちの1つでは、原料の一部を含むいわゆる「テンプレート」36(サブ画像または関心領域)が選択され、プロセッサ20は、第2の画像34内で原料38の同じ部分を見つけようとする。第2の画像34では、原料の一部が第1の画像32に対して一定の距離40だけ移動している。テンプレート36を第2の画像と2−D相互相関させることによって、第2の画像34内の原料部分の識別が行われる。相互相関関数が最大に達する領域で識別が達成されたと判断される。テンプレート36と第2の画像38内の領域との間の距離(ピクセル単位)は、時間間隔δt内の原料の前進距離40に対応する。ピクセル単位の前進距離40から、実際の前進距離40への変換(例えば、メートル単位)は、カメラ24の予め作成された較正に基づいて実行される。前進距離40を2つの画像32−34の間の時間間隔で除算することにより、並進速度が得られる。
【0038】
プロセッサ20は、完全に自動的に前進速度を抽出するように構成されることが好ましい。アルゴリズムは、特に原料の高度に多様な側面(種類(スクラップまたはDRI)、サイズ、形状、色(混じりけがないものから完全に酸化されたもの))に対処するために、何らかの画像前処理を含んでもよい。
【0039】
有用な情報を有しない境界領域を除去するために、第1の前処理工程は画像をクロッピングする工程を含んでもよい。
【0040】
カメラ24がカラー画像を撮影する場合、カラー画像のグレースケール画像への変換を含む前処理工程が実行されてもよい。この工程は、画像内に存在する情報の量を低減しないか、少なくとも大幅には低減しないが、相互相関の計算コストを大幅に低減する。
【0041】
高コントラストの画像は、より確実に最大相互相関を検出するのに有用である。この目的のために、プロセッサ20は、画像のコントラストを高めるために適応ヒストグラム平坦化ルーチンを適用する。
【0042】
各画像について、原料部分の粒度測定(粒径分布)は、いわゆる「モルフォロジー画像オープニング(morphological image opening)」技術を用いて得ることができる。この技術は、構造要素(可変直径のオープニング円形ディスク(ピクセル単位)または他の形状のオープニング円形ディスク)からなる画像の上にマスクを通過させ、この可変サイズ構造要素を通過する画像化された原料片の輪郭に関連するピクセルの数を数えることに対応する。この技術は、「光学的ふるい分け(Optical sifting)」とも呼ばれることがある。原料粒度測定に関する情報は、追跡されるテンプレート36のサイズ(および場合によっては形状)を動的に調整するために、プロセッサ20によって使用されてもよい。典型的には、大きな原料片は、良好な変位検出のために、小さな原料片よりも大きなテンプレートを必要とする。さらに、この粒度測定データを使用して、どの種類またはグレードの原料がその時点でコンベヤ上で搬送されているかに関して、さらに多くの「客観的な」情報を炉のオペレータ情報に与えることができる。
【0043】
他の光学粒度測定技術を使用することもできる。それでもなお、「画像オープニング」技術は、「モルフォロジー画像オープニング」技術によって得られたフィルタリングによって得られた画像に対して相互相関を行うことが好ましいため、特に適している。これらのフィルタリングされた画像は、特定の範囲内の直径(最大の拡張)を有する特徴のみを含む。
【0044】
レーザスキャナ26は、原料の動きに対して垂直(横方向)の平面内で原料を走査する(42)ように構成され、配置される。スキャン42は、原料特性決定ステーション18を通過して配置された原料のサブボリュームの少なくとも1つの高さプロファイル44を提供する。連続的に記録された高さプロファイル44は、サブボリュームの原料表面の3−D表示を得るために組み合わされてもよい。原料コンベヤ14のサブボリュームのそのような3−D表示の例が図5に示されている。原料特性決定ステーション18は、(場面の個々のスライスを記録する)線形レーザスキャナの代わりに、3−Dレーザスキャナまたは3−D飛行時間型カメラを代替的に含むことができる。
【0045】
プロセッサ20は、光学的に決定された粒径分布に基づいて、原料の有効密度を決定する。この情報を高さプロファイル44と組み合わせて使用して、原料のサブボリュームの質量を計算してもよい。
【0046】
原料のサブボリュームの質量の決定は、原料のサブボリュームの見かけの体積Vappおよびその有効密度peffの情報を必要とする。一般に、見かけの体積、有効密度、かさ体積Vおよびかさ密度pの間の関係は、pV=peffappとして書くことができる。見かけの体積Vappは、レーザスキャナ26によって測定された少なくとも1つの高さプロファイル44によって分かる。見やすいように、原料の粒径の分布が、大きく、それぞれ小さな平均粒径を有しながら、原料の両方の部分の見かけの体積Vappがほぼ同じである2つの例を図3および図4に示す。プロセッサ20は、有効原料密度が原料粒径分布に相関するルックアップテーブルを使用して、原料のサブボリュームの有効密度peffを決定する。最後の工程では、プロセッサ20は、原料のサブボリュームの質量を決定するために、有効密度peffに見かけの体積Vappを乗じる。
【0047】
特定の実施形態を本明細書で詳細に説明してきたが、当業者であれば、本開示の全体的な教示を考慮して、これらの詳細に対する様々な修正および代替案を開発できることを理解するであろう。したがって、開示された特定の構成は、例示的なものに過ぎず、添付の特許請求の完全な範囲ならびにその任意のおよびすべての等価物を与えられる本発明の範囲を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5