(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接触力の測定値に対する前記インピーダンスの測定値の前記比が、前記インピーダンスの測定値が分子または分母の一方であり、前記接触力の測定値が分子または分母の他方である分数を含む、請求項1に記載のシステム。
前記インピーダンスの測定値が、複素インピーダンスを含み、前記接触力の測定値に対する前記インピーダンスの測定値の前記比が、少なくとも前記複素インピーダンスの抵抗およびリアクタンスから計算された指標、または、前記複素インピーダンスの絶対値および位相角から計算された指標が、分子または分母の一方であり、前記接触力の測定値が分子または分母の他方である分数を含む、請求項1に記載のシステム。
前記電極と電気的に結合されているとともに、前記電極と前記組織との間の前記インピーダンスを評価するために、前記電極に信号を出力するように構成されており、前記インピーダンスが複素インピーダンスである、信号発生器と、
前記電極と前記組織との間の前記接触力の測定値を提供するために、力センサと作動的に結合されるように構成された光信号源と、
を更に備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【背景技術】
【0003】
心房細動は、心臓の2つの上室(心房)に関わる一般的な心不整脈である。心房細動では、心房および肺静脈で始まる無秩序な電気刺激が、洞房結節によって発生される正常な電気刺激を圧倒して、心拍動を発生させる心室への不規則な刺激の伝導に至る。心房細動は、結果として、血液が心房に再循環して血塊を形成するようにさせ得る心房の収縮不良になり得る。したがって、心房細動を患う個人は卒中のリスクが著しく高まる。心房細動はうっ血性心不全または、極端な場合、死にも至り得る。
【0004】
心房細動の一般的な治療は、心房細動を正常な心臓リズムに変換する投薬または同期電気的除細動を含む。より従来の治療に反応しない、またはそれらから重篤な副作用を被る個人のために、手術ベースの療法も開発されてきた。手術技術は、左右の心房を切開して心房室周辺の異常な電気刺激の伝播を遮断することを含む。
【0005】
手術ベースの技術の低侵襲代替策として、更に、より従来の治療(例えば、投薬)に反応しない、またはそれらから重篤な副作用を被る個人のための代替策として、カテーテル・ベースの接触アブレーション技術が発展してきた。接触アブレーション技術は、心房細動が始まると思われている肺静脈近くの細胞群のアブレーション、または左心房の後壁に位置する肺静脈からの電気経路を壊す広範な損傷の生成を伴う。エネルギー送出の方法は、高周波、マイクロ波、凍結、レーザおよび高密度超音波を含む。鼠径部または頸部で静脈に入り、心臓まで通されるカテーテルを介して、接触プローブが心臓に入れられ、したがって外部からの心臓壁の切開を不要とする。プローブは次いで、左心房の後壁と接触させられて通電され、組織を局所的に切除し、左心房から肺静脈を電気的に隔離する。カテーテル・ベースの接触アブレーション技術の利点は、低侵襲手術処置を含むと認識されてきており、したがって感染のリスクおよび短縮した回復時間を低減する。
【0006】
完全な電気的隔離が所望される場合、接触アブレーション技術の目的は、左心房と肺静脈との間に切除組織の連続した「アブレーション・ライン」または「隔離ライン」を形成することである。隔離ラインを達成するための少なくとも2つの異なる手法が開発されてきた。エネルギー送出が接触プローブの長手軸と略一列の接触プローブの先端からである点接触アブレーション、および、エネルギー送出が接触プローブの側面からであり、かつ接触プローブの長手軸に略直角である線状接触アブレーションである。
【0007】
カテーテル・ベースの接触アブレーション技術に関する懸念は心房細動の術後再発であり、心房組織への隔離ラインを横切る1つまたは複数の肺静脈の電気的再接続によって引き起こされると思われている。この種類の電気的再接続が生じる隔離ラインに沿った部位は「隔離ギャップ」または単に「ギャップ」と称される。ギャップは、点接触アブレーションか線状接触アブレーションかいずれかの技術のアブレーション中の準最適カテーテル接触力のため、または見落とされた領域に生じ得る。左前壁が、しばしば、肺静脈隔離中に安定した接触を達成するのが困難な領域であり、結果として局所隔離ギャップの発生率が高くなる。
【0008】
あり得る隔離ギャップを同定または予測する1つの手法は、隔離ラインが作成された後に、隔離ラインを横切って電気的連続性測定を行うことであった。この手法は、線状接触アブレーション技術に対しては一部の場合に機能することがあるのに対して、点接触アブレーション技術に対しては全般的に効果的でなく、その理由は、隔離を生じさせるアブレーション工程中の不完全な損傷形成の結果として隔離ギャップが存在することになるか、しないことになるかを予測する能力に対する比較的高い信頼を確立するために、点接触アブレーション技術が、あまりに多くの時間およびあまりに多くの連続性測定を必要とするからである。加えて、アブレーション直後の損傷の組織特性が時間とともに変化し得るし、隔離ラインと関連づけられる最終的な損傷を表さないことがあるので、隔離ラインの術中の連続性測定が心房細動の再発の正確な予測因子でないことがあることが見出されている。
【0009】
点接触アブレーション技術の場面での損傷形成の予測可能性は、力感知アブレーション・カテーテルの出現で強化されてきた。2点間アブレーション手順で活用される接触力を組み込む能力が、アブレーション範囲の予測に向けられた新たなシステムおよび工程に至った。米国特許出願公開第2010/0298826号、現米国特許第8,641,705号は、本件の譲受人に譲渡されており、カテーテル・ベースのアブレーション・システムにおける損傷範囲のリアル・タイム推定のための力時間積分の使用を開示している。米国特許出願公開第2010/0298826号は、あたかも本明細書に完全に述べられているかのように、引用により本明細書に援用される。
【0010】
人間の解剖学的構造を苦しませる様々な状態を治療するために、アブレーション療法を使用してもよい。アブレーション療法が特定用途を見つけるという1つのそのような状態は、例えば、心房性不整脈の治療においてある。組織が切除される、または少なくともアブレーション発生器によって発生されてアブレーション・カテーテルによって送出されるアブレーション・エネルギーにさらされると、組織に損傷が形成される。より詳細には、心房性不整脈(異所性心房頻拍、心房細動および心房粗動を含むが、これらに限定されない)などの状態を是正するために、アブレーション・カテーテル上または内に装着される電極を使用して心臓組織に組織壊死を生じさせる。不整脈は、種々の病気および死にさえ至り得る、不規則な心拍数、同期房室収縮の消失および血流の静止を含む、種々の危険状態を生じさせ得る。心房性不整脈の主因が心臓の左または右の心房内の漂遊電気信号であると思われている。アブレーション・カテーテルは、心臓組織にアブレーション・エネルギー(例えば、高周波エネルギー、凍結、レーザ、化学薬品、高密度焦点式超音波など)を与えて心臓組織に損傷を生じさせる。この損傷は、望ましくない電気経路を中断させ、それによって不整脈に至る漂遊電気信号を制限または防止する。
【0011】
アブレーション手順に関する1つの課題は、組織へのアブレーション・エネルギーの印加の結果としての損傷形成の評価にある。例えば、組織の特定領域が切除されたか否か、切除組織が切除された程度、損傷ラインが連続的であるかギャップを有するか、などを判定することが困難であることがある。損傷形成は典型的に、いくつかの異なる経験的技術のいずれか1つを使用して評価されてきた。
【0012】
1つのそのような技術は、例えばRF電力設定と組み合わされるカテーテル接触の主観的感覚、および電極が組織と接触して費やす継続時間に依存する。別の技術は温度感知を利用する。更なる方法はアブレーション・カテーテル電位図信号に依存する。RF切除心筋が脱分極波面伝導不良を示し、したがって局所電位図振幅減少および形態変化が時に、一貫してでなく観察される。したがって、損傷形成の評価は通常、直接客観的な根拠を有しない。
【0013】
上記の考察は、当分野を例示するものとのみ意図され、請求項範囲の否認としてとられるべきでない。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は以下、概して3つの部分を含む。第一に、アブレーション手順を行って損傷範囲を推定するための広範なシステムを
図1および
図2に関して記載することになる。第二に、
図2のシステムのアブレーションおよびインピーダンス感知特徴を
図1〜
図4に関して詳述することになる。第三に、
図2のシステムを使用する組織形態性状診断および損傷深さ推定について述べることになる。この第3の態様の一部として、本開示の組織形態性状診断および損傷範囲推定の方法の有効性を示す実験データについて
図5〜
図15を参照しつつ述べることになる。
【0035】
アブレーションを行って損傷範囲を推定するためのシステム
様々な図において類似の数字が同じまたは同様の要素を示す図面をここで参照すると、
図1は、医療手順を行うためのシステム10の例証的な実施形態のブロック図である。システム10は、例えば、患者の心臓など、患者の組織16にアブレーション手順を行うために使用されてもよい。システム10は、マッピングおよびナビゲーション・システム30、アブレーション発生器24、力感知システム25、インピーダンス感知システム26および長尺医療装置14を含んでもよい。長尺医療装置14は、単に例として、カテーテルでもよく、本開示の残りを通してカテーテルと称することにする。しかしながら、長尺医療装置14がまた、ガイドワイヤ、イントロデューサもしくは何らかの他の長尺医療装置であっても、またはそれを含んでもよいことを理解するべきである。
【0036】
カテーテル14は、一実施形態において、アブレーション・エネルギーを送出し、アブレーション・エネルギーの送出に関連した様々な測定を行うための構成要素を含め、アブレーション手順を行うための様々な構成要素を含んでもよい。例えば、カテーテル14は、一実施形態において、力センサ15(
図2を参照のこと)およびアブレーション電極17を含んでもよい。加えて、カテーテル14は、ハンドル42、シャフト44および他の構成要素を含んでもよく、それらは
図1および
図2に例示され、同図に関して記載されることになる。
【0037】
引き続き
図1および
図2を参照して、アブレーション電極17は、カテーテル14が患者19の組織16にアブレーション・エネルギーを送出するために設けられてもよい。そのようなアブレーション電極17が1つまたは複数、設けられてもよい。アブレーション電極17は、リング電極、チップ電極、スポット電極などであっても、またはそれを含んでもよい。
【0038】
インピーダンス感知システム26(
図2)は、組織インピーダンスを測定するために設けられてもよい。インピーダンス感知システム26は、電極(例えば、アブレーション電極17、パッチ電極20およびパッチ電極22)ならびにインピーダンス・センサ58であっても、またはそれらを含んでもよい。インピーダンス感知システム26が信号を発生する実施形態において、
図2〜
図4に例示されて下記されるように、第1の電極と第2の電極との間に電流が駆動されて、組織16のインピーダンスを求めてもよく、それは複素インピーダンスでもよい。組織16のインピーダンスは、例えば、パッチ電極18、20および22など、身体19上の場所のパッチ電極を使用して測定されることができる。組織16のインピーダンスは、米国特許出願公開第2014/0364715号における記載と同様に、1つまたは複数の電極(例えば、多電極インピーダンスまたはダイポール)を使用して測定されることもでき、同出願の全体が、あたかも本明細書に完全に述べられているかのように、引用により本明細書に援用される。
【0039】
引き続き
図2を参照すると、力センサ15は、カテーテル14と組織16との間の接触力の測定のために設けられてもよい。例えば、力センサ15は、接触力絶対値および/または力ベクトルが測定されてもよい出力を発生するように構成されてもよい。接触力は、一実施形態において、それぞれ、カテーテル14の一部分(例えば、アブレーション電極17)と組織16との間の接触についてでもよい。力センサ15は、一実施形態において、光センサから成ってもよい。例えば、力センサ15は、一実施形態において、ファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)などの1つまたは複数の干渉ベースの要素を有する1つまたは複数の光ファイバから成ってもよい。追加的または代替的に、力センサ15は、カテーテル14の遠位端48(
図1)における1つまたは複数の反射面内に終端する、またはその他それら内もしくは上に光を射出し、そのためカテーテル14と組織16との間の力の大きさおよび方向が変化するにつれて、反射面によって反射される光量が変化する、1つまたは複数の光ファイバから成ってもよい。例証的な実施形態において、カテーテル14は、3つの光ファイバを含んでもよく、各々、1つまたは複数のそれぞれの干渉要素および/または反射要素を含む。他の実施形態において、1つまたは複数の異なる種類の力センサを使用して、カテーテル先端と組織16との間の接触力および合力を求めることができる。例えば、力センサ型は、超音波、磁力、インピーダンス、歪ゲージ、圧電を含み得るか、または力を検出するための当該技術で知られている他のセンサを使用することができる。
【0040】
アブレーション発生器24は、カテーテル14と結合され(例えば、アブレーション電極17と電気的に結合され)、カテーテル14に(例えば、アブレーション電極17に)アブレーション・エネルギーを提供するように構成されてもよい。例えば、一実施形態において、アブレーション発生器24は約450MHzで電気信号を提供してもよい。アブレーション発生器24は、一実施形態において、組織16のインピーダンスを測定するように更に構成されてもよい。
【0041】
力感知システム25(
図1および
図2)は、カテーテル14と組織16との間の接触力を求めるための力センサ15(
図2)と結合されてもよい。力感知システム25は、一実施形態において、プロセッサ27、メモリ29および光信号源31を含んでもよい。光信号源31は、カテーテル14内の1つまたは複数の光ファイバと結合され、光ファイバを通して光信号を提供するように構成されてもよい。力感知システム25は、反射光信号を受信し、反射光信号に基づいて接触力を計算するように更に構成されてもよい。一実施形態において、光信号源31は、カテーテル内の3つの光ファイバに対する光信号を発生および送信するように構成されてもよく、そして力感知システム25は、3つの反射光信号を受信し、カテーテル14と組織16との間の接触力ベクトル(例えば、絶対値および方向)を計算するように構成されてもよい。
【0042】
力感知システム25および力センサ15は、St.Paul MinnesotaのSt.Jude Medical,Inc.から市販されているTactiCath(商標)Quartz(商標)アブレーション・カテーテル・システムに使用されるものと同様の、または同じ技術を含んでもよい。追加的または代替的に、力感知システム25および力センサ15は、米国特許出願公開第2007/0060847号、第2008/0009750号および第2011/0270046号の1つまたは複数に例示および/または記載されている力感知センサ、システムおよび技術を含んでもよく、同出願の各々が、あたかも本明細書に完全に述べられているかのように、その全体が引用により本明細書に援用される。
【0043】
力感知システム25は、一実施形態において、損傷範囲指数を推定する指標を計算するよう構成されてもよい。そのような指標のいくつかの実施形態が、上記引用した米国特許出願公開第2007/0060847号に詳細に記載されている。そのような指標の例証的な実施形態の簡単な説明も以下に述べる。
【0044】
力感知システムによって計算されてもよい第1の損傷範囲推定指標は損傷範囲指数(LSI)である。LSI計算は、以下の式(1)の一般形に従って行われてもよい。
【数1】
式中、Fはグラム単位の力であり、Iはミリアンペア単位の電流であり、tは秒単位の時間であり、f
0、f
1およびf
2は力パラメータ係数であり、i
1およびi
2は電流係数であり、k
0は拡散加熱係数であり、k
1は再スケーリング係数であり、そしてτは特性時間値である。出力LSIはミリメートル単位である。
【0045】
式(1)に反映されるLSIモデルは、時間から独立しているジュール加熱成分1−k
0および時間の関数である数2の拡散加熱成分を含む。
【数2】
ジュール加熱および拡散加熱成分は、期間Tにわたる平均力Fおよび電流Iとして、Tの期間継続するアブレーションに対して推定される損傷深さにより乗算される。このLSI式化の進展で分析されるデータは、60秒の期間Tに対して発生された。60秒のベースライン時間が60秒のアブレーション時間に基づいた損傷データの可用性の結果であったことに留意するべきである。異なる継続時間(例えば、30秒または45秒)のアブレーションからのデータも、拡散加熱成分の分子に見られる「60」に対する適切な時間の代入によって、式(1)と同様の形で使用されることができる。
【0046】
LSIの多数の変形が存在する。例えば、損傷幅指数(LWI)および損傷深さ指数(LDI)が2つであり、その各々を使用して損傷範囲を推定してもよい。LWIおよびLDIは、LSIと同じ形(すなわち、上記式(1))であるが、係数値が異なる式に従って計算してもよい。実験的に求めることができる例証的な係数値を以下の表(1)に与える。
【表1】
【0047】
インピーダンス感知システム26は、複素インピーダンスなど、組織16のインピーダンスを求めるために設けられてもよい。
図1および
図2に図示されるように、インピーダンス感知システム26は、プロセッサ37、メモリ39、ならびに一実施形態において信号発生器61およびセンサ58を含むことができる組織感知回路を含んでもよい。インピーダンス感知システム26は、カテーテル14と(例えば、カテーテル14上のアブレーション電極17ならびに/または1つもしくは複数の他の電極と)電気的に結合されてもよく、信号発生器61からアブレーション電極17ならびに/または他の電極(例えば、パッチ電極18、20および22)に信号を駆動してもよく、そして信号を分析して組織16の複素インピーダンスの1つまたは複数の成分(例えば、絶対値、位相角、抵抗ならびに/もしくはリアクタンス)を求めてもよい。インピーダンス感知システム26の機能性は、
図1〜
図4を参照しつつ以下に更に詳細に記載される。
【0048】
図1および
図2を更に参照すると、マッピングおよびナビゲーション・システム30は、他の機能の中でもとりわけ、臨床医が組織16を視覚化し、診断または治療の対象とされる組織16およびその周辺にカテーテル14をナビゲートすることを可能にするために設けられてもよい。したがって、マッピングおよびナビゲーション・システム30は、他の機能の中でもとりわけ、臨床医が組織16に対するカテーテル14の場所を見ることを可能にする、組織のモデルの生成および表示、組織16の電気生理学的(EP)マップの生成および表示、カテーテルの追跡、ならびに1つまたは複数のマップまたはモデルのディスプレイ34へのカテーテル14の重畳を含め、種々の機能が設けられてもよい。マッピングおよびナビゲーション・システム30は、本明細書に記載される機能および/または他の機能を実施するために、ECU32およびディスプレイ34を備え、ECU32がプロセッサ33およびメモリ35を含んでもよい。
【0049】
マッピングおよびナビゲーション・システム30は、St.Jude Medical,Inc.から市販されており、同一出願人による米国特許第7,263,397号を参照しつつ略図示される、EnSite(商標)Velocity(商標)システムであっても、またはそれを含んでもよく、同特許の開示全体が引用により本明細書に援用される。マッピングおよびナビゲーション・システム30は、Biosense Webster CARTO(商標)システム、Boston Scientific RHYTHMIA(商標)システム、一般に入手可能な蛍光透視システム、またはSt.Jude Medical,Inc.から市販されているMediGuide(商標)技術に基づくものなどの磁界ベースのシステムを追加的または代替的に含んでもよい。
【0050】
一実施形態において、マッピングおよびナビゲーション・システム30、アブレーション発生器24、力感知システム25およびインピーダンス感知システム26は、データの交換、電気信号のルーティングおよび他の機能のために様々な構成で互いと通信状態にあってもよい。一実施形態において、データの交換および信号のルーティングは、力センサ15による測定から導出される力データ、インピーダンス感知システム26による測定から導出されるインピーダンス・データおよびアブレーション電極17による送出エネルギーの1つまたは複数を使用して組織形態を性状診断する、かつ/または予測もしくは推定損傷範囲を計算する、カテーテル14を伴うアブレーション手順に寄与することができる。組織形態性状診断および損傷範囲推定により詳細に着目する前に、インピーダンス感知システム26およびアブレーション発生器24の動作を、カテーテル14の追加特徴と共に、より詳細に記載することにする。
【0051】
システムのアブレーションおよびインピーダンス感知態様
図1は、アブレーション手順を行うためのシステムの線図である。システムは、
図2のシステムにも見られる多数の構成要素を含む。特に、
図1のシステムは、
図2のシステムにも見られるアブレーションおよびインピーダンス感知構成要素を含み、したがって
図1に関するそのような態様の考察は、
図2のシステムにも当てはまると考えるべきである。
【0052】
図1、
図3および
図4のシステムならびに、例えばECI値を求めるその使用と同様の実施形態が米国特許第8,403,925号に詳細に記載されており、同特許が、あたかも本明細書に完全に述べられているかのように、その全体が引用により本明細書に援用される。ECIおよび損傷モニタリングについての追加情報が米国特許出願公開第2011/0144524号、第2011/0264000号および第2013/0226169号に記載されており、同出願の各々が、あたかも本明細書に完全に述べられているかのように、引用により本明細書に援用される。システムならびに複素インピーダンスおよびECIを求めるためのその使用の簡単な説明を以下に提供する。
【0053】
システム10は、とりわけ、患者の体の組織16の、複素インピーダンスなどのインピーダンスの他に、カテーテル14上の電極と組織16との間の電気的結合度など、そのインピーダンスに基づく1つまたは複数の指標を求めるために使用されてもよい。例示される実施形態において、組織は心臓または心臓組織16から成る。しかしながら、システム10が、電極と種々の異なる種類の体組織との間の結合を評価するために使用されてもよいことを理解するべきである。
【0054】
カテーテル14に加えて、システム10は、パッチ電極18、20および22、アブレーション発生器24、インピーダンス感知システム26、電気生理(EP)モニタ28ならびにマッピングおよびナビゲーション・システム30を含んでもよい。
【0055】
カテーテル14は、灌流のためにポンプ38(図示されるように、例えば、流体源からの重力送り供給のある固定速度ローラー・ポンプまたは可変容量シリンジ・ポンプから成ってもよい)を通じて食塩水などの生体適合性流体を送出するための流体源36に接続されてもよい。カテーテル14は、RFエネルギーの送出のためのアブレーション発生器24にも電気的に接続されてもよい。カテーテル14は、ケーブルコネクタまたはインタフェース40、ハンドル42、近位端46および遠位端48(本明細書で使用する場合、「近位」は臨床医近くのカテーテル14の端部に向けた方向を指し、「遠位」は臨床医から離れ、かつ患者の(略)体内への方向を指す)を有するシャフト44、ならびに1つまたは複数の電極を含んでもよい。カテーテル14は、温度センサ、追加電極および対応する導体または導線など、本明細書に例示されない他の従来の構成要素も含んでもよい。
【0056】
コネクタ40は、例えばポンプ38およびアブレーション発生器24から延びるケーブル54および56に機械的、流体および電気接続を提供してもよい。コネクタ40は、当該技術で従来通りでもよく、カテーテル・ハンドル42の近位端に設けられてもよい。
【0057】
ハンドル42は、臨床医がカテーテルを持つ場所を提供してもよく、身体19内のシャフト44を操縦または誘導するための手段を更に提供してもよい。例えば、ハンドル42は、シャフト44の遠位端48までカテーテル14を通って延びるガイドワイヤの長さを変えてシャフト44を操縦する手段を含んでもよい。ハンドル42も当該技術で従来通りでもよい。代替の例証的な実施形態において、カテーテルはロボット的に駆動または制御されてもよい。したがって、臨床医がハンドルを操作してカテーテルおよびそのシャフトを操縦または誘導するよりもむしろ、特に、ロボットを使用してカテーテルを操作してもよい。
【0058】
シャフト44は、身体19内での移動のために構成された長尺で管状の可撓性部材でもよい。シャフト44は、電極50および52、関連導体、および場合により信号処理または調整のために使用される追加エレクトロニクスを支持してもよい。例えば、シャフト44は力センサを更に含んでもよい。シャフトは、流体(灌流流体および体液を含む)、薬剤ならびに/または手術道具もしくは器具の移送、送出ならびに/または除去も許容してもよい。シャフト44は、ポリウレタンなどの従来の材料から作られてもよく、電気伝導体、流体または手術道具を収納および/または移送するように構成された1つまたは複数のルーメンを画定してもよい。
【0059】
電極50および52は、例えば、電気生理学的研究、カテーテル識別および位置づけ、ペーシング、心臓マッピングおよびアブレーションを含む種々の診断および治療目的で設けられてもよい。カテーテル14は、一実施形態において、シャフト44の遠位端48にアブレーション・チップ電極17を含んでもよい。しかしながら、電極(例えば、17、50、52)の数、形状、向きおよび目的が異なってもよいことを理解するべきである。
【0060】
パッチ電極18、20および22は、RFもしくはナビゲーション信号注入経路を提供してもよく、かつ/または電位を感知するために使用される。パッチ電極18、20および22は、可撓性の導電性材料から作られてもよく、パッチ電極が患者の皮膚と電気接触しているように身体への貼付のために構成されてもよい。別の電極が、RFアブレーション信号のためのRF不関/分散帰還として機能してもよい。電極は、RFアブレーション信号源55および/または以下により詳細に記載されるようにインピーダンス感知システム26によって発生される励起信号のための帰還として機能してもよい。
【0061】
アブレーション発生器24は、カテーテル14による(例えば、カテーテル上の電極の1つまたは複数を通じた)出力のためにRFエネルギーを発生、送出および制御してもよい。発生器24は、一対の信号源コネクタ:チップ電極に接続することができる正極性コネクタSOURCE(+);およびパッチ電極の1つに導体または導線によって電気的に接続されることができる負極性コネクタSOURCE(−)(例えば、
図3を参照のこと)にわたって出力されるアブレーション信号を発生するように構成されたRFアブレーション信号源を含んでもよい。本明細書で使用するコネクタという用語は、特定の種類の物理インタフェース機構を暗示するのでなく、むしろ1つまたは複数の電気的ノードを表すものと広く企図されることを理解するべきである。信号源55は、1つまたは複数のユーザ指定パラメータ(例えば、電力、時間など)に従って、かつ様々なフィードバック感知および制御回路網の制御下で、所定の周波数で信号を発生するように構成されてもよい。信号源55は、例えば、約450kHz以上の周波数で信号を発生してもよい。
【0062】
発生器24はまた、インピーダンス、カテーテルの先端での温度およびアブレーション・エネルギーを含む、アブレーション手順と関連づけられた様々なパラメータをモニタリングしてもよく、発生器は、これらのパラメータに関して臨床医にフィードバックを提供してもよい。発生器によるインピーダンス測定出力は、チップ電極と不関パッチ電極との間の全体インピーダンスを反映してもよい。例証的な実施形態において、アブレーション発生器24は、RFアブレーションの目的で高周波電流を、インピーダンスを測定する目的で第2の低周波電流を発生してもよい。
【0063】
インピーダンス感知システム26は、インピーダンス測定に使用される励起信号を発生するための、組織感知信号源61などの装置、および検出したインピーダンスをその構成部分に分解するための、複素インピーダンス・センサ58などの手段を提供してもよい。信号源61は、信号源コネクタSOURCE(+)およびSOURCE(−)(
図3を参照のこと)にわたって励起信号を発生するように構成されてもよい。信号源61は、約1kHzから500kHzを超える範囲内の、より好ましくは約2kHz〜200kHzの範囲内の、更に好ましくは約20kHzの周波数を有する信号を出力してもよい。1つの実施形態において、励起信号は、好ましくは20〜200μA間の範囲の、より好ましくは約100μAの定電流信号でもよい。後述するように、信号源61によって発生される定電流AC励起信号は、組織の複素インピーダンスに依存しており、かつ複素インピーダンス・センサ58によって感知される対応するAC応答電圧信号を発生させるように設定されてもよい。複素インピーダンスは、その構成部分(すなわち、抵抗(R)およびリアクタンス(X)、またはインピーダンス絶対値(|Z|)および位相角(∠Zもしくはφ))に分解される。インピーダンス・センサ58は、着目していない周波数を阻止するが、励起周波数などの、通過させる適切な周波数を許容する従来のフィルタ(例えば、帯域通過フィルタ)の他に、測定した複素インピーダンスの構成部分を得るために使用される従来の信号処理ソフトウェアを含んでもよい。
【0064】
いくつかの変形が可能であることを理解するべきである。例えば、励起信号はAC電圧信号でもよく、この場合、応答信号はAC電流信号から成る。それにもかかわらず、定電流励起信号がより実用的であるとして好まれる。一部の状況ではRFアブレーション信号の周波数またはその近くに励起信号周波数を有することに利点があり得るにもかかわらず、励起信号周波数が好ましくはRFアブレーション信号の周波数範囲の外であり、これにより複素インピーダンス・センサが2つの信号をより容易に区別することができ、そしてAC応答電圧信号のフィルタリングおよび以降の処理を容易にすることを認識するべきである。代替的に、システムは、各信号(RFアブレーションおよび励起)を交互の周期でオン/オフ循環させることができ、それらは時間的に重複しなくなる。励起信号周波数は、好ましくは、従来予期される0.05Hz〜1kHzの周波数範囲の電位図(EGM)信号の周波数範囲外でもある。したがって、要約すると、好ましくは、励起信号は、好ましくは典型的なEGM信号周波数を上回り、典型的なRFアブレーション信号周波数を下回る周波数を有する。
【0065】
インピーダンス感知システムも、下記の目的で、一対の感知コネクタ:チップ電極17に接続することができる正極性コネクタSENSE(+);ならびにパッチ電極18、20および22の1つに電気的に接続されることができる負極性コネクタSENSE(−)にわたって接続されてもよい(
図1および
図3を参照のこと;しかしながら、後述するように、コネクタSENSE(−)が、コネクタSOURCE(−)に対して、パッチ電極18、20および22の異なる電極に接続されるべきであることに留意されたい)。本明細書で使用するコネクタという用語は、特定の種類の物理インタフェース機構を暗示するのでなく、むしろ1つまたは複数の電気的ノードを表すものと広く企図されることを再度理解するべきである。
【0066】
ここで
図3を参照すると、コネクタSOURCE(+)、SOURCE(−)、SENSE(+)およびSENSE(−)は、チップ電極および組織の界面での複素インピーダンスの測定を許容する三端子配置を形成する。複素インピーダンスは、以下の式(2)に規定されるように直交座標で表すことができる。
【数3】
式中、Rは抵抗成分(オームで表される)であり、Xはリアクタンス成分(同様にオームで表される)である。
【0067】
複素インピーダンスは、以下の式(3)に規定されるように極座標で表すこともできる。
【数4】
式中、|Z|は複素インピーダンスの絶対値(オームで表される)であり、∠Z=θはラジアンで表される位相角である。代替的に、位相角は、数4の式で度に換算して表してもよい本明細書の残りを通して、位相角は好ましくは度に換算して参照することにする。
【数5】
【0068】
図3に3つの端子が例示され、それらの端子は:(1)「A−カテーテル先端」と呼ばれる第1の端子であり、チップ電極17である;(2)「B_パッチ1」と呼ばれる第2の端子であり、ソース帰還パッチ電極22でもよい;および(3)「C_パッチ2」と呼ばれる第3の端子であり、感知帰還パッチ電極20でもよい、から成る。アブレーション発生器24の信号源55によって発生されるアブレーション(電力)信号に加えて、インピーダンス感知システム26における信号源61によって発生される励起信号60および62は、測定することができ、かつ複素インピーダンスに依存する負荷に関する応答信号を誘起する目的で、信号源コネクタ(SOURCE(+)、SOURCE(−))にわたって印加されてもよい。上記したように、一つの実施形態において、20kHzで100μAのAC定電流信号60が、例示されるように、1つのコネクタ(SOURCE(+)、ノードAから始まる)から共通ノード(ノードD)を通って帰還パッチ電極(SOURCE(−)、ノードB)への経路に沿って供給される。複素インピーダンス・センサ58は、感知コネクタ(SENSE(+)、SENSE(−))に結合されてもよく、経路62にわたるインピーダンスを求めるように構成される。線形回路の定電流励起信号の場合、インピーダンスは、オームの法則:Z=V/Iに従って、SENSE(+)/SENSE(−)にわたって発生される観察電圧に比例することになる。電圧感知がほぼ理想的であるので、電流は経路60のみを通って流れ、したがって、励起信号により経路62(ノードD〜ノードC)を通る電流は事実上ゼロである。したがって、経路62に沿って電圧を測定すると、唯一観察される電圧は、2つの経路が交差する個所(すなわち、ノードAからノードD)であることになる。2つのパッチ電極(すなわち、ノードBおよびCを形成するもの)の分離度に応じて、チップ電極17に最も近い組織体積に置かれる焦点が増加することになる。パッチ電極が物理的に互いに近い場合、カテーテル・チップ電極17とパッチ電極との間の回路経路は著しく重複することがあり、共通ノード(すなわち、ノードD)で測定されるインピーダンスは、カテーテル・チップ電極17および組織16の界面でのインピーダンスだけでなく、組織16と身体19の表面との間の他のインピーダンスも反映することがある。パッチ電極が移動されて更に離れるにつれて、回線パスの重複量は減少することがあり、共通ノードで測定されるインピーダンスはカテーテル14のチップ電極17またはその近くでのものだけでもよい。
【0069】
ここで
図4を参照すると、
図3に例示される概念が拡張される。
図4は、
図3に例示される三端子測定値配置の簡略図およびブロック図である。明確にするため、SOURCE(+)およびSENSE(+)線がカテーテル・コネクタまたはハンドルで結合されてもよく(実線のように)、またはチップ電極17まで完全に別々のままでもよい(SENSE(+)線がハンドルからチップ電極17まで仮想線で図示される)ことを指摘するべきである。
図4は、特に、全体的にブロック64として図示されるいくつかの複素インピーダンス変動源を図示しており、そのような変動は、複素インピーダンスが測定中である組織または電気的結合の生理学的変化を反映しないため、「ノイズ」と考えられる。参考として、複素インピーダンスが測定中である組織は、チップ電極17近くおよびその周辺のものであり、全体的に仮想線ボックス66によって囲まれる(組織16は抵抗器/キャパシタの組合せとして簡略形態で概略的に図示される)。1つの目的は、ボックス66内またはその周辺の変化によらない変動にロバストな、または影響されない測定配置を提供することである。例えば、様々なケーブル接続と直列に(例えば、SOURCE(+)接続に、SOURCE(−)およびSENSE(−)接続に、など)図示される可変複素インピーダンス・ボックス64は、ケーブル長さ変化、ケーブル巻取などによる抵抗/誘導変動を含んでもよい。パッチ電極18、20および22の近くである可変複素インピーダンス・ボックス64は、本質的により抵抗性/容量性でもよく、検査の過程の体の発汗などによることがある。後述するように、システム10の様々な配置はブロック64の変動に比較的影響されず、ブロック66に対する複素インピーダンス測定に関して高い信号対雑音(S/N)比を呈する。
【0070】
SOURCE(−)およびSENSE(−)帰還がパッチ電極18、20および22として
図4に例示されるとはいえ、他の構成が可能であることを理解するべきである。特に、不関/分散帰還電極18は、同一出願人による米国特許出願公開第2009/0171345号に記載されているように、帰還としての他に、リング電極50など、カテーテル14上の別の電極50、52として使用されてもよく、同出願の開示全体が、あたかも本明細書に完全に述べられているかのように、引用により本明細書に援用される。
【0071】
EPモニタ28(
図1)は、例えば電位図を含む電気生理データを表示するために設けられてもよい。モニタ28は、当該技術で従来通りでもよく、LCDもしくはCRTモニタまたは別の従来のモニタから成ってもよい。モニタ28は、アブレーション発生器24の他に、例示される実施形態で図示されない他の従来のEP研究室構成要素から入力を受信してもよい。
【0072】
ECU32は、カテーテル・チップ電極17と組織16との間の複素インピーダンスの値(例えば、抵抗およびリアクタンスならびに/または絶対値および位相角)を取得し、電極と組織との間の結合度を示す値に応答して指標を計算するように構成されてもよい。例えば、ECU32は、電気的結合指数(ECI)を計算するように構成されてもよい。
【0073】
ECU32は、インピーダンス感知システム26のセンサによって発生される信号から複素インピーダンスの2つの構成部分(すなわち、抵抗(R)およびリアクタンス(X)、またはインピーダンス絶対値(|Z|)および位相角(φ)、または上記もしくはその派生量もしくは機能的等価量の任意の組合せ)に対する値を取得するように構成されてもよい。ECU32は、2つの成分に対する値を、電極と組織との間の結合度、特に電極17と組織16との間の電気的結合度の改善された測定値を提供する単一のECI値に組み合わせるように更に構成されてもよい。
【0074】
複素インピーダンスの抵抗およびリアクタンス成分が使用される実施形態において、ECI値は以下の式(4)に従って求めてもよい。
【数6】
式中、Rバー及びXバーはそれぞれ抵抗およびリアクタンスの平均値であり、a、bおよびcは、例えば測定のために使用される特定の機器を考慮した実験的に求められる係数である。本明細書で使用する場合、抵抗またはリアクタンスに対する「平均値」(Rバー及びXバーによって表される)は、離散時間信号xiのN個のサンプルの平均または連続x(t)もしくは離散x(t
i)時間信号のローパスフィルタ値を指してもよい。
【0075】
4ミリメートル(mm)の灌流チップカテーテルを使用する特定の実施形態において、ECI値は以下の式(5)に従って求めてもよい。
【数7】
【0076】
心臓運動または換気によるインピーダンスの変動を反映する、成分の標準偏差または成分のピーク間絶対値など、インピーダンス成分と関連づけられる他の値がECI計算の実施形態で有用な因子として働くこともできることを理解するべきである。更に、上記の式が抵抗(R)およびリアクタンス(X)の直交座標に集中しているとはいえ、ECI値が極座標インピーダンス絶対値(|Z|)および位相角(φ)、またはそれどころか複素インピーダンスの上記の成分およびその派生量もしくは機能的等価量の任意の組合せと関連づけられる値に基づくこともあり得ることを理解するべきである。最後に、ECI値のための式内の係数、オフセットおよび値が、とりわけ、使用される特定のカテーテル、患者、機器、予測可能性の所望のレベル、治療中の種および疾病状態に応じて異なってもよいことを理解するべきである。
【0077】
上記したように、組織形態を性状診断し、かつ/または損傷範囲を推定もしくは予測するために、ECI値を他の因子と併せて使用してもよい。ECI値に加えて、複素インピーダンスから計算される追加指標の用途が組織形態性状診断および/または損傷範囲予測もしくは推定に見つかることがある。例えば、電気的結合指数率(ECIR)またはECIRの変化率である。
【0078】
ECIRは一般に、時間に伴う、かつ距離に伴うECIの変化を含んでもよい。一実施形態において、ECIRは、一定時間に伴いECIの変化を距離(すなわち、電極の位置の変化)で割ることによって計算してもよい。より詳細には、一実施形態において、ECIRは以下の式(6)に従って計算してもよい。
【数8】
【0079】
ECIRの変化率は以下の式(7)または式(8)に従って計算してもよい。
【数9】
【0080】
組織性状診断および損傷範囲推定
組織を性状診断し、かつ/または改善された損傷範囲推定もしくは予測を提供するために、インピーダンスまたはインピーダンス・ベースの指標を接触力と併せて使用してもよい。より詳細には、一実施形態において、組織を性状診断し、かつ/または改善された損傷範囲推定を提供するために、接触力に対するインピーダンスまたはインピーダンス・ベースの指標の比を使用してもよい。
【0081】
図1および
図2を再度参照すると、システム10は、インピーダンス感知システム26、力感知システム25、アブレーション発生器24および/または他の供給源からのデータを活用して、組織形態を性状診断し、かつ/または損傷範囲を推定するように構成されてもよい。マッピングおよびナビゲーション・システム30のECU32、力感知システム25ならびにインピーダンス感知システム26の1つまたは複数が、システム内で発生されるデータに基づいて組織形態性状診断および/または損傷範囲推定を行うように構成されてもよい。すなわち、メモリの1つまたは複数が、関連プロセッサによって実行されると、ECU32、力感知システム25またはインピーダンス感知システム26に、組織形態を性状診断し、かつ/または損傷範囲を推定するために本明細書に記載されている1つまたは複数のステップ、工程または方法を行わせる命令を記憶してもよい。
【0082】
実施形態において、マッピングおよびナビゲーション・システム30のECU32、力感知システム25ならびにインピーダンス感知システム26は、
図2に概略的に表されるように、3つの別々のコンピューティング・システムとして実装されてもよい。代替的に、マッピングおよびナビゲーション・システム30のECU32、力感知システム25ならびにインピーダンス感知システム26、またはその機能性は、単一のコンピューティング装置、2つのコンピューティング装置または任意の他の数のコンピューティング装置に実装または分散されてもよい。したがって、本開示において特定のシステムに関して特定の機能性が記載されるとはいえ、そのような記載が本質的に単に例証的であることを理解するべきである。
【0083】
一実施形態において、システム10の様々なシステムおよびデバイスは、データおよび電気信号の伝送のために互いと通信状態にあっても、かつ/または電気的に結合されてもよい。例えば、マッピングおよびナビゲーション・システム30は、マッピングおよびナビゲーション・システム30がアブレーション発生器24を制御する(例えば、アブレーション・エネルギーの提供を制御する)、アブレーション発生器24によって測定されるインピーダンスを受信する、などのために、アブレーション発生器24と通信状態にあってもよい。アブレーション発生器24は、追加的または代替的に、アブレーション発生器24からカテーテル14へのアブレーション・エネルギーのルーティングのための他に、力感知システム25および/またはインピーダンス感知システム26へのアブレーション発生器24によって測定されるインピーダンスの提供のために、力感知システム25および/またはインピーダンス感知システム26と通信状態にあっても、かつ/または電気的に結合されてもよい(アブレーション発生器24と力感知システム25との間の電気的および通信的結合が
図2に破線によって示される)。
【0084】
力感知システム25は、マッピングおよびナビゲーション・システム30が力感知システム25の動作を制御するために、かつ/または力感知システム25が力感知システム25でもしくはそれによってなされた測定および計算をマッピングおよびナビゲーション・システム30に提供するために、マッピングおよびナビゲーション・システム30と通信状態にあってもよい。例えば、力感知システム25は、マッピングおよびナビゲーション・システム30に力ベクトルまたは力ベクトルに基づく指標(例えば、LSI、LWI、LDIなど)を提供するように構成されてもよい。部分的にそのようなデータに基づいて、マッピングおよびナビゲーション・システム30のECU32は組織形態を性状診断しても、かつ/または損傷範囲を推定してもよい。
【0085】
インピーダンス感知システム26は、マッピングおよびナビゲーション・システム30がインピーダンス感知システム26の動作を制御するために、かつ/またはインピーダンス感知システム26がインピーダンス感知システム26でもしくはそれによってなされた測定および計算をマッピングおよびナビゲーション・システム30に提供するために、マッピングおよびナビゲーション・システム30と通信状態にあってもよい。例えば、インピーダンス感知システム26は、マッピングおよびナビゲーション・システム30に複素インピーダンス、複素インピーダンスの1つまたは複数の成分および/または複素インピーダンスもしくは複素インピーダンスの成分に基づく指標(例えば、ECI値、ECIR値、ECIRの変化率など)を提供するように構成されてもよい。部分的にそのようなデータに基づいて、マッピングおよびナビゲーション・システム30のECU32は組織形態を性状診断しても、かつ/または損傷範囲を推定してもよい。
【0086】
現在の臨床診療では、心臓組織とのアブレーション・カテーテル先端接触の評価は、接触力かインピーダンスかの測定を使用して評価される。これらの2つの測定が組織との電極接触に関する同様の情報を提供するのを認められるにもかかわらず、それらは、基本的に異なるが潜在的に好ましい情報を提供する。カテーテル先端と組織との間で測定されるインピーダンスは、温度、接触中の組織の解剖学的構造/病理/形態の他、電極/組織接触度などの多数の因子によって影響される。心内環境では、解剖学的構造/病理の差が、例えば、平滑対肉柱(櫛状)組織;健康な心筋対瘢痕組織;および健康対切除した心筋を含む。力とインピーダンスとの間の関係は下層組織の特性に応じて異なる。
【0087】
図5は、例えば組織形態/性状診断を求める、または損傷範囲(例えば、深さ、幅、最大直径での深さ、体積、横断面積)を予測するときに、第1の指標および第2の指標を使用するための例証的なステップの高レベル・フロー・チャートである。組織形態を求めるとき、第1の指標は、例えば、接触力の測定値(例えば、カテーテル先端と組織との間の接触力の絶対値)でもよく、第2の指標は、例えば、カテーテル先端と組織との間の抵抗の測定値、カテーテル先端と組織との間のリアクタンスの測定値、カテーテル先端と組織との間のECI値またはRF発生器インピーダンスでもよい。損傷深さを予測するとき、第1の指標は、例えば、LSI値でもよく、第2の指標は、例えば、組織性状診断を表してもよい。ステップは、第1の指標を測定すること(ボックス200で)、第2の指標を測定すること(ボックス202で)、および第1の指標も第2の指標も使用して組織形態を求める、または損傷深さを予測すること(ボックス204で)を含むことができる。
【0088】
図6は、最終的に、臨床医または他のシステム・ユーザに有用な情報(組織形態および/または予測損傷深さなど)を提示するように構成されたシステムにおいて種々の入力がどのように収集および使用されるかの1つの変形の高レベル・フロー・チャート300を描く。システムは、有用な結果を収集、記憶、処理、および臨床医に提示するための様々な構成要素を備えてもよい。例えば、下層システムは、データを受信するためのハードウェア、情報の揮発性および不揮発性記憶のためのハード・ドライブまたは他のデータ記憶デバイス、ならびにハードウェアを制御し、プログラムおよび他のルーチンを実行し、システム構成要素間でデータを移動し、計算をし、医師または臨床医などのユーザへの結果の表示または他の提示をもたらす1つまたは複数の中央処理ユニットまたは他のコンピューティング・デバイス(例えば、PLCもしくはASIC)を含んでもよい。例えば、細長いボックス311および321として
図6に概略的に描かれるデータ・バスを通じてデータの共有が生じてもよい。更に後述する
図6のフロー・チャートによって表される動作を実施するシステムの特定の構成は、本明細書に記載されるものから著しく異なり得る。
【0089】
図6のフロー・チャート300によって表される全工程は、入力を収集し、値を計算し、そして臨床医に対して出力を発生する3つの主要な段階を含むと考えられてもよい:(a)入力/データ取得段階301;(b)中間処理段階320;および最終処理段階330であり、描かれた例では、臨床医に何らかの種類の1つまたは複数の結果を出力することを含む。高レベルから、工程は、入力/データ取得段階301の間、様々な入力を集めること、中間処理段階320の間、1つまたは複数の中間値(LSI値(ボックス322を参照のこと)および/またはECI値(ボックス324を参照のこと)など)を求めることを含む。最終処理段階330の間、入力/データ取得段階301の間に集められた情報の1つまたは複数の追加部分と組み合わせて中間値を使用して、例えば、組織を性状診断し、かつ/または損傷の深さを予測する。1つの実施形態において、組織の性状診断は、それ自体、損傷予測処理の間に使用してもよい中間値である。最後に、同じく最終処理段階330の間に、臨床的に関連した情報が臨床医に提示される(例えば、更に後述するように、コンピュータ・スクリーンに様々な数字、色および/またはパターンを提示することによって)。
【0090】
1つの実施形態において、接触力の測定値(例えば、入力/データ取得段階301の間に集められ、次いでデータ・バス311、コネクタ・リンク315およびデータ・バス321を通じてボックス332に渡されるとして
図6に概念的に描かれる)に対する、ボックス324で求められた(例えば、入力/データ取得段階301の間に集められたデータを使用する)ECI値の比をとることによって、ボックス332で組織(または組織形態)性状診断「値」が求められる。組織性状診断値は続いて、コネクタ・ライン333およびボックス336によって表されるように、ボックス336で臨床医に提示または出力されてもよい。臨床医に出力される「値」は、例えば、数字、色、色強度、シェーディング・パターン、形状、なんらかの他のグラフィック表現、または任意の他の1つもしくは複数の指標の1つまたは複数の形態でもよい。ボックス336で発生される出力は、代替的または追加的に、カテーテル・フィードバック(例えば、音、表示灯、振動、振動パターン、または他の聴覚、視覚もしくは触覚フィードバック)を含んでもよい。1つまたは複数の出力値は、臨床医に、1つもしくは複数の特定の種類の存在する組織(例えば、瘢痕)または重要な組織特性(例えば、平滑、肉柱、櫛状)を通知してもよい。この求めた組織性状診断値と実際の組織型との間の相関は
図7Cおよび
図8Cを参照しつつ後述する。
【0091】
別の実施形態において、
図6に描かれるフロー・チャート300は、例えば、ボックス322で求めたLSI値(データ・バス321を通じて、そしてコネクタ・リンク329に沿ってボックス334に渡されるとして
図6に概念的に描かれる)およびボックス332で求めた組織性状診断値(コネクタ・リンク331に沿ってボックス334に渡されるとして
図6に概念的に描かれる)を使用して、予測される損傷範囲(例えば、深さ、幅、最大直径での深さ、体積、横断面積)を示す値を求めるために使用され得る。本実施形態において、例えば期待損傷深さを示す、求めた値は、コネクタ・リンク335およびボックス336によって概念的に描かれるように、臨床医に出力され得る。再度、臨床医に出力される「値」は前段落に記載されている形態であってもよい。出力値はまた、臨床医に、例えば、送出されるエネルギー量、またはアブレーション・エネルギーを送出するのを止める時間であることを通知してもよい。
【0092】
図6において入力/データ取得段階301で取得/測定され、かつ/または中間処理段階320もしくは最終処理段階330で求められたデータまたは他の情報は、複数のデータ経路(例えば、315、329、331、333、335)およびデータ・バス(例えば、311、321)を通じて共有されており、データ・バスは、データの移動および任意の必要とされる計算またはデータ・ルックアップ要件を管理するためにプロセッサまたは同様のデバイスも含むハードウェアおよびソフトウェア・システム全体の構成要素を含んでもよい。例えば、データ入力/取得ステップ301のデータ取得/収集に関与する1つまたは複数のプロセッサまたは同様のデバイスが第1のデータ・バス311に接続されてもよく、次いでここから中間処理ステップ320に関与する1つまたは複数のプロセッサに接続されてもよい。中間処理ステップ320関与する1つまたは複数のプロセッサは次いで第2のデータ・バス321に接続されてもよく、次いでここから最終処理ステップ330に関与する1つまたは複数のプロセッサに接続されてもよい。代替的に、単一のプロセッサもしくはプロセッサの単一の集合が段階301、320、330の3つ全ての間で使用されてもよく、または単一のプロセッサもしくはプロセッサの単一の集合が段階の2つの間で使用され、異なるプロセッサもしくはプロセッサの異なる集合が第3の段階の間で使用されてもよい。
【0093】
引き続き
図6を参照すると、入力/データ取得段階301は、例えば、組織16とのカテーテル先端17の界面で1つまたは複数の電気的パラメータ(例えば、抵抗およびリアクタンス)を測定する(ボックス302で)ことを含んでもよい。データ入力取得ステップ301は、カテーテル先端17と組織16との間の接触力を測定する(ボックス304で)こと、および/またはアブレーション・エネルギー送出パラメータを測定する(ボックス306で)ことも含んでもよい。アブレーション・エネルギー送出パラメータは、例えば、組織にエネルギーが送出される継続時間(エネルギー送出時間)、アブレーション時間全体の継続時間、組織に送出されるエネルギー量、ならびに、例えばカテーテル先端17および組織16の界面で測定されるRF発生器インピーダンスを含むことができる。データ・バスに加えて、または代替の実施形態として、例えば情報交換ネットワークなど、データをプロセッサまたはプロセッサの集合に利用可能にするための当該技術で知られている他の適切な配置を使用することができる。
【0094】
中間処理ステップ320は、例えば、LSI値を求め(ボックス322で)、かつECI値を求める(ボックス324で)1つまたは複数のステップを含むことができる。中間処理ステップ320の1つまたは複数のプロセッサまたは同様のデバイスは第2のデータ・バス321に接続されることができ、第2のデータ・バス321は最終処理段階330の1つまたは複数のプロセッサまたは同様のデバイスに接続される。上記したように、ボックス322で求められるLSI値は、例えば、ボックス306でのアブレーション・エネルギー送出パラメータからのRF電力、接触力および時間を使用して求めてもよい。ボックス324でのECI値は、例えば、ボックス304からの接触力およびボックス302の先端/組織界面での電気的パラメータを使用して求めてもよい。
【0095】
LSIの精度は(全体が、あたかも本明細書に完全に述べられているかのように、引用により援用される米国特許出願公開第2012/0209260A1号に記載されているように)、例えば、全接触力(カテーテル先端と組織との間の)に対するRF発生器インピーダンスの比か全接触力に対するECIの比かを含めることによって改善することができる。接触力に対するRF発生器インピーダンスの比および全接触力に対するECIの比は、平滑心臓組織と比較して肉柱心臓組織に対してより大きい。
【0096】
図7A〜
図7Dを参照すると、ブタ心臓の様々な位置での力と、それぞれ、抵抗、リアクタンス、ECIおよびRF発生器インピーダンスとの間の関係が、平滑(右心房(RA)中隔、RA後部、LA後部および僧帽弁輪)と櫛状(RA側部およびRAA)組織との間の直ちに明らかな差を図示する。
図7A〜
図7Dに表されるデータはブタの心内マッピングの間に生成された。
【0097】
図7Aは、合力と抵抗との間の関係を図示する。TactiCath(商標)Quartz(商標)カテーテルによって提供される接触力測定と組み合わせてRFアブレーション発生器(例えばVeriSense(商標)RFアブレーション発生器)を使用して健康なブタから収集される心内データが、カテーテル先端と組織との間の接触力およびインピーダンスの両方の同時測定が下層組織基質についての情報を提供することができることを立証する。
図7Aは、カテーテル先端が心臓の異なる解剖学的領域(RA隔膜中央部、RA中央後部、RA側部、前方側部RAA、LA僧帽弁輪、LA後部)と接触しているときの力対抵抗(R)データ対の差を例示する。抵抗が低めの平滑組織(力がほぼ0と35gとの間にわたり、抵抗が98と135オームとの間であるRA隔膜中央部、RA後部、LA後部および僧帽弁輪)と同様の力範囲にわたる抵抗が高めの櫛状組織(力がほぼ3と58gとの間にわたり、抵抗が140と175オームとの間であるRA側部およびRAA)との間の差は直ちに明らかである。
【0098】
図7Bは、カテーテル先端が心臓の異なる解剖学的領域と接触しているときの力対リアクタンス(X)データ対の差を例示する。同様の接触力の範囲にわたり、前方/側部右心耳(前方側部RAA)がリアクタンスの最大範囲(−15〜−6オーム)を有する一方、RA側部は−8と−6オームとの間のリアクタンス値を有する。RA隔膜中央部、RA中央後部、LA僧帽弁輪およびLA後部は全て、同様のリアクタンス値の範囲(ほぼ0と34gとの間の力で、−6と1オームとの間のリアクタンス)を有する。
【0099】
図7Cは、カテーテル先端が心臓の異なる解剖学的領域(RA隔膜中央部、RA中央後部、RA側部、前方側部RAA、LA僧帽弁輪、LA後部)と接触しているときの力対ECIデータ対の差を例示する。RA隔膜中央部、RA中央後部、LA僧帽弁輪およびLA後部は全て、同様の力範囲(ほぼ0と35gとの間)にわたり同様のECI値(ほぼ95と160との間)を有する。同様の力範囲にわたり、RA側部は170と210との間のECI値を有し、前方側部RAAはECI値(170と250との間にわたる)を有する。
【0100】
図7Dは、カテーテル先端が心臓の異なる解剖学的領域と接触しているときの力対RF発生器インピーダンス・データ対の差を例示する。RA隔膜中央部、RA中央後部、LA僧帽弁輪およびLA後部が全て100から115オームにわたる発生器インピーダンスを有するのに対して、RA側部および前方側部RAAは、同様の接触力の範囲にわたり115から125オームにわたる。
【0101】
図8Aは、側部SVCで第1の5秒ウィンドウの時間の間に収集される接触力値(グラフの下部)およびECI値(グラフの上部)を描く。同様に、
図8Bは、右心房側部で第2の5秒ウィンドウの時間の間に収集される接触力値(グラフの下部)およびECI値(グラフの上部)を描く。
【0102】
図8Cは、
図8Aおよび
図8Bに例示した同じデータを使用して合力対ECIの散布図を例示する。散布図は、全接触力とECIとの間の関係が2つの位置(SVCおよび右心房側部)で明らかに異なることを図示する。SVCおよび右心房側部(RA側部)は、ほぼ5と28gとの間にわたる同様の全接触力値を有する。しかしなら、SVCに対するECI値がほぼ100と120との間にのみわたる一方、右心房側方ECI値はほぼ125と155との間にわたる。
【0103】
図9Aは、側部SVCで第1の5秒ウィンドウの時間の間に収集される接触力値(グラフの下部)および発生器インピーダンス値(グラフの上部)を描く。同様に、
図9Bは、右心房側部で第2の5秒ウィンドウの時間の間に収集される接触力値(グラフの下部)および発生器インピーダンス値(グラフの上部)を描く。これらの記録は
図8に例示されるものと同時にとられた。
【0104】
図9Cは、全接触力と発生器インピーダンスとの間の関係が2つの位置(SVCおよび右心房側部)で異ならないことを図示する。接触力対ECI関係とは異なり、接触力対発生器インピーダンス関係はこれらの2つの解剖学的な位置間を区別しない。SVCおよび右心房側部(RA側部)は、ほぼ5と28gとの間にわたる同様の全接触力値を有し、同様に、SVCに対するおよび右心房側部に対する発生器インピーダンス値は同様にほぼ100と106との間にわたる。
【0105】
図10は、実際の損傷深さとLSI値との間の関係の例である。
図10では、重線形回帰分析が完了され、様々なシステムから記録される測定を最大RFアブレーション損傷深さに相関させた。TactiSys(商標)システムによって報告されるように、第1の分析は最初のLSI値だけを含んだ。実際のRF損傷深さとLSI値との間の関係に対するR
2は0.41であった。
【0106】
図11は、実際の損傷深さと予測損傷深さとの間の関係を描く。この例では、予測損傷深さは、合力に対するRF発生器インピーダンス値の比と組み合わせてLSI値に基づく。以下の式(9)は
図11に描かれる線を定義する。
【数10】
式(9)では、LSI値はTactiSys(商標)システムによって提供される損傷指数であり、ZはRF発生器によって提供されるアブレーションの開始0.5秒後の発生器インピーダンスの1秒平均であり、TFは同じ時点でのTactiSys(商標)システムからの合力(例えば、カテーテル先端と組織との間の接触力)である。実際の損傷深さと式(9)で予測した損傷深さとの間の相関は0.706のR
2という結果になった。
【0107】
図12は、実際の損傷深さと予測損傷深さとの間の関係を再度描く。この例では、しかしながら、予測損傷深さは、合力に対するECI値の比と組み合わせてLSI値に基づく。以下の式(10)は
図12に描かれる線を定義する。
【数11】
式(9)では、LSI値はTactiSys(商標)システムによって提供される損傷範囲指数であり、ECIはアブレーションの開始0.5秒後のECI値の1秒平均であり、TFは同じ時点でのTactiSys(商標)システムからの合力(例えば、カテーテル先端と組織との間の接触力)である。実際の損傷深さと式(10)で予測した損傷深さとの間の相関は0.842のR
2という結果になった。
【0108】
心臓組織との電気的結合度は、所与の接触力では、アブレーション・カテーテルが平滑組織と接触しているのと比較して、肉柱組織と接触しているときに、より大きいと期待される。加えて、他の全てが等しければ、例えば、アブレーション・チップ電極17と心臓組織16との間にある電気的結合が大きいほど、大きな損傷が形成されることになる。
図13(
図10と同様)および
図14は、線形回帰分析を使用してLSIに加えて組織表面形態(例えば、実験の間に分類されるように、平滑対肉柱)が考慮されるときの実際の損傷深さとLSIとの間の関係への改良を例示する。実際の損傷深さに相関すると、LSIへの組織表面形態の追加は、LSIだけの場合の0.41(上記の如く)と比較してR
2=0.77をもたらした。
【0109】
本明細書の他の場所で述べたように、接触力に対するECIまたはRF発生器インピーダンスの比は、組織表面形態の代わりを提供する。
図15は、表面形態と接触力に対するECIの比との間の関係を示す。特に、
図15の左側部分に図示されるように、接触力に対するECIの比は平滑組織に対しては大きく変動せず、接触力に対するECIの比は肉柱組織に対してより劇的に変動する。
【0110】
RFアブレーション損傷範囲を予測するときにLSIがRF電流、継続時間および接触力を考慮するとはいえ、LSIは、心臓組織に存在することがある重要な形態的変動を考慮していない。組織形態的差はRF損傷範囲予測可能性に影響しうる。
【0111】
本発明の多数の実施形態を一定の特殊性を持って上記したとはいえ、当業者は本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく開示した実施形態に多数の変更をし得る。全ての方向に関する言及(例えば、プラス、マイナス、上位、下位、上向き、下向き、左、右、左向き、右向き、上部、下部、上方、下方、垂直、水平、時計方向および反時計方向)は、読者による本開示の理解を援助するために単に同定目的で使用しており、特に本開示のいかなる態様の位置、向きまたは使用法に関しても、限定を生じさせることはない。本明細書で使用する場合、「ように構成された」、「ために構成された」という句および同様の句は、主題のデバイス、装置またはシステムが1つまたは複数の具体的な対象目的を満たすように設計および/または構築された(例えば、適切なハードウェア、ソフトウェアおよび/または構成要素を通じて)ことを示すのであって、主題のデバイス、装置またはシステムが単に対象目的を行うことが可能であることを示すのではない。接合に関する言及(例えば、添付、結合、接続など)は広く解釈するものであり、要素の接続間の中間部材および要素間の相対的運動を含んでもよい。そのため、接合に関する言及は、必ずしも2つの要素が直接接続されて互いに固定関係にあることを暗示するわけではない。上記説明に含まれる、または添付図面に図示される全ての事項を単に例示であり、限定ではないと解釈するものとすることが意図される。添付の請求項に記載の本発明の趣旨から逸脱することなく、詳細または構造の変更を加えてもよい。
【0112】
本明細書に引用により援用されると言われるいかなる特許、公報または他の開示材料も、全体的または部分的に、援用される材料が本開示に記載される既存の定義、文または他の開示材料と矛盾しない程度にのみ、本明細書に援用される。そのため、必要な程度で、本明細書に明示的に記載された本開示は、引用により本明細書に援用されるいかなる矛盾する材料にも優先する。本明細書に引用により援用されると言われるが、本明細書に記載される既存の定義、文または他の開示材料と矛盾するいかなる材料またはその一部も、その援用される材料と既存の開示材料との間で矛盾が起きない程度にのみ援用されることになる。
【0113】
様々な装置、システムおよび/または方法に関して様々な実施形態が本明細書に記載される。本明細書に記載され、添付図面に例示される実施形態の全体の構造、機能、製造および使用の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、実施形態がそのような具体的な詳細なしで実施されてもよいことが当業者によって理解されるであろう。他の例では、周知の動作、構成要素および要素は、本明細書に記載される実施形態を不明瞭にしないように、詳述していない。当業者は、本明細書に記載および例示される実施形態が非限定的な例であると理解することができ、したがって本明細書に開示される具体的な構造的および機能的詳細は典型であり、必ずしも実施形態の範囲を限定するわけではないと認識することができ、実施形態の範囲は専ら添付の請求項によって規定される。
【0114】
「様々な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「1つの実施形態」または「一実施形態」などへの本明細書の全体にわたる言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体にわたる所々での「様々な実施形態において」、「いくつかの実施形態において」、「1つの実施形態において」または「一実施形態において」という句などの出現が必ずしも全て同じ実施形態を指しているわけではない。更には、特定の特徴、構造または特性は、1つまたは複数の実施形態に任意の適切な方法で組み合わされてもよい。したがって、1つの実施形態に関連して例示または記載される特定の特徴、構造または特性は、全体的または部分的に、組合せが非論理的または非機能的でなければ制限なく、1つまたは複数の他の実施形態の特徴、構造または特性と組み合わされてもよい。
本明細書は、下記の各項目に記載された実施形態を開示する。
[項目1]
電子制御ユニット(ECU)を備えるシステムであって、
前記ECUは、
電極と患者の組織との間のインピーダンスの測定値を受信し、または求め、
前記電極と前記組織との間の接触力の測定値を受信し、または求め、
前記インピーダンスの測定値および前記接触力の測定値の両方に基づいて前記組織を性状診断し、
前記組織性状診断が、
(i)ユーザに提示される、または、
(ii)指標を計算するために適用され、前記指標が前記ユーザに提示されるように構成された、
システム。
[項目2]
前記ECUが、前記インピーダンスの測定値および前記接触力の測定値の比に基づいて、前記組織を性状診断するように更に構成された、項目1に記載のシステム。
[項目3]
前記接触力の測定値に対する前記インピーダンスの測定値の前記比が、前記インピーダンスの測定値が分子または分母の一方であり、前記接触力の測定値が分子または分母の他方である分数を含み、項目2に記載のシステム。
[項目4]
前記インピーダンスの測定値が、複素インピーダンスを含み、前記接触力の測定値に対する前記インピーダンスの測定値の前記比が、少なくとも前記複素インピーダンスの抵抗およびリアクタンスから計算された指標、または、前記複素インピーダンスの絶対値および位相角から計算された指標が、分子または分母の一方であり、前記接触力の測定値が分子または分母の他方である分数を含む、項目2に記載のシステム。
[項目5]
前記ECUが、前記組織のマップまたはモデルに前記組織性状診断を追加し、前記マップまたはモデルが表示されるようにすることによって、前記組織性状診断がユーザに提示されるようにするように構成された、項目1に記載のシステム。
[項目6]
前記ECUが、前記組織性状診断を適用することによって前記指標が計算されるように構成されており、前記指標が前記組織における損傷の範囲を示す、項目1に記載のシステム。
[項目7]
前記ECUが、
前記電極と前記組織との間に印加されるエネルギーの測定値を受信し、または求め、
前記組織性状診断および前記印加エネルギーの測定値に基づいて前記指標を計算するように更に構成された、項目6に記載のシステム。
[項目8]
組織特性が、前記接触力の測定値に対する前記インピーダンスの測定値の比に基づく、項目7に記載のシステム。
[項目9]
前記電極と電気的に結合されているとともに、前記電極と前記組織との間の前記インピーダンスを評価するために、前記電極に信号を出力するように構成されており、前記インピーダンスが複素インピーダンスである、信号発生器と、
前記電極と前記組織との間の前記接触力の測定値を提供するために、力センサと作動的に結合されるように構成された光信号源と、
を更に備える、項目1に記載のシステム。
[項目10]
電極と患者の組織との間のインピーダンスの測定値を受信する、または求めることと、
前記電極と前記組織との間の接触力の測定値を受信する、または求めることと、
前記電極と前記組織との間の前記インピーダンスの測定値の、前記接触力の測定値に対する比に基づいて、前記組織を性状診断することと、
前記組織性状診断がユーザに提示されるようにする、または前記組織性状診断を適用して指標を計算し、前記指標が前記ユーザに提示されるようにすることと、
を含む方法。
[項目11]
前記電極と前記組織との間の前記インピーダンスの測定値の、前記接触力の測定値に対する前記比が、前記インピーダンスの測定値の値が分子または分母の一方であり、前記接触力の測定値の値が分子または分母の他方である分数を含む、項目10に記載の方法。
[項目12]
前記インピーダンスの測定値が複素インピーダンスを含み、前記電極と前記組織との間の前記インピーダンスの測定値の、前記接触力の測定値に対する前記比が、少なくとも前記複素インピーダンスの抵抗およびリアクタンスから計算された指標、または、前記複素インピーダンスの絶対値および位相角から計算された指標が、分子または分母の一方であり、前記接触力の測定値の値が分子または分母の他方である分数を含む、項目10に記載の方法。
[項目13]
前記組織性状が表示されるようにすることによって、前記組織性状診断がユーザに提示されるようにすることを更に含む、項目10に記載の方法。
[項目14]
前記組織のマップまたはモデルに前記組織性状診断を追加し、前記組織の前記マップまたはモデルが表示されるようにすることによって、前記組織性状診断がユーザに提示されるようにすることを更に含む、項目10に記載の方法。
[項目15]
前記組織性状診断を適用して前記指標を計算し、前記指標が前記組織における損傷の範囲を示すことを更に含む、項目10に記載の方法。
[項目16]
前記電極と前記組織との間に印加されるエネルギーの測定値を受信する、または求めることと、
前記印加エネルギーの測定値、前記接触力の測定値、および前記接触力の測定値に対する前記電極と前記組織との間の前記インピーダンスの測定値の前記比に従って前記指標を計算することと、
を更に含む、項目15に記載の方法。
[項目17]
電子制御ユニット(ECU)を備えるシステムであって。
前記ECUは、
電極から患者の組織に印加されるエネルギーの測定値を受信し、または求め、
前記電極と前記組織との間のインピーダンスの測定値を受信し、または求め、
前記電極と前記組織との間の接触力の測定値を受信し、または求め、
前記接触力の測定値に対する前記インピーダンスの測定値の比を計算し、
前記印加エネルギーの測定値および前記接触力の測定値に対する前記インピーダンスの測定値の前記比に従って前記組織における損傷の範囲を計算し、
前記損傷範囲がユーザに提示されるようにする、ように構成された
システム。
[項目18]
前記インピーダンスが複素インピーダンスであり、前記比を計算することが、少なくとも前記複素インピーダンスの抵抗およびリアクタンスから指標を計算し、または、前記複素インピーダンスの絶対値および位相角に基づいて指標を計算し、前記接触力の測定値に対する前記指標の比を計算することを含む、項目17に記載のシステム。
[項目19]
前記印加エネルギーの測定値を受信する、または求めることが、瞬時電力の測定値およびエネルギー印加の継続時間を受信する、または求めることを含み、前記ECUが、前記瞬時電力の測定値、前記エネルギー印加の継続時間、ならびに前記複素インピーダンスおよび力の比に従って、前記損傷の前記範囲を計算するように構成された、項目17に記載のシステム。
[項目20]
前記ECUが、前記組織のマップまたはモデルに前記損傷深さを追加し、前記モデルが表示されるようにすることによって、前記損傷範囲がユーザに提示されるようにするように構成された、項目17に記載のシステム。
[項目21]
前記損傷範囲が、前記損傷の深さ、幅および体積の1つまたは複数を示す、項目20に記載のシステム。