(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本実施形態の概要)
初めに、本実施形態の鉛蓄電池の概要について説明する。本鉛蓄電池は、発電要素と、前記発電要素を収容する電槽と、前記電槽内に収容される電解液と、前記電槽を封口する蓋部材と、前記蓋部材に埋め込まれた筒状のブッシングと、前記発電要素に接続され、前記ブッシングの内側に位置する極柱と、を備え、前記電槽内の電解液の液面を、前記ブッシングの下面以上の高さにする。この構成では、ブッシングの下面から下方に突出する極柱を電解液中に浸漬させるため、極柱が空気に触れ難くなる。そのため、極柱の腐食を抑制することが出来る。
【0013】
本鉛蓄電池では、前記蓋部材は、前記電槽を封口する中蓋と、前記中蓋の上面に重ねて装着される上蓋とを含み、前記中蓋と前記上蓋との間には、前記電槽内で発生したガスを外部に排気する排気通路が形成され、前記中蓋には、前記排気通路内の電解液を前記電槽内に還流させる還流孔が設けられている。
【0014】
極柱を電解液に浸漬させるためには、電解液の液面を通常よりも上げる必要がある。液面を上げると、ガス排気孔までの距離が近くなることから、電槽内の電解液の一部が、走行等の振動により飛散して、ガス排気孔から外部に逸出し易くなる。この点、本構成では、中蓋と上蓋との間に排気通路を設け、更に、排気通路内の電解液を還流孔を通じて電槽に戻す構造としている。そのため、例えば、電槽の電解液の一部が、走行等の振動により飛散して、ガス排気孔に入り込んだとしても、その電解液は、排気通路、還流孔を通って電槽に還流する。そのため、電解液の逸出を抑制することが出来る。
【0015】
本鉛蓄電池では、前記上蓋の上面は、前記ブッシングの上面よりも上方に位置しており、前記中蓋は、上方に突出した突出部を有しており、前記排気通路は、前記突出部に形成されている。本構成では、上蓋がブッシングよりも高い位置まで設けられていることで、仮に、金属部材などが電池上部に置かれたとしても、ブッシングと接触しにくくして、導通するのを防止することができる。そして、上蓋をブッシングよりも高い位置まで設けることにより形成された上部スペースに突出部を配置して、この突出部内に排気通路を形成する。これにより、排気通路を電槽から上方に離れた位置に形成することができ、電解液の逸出をより抑制することが出来る。
【0016】
本鉛蓄電池では、発電要素と、外壁を有し前記発電要素を収容する電槽と、前記電槽内に収容される電解液と、前記電槽を封口する蓋部材と、前記蓋部材に埋め込まれた筒状のブッシングと、前記発電要素に接続され、前記ブッシングの内側に位置する極柱と、を備え、前記電槽の前記外壁のうち、高さ方向で前記ブッシングの下面以上の位置に、電解液の最高液面位置を示す最高液面線を設けている。最高液面線がブッシングの下面以上である場合、電解液が最高液面位置に達している状態では、電解液の液面はブッシングの下面より高くなる。そのため、極柱が空気に触れ難くなり、極柱の腐食を抑制することが出来る。
【0017】
本鉛蓄電池では、発電要素と、前記発電要素を収容する電槽と、前記電槽内に収容される電解液と、前記電槽を封口する蓋部材と、前記蓋部材に埋め込まれた筒状のブッシングと、前記発電要素に接続され、前記ブッシングの内側に位置する極柱と、を備え、前記蓋部材は、前記電槽内に電解液を注液する注液孔と、前記注液孔の周囲に設けられ、前記電槽側に延在するスリーブと、を有し、前記スリーブの下端位置は、高さ方向で前記ブッシングの下面以上である。スリーブは、電解液の液面が最高液面位置に達しているかを視認するために設けられており、下端位置は電解液の最高液面位置と対応している。そのため、スリーブの下端位置がブッシングの下面以上である場合、その電池は、電解液が最高液面位置に達している状態では、電解液の液面がブッシングの下面より高くなる。そのため、極柱が空気に触れ難くなり、極柱の腐食を抑制することが出来る。
【0018】
<実施形態>
実施形態1を
図1ないし
図8によって説明する。
1.鉛蓄電池10の構造
鉛蓄電池10は、
図1から
図3に示すように電槽20と、発電要素である極板群30と、電解液Uと、蓋部材50とを備える。尚、以下の説明において、電槽20の横幅方向(端子部40A、40Bの並び方向)をX方向とし、電槽20の高さ方向をY方向とし、奥行方向をZ方向とする。
【0019】
電槽20は合成樹脂製である。電槽20は4枚の外壁21と底壁22と備え、上面が開放した箱型をなす。電槽20の内部は、
図2に示すように隔壁23により複数のセル室25に仕切られている。セル室25は、電槽20の横幅方向(
図2のX方向)に6室設けられており、各セル室25には、希硫酸からなる電解液Uと共に極板群30が収容されている。
【0020】
極板群30は、
図3に示すように、正極板30Aと、負極板30Bと、両極板30A、30Bを仕切るセパレータ30Cとから構成されている。各極板30A、30Bは、格子体に活物質が充填されて構成されており、上部には耳部31A、31Bが設けられている。耳部31A、31Bは、ストラップ32を介して、同じ極性の極板30A、30Bをセル室25内にて連結するために設けられている。
【0021】
ストラップ32は例えばX方向に長い板状であり、各セル室25ごとに正極用と負極用の2組が設けられている。そして、隣接するセル室25の正負のストラップ32同士を、ストラップ32上に形成された接続部33を介して電気的に接続することにより、各セル室25の極板群30を直列に接続する構造となっている。
【0022】
蓋部材50は中蓋60と上蓋100とを備える。中蓋60は合成樹脂製であって、電槽20の上面を封口可能な大きさとされる。中蓋60の裏面には、隔壁23に対応して蓋隔壁(図略)が形成されている。中蓋60は電槽20に重ねるように取り付けられ、電槽20の上面を封口すると共に、電槽20内の各セル室25を気密する構造となっている。上蓋100は中蓋60と同様、合成樹脂製であり、中蓋60の上面から突出して形成された台状部65に対して重ねて取り付けられる。そして、上蓋100の上面100Aは、
図3に示すように、ブッシング41の上面よりも上方に位置している。尚、台状部65が本発明の「突出部」の一例である。
【0023】
中蓋60の台状部65と上蓋100との間には、セル室25内に発生したガスを外部に排気する排気通路Rや、排気通路R内の電解液Uや水蒸気を各セル室25に還流させる還流孔95が設けられているが、これらの構造については、後に詳しく説明する。
【0024】
尚、中蓋60は電槽20に対して熱溶着されている。また、上蓋100は中蓋60に対して熱溶着されている。
【0025】
また、鉛蓄電池10には、正極側の端子部40Aと、負極側の端子部40Bとが設けられている。
図1に示すように、正極側の端子部40Aと負極側の端子部40Bは、中蓋60のX方向両側に配置されている。正極側の端子部40Aと、負極側の端子部40Bの構造は、同一であるため、以下、正極側の端子部40Aを例にとって構造を説明する。
【0026】
図3に示すように、正極側の端子部40Aは、ブッシング41と、極柱45とを含む。ブッシング41は鉛合金等の金属製であり中空の円筒状をなす。ブッシング41は、
図3に示すように、中蓋60に対して一体形成された筒型の装着部63を貫通しており、上半分が中蓋60の上面から突出している。ブッシング41のうち、中蓋60の上面から露出する上半部は端子接続部であり、ハーネス端子などの接続端子(図略)が組み付けされる。
【0027】
尚、中蓋60はブッシング41をインサートした金型に樹脂を流して一体成形することから、装着部63はブッシング41と一体化され、ブッシング41の下部外周を隙間なく覆う構造となっている。すなわち、ブッシング41のうち、中蓋60の上面から突出する上半部を除くそれ以外の部分が、中蓋60の装着部63に埋め込まれる構造となっている。また、装着部63には、ブッシング41の下面を囲う底壁64が形成されている。
【0028】
極柱45は鉛合金等の金属製であり、円柱形状をしている。極柱45は、ブッシング41の内側に下方より挿入されている。極柱45はブッシング41に比べて長く、極柱45の上部はブッシング41の内側に位置し、下部はブッシング41の下面41Aから下向きに突出している。極柱45の上端部46は、ブッシング41に対して溶接により接合され、極柱45の基端部47は極板群30のストラップ32に接合されている。
【0029】
2.電解液Uの液面高さ
本実施形態の鉛蓄電池10では、
図3に示すように、電槽20の各セル室25内に充填される電解液Uの液面Lを、ブッシング41の下面41Aと同じ高さに設定する。具体的には、
図3に示すように底壁22を下にして電槽20を水平面上においた使用状態において、液面Lがブッシング41の下面41Aと同じ高さになるように、電槽20に対する電解液Uの液量を設定する。電解液Uの液面Lを、ブッシング41の下面41Aと同じ高さにすると、ブッシング41の下面41Aから下方に突出する極柱45は、電解液U中に浸漬した状態となる。電解液U中に浸漬していれば、電槽20内において、極柱45の表面が空気に触れることがないので、極柱45が腐食することを抑制出来る。
【0030】
尚、電解液Uの液面Lをブッシング41の下面41Aと同じ高さに設定した場合、ブッシング41の外側を覆う装着部63の下部が電解液Uに浸かることから、ブッシング41と装着部63の隙間を電解液Uが這い上がることが懸念される。しかし、電解液Uの這い上がりは、電解液Uの液面Lをブッシング41の下面41Aより低い高さにした場合と比べて同等であり、ブッシング41の外側を覆う装着部63の下部が電解液Uに浸かっているか否かは、電解液Uの這い上がりやすさに影響を及ぼさない。
【0031】
3.ガスの排気と電解液Uの逸出防止構造
図4は、中蓋60を上方から見た平面図である。中蓋60の上面のうちZ方向奥側(
図4の上側)には、台状部65が設けられている。台状部65は、中蓋60の基部(端子部40Aや端子部40Bが形成された部位)61よりも一段高くなっており、電槽20に設けられた6つのセル室25を横断するようにX方向に延設されている。
【0032】
図4に示すように、台状部65の上面65Aには、6つのセル室25に対応してX方向に6つの注液室71と6つの排気室81が形成されている。具体的に説明すると、台状部65の上面65Aには、6つの注液室71の周りを囲うようにして周壁72が形成されている。周壁72の内側には、5つの隔壁73がX方向に形成されており、周壁72の内側の領域を6つの注液室71に仕切っている。そして、各注液室71には各セル室25に連通する注液孔75が形成されており、注液孔75を通じて、補充液を各セル室25に注液することが出来る。
【0033】
一方、各排気室81は各注液室71の前方(
図4の下側)に形成されている。排気室81も注液室71と同様、6つの排気室81を囲うようにして周壁82が形成されており、周壁の内側領域を、X方向に形成された5つの隔壁83により、6つの排気室81に仕切る構造になっている。
【0034】
また、各排気室81には2つの仕切板85、86と、周壁92により仕切られた小室91が形成されている。2つの仕切板85、86は、X方向に向かい合う左右の隔壁83から排気室81の内側に向かって互い違いに形成されている。
【0035】
小室91は、仕切板85、86の前方(
図4の下側)に形成されており、内部が仕切壁93により2室に仕切られている。仕切られた小室91の一方側には、ガス排出孔94が形成され、もう一方には還流孔95が設けられている。ガス排出孔94と還流孔95は中蓋60を上下に貫通しており、電槽20内の各セル室25に連通する構造となっている。尚、周壁92には、切り欠き92Aが形成されており、小室91は、切り欠き92Aを通じて排気室81と連通する構造になっている。
【0036】
また、X方向の両端に位置する排気室81には、集中排気部97が形成されている。集中排気部97は弧状の周壁98を備え、切り欠き98Aを通じて、X方向の端部に位置する排気室81とそれぞれ連通している。
【0037】
一方、上蓋100は、
図1、
図5に示すように、中蓋60の台状部65の形状と同じく、電槽20に設けられた6つのセル室25を横断するようにX方向に延設されている。上蓋100の外縁には、外周壁110が形成されている。外周壁110は下向きに延びており、上蓋100の全周に亘って形成されている。
【0038】
上蓋100の裏面には、
図6に示すように、台状部65に設けられた各周壁72、82や各隔壁73、83に対応して、同じ形状の周壁172、182や、各隔壁173、183が形成されている。そのため、上蓋100の装着により、台状部65上に形成された各注液室71と、各排気室81の上面を密閉することが出来る。また、上蓋100の裏面には、2つの仕切板85、86に対応して2つの仕切板185、186が形成され、集中排気部97を形成する周壁98に対応して周壁198が形成されている。更に、小室91を仕切る仕切壁93に対応して仕切壁193が形成されている。仕切壁193には、切り欠き部193Aが形成されており、ガスや電解液が、小室91内にて流通出来る構造になっている。
【0039】
図7に示すように、各排気室81は迷路状の排気通路Rを構成しており、ガス排出孔94から小室91に進入したガスは、排気室81の排気通路Rを進んで、注液室71との境界部分に至る構造となっている。
【0040】
そして、
図6に示すように、上蓋100に形成された各隔壁183には、スリット183Aが形成されており、注液室71との境界部分で、各スリット183Aを通じて各排気室81が互いに連通する。以上のことから、各排気室81のガスは、
図7に示すように台状部65の上面65Aに形成された排気通路Rを経由して注液室71との境界部分に至った後、スリット183Aを通じてX方向の両側に位置する集中排気部97へと送られる。
【0041】
また、上蓋100には、外周壁110に開口するトンネル状の排出ダクト200が形成されている。排気ダクト200は、
図6に示すように、集中排気部97の周壁198に連通しており、集中排気部97に送られたガスは、排気ダクト200を通じて上壁100の外面壁110から外部に排気される構造になっている。尚、上記により、本発明の「前記排気通路Rは、前記突出部(本例では、台状部65の上面65A)に形成されている」が実現されている。
【0042】
また、各排気室81の床面は還流孔95に近い程、低くなるように傾斜が付けられている。そのため、ガスに含まれる電解液Uや水蒸気を、還流孔95を通じて、各セル室25に還流させることが出来る。すなわち、セル室25で発生したガスに含まれる電解液Uや水蒸気は、ガスが排気通路Rを通過する際に、排気通路R内にて結露する。その後、結露した電解液Uや水蒸気は、
図8に示にて破線矢印で示すように、還流孔95に向かって流れてゆく。そのため、ガスに含まれる電解液Uや水蒸気を、各セル室25に還流させることが出来る。
【0043】
4.効果説明
本鉛蓄電池10では、電解液U中に浸漬させるため、極柱45が空気に触れ難くなる。そのため、極柱45の腐食を抑制することが出来る。また、極柱45を電解液Uに浸漬させるためには、電解液Uの液面Lを、通常よりも上げる必要がある。尚、通常とは、
図3にてライン「Lo」で示すように、電解液Uの液面を接続部33の上端に合せた状態を意味する。
【0044】
液面Lを上げると、ガス排気孔94までの距離が近くなることから、セル室25内の電解液Uの一部が、走行等の振動により飛散して、ガス排気孔94から外部に逸出し易くなる。この点、本鉛蓄電池10では、中蓋60と上蓋100との間に排気通路Rを設け、更に、排気通路R内の電解液Uを還流孔95を通じてセル室25に戻す構造としている。そのため、例えば、電解液Uの一部が、走行等の振動により飛散して、ガス排気孔94に入り込んだとしても、その電解液Uは、還流孔95からセル室25に還流する。そのため、電解液Uの逸出を抑制することが出来る。
【0045】
また、上蓋100がブッシング41よりも高い位置まで設けられていることで、仮に、金属部材などが電池上部に置かれたとしても、ブッシング41と接触しにくくして、導通するのを防止することができる。そして、上蓋100をブッシング41よりも高い位置まで設けることにより形成された上部スペースに台状部65を配置して、この台状部65内に排気通路Rを形成する。これにより、排気通路Rを電槽20から上方に離れた位置に形成することができ、電解液の逸出をより抑制することが出来る。
【0046】
また、本鉛蓄電池10は極柱45を浸漬させるため電解液Uの液面を高く保つ必要があり、極柱45が一部露出する通常の電池に比べて、電槽20に多くの電解液Uを充填する必要がある。しかし、電解液Uの液面Lが高ければ、極板30A、30Bのサイズ(Y方向の寸法)をその分大きく設定することが可能である。従って、本鉛蓄電池10は、極柱45が一部露出する通常の電池に比べて、電池性能を高くすることが可能である。
【0047】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0048】
(1)上記実施形態では、電解液Uの液面Lをブッシング41の下面41Aと同じ高さに設定したが、電槽20内の極柱45が電解液U中に浸漬した状態になればよく、電解液Uの液面Lを、ブッシング41の下面41Aよりも高く設定してもよい。
【0049】
(2)また、電解液Uの液面Lは、ブッシング41の下面41A以上の高さを、常に維持している必要はなく、一時期でも、ブッシング41の下面41A以上であればよい。例えば、メーカー出荷時の初期状態や補水後の状態において、電解液Uの液面Lがブッシング41の下面41Aより高い場合は、その後の使用により、電解液Uの液面Lがブッシング41の下面41Aより下がったとしても、本発明の技術的範囲に含まれる。理由は、メーカー出荷時の初期状態や補水後など一時期でも、電解液Uの液面Lがブッシング41の下面41Aより高ければ、極柱45を空気に触れ難くして、極柱45の腐食を抑制することに他ならないためである。
【0050】
(3)また、本発明の技術的範囲には、
図9に示すように、電槽420の外壁421に設けられた最高液面線ULVの位置が、高さ方向(Y方向)で、ブッシング41の下面41A以上である鉛蓄電池410も含まれる。これは、メーカー製造時や使用時の補水により、電解液Uは、液面Lが最高液面線ULVに達するように液量調整される。そのため、電解液Uの最高液面位置を示す最高液面線ULVがブッシング41の下面41A以上である場合、その鉛蓄電池電池410は、電解液Uの液面Lがブッシング41の下面41Aより高い状態で使用されることになる結果、極柱45が空気に触れ難くなり、極柱45の腐食を抑制することが出来るからである。
【0051】
尚、
図9において、符号「LLV」は電解液Uの最低液面線を示している。また、
図9中、上記実施形態にて説明した鉛蓄電池10と共通する部品については、同一符号を付している。また、
図9は、最高液面線ULVと最低液面線LLVを分かり易く表示するため、電解液Uは省略した図としてある。
【0052】
(4)また、例えば、蓋部材450に対して注液孔463とスリーブ465が設けられた鉛蓄電池410において、
図9に示すように、スリーブ465の下端465Aの位置が、高さ方向(Y方向)で、ブッシング41の下面41A以上である場合も、本発明の技術範囲に含まれる。具体的に説明すると、スリーブ465は、
図9に示すように、注液孔463の周囲に設けられ、注液孔463の孔縁から電槽420に向かって延在している。スリーブ465は、周側面にスリット467を設けた筒型であり、電解液Uの液面Lの高さを視認するために設けられている。すなわち、スリーブ465の下端に電解液Uが達していると、電解液中の極板30A、30Bが歪んで見えるので、スリーブ465を通して極板30A、30Bを視認することで、電解液Uの液面Lがスリーブ465の下端、すなわち最高液面位置に届いているかを視認することが出来る。そして、メーカー出荷時や補水により、電解液Uは、液面Lがスリーブ465の下端465Aに達するように液量調整される。従って、スリーブ465の下端465Aの位置がブッシング41の下面41A以上である場合、その鉛蓄電池410は、電解液Uの液面Lがブッシング41の下面41Aより高い状態で使用されることになる結果、極柱45が空気に触れ難くなり、極柱45の腐食を抑制することが出来るからである。
【0053】
尚、
図9の例では、蓋部材450を、中蓋460と上蓋470の二重構造としており、電槽420の上面を封口する中蓋460側に、各セル室25に対応して、注液孔463とスリーブ465をそれぞれ設けている。また、上蓋470には、中蓋460側の各注液孔463に対応して、各注液孔473を設けており、電解液Uは、上蓋470の注液孔473、中蓋469の注液孔463、スリーブ465を通じて、電槽420内の各セル室25に補充される構造になっている。
【0054】
(5)上記実施形態では、蓋部材50を、中蓋60と上蓋100の二重蓋構造とし、両間にガスの排気通路Rと、排気通路R内の電解液Uをセル室25に還流させる還流孔95とを設けるようにしたが、電解液Uを還流させる構造は必ずしも設ける必要はない。すなわち、蓋部材を一枚蓋構造にして、電解液Uを還流させる構造を廃止してもよい。
【0055】
尚、電解液Uを還流させる構造を廃止する場合、電槽内で発生するガスに混ざって水蒸気や電解液Uが外部に排出され易くなるので、充放電反応により、電解液Uの液面が変動しやすくなる。このような場合には、電解液Uの「下限にあたる最低液面位置」がブッシング41の下面41Aよりも高くなるように設定するとよい。
【0056】
また、電解液Uの「下限にあたる最低液面位置」をブッシング41の下面41Aよりも高く設定すると、上限にあたる最高液面位置側で、蓋部材50までの距離が近くなって、電解液Uが外部に逸出し易くなることがある。そのため、このような場合には、電解液Uの「上限にあたる最高液面位置」をブッシング41の下面41Aと同じ高さに設定して、液面から蓋部材50までの距離を確保するようにしてもよい。尚、電解液Uの「上限にあたる最高液面位置」をブッシング41の下面41Aと同じ高さにすると、液面が下がった時に、極柱45の一部が液面から露出することになるが、電解液Uの液面は、いずれ補充液の補充により「上限にあたる最高液面位置」に戻される。そのため、極柱45の一部が露出する期間は、従来に比べて短くなるので、極柱45の腐食の進行を遅くすることが出来る。