(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切断要素は連続する要素を備え、前記装置は、前記切断要素の前記1または複数の電気リードに接続する第1および第2の接続トレースをさらに備え、前記接続トレースは、2つの逆向きの方向に電流が進むことを可能にして前記組織のうち切断すべき部分の周りに電流を均一に伝導するように、前記切断要素の両側に位置決めされることを特徴とする請求項1に記載の装置。
前記吸引カップは、前記水晶体嚢に対して前記吸引カップを固定して真空封止を形成するように前記吸引カップの縁部から延びるフレア付きのスカートをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水晶体嚢などの組織にアクセスして手術を実行する既存の治療装置/処置の欠点を考えると、顕微手術を実行する改善された技法および装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、眼の角膜を通って水晶体嚢にアクセスして眼内で嚢切開を実行する装置および方法を含む。一実施形態では、眼の角膜を通って水晶体嚢にアクセスする嚢切開装置が本明細書に提供され、この装置は、エラストマ構造と、エラストマ構造に装着された支持構造と、エラストマ構造に装着された支持構造から延びる切断要素とを備え、切断要素とエラストマ構造は物理的に接触しない。
【0009】
一実施形態では、切断要素は電極であり、装置は、水晶体嚢の組織の一部分を摘出するための電極を加熱するように電極に接続された電気リードに電流を送達する1または複数の電気要素を備える。いくつかの実施形態では、電極は円形である。特定の実施形態では、電極は連続する要素を備え、装置は、電気リードを電極に接続する第1の接続トレースおよび第2の接続トレースをさらに備え、接続トレースは、2つの逆向きの方向に電流が進むことを可能にして組織のうち切断すべき部分の周りに電流を均一に伝導するように、電極の両側に位置決めされる。
【0010】
一実施形態では、エラストマ構造は吸引カップである。さらなる実施形態では、装置は、吸引カップ内で吸引力を印加するように吸引カップに接続された1または複数の吸引要素を備える。一実施形態では、吸引カップは、水晶体嚢に対して吸引カップを固定して真空封止を形成するように吸引カップの縁部から延びるフレア付きのスカートをさらに備える。
【0011】
いくつかの実施形態では、支持構造は、支持構造の長さに沿って一連の開口を備える。実施形態の一態様では、支持構造は複数のタブを備える。実施形態のさらなる態様では、支持構造は複数のタブを備え、その結果、支持構造のうちエラストマ構造に接触する部分は、電流の流れに対して完全な回路を形成しない。
【0012】
特定の実施形態では、切断要素は、支持構造の1つの側面上に位置決めされる。他の実施形態では、切断要素は、支持構造の少なくとも2つの側面上に位置決めされる。一実施形態では、切断要素は、少なくとも2つの電極を備える。他の実施形態では、切断要素は、支持構造の少なくとも3つの側面上に位置決めされる。
【0013】
一実施形態では、装置は、ハンドルとエラストマ構造および取り付けられた構造との間に支持を提供するようにエラストマ構造に取り付けられた心棒を備える。いくつかの実施形態では、心棒は、切断要素に電流を提供する導電性要素を備える。いくつかの実施形態では、心棒は、エラストマ構造と水晶体嚢との間に吸引力を印加するチューブを備える。一実施形態では、心棒は、支持アームを備える。さらなる実施形態では、支持アームは導電性を有し、支持アームは、切断要素に電気的に接続される。いくつかの実施形態では、支持アームは、エラストマ構造と水晶体嚢との間に吸引力を印加するように管状である。
【0014】
また、特定の実施形態では、眼の角膜を通って水晶体嚢にアクセスする嚢切開装置が本明細書に提供され、この装置は、エラストマ構造と、エラストマ構造に装着された支持構造とを備え、支持構造は、支持構造の上部の長さに沿って複数の開口を備え、支持構造の上部は、エラストマ構造に取り付けられ、支持構造は、支持構造の底部の長さに沿って切断要素セグメントを備える。
【0015】
いくつかの実施形態では、支持構造は、少なくとも2つの材料を含み、切断要素セグメントを構成する材料は、エラストマ材料に取り付けられた支持構造の材料より伝導性が高い。特定の実施形態では、支持構造と切断要素セグメントは連続しており、同じ材料から作られる。一実施形態では、支持構造は、エラストマ構造に取り付けられた複数のタブを備え、支持構造は、エラストマ構造を切断要素セグメントに接続する。いくつかの実施形態では、支持構造は、エラストマ構造に取り付けられた支持構造の経路の周りで電流の流れを抑制するように不連続である。
【0016】
いくつかの実施形態では、支持構造は、装置の心棒内へ延びる支持アームに取り付けられる。一実施形態では、支持アームは、支持アームに沿って心棒から切断要素セグメントへ電流が流れることが可能になるように伝導性を有する。特定の実施形態では、支持アームは、支持構造から延びるu字状要素を備え、u字状要素は、エラストマ構造と水晶体嚢との間に吸引力を印加するチューブを備える。一実施形態では、支持アームは、エラストマ構造と水晶体嚢との間に吸引力を印加するように管状である。
【0017】
一実施形態では、眼の水晶体嚢の嚢切開を実行する方法が本明細書に提供され、この方法は、水晶体嚢を切断要素に接触させるステップであって、切断要素は支持構造から延び、支持構造はエラストマ構造に装着され、切断要素とエラストマ構造は物理的に接触しない、接触させるステップと、応力の印加中に切断要素に沿って水晶体嚢にエネルギーを印加し、その結果、切断要素に沿って水晶体嚢の一部分を切断するステップとを含む。
【0018】
一実施形態では、切断要素は電極である。別の実施形態では、電極は円形である。一実施形態では、切断要素は、水晶体嚢に均一に接触する。
【0019】
いくつかの実施形態では、エネルギーを印加するステップは、電気パルスまたは一連のパルスを電極に印加することを含む。他の実施形態では、エネルギーを印加するステップは、切断要素に沿って抵抗加熱を印加することを含む。
【0020】
特定の実施形態では、エラストマ構造は吸引カップである。一実施形態では、この方法は、眼の前眼房の内側の切断要素を水晶体嚢上の切断位置に配置した後、吸引カップに吸引力を印加して吸引カップを眼の水晶体嚢に固定するステップを含み、吸引力は、水晶体嚢の組織を切断要素の方に引き寄せる。いくつかの実施形態では、この方法は、吸引カップに吸引力を印加するステップを含み、吸引力は、吸引カップのフレア付きのスカートを水晶体嚢に固定し、組織を切断要素の方に引き寄せる。
【0021】
一実施形態では、眼の水晶体嚢の嚢切開を実行する方法が本明細書に提供され、この方法は、水晶体嚢を切断要素セグメントに接触させるステップであって、切断要素セグメントは支持構造の底部からその長さに沿って延び、支持構造の上部はエラストマ構造に装着され、支持構造の上部の長さは、エラストマ構造に取り付けられた支持構造の上部で電流の流れを抑制する複数の開口を備える、接触させるステップと、応力の印加中に切断要素に沿って水晶体嚢にエネルギーを印加し、その結果、切断要素に沿って水晶体嚢の一部分を切断するステップとを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1の組織層の後ろの第2の組織層にアクセスして顕微手術または治療作業を実行する装置が本明細書に提供され、この装置は、第2の組織層上の顕微手術または治療作業に関与するためにエラストマ構造に付随する動作要素を備え、動作要素は支持構造に取り付けられる。
【0023】
一実施形態では、動作要素は、第2の組織層の一部分を切断するようにエラストマ構造に装着された切断要素を備える。特定の実施形態では、切断要素は電極である。
【0024】
また、いくつかの実施形態では、第1の組織層の後ろの第2の組織層にアクセスして顕微手術または治療作業を実行する方法が本明細書に提供され、この方法は、第2の組織層を切断要素に接触させるステップであって、切断要素はエラストマ構造に装着され、切断要素は支持構造に取り付けられる、接触させるステップと、第2の組織層の一部分上の顕微手術または治療作業に関与するステップとを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、顕微手術または治療作業に関与するステップは、エラストマ構造に装着された切断要素で第2の組織層の一部分を切断することをさらに含む。
【0026】
本発明の上記その他の実施形態について、本明細書の図、説明、例、および特許請求の範囲でさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態による吸引カップが配備されて眼の水晶体嚢に接触する顕微手術/嚢切開装置の側面斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による吸引カップが配備されて眼の水晶体嚢に接触する顕微手術/嚢切開装置の拡大横断面図である。
【
図3A】本発明の一実施形態による顕微手術/嚢切開装置の電極およびスカートに接触する嚢膜の概略横断面図である。
【
図3B】本発明の一実施形態による嚢膜と吸引カップとの間に吸引力が印加された顕微手術/嚢切開装置の電極およびスカートに接触する嚢膜の概略横断面図である。
【
図3C】本発明の特定の実施形態による電極支持リングに沿った電極の位置決めの横断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による吸引カップが配備されて眼の水晶体嚢に接触する顕微手術/嚢切開装置の側面斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態による吸引カップが配備されて眼の水晶体嚢に接触する顕微手術/嚢切開装置の前面斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるエラストマ吸引カップと、電極支持リングと、電極と、注封材料と、吸引カップスカートとの関係を示す装置の横断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態による吸引チューブ、挿入器の前縁部、電気リードワイア、ワイアの端部、および電極ボンドパッドの位置決めを示す顕微手術/嚢切開装置の部分横断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態による顕微手術/嚢切開装置の底面図である。
【
図9】本発明の一実施形態によるエラストマ吸引カップをもたない抵抗加熱装置を示す顕微手術/嚢切開装置の上面図である。
【
図10】本発明の一実施形態による心棒構造の外側層と心棒構造内に位置する構成要素とを示す顕微手術/嚢切開装置の上面図である。
【
図11】本発明の一実施形態による電極支持リング上に位置する電極に電流を提供するワイア間のインターフェースを示す図である。
【
図12】支持アームが導電性物質でめっきされて電極支持リングおよび電極に取り付けられる装置の一実施形態を示す図である。
【
図13】支持アームが導電性物質でめっきされて電極支持リングおよび電極に取り付けられる装置の一実施形態の別の図である。
【
図14】本発明の一実施形態による吸引カップが配備された顕微手術/嚢切開装置の上面斜視図である。
【
図15】(A)は、本発明の一実施形態による吸引カップを圧縮させて挿入器の内側に嵌合させて眼に入れる一続きの概念上のステップを示す図であり、(B)は、本発明の一実施形態による吸引カップを圧縮させて挿入器の内側に嵌合させて眼に入れる一続きの概念上のステップを示す図であり、(C)は、本発明の一実施形態による吸引カップを圧縮させて挿入器の内側に嵌合させて眼に入れる一続きの概念上のステップを示す図であり、(D)は、本発明の一実施形態による吸引カップを圧縮させて挿入器の内側に嵌合させて眼に入れる一続きの概念上のステップを示す図であり、(E)は、本発明の一実施形態による吸引カップを圧縮させて挿入器の内側に嵌合させて眼に入れる一続きの概念上のステップを示す図である。
【
図16】(A)は、本発明の一実施形態による収束する側壁を有する低摩擦圧縮装置の上面斜視図であり、(B)は、本発明の一実施形態による収束する側壁を有する低摩擦圧縮装置の上面斜視図であり、(C)は、本発明の一実施形態による収束する側壁を有する低摩擦圧縮装置の上面斜視図であり、(D)は、本発明の一実施形態による収束する側壁を有する低摩擦圧縮装置の上面斜視図である。
【
図17】本発明の一実施形態による圧縮チャンバの内側に吸引カップが貯蔵された状態の圧縮チャンバを示す図である。
【
図18】本発明の一実施形態による圧縮チャンバの内側に貯蔵された吸引カップの拡大図である。
【
図19】電極に電流を提供するためのワイアリードに取り付けられるように構成された電極支持リングの一実施形態を示す図である。
【
図20】本発明の一実施形態による電極支持リングに対するワイアリードの取付けの拡大図である。
【
図21】本発明の一実施形態による電極支持構造を介して電極に接続されたエラストマ構造を示す図である。
【
図22】本発明の一実施形態による電極とタブを備える電極支持構造との間のインターフェースの拡大図である。
【
図23】本発明の一実施形態によるエラストマ構造内に位置する湾曲タブを介する電極支持構造とエラストマ構造(たとえば、吸引カップ)との間のインターフェースを示す図である。
【
図24】本発明の一実施形態によるエラストマ構造内へ挿入された湾曲タブを介する電極支持構造とエラストマ構造(たとえば、吸引カップ)との間のインターフェースの拡大側面図である。
【
図25】本発明の一実施形態による支持構造および切断要素の別の設計の上面斜視図である。
【
図26】本発明の一実施形態による電極近傍で印加される力の概略横断面図である。
【
図27】本発明の一実施形態による電極が弾性支持リングの底面上に位置する概略横断面図である。
【
図28】吸引カップに吸引力を印加するための配備されたピストンを有する顕微手術/嚢切開装置の一実施形態を示す図である。
【
図29】吸引カップに吸引力を印加するピストンを有し、ピストンが装置の心棒内へ後退している顕微手術/嚢切開装置の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
これらの図は、例示のみを目的として、本発明の一実施形態を示す。以下の説明から、本明細書に記載する本発明の原理から逸脱することなく、本明細書に示す構造および方法の代替的実施形態を用いることができることが、当業者には容易に理解されよう。
【0029】
本発明の実施形態について、本明細書では、水晶体嚢の前面の一部分が切断される水晶体嚢手術に関連して説明する。この技法を使用して、白内障に対する治療を実行することができ、水晶体嚢内に位置する水晶体のすべてまたは一部分が、眼から除去される。また、この処置を使用して、水晶体嚢内に人工の水晶体(たとえば、眼内レンズまたはIOL)を移植するときに通るためのアクセス孔を、水晶体嚢内に作ることもできる。本明細書では、水晶体嚢手術を実行することに関して説明することが多いが、これらの装置および処置は水晶体嚢手術に限定されるものではなく、とりわけ角膜手術、緑内障の治療、視神経の微細穿孔、デスメ膜に関する手術など、眼の他の治療でも有用となる可能性がある。さらに、これらの装置および処置はまた、薬理学、生物学、および化学的な実体および治療送達にも有用になることがある。また、これらの装置および処置を使用して、吸引力に加えて流体を送達することもでき、送達は、所望の組織のみに特に局所化された(たとえば、吸引カップによって)制限的な露出とすることができる。さらに、これらの装置および処置は、産業用の適用分野で、または繊細な膜もしくは組織構造の摘出、脳硬膜の穿孔、血管組織などに関する処置など、眼以外の他の医療処置の実行に有用となることもある。これらの装置および処置はまた、体外で、身体から摘出および分離された組織上で、産業用の適用分野などで使用することもできる。これらの他のタイプの適用分野では、これらの処置および装置は、水晶体嚢手術に関して説明したのと概ね同様に機能するが、これらの構成要素は、異なる組織を収容するように異なる構成、寸法、形状とすることができる。
【0030】
本明細書では、「パルス」という用語は、電気パルスがオンである時間の長さ、たとえば100マイクロ秒を指す。パルスがDCパルスである場合、電流は100マイクロ秒全体で、1方向のみに流れる(ただし、振幅が変化することがある)。それがACパルスである場合、電流は100マイクロ秒中に方向を逆にする。AC周波数がRFまたはマイクロ波範囲内である場合、100マイクロ秒のパルス中に多くのサイクルが生じる。周波数および振幅は、100マイクロ秒中に変化または減速することができ、その種のパルスは「チャープ」と呼ばれ、電流路は、金属のリングの周りを進むことができ、またはリングから組織を通って戻り電極へ進むことができる。
【0031】
「エラストマ構造」という用語は、エラストマ構造と組織との縁部間に気密封止を提供できる、曲げられる/折り畳み可能な構造を指す。一実施形態では、エラストマ構造は、切断要素に機能的に連結され、エラストマ構造は、エラストマ構造と組織との間の液密封止を提供し、エラストマ構造と組織との間に真空圧が印加される結果、切断要素を組織に押し付ける圧力を生させることが可能になる。
【0032】
「切断要素」という用語は、圧力および/または電流の印加によって組織を切断するように設計された要素を指す。切断要素は、様々な材料から作ることができる。一実施形態では、切断要素は、「電極」(たとえば、「電極セグメント」)を指す。電極の金属構成要素は、ニッケル、金、鋼、銅、白金、イリジウムなどの適した金属の電鋳によって作ることができる。電極と心棒内のリードとの間の接続は、電気めっきまたは溶接によって作ることができる。通常、電気切断要素の場合、切断要素に対する材料は導電性を有し、機械切断要素の場合、材料は、膜に穴をあけるのに十分なほど堅い。また、電気切断要素と機械切断要素のどちらの場合でも、材料は通常、組織切開部を通り抜けるために圧搾された後にその元の形状に戻るのに十分な弾性を有し、またはポリマー支持リングおよび/もしくはポリマー支持リングが装着された吸引カップによって円形の形状に押し戻されるのに十分な柔軟性を有する。たとえば、電気切断要素の場合、これらの材料は、ばね鋼、ステンレス鋼、チタンニッケル合金、黒鉛、ニチノール(NiTi合金「記憶金属」)、ニッケル、ニッケルクロム合金、タングステン、モリブデン、または要素がその元の形状に戻ることを可能にする任意の他の材料など、光化学エッチングによって作られた材料を含むことができる。電気切断要素に対する他の材料には、導電性エラストマが含まれ、導電性エラストマには、互いに接触を確立し、放電の持続時間にわたって引き続き互いに接触できる適当な形状の伝導性粒子(たとえば、銀、金、黒鉛、または銅)と混合されたエラストマ(たとえば、シリコーンまたはポリウレタン)が含まれる。電気切断要素に対する材料の追加の例には、エラストマ支持リング内に引留して伝導性要素を作ることができる非常に細いワイア(たとえば、直径約1または2ミクロン)のコンプライアントメッシュ(compliant mesh)が含まれる。さらなる例として、電気切断要素に対して、高伝導性金属(たとえば、金、アルミニウム、銅など)など、金属をポリマー支持体上へスパッタリングすることによって作られた材料を使用することもでき、これらの材料を使用して、RFプラズマスパッタリングによって堆積された使用可能範囲(たとえば、1から10オーム)内の抵抗を有する非常に細い(たとえば、1ミクロン)の要素を作ることができる。
【0033】
機械切断要素に使用される材料は、とりわけ、光化学エッチングされた金属(たとえば、ステンレス鋼)、または比較的堅いプラスチック(たとえば、フェノール樹脂)を含むことができる。個別の微細な歯を単結晶シリコンからエッチングすることができる。光化学エッチングを使用して、たとえば25ミクロン、または12.5ミクロン、または5ミクロンなどの厚さを有する切断要素を作ることができる。
【0034】
「導体」という用語は、電荷を伝導する物質または媒体を指す。本明細書で導体として使用される要素として「金」に言及するときはいつでも、限定ではなく例としてPt、Cu、Ni、Ta、Ir、Re、およびそれらの合金を含めて、良好な導体として適した代替の材料を使用することもできることを理解されたい。導体は、加熱要素を指すことができる。加熱要素は、限定ではなく例として金、Pt、Ta、Ir、Re、Al、Ag、およびそれらの合金(たとえば、Ta/Al、Pt/Irなど)、窒化タンタル、窒化チタン、伝導性を有するようにドープされた炭化物などを含めて、多数の適した伝導性材料から作ることができる。
【0035】
「絶縁体」という用語は、熱または電気が通過することを容易に可能にしない任意の材料または物体、たとえば、非常に低い導電性もしくは熱伝導性を有する材料、またはそのような材料から作られたものを指す。絶縁体は、限定ではなく例としてポリマー(たとえば、カプトン、シリコーンなど)、ガラス(たとえば、化学強化ガラス)、セラミック(たとえば、酸化タンタル、酸化チタン、非伝導性の酸化物、窒化物、およびオキシナイトライドなど)を含むことができる。
【0036】
「切断要素支持構造」、「電極支持構造」、または「支持構造」という用語は、切断要素もしくは電極から延び、かつ/または切断要素もしくは電極に取り付けられて支持するために使用される構造を指す。いくつかの実施形態では、電極支持構造はエラストマである。いくつかの実施形態では、支持構造はニチノールから作られる。電極支持構造などの機械的な支持要素に使用される材料としてニチノールに言及するときはいつでも、限定ではなく例として化学強化ガラス、ハイテン鋼、ステンレス鋼、ポリマー、カプトンなどの任意の適した弾性材料に置き換えることもできることを理解されたい。いくつかの実施形態では、電極支持体は、電極と、別の構造、たとえば注封材料またはエラストマ構造(たとえば、吸引カップ)との間のインターフェースを提供する一連のタブを備える。いくつかの実施形態では、切断要素支持構造は、切断要素とは機械的に別個であるが、切断要素に取り付けられる。他の実施形態では、切断要素支持構造は、切断要素の延長、たとえば伝導性の電極の延長であり、電極支持構造セグメントはより伝導性が低く、支持構造から延びる。他の実施形態では、切断要素支持構造は、互いに同じ材料から作られた切断要素の延長であり、切断要素支持構造は、切断要素支持構造の周りで電流の流れを防止するためのノッチを有する。
【0037】
顕微手術/嚢切開装置
本発明によって解決される問題は、所望の円形の経路の外側の組織を不注意で裂け目することなく手動の嚢切開をどのように実行するかである。本発明を使用すると、裂け目は、熱で弱くなった材料の場所をたどり、そのような場所は、電極(たとえば、円形の電極)によって画定される。裂け目は、より強い低温の材料内へは進まない。一実施形態では、本発明は、当該の正確な円形の経路において膜内の応力と膜の強度の両方を制御し、したがって望ましくないプロセスは生じないはずである。
【0038】
一実施形態では、本明細書に記載する顕微手術/嚢切開装置は、吸引力を使用して嚢膜を円形の金属電極の縁部に接触させ、それによって膜上で正確に切断が望ましいところ、たとえば嚢膜上の円で、電極と水晶体嚢との間に均一の円形の接触状態を確立する。次いで、電気エネルギーが電極を一気に通過して、電極と膜の接触に沿って応力を引き起こし、電極に沿って膜の切断を完了させることができる。電気パルスの持続時間は、10ミリ秒より小さく(好ましくは、約10から100マイクロ秒以下)、その結果、組織のわずかな体積のみがそれによって加熱される。パルスの性質は、DCまたはAC(無線波、たとえば1MHz、もしくはマイクロ波、たとえば2.4GHz)とすることができる。
【0039】
別の実施形態では、吸引カップを用いることなく、同様に切断を行うために、円形の金属電極が水晶体嚢と均一に円形に接触するように注意深く配置される。
【0040】
一実施形態では、機械的に弾性の電極支持構造によって支持された円形の電極を備える顕微手術/嚢切開装置が、本明細書に記載されている。この電極は、伝導性金属、たとえば、限定ではなく例として金、白金、銅、ニッケル、タンタル、イリジウム、レニウム、およびそれらの合金から作られる。機械的に弾性の電極支持構造は、弾性材料、たとえば、限定ではなく例としてニチノール(たとえば、超弾性ニチノール)、化学強化ガラス、ハイテン鋼、ステンレス鋼、ポリマー、カプトンなどから作られる。機械的に弾性の電極支持構造が弾性材料から作られるこの実施形態では、それは、小さい角膜切開部を通って顕微手術/嚢切開装置を挿入することが可能になるように変形し、次いで眼の前眼房内で膨張してその元の形状に戻ることができる。一実施形態では、顕微手術/嚢切開装置は、エラストマ構造(たとえば、吸引カップ)をさらに備え、エラストマ構造は水晶体嚢に取り付けられる。次いで、吸引力によって嚢膜が引っ張られて電極に密接に接触し、電流が0.0005秒未満(好ましくは、0.0001秒未満)だけ続き、その結果、膜が切断される。いくつかの実施形態では、摘出された円形の断片は、装置の吸引チューブによって吸い出すことができる。他の実施形態では、摘出された円形の断片は、吸引カップの頂部に粘着させることによって眼から取り出すことができる。これらの実施形態について、以下でより詳細に説明する。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態では、電流が電極へ進んで電極を通ることから生成される高温は、エラストマ構造に到達しない。これにより、装置の加熱によって引き起こされるガス抜けが防止される。一実施形態では、これは、高伝導性の回路を別個の切断要素として切断要素支持構造上へ直接配置することによって実現される。電流は切断要素内を通って優先的に流れ、支持構造は多くの熱を生成しない。したがって、エラストマ構造は高温に到達しない。別の実施形態では、支持構造と切断要素との間に絶縁層(すなわち、絶縁体)が配置される。この場合、切断要素は、支持構造と同じ材料であっても異なる材料であってもよい。別の実施形態では、支持構造は支持機能を提供するとともに、その縁部が切断機能を提供する(すなわち、1つの構造が両方の機能を果たす)。この実施形態の一態様では、支持構造の上部部分(エラストマ構造に接触している)は、電流が回路内で支持構造の上部の周りを流れるのを防止するカットアウトを有する。支持構造の底部はカットアウトを有しておらず、したがって切断要素(たとえば、電極)として作用することができ、電流は、切断要素の周りで連続する経路を流れ、嚢の切断に必要な加熱を生成する。この場合、カットアウトは、支持構造に対する任意の修正形態であり、支持構造のうちエラストマ構造に取り付けられた部分の周りで電流の流れを抑制する。これらのカットアウトの結果、「タブ」を得ることができ、タブは、エラストマ構造の中心へ径方向に向けることができ、または円周方向に位置合わせされたままとすることができる。
【0042】
図1は、眼内で使用されている顕微手術/嚢切開装置1の側面斜視図である。図示されている眼の関連部分は、角膜6および水晶体嚢7の表面である。この装置では、エラストマ吸引カップ2が、吸引力によって水晶体嚢上に保持されている。吸引カップは、吸引のための配管および電流のための導電体を含む心棒4に取り付けられる。吸引カップ内では、電極が嚢に対向している。装置は、角膜内に事前に作った切開部5を通って押し込まれた挿入器3を通って摺動する。
【0043】
本発明の一実施形態による顕微手術嚢切開装置を使用する方法のステップについて、以下に説明する。
1.粘性体(または他の潤滑性の材料)を吸引カップ2に塗布して、潤滑剤として作用させる。
2.吸引カップおよび電極を圧縮し(圧縮ツール内)、挿入器内に嵌合させる(
図1は、挿入器が取り付けられて心棒が摺動するハンドピース構造(後述)を示すものではないことに留意されたい)。
3.吸引カップおよび電極を挿入器内へ摺動させる。
4.角膜切開部5を作る(別個の眼科ツールを使用)。
5.挿入器3を押し込んで角膜切開部に通す。
6.吸引カップ、電極、および心棒を摺動させて挿入器から出し、眼に入れる。
7.吸引カップが眼の前眼房に入った後、それはその円形の形状に戻る。
8.外科医は、円形の電極の中心を眼の光軸上に位置決めする。
9.吸引力を印加する。
10.吸引力により、吸引カップおよび電極を水晶体嚢に押し付ける。
11.電極に電流を流して嚢を切断する。
12.吸引力を遮断する。
13.任意選択で、吸引カップと水晶体嚢との間に逆方向の流体の流れを噴射させて、吸引カップの把持を断つ。
14.装置および摘出された膜の断片を眼から取り出す。
【0044】
ステップ1、2、3、5、6、7、8、および9の後、システムコントローラは、電極を通ってわずかな試験電流を送り、その抵抗を測定することができることに留意されたい。抵抗が低すぎるまたは高すぎる場合、システムは、装置が破損しており、取り換える必要があることを、外科医に警告する。抵抗の測定は、所望する場合、連続して行うことができる。上記のステップは、そのような方法の単なる一例であり、より少数または多数のステップを使用することもでき、所望に応じて、ステップを修正し、またはステップを時間的に離間し、またはステップの順序を変えることができる(同じことが、本出願に記載する他の方法/ステップの一覧にも当てはまる)。
【0045】
図2は、使用中の装置の横断面図を示す。電極9(たとえば、切断要素)は嚢7に接触しており、嚢7は水晶体10を密閉する。電極9は、弾性的に変形可能なリング12(たとえば、支持構造)によって支持される。吸引カップ2(たとえば、エラストマ構造)は、吸引が開始したときに嚢による液密封止の形成を容易にするために、「スカート」または「リップ」8を有する。チューブ11を通る流体の流れにより、吸引力が制御される。
【0046】
図3Aは、吸引力によって電極9(たとえば、9B、9−OD(
図3B)、または9−ID(
図3B)、およびこれらの任意の組合せ)および吸引カップ2のスカート8に接触させられている嚢膜7の概略横断面図を示す。電極は、弾性的に変形可能なリング12によって機械的に支持され、弾性的に変形可能なリング12は、注封材料14によって吸引カップに保持される。電気リード13は、電極に電流を流す。いくつかの実施形態では、電極9は、支持構造9Bの底部、支持構造9−ID(
図3B)の内径、支持構造9−OD(
図3B)の外径、またはこれらの任意の組合せに沿って配置される。この構成のいくつかの実施形態を、後述する
図3Cに、より詳細に示す。
【0047】
図3Bは
図3Aの修正形態を示し、嚢7を引っ張って電極9(たとえば、9B、9−OD、または9−ID、およびこれらの任意の組合せ)および吸引カップ2のスカート8に接触させる吸引力が増大されている。電極は、弾性的に変形可能なリング12によって機械的に支持され、弾性的に変形可能なリング12は、注封材料14によって吸引カップに保持される。電気リード13は、電極に電流を流す。
【0048】
図3Cは、本発明の特定の実施形態の弾性支持リングの底部上で電極(たとえば、金)がめっきされる7つの場所の横断面図を示す。いくつかの実施形態では、弾性支持リングは、超弾性ニチノールから作られる。各設計の結果、吸引力が印加されるときの膜内の引っ張り応力およびせん断応力の大きさおよび分布が異なり、放電が生じた後の熱流およびその結果生じる温度の分布が異なる。一実施形態では、これらの電極は、本出願で後に論じるように、せん断で嚢がはっきりと裂ける人々(たとえば、より高齢の成人)に対しては、嚢の裂け目に高い引っ張り応力が必要な人々(たとえば、より若年の成人および子供)向けに設計される電極とは異なる形で構成される。
図3C−Aは、本発明の一実施形態による支持リングの底部に沿って位置する電極を示す。
図3C−Bは、本発明の一実施形態による支持リングの底部の内側寸法上に位置する電極を示す。
図3C−Cは、本発明の一実施形態による支持リングの底部の外側寸法上に位置する電極を示す。
図3C−Dは、本発明の一実施形態による支持リングの底部および底部の内側寸法上に位置する電極を示す。
図3C−Eは、本発明の一実施形態による支持リングの底部および底部の外側寸法上に位置する電極を示す。
図3C−Fは、本発明の一実施形態による支持リングの底部の内側寸法および外側寸法上に位置する電極を示す。
図3C−Gは、本発明の一実施形態による支持リングの底部、底部の内側寸法、および外側寸法に沿って位置する電極を示す。これらは、電極設計の単なるいくつかの例であり、電極は、所望に応じて他の形態で位置決めすることもできる。異なる表面テキスチャは、膜と電極との間に異なる量の液体(たとえば、粘弾性物質または適した潤滑剤)を閉じ込める。電極に沿って平滑な表面は、電極から膜への直接の熱伝導を最大にする。
図3Cに示す様々な電極設計は、本出願に記載する装置のいずれでも使用することができる。
【0049】
図4は、角膜内で使用中であり、水晶体の嚢膜上に載せられている装置1の側面図を示す。
図5は、装置1の正面図を示す。
図6は、エラストマ吸引カップ2、電極リング支持体12、電極9(9B、9−ID)、注封材料14、および吸引カップスカート8を有する装置の断面図を示す。一実施形態では、電極リング支持体12は、吸引カップ2の加熱を防止するために、非伝導性であり、または電極9より伝導性が低いものである。別の実施形態では、電極支持リングの上部の周りの電流の流れを防止し、したがって吸引カップ2の加熱を防止するために、電極支持リング12の上部内へスロットまたは1もしくは複数の他の切れ目が導入される。一実施形態では、スロットを含む電極支持リングは、電極と同じ材料のものである。別の実施形態では、電極および電極支持リングは、連続する構造の一部であり、電極は、電流の流れを可能にし、水晶体の嚢膜または他の組織に接触して電極に沿って裂けるようにする部分として画定される。構造のうち、電極支持リングとして機能する部分は、電流の流れを可能にせず、エラストマ構造に接触している。この実施形態もまた、吸引カップの加熱を回避する。
図7は、装置の前面横断面図を示し、吸引チューブ11と、挿入器3の前縁部20と、絶縁電気リードワイア17と、電極ボンドパッド26(
図8参照)に結合されるワイア17の端部16とを示す。
【0050】
図8は、電極ボンドパッド26と、ボンドパッドから電極への接続トレース29とを見ることができる底面図を示す。支持リング12は、開口または孔19を有し、注封材料14でリングを定位置にロックすることが可能になり、または注封材料がない場合、流体の流れを生じさせて吸引力を確立することが可能になる。孔19はまた、圧縮状態から膨張するときに電極のもつれを回避するのに役立つ。吸引カップは、心棒に接続されるエラストマネック領域21を有する。使用中、吸引力は、吸引カップを変形させて表面18を引っ張り、水晶体嚢に接触させる。本発明のいくつかの実施形態では、装置を用いてそれを引き抜いたときに、摘出された円形の膜断片を眼から運び出すのに十分なほど嚢を表面18に粘着させる手段が提供される。いくつかの実施形態では、この粘着力は、膜のコラーゲンに粘着する化学基によって、もしくは微小で機械的な鋭利な点によって、または粘着性の化学物質で被覆された鋭利な点の組合せによって提供することができる。一実施形態では、小さい点の粘着性材料(たとえば、部分的に硬化させたシリコーンゲル)が、頂部の中心に塗布される。別の実施形態では、頂部18の小さい断片が、粘着性材料(たとえば、シリコーンゲル)で被覆される。この粘着性の断片は、断片の圧縮中に自然に付着して眼に入るのを防止するために、可溶性の非粘着性層(たとえば、ポリビニルアルコール、PVA)で被覆される。眼に入れてから約1分未満で、PVAは拡散してなくなり、粘弾性の溶液は、粘着性の被覆が膜に接触するのに十分に(吸引圧力による)、インターフェースから流れ出る。特定の実施形態では、頂部18のテキスチャは、流体が閉じ込められないようにインターフェースから流れ出ることを可能にするために、その中に成型された凹凸を有する。これにより、それに付着して摘出された断片を眼から取り出すのに十分に、表面18が膜に接触することが可能になる。
【0051】
摘出された断片の保持および取出しに寄与する別の機構は、断片に接触する局所化された真空ラインである。これは、主吸引ラインが材料を吸引カップに戻して水晶体上のその把持を断つステップ中にも断片に真空を印加できるように、主吸引ラインとは別個のラインとすることができる。摘出された断片の保持および取出しに寄与する別の機構は、吸引ラインに沿って吸引ライン内に位置する微小機械的な鋭利な点である。
【0052】
図9は、吸引カップまたは注封材料がない場合に見られるはずの装置を示す。弾性的に変形可能な支持アーム24が、領域23を覆うように弾性的に変形可能なリング12に結合される(たとえば、スポット溶接による)。一実施形態では、弾性的に変形可能なリング12および支持アーム24は超弾性ニチノールから作られ、支持アーム24は、溶接(レーザ溶接または電気抵抗スポット溶接)によって弾性的に変形可能なリング12に結合される。ニチノール部材は、帯状の箔から切断することができ(たとえば、レーザによる)、溶接前に形状設定処理にかけることができる。支持アームは、心棒ブロック22に取り付けられ、心棒ブロック22はまた、心棒(図示せず)の内腔内で絶縁ワイア17および吸引チューブ11を引留する。心棒ブロック22は、吸引カップ(シリコーン注封に粘着するシリコーンカップ、またはポリウレタン注封に粘着するポリウレタンカップ)のネック21に結合される接着剤または注封材料(たとえば、シリコーンまたはポリウレタン)にそれを機械的にロックする構造を有する。
【0053】
図10は、
図9に類似しているが、挿入器が取り出されており、心棒構造の外側層25を見ることができる。一実施形態では、この外側層は、ヒートシンク配管(たとえば、厚さ約0.1mm未満のポリエステル)から構成される。
【0054】
図11(底面が上向きになっている)では、電極9(9−ID)と、電気接続経路29と、ボンドパッド26と、結合されたワイア端部16と、任意選択の溶接部28(リングが最初は平坦な箔から作られる場合に存在することがある)と、吸引のために流体の流れを可能にする貫通孔19と、注封材料へのロック係合を提供する貫通孔31とを見ることができる。貫通孔31および19の寸法は、所与の利用可能な厚さの箔またはシートストックに対する弾性リングの剛性の微調整を可能にする。剛性は、リングが前眼房の内側でその円形の形状に確実に戻ることができるのに十分なほど高くしなければならないが、それは、挿入器3の内側の摺動のために摩擦力が最小になるように、可能な限り低くするべきである。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態では、電流は、1つのリード内を、接続経路29を介して電極へ流れる。次いで、この電流の2分の1は、円形の電極の2分の1を通って時計回りに流れ、電流の残りの2分の1は、円形の電極の残りの2分の1を通って、別の接続経路(図示せず)を介して他方のリード(第1のリードから180度)へ反時計回りに接地まで流れる。一実施形態では、電流源は、所定の電圧に充電されたキャパシタである。
【0056】
本章では、発明者らは、加熱された電極をエラストマ吸引カップから熱的に分離してガス抜けの可能性を回避する装置の一実施形態について説明する。電極は、0.0001秒(または0.00001秒から0.001秒の範囲内)で1000℃(または500℃から1300℃の範囲内)の温度に到達することができる。本発明の一実施形態では、電極を形成するために、金などの良好な導電体が使用される。銅、銀、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブなどの他の材料を、導電体として使用することもできる。一実施形態では、支持リングは超弾性ニチノールである。金が、裸のニチノール金属上に直接めっきされる場合、それが使用中に剥がれないように良好な付着を実現することができる。電流の一部は金を通り、一部はニチノールを通る。電流のうち、各経路を通る留分は、経路の抵抗に依存する。金は、オーステナイト相のニチノールより伝導性が約34倍高い(マルテンサイト相より伝導性が約33倍高い)。印加応力のない超弾性ニチノールは、約8℃を上回るとオーステナイトになり、角膜切開部を通り抜けるための変形中に応力が特定の閾値を超過した場合のみ、マルテンサイト相を形成する。抵抗器を通って放散する電力はP=I
2Rであるため、一実施形態では、発明者らは、可能な限り最初の体積内で電流を最大にして電力密度を最大にし、したがって電力密度は、金の中で高くなり、ニチノールの中で低くなる。また、金の比熱は、ニチノールの約1/3である。同じ質量の材料内で放散されるエネルギーが同じである場合、ニチノール中の温度上昇は、金の1/3のみである。したがって、一実施形態では、エラストマへの機械的接続は、ニチノールを通して行われる。この実施形態では、エラストマに到達する最大温度は、ガス抜けが問題となるはずの値を下回るように維持される。
【0057】
本発明の一実施形態では、弾性リング12および電極の寸法は、次のとおりである。ニチノールリングの外径は5.5mm、内径は5.45mm、高さは0.4mmである。めっきした金の厚さは約0.01mm以下、幅は0.1mm、めっきした領域は、(1)内径縁部、(2)外径縁部、(3)下縁部、(4)これらの任意の組合せである(たとえば、
図3B、および
図3Cの実施形態A〜G参照)。
【0058】
いくつかの実施形態では、ニチノールは、金めっきの前に電気絶縁層によって覆われる。一実施形態では、金めっきの前にニチノールを電気絶縁層で覆う方法は、次のとおりである。
1.ニチノール部分を箔からレーザ切断する。
2.ニチノール部分を電解研磨する。
3.ニチノールリングおよび支持アームを「形状設定」する(それぞれの取付具に入れて約500℃で約10分間維持し、次いで水中で成分を急冷する)。
4.リング縁部28をともに溶接する(たとえば、レーザ、ティグ、または抵抗溶接)(任意選択)。
5.任意選択でニチノール支持アームをリングに溶接する。
6.制御された雰囲気炉内で熱酸化物を成長させる。
7.シャドウマスク内にニチノール構造を設定する。
8.接着剤層(たとえば、250オングストロームから1000オングストロームのTi)をスパッタする。
9.シード層(たとえば、250オングストロームから1000オングストロームのAu(またはNi))をスパッタする。
10.シャドウマスクから取り出す。
11.金(たとえば、厚さ10ミクロン)をめっきする。
【0059】
上記の方法によって生成される装置は、装置の使用中にニチノールを通る電流の流れを抑制する(絶縁層のため)。これは、エラストマ構造によって見られる温度上昇を低減させ、装置はより効率的になる。やはり金を導体として使用することができるが、装置の機能は電極材料とニチノールリングの伝導度の比に依存しなくなるため、より低い伝導性を有する他の導体を使用することもできる。したがって、いくつかの実施形態では、ニッケル、ステンレス鋼、または超弾性ニチノールなどのより高い融点の材料を、加熱された電極に対する材料として使用することができる。これらの材料は、より高い抵抗率を有し、したがって、金で実現されるものと同じ短い持続時間のパルスで同じ電力を得るには、より高圧の放電が必要とされる。好ましい実施形態では、絶縁層(たとえば、酸化物または窒化物)は、選択された印加電圧に対する放電中に電極から弾性支持リングへの著しい電子輸送を防止するのに十分なほど厚い。
【0060】
金電極を超弾性ニチノール支持リングに取り付けるという目標を実現するために、多くの技法が当技術分野では知られている。ニチノールが平坦なシートとして用いられる場合、フォトリソグラフィを実行して、めっきが望ましくないところをマスクすることができる。別の技法では、形状設定および溶接後、金めっきの前に、円筒形の表面上でフォトリソグラフィを実行することができる。
【0061】
図12および
図13は、ニチノール支持アーム30が金でめっきされて電極に対する電気リードとして働く装置の一実施形態を示す。これにより、ワイア17を吸引カップおよび心棒から取り除くことが可能になる。一実施形態では、支持アーム上の金の横断面積は、電極のものよりはるかに大きく、したがって支持アームは使用中に高温にならない。ニチノールリング内の貫通孔により、金の貫通めっきが可能になり、その結果、金と金の結合(またははんだ付け)を使用して、支持アームと電極支持リングの機械的接続、および導電性支持アームと電極の電気的接続を行うことができる。本明細書に記載する装置はいずれも、伝導性支持アームを含むこの設計を含むように修正することができる。一実施形態では、支持アームは、吸引力を印加するチャネルまたはチューブを含むように修正される(たとえば、支持アームは、吸引力を印加するチューブを形成するようにu字状チャネルの形状で提供される(たとえば、
図25参照))。
【0062】
図14は、本発明の一実施形態によるハンドピース上に装着された装置の概要を示す。2つのアセンブリ、すなわち外側ハウジングと、外側ハウジングに対して摺動する内側ユニットとが存在する。外側ハウジングは、スリーブ50、ノーズピース53、および挿入器3から構成される。内側ユニットは、吸引を行う配管56、導電体55、サムスライド52、および心棒57から構成される。摺動ユニットを動かすために、外科医は、案内スロット51に沿ってサムスライド52を押す。スリーブ50の各側面上の側面チャネル54は、圧縮チャンバ60(
図17、
図18参照)のラッチアーム61(
図17参照)に係合する。
【0063】
図15は、本発明の一実施形態によって、角膜切開部を通って装置を配備する一続きのステップを示す。
1.包装されているとき、吸引カップ2は、圧縮チャンバ60内で圧縮ビーム58間に位置する(
図15A)。
2.使用者は、圧縮ビームをともに押し込み、したがって吸引カップは挿入器内腔幅より狭くなる(
図15B)。
3.吸引カップは挿入器内へ引き込まれる(
図15C)。
4.圧縮チャンバはハンドピースから外されて破棄される(
図15D)。
5.挿入器が角膜切開部内へ挿入され、吸引カップが挿入器から押し出される(
図15E)。
【0064】
図16は、漏斗状の受動圧縮構造59を使用して装置を配備する一続きのステップを示す。吸引カップは、使用者がサムスライド52を圧縮チャンバから離れる方へ動かすと圧縮を受ける。この実施形態では、それが挿入器3内へ引き込まれるときに、収束する側壁59が吸引カップ2を徐々に圧縮する。一実施形態では、圧縮チャンバは使用前に生理的食塩水または粘弾性物質もしくは他の潤滑剤で満たされるため、摩擦は低い。圧縮チャンバの床部および頂部は、吸引カップまたは電極を物理的に拘束し、吸引カップまたは電極が平面から偏向するのを防止する。成形された収束する側壁がなければ、圧縮作業はすべて、挿入器への入口で行わなければならないはずであり、必要な力がより大きくなるはずである。
図16Bで、吸引カップは完全に挿入器の内側に位置する。
図16Cで、圧縮チャンバが取り外されている。
図16Dは、挿入器が角膜切開部および前眼房内に配備された吸引カップを通って押し込まれたときに見られるはずの装置を示す。一実施形態では、低摩擦圧縮装置は、電極リングおよび電極を備えるが吸引カップをもたない装置に使用される。
【0065】
図17は、本発明の一実施形態によるラッチアーム61によってハンドピーススリーブ50上へラッチされた圧縮チャンバ100の平面図を示す。包装されているとき、吸引カップ2は応力を受けておらず、圧縮チャンバ内に位置し、圧縮チャンバは、圧縮ビーム58が互いの方へ動かされて吸引カップを圧縮するとき、それが垂直偏向しないように拘束する。
【0066】
図18は、本発明の一実施形態による2次元の漏斗状の形状を有する受動圧縮チャンバを示し、それが摺動してチャンバから挿入器に入るとき、収束する壁62が吸引カップ2を圧縮する。本明細書に記載する装置はいずれも、
図14〜18のハンドピースおよび方法とともに使用することができる。
【0067】
図19は、たとえばニチノールまたはステンレス鋼から作られる弾性リング64を示す。一実施形態では、弾性リング64はステンレス鋼から作られ、弾性リングは、それを眼内へ挿入するために必要な偏向中に恒久的なプラスチック変形を回避するのに十分な寸法(たとえば、約0.01mmから約0.025mmの壁厚さ)のものである。別の実施形態では、弾性リング64は、超弾性ニチノールから作られる。この場合、リングは、より厚くすることができる(たとえば、約0.05mmから約0.075mmの壁厚さ)。
図19は、リングに取り付けられたワイアリード65を備える一実施形態を示す。この実施形態により、支持アームがワイアであるため、電極はより小さい剛性で浮遊することが可能になり、装置のピッチおよびロール方向の運動範囲を増大させることが可能になる。この実施形態は、エラストマ構造(たとえば、吸引カップ)の有無にかかわらず使用することができる。一実施形態では、ワイアリードは、ニッケルでめっきされた銅またはアルミニウムから作られる。いくつかの実施形態では、ワイアリードは、溶接、はんだ付け、またはろう付けを介して取り付けられる。いくつかの実施形態では、ワイアリードは、電極の外側寸法に取り付けられる。本発明の一実施形態によれば、支持リングの底面上に、金電極がめっきされる。
【0068】
図20は、本発明の一実施形態による電極支持リングに対するワイアリードの取付けの拡大図を示す。支持リング66内の孔または開口により、注封材料による吸引カップ内への吸引力の流れおよび/またはロックが可能になり、また、圧縮状態から膨張するときに電極のもつれを回避するのに役立つ。この設計で、電流は、リードからリング内へ流れる。それは次いで、金電極と弾性リングの両方を通って流れる。金はニチノールまたはステンレス鋼より伝導性が約34倍高いため、金の中の電流密度はリング内より34倍大きい。電力=I
2Rであるため(ここで、Iは電流であり、Rは抵抗である)、金の中の電力密度はリング内よりはるかに大きく、したがって金は、嚢膜を切断するのに十分なほど加熱され、リングは、エラストマ(たとえば、シリコーンまたはポリウレタン)のガス抜けが問題になるほどには加熱されない。本明細書に記載する装置はいずれも、
図19および
図20の設計を含むことができる。
【0069】
図21〜24は、電極に対する弾性支持体が、個別のタブ75を有することによって、電極を通る電流からエラストマ構造(たとえば、吸引カップ)を分離する本発明の一実施形態を示す。一実施形態では、これらの個別のタブは、電極支持構造として作用する。タブは、電極からの電流の漏れを防止することによって、エラストマ構造への熱流を低減させる。一実施形態では、支持構造および電極は連続しており、タブは、エラストマ構造に接続された上部部分のカットアウトであり、電流が回路内で支持構造の上部の周りを流れるのを防止する。支持構造の底部はカットアウトを有しておらず、したがって切断要素(たとえば、電極)として作用することができ、電流は、切断要素の周りで連続する経路を流れ、嚢の切断に必要な加熱を生成する。この場合、カットアウトは、支持構造に対する任意の修正形態であり、支持構造のうちエラストマ構造に取り付けられた部分の周りで電流の流れを抑制する。これらのカットアウトの結果、「タブ」を得ることができ、タブは、エラストマ構造の中心へ径方向に向けることができ(
図21〜24に示す)、もしくは円周方向に位置合わせすることができる(たとえば、エラストマ構造の円周を概略的にたどる方向を指す。一例として
図25参照)、または他の形で位置決めすることができる。これらのタブはまた、
図21〜24に示すものより短くても長くてもよい(たとえば、タブのうちエラストマ構造内へ延びる部分を短くすることができる)。
図21は、適合する封止スカート73と、内腔71を有するネックとを有するエラストマ構造70を示す。金電極74および金リード76が、エラストマ構造内に注封された超弾性ニチノール構造によって支持される。内側寸法82および/または底部81および/または外側寸法80の表面には、必要に応じて、金めっきを施すことができる(
図22)。一実施形態では、表面72は、摘出された膜断片に接着させることができ、その結果、それを装置とともに眼から取り出すことができる。
【0070】
一実施形態では、電極は、垂直部材を備える。これらの垂直部材が狭いことで、いくつかのタブ75(
図22)から構成された電極支持構造を熱伝導が進むのが防止される。本発明の一実施形態による吸引カップに対するこの電極の取付けを、
図23に示す。いくつかの実施形態では、完全な回路は、電極支持構造の底部のみで電極の周りに位置し、電子が支持構造を流れてエラストマ構造(たとえば、吸引カップ)に入るのを防止する。一実施形態では、タブ75は、シリコーンと比較すると本質的に剛性である。いくつかの実施形態では、これらのタブは、ステンレス鋼または超弾性ニチノールから作られる。
【0071】
図25は、本発明の一実施形態による支持構造および切断要素400の別の設計の上面斜視図である。使用の際には、電流は、剛性リード401から接続リード402を通って電極リング403内へ流れることができる。電流は、電極リング403(すなわち、切断要素)の周りを進み、接続リード405を通って剛性リード406へ流れる。任意選択のリガメント407が、パルスの初めで蒸発するように設計され、その結果、それは、パルスの残り期間中に存在して電流を伝導することはない。
図25には、引留タブ404も示す。一実施形態では、切断要素は、引留タブ404(すなわち、支持構造)で吸引カップの下面に装着された円形の切断要素である。いくつかの実施形態では、タブは、吸引カップに取り付けられるように異なる形状を有することができ、たとえば
図22に示す湾曲タブ75とすることができる。この実施形態では、支持構造は支持機能を提供するとともに、その縁部が切断機能を提供する(すなわち、1つの構造が両方の機能を果たす)。支持構造の上部部分(エラストマ構造に接触している)は、電流が回路内で支持構造の上部の周りを流れるのを防止するカットアウトを有する。支持構造の底部はカットアウトを有しておらず、したがって切断要素(たとえば、電極)として作用することができ、電流は、切断要素の周りで連続する経路を流れ、嚢の切断に必要な加熱を生成する。この場合、カットアウトは、支持構造に対する任意の修正形態であり、支持構造のうちエラストマ構造に取り付けられた部分の周りで電流の流れを抑制する。これらのカットアウトの結果、「タブ」を得ることができ、タブは、エラストマ構造の中心へ径方向に向けることができ(たとえば、
図21〜24)、または円周方向に位置合わせすることができる(たとえば、
図25)。特定の実施形態では、切断要素は、組織内で異なる形状の切開部が望ましい異なるタイプの外科的処置に対して、他の形状(たとえば、長円形、正方形、方形、不規則な形状、および他の形状)をとることができる。同様に、吸引カップもまた、他の形状をとることができる。
【0072】
切断機構
嚢膜の切断は、次のように行われると考えられる。吸引力により、膜が電極を覆うように引き伸ばされる。これにより、正確に切断が望ましい円のところで、膜に張力がかかる。印加された力は、円の内側の材料を円の外側の隣接する材料から離れる方へ引っ張るように作用するが、膜は、この力のみから破断するには強すぎる。放電が電極を加熱するとき、膜、水、および電極と膜との間に閉じ込められていることがある粘性体の中へ熱が流れ始める。膜のうち電極に近接している領域の温度が増大するにつれて、膜材料はその機械的強度を失う。膜は、水素結合、ファンデルワールス力、機械的に絡み合った分子鎖、および共有結合によってともに保持される。温度が増大するにつれて、強度が増大する順序、すなわちファンデルワールス、水素結合、機械的なもつれ、次いで共有結合の順序で結合が破断する。共有結合が破断する前でも、加熱された領域は、局所的に溶解した状態に近づいており、膜をそのまま保持する共有結合の数が小さい場合、引っ張り応力およびせん断応力は、膜を破断するのに十分なほど高くなることがある。同時に、この領域内の水は、沸点を上回るまで加熱され続け、したがって膜内の圧力は増大し続ける。膜が弱くなり、膜内の蒸気からの膨張圧力が局所的に高くなり、かつ引っ張り応力およびせん断応力が遠い領域で印加されことはすべて、電極によって画定された円上で膜を破断するように作用し続ける。膜と電極との間に閉じ込められた蒸気または膨張する粘性体によって、追加の圧力が印加される。膜が破断した後、「溶解」した縁部は、冷却時に新しい水素結合が形成されるときに再凝固する。これにより、新しい縁部は平滑になり、欠陥に集中する応力がなくなる。一実施形態では、顕微手術/嚢切開装置の高速切断機構は、その速度のためにうまく機能する。それにより、エネルギー放電からの熱が約25ミクロンを越えて拡散する前に切断を行い、切断に使用されるエネルギーを、膜のうち結合の破断が必要な体積内に閉じ込めることが可能になる。切断が完了した後、熱は3次元に拡散するが、熱はほんの約0.1ジュールであり、したがって組織の全体の温度上昇は生じる。材料拡散または大きな分子の凝固が生じるのに十分な時間またはエネルギーはない。
【0073】
成人の嚢がせん断できちんと裂け目することから、面内の分子間には共有結合の架橋がほとんどまたはまったくないことがわかる。分子は互いを越えて垂直に摺動することができ、このタイプの結合では、増大した温度がそれを弱くし、したがってそれは、より低い印加応力で裂け目する。小児の嚢はより強靭であり、したがってそれらは、さらなる面内架橋を有することがあり、これは、電極に対して異なる設計を必要とすることがある。
図3Cの電極設計を見ると、異なる分布のせん断応力および引っ張り応力を実現することができ、特定の応力の大きさは、吸引圧力ならびに放電のエネルギーおよび持続時間によって制御することができる。機械吸引力が増大するにつれて、熱エネルギー成分が低減しうることに留意されたい。顕微鏡的な溶解区間内で互いを越えて分子を摺動させるのに吸引力のみで十分なほど大きい場合、蒸気膨張を生成する必要はない。したがって、電極の最大温度を低減させることができる。
【0074】
現在実行されるように、白内障手術は、前眼房に「粘弾性材料」を充填した状態で行われる。粘弾性材料とは、短期的には弾性の固体として挙動し、長期的には粘性の液体として流動するものである。したがって、吸引力は、それが放電と一致するように短いパルスとして時間設定された場合、さらに増大させることができる。電極における嚢膜の機械的な運動は、小さくすることができる(たとえば、0.005mmから0.05mm)。吸引力は、空胴化によって制限されるが、空胴化は進展するのに時間がかかり、パルスのタイミングは短すぎる(たとえば、0.010秒未満)。したがって、本発明の一実施形態によれば、使用される順序は、次のようになるはずである。
1.低レベルの吸引力を印加して水晶体に対する吸引カップの封止を確立する。
2.高い吸引パルスを開始する(機械的なパルスは放電より遅い)。
3.吸引力のピークで、電気パルスを放電する。
4.吸引パルスを遮断する。
【0075】
一実施形態では、高い吸引パルスは、吸引カップから離れる方へ急速に動かすことができるピストンによって心棒の内腔を充填することによって生成される。それは、遠くへ動く必要はない(たとえば、それが大きい横断面を有する場合、0.05mmから1mm)。この設計では、吸引カップの内部へつながるオリフィス面積を最大にするべきである。一実施形態では、ピストンが心棒を占有しており、電極支持リングより上に位置するこのピストンからの延長(たとえば、幅1.5mm、厚さ0.1mm)は、吸引カップ内に到達する(角膜切開部に入るための吸引カップの圧縮中、ピストンは心棒内へ引き込まれる)。この延長はまた、摘出された膜断片を捕獲するための真空チャネルおよびオリフィスを有する。
【0076】
図26は、電極近傍の印加された力の概略横断面図を示す。電極のODおよびID側面にかかる吸引力は、弾性支持リングの底部に対して膜を定位置に締め付ける。せん断力は、隅で最大になり、したがって電極は、隅(この場合、ID隅)に位置し、熱がそこにある膜を弱くするとき、切断処理が行われる。低圧領域205では、より高い周囲圧力により、膜(207)に作用する力209および210が生じ、締付け領域202、203、204が膜を動けなくする。電極206が放電によって加熱されるとき、せん断力208は、結合の熱的破断によってそれが弱くなったところで、膜を破断する。吸引カップ200は単に、低圧領域205を周辺の流体環境の周囲圧力から分離する働きをする。
【0077】
膜がせん断力だけでは適切に裂け目しない小児の場合、引っ張り応力を増大させる設計を使用することが役立つことがある。
図27は、電極(208)が弾性支持リング(201)の底面上に位置する概略横断面図を示す。膜内でその場所に設置された静的応力領域は、より引っ張りが強い(220)。次いで、放電が行われると、それは、成人の嚢切開で切断を提供する場合に必要なものより大きいエネルギーを有するようになり、より高い温度を実現して、膜内でさらなる膨張蒸気圧力を生成することができる。
図26および
図27に示す力は、本明細書に記載する装置のいずれにも適用することができる。
【0078】
吸引チャネルの代替的実施形態
図28および
図29の装置300を見ると、吸引カップ2の内部全体にわたって(または所望する場合、一部に)ピストン301を配備することができる。それは、その独自の真空源によって心棒4内の主吸引とは独立して封印された吸引チャネル302を有する。ピストン301は、電極支持リング12全体にわたって摺動する。
図29は、眼に入るための吸引カップの圧縮中にとるはずのその後退位置で、ピストンを示す。眼に入った後、ピストンは、吸引カップ(
図28)を横切るように押し込まれるはずである。吸引パルスを生じさせるために、ピストンは、その後退位置(
図29)へ急速に引き抜かれ、それによって吸引カップの内側の体積を低減させるはずである。そのような運動は、手動であるが、ばねもしくはソレノイドまたは他の機構によって行われるはずである。次いで、ピストンは、摘出された膜を吸引力によって捕獲するために、吸引カップの中心の方へ戻されるはずである。次いで、主吸引チャネルは逆方向に進み、材料を吸引カップに入れて水晶体上のその保持を解放するはずである。
【0079】
上記の説明は、実施形態の動作を説明するために含まれており、本発明の範囲を限定することを意味するものではない。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲のみによって限定されるべきである。上記の議論から、本発明の精神および範囲によって包含されるはずの関連技術の当業者には、多くの変形形態が明らかになるであろう。本明細書では、「一実施形態(one embodiment)」または「一実施形態(an embodiment)」に対するあらゆる言及は、その実施形態に関連して記載する特定の要素、特徴、構造、または特性が、少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な場所で見られる「一実施形態では」という語句は、必ずしもすべて同じ実施形態を指すとは限らない。