(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697800
(24)【登録日】2020年4月30日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】Y型バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 51/00 20060101AFI20200518BHJP
F16K 1/32 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
F16K51/00 A
F16K1/32 B
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-11036(P2016-11036)
(22)【出願日】2016年1月22日
(65)【公開番号】特開2017-129256(P2017-129256A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】小林 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】星山 秀永
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
中国実用新案第202338690(CN,U)
【文献】
特開平05−087270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 51/00
F16K 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に接続される管状部と該管状部に対して斜め方向に延設された枝管部を備えた略Y状を呈したボディ部と、
該ボディ部の枝管部に、その一端が接続された略円筒状の中空のボンネット部と、
該ボンネット部の他端に接続されたアクチュエータ部と、
前記ボンネット部を挿通し、前記アクチュエータ部によって一端が押し引き操作される棒状のステムと、
該ステムの他端に取り付けられ、前記ボディ部の管状部内に設けられた弁座に形成された開口部を完全に閉塞する大きさを有する弁体を備え、
前記弁体の振動防止手段が、前記ボディ部の枝管部の首部の長さが、開位置の弁体の移動方向の長さの過半長を超える大部分を収納する長さを有すること、前記弁体の外周囲に沿った接触幅が拡幅された拡幅部を有するウイングガイドを備えていること、及び前記ボディ部に、前記弁体の径方向周囲に沿って包囲部材が設けられていて、当該包囲部材が全開位置での前記弁体の下端近傍にまで包囲領域が存在していることのうちの1以上を備えたY型バルブであって、
前記ボンネット部の前記ボディ部側の端部に前記ステムを挿通する孔が穿設された座が設けられ、
前記ボンネット部と当該ボンネット部を挿通しているステムとの間の隙間に略円筒状を呈し前記座と一端が当接するガイドリングと、該ガイドリングの他端と当接する環状の1以上のパッキンが嵌装され、
前記パッキンがバネによって前記座の方向に付勢され、
前記ガイドリングの前記座と当接する第1端部に円錐状の先細り部が形成され、
該先細り部の、前記ステムとの摺動面に円弧状に凹部が形成され、
前記先細り部の先端側に前記凹部が形成され、
前記座の幾何学的形状が部分円錐状であり、前記先細り部と前記座が密着するとともに、前記先細り部の先端は前記凹部により前記ステム側に変形する構成にしてある、
ことを特徴とするY型バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はY型バルブに関する。さらに詳しくは開閉操作の繰り返しに伴って発生する構成部品の磨耗粉を流体側に排出しないY型バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
配管内の液体や蒸気といった流体の配管中の流れを開閉するため、或は当該配管中の流体の流れの量(流量)を調整するために設けられるY型バルブとして、弁棒で吊り下げられて弁箱内を開閉位置間で移動する弁体と、弁体よりも上流側に配されて当該弁体を、移動方向に案内するガイドを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1において、Y型弁にはステムと弁箱との摺動による摩耗発生の問題点が認識されており、特許文献1記載の発明ではかかる摺動による摩耗を抑制するために摺動防止手段を設けることを提案している。
【0004】
しかしながら、振動を抑制するだけでは摩耗の問題を解決することができず、摩耗の発生により磨耗粉が発生し、流体中に混入するという問題がある。
【0005】
Y型バルブのステムと弁箱との摺動による磨耗粉の発生を技術的課題としたものはないが、可変容量形ポンプや制御弁をパイロット圧によって作動制御するためのパイロット弁におけるプッシュロッド(8)のシール装置において、プッシュロッド(8)とプッシュロッド案内面(26)との摺動による磨耗粉発生の問題が認識されていて、
図8に示されるように、プッシュロッド案内面(26)の最上部にダストシール(27)を設け、中間部にオイルシール(29)を設け、ダストシール(27)の下面に隣接して、磨耗粉を溜めるための凹部(28)を設けることで、摺動隙間への磨耗粉の侵入を防止している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2658669号公報
【特許文献2】実公平7−49042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、パイロット弁におけるプッシュロッドのシール装置に採用された摺動隙間への磨耗粉の侵入の防止機構は、プッシュロッド案内面(26)の最上部にダストシール(27)を設け、中間部にオイルシール(29)を設け、ダストシール(27)の下面に隣接して、磨耗粉を溜めるための凹部(28)を設けており、高圧流体(例えば、0.5−1MPa)用のY型バルブの封止機構に、かかる構造を採用することは構造上困難である。
【0008】
本発明は、Y型バルブのステムと封止機構との間の摺動により発生する磨耗粉を収集し、流体内への混入を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るY型バルブは、配管に接続される管状部と該管状部に対して斜め方向に延設された枝管部を備えた略Y状を呈したボディ部と、
該ボディ部の枝管部に、その一端が接続された略円筒状の中空のボンネット部と、
該ボンネット部の他端に接続されたアクチュエータ部と、
前記ボンネット部を挿通し、前記アクチュエータ部によって一端が押し引き操作される棒状のステムと、
該ステムの他端に取り付けられ、前記ボディ部の管状部内に設けられた弁座に形成された開口部を完全に閉塞する大きさを有する弁体を備え、当該弁体の振動防止手段として、前記ボディ部の枝管部の首部の長さが、開位置の弁体の移動方向の長さの過半長を超える大部分を収納する長さを有するY型バルブであって、
前記ボンネット部の前記ボディ部側の端部に前記ステムを挿通する孔が穿設された座が設けられ、
前記ボンネット部と当該ボンネット部を挿通しているステムとの間の隙間に略円筒状を呈し前記座と一端が当接するガイドリングと、該ガイドリングの他端と当接する環状の1以上のパッキンが嵌装され、
前記パッキンがバネによって前記座の方向に付勢され、
前記ガイドリングの前記座と当接する第1端部に円錐状の先細り部が形成され、
該先細り部の前記ステムとの摺動面に円弧状に凹部が形成されている
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係るY型バルブは、Y型バルブのボンネット部のボディ部側の端部にステムを挿通する孔が穿設された座が設けられ、ボンネット部と当該ボンネット部を挿通しているステムとの間の隙間に略円筒状を呈し前記座と一端が当接するガイドリングと、該ガイドリングの他端と当接する環状の1以上のパッキンが嵌装され、当該パッキンがバネによって前記座の方向に付勢され、前記ガイドリングの前記座と当接する第1端部に円錐状の先細り部が形成され、該先細り部の前記ステムとの摺動面に円弧状に凹部が形成されているので、Y型バルブのステムと封止機構との間の摺動により発生する磨耗粉を収集することができ、ひいては流体内への混入を防止することができる。なお、本発明においては、ガイドリングとパッキンを用いてステムのシールを行っているのであるが、ガイドリングの主たる役割はステムの案内であり、パッキンの主たる役割はパッキン自体が変形することによりシールを行うことである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のY型バルブの外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明のY型バルブの一例の縦断面説明図である。
【
図3】(a)は本発明のY型バルブ装置を構成するガイドリングの断面説明図であり、(b)は(a)の要部断面図である。
【
図5】本発明のY型バルブを構成するボディ部の断面説明図である。
【
図6】本発明のY型バルブを構成するパッキンの斜視図である。
【
図7】従来技術に係るY型バルブの一例の概要を示す説明図である。
【
図8】従来技術に係るパイロット弁におけるプッシュロッド(8)のシール装置の要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照しながら本発明のY型バルブについて、以下に詳細に説明する。
図1は本発明のY型バルブの外観を示す斜視図である。
図2は本発明のY型バルブの一例の縦断面説明図である。
図3の(a)は本発明のY型バルブ装置を構成するガイドリングの断面説明図であり、
図3の(b)は
図3の(a)の要部断面図である。
図4は
図3のガイドリングの斜視図である。
図5は本発明のY型バルブを構成するボディ部の断面説明図である。
図6は本発明のY型バルブを構成するパッキンの斜視図である。
【0013】
[実施形態1]
図1−6を参照すると、実施形態1に係るY型バルブは、配管に接続される管状部(1P)と該管状部(1P)に対して斜め方向に延設された枝管部(1b)を備えた略Y状を呈したボディ部(1)を具備している。
【0014】
該ボディ部(1)には枝管部(1b)が一体的に接合(例えば、溶接)されている。ボディ部(1)及び枝管部(1b)の材質として、例えばステンレス鋼(SUS316)が採用される。
【0015】
そして当該枝管部(1b)には、略円筒状の中空のボンネット部(1)の一端(B1)がねじによる螺着、或いは差し込み溶接などの接合手段により接続される。
【0016】
該ボンネット部(1)の他端(B2)にはアクチュエータ部(AC)が接続されている。該アクチュエータ(AC)は、ケーシング(C)と、該ケーシング(C)内に配され、後述するステム(ST)に固着されたピストン(P)と、圧縮コイルバネ(SP)とを具備しており、ピストン(P)は前記圧縮コイルバネ(SP)によって常時下方(ボディ部(1)に向かう方向)に付勢されている。因みに、
図2は、アクチュエータ(AC)内に配されたピストン(P)が圧縮コイルバネ(SP)によって押し下げられた状態を示しており、この場合、後述するステム(ST)の一端に設けられた弁体(2)及び弁体(2)に嵌装されたシール(2S)が、弁座(1S)によって画成された開口部(1op)を閉塞する。
【0017】
Y型バルブを開放する際には、作動油若しくは圧縮空気が入口(IN)と通路(PA)を介してケーシング(C)に導入され、この作動油若しくは圧縮空気の圧力が圧縮コイルバネ(SP)の弾性力に抗して前記ピストン(P)を上方(ボディ部(1)から遠ざかる方向)に移動させる。なお、ピストン(P)には限定されることはないが、
図2に示されるようにピストンリング(PR)が嵌装され得る。
【0018】
Y型バルブは、更に棒状のステム(ST)を具備しており、ステム(ST)は前記ボンネット部(B)を挿通している。前述のとおり、ステム(ST)にはピストン(P)が固着されていて、アクチュエータ部(AC)によってステム(ST)の一端が押し引き操作される。
【0019】
前記棒状のステム(ST)の他端には弁体(2)が取り付けられている。当該弁体(2)は、前記ボディ部(B)の管状部(1P)内に設けられた弁座(1S)に形成された開口部(1op)を完全に閉塞する大きさ(幾何学的形状及び寸法)を有している。
【0020】
本実施形態のY型バルブは、前述の特許文献1に開示された振動防止手段を具備している。すなわち、弁体(2)の振動防止の第1手段として、ボディ部(1)の枝管部(1b)の首部(1n)の長さが、開位置の弁体(2)の移動方向の長さの過半長を超える大部分を収納する長さを有すること、弁体(2)の振動防止の第2手段として、前記弁体(2)の外周囲に沿った接触幅が拡幅された拡幅部を有するウイングガイド(3)を備えていること、及び弁体(2)の振動防止の第3手段として、前記ボディ部(1)に、前記弁体(2)の径方向周囲に沿って包囲部材が設けられていて、当該包囲部材が全開位置での前記弁体の下端近傍にまで包囲領域が存在していること、のうちの1つ以上(すなわち、第1手段、第2手段及び第3手段のうちの1以上)を備えている。
【0021】
前記ボンネット部(B)のボディ部(1)側の端部(B1)には、ステム(ST)を挿通する孔(OP)が穿設されたテーパー状の座(B1s)が設けられている。
図2及び4を参照すると、図示された実施形態では、テーパー状の座(B1s)の幾何学的形状は部分円錐状であり、後述するボンネット部(B)のボディ部(1)側の端部(B1)に形成された座(B1s)と当接するガイドリング(S1)の第1端部(S1a)に形成された円錐状の先細り部(T)とそれぞれの外面同士が密着するようにされているが、テーパー状の形状に限定されず、例えば、円環状のものも採用され得る。
【0022】
更に本実施形態のY型バルブは、ボンネット部(B)と当該ボンネット部(B)を挿通しているステム(ST)との間の隙間に略円筒状を呈し前記座(B1s)と一端が当接する封止機構(すなわち、ガイドリング(S1)と、該ガイドリング(S1)の他端と当接する環状の1以上のパッキン(S2))が嵌装されている。ガイドリング(S1)及びパッキン(S2)の材質としては、耐熱特性が広く、摩擦特性に優れたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好適に採用されるが、限定されることはなく、PTFEと同等の材質であれば他のものも使用することができる。
【0023】
前記パッキン(S2)はバネ(SP)によって前記座(B1s)の方向に付勢されている。ここで、
図2を参照して詳述すると、ガイドリング(S1)及びパッキン(S2)は、ボンネット部(B)のボディ部(1)側の端部(B1)に形成された座(B1s)と、ボンネット部(B)の他端(B2)に差し込まれて固着された端末部材(L)との間にバネ(SP)がそれぞれワッシャ(W)を介して挟持されている。
【0024】
前記ボンネット部(B)のボディ部(1)側の端部(B1)に形成された座(B1s)と当接するガイドリング(S1)の第1端部(S1a)には、円錐状の先細り部(T)が形成されており、該先細り部(T)の、前記ステム(ST)との摺動面(SL)に円弧状に凹部(R)が形成されている。
【0025】
このように、本実施形態によれば、先細り部(T)の、前記ステム(ST)との摺動面(SL)には円弧状に凹部(R)が形成されているので、ステム(ST)と封止機構との間の摺動により発生する磨耗粉を収集することができ、ひいては流体内への混入を防止することができる。
図3を参照すると、ガイドリング(S1)は常時バネによって付勢されているので、円弧状に形成された凹部(R)が存在することにより、経時的に
図3の(b)に示すように先細り部(T)が変形する傾向がある。それゆえ、結果的にステム(ST)と封止機構との間の摺動により発生する磨耗粉の流体への混入が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のY型バルブは、配管に接続される管状部と該管状部に対して斜め方向に延設された枝管部を備えた略Y状を呈したボディ部と、
該ボディ部の枝管部に、その一端が接続された略円筒状の中空のボンネット部と、
該ボンネット部の他端に接続されたアクチュエータ部と、
前記ボンネット部を挿通し、前記アクチュエータ部によって一端が押し引き操作される棒状のステムと、
該ステムの他端に取り付けられ、前記ボディ部の管状部内に設けられた弁座に形成された開口部を完全に閉塞する大きさを有する弁体を備え、
前記弁体の振動防止手段が、前記ボディ部の枝管部の首部の長さが、開位置の弁体の移動方向の長さの過半長を超える大部分を収納する長さを有すること、前記弁体の外周囲に沿った接触幅が拡幅された拡幅部を有するウイングガイドを備えていること、及び前記ボディ部に、前記弁体の径方向周囲に沿って包囲部材が設けられていて、当該包囲部材が全開位置での前記弁体の下端近傍にまで包囲領域が存在していることのうちの1以上を備えたY型バルブであって、
前記ボンネット部の前記ボディ部側の端部に前記ステムを挿通する孔が穿設された座が設けられ、
前記ボンネット部と当該ボンネット部を挿通しているステムとの間の隙間に略円筒状を呈し前記座と一端が当接するガイドリングと、該ガイドリングの他端と当接する環状の1以上のパッキンが嵌装され、
前記パッキンがバネによって前記座の方向に付勢され、
前記ガイドリングの前記座と当接する第1端部に円錐状の先細り部が形成され、
該先細り部の、前記ステムとの摺動面に円弧状に凹部が形成されている。
それゆえ、Y型バルブのステムと封止機構(ガイドリング及びパッキン)との間の摺動により発生する磨耗粉を収集することができ、ひいては流体内への混入を防止することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 Y型バルブのボディ部
1b 枝管部
1n 首部
1op 開口部
1s 弁座
2 弁体
2S シート
AC アクチュエータ
B ボンネット部
B1、B2 ボンネット部の端部
C ケーシング
IN 入口
L 端末部材
P ピストン
PR ピストンリング
S1 ガイドリング
S2 パッキン
SL 摺動面
SP バネ
T 先細り部
X 詳細部