(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6697814
(24)【登録日】2020年4月30日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】カップを備える運動用女性下着
(51)【国際特許分類】
A41C 3/08 20060101AFI20200518BHJP
A41B 9/06 20060101ALI20200518BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20200518BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
A41C3/08
A41B9/06 D
A41D13/00 117
A41D13/05 118
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-120596(P2019-120596)
(22)【出願日】2019年6月27日
【審査請求日】2019年10月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390016850
【氏名又は名称】株式会社カドリールニシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】元屋 昌江
【審査官】
田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02880731(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0180358(US,A1)
【文献】
米国特許第04798557(US,A)
【文献】
独国実用新案第000009412116(DE,U1)
【文献】
特許第5747643(JP,B2)
【文献】
西独国実用新案公開第09412116(DE,U)
【文献】
独国実用新案第9412116号明細書,1994年 9月22日,
図1,2,4,5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 3/08
A41B 9/06
A41D 13/00
A41D 13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のカップ部を備える上部と、着用者の腹部から臀部を覆う下部とを含み、
前記上部および前記下部は、前記上部の前身頃と、前記上部の後身頃と、前記下部の前身頃と、前記下部の後身頃からなり、
前記上部の前身頃の下縁部と前記下部の前身頃の上縁部は、身幅方向において、前中心から着用者の左右の乳房の脇側端部に向かって、互いに縫着されていない前側非縫着部を備え、
前記上部の後身頃の下縁部と前記下部の後身頃の上縁部は、身幅方向において、後中心から着用者の左右の肩甲骨下端部に向かって、互いに縫着されていない後側非縫着部を備え、
前記前側非縫着部と前記後側非縫着部以外の前記上部の下縁部と前記下部の上縁部は、互いに縫着されており、
前記前側非縫着部および前記後側非縫着部は、着用時に、前記上部の下縁部と前記下部の上縁部が着丈方向において離間するように構成されていることを特徴とする、カップを備える運動用女性下着。
【請求項2】
前記前側非縫着部は、身幅方向において、前中心から着用者の左右の乳房の脇側端部までの左右夫々の長さの20%〜80%の範囲に亘って設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のカップを備える運動用女性下着。
【請求項3】
前記後側非縫着部は、身幅方向において、後中心から着用者の左右の肩甲骨下端部までの左右夫々の長さの20%〜80%の範囲に亘って設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のカップを備える運動用女性下着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカップを備える運動用女性下着に関し、より詳しくは、着用者の動作によりその一部がずり上がる虞がなく、優れた着用感を有する、カップを備える運動用女性下着に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヨガ、ゴルフ、テニス、各種トレーニング等の運動時や日常生活において着用するカップを備える運動用女性下着が知られている。
これらの衣類は、着用者の筋肉や骨格の位置に合わせて伸縮度が調整されており、運動時や日常生活における着用者の動きをサポートする、姿勢を補整する等の機能を奏するために用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、伸縮性を有し、着用者にフィットするように形成された本体部と、本体部の左右の肩甲骨に相当する部位の下側部分から腰部周辺に相当する部位に至
る領域に設けられ、着用状態において補整機能を発揮するための緊締部とを備え、緊締部は、腰部周辺側の方が肩甲骨側よりも相対的に易伸縮性を有するように伸縮性調整部材を本体部に取り付けて形成されており、伸縮性調整部材として布材を備え、緊締部は、上辺部、脇辺部、及び、脇側下辺部が本体部に縫着され、腰部側の下辺部の少なくとも一部が本体部から遊離するように、布材を本体部に取り付けて形成されている、補整機能を有する衣類が開示されている。
また、特許文献1には、上記衣類が、身頃付きのカップ部を有する衣類にも適用することができ、具体的には、例えば、ボディースーツや、ロングブラジャー等の身頃部分を有するブラジャー、または、スポーツタイプのブラジャーとしても良い旨が記載されている。
【0004】
特許文献1によると、上記衣類は、腰部周辺側の方が肩甲骨側よりも易伸縮性を有するように伸縮性調整部材を本体部に取り付けて、姿勢を補整するための緊締部が形成されているため、着用者が体を捻る、屈むといった動作を行う際に、腰部側の緊締部が着用者の体の動きに追従して変位し易くなり、補正機能と運動追従性を両立させることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5747643号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、特許文献1に記載の衣類は、腰部側に緊締部を設けることで、着用者の体の動きに追従して変位し易くなり、補正機能と運動追従性を両立させることができるとしている。
しかしながら、特許文献1に記載の衣類は、胸部から腰部あるいは臀部にかけて連結されて構成されているため、着用者の動作、例えば、胸をそらす動作や前屈動作により、腹部や腰部に位置する部位が胸部の部位の動きにつられてずり上がり、着用感が悪くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、着用者の動作によりその一部がずり上がる虞がなく、優れた着用感を有する、カップを備える運動用女性下着を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、左右一対のカップ部を備える上部と、着用者の腹部から臀部を覆う下部とを含み、
前記上部および前記下部は、夫々前身頃と後身頃からなり、
前記上部の前身頃の下縁部と前記下部の前身頃の上縁部は、身幅方向において、前中心から着用者の左右の乳房の脇側端部に向かって、互いに縫着されていない前側非縫着部を備え、
前記上部の後身頃の下縁部と前記下部の後身頃の上縁部は、身幅方向において、後中心から着用者の左右の肩甲骨下端部に向かって、互いに縫着されていない後側非縫着部を備え、
前記前側非縫着部と前記後側非縫着部以外の前記上部の下縁部と前記下部の上縁部は、互いに縫着されていることを特徴とする、カップを備える運動用女性下着に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記前側非縫着部は、身幅方向において、前中心から着用者の左右の乳房の脇側端部までの左右夫々の長さの20%〜80%の範囲に亘って設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のカップを備える運動用女性下着に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記後側非縫着部は、身幅方向において、後中心から着用者の左右の肩甲骨下端部までの左右夫々の長さの20%〜80%の範囲に亘って設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のカップを備える運動用女性下着に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記前側非縫着部および前記後側非縫着部は、着用時に、前記上部の下縁部と前記下部の上縁部が着丈方向において離間するように構成されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカップを備える運動用女性下着に関する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、カップを備える運動用女性下着が、左右一対のカップ部を備える上部と、着用者の腹部から臀部を覆う下部とを含み、上部および下部は、夫々前身頃と後身頃からなり、上部の前身頃の下縁部と下部の前身頃の上縁部は、身幅方向において、前中心から着用者の左右の乳房の脇側端部に向かって、互いに縫着されていない前側非縫着部を備え、上部の後身頃の下縁部と下部の後身頃の上縁部は、身幅方向において、後中心から着用者の左右の肩甲骨下端部に向かって、互いに縫着されていない後側非縫着部を備え、前側非縫着部と後側非縫着部以外の上部の下縁部と下部の上縁部は、互いに縫着されていることを構成要件としていることから、以下のような効果を奏する。
【0013】
前側非縫着部と後側非縫着部を有することで、カップ部を有する上部と着用者の腹部から臀部を覆う下部が互いに独立している部分を設けることができ、上部と下部が互いに引っ張られることのない領域を形成することができる。これにより、例えば、着用者が上半身を反る運動を行った際に、着用者の腹部から臀部を覆う下部が、カップ部を有する上部の動きに引っ張られてずり上がることが無い。それゆえに、着用者の動作により衣類の一部がずり上がる虞がない、優れた着用感を備えた、カップを備える運動用女性下着とすることができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、前側非縫着部は、身幅方向において、前中心から着用者の左右の乳房の脇側端部までの左右夫々の長さの20%〜80%の範囲に亘って設けられている。これにより、特に体を後方へ反らせるような動作を行う場合に、着用者の腹部から臀部を覆う下部が、カップ部を有する上部の動きに引っ張られてずり上がることをより容易に防止できる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、後側非縫着部は、身幅方向において、後中心から着用者の左右の肩甲骨下端部までの左右夫々の長さの20%〜80%の範囲に亘って設けられている。これにより、特に体を前方へ倒したり、四つん這いになるような動作を行う場合に、着用者の腹部から臀部を覆う下部が、カップ部を有する上部の動きに引っ張られてずり上がることをより容易に防止できる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、前側非縫着部および後側非縫着部は、着用時に、上部の下縁部と下部の上縁部が着丈方向において離間するように構成されていることから、より容易にカップ部を有する上部と着用者の腹部から臀部を覆う下部が互いに独立している部分を設けることができ、体を後方へ反らせるような動作を行う場合、および特に体を前方へ倒したり、四つん這いになるような動作を行う場合に、着用者の腹部から臀部を覆う下部が、カップ部を有する上部の動きに引っ張られてずり上がることをより容易に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカップを備える運動用女性下着の正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るカップを備える運動用女性下着の背面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るカップを備える運動用女性下着の正面図であって、前側非縫着部の位置を説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るカップを備える運動用女性下着の背面図であって、後側非縫着部の位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るカップを備える運動用女性下着について、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るカップを備える運動用女性下着の正面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るカップを備える運動用女性下着の背面図である。
なお、本明細書において、「身幅方向」とは着用者の左右のバストトップ位置を結ぶ直線の方向を指し、「着丈方向」とは着用者の体の縦方向(すなわち、着用者の身長方向)を指す。
また、本明細書において、「上方」とは着用者の頭部方向を指し、「下方」とは着用者の足部方向を指す。
加えて、本明細書において、「前中心」とは前身頃のある高さでの身幅方向における中点を指し、「後中心」とは後身頃のある高さでの身幅方向における中点を指す。
【0019】
図1および
図2に示す如く、本発明に係るカップを備える運動用女性下着(1)(以下、単に下着(1)と称する)は、左右一対のカップ部(C)を備える上部(2)と、着用者の腹部から臀部を覆う下部(3)とを含む。
【0020】
上部(2)は、上部前身頃(21)および上部後身頃(22)からなる。
上部前身頃(21)および上部後身頃(22)は互いに縫着されて形成されていても良く、一体的に形成されていても良い。
なお、本明細書において、「前身頃」とは、下着(1)を着用した時に、着用者の正面側に位置する部分を指し、「後身頃」とは、下着(1)を着用した時に、着用者の背面側に位置する部分を指す。「前身頃」および「後身頃」は、一枚の生地であっても良く、複数の生地であっても良い。これは、後述する下部前身頃(31)および下部後身頃(32)においても同様である。
また、上部(2)を構成する素材は特に限定されないが、着用時に着用者の身体にフィットして着心地が良くなるように、伸縮性の素材から形成されていることが望ましい。
【0021】
上部前身頃(21)は、左右一対のカップ部(C)を有する。
左右一対のカップ部(C)は特に限定されず、着用者のバストを保持できるものであり、女性下着に通常用いられているものであればいかなるものでも用いることができる。
また、左右一対のカップ部(C)は、上部前身頃(21)にポケットを設けて、ポケットの中にパッドを入れたものであっても良く、上部前身頃(21)と一体的に形成されたものであっても良く、上部前身頃(21)の着用者の肌側に縫着されたものであっても良い。
【0022】
上部前身頃(21)の下縁部(211)の少なくとも一部は、後述する下部前身頃(31)の上縁部(311)と縫着されている。
また、上部前身頃(21)の下縁部(211)と下部前身頃(31)の上縁部(311)は、身幅方向(W)において、前中心(6)から着用者の左右の乳房(B)の脇側端部(8)(つまり、身幅方向(W)において、左右の乳房の脇側端部(8)と同じ位置)に向かって、互いに縫着されていない前側非縫着部(4)を備えている(
図3参照)。
上部前身頃(21)の下縁部(211)と下部前身頃(31)の上縁部(311)は、前側非縫着部(4)以外の箇所において互いに縫着されている。
【0023】
上部後身頃(22)の下縁部(221)の少なくとも一部は、後述する下部後身頃(32)の上縁部(321)と縫着されている。
また、上部後身頃(22)の下縁部(221)と下部後身頃(32)の上縁部(321)は、身幅方向(W)において、後中心(7)から着用者の左右の肩甲骨(S)の下端部(9)(つまり、身幅方向(W)において、左右の肩甲骨下端部(9)と同じ位置)に向かって、互いに縫着されていない後側非縫着部(5)を備えている(
図4参照)。
上部後身頃(22)の下縁部(221)と下部後身頃(32)の上縁部(321)は、後側非縫着部(5)以外の箇所において互いに縫着されている。
【0024】
下部(3)は、下部前身頃(31)および下部後身頃(32)からなり、着用時に、着用者の腹部から臀部を覆うように形成されている。
下部前身頃(31)および下部後身頃(32)は互いに縫着されて形成されていても良く、一体的に形成されていても良い。
また、下部(3)を構成する素材は特に限定されないが、着用時に着用者の身体にフィットして着心地が良くなるように、伸縮性の素材から形成されていることが望ましい。
下部(3)は、上部(2)よりも伸縮性のある素材で構成されていることが望ましく、これにより着用者の腹部から臀部にかけてより強固にフィットし、腹部のボディラインを美しく見せることができる。
【0025】
下部前身頃(31)の上縁部(311)の少なくとも一部は、上部前身頃(21)の下縁部(211)と縫着されている。
また、下部前身頃(31)の上縁部(311)と上部前身頃(21)の下縁部(211)は、身幅方向(W)において、前中心(6)から着用者の左右の乳房(B)の脇側端部(8)(つまり、身幅方向(W)において、左右の乳房の脇側端部(8)と同じ位置)に向かって、互いに縫着されていない前側非縫着部(4)を備えている。
下部前身頃(31)の上縁部(311)と上部前身頃(21)の下縁部(211)は、前側非縫着部(4)以外の箇所において互いに縫着されている。
【0026】
下部後身頃(32)の上縁部(321)の少なくとも一部は、上部後身頃(22)の下縁部(221)と縫着されている。
また、下部後身頃(32)の上縁部(321)と上部後身頃(22)の下縁部(221)は、身幅方向(W)において、後中心(7)から着用者の左右の肩甲骨(S)の下端部(9)(つまり、身幅方向(W)において、左右の肩甲骨下端部(9)と同じ位置)に向かって、互いに縫着されていない後側非縫着部(5)を備えている。
下部後身頃(32)の上縁部(321)と上部後身頃(22)の下縁部(221)は、後側非縫着部(5)以外の箇所において互いに縫着されている。
【0027】
上部前身頃(21)の下縁部(211)、上部後身頃(22)の下縁部(221)、下部前身頃(31)の上縁部(311)、および下部後身頃(32)の上縁部(321)は、夫々ゴム等の弾性部材から形成されていても良い。
下縁部(211、221)および上縁部(311、321)が弾性部材から形成されることにより、着用時に、着用者の身体に下着(1)をより強固にフィットさせることができる。
本発明に係る下着(1)は、上述した前側非縫着部(4)および後側非縫着部(5)を備えていることにより、着用者の身体に強くフィットした状態で運動した場合でも、下部(3)が上部(2)に引っ張られる、あるいは上部(2)が下部(3)に引っ張られて下着(1)の一部がずり上がるあるいはずり下がる虞がないため、優れた着用感を有する。
【0028】
図3は、本発明の一実施形態に係るカップを備える運動用女性下着(1)の正面図であって、前側非縫着部(4)の位置を説明する図である。
図3に示す如く、前側非縫着部(4)は、上部前身頃(21)の下縁部(211)と下部前身頃(31)の上縁部(311)が重なりあう部分の、身幅方向(W)において、前中心(6)から着用者の左右の乳房の脇側端部(8)に向かって設けられている。
前側非縫着部(4)は、身幅方向(W)において、前中心(6)から、前中心(6)を起点として、着用者の左右の乳房の脇側端部(8)までの左右夫々の長さ(L1)の20%〜80%の範囲に亘って設けられていることが望ましい。
つまり、前中心(6)から左右の乳房の脇側端部(8)までの長さが夫々15cmである場合、前側非縫着部(4)は、前中心(6)から左右の乳房の脇側端部(8)に向かって、夫々3cm〜12cmの範囲に亘って設けられていることが望ましい。
【0029】
前側非縫着部(4)が、身幅方向(W)において、前中心(6)から、前中心(6)を起点として、着用者の左右の乳房の脇側端部(8)までの左右夫々の長さ(L1)の20%〜80%の範囲に亘って設けられていることにより、上部(2)と下部(3)の非縫着領域を十分にとることができ、着用者の運動時に、下部(3)が上部(2)に引っ張られる、あるいは上部(2)が下部(3)に引っ張られて下着(1)の一部がずり上がるあるいはずり下がることをより容易に防止することができる。
前側非縫着部(4)の範囲が20%未満の場合、上部(2)と下部(3)の非縫着領域を十分にとることができず、着用者の運動時に、下部(3)が上部(2)に引っ張られる、あるいは上部(2)が下部(3)に引っ張られて下着(1)の一部がずり上がるあるいはずり下がる虞があり好ましくない。
また、前側非縫着部(4)の範囲が80%を超える場合、上部(2)と下部(3)の縫着領域を十分にとることができず、着心地が悪くなるため好ましくない。
【0030】
図4は、本発明の一実施形態に係るカップを備える運動用女性下着(1)の背面図であって、後側非縫着部(5)の位置を説明する図である。
図4に示す如く、後側非縫着部(5)は、上部後身頃(22)の下縁部(221)と下部後身頃(32)の上縁部(321)が重なりあう部分の、身幅方向(W)において、後中心(7)から着用者の左右の肩甲骨下端部(9)に向かって設けられている。
後側非縫着部(5)は、身幅方向(W)において、後中心(7)から、後中心(7)を起点として、着用者の左右の肩甲骨下端部(9)までの左右夫々の長さ(L2)の20%〜80%の範囲に亘って設けられていることが望ましい。
つまり、後中心(7)から左右の肩甲骨下端部(9)までの長さが夫々15cmである場合、後側非縫着部(5)は、後中心(7)から左右の肩甲骨下端部(9)に向かって、夫々3cm〜12cmの範囲に亘って設けられていることが望ましい。
【0031】
後側非縫着部(5)が、身幅方向(W)において、後中心(7)から、後中心(7)を起点として、着用者の左右の肩甲骨下端部(9)までの左右夫々の長さ(L2)の20%〜80%の範囲に亘って設けられていることにより、上部(2)と下部(3)の非縫着領域を十分にとることができ、着用者の運動時に、下部(3)が上部(2)に引っ張られる、あるいは上部(2)が下部(3)に引っ張られて下着(1)の一部がずり上がるあるいはずり下がることをより容易に防止することができる。
後側非縫着部(5)の範囲が20%未満の場合、上部(2)と下部(3)の非縫着領域を十分にとることができず、着用者の運動時に、下部(3)が上部(2)に引っ張られる、あるいは上部(2)が下部(3)に引っ張られて下着(1)の一部がずり上がるあるいはずり下がる虞があり好ましくない。
また、後側非縫着部(5)の範囲が80%を超える場合、上部(2)と下部(3)の縫着領域を十分にとることができず、着心地が悪くなるため好ましくない。
【0032】
なお、前側非縫着部(4)および後側非縫着部(5)は、身幅方向(W)に連続的に形成されていても良く、例えば、身幅方向(W)において、縫着領域と非縫着領域が交互に存在するように不連続に形成されていても良い。
【0033】
前側非縫着部(4)および後側非縫着部(5)は、着用時に、上部(2)の下縁部(211、221)と下部(3)の上縁部(311、321)が、着丈方向(T)において離間するように構成されていることが望ましい。
上部(2)の下縁部(211、221)と下部(3)の上縁部(311、321)が、着丈方向(T)において離間していることにより、上部(2)と下部(3)の非縫着領域が着丈方向(T)において重なっている場合と比べて、より強固に上部(2)と下部(3)の係わり合いを断つことができ、着用者の運動時に、下部(3)が上部(2)に引っ張られる、あるいは上部(2)が下部(3)に引っ張られて下着(1)の一部がずり上がるあるいはずり下がることをより容易に防止することができる。
加えて、非縫着領域(4、5)が着丈方向(T)において離間しているため、下着(1)の通気性を向上させることができ、着心地を向上させることができる。
【0034】
本発明に係る下着(1)は、2層以上の構成としても良い。
例えば、上部(2)および下部(3)を備える下着(1)を着用者の肌側に位置する第1層として、下着(1)の着用者の肌側とは反対の表面側に第2層を設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る下着によれば、下着が、左右一対のカップ部を備える上部と、着用者の腹部から臀部を覆う下部とを含み、上部および下部は、夫々前身頃と後身頃からなり、上部の前身頃の下縁部と下部の前身頃の上縁部は、身幅方向において、前中心から着用者の左右の乳房の脇側端部に向かって、互いに縫着されていない前側非縫着部を備え、上部の後身頃の下縁部と下部の後身頃の上縁部は、身幅方向において、後中心から着用者の左右の肩甲骨下端部に向かって、互いに縫着されていない後側非縫着部を備え、前側非縫着部と後側非縫着部以外の上部の下縁部と下部の上縁部は、互いに縫着されていることを構成要件としていることから、以下のような効果を奏する。
【0036】
前側非縫着部と後側非縫着部を有することで、カップ部を有する上部と着用者の腹部から臀部を覆う下部が互いに独立している部分を設けることができ、上部と下部が互いに引っ張られることのない領域を形成することができる。これにより、例えば、着用者が上半身を反る運動を行った際に、着用者の腹部から臀部を覆う下部が、カップ部を有する上部の動きに引っ張られてずり上がることが無い。それゆえに、着用者の動作により衣類の一部がずり上がる虞がない、優れた着用感を備えた、カップを備える運動用女性下着とすることができる。
【0037】
それゆえに、本発明に係る下着は、ヨガ、ゴルフ、テニス、各種トレーニング等の運動時や日常生活における女性用下着として広く好適に使用され得る。
【符号の説明】
【0038】
1 カップを備える運動用女性下着
2 上部
21 上部前身頃
211 下縁部(上部前身頃)
22 上部後身頃
221 下縁部(上部後身頃)
3 下部
31 下部前身頃
311 上縁部(下部前身頃)
32 下部後身頃
321 上縁部(下部後身頃)
4 前側非縫着部
5 後側非縫着部
6 前中心
7 後中心
8 乳房の脇側端部
9 肩甲骨下端部
B 乳房
C カップ部
S 肩甲骨
T 着丈方向
W 身幅方向
【要約】
【課題】 着用者の動作によりその一部がずり上がる虞がなく、優れた着用感を有する、カップを備える運動用女性下着を提供すること。
【解決手段】 カップを備える運動用女性下着は、左右一対のカップ部を備える上部と、着用者の腹部から臀部を覆う下部とを含み、上部および下部は、夫々前身頃と後身頃からなり、上部の前身頃の下縁部と下部の前身頃の上縁部は、身幅方向において、前中心から着用者の左右の乳房の脇側端部に向かって、互いに縫着されていない前側非縫着部を備え、上部の後身頃の下縁部と下部の後身頃の上縁部は、身幅方向において、後中心から着用者の左右の肩甲骨下端部に向かって、互いに縫着されていない後側非縫着部を備え、前側非縫着部と後側非縫着部以外の上部の下縁部と下部の上縁部は、互いに縫着されている。
【選択図】
図1