(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電動機の駆動速度は、前記検出値と、前記発電機から前記位相変調回路に入力される電圧を前記整流器により直流電圧に変換した場合の比較値との差に基づいて設定される
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の作業車両の動力伝達装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る作業車両の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。以下に説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[作業車両]
図1は、本実施形態に係る作業車両1を示す側面図である。本実施形態において、作業車両1は、例えば、鉱山の採掘現場において、土砂や砕石等の積荷を運搬するダンプトラックである。以下の説明においては、作業車両1をダンプトラック1と表記する。なお、本実施形態において、ダンプトラック1は、キャブ(運転室)8に搭乗した運転者(オペレータ)に操作される有人ダンプトラックであるが、これに限定されない。さらに、本実施形態において、ダンプトラック1は、例えばリジッド式のダンプトラック1であるが、アーティキュレート式のダンプに適用されてもよくこれに限定されない。
【0011】
ダンプトラック1は、車両本体2と、車両本体2に設けられるベッセル3とを備える。車両本体2は、走行装置4と、走行装置4に支持された車体5とを有する。走行装置4は、車輪6と、車輪6を回転可能に支持する車軸7とを有する。車輪6は、前輪6Fと後輪6Rとを含む。車軸7は、前輪6Fを回転可能に支持する車軸7Fと、後輪6Rを回転可能に支持する車軸7Rとを含む。
【0012】
ベッセル3は、積荷が積載される構造物である。ベッセル3は、昇降装置により、車両本体2に対して上下に昇降可能である。昇降装置は、ベッセル3と車体5との間に配置された図示しない油圧シリンダ(ホイストシリンダ)のようなアクチュエータを含む。昇降装置によりベッセル3が上昇することによって、ベッセル3の積荷が排出される。
【0013】
車体5は、キャブ8と、動力発生装置9と、制御装置30とを有する。キャブ8は、車体5の前側の上部に配置される。キャブ8は、アクセルペダル8aを有する。アクセルペダル8aは、内燃機関11(
図2等参照)の出力を規定する。オペレータは、キャブ8に搭乗して、アクセルペダル8a等を操作することにより、ダンプトラック1を操作する。なお、無人車両のダンプトラック1等、アクセルペダルの操作によらず車体の外からのアクセル開度指令に基づき内燃機関の出力を規定する構成であってもよい。制御装置30は、ダンプトラック1の各部を統括的に制御する。制御装置30は、例えばキャブ8の周辺に配置される。
【0014】
動力発生装置9は、電気駆動方式により動力を発生させて走行装置4を駆動する。
図2は、ダンプトラック1の動力発生装置9の構成を示す図である。
図2に示すように、動力発生装置9は、内燃機関11と、動力伝達装置10とを有する。動力伝達装置10の詳細な構成については、後述する。
【0015】
内燃機関11は、ダンプトラック1の動力源である。本実施形態において、内燃機関11は、ディーゼルエンジンである。内燃機関11は、動力伝達シャフト17に連結されている。内燃機関11は、燃料の供給量に応じた回転速度で動力伝達シャフト17を回転させる。動力伝達シャフト17には、後述する動力伝達装置10の発電機12及び油圧ポンプ18が連結されている。油圧ポンプ18は、油圧機器に作動油を供給する。油圧機器はベッセルを昇降する図示しない油圧シリンダを含む。本実施形態において、油圧ポンプ18は、例えば、斜板式油圧ポンプのような可変容量型油圧ポンプが用いられる。油圧ポンプ18は、入力部が動力伝達シャフト17に連結されており、この構成により内燃機関11によって駆動される。内燃機関11は、エンジン回転速度を検出する回転センサ11sを有する。
【0016】
[動力伝達装置]
次に、動力伝達装置10の構成を説明する。動力伝達装置10は、内燃機関11の動力を走行装置4に伝達する。動力伝達装置10は、発電機12と、位相変調回路13と、整流器14と、インバータ15と、電動機16とを有する。
【0017】
発電機12は、内燃機関11により駆動されて電力を発生する。本実施形態において、発電機12は、オルタネータである。発電機12は、ステータ及びロータを有する。発電機12は、ステータ及びロータの一方にコイル(電機子)が配置され、他方に電磁石(界磁)が配置される。発電機12のロータは、動力伝達シャフト17に連結されている。発電機12は、動力伝達シャフト17の回転に伴ってロータが回転し、電磁誘導によりコイルに誘導起電力及び誘導電流が生じるようになっている。本実施形態において、発電機12は、三相の交流電圧及び交流電流を発生させる。発電機12は、ロータの回転速度である発電機回転速度を検出する回転センサ12sを有する。本実施形態においては、発電機12のロータが動力伝達シャフト17に連結されているため、内燃機関11の回転速度と発電機12の回転速度とは同一である。このため、回転センサ11s及び回転センサ12sの一方を省いた構成としてもよい。この場合、回転センサ11s又は回転センサ12sの検出結果を、内燃機関11の回転速度及び発電機12の回転速度として用いることができる。なお、内燃機関11と発電機12とがPTO等を介して連結される場合、内燃機関11の回転速度と発電機12の回転速度とは、PTO等のギア比等に基づく比例関係になる。この場合、内燃機関11の回転速度及び発電機12の回転速度は、回転センサ11s又は回転センサ12sの検出結果とギア比とに基づいて算出可能である。
【0018】
発電機12は、励磁装置19を有する。励磁装置19は、界磁側の電磁石に流す励磁電流を調整することにより、界磁側の電磁石の磁力を調整し、これにより発電機12における発電量を調整する。なお、発電機12の界磁側を電磁石とする構成に限定するものではなく、例えば界磁側を永久磁石としてもよい。
【0019】
位相変調回路13は、発電機12によって生じた電流の位相を変調する。本実施形態において、位相変調回路13は、磁気エネルギー回生位相変調回路である。位相変調回路13は、発電機12と整流器14との間に直列に接続される。本実施形態において、発電機12が三相の交流電圧及び交流電流を発生させるため、位相変調回路13は、各相の交流電圧及び交流電流に対応するように、3つ並列に配置される。位相変調回路13については、後述する。なお、3つの位相変調回路13は、各位相変調回路13から出力される交流電圧を整流する整流器13aと、整流器13aにより整流された各相についての直流電圧値を加算した値を検出する電圧センサ13sとを有する。整流器13aは、整流器14と同等の構成が用いられる。
【0020】
整流器14は、位相変調回路13から出力された交流電圧を整流し、直流電圧を出力する。整流器14とインバータ15との間には、平滑コンデンサ20が設けられる。平滑コンデンサ20は、整流器14から出力された直流電流を平滑化する。また、整流器14とインバータ15との間には、リターダ21等の負荷機器を配置することができる。リターダ21は、ダンプトラック1の制動時に運動エネルギーを吸収する。
【0021】
インバータ15は、整流器14から出力され、平滑コンデンサ20により平滑された直流電圧を交流電圧に変換して出力する。インバータ15は、前輪6F側に交流電圧を出力する前輪側出力部と、後輪6R側に交流電圧を出力する後輪側出力部とを有する。前輪側出力部及び後輪側出力部は、発電機12及び電動機16に対応して三相の交流電圧を出力可能となるように、それぞれ三相に対応する部分が並列に設けられている。
【0022】
電動機16は、インバータ15から出力される電力により駆動されて回転力を発生させる。本実施形態において、電動機16は、モータである。電動機16は、例えば前輪6F側に配置される前輪側電動機と、後輪6R側に配置される後輪側電動機とを有する。電動機16は、伝達機構22に接続される。伝達機構22は、発電機12で発生した回転力を車軸7(7F、7R)を介して車輪6(6F、6R)に伝達する。電動機16は、モータ回転速度を検出する回転センサ16sを有する。
【0023】
次に、位相変調回路13について説明する。
図3は、1つの位相変調回路13の一例を示す電気回路図である。
図3に示すように、位相変調回路13は、接続部P1、P2と、4つのスイッチング素子である第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3、第4スイッチング素子S4と、コンデンサCと、を有する。以下、第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3、第4スイッチング素子S4については、それぞれ、スイッチング素子S1、スイッチング素子S2、スイッチング素子S3、スイッチング素子S4と表記する。接続部P1は、発電機12に接続される。接続部P2は、整流器14に接続される。
【0024】
スイッチング素子S1、S2、S3、S4は、例えばMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子である。スイッチング素子S1、S2、S3、S4としては、上記に限定するものではなく、他の種類のスイッチであってもよい。以降はスイッチング素子にIGBTを用いた実施形態で説明を行う。
【0025】
スイッチング素子S4とスイッチング素子S1とは、接続部P1から接続部P2に向けてこの順に直列に接続される(第1部分A1)。スイッチング素子S4のエミッタ端子は接続部P1に接続される。スイッチング素子S4のコレクタ端子はスイッチング素子S1のコレクタ端子が接続される。スイッチング素子S1のエミッタ端子は接続部P2に接続される。スイッチング素子S3とスイッチング素子S2とは、接続部P1から接続部P2に向けてこの順に直列に接続される(第2部分A2)。スイッチング素子S3のコレクタ端子は接続部P1に接続される。スイッチング素子S3のエミッタ端子はスイッチング素子S2のエミッタ端子が接続される。スイッチング素子S2のコレクタ端子は接続部P2に接続される。また、2つのスイッチング素子S4、S1と、2つのスイッチング素子S3、S2とは、並列に接続される。コンデンサCは、第1部分A1のうちスイッチング素子S4とスイッチング素子S1との間(接続部P3)と、第2部分A2のうちスイッチング素子S3とスイッチング素子S2との間(接続部P4)とを接続する。上記の様なスイッチング素子S1、S2、S3、S4およびコンデンサCに接続関係によりブリッジ回路を構成する。
【0026】
図4から
図7は、位相変調回路13の動作例を示す図である。本実施形態において、スイッチング素子S1、S2、S3、S4のON、OFFは、例えばスイッチング素子S1、S3と、スイッチング素子S2、S4と、をそれぞれ組にして行う。具体的には、スイッチング素子S1、S3をONにする場合には、スイッチング素子S2、S4をOFFにする。また、スイッチング素子S1、S3をOFFにする場合には、スイッチング素子S2、S4をONにする。
【0027】
図4は、スイッチング素子S1、S3をONにし、スイッチング素子S2、S4をOFFにした場合であって、接続部P1の電圧が負である場合の動作を示す。
図4に示す場合、接続部P2側からスイッチング素子S1を介してコンデンサCの正極側に電流が流れ、コンデンサCの負極側からスイッチング素子S3を介して接続部P1側に電流が流れる。この場合、コンデンサCは帯電する。
【0028】
図5は、スイッチング素子S1、S3をONにし、スイッチング素子S2、S4をOFFにした場合であって、接続部P1の電圧が正である場合の動作を示す。
図5に示す場合、接続部P1側からスイッチング素子S3を介してコンデンサCの負極側に電流が流れ、コンデンサCの正極側からスイッチング素子S1を介して接続部P2側に電流が流れる。この場合、コンデンサCは放電する。
【0029】
図6は、スイッチング素子S1、S3をOFFにし、スイッチング素子S2、S4をONにした場合であって、接続部P1の電圧が正である場合の動作を示す。
図6に示す場合、接続部P1側からスイッチング素子S2を介してコンデンサCの正極側に電流が流れ、コンデンサCの負極側からスイッチング素子S4を介して接続部P2側に電流が流れる。この場合、コンデンサCは帯電する。
【0030】
図7は、スイッチング素子S1、S3をOFFにし、スイッチング素子S2、S4をONにした場合であって、接続部P1の電圧が負である場合の動作を示す。
図7に示す場合、接続部P2側からスイッチング素子S4を介してコンデンサCの負極側に電流が流れ、コンデンサCの正極側からスイッチング素子S2を介して接続部P1側に電流が流れる。この場合、コンデンサCは放電する。
【0031】
図8は、制御装置30の構成を示す機能ブロック図である。
図8に示すように、制御装置30は、内燃機関制御部31と、発電機制御部32と、電動機制御部33と、位相変調回路制御部34と、記憶部35とを有する。内燃機関制御部31は、内燃機関11の動作を制御する。発電機制御部32は、発電機12の動作を制御する。電動機制御部33は、電動機16の動作を制御する。位相変調回路制御部34は、位相変調回路13の動作を制御する。
【0032】
記憶部35は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性又は揮発性の各種メモリ、磁気ディスク等の各種ディスクより少なくとも1つが用いられる。記憶部35は、実施形態に係るダンプトラック1の制御を各制御部31〜34に実行させるためのコンピュータプログラム、及び各制御部31〜34が実施形態に係る制御を実行する際に使用される情報を記憶する。
図9は、記憶部35に記憶される情報の一例を示すブロック図である。記憶部35には、例えば、エンジン回転速度指令値算出情報D1と、直流電圧指令値算出情報(電動機の駆動速度)D2と、出力指定値算出情報D3と、モータトルク指令値算出情報D4と、スイッチング指令値算出情報D5とが記憶される。各制御部31〜34は、記憶部35から前述したコンピュータプログラムを読み込んで実行することにより、実施形態に係る制御を実現する。
【0033】
図10は、制御装置30の全体的な制御体系の一例を示すブロック図である。
図10に示すように、内燃機関制御部31は、アクセル開度指令値に基づいてエンジン回転速度指令値を算出し、エンジン回転速度指令値を内燃機関11に出力する。
【0034】
発電機制御部32は、例えば回転センサ11s等で検出される内燃機関11のエンジン回転速度と、回転センサ16s等で検出される電動機16のモータ回転速度と、位相変調回路13から出力された交流電圧を整流器13aで直流に変換した電圧値であって電圧センサ13s等で検出された直流電圧値とに基づいて、励磁電流指令値を算出し、励磁電流指令値を発電機12に出力する。
【0035】
電動機制御部33は、アクセル開度指令値と、エンジン回転速度と、モータ回転速度とに基づいて、モータトルク指令を算出し、モータトルク指令を電動機16に出力する。
【0036】
位相変調回路制御部34は、回転センサ12s等で検出される発電機12の回転速度(発電機回転速度)に基づいて、スイッチング指令値を算出し、スイッチング指令値を位相変調回路13に出力する。これにより、位相変調回路制御部34は、スイッチング素子S1、S2、S3、S4を切り替えてコンデンサCの帯電状態と放電状態とを切り替えることで発電機12から電動機16に供給される電流の位相を変調する。
【0037】
図11は、内燃機関制御部31による処理内容の一例を示す図である。
図11に示すように、内燃機関制御部31は、エンジン回転速度指令値算出部51を有する。エンジン回転速度指令値算出部51は、アクセル開度指令値が入力される。エンジン回転速度指令値算出部51は、入力されたアクセル開度指令値と、記憶部35に記憶されるエンジン回転速度指令値算出情報D1とに基づいて、エンジン回転速度指令値を算出する。エンジン回転速度指令値算出情報D1は、アクセル開度指令値とエンジン回転速度指令値との関係をマップ等で規定するデータである。エンジン回転速度指令値算出情報D1においては、アクセル開度指令値の増加に従い、エンジン回転速度指令値が増加する関係となっている。
【0038】
図12は、発電機制御部32による処理内容の一例を示す図である。
図12に示すように、発電機制御部32は、直流電圧指令値算出部52と、演算部53と、AVR54とを有する。直流電圧指令値算出部52は、エンジン回転速度と、モータ回転速度とが入力される。直流電圧指令値算出部52は、記憶部35に記憶される直流電圧指令値算出情報(マップ)D2を使用して、入力されたエンジン回転速度及びモータ回転速度から直流電圧指令値を導出し、導出した直流電圧指令値を出力する。直流電圧指令値算出情報D2は、エンジン回転速度と、モータ回転速度と、直流電圧指令値との関係をマップ等で規定するデータである。直流電圧指令値算出情報D2においては、エンジン回転速度及びモータ回転速度のそれぞれの増加に対して直流電圧指令値が増加する等高線上の関係となっている。それぞれ4つの電圧値V1、V2、V3、V4についての領域が等高線を境界として設定されている。4つの電圧値の大小関係は、V1>V2>V3>V4である。設定される電圧値は一例で大きさの変化は任意に設定することが出来る。
【0039】
演算部53は、直流電圧指令値算出部52から出力された直流電圧指令値と、電圧センサ13sで検出された直流電圧値とが入力される。演算部53は、直流電圧指令値から直流電圧値を減算した電圧値を算出し、算出結果を出力する。AVR54は、演算部53から出力された算出結果である電圧値が入力される。AVR54は、算出結果の電圧値に基づいて、励磁装置19から発電機12に供給される励磁電流についての励磁電流指令値を出力する。
【0040】
図13は、電動機制御部33による処理内容の一例を示す図である。
図13に示すように、電動機制御部33は、モータ出力指令演算部56と、出力指定値算出部57と、加減算部58と、制限モータ出力値算出部59と、出力調整リミッター60と、モータトルク指令値算出部61とを有する。
【0041】
モータ出力指令演算部56は、アクセル開度指令値と、モータ回転速度とが入力される。モータ出力指令演算部56は、入力されたアクセル開度指令値とモータ回転速度とに基づいてモータ出力指令値を出力する。モータ出力指令値は、後述のモータトルク指令出力部61で用いられるモータトルク指令値算出情報D4の等出力線を規定する。
【0042】
出力指定値算出部57は、エンジン回転速度が入力される。出力指定値算出部57は、入力されたエンジン回転速度と、記憶部35に記憶される出力指定値算出情報D3を使用し、エンジン回転速度に対するエンジン出力を算出し、算出したエンジン出力を出力する。出力指定値算出情報D3は、エンジン回転速度とエンジントルクとの関係をマップ等で規定するデータである。
【0043】
加減算部58は、エンジン回転速度と、エンジン回転速度指令値とが入力される。加減算部58は、入力されたエンジン回転速度からエンジン回転速度指令値を減算したエンジン回転速度差を出力する。制限モータ出力値算出部59は、出力指定値算出部57から出力されたエンジン出力と、加減算部58から出力されたエンジン回転速度差とが入力される。制限モータ出力値算出部59は、入力されたエンジン回転速度差から出力加算分を求め、出力加算分とエンジン出力より制限モータ出力値を算出する。制限モータ出力値算出部59は、算出した制限モータ出力値を出力する。制限モータ出力値は、エンジン回転速度に対して許容できるモータ出力値の最大値である。
【0044】
出力調整リミッター60は、モータ出力指令演算部56から出力された出力指令値と、制限モータ出力値算出部59から出力された制限モータ出力値とが入力される。出力調整リミッター60は、入力された出力指令値と制限モータ出力値とを比較し小さい値を出力する。出力指令値が制限モータ出力値よりも大きい場合には、制限モータ出力値をモータ出力指令値として出力する。出力調整リミッター60は、入力された出力指令値が制限モータ出力値よりも小さい場合、入力された出力指令値をモータ出力指令値として出力する。
【0045】
モータトルク指令値算出部61は、出力調整リミッター60から出力された調整出力指令値と、モータ回転速度とが入力される。モータトルク指令値算出部61は、入力された調整出力指令値及びモータ回転速度と、記憶部35に記憶されるモータトルク指令値算出情報D4とに基づいてモータトルク指令値を算出し、算出したモータトルク指令値を出力する。モータトルク指令値算出情報D4は、モータ回転速度と、モータトルク指令値との関係を規定するデータである。モータトルク指令値算出情報D4は、モータ出力指令値の増加に対してモータの回転速度とモータトルク指令の乗算の関係になるモータ出力指令が増加する関係となっている。これは、出力調整リミッター60からアクセル開度指令値に基づく出力指令値が入力される場合においては、アクセル開度指令値の増加に基づきモータ出力指令値が大きくなる関係にあることと対応する。モータトルク指令値算出情報D4においては、入力されたモータ出力指令値及びモータ回転速度に基づいて、モータトルク指令値が決定される。
【0046】
図14は、位相変調回路制御部34による処理内容の一例を示す図である。
図14に示すように、位相変調回路制御部34は、スイッチング指令値算出部62を有する。スイッチング指令値算出部62は、発電機回転速度が入力される。スイッチング指令値算出部62は、入力された発電機回転速度と、記憶部35に記憶されるスイッチング指令値算出情報D5とに基づいて、スイッチング指令値を算出する。スイッチング指令値算出情報D5は、発電機回転速度、すなわち、発電機12で発生する電圧及び電流の周波数と、スイッチング指令値との関係を規定するデータである。スイッチング指令値算出部62は、発電機12の回転速度に基づいてスイッチング素子S1、S2、S3、S4のオンとオフとのタイミングが調整される。スイッチング素子S1、S2、S3、S4のオンとオフとのタイミングの調整により、位相変調回路13のコンデンサCの帯電状態と放電状態とが切り替えられる。
【0047】
次に、発電機12から出力される電圧及び電流について、位相変調回路13が設けられない場合と、位相変調回路13が設けられる場合とを比較して説明する。
図15は、アクセル開度の変化を示すグラフである。
図15の縦軸はアクセル開度の大きさ(相対値)を示し、
図15の横軸は時刻を示す。以下、
図15に示すように、位相変調回路13が設けられない場合のアクセル開度101と、位相変調回路13が設けられる場合のアクセル開度102とを一定値とし、かつ同一の値とした場合について説明する。また、位相変調回路13が設けられない場合と、位相変調回路13が設けられる場合とで、内燃機関11及び発電機12のサイズが同一である場合について説明する。
【0048】
図16は、位相変調回路13が設けられない場合において、発電機12で発生する電圧、電流、力率の比較例をそれぞれ示すグラフである。
図16(a)は電圧を示し、
図16(b)は電流を示し、
図16(c)は力率を示す。なお、力率は、有効電力/(有効電力^2+無効電力^2)^1/2で表される値である。本実施形態において「電圧」「電流」と記載する場合は、それぞれ有効電圧及び有効電流を意味する。また、
図16(d)として、発電機12から出力され電圧センサ13sで検出される直流電圧値のグラフを示している。
図16(a)〜(d)の各グラフの横軸は時刻を示し、縦軸はそれぞれ電圧の大きさ(相対値)、電流の大きさ(相対値)、力率、及び直流電圧の大きさを示す。
【0049】
図16(a)及び(b)に示すように、位相変調回路13が設けられない場合、発電機12で発生した電力は、発電機12に設けられるコイルのリアクタンスの影響により、電圧の位相に対して電流の位相が位相αだけ遅れる。このため、
図16(c)に示すように、力率の値が1よりも小さい値となる。この場合、電圧センサ13sで検出される直流電圧値はV
Pとなる。
【0050】
図17は、位相変調回路13が設けられる場合において、発電機12で発生し、位相変調回路13の接続部P2から出力される電圧、電流及び力率の実施例をそれぞれ示すグラフである。
図17(b)は、電圧を示し、
図17(c)は電流を示し、
図17(d)は力率を示す。
図17(b)では、位相変調回路13から出力される電圧V
acoutと、発電機12から出力される電圧V
acinと、位相変調回路13のコンデンサCから出力される電圧V
Cと、を重ねて示している。
図17(b)にてそれぞれの電圧について電圧V
acoutを点線、電圧V
acinを実線、電圧V
Cを一点鎖線で示す。また、
図17(a)として、位相変調回路13のスイッチング素子S1、S3のON、OFFのタイミングと、スイッチング素子S2、S4のON、OFFのタイミングとを表すタイミングチャートを示している。また、
図17(e)として、位相変調回路13から出力され電圧センサ13sで検出される直流電圧値のグラフを示している。
図17(a)〜(e)の各グラフの横軸は時刻を示し、縦軸はそれぞれON/OFFの位置、電圧の大きさ(相対値)、電流の大きさ(相対値)、力率、及び直流電圧の大きさを示す。
【0051】
位相変調回路13が設けられる場合、例えば、
図17(a)の区間(1)で示される時刻では、発電機12で発生した電圧の値が最小値(負の値)となった場合、位相変調回路制御部34は、スイッチング素子S1、S3をONにし、スイッチング素子S2、S4をOFFにする。この場合、位相変調回路13の接続部P1の電圧が負であるため、コンデンサCが帯電する。
【0052】
その後、区間(2)に示すように、電圧の値が徐々に増加して正に切り替わるタイミングまで、位相変調回路制御部34は、スイッチング素子S1、S3がON、スイッチング素子S2、S4がOFFの状態を維持する。この場合、位相変調回路13の接続部P1の電圧が正であるため、位相変調回路13のコンデンサCが放電する。
【0053】
その後、区間(3)に示すように、電圧の値が最大値(正の値)となるタイミングで、位相変調回路制御部34は、スイッチング素子S1、S3をOFFに切り替え、スイッチング素子S2、S4をONに切り替える。この場合、位相変調回路13の接続部P1の電圧が正であるため、コンデンサCが帯電する。
【0054】
その後、区間(4)に示すように、電圧の値が徐々に増加して負に切り替わるタイミングまで、位相変調回路制御部34は、スイッチング素子S1、S3がOFF、スイッチング素子S2、S4がONの状態を維持する。この場合、位相変調回路13の接続部P1の電圧が負であるため、位相変調回路13のコンデンサCが放電する。
【0055】
このように、位相変調回路制御部34が位相変調回路13のスイッチング素子S1、S2、S3、S4のONとOFFとを切り替えることにより、コンデンサCの帯電と放電とのタイミングを制御する。発電機12の出力電圧V
acinは、位相変調回路13からの出力電圧V
acoutと、コンデンサCから出力される電圧V
Cを加算した値となる。この電圧V
acinの位相は、位相変調回路13から出力される電流の位相はと等しくなる。これにより、位相変調回路13から出力される電力において電圧と電流との位相が等しくなるため、力率は1になる。
図17(e)に示すように、位相変調回路13から出力される直流電圧値はV
Qとなる。この直流電圧値V
Qは、位相変調回路13が設けられない場合の直流電圧値V
Pよりも大きな値である。
【0056】
このように、位相変調回路13が設けられることにより、発電機12の力率が改善される。力率の改善により、動力伝達装置10は、内燃機関11及び発電機12のサイズが同一であり、アクセル開度を同一とする場合、位相変調回路13が設けられることにより、位相変調回路13が設けられない構成に比べて、発電機12の出力が高められることになる。このため、動力伝達装置10の伝達効率が向上することになる。
【0057】
この場合、本実施形態における動力伝達装置10では、位相変調回路13が設けられない構成に比べて、電圧センサ13sで検出され演算部53に入力される直流電圧値が大きい値となる。したがって、エンジン回転速度(又はモータ回転速度)の値がそれほど大きくなくても、電圧センサ13sで検出される直流電圧値は大きくなる。そこで、直流電圧指令値算出部52から出力される直流電圧指令値が位相変調回路13による電圧の上昇を予め見込んだ値となるように、直流電圧指令算出情報D2を設定することができる。
【0058】
図18は、直流電圧指令値算出情報の一例を示すグラフである。
図18(a)は、位相変調回路13が設けられない場合の直流電圧指令値算出情報103を示すグラフである。
図18(b)は、位相変調回路13が設けられる場合の直流電圧指令値算出情報104を示すグラフである。なお、
図18(b)に示す直流電圧指令値算出情報104は、上記の直流電圧指令値算出情報D2と同一であってもよい。
図18(a)及び(b)に示すように、直流電圧指令値算出情報103、104は、横軸をエンジン回転速度とし、縦軸をモータ回転速度とするグラフにおいて、対応する直流電圧指令値を示す領域が設定されたものである。
【0059】
図18(a)及び(b)に示す直流電圧指令値算出情報103、104では、それぞれ4つの電圧値V1、V2、V3、V4についての領域が等高線を境界として設定されている。4つの電圧値の大小関係は、V1>V2>V3>V4である。例えば、エンジン回転速度及びモータ回転速度が小さい場合、直流電圧指令値は、最も小さい値である電圧値V4に設定される。また、エンジン回転速度及びモータ回転速度の一方または双方が大きくなりいずれかの回転速度が所定値を超えると、直流電圧指令値は、電圧値V4よりも大きい電圧値V3に設定される。同様にエンジン回転速度及びモータ回転速度の一方または双方が大きくなりいずれかの回転数が所定の回転速度を超えると電圧値V3より大きい電圧値V2、電圧値V2より大きい電圧値V1と設定される。
【0060】
図18(a)に示す直流電圧指令値算出情報103は、等高線の勾配が緩やかであり、4つの領域で比較的大きい電圧値である電圧値V1、V2の範囲が高回転速度側に配置されている。これに対して、
図18(b)に示す直流電圧指令値算出情報104は、
図18(a)に示す直流電圧指令値算出情報103に比べて、電圧値V1、V2の範囲が低回転速度側に亘って広範囲に設定されている。このように、直流電圧指令値算出情報D2が電圧上昇を見込んだ値を出力するように設定されることにより、発電機12で生じる電力が励磁装置19によって適切に調整されることになる。なお、直流電圧指令値算出情報D2は、予め実験やシミュレーションを行うことで独自に設定されてもよい。
【0061】
図19は、電圧センサ13sで検出される直流電圧値の一例を示すグラフである。
図19の電圧値105は、位相変調回路13が設けられない場合の値である。
図19の電圧値106は、位相変調回路13が設けられる場合の値である。
図19に示すように、位相変調回路13が設けられる場合においても、位相変調回路13が設けられない場合と同等の出力を得ることができる。
【0062】
例えば、動力伝達装置10は、発電機12のサイズを小さくしても、位相変調回路13が設けられない構成と同一の出力を得ることができる。また、動力伝達装置10は、発電機12及び内燃機関11のサイズを変更することなく、例えば内燃機関11で発生した動力を、発電機12の駆動とは異なる他の用途に利用することにより、内燃機関11から発電機12に供給される出力を少なくしても、位相変調回路13が設けられない構成と同一の出力を得ることができる。
【0063】
また、動力伝達装置10は、内燃機関11及び発電機12のサイズが同一である場合には、エンジン回転速度指令値内燃機関11のエンジン回転速度を下げた状態で運転しても、位相変調回路13が設けられない構成と同一の出力を得ることができる。
図20は、エンジン回転速度指令値算出情報の一例を示すグラフであり、エンジン回転速度指令値算出情報の一例を示すグラフである。
図20の縦軸はエンジン回転速度指令値の大きさ(相対値)を示し、
図20の横軸はアクセル開度の大きさ(相対値)を示す。
図20の指令値107は、位相変調回路13が設けられない場合におけるエンジン回転速度指令値を示す。
図20の指令値108は、位相変調回路13が設けられる場合のエンジン回転速度指令値を示す。
図20に示すように、位相変調回路13が設けられる場合、同一のアクセル開度に対する指令値108大きさが、位相変調回路13が設けられない場合の指令値107よりも小さくなるように設定されている。
【0064】
図21は、エンジン回転速度指令値と時刻との関係を示すグラフである。
図21は、
図21の縦軸はエンジン回転速度指令値を示し、
図21の横軸は時刻を示す。
図21のエンジン回転速度指令値109は、位相変調回路13が設けられない場合のエンジン回転速度指令値を示す。
図21のエンジン回転速度指令値110は、位相変調回路13が設けられる場合のエンジン回転速度指令値を示す。上記のように指令値108が設定されることにより、位相変調回路13が設けられる場合のエンジン回転速度指令値110は、位相変調回路13が設けられない場合のエンジン回転速度指令値109に比べて小さい値となる。この場合、位相変調回路13が設けられない場合と同一のアクセル開度指令を受けた場合でも、同一の走行特性を実現することができる。また、内燃機関11がより低回転で駆動する事になるため、エンジン低回転化による内燃機関11の燃費の改善を図ることができる。
【0065】
図22(a)及び(b)は、エンジン回転速度とエンジントルクとの関係を示すグラフであり、出力指令値算出情報の一例を示すグラフである。
図22(a)及び(b)の縦軸はエンジントルクを示し、
図22の横軸はエンジン回転速度を示す。
図22(a)及び(b)の出力線111は、位相変調回路13が設けられない場合の出力線を示す。
図22(a)及び(b)の出力線112は、位相変調回路13が設けられる場合の出力線を示す。
【0066】
図22(a)に示すように、位相変調回路13が設けられる場合の出力線112を低回転側に設定することにより、内燃機関11及び発電機12のサイズが同一であり、かつ、アクセル開度指令が同一である場合でも、よりエンジントルクが高出力となる側のモータトルク指令を許容することができる。これにより、直流電圧指令算出情報D2を変更してエンジン回転速度を低下させた環境とした場合でも、モータ出力値を増加させた状態とすることができる。
【0067】
図22(b)は、位相変調回路13が設けられない場合の出力指令値算出情報と、位相変調回路13が設けられかつ内燃機関11を小型化した場合の出力指令値算出情報とを比較して示す図である。
図22(b)に示すように、内燃機関11を小型化することにより、エンジン出力制限値が低下する。このような場合でも、位相変調回路13が設けられない場合と同じ発電機12の出力を実現できる。この場合、内燃機関11の小型化により、燃費の向上を図ることができる。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る動力伝達装置10は、内燃機関11の動力により電力を発生させる発電機12と、発電機12で発生した電力により、駆動力を発生する電動機16と、電動機16で発生した駆動力により走行する走行装置4と、発電機12と電動機16との間に直列に接続され、コンデンサCと、コンデンサCの正極側及び負極側にそれぞれ接続されるスイッチング素子S1、S2、S3、S4とを有する位相変調回路13と、スイッチング素子S1、S2、S3、S4を切り替えてコンデンサCの帯電状態と放電状態とを切り替えることで発電機12から電動機16に供給される電流の位相を変調する制御装置30とを備える。この構成により、発電機12で発生する電圧の位相に対する電流の位相の遅れを改善することが可能となる。これにより、発電機12の力率の低下を抑制することができるため、動力伝達装置10の伝達効率の低下を抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る動力伝達装置10において、制御装置30は、発電機12で生じた電圧の位相に対する電流の位相の遅れを補償させるため、発電機12で発生する電圧の位相に対する電流の位相の遅れを確実に改善することが可能となる。これにより、発電機12の力率の低下を抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る動力伝達装置10において、制御装置30は、電圧及び電流の周波数、すなわち、発電機12の回転速度に応じてコンデンサCの帯電状態と放電状態とを切り替えるタイミングを調整するため、内燃機関11のエンジン回転速度の変動に応じて、柔軟に位相遅れを改善することが可能となる。これにより、発電機12の力率の低下をより確実に抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る動力伝達装置10は、アクセル開度に応じた値であるため、オペレータの操作に基づく内燃機関11のエンジン回転速度の変動に応じて、柔軟に位相遅れを改善することが可能となる。これにより、発電機12の力率の低下をより確実に抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る動力伝達装置10において、位相変調回路13は、スイッチング素子S1、S2、S3、S4の4つのスイッチング素子を有する。位相変調回路13は、発電機12側から電動機16側に向けて、スイッチング素子S4とスイッチング素子S1とがこの順で直列に接続された第1部分A1と、第1部分A1に対して並列に設けられ、発電機12側から電動機16側に向けて、スイッチング素子S3とスイッチング素子S2とがこの順で直列に接続された第2部分A2と、を有する。コンデンサCは、正極側が第1部分A1のうちスイッチング素子S4とスイッチング素子S1との間の部分に接続され、負極側が第2部分A2のうちスイッチング素子S3とスイッチング素子S2との間の部分に接続される。これにより、コンデンサCの帯電状態と放電状態とを効率的に切り替えることができる。
【0073】
また、本実施形態に係る動力伝達装置10において、発電機12は、生成される電力量を調整する励磁装置19を有する。制御装置30は、内燃機関11のエンジン回転速度と直流電圧指令値算出情報D2とに基づいて直流電圧指令値を算出し、算出した直流電圧指令値と、位相変調回路13から出力された電圧を整流器13aにより直流電圧に変換した検出値との差に基づいて、励磁装置19を制御する。これにより、発電機12で生じる電力が励磁装置19によって適切に調整することができる。
【0074】
また、本実施形態に係る動力伝達装置10において、直流電圧指令値算出情報D2は、電圧センサ13sによる検出結果である電圧値V1と、発電機12から位相変調回路13に入力される電圧を整流器13aにより直流電圧に変換した場合の比較値である電圧値V2との差に基づいて設定されるため、発電機12で生じる電力が励磁装置19によってより適切に調整することができる。
【0075】
また、本実施形態に係る動力伝達装置10は、内燃機関11の駆動力により所定の油圧アクチュエータを駆動する可変容量型の油圧ポンプ18をさらに備える。本実施形態に係る動力伝達装置10は、位相変調回路13が設けられない構成に比べて、発電機12の出力効率が高められることになる。このため、内燃機関11で発生した動力を、油圧ポンプ18等の用途に効率的に利用することができる。
【0076】
また、本実施形態に係るダンプトラック1は、車体5と、車体5に設けられる走行装置4と、車体5に設けられ、走行装置4を駆動する動力を発生させる動力伝達装置10とを備えるため、動力の伝達効率に優れ、または燃費の面で優れたダンプトラック1を得ることができる。一般的に、鉱山用のダンプトラックは搬送物の積込から排出までの積載物搬送時には長距離を走行する。この時、車両の速度が安定した状況での走行されることが多くなる。このような状況で、動力伝達装置10に位相変調回路が設けられることにより、一層効果を得ることができる。
【0077】
以上、実施形態を説明したが、前述した内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0078】
例えば、上記実施形態では、コンデンサCの正極側及び負極側に、スイッチング素子が2つずつ、合計4つ設けられた構成が記載されていたが、これに限定するものではない。例えば、コンデンサCの正極側及び負極側の少なくとも一方においてスイッチング素子が1つであってもよい。また、コンデンサCの正極側及び負極側の少なくとも一方においてスイッチング素子が3つ以上であってもよい。