(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697892
(24)【登録日】2020年4月30日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】アイスクリームの製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
A23G 9/04 20060101AFI20200518BHJP
【FI】
A23G9/04
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-27717(P2016-27717)
(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公開番号】特開2016-174599(P2016-174599A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年10月5日
(31)【優先権主張番号】BO2015A000076
(32)【優先日】2015年2月17日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519231153
【氏名又は名称】アリ グループ エス.アール.エル−カルピジャーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア コッキ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ラッザリーニ
【審査官】
山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05370893(US,A)
【文献】
米国特許第03464834(US,A)
【文献】
英国特許出願公開第01118808(GB,A)
【文献】
実公昭29−009383(JP,Y1)
【文献】
国際公開第2013/121421(WO,A1)
【文献】
特開昭49−041561(JP,A)
【文献】
特開2008−011807(JP,A)
【文献】
特開2004−166658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
A23L
A47J
FSTA/WPIDS
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイスクリームの製造方法であって、
a)アイスクリームの基本混合物を規定する基本原料を準備する工程と、
b)前記基本混合物を100℃よりも低い温度に加熱することで、前記基本原料に含まれる水分を少なくとも一部蒸発させて、前記基本混合物の濃縮物を製造する工程と、
c)前記基本混合物の濃縮物を混合冷却処理する工程であって、
c1)前記混合物の濃縮物に基本液体を加えて、前記混合物を希釈する工程と、
c2)前記希釈した混合物の濃縮物を所定の時間、撹拌と同時に熱処理をすることによって、前記希釈した基本混合物の濃縮物をアイスクリーム様の製品に変換する工程と、を備え、
前記基本混合物を100℃よりも低い温度に加熱することで、前記基本原料に含まれる水分を少なくとも一部蒸発させる前記工程b)が、前記加熱中に、7kPaと20kPaとの間の範囲の圧力である、大気圧以下の圧力に前記基本原料をさらす工程を備え、
前記方法は、前記工程c)の前に、アイスクリーム製造装置(1)に受け入れられ収容されるように構成されたカプセル(2)を準備する工程と、前記カプセル(2)の内部に前記基本混合物の濃縮物を一時的に保存する工程とをさらに備える方法。
【請求項2】
前記基本混合物を規定する前記基本原料を準備する前記工程の後であって、前記基本原料を加熱することで、前記基本原料に含まれる水分を少なくとも一部蒸発させて、前記基本混合物の濃縮物を製造する前記工程の前に、前記基本原料を低温殺菌する工程を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基本原料を加熱することで前記基本原料に含まれる水分を少なくとも一部蒸発させる前記工程b)が、40℃と60℃との間の範囲内の温度に前記基本原料を加熱する工程を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
基本液体を前記基本混合物の濃縮物に加える前記工程の後に、前記基本混合物の濃縮物を熟成する工程を備える、請求項3に記載の方法
【請求項5】
前記基本混合物を加熱することで、前記基本原料に含まれる水分を少なくとも一部蒸発させる前記工程の後に、前記基本混合物の濃縮物を冷却する工程と、前記冷却した基本混合物の濃縮物を保存するその後の工程と、を備える、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記基本混合物の濃縮物を混合冷却処理する前記工程が、前記カプセル(2)の内部に基本液体製品を注入する工程と、前記カプセル(2)の内部に収容された前記基本混合物の濃縮物と前記基本液体製品とを混合する工程と、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記カプセル(2)の内部に収容された前記基本混合物の濃縮物と前記基本液体とを混合する前記工程が、前記カプセル(2)の内部で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記カプセル(2)の内部に収容された前記基本混合物の濃縮物と前記基本液体とを混合する前記工程の後に、前記基本混合物を処理容器(3)の内部に移す工程を備え、撹拌と同時に熱処理をする前記工程が、前記処理容器(3)の内部で行われる、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アイスクリームを製造する装置であって、
−処理チェンバ(4)を形成する処理容器(3)と、
−前記処理チェンバ(4)内に搭載された撹拌機(5)と、
−熱交換のための、前記処理容器(3)と関連する少なくとも一つの熱交換器を備えた、熱処理系と、
−請求項1から8のいずれか1項に記載の方法によって得られる基本混合物の濃縮物を収容するカプセル(2)を受け入れ、収容する装置(9)と、を備えることを特徴とする装置。
【請求項10】
前記カプセルを貫通するよう設計された、前記カプセル(2)を貫通するノズル(10)と、前記カプセル(2)に収容された原料を前記カプセル(2)から前記処理容器(3)へと移送可能な移送ダクトと、を備える請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイスクリームを製造する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、アイスクリームの代替的な製造方法を有することの必要性が業界の作業者に強く感じられている。
【0003】
特に、問題になっている当該業界において最も強く感じられている必要性の一つは、アイスクリームを特に簡単な方法で、且つ必要があれば少量であっても製造可能とすることである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、上述のような必要性を満たす、アイスクリームを製造する方法および装置を提供することである。
【0005】
本発明の更なる目的は、アイスクリームを少量であっても製造可能な、アイスクリームを製造する方法および装置を提供することである。
【0006】
本発明によれば、アイスクリームを製造する方法および装置であって添付の一以上の請求項に記載の技術的特徴を備える装置や方法によって上述の目的が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の技術的な特徴は、上述の目的に関して、下述の請求項に明確に記載されており、その効果は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な記載により明らかであるが、図面に記載の実施形態は例示であって本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付の図面を参照すると、参照符号1は、アイスクリーム(好ましくは手作りジェラート(artisan gelato))を製造する装置を示す。
【0009】
本発明の文脈において、「アイスクリーム」という用語は、牛乳または牛乳由来製品を基にした食品の調理であって、果物の、芳香性の又はその他の原料を加えて様々な風味を得たものを意味するのに使用される。
【0010】
本発明によれば、以下の工程を備えるアイスクリームの製造方法がさらに規定される。
a)アイスクリームの基本混合物を規定する基本原料を準備する工程と、
b)基本混合物を加熱することで、基本原料に含まれる水分を少なくとも一部(必要があれば、50%以上も)蒸発させて、基本混合物の濃縮物を製造する工程と、
c)基本混合物の濃縮物を混合冷却処理する工程であって、
c1)混合物の濃縮物に基本液体を加えて、混合物を希釈する工程と、
c2)所定の時間、撹拌と同時に熱処理をすることによって、希釈した基本混合物の濃縮物をアイスクリーム様の製品に変換する工程と、を備える。
【0011】
なお、「基本混合物の濃縮物」という表現は、アイスクリーム製品の特定の基本原料の集合を意味するのに使用し、製造する風味の種類に依存し、(原料そのものに含まれる)水分を少なくとも一部蒸発させるために、熱処理を経たものである。
【0012】
この方法は、基本原料を加熱することで、基本原料に含まれる水分を少なくとも一部蒸発させる工程の前に、基本原料を低温殺菌する工程を備えることが好ましいが、必須ではない。
【0013】
基本混合物を規定する基本原料を準備する工程は、原料を選択及び計量する工程を備える。
【0014】
基本原料を加熱することで基本原料に含まれる水分を少なくとも一部蒸発させる工程が、加熱中に、大気圧以下の圧力(7kPaと20kPaとの間が好ましい)に基本原料をさらす工程を備えることが好ましい。
【0015】
有利に、大気圧以下の圧力で加熱する工程によって、原料があまりにも高い温度で加熱された場合に起こる、砂糖のカラメル化およびメイラード反応の誘発を同時に起こすことなく、原料に含まれる水分を蒸発させられる。
【0016】
なお、比較的低い圧力というこのような条件の下では、(液体から蒸気へと水が状態を変化させる)水の飽和温度は、実際には100℃より低くなり、したがって、基本原料内の水分を蒸発させるには、基本原料を100℃より低い温度まで加熱すると十分である。
【0017】
基本原料を加熱することで基本原料に含まれる水分を少なくとも一部蒸発させる工程が、40℃と60℃との間の範囲内の温度(即ち、基本原料がさらされる圧力に関連した飽和温度に対応する温度)まで基本原料を加熱する工程を備えることが好ましい。
【0018】
より正確には、基本原料を加熱することで基本原料に含まれる水分を少なくとも一部蒸発させる工程は、基本原料がさらされる圧力に関連した飽和温度に対応する温度まで基本原料を加熱する工程を備える。
【0019】
なお、基本原料を低温殺菌する工程に関して、この工程は、基本原料を所定の加熱温度まで加熱し、所定の時間維持する工程を備える。
【0020】
第一の低温殺菌方法によれば、加熱温度は、80℃と90℃との間(より好ましくは、84℃と86℃の間)である。
【0021】
第一の低温殺菌方法によれば、加熱温度は15秒と60秒との間の時間だけ維持され、より好ましくは、20秒と40秒との間の時間だけ維持される。
【0022】
第二の低温殺菌方法によれば、温度は、50℃と70℃との間(より好ましくは、64℃と66℃の間)である。
【0023】
第二の低温殺菌方法によれば、加熱温度は15分と40分との間の時間だけ維持され、より好ましくは、20分と35分との間の時間だけ維持される。
【0024】
他の態様によれば、基本原料を低温殺菌する工程は、−基本原料を所定の加熱温度まで所定の時間だけ加熱する工程の後に、−基本原料を所定の温度まで冷却する工程(「予備冷却」として知られる工程)を備えることが好ましい。
【0025】
さらに他の態様によれば、基本液体を混合物に加える工程の後に、混合物を熟成(aging)する工程を行う。
【0026】
熟成工程では、混合物を撹拌して所定の温度(好ましくは、0℃と7℃との間)に保つ。
【0027】
熟成工程によって、混合物はより粘性のある粘稠性を得ることができ、次の混合冷却過程の間に空気をより取り込みやすくなる。
【0028】
さらに他の態様によれば、この方法は、基本混合物を混合冷却処理する工程に先立って、基本混合物の濃縮物を冷却する工程を備える。
【0029】
基本混合物を加熱することで基本原料に含まれる水分を少なくとも一部蒸発させる工程の後に、冷却工程が行われる。
【0030】
特に、冷却工程によって、基本混合物の濃縮物を(適切な保存容器2内での)一時的な保存に適したものとする。
【0031】
したがって、混合物を冷却する工程の後であって、混合冷却工程の前に、この方法が、混合物を一時的に保存する工程を備えることが好ましい。
【0032】
この態様によれば、この方法が、カプセル2を準備する工程と、基本混合物の濃縮物をカプセル2内部に(一時的に)保存する工程を備えることが好ましい。
【0033】
なお、カプセル2内部に混合物を一時的に保存する工程によれば、有利に、混合物の濃縮物の製品と完成したアイスクリーム製品とを一時的に分離可能となる(即ち、冷却混合工程)。
【0034】
有利に、さらに、各カプセル2には、一人分またはそれ以上の人数分のアイスクリームを製造するのに必要な混合物が収容され、したがって、大量の製品を製造する必要がなくなり、注文に応じて製造するシステムが実現できる。
【0035】
他の態様によれば、基本混合物を混合冷却処理する工程は、カプセル2内部に基本液体製品を注入する工程と、カプセル2内部に収容された基本混合物の濃縮物と基本液体製品とを混合する工程とを備える。
【0036】
基本液体製品が、水溶液(water based solution)すなわち水によって定義されるものであることが好ましい。
【0037】
或いは、基本製品は、液体原料を基にした完成溶液(completion solution)である。
【0038】
更に他の態様によれば、カプセル2内部に収容された基本混合物の濃縮物と基本液体とを混合する工程は、カプセル2内部で行われる。
【0039】
この態様によれば、基本液体は、カプセル2内部に注入される。
【0040】
他の態様によれば、カプセル2内部に収容された基本混合物と基本液体とを混合する工程の後に、この方法は、(基本液体と混合された)基本混合物を処理容器3へと移す工程を備える。
【0041】
この態様によれば、撹拌と同時に熱処理を行う工程は、混合容器3内部で行われる。
【0042】
なお、混合冷却工程の間、基本混合物は、−11℃と−3℃との間の温度で処理される。
【0043】
この方法が、基本原料を加熱することで水分を少なくとも一部蒸発させる工程の前に行われる、基本混合物を均質化する工程を備えることが好ましい。
【0044】
本方法の上述の態様のいくつかについて、以下により詳細に説明する。
【0045】
なお、カプセル2に関して、カプセル2は、頂壁部、底壁部、および頂壁部を底壁部に接続する側壁部を有する。
【0046】
これらの壁部によって、一以上の基本製品を収容する内部空間が囲まれる。
【0047】
カプセル2は、(内部の収容空間を減らせるように)変形可能なカプセルであることが好ましい。
【0048】
より正確には、側壁部が変形可能であることが好ましい。
【0049】
上述の方法は、
図1に概略を示す、アイスクリーム製造機1によって実施されることが好ましい。
【0050】
装置1は、
図1にその概略が示され、以下を備える。
− 処理チェンバ4を形成する処理容器3と、
− 処理チェンバ4内に搭載された撹拌機5と、
− 熱交換のための、処理容器3と関連する少なくとも一つの熱交換器を備えた、熱処理系と、
− アイスクリームを製造するための基本混合物の濃縮物を収容するカプセル2を受け入れ、収容する装置9と、を備える。
【0051】
さらに他の態様によれば、装置1は、カプセル2を貫通するよう設計された、カプセル2を貫通するノズル10と、混合物の濃縮物をカプセル2から処理容器3へと移送可能な(好ましくは、貫通ノズル10を処理容器3に接続する)移送ダクトと、を備える。
【0052】
さらに他の態様によれば、カプセル2を貫通するノズル10は、基本液体製品を供給するための容器に接続可能であり、基本液体製品をカプセル2内に注入可能とする。
【0053】
他の態様によれば、装置1はさらに、混合物の濃縮物をカプセル2から処理容器3へと移送可能とするよう構成されたポンプ(図示せず)を備える。
【0054】
このポンプは歯車ポンプであることが好ましい。
【0055】
有利に、ポンプによって、混合物を移送中に、混合物を空気に触れさせ、それ故に、容器3内部で混合冷却する前に、混合物の特性を向上させることができる。
【0056】
容器3は、混合冷却シリンダーであることが好ましい。
【0057】
他の態様によれば、装置1は、容器3と動作可能に接続されたディスペンサ6を備え、ディスペンサ6は、容器3内部に収容された製品を容器3自身の外へと放出可能とする。