(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
互いに交差する3本以上の棒状体どうしの連結作業を容易に行うことができる交差連結具の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る交差連結具は、
特定棒状体を含む3本以上の棒状体どうしを交差状態で連結する交差連結具であって、
ベース部材と、前記特定棒状体以外の前記棒状体を狭着保持する状態で前記ベース部材に対して相対変位可能に連結された保持部材と、をそれぞれ含む2組以上の保持ユニットを備え、
2組以上の前記保持ユニットのそれぞれの前記ベース部材どうしの連結部位に、前記特定棒状体を狭み込んで保持する連結保持部が設けられている。
【0008】
この構成によれば、連結保持部において、2組以上の保持ユニットのそれぞれのベース部材どうしの間に特定棒状体を狭み込んで保持するだけで、特定棒状体に対する交差連結具の保持操作を容易に行うことができる。また、2組以上の保持ユニットのそれぞれにおいて保持部材を用いて特定棒状体以外の棒状体(以下、「非特定棒状体」と言う。)を狭着保持するだけで、各保持ユニットによる対応する非特定棒状体の保持操作を容易に行うことができる。2組以上の保持ユニットのそれぞれのベース部材どうしの連結部位に設けられる連結保持部で特定棒状体に保持させつつ、2組以上の保持ユニットに非特定棒状体をそれぞれ狭着保持させることで、互いに交差する3本以上の棒状体どうしの連結作業を容易に行うことができる。
【0009】
また、上記の構成では、特定棒状体に対する交差連結具の保持が、非特定棒状体の保持とは異なり、専用の保持部材を用いてではなく、2組以上の保持ユニットのそれぞれのベース部材どうしの連結部位を利用してなされる。よって、専用の保持部材を用いて特定棒状体に交差連結具を保持させる場合に比べて、部品点数を少なく抑えて低コスト化を図ることができる。
【0010】
従って、製造コストを抑えつつ、互いに交差する3本以上の棒状体どうしの連結作業を容易に行うことが可能な交差連結具を提供することができる。
【0011】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0012】
一態様において、
前記保持ユニットとして、第一保持ユニットと第二保持ユニットとを備え、
前記第一保持ユニットの前記ベース部材が、被係合部を有するベース本体部と、当該ベース本体部に交差する切り起こし板部とを含み、
前記第二保持ユニットの前記ベース部材が、少なくとも部分的に前記特定棒状体の外周に沿って当該特定棒状体を包囲し、且つ、その先端部に係合部を有するベース側包囲部を含み、
前記連結保持部は、前記被係合部に前記係合部が係合した状態で、前記切り起こし板部と前記ベース側包囲部との間に前記特定棒状体を狭着保持することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第一保持ユニットのベース部材の一部を切り起こして形成される切り起こし板部を利用して、特定棒状体に対する交差連結具の連結保持をコンパクトに実現することができる。また、第一保持ユニット側のベース本体部の被係合部に第二保持ユニット側のベース側包囲部の係合部が係合した状態で、その係合部位を支点として、第一保持ユニットに対して第二保持ユニットを揺動させることができる。このため、第一保持ユニット側の切り起こし板部と第二保持ユニット側のベース側包囲部との間の隙間を広げた状態で、それらの間に、特定棒状体をその径方向にスライドさせて挿入することができる。よって、特定棒状体に対する交差連結具の保持操作をさらに容易に行うことができる。
【0014】
一態様において、
前記被係合部が、前記ベース本体部における前記切り起こし板部の外形に対応する形状の開口部の対向する端縁に形成された一対の切欠部で構成され、
前記係合部が、一対の前記切欠部に亘って挿通可能で、且つ、前記開口部よりも幅広に構成され、
一対の前記切欠部の裏面側周縁部に前記係合部が係合した状態で、前記第二保持ユニットの前記ベース部材と前記切り起こし板部とが締結固定されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、第一保持ユニットのベース部材の一部が切り起こされて開口部が形成されるような構成においても、第一保持ユニット側のベース本体部の被係合部(一対の切欠部)に第二保持ユニット側のベース側包囲部の係合部が係合する構造を適切に実現できる。また、第一保持ユニット側のベース本体部の被係合部と第二保持ユニット側のベース側包囲部の係合部との係合部位を利用することで、第一保持ユニットと第二保持ユニットとを締結固定するために用いる締結部材の個数を低減することができるとともに、施工の容易化を図ることができる。
【0016】
一態様において、
少なくとも1組の前記保持ユニットにおいて、
前記ベース部材に被係止部が設けられ、
前記保持部材に、係止部が設けられるとともに少なくとも部分的に前記棒状体の外周に沿って当該棒状体を包囲する保持側包囲部が設けられ、
前記ベース部材の前記被係止部に前記保持部材の前記係止部が係止された状態で前記ベース部材と前記保持部材とを締結固定する締結部材が備えられ、
前記被係止部が、前記締結部材の締結位置を中心とする円弧状のスリット部で構成されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、ベース部材の被係止部に保持部材の係止部が係止した状態で、その係止部位を支点として、ベース部材に対して保持部材を揺動させることができる。このため、ベース部材と保持部材との間の隙間を広げた状態で、それらの間に、非特定棒状体をその径方向にスライドさせて挿入することができる。よって、保持ユニットに対する非特定棒状体の保持操作を容易に行うことができる。また、被係止部を締結部材の締結位置を中心とする円弧状のスリット部で構成することで、ベース部材に対して保持部材が相対変位可能に連結される構造を適切に実現することができる。
【0018】
一態様において、
少なくとも1組の前記保持ユニットにおいて、
前記保持部材が、被係止部を有するベース板部と、係止部を有するとともに少なくとも部分的に前記棒状体の外周に沿って当該棒状体を包囲する保持側包囲部を有する保持板部と、前記被係止部に前記係止部が係止された状態で前記ベース板部と前記保持板部とを締結固定する締結部材と、を備え、
前記締結部材が、前記ベース部材と前記保持部材とを相対変位可能に連結するための枢支連結部材を兼用していることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、ベース板部の被係止部に保持板部の係止部が係止した状態で、その係止部位を支点として、ベース板部に対して保持板部を揺動させることができる。このため、ベース板部と保持板部との間の隙間を広げた状態で、それらの間に、非特定棒状体をその径方向にスライドさせて挿入することができる。よって、保持ユニットに対する非特定棒状体の保持操作を容易に行うことができる。また、保持部材に備えられる締結部材を枢支連結部材として兼用させることで、ベース部材に対して保持部材が相対変位可能に連結される構造を適切に実現することができる。
【0020】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
交差連結具の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る交差連結具1は、特定棒状体8Sを含む3本以上の棒状体8どうしを交差状態で連結するための器具である。この交差連結具1は、ベース部材Bと、特定棒状体8S以外の棒状体8(非特定棒状体8N)を狭着保持する状態でベース部材Bに対して相対変位可能に連結された保持部材Hと、をそれぞれ含む2組以上の保持ユニットUを備える。そして、この交差連結具1は、2組以上の保持ユニットUのそれぞれのベース部材Bどうしの連結部位に、特定棒状体8Sを狭み込んで保持する連結保持部Cが設けられている点によって特徴付けられる。これにより、互いに交差する3本以上の棒状体8どうしの連結作業を容易に行うことができる。以下、本実施形態の交差連結具1について、詳細に説明する。
【0023】
図1に、例えばコンクリート製の天井スラブや梁等の構造体から垂設された複数の吊りボルト81(棒状体8の一例)を用いて、天井付近に吊設部材9を支持する支持構造を示す。吊設部材9は、例えばケーブルラックやダクト、照明機器、空調機器の室内機等である。本実施形態では、天井スラブから垂設された吊りボルト81を用いて、ケーブルラック90(吊設部材9の一例)が支持された構造を例として説明する。本支持構造は、一例として、ケーブルラック90の配設方向Xに沿う複数箇所に、構造体から左右一対の吊りボルト81が垂設され、当該左右一対の吊りボルト81に亘って連結される支持枠体95によって、ケーブルラック90が下方から支持されてなる。
【0024】
本実施形態では、それぞれの吊りボルト81に対して、3本のブレースボルト82(棒状体8の他の一例)が交差する姿勢で配置されている。これらのうち、2本のブレースボルト82は、鉛直方向に対して、ケーブルラック90の配設方向Xに沿って傾斜する姿勢で配置されている。この2本のブレースボルト82は、吊りボルト81と共に、ケーブルラック90の配設方向Xに沿う鉛直平面に沿って配置されている。これら2本のブレースボルト82と吊りボルト81とを包含する鉛直平面を、本実施形態では「基準平面P」と定義する。本実施形態では、基準平面Pに沿って当該基準平面Pと平行に配置されるブレースボルト(平行ブレースボルト)82を、「ブレースボルト82A」と表記する。
【0025】
一方、3本のブレースボルト82のうち、残余の1本のブレースボルト82は、鉛直方向に対して、ケーブルラック90の配設方向Xに直交する直交方向Yに沿って傾斜する姿勢で配置されている。このブレースボルト82は、基準平面Pには包含されることなく当該基準平面Pに対して交差している。本実施形態では、基準平面Pに交差しつつ直交方向Yに沿って配置されるブレースボルト(交差ブレースボルト)82を、「ブレースボルト82B」と表記する。
【0026】
本実施形態では、吊りボルト81が「特定棒状体8S」に相当し、ブレースボルト82が「特定棒状体8S以外の棒状体8(非特定棒状体8N)」に相当する。また、吊りボルト81と共に基準平面Pに包含されて配置されるブレースボルト82Aを「第一非特定棒状体」と称することができ、基準平面Pに対して交差して配置されるブレースボルト82Bを「第二非特定棒状体」と称することができる。
【0027】
特定棒状体8Sである吊りボルト81と、吊りボルト81に対して交差する少なくとも1本(本例では2本)のブレースボルト82A(第一非特定棒状体の一例)と、吊りボルト81及びブレースボルト82Aを包含する基準平面Pに対して交差するブレースボルト82B(第二非特定棒状体の一例)とを連結するために、交差連結具1が用いられる。この交差連結具1は、
図2〜
図5に示すように、ベース部材Bと、ブレースボルト82を狭着保持する状態でベース部材Bに対して相対変位可能に連結された保持部材Hとをそれぞれ含む、2組以上の保持ユニットUを備えている。本実施形態では、交差連結具1は、2組の保持ユニットUだけを備えており、第一保持ユニット2と第二保持ユニット4とからなっている。
【0028】
図2〜
図5に示すように、第一保持ユニット2は、当該第一保持ユニット2におけるベース部材Bとしての第一ベース部材20と、保持部材Hとしての第一保持部材30とを備えている。第一保持ユニット2は、第一ベース部材20と、ブレースボルト82Aを狭着保持する状態で第一ベース部材20に対してそれぞれ相対変位可能に連結された2つの第一保持部材30とを備えている。
【0029】
第一ベース部材20は平板状に形成されている。第一ベース部材20は、ベース本体部21と、折返部22と、切り起こし板部23と、開口部24と、被係合部25と、挿通孔27と、被係止部28とを備えている。ベース本体部21は、所定長さ及び所定幅を有する(本例ではアスペクト比がおよそ1:3程度の)矩形状ないし帯板状に形成されている。ベース本体部21は、基準平面Pに沿って配置される。ベース本体部21の短手方向の両端部には、それぞれ長辺に沿ってリブ状に延びる一対の折返部22が設けられている。折返部22は、ベース本体部21と一体に形成されており、当該ベース本体部21に対して交差(本例では直交)する状態に配置されている。
【0030】
切り起こし板部23は、ベース本体部21の一部の切り起こし曲げによって形成されている。切り起こし板部23は、ベース本体部21に対して、折返部22の突出向きとは反対向きに延出するように配置されている。切り起こし板部23は、矩形状ないし角丸矩形状に形成されている。切り起こし板部23は、ベース本体部21と一体に形成されており、当該ベース本体部21に対して交差(本例では直交)する状態に配置されている。切り起こし板部23は、ベース本体部21の長手方向の中央部付近において、短手方向に沿う姿勢で配置されている。切り起こし板部23には、当該切り起こし板部23を板厚方向に貫通する長円状の挿通孔23aが形成されている(
図3を参照)。この挿通孔23aには、締結部材60を構成するボルトが挿通される。
【0031】
ベース本体部21には、切り起こし板部23の外形に対応する形状(本例では矩形状ないし角丸矩形状)の開口部24が形成されている(
図3を参照)。本実施形態では、切り起こし板部23は、挿通孔23aを有しつつも一定の強度を確保できるように一定以上の大きさに形成されており、それに伴い、開口部24も比較的大きな開口となっている。ベース本体部21における、開口部24に臨む端縁21eのうち、ベース本体部21の短手方向に対向する一対の端縁21eには、切欠部26がそれぞれ形成されている。切欠部26は、開口部24に臨む一対の端縁21eからベース本体部21の短手方向に延びるように、矩形状に切り欠いて形成されている。この一対の切欠部26の裏面側周縁部には、第二保持ユニット4の第二ベース部材40に設けられる係合部47が係合する。本実施形態では、一対の切欠部26で被係合部25が構成されている。
【0032】
ベース本体部21には、挿通孔27と被係止部28とが対をなす状態で、2組の挿通孔27及び被係止部28が、切り起こし板部23及び開口部24に対してベース本体部21の長手方向の両側に分かれて形成されている(
図3を参照)。挿通孔27は、ベース本体部21における短手方向の一方側(言い換えれば、一方の長辺側)に偏って配置されている。挿通孔27は、ベース本体部21を板厚方向に貫通する丸穴状に形成されている。挿通孔27には、締結部材38を構成するボルトが挿通される。被係止部28には、第一保持部材30に設けられる係止部35が係止する。2組の挿通孔27及び被係止部28は、ベース本体部21の中央部を通る平面に対して面対称状に配置されている。各組において、被係止部28が挿通孔27よりも長手方向の外側に位置する状態に配置されている。本実施形態では、被係止部28は、ベース本体部21を板厚方向に貫通するとともに、締結部材38の締結位置となる挿通孔27の形成位置を中心とする円弧状のスリット部29として構成されている。
【0033】
本実施形態の第一保持部材30は、第一ベース部材20との間にブレースボルト82Aを狭着保持する状態で、第一ベース部材20に対して相対変位可能に連結されている。第一保持部材30は板状に形成されている。第一保持部材30は、ブレースボルト82Aの軸方向に対して略直交する方向に延びる、第一ベース部材20よりも短い変形帯板状に形成されている。第一保持部材30は、保持本体部31と、挿通孔32と、包囲部33と、係止部35とを備えている。保持本体部31は、平板状(平坦な板状)に形成されている。保持本体部31には、当該保持本体部31を板厚方向に貫通する長円状の挿通孔32が形成されている。この挿通孔32には、締結部材38を構成するボルトが挿通される。
【0034】
包囲部33は、保持本体部31の端部から連続して形成されている。包囲部33は、少なくとも部分的にブレースボルト82Aの外周に沿って当該ブレースボルト82Aを包囲する。包囲部33は、ブレースボルト82Aの軸方向に延びつつブレースボルト82Aの周方向の一部(本例では、中心角がおよそ240°の範囲)に沿う、湾曲板状に形成されている。包囲部33は、断面U字状を呈するように湾曲形成されている。本実施形態では、包囲部33が第一保持ユニット2における「保持側包囲部」に相当する。
【0035】
係止部35は、包囲部33における保持本体部31とは反対側の端部から連続して形成されている。係止部35は、第一ベース部材20の被係止部28(スリット部29)に係止可能な板片状に形成されている。係止部35は、保持本体部31に対して第一ベース部材20のベース本体部21の板厚相当分オフセットした状態で、保持本体部31と平行に配置されている。係止部35は、被係止部28に挿通されて、その先端部が被係止部28の裏面側周縁部に係止される。係止部35が被係止部28に係止した状態で、2つの挿通孔27,32に亘って締結部材38を構成するボルトが挿通される。そして、対をなすボルトとナットとを含む締結部材38を用いて、第一ベース部材20に対して第一保持部材30が共締めされる。
【0036】
なお、締結部材38の不完全締結状態では、締結部材38を構成するボルトを軸として、係止部35が被係止部28(円弧状のスリット部29)に係止した状態で摺動して、第一ベース部材20に対して第一保持部材30が相対変位可能となる。よって、ブレースボルト82Aの配設角度(吊りボルト81に対する交差角度)が種々異なる場合であっても、それらに適切に対応することができる。締結部材38は、第一ベース部材20に対して第一保持部材30を枢支しながら連結しており、「枢支連結部材」又は「枢支連結用締結部材」と称することができる。
【0037】
図2〜
図5に示すように、第二保持ユニット4は、当該第二保持ユニット4におけるベース部材Bとしての第二ベース部材40と、保持部材Hとしての第二保持部材50とを備えている。第二保持ユニット4は、第二ベース部材40と、ブレースボルト82Bを狭着保持する状態で第二ベース部材40に対して相対変位可能に連結された1つの第二保持部材50とを備えている。
【0038】
第二ベース部材40は平板状に形成されている。第二ベース部材40は、ベース本体部41と、折返部42と、挿通孔43,44と、包囲部45と、係合部47と、被係止部48とを備えている。ベース本体部41は、第一ベース部材20のベース本体部21と同程度の幅を有するとともにそれよりも短い長さを有する(本例ではアスペクト比がおよそ1:1.3程度の)矩形状ないし帯板状に形成されている。ベース本体部41は、基準平面Pに直交する状態で鉛直面に沿って配置される。ベース本体部21の短手方向の両端部には、それぞれ長辺に沿ってリブ状に延びる一対の折返部42が設けられている。折返部42は、ベース本体部41と一体に形成されており、当該ベース本体部41に対して交差(本例では直交)する状態に配置されている。
【0039】
包囲部45は、ベース本体部41の端部から連続して形成されている。包囲部45は、少なくとも部分的に吊りボルト81の外周に沿って当該吊りボルト81を包囲する。包囲部45は、吊りボルト81の軸方向に延びつつ吊りボルト81の周方向の一部(本例では、中心角がおよそ90°の範囲)に沿う、湾曲板状に形成されている。包囲部45は、断面1/4円弧状を呈するように湾曲形成されている。本実施形態では、包囲部45が「ベース側包囲部」に相当する。
図4及び
図5に示すように、包囲部45の内面には、吊りボルト81の外周面に形成された雄ネジに対して係合可能な、例えば雌ネジや内向き突起等からなる位置規制部46が設けられている。なお、図示は省略しているが、第一保持部材30の包囲部33や、後述する第二保持部材50の包囲部53の内面にも、同様の位置規制部が設けられている。
【0040】
係合部47は、包囲部45におけるベース本体部41とは反対側の端部から連続して形成されている。係合部47は、第一保持ユニット2の第一ベース部材20に設けられる被係合部25(一対の切欠部26)に係合可能な板片状に形成されている。係合部47は、包囲部45の端部から、ベース本体部41に対する包囲部45の延出向きと同じ向きに延出する状態で、ベース本体部41に対して交差(本例では直交)する姿勢に配置されている。係合部47は、被係合部25を構成する一対の切欠部26に亘って挿通可能で、且つ、開口部24よりも幅広に(言い換えれば、ベース本体部21,41の短手方向に沿う長さが長く)構成されている。係合部47は、被係合部25(一対の切欠部26)に挿通されて、その先端部が被係合部25の裏面側周縁部に係合する。
【0041】
ベース本体部41には、当該ベース本体部41を板厚方向に貫通する2つの丸穴状の挿通孔43,44が形成されている(
図3を参照)。挿通孔43は、ベース本体部41における包囲部45側の位置において、短手方向の中央部付近に形成されている。挿通孔43は、第一保持ユニット2と第二保持ユニット4とが連結された状態で、第一保持ユニット2の第一ベース部材20に設けられる切り起こし板部23の挿通孔23aと重なる位置に形成されている。挿通孔43には、締結部材60を構成するボルトが挿通される。一方、挿通孔44は、ベース本体部41の長手方向の中央部付近において、短手方向の一方側(言い換えれば、一方の長辺側)に偏って配置されている。挿通孔44には、締結部材58を構成するボルトが挿通される。
【0042】
第二保持部材50は、相対変位可能に連結される対象のベース部材Bと、狭着保持する対象のブレースボルト82とが異なるだけで、構造的には、第一保持部材30と同様の構成を備えている。すなわち、第二保持部材50は、挿通孔52が形成された保持本体部51と、断面U字状を呈するように湾曲形成された包囲部53と、板片状の係止部55とを主要な構成として備えている。本実施形態では、包囲部53が第二保持ユニット4における「保持側包囲部」に相当する。第二保持部材50は、第二ベース部材40との間にブレースボルト82Bを狭着保持する状態で、第二ベース部材40に対して相対変位可能に連結されている。係止部55が被係止部48に係止した状態で、2つの挿通孔44,52に亘って締結部材58を構成するボルトが挿通される。そして、対をなすボルトとナットとを含む締結部材58を用いて、第二ベース部材40に対して第二保持部材50が共締めされる。
【0043】
なお、締結部材58の不完全締結状態では、締結部材58を構成するボルトを軸として、係止部55が被係止部48(円弧状のスリット部49)に係止した状態で摺動して、第二ベース部材40に対して第二保持部材50が相対変位可能となる。よって、ブレースボルト82Bの配設角度(吊りボルト81に対する交差角度)が種々異なる場合であっても、それらに適切に対応することができる。締結部材58も、締結部材38と同様に第二ベース部材40に対して第二保持部材50を枢支しながら連結しており、「枢支連結部材」又は「枢支連結用締結部材」と称することができる。また、その締結部材58を構成するボルトが挿通される挿通孔44は、「枢支連結用挿通孔」と称することができる。
【0044】
図2〜
図5に示すように、第一保持ユニット2のベース部材Bである第一ベース部材20と第二保持ユニット4のベース部材Bである第二ベース部材40との連結部位に、吊りボルト81を狭み込んで保持する連結保持部Cが設けられている。言い換えれば、第一保持ユニット2の第一ベース部材20と第二保持ユニット4の第二ベース部材40との連結部位において、連結保持部Cにより、吊りボルト81が狭み込んで保持されている。かかる連結保持部Cは、本実施形態では、主に第一ベース部材20に設けられた切り起こし板部23と、第一ベース部材20のベース本体部21に形成された被係合部25(一対の切欠部26)と、第二ベース部材40に設けられた包囲部45及びその先端部の係合部47と、締結部材60とによって構成されている。
【0045】
より具体的には、連結保持部Cは、以下の態様で吊りボルト81を狭み込んで保持している。すなわち、第一ベース部材20の被係合部25(一対の切欠部26)の裏面側周縁部に第二ベース部材40の係合部47が係合されている(
図2及び
図5を参照)。その状態で、第二ベース部材40の包囲部45が吊りボルト81の外周に沿わされつつ、第一ベース部材20の切り起こし板部23と第二ベース部材40のベース本体部41とが重ね合わされている(
図4を参照)。そして、切り起こし板部23の挿通孔23aとベース本体部41の挿通孔43とに亘って締結部材60を構成するボルトが挿通され(
図3を参照)、当該締結部材60により、第一ベース部材20の切り起こし板部23と第二ベース部材40のベース本体部41とが共締めされてこれらが締結固定されている。このようにして、連結保持部Cは、被係合部25に係合部47が係合した状態で、切り起こし板部23と包囲部45との間に吊りボルト81を狭着保持している。包囲部45の内面には位置規制部46が設けられているので、吊りボルト81に対する交差連結具1の鉛直方向の位置ずれが有効に抑制ないし防止されている。
【0046】
なお、締結部材60は、第一ベース部材20と第二ベース部材40とを連結しつつ当該部位での吊りボルト81への狭着保持力を維持させており、「連結保持用締結部材」と称することができる。また、その締結部材60を構成するボルトが挿通される挿通孔43は、「連結保持用挿通孔」と称することができる。
【0047】
以下、本実施形態の交差連結具1を用いて、互いに交差する3本以上(本例では4本)のボルト81,82どうしを連結する場合の施工手順について説明する。
【0048】
まず、垂設される吊りボルト81に対して、第一保持ユニット2の第一ベース部材20と第二保持ユニット4の第二ベース部材40とを取り付ける。このとき、
図6に示すように、第一ベース部材20の被係合部25(一対の切欠部26)に第二ベース部材40の係合部47を係合させた状態で、当該係合部位を支点として、第二ベース部材40を切り起こし板部23から離間させるように揺動させる。その状態で、切り起こし板部23と第二ベース部材40との間の隙間から吊りボルト81に外装するように、第一ベース部材20と第二ベース部材40とを吊りボルト81の径方向に沿ってスライド移動させる。なお、
図6では、交差連結具1側から見た吊りボルト81の相対近接移動の様子を示している。
【0049】
第一ベース部材20及び第二ベース部材40のスライド移動により、第二ベース部材40の包囲部45が吊りボルト81の外周に沿うようになると、前記係合部位を支点として、第二ベース部材40を切り起こし板部23に近づけるように揺動させる。切り起こし板部23に第二ベース部材40のベース本体部41を沿わせ、切り起こし板部23の挿通孔23aとベース本体部41の挿通孔43とに亘って締結部材60を装着する。この段階では、締結部材60を完全には締結させることなく、不完全締結状態に維持させておく。そして、締結部材60の不完全締結状態で、第一ベース部材20及び第二ベース部材40を吊りボルト81の軸方向に沿ってスライド移動させて、吊りボルト81に対する交差連結具1の鉛直方向の取付位置を調整する。その後、不完全締結状態にあった締結部材60を締め増して、切り起こし板部23とベース本体部41とを共締めしてこれらを締結固定する。
【0050】
この状態では、第一ベース部材20と第二ベース部材40とが、互いに直交する状態(平面視で全体としてT字状を呈する状態)で、その連結部位に設けられる連結保持部Cによって吊りボルト81に対して連結保持されている。
【0051】
その後、吊りボルト81に連結保持された第一ベース部材20及び第二ベース部材40に対して、ブレースボルト82A,82Bをさらに連結保持するように、第一保持部材30と第二保持部材50とを順不同で取り付ける。このとき、
図7に示すように、第一ベース部材20の被係止部28(スリット部29)に第一保持部材30の係止部35を係止させた状態で、当該係止部位を支点として、第一保持部材30を第一ベース部材20のベース本体部21から離間させるように揺動させる。その状態で、ベース本体部21と第一保持部材30との間の隙間にブレースボルト82Aを挿入するように、当該ブレースボルト82Aをその径方向に沿ってスライド移動させる。
【0052】
第一保持部材30の包囲部33がブレースボルト82Aの外周に沿うようになるまでブレースボルト82Aがスライド移動されると、前記係止部位を支点として、第一保持部材30をベース本体部21に近づけるように揺動させる。ベース本体部21に第一保持部材30の保持本体部31を沿わせ、ベース本体部21の挿通孔27と保持本体部31の挿通孔32とに亘って締結部材38を装着する。この段階では、締結部材38を完全には締結させることなく、不完全締結状態に維持させておく。そして、締結部材38の不完全締結状態で、当該締結部材38を軸として第一保持部材30を適宜回動させて、ブレースボルト82Aの配設角度に適合させるように、第一ベース部材20に対する第一保持部材30の取付姿勢(取付角度)を調整する。その後、不完全締結状態にあった締結部材38を締め増して、ベース本体部21と保持本体部31とを共締めしてこれらを締結固定する。
【0053】
なお、ここでは第一ベース部材20に対する第一保持部材30の取り付けについて言及したが、第二ベース部材40に対する第二保持部材50の取り付けについても、同様にして行うことができる。
【0054】
本実施形態の交差連結具1を用いることで、連結保持部Cにおいて、第一保持ユニット2の第一ベース部材20と第二保持ユニット4の第二ベース部材40との間に吊りボルト81を狭み込んで保持するだけで、吊りボルト81に対する交差連結具1の保持操作を容易に行うことができる。また、第一保持ユニット2において第一ベース部材20と第一保持部材30との間にブレースボルト82Aを狭着保持するだけで、第一保持ユニット2によるブレースボルト82Aの保持操作を容易に行うことができる。同様に、第二保持ユニット4において第二ベース部材40と第二保持部材50との間にブレースボルト82Bを狭着保持するだけで、第二保持ユニット4によるブレースボルト82Bの保持操作を容易に行うことができる。すなわち、2つのベース部材20,40どうしの連結部位に設けられる連結保持部Cで吊りボルト81に保持させつつ、2つの保持ユニット2,4に計3本のブレースボルト82を狭着保持させることで、吊りボルト81とこれに交差する3本のブレースボルト82との連結作業を容易に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態では、吊りボルト81に対する交差連結具1の保持が、ブレースボルト82の保持とは異なり、専用の保持部材を用いることなく、2つのベース部材20,40どうしの連結部位(連結保持部C)を利用してなされる。よって、専用の保持部材を用いて吊りボルト81に交差連結具1を保持させる場合に比べて、部品点数を少なく抑えて低コスト化を図ることができる。従って、本実施形態の交差連結具1によれば、製造コストを抑えつつ、互いに交差する4本のボルト81,82どうしの連結作業を容易に行うことができる。その結果、吊設部材9の揺れ動きを抑制すること等を目的として天井付近で実施されるボルト81,82どうしの連結作業を容易化して、高所作業の安全性を高めることができる。
【0056】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、第二保持ユニット4の第二ベース部材40の係合部47が、包囲部45の端部を屈曲させた屈曲片で構成される例を主に想定して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図8に示すように、係合部47が包囲部45の端部からその接線方向に沿って延び、且つ、各ベース部材20,40の短手方向の両側に向かって突出する一対の突片47Aを含んで構成されても良い。一対の突片47Aを含む係合部47は、一対の切欠部26に亘って挿通可能であるとともに、その基端部は一対の切欠部26よりも幅狭で、且つ、一対の突片47Aの部分は一対の切欠部26よりも幅広に構成される。一対の突片47Aが、第一ベース部材20のベース本体部21における一対の切欠部26の裏面側周縁部に係合される。また、これ以外にも、互いに係合される「係合部」及び「被係合部」の具体的構造は、適宜設定されて良い。
【0057】
(2)上記の実施形態では、第一保持ユニット2側の被係合部25に第二保持ユニット4側の係合部47が係合した状態で、1つの締結部材60(連結保持用締結部材)を用いて第一ベース部材20と第二ベース部材40との間に吊りボルト81を狭着保持する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば被係合部25に係合部47が係合した状態で、第一ベース部材20と第二ベース部材40とを溶接や蝋付け等によって接合して、両ベース部材20,40どうしの間に吊りボルト81を狭着保持しても良い。或いは、被係合部25と係合部47との係合部位を利用することなく、2つの連結保持用締結部材を用いて、又は、2箇所での接合によって、第一ベース部材20と第二ベース部材40との間に吊りボルト81を狭着保持しても良い。
【0058】
(3)上記の実施形態では、各保持ユニット2,4の保持部材30,50が、対応するベース部材20,40との間にブレースボルト82を狭着保持する状態でベース部材20,40に対して相対変位可能に連結されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図9に示すように、各保持ユニット2,4の保持部材30,50が、それ自体でブレースボルト82を狭着保持する状態で、ベース部材20,40に対して相対変位可能に連結されても良い。この場合、第一保持部材30は、被係止部36を有するベース板部30Aと、上記の実施形態における第一保持部材30と同様の構成の保持板部30Bと、締結部材38とを備える。すなわち、第一保持部材30は、被係止部36を有するベース板部30Aと、係止部35を有するとともに少なくとも部分的にブレースボルト82の外周に沿って当該ブレースボルト82を包囲する包囲部33を有する保持板部30Bと、被係止部36に係止部35が係止された状態でベース板部30Aと保持板部30Bとを締結固定する締結部材38とを備える。そして、締結部材38が、第一ベース部材20と第一保持部材30とを相対変位可能に連結するための枢支連結部材を兼用する。この場合において、互いに係止される「係止部」及び「被係止部」の具体的構造は、適宜設定されて良い。第二保持部材50に関しても、同様に考えることができる。
【0059】
なお、交差連結具1において、複数の保持ユニットU間で、各保持ユニットUの保持部材Hの具体的態様は必ずしも統一されていなくても良い。例えば第一保持ユニット2の第一保持部材30が
図2等に示す態様で構成されるとともに第二保持ユニット4の第二保持部材50が
図9に示す態様で構成され、或いは、その逆に構成される等、異種の保持部材Hを含む複数の保持ユニットUどうしが組み合わされても良い。
【0060】
(4)上記の実施形態では、交差連結具1が2組の保持ユニットUからなり、これら2組の保持ユニットUのそれぞれのベース部材Bどうしの連結部位に連結保持部Cが設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば交差連結具1が3組以上の保持ユニットUを備え、それら全ての保持ユニットUのそれぞれのベース部材Bどうしの連結部位に連結保持部Cが設けられても良い。この場合において、連結保持部Cの形成に寄与しないベース部材Bがあっても良い。例えば、交差連結具1が3組の保持ユニットUを備える場合において、それらのうちの2組の保持ユニットUのそれぞれのベース部材Bどうしの連結部位に連結保持部Cが設けられ、残余の1つの保持ユニットUのベース部材Bが連結保持部Cとは異なる部位で、他のベース部材Bに連結されても良い。交差連結具1が4組以上の保持ユニットUを備える場合に関しても、同様に考えることができる。
【0061】
(5)上記の実施形態では、交差連結具1が、特定棒状体8Sとしての吊りボルト81と非特定棒状体8Nとしての3本のブレースボルト82とを連結する構成を例として説明した。具体的には、交差連結具1が、吊りボルト81と、吊りボルト81に対して交差する2本のブレースボルト82Aと、ボルト81,82Aを包含する基準平面Pに対して交差するブレースボルト82Bとを連結する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば交差連結具1は、吊りボルト81と、吊りボルト81に対して交差する1本のブレースボルト82Aと、ボルト81,82Aを包含する基準平面Pに対して交差するブレースボルト82Bとを連結するものであっても良い。かかる交差連結具1は、例えば建築物の内壁等の障害物付近に垂設された吊りボルト81と、それに交差する1本ずつのブレースボルト82A,82Bとを連結する場合等に用いることができる。或いは、交差連結具1は、吊りボルト81と4本以上のブレースボルト82とを連結するものであっても良い。
【0062】
(6)上記の実施形態では、棒状体8として吊りボルト81やブレースボルト82を用いる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば軸方向に沿って離散的に形成された多数の係止突起(全周に亘ってでも良いし、周方向の一部であっても良い)を有するものを棒状体として用いても良い。
【0063】
(7)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。