(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、容器やプリフォーム体の滅菌設備の場合、この滅菌設備と、充填装置やブロー成形装置が、一連の設備を構成して設置されている。このような設備では、通常、滅菌雰囲気中に粉塵や塵埃の発生を防止する対策が施されている。しかしながら、接触式の伝動機構を採用した場合、摩耗による粉塵や塵埃が発生し、容器やプリフォーム体が汚染されやすいという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決して、粉塵や塵埃が発生することなく、被照射物の汚染など悪影響を与えない電子線滅菌設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電子線照射装置から被照射物に照射される電子線により滅菌する電子線滅菌設備であって、
被照射物を保持搬送する搬送装置と、
前記搬送装置に設けられて被照射物を回転する回転装置と、
前記回転装置の駆動部材と受動部材の間で、非接触で駆動力を伝達する磁力式駆動力伝達機構と、を具備し、
前記駆動力伝達機構は、所定の隙間をあけて対向して移動される前記駆動部材と前記受動部材に、磁極が異なる磁石が交互に配置された磁石列をそれぞれ有するものである。
【0008】
上記構成によれば、回転装置において、磁力式駆動力伝達機構を介して被照射物を回転し、滅菌する時に、駆動力の伝達を、磁力式駆動力伝達機構を使用して非接触で駆動力伝達とした。これにより、駆動力を伝達するための接触部や摩擦部を無くして、接触や摩耗による粉塵や塵埃の発生を未然に防止することができ、粉塵や塵埃により、被照射物を汚染することがない。
【0009】
ここで、「駆動力伝達機構」は、磁力を利用して部材と部材の間で動力を伝達する構造の他、部材と部材の間で、例えば直線運動−回転運動のように、運動方向を変換する駆動力変換機構を含むものとする。
【0010】
上記構成において、前記磁気式駆動力伝達機構と被照射物との間に、前記駆動力伝達機構に発生する磁力が、前記電子線に悪影響を与えるのを防止する干渉防止手段を具備することが好ましい。
【0011】
上記構成により、磁気式駆動力伝達機構から発生した磁力が、電子線に悪影響を与えるのを防ぎ、電子線による安定した滅菌作業を実施できる。
上記構成の干渉防止手段は、前記磁力式駆動力伝達機構と被照射物との間に、磁力を減衰させる磁力減衰距離を設けることが好ましい。上記磁力減衰距離を確保することにより、磁力を減衰させて、安定した滅菌が可能となる。
【0012】
上記構成の干渉防止手段は、前記磁力式駆動力伝達機構と被照射物との間に、前記磁力式駆動力伝達機構から出る磁場を遮蔽する磁場遮蔽体を配置することが好ましい。これにより、前記磁力式駆動力伝達機構から発生した磁力を、前記磁場遮蔽体で磁力を遮蔽したり、減衰させて、電子線による安定した滅菌作業が可能となる。
【0013】
上記構成において、前記磁石列は、低透磁率でかつ耐食性の材料からなる被覆材に覆われることが好ましい。
上記構成によれば、電子線が空気中の酸素に衝突して発生するオゾンガスや、電子線のエネルギーにより空気中の窒素と酸素と水素が反応して発生する硝酸ガスを含む腐食性ガス雰囲気おいて、被覆材により磁石列が腐食するのを防止することができる。
【0014】
上記構成において、前記駆動部材は、固定側部材に被照射物の搬送方向に沿って配置された帯状磁力体であり、前記受動部材は、前記搬送装置の可動側部材に設けられた環状磁力体であることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、前記帯状磁力体に沿って前記環状磁力体を移動させることにより、磁力体の磁力を利用して、非接触で、直線運動を回転運動に変換して、環状磁力体を回転駆動させることができる。
【0016】
さらにまた、上記構成において、X線を遮蔽可能でかつ低透磁率であり、さらに耐食性を有する材料からなる隔壁により、前記電子線照射装置および被照射物を包囲するチャンバを備え、前記受動部材の磁石列が前記チャンバ内に配置されるとともに、前記駆動部材の磁石列が、低透磁率でかつ耐食性の材料からなる被覆材を隔てて前記チャンバの外側に配置されることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、チャンバの隔壁と一体化、または隔壁の外側に、磁石列を有する前記駆動部材を配置したので、磁力の減衰を伴うことなく腐食性ガスによる腐食を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、非接触で駆動される動力伝達機構により、粉塵や塵埃が発生することなく、被照射物を汚染することがない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る電子線滅菌設備は、滅菌対象である被照射物が、実験器具などの被検体や、容器成形前のプリフォーム体、内容物の無菌充填前の容器などである。これら被照射物を回転させつつ搬送移動または昇降移動させ、外面および内面の少なくとも一方に電子線を照射して滅菌を行う。そして、被照射物を回転させるための駆動力伝達機構に、非接触で駆動可能な磁力式を採用する。これにより、非接触で駆動力を伝達や変換して、接触や摩耗による粉塵や塵埃の発生を防止している。
【0021】
また、磁力式駆動力伝達機構において発生する磁力が、電子線に悪影響を及ぼさない干渉防止手段を設けている。
ところで、電子線が空気中の酸素に衝突することによりオゾンガスが発生したり、電子線のエネルギーにより、空気中の窒素と酸素と水素が反応して硝酸ガスが発生するため、搬送装置や被照射物などを覆うチャンバ内が腐食性ガス雰囲気となることが知られている。したがって、磁力式駆動力伝達機構を腐食性ガス雰囲気により腐食しない防食構造としている。
【0022】
[実施例1]
本発明に係る容器外面滅菌装置の実施例1を
図1〜
図4に基づいて説明する。
図1,
図2に示すように、この電子線滅菌設備は、ブロー成形により容器を形成する前のプリフォーム体Pを外面滅菌するための容器外面滅菌装置11で、被照射物はプリフォーム体Pである。この容器外面滅菌装置11は、腐食性ガス雰囲気を包囲する腐食性ガス遮蔽用のチャンバCに覆われている。そして、チャンバC内の腐食性ガスは、排気ポンプPoから有害物を除去するガス無害化装置Nを介して大気中に放出される。新たな空気は、不純物を除去するフィルタFを介してチャンバC内に導入される。
【0023】
(容器搬送装置)
プリフォーム体Pを搬送する容器搬送装置(搬送装置)21は、左右一対の第1ホイール(回転体)22および第2ホイール(回転体)23と、第1ホイール22と第2ホイール23間にわたって巻張された無端状の回転移動体(可動側部材)24と、回転移動体24に一定ピッチで設けられた容器保持部25と、を具備している。そして、搬入経路Liから搬入ホイール12で容器保持部25に保持されたプリフォーム体Pは、搬送経路Lの直線往路部Laに送られる。そして、直線往路部Laで、電子線照射装置14から電子線がプリフォーム体Pに照射されて滅菌される。さらにプリフォーム体Pは、第2ホイール23から直線復路部Lbに送られ、第1ホイール22から搬出経路Loに送り出される。
【0024】
直線往路部Laには、電子線照射装置14から電子線が照射される外面照射領域(電子線照射領域)Roが設定されており、この外面照射領域Roに対応して電子線照射装置14が設置されている。そして、直線往路部Laに沿って搬送されるプリフォーム体Pに、電子線照射装置14の照射口14oから電子線が照射される。この外面照射領域Roでは、容器搬送装置21に設けられた容器回転装置(回転装置)26によりプリフォーム体Pを容器軸心Op周りに回転させて、外周面を均一に滅菌する。
【0025】
図2,
図3に示すように、容器搬送装置21の回転移動体24は、互いに形状の異なる側面視H形の2種類のチェーン部材24A,24Bを搬送方向に垂直な鉛直方向の支軸27を介して水平面内で折り曲げ自在に連結したものである。各支軸27は、下端側に設けられた容器保持部25と、チェーン部材24A,24Bの上下位置に軸受を介して回転自在に取り付けられたホイール係合環28U,28Dと、上端側に設けられた容器回転装置26と、を具備している。なお、ホイール係合環28U,28Dが上下に設けられているのは、第1ホイール22および第2ホイール23には、それぞれ上下一対のスプロケットが、所定間隔をあけて設けられているためである。
【0026】
容器保持部25は、プリフォーム体Pの開口部に着脱自在な、弾性体からなる保持具25aを有しており、第1ホイール22に設けられた昇降機構(図示せず)により、プリフォーム体Pを上昇しプリフォーム体Pの口部を保持具25aに嵌入させて保持し、またプリフォーム体Pを下降してプリフォーム体Pの口部から保持具25aを離脱させる。
【0027】
(磁力式駆動力伝達機構)
容器回転装置26は、容器搬送装置21による直線往路部Laの直線運動を、非接触で、容器保持部25の回転運動に変換する磁力式駆動力伝達機構31を具備している。この磁力式駆動力伝達機構31は、
図4に示すように、容器搬送装置21の固定側部材でかつ駆動部材となる支持フレーム30に、直線状の帯状磁力体32が搬送方向に沿って取り付けられている。一方、容器搬送装置21の可動側部材で、かつ受動部材である支軸27に、環状磁力体33が固定されている。そして、外面照射領域Roでは、帯状磁力体32に沿って環状磁力体33が所定隙間をあけて移動することにより、磁力を利用して回転移動体24の直線運動を、支軸27の回転運動に変換することができる。
【0028】
図4に示すように、この帯状磁力体32は、支持フレーム30に搬送方向に沿って配置された磁石取付部材32aと、磁石取付部材32aにS極とN極の磁石とが交互に一定ピッチで搬送方向に配置された直線状の帯状磁石列32bと、低透磁率でかつ耐食性を有する材料からなり帯状磁石列32bを覆う被覆材であるカバー部材32cを有している。環状磁力体33は、支軸27にキーを介して固定された磁石支持筒33aと、この磁石支持筒33aの外周部に、一定の(角度)ピッチでS極とN極の磁石とが外周部に交互に取り付けられた環状磁石列33bと、低透磁率でかつ耐食性を有する材料からなり環状磁石列33bを覆う被覆材であるコート部材33cを有している。カバー部材32cおよびコート部材33cは、ステンレス製やチタン合金製であるが、ステンレス材やチタン材を被覆したコーティング層であってもよい。これらカバー部材32cとコート部材33cにより、液化硝酸も含む硝酸ガスやオゾンガスなどの腐食性ガスによる帯状磁石列32bおよび環状磁石列33bの腐食を防止する。
【0029】
上記構成において、直線往路部Laで容器搬送装置21により回転移動体24が搬送方向に直線移動されると、帯状磁石列32bと環状磁石列33bの磁力の作用により支軸27が回転され、容器保持部25の保持具25aに保持されたプリフォーム体Pが容器軸心Op周りに回転される。
【0030】
ところで、プリフォーム体Pが回転不足になると、部分的に電子線の照射不足が生じ、滅菌不足のプリフォーム体Pにより下流側のブロー成形装置などが汚染される恐れがある。このため、
図2(a)(b)に示すように、プリフォーム体Pの回転を、支軸27を介して監視する容器の回転監視装置34が設けられている。この回転監視装置34は、たとえば環状磁力体33の天板に設けられたマーク33mを撮像装置34aにより高速撮像し、取得した画像と正常な回転の画像とを比較することにより、プリフォーム体Pが所定量回転されたかどうかを監視している。もちろん、支軸27の回転監視は、可視画像に限るものではなく、超音波やレーダ波などの媒体を利用した公知の非接触式検出装置を使用することもできる。
【0031】
また直線往路部Laの外面照射領域Roでは、磁力式駆動力伝達機構31に磁石を使用するため、常に環状磁力体33が帯状磁力体32側に吸引され、回転移動体24に
図2に示す時計回り方向のモーメントMが発生する。通常、搬送経路Lでは、搬送方向左側(搬送経路内側)のガイドローラ29Lがガイドレール35により下方から支持されている。しかし、この状態ではモーメントMに対処することができない。この回転移動体24の傾きを抑制するために、回転移動体24の上下位置に配置されたホイール係合環28U,28Dの内側への変位をそれぞれ規制する傾斜規制レール36U,36Dが、外面照射領域Ro全体にわたって設置されている。さらに搬送経路Lの外側に、外側のガイドローラ29Rの上面に当接する浮上防止レール37が、外面照射領域Roにわたって配置され、外側のガイドローラ29Rの浮上りを規制している。このように、外面照射領域Roでは、傾斜規制レール36U,36Dおよび浮上防止レール37により、支軸27が搬送経路L内側に倒れ込むのを防止することができる。
【0032】
さらに、磁力式駆動力伝達機構31から発生する磁力により、電子線照射装置14から照射された電子線の照射方向が偏向してプリフォーム体Pへの照射量が不均一になるなど、プリフォーム体Pの滅菌に悪影響が生じる恐れがある。これを防止する干渉防止手段として、磁力式駆動力伝達機構31からプリフォーム体Pまで、磁力が減衰するための磁力減衰距離Lsを確保し、磁力式駆動力伝達機構31の磁力がプリフォーム体Pへの電子線の照射に影響を与えないようにしている。
【0033】
また他の干渉防止手段として、磁力減衰距離Lsの確保と同時に、あるいはこれに替えて、磁力式駆動力伝達機構31と、照射口14oおよびプリフォーム体Pの間の空間部に、例えば磁力を遮るミューメタルやパーマロイなど高透磁率の材料からなる磁場遮蔽体38を設置している。この磁場遮蔽体38の表面は防食用の材料からなる表面材で覆われていてもよい。もちろん、磁力減衰距離Lsを確保すると同時に、磁場遮蔽体38が設置されていてもよい。
【0034】
(実施例1の効果)
上記実施例1によれば、容器保持部25に保持されたプリフォーム体Pを容器軸心Op周りに回転するとともに、電子線をプリフォーム体Pに照射し滅菌する時に、容器回転装置26により、磁力式駆動力伝達機構31により非接触で駆動力伝達して、プリフォーム体Pを回転するので、動力伝達時の接触や摩耗による粉塵や塵埃の発生を未然に防止することができる。したがって、これら粉塵や塵埃により、プリフォーム体Pを汚染することがない。
【0035】
また容器回転装置26では、容器搬送装置21の支持フレーム30に直線状に設けた帯状磁力体32と、回転移動体24の支軸27に取り付けられた環状磁力体33とを有する磁力式駆動力伝達機構31により、非接触で、直線帯状磁力体32に沿う直線運動を、環状磁力体33の回転運動に変換し、接触や摩耗による粉塵や塵埃の発生を未然に防止することができる。
【0036】
また磁気式駆動力伝達機構31とプリフォーム体Pとの間に、干渉防止手段として磁場遮蔽体38と磁力減衰距離Lsの少なくとも一方を設けることにより、磁気式駆動力伝達機構31の磁石から発生する磁場を減衰させて、電子線を安定して照射でき均一な滅菌作業が可能となる。
【0037】
さらに、帯状磁石列32bおよび環状磁石列33bが、低透磁率でかつ耐食性の材質からなるカバー部材32c,コート部材33cやコーティングに覆われることにより、オゾンガスや硝酸ガスを含む腐食性ガス雰囲気により腐食するのを、未然に防止することができる。
【0038】
[実施例2]
本発明に係る電子線滅菌設備の実施例2を
図5〜
図8に基づいて説明する。
この電子線滅菌設備は、滅菌対象である被照射物が容器Bであり、容器内面滅菌装置40は、内容物を容器Bに無菌充填する充填装置(図示せず)の上流側に設置される。なお、実施例1と同一部材には同一符号を付して、説明を省略する。
【0039】
この容器内面滅菌装置40の容器搬送装置40aは、
図5〜
図8示すように、腐食性ガス遮蔽用のチャンバC内に、回転軸Oc周りに回転自在な回転テーブルTcと、回転テーブルTcの上部外周に一定ピッチで設置され、ネック部Bnを介して容器Bを保持する容器保持装置41と、容器保持装置41を介して容器Bを昇降する容器昇降装置51と、具備している。そして回転テーブルTcの外周に容器Bを搬送する円形経路Lcが形成されている。Riは、円形経路Lcに設けられた電子線の内面照射領域(電子線照射領域)である。搬入経路Liから搬入ホイール12を介して円形経路Lcに搬入された容器Bが、この内面照射領域Riの入口で、容器昇降装置51により容器Bが上昇される。そして、電子線照射装置54の照射ノズル54nが口部Bpを介して容器B内に挿入され、内面滅菌される。さらに内面照射領域Riの出口で、容器昇降装置51により容器Bが下降されて、口部Bpから照射ノズル54nが抜き出される。そして、滅菌後の容器Bが搬出ホイール13を介して搬出経路Loに搬出される。
【0040】
(容器保持装置)
回転テーブルTcの外周部に、一定ピッチで昇降台42が昇降ロッド52を介して昇降自在に配置されている。容器保持装置41は、昇降台42に左右一対のネック保持アーム43R,43Lが支持軸43a,43a周りにそれぞれ開閉自在に支持されている。左右のネック保持アーム43R,43Lには、先端部に鉛直軸心周りに回転自在に支持された駆動ローラ44と、基端部に鉛直軸心周りに回転自在に支持された遊転ローラ45とが設けられている。そして、ネック保持アーム43R,43Lの開閉に従って、これら4個のローラ44,45により、容器Bのネック部Bnを開放、把持する。これらネック保持アーム43R,43Lを開閉するアーム開閉装置は、図示しないが、カムや、流体圧式や電動式のシリンダなど公知の技術が適用され、搬入ホイール12に対応する搬入位置および搬出ホイール13に対応する搬出位置で、ネック保持アーム43R,43Lが開閉されて、容器Bが搬入保持および開放搬出される。
【0041】
(容器昇降装置)
図7に示すように、各容器保持装置41は、回転テーブルTcの外周部で、容器昇降装置51により昇降台42が所定範囲で昇降自在に支持されている。すなわち、容器昇降装置51は、昇降台42から垂下されるとともに、回転テーブルTcの外周部のガイド穴にスライド自在に嵌合された昇降ロッド52と、回転テーブルTcの底部側に設けられて、昇降ロッド52を介して容器保持装置41を所定範囲で昇降駆動する昇降駆動装置53とを具備している。この昇降駆動装置53は、カム機構や、流体圧シリンダや電動シリンダなど公知の駆動装置が使用される。
【0042】
一方、回転テーブルTcの上方部に、回転テーブルTcと同期して回転される支持テーブルTsが設置されている。この支持テーブルTcの外周部には、各容器保持装置41に対応して、ノズル式の電子線照射装置54が一定ピッチで設置されている。電子線照射装置54には、支持テーブルTcを貫通して下方に伸び容器Bの口部Bpに挿入可能な照射ノズル54nを具備し、照射ノズル54nの下端の照射口から電子線を照射する。なお、照射ノズル54nから照射される電子線は、チャンバC内の空気の分子に衝突して紡錘形に広がり、容器Bの内面を滅菌する。
【0043】
(容器回転装置)
ところで、容器Bの材料である樹脂に、電子線が必要量以上に照射されると、樹脂が変質したり、変色されることが知られており、照射量を過不足の無い適正範囲に保持する必要がある。したがって、容器Bの内面を滅菌する場合、たとえば本体部Bbが、特に図示するように矩形断面に形成されていた場合や、特に小径のネック部Bnから本体部Bbの肩部Bsに急激に拡径されると、照射ノズル54nの照射口から内面までの距離が周方向で不規則となる。また装飾や把持のために、本体部Bbに凹凸模様が形成されると、照射口から内面までの距離が不規則となる。このため、電子線の照射量が適正範囲に保持するのが難しい。
【0044】
この実施例2では、容器回転装置(回転装置)46により容器Bを容器軸心Ob周りに回転させ、不規則な容器Bの内面に電子線を均一に照射して、電子線の照射量が適正範囲に保持し、容器Bの内面全体を均一に滅菌することができる。
【0045】
(磁力式駆動力伝達機構)
前記容器回転装置46に磁力式駆動力伝達機構47を備えている。この磁力式駆動力伝達機構47は、駆動ローラ44を支持する鉛直方向の連動軸44aの上部に取り付けられた左右一対の環状磁力体48と、内面照射領域Riにわたって固定側部材(チャンバCの側壁Cw)に回転軸Ocを中心とする周方向に配設された円弧状の帯状磁力体49と、を具備している。環状磁力体48および帯状磁力体49は、実施例1の環状磁力体33および帯状磁力体32と略同一構造で、磁石取付部材に、N極とS極の磁石が交互に配置された環状磁石列、帯状磁石列がそれぞれ取り付けられ、さらに低透磁率で耐食性の材料からなる被覆材であるコート部材48c、カバー部材49cによりそれぞれ被覆されている。なお、帯状磁力体49は、チャンバCの隔壁Cwの内面に支持部材49dを介して設置されている。50は、主に環状磁力体48から発生する磁場を遮蔽して、照射ノズル54n内の放射線に悪影響を及ぼすのを防止する磁場遮蔽体である。この磁場遮蔽体50は、ミューメタルやパーマロイなどの高透磁率の板料と、これを覆うステンレス製やチタン合金製の防食板や、ステンレス材やチタン材を被覆した防食用コーティング層からなる。
【0046】
上記構成において、容器保持装置41に保持されて円形経路Lcを搬送される容器Bは、昇降駆動装置53により内面照射領域Riの入口で上昇される。同時に容器回転装置46では、磁力式駆動力伝達機構47の環状磁力体33が帯状磁力体32に接近する。そして容器Bが円形経路Lcに沿って移動されると、環状磁力体33および帯状磁力体32の磁力の作用により環状磁力体33が回転される。そして環状磁力体33の回転により、連動軸44aを介して駆動ローラ44が回転駆動され、容器Bが容器軸心Ob周りに回転される。さらに容器Bが内面照射領域Riに入ると、照射ノズル54nが容器Bの口部Bpから本体部Bb内に挿入され、容器Bの内面が滅菌される。内面照射領域Riの出口に接近すると、照射ノズル54nが容器Bの本体部Bbから口部Bpを介して抜き出されるとともに、帯状磁力体32から環状磁力体33が離間されて容器Bの回転が停止される。
【0047】
(実施例2の効果)
実施例2によれば、磁力式駆動力伝達機構47において、円形経路Lcに沿って固定された帯状磁力体49と、移動する環状磁力体48とにより、円弧方向の運動を回転運動に変換して、非接触で、容器Bを容器軸心Ob周りに回転させることができる。したがって、磁力式駆動力伝達機構47により、接触や摩耗により発生する粉塵や塵埃の発生を大幅に軽減することができ、容器の汚染を防止することができる。
【0048】
なお、実施例2では、左右のネック保持アーム43R,43Lの先端部に駆動ローラ44を設け、基端部に遊転ローラ45を設けている。しかし、上記構成に限るものではなく、昇降に干渉しない範囲であれば、ネック保持アーム43R,43Lの先端部に遊転ローラ45を設け、基端部に駆動ローラ44を設け、環状磁力体48および帯状磁力体49を設置してもよい。
【0049】
また、円形経路Lcに、仮想線で示すように、内面照射領域Riの前方領域に、または後方領域、あるいは少なくとも一部が内面照射領域Riに重なった領域に、電子線照射装置14を配置して、円形経路Lcに電子線の外面照射領域Roを形成することもできる。もちろん、電子線の外面照射領域Roのみであってもよい。
【0050】
(磁力式駆動力伝達機構の変形例について)
実施例2では、磁力式駆動力伝達機構47では、環状磁力体48および帯状磁力体49を共にチャンバC内に配置したが、
図9(a)に示すように、帯状磁力体49をチャンバCの隔壁Cwと一体に設けてもよい。また、
図9(b)に示すように、帯状磁力体49をチャンバCの外側に設置することもできる。さらに、
図10(a)〜(c)に示すように、昇降台42の昇降運動を駆動ローラ44の回転運動に変換する磁力式駆動力伝達機構60を設けたものでもよい。なお、これら変形例1〜3の説明において、実施例2に同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
(磁力式駆動力伝達機構の変形例1)
図9(a)に示すように、チャンバCの隔壁Cwと一体に設けられた帯状磁力体49は、隔壁Cwに円形経路Lcに沿って形成された円弧帯状の開口部49eと、開口部49eに磁石取付部材49aを介して装着されS極磁石とN極磁石が交互に配置された帯状磁石列49bと、隔壁Cwの内面に磁石取付部材49aと帯状磁石列49bを覆う低透磁率で耐食性のコート部材49c(または低透磁率で耐食性のコーティング層)と、で構成される。
【0052】
(磁力式駆動力伝達機構の変形例2)
また
図9(b)に示すように、チャンバCの外側に設置された帯状磁力体49は、隔壁Cwに形成された帯状の開口部49eに、低透磁率で耐食性の材料からなる被覆材であるコート部材49cを装着する。そして、このコート部材49cの外側に、磁石取付部材49aにより環状磁石列49bが取り付けられる。なお、隔壁Cw自体が耐食性を有するので、低透磁率の材質であれば、開口部49eとコート部材49cを削除することができる。これにより、設備コストを低減することができる。
【0053】
上記変形例1,2によれば、帯状磁石列49bをチャンバCの腐食性ガス雰囲気から容易に隔離することができ、腐食を軽減することができる。また帯状磁力体49の支持部材を隔壁Cwとすることで、部材の削減を図ることができる。さらにチャンバC内の空間を有効利用することができる。
【0054】
(磁力式駆動力伝達機構の変形例3)
変形例3を、
図10を参照して説明する。昇降駆動装置53により昇降ロッド52を介して所定範囲で昇降駆動される容器保持装置55は、昇降台42から外周側に伸び凹部56aが形成される二股状のネック保持アーム56と、ネック保持アーム56の凹部56aの入口に対向して配置されネック部Bnを抜け止めするに遊転式の左右一対の弾性ローラ58と、凹部56aの奥部に配置されてネック部Bnに当接する駆動ローラ59とを具備している。
【0055】
容器回転装置61は、上端部に駆動ローラ59が取り付けられて昇降ロッド52と平行に垂下され回転テーブルTcをスライド自在でかつ回転自在に貫通する回転軸62と、回転軸62の下部に設けられた磁力式駆動力伝達機構60と、を具備している。
【0056】
この磁力式駆動力伝達機構60は、はすば形ギヤ機構と同様の作用効果を奏するもので、回転テーブルTcから回転軸62と平行に垂下された帯状磁力体63と、回転軸62の下端部に固定された環状磁力体64と、を具備している。帯状磁力体63は、磁石取付部材に直線状の帯状磁石列63bを有している。そして帯状磁石列63bにおいて、一定ピッチで搬送方向に交互に配置されたS極とN極の磁石は、環状磁力体64の移動方向(鉛直線)に対してそれぞれ所定角度(30°〜60°)で傾斜して配置され、はすば形ラックの歯に対応して配置される。環状磁力体64は、回転軸62にキーを介して固定された磁石支持筒と、この磁石支持筒の外周面に、前記帯状磁石列63bに対応する一定の(角度)ピッチでS極とN極の磁石が外周部に交互に設けられた環状磁石列64bとを具備している。そして、環状磁石列64bのS極とN極の磁石は、帯状磁石列63bの磁石に対応して、移動方向に対して傾斜するはすば形歯車の歯に対応して傾斜状に配置されている。したがって、環状磁力体64が帯状磁力体63に沿って移動されることにより、磁力の作用により、環状磁力体64が回転軸62周りに回転駆動される。これにより、昇降台42の昇降運動が駆動ローラ44の回転運動に変換される。
【0057】
また図示しないが、回転テーブルTcとチャンバCの隔壁Cwとの隙間に、ラビリンスシールなど、非接触のガス遮蔽部材で遮蔽することにより、回転テーブルTcの底部の非腐食雰囲気空間に、チャンバC内の腐食性ガスの浸入を防止することができる。これにより、磁力式駆動力伝達機構55の腐食を防止することができ、これにより防食用のカバー部材やコート部材、コーティング層を不要とすることができる。
【0058】
上記構成において、容器Bが内面照射領域Riに入ると、磁力式駆動力伝達機構60において、昇降駆動装置53により昇降台42と共に昇降ロッド52が上昇されて容器Bが上昇されると同時に、帯状磁石列63bに沿って環状磁力体64が移動し、磁力の作用で環状磁力体64が回転される。これにより、照射ノズル54nが口部Bpから本体部Bbに挿入されるとともに、回転軸62、駆動ローラ59を介して容器Bが容器軸心Ob周りに回転される。したがって、照射ノズル54nの照射口から電子線が、容器Bの口部Bp、ネック部Bn、肩部Bs、本体部Bb内に順次照射されて、照射時間、照射距離に応じて効果的に滅菌される。
【0059】
上記磁力式駆動力伝達機構の変形例3によれば、固定された帯状磁石列63bと、帯状磁石列63bに沿って直線移動する環状磁力体64からなる磁力式駆動力伝達機構60により、非接触で回転力を発生させることができる。したがって、磁力式駆動力伝達機構60により、接触や摩耗により発生する粉塵や塵埃の発生を大幅に軽減して、容器Bの汚染を防止することができる。
【0060】
なお、実施例2では、容器Bを回転させつつ容器Bの内面を殺菌する容器内面滅菌装置40としたが、仮想線で示すように円形経路Lcの外周側または内周側に電子線照射装置14を配置し、容器Bを回転させつつ容器Bの外面を外面照射領域Roで滅菌する容器外面滅菌装置11としてもよく、或いは1つの円形経路Lc上で、容器Bを回転させつつ外面、内面照射領域Ro,Riで容器Bの外面と内面とを順次滅菌する容器内外面滅菌装置としてもよい。なお、内面照射領域Riで容器Bの回転を停止することもできる。
【0061】
また変形例3において、
図10(a)において仮想線で示すように、昇降駆動装置53により容器Bが上昇または下降される外面照射領域に電子線照射装置14を配置することにより、容器Bを回転させつつ容器Bの外面を全周にわたって滅菌することができる。
【0062】
[実施例3]
磁力式駆動力伝達機構の他の実施例を、
図11および
図12を参照して説明する。
この電子線滅菌設備は、滅菌対象である被照射物が容器Bである容器外面滅菌装置に関するものである。なお、先の実施例と同一部材には同一符号を付して、説明を省略する。
【0063】
図12に示すように、容器外面滅菌装置70は、腐食性ガス遮蔽用のチャンバC内に、回転軸Oc周りに回転自在な回転テーブルTcが配置されている。この回転テーブルTcの外周部に、ネック部Bnを介して容器Bを保持する容器保持装置71が一定ピッチで設置されており、これら容器保持装置71により容器Bを円形搬送経路Lcに沿って搬送する。また円形搬送経路Lcの外周部に電子線照射装置14が設置され、照射口14oに対応する内面照射領域Riで電子線照射装置14から容器Bの外面に向かって電子線が照射される。
【0064】
容器保持装置71は、
図11に示すように、回転テーブルTcに立設された支柱部72の上端部に、ネック部Bnが挿脱自在な凹部73aを有する二股状のクランプ体73が設けられている。前記凹部73aの入口側に対向して左右一対の遊転式弾性ローラ74が容器軸心Obと平行な軸心周りに回転自在に配置され、凹部73aの奥側に駆動ローラ75が容器軸心Obと平行な回転軸75aに支持されている。そして、ネック部Bnが凹部73a内に送り込まれることにより、2つの弾性ローラ74と駆動ローラ75とで、ネック部Bnを介して容器Bが保持される。
【0065】
支柱部72に取り付けられた駆動モータ76の出力軸76aと、駆動ローラ75の回転軸75aの間に、磁力式駆動力伝達機構77が設けられている。この磁力式駆動力伝達機構77は、駆動モータ76の出力軸76aの回転運動と駆動ローラ75の回転軸75aの回転運動を伝達する、歯車機構と同様の作用効果を奏するものである。すなわち、駆動モータ76の出力軸76aに取り付けられた駆動側環状磁力体78は、磁石取付部材78aに一定の(角度)ピッチでS極とN極の磁石が外周部に交互に設けられた環状磁石列78bと、環状磁石列78bを覆う被覆材である駆動側コート部材78cと、を具備している。また駆動側環状磁力体78に接近して駆動ローラ75の回転軸75aに取り付けられた受動側環状磁力体79は、磁石取付部材79aに一定の(角度)ピッチでS極とN極の磁石が外周部に交互に設けられた環状磁石列79bと、低透磁率かつ防食性で環状磁石列79bを覆う被覆材である受動側コート部材79cと、を具備している。
【0066】
80は磁場遮蔽体で、ミューメタルやパーマロイなどの高透磁率の板料と、これを覆うステンレス製やチタン合金製の防食板、またはステンレス材やチタン材を被覆した防食用コーティング層からなる。この磁場遮蔽体80により、磁力式駆動力伝達機構77から発生する磁場遮蔽と、チャンバC内の腐食性ガスから遮蔽することができる。
【0067】
上記実施例3では、回転運動する駆動側環状磁力体78と、回転運動する受動側環状磁力体79との間で、非接触で動力を伝達する磁力式駆動力伝達機構77を設けたので、動力伝達時の接触や摩耗による粉塵や塵埃の発生を未然に防止することができる。したがって、これら粉塵や塵埃により、容器Bを汚染することがない。