(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの概略図である。
<装置の構成>
【0012】
画像読取装置Aは、載置台1に積載された一又は複数の搬送媒体Sを1つずつ装置内に搬送路RTにて搬送してその画像を読み取り、排出トレイ2に排出する装置である。読み取る搬送媒体Sは、例えば、OA紙、チェック、小切手、名刺、カード類等のシートであり、厚手のシートであっても、薄手のシートであってもよい。カード類は、例えば、保険証、免許証、クレジットカード等を挙げることができる。
<給紙>
【0013】
搬送路RTに沿って搬送媒体Sを給送する給送機構としての第1搬送部10が設けられている。第1搬送部10は本実施形態の場合、送りローラ11と、送りローラ11に対向配置される分離ローラ12と、を備え、載置台1上の搬送媒体Sを搬送方向D1に一つずつ順次搬送する。また、第1搬送部10には上部搬送ガイド13と下部搬送ガイド14が設けられ、上部搬送ガイド13と下部搬送ガイド14は、搬送路RTを挟んで対抗する位置に配置されており後述する第2搬送部20に搬送媒体Sを導くガイドとなっている。
【0014】
送りローラ11には、モータ等の駆動部3から伝達部5を介して駆動力が伝達され、図中矢印方向(搬送路RTに沿って搬送媒体Sを搬送させる正方向)に回転駆動される。伝達部5は例えば電磁クラッチであり、駆動部3からの送りローラ11への駆動力を断続する。
<駆動部>
【0015】
駆動部3、4と送りローラ11とを接続する伝達部5は、例えば、本実施形態では、通常時において駆動力が伝達される状態とし、搬送媒体Sの逆送の場合に駆動力を遮断する。送りローラ11は伝達部5により駆動力の伝達が遮断されると、自由回転可能な状態となる。なお、このような伝達部5は、送りローラ11を一方向のみに駆動させる場合には設けなくてもよい。
<分離構造>
【0016】
送りローラ11に対向配置される分離ローラ12は、搬送媒体Sを1枚ずつ分離するためのローラであり、送りローラ11に対して一定圧で圧接している。この圧接状態を確保するため、分離ローラ12は揺動可能に設けると共に送りローラ11へ付勢されるように構成される。分離ローラ12は、トルクリミッタ12aを介して駆動部3から駆動力が伝達され、実線矢印方向(送りローラ11の正方向とは逆方向))に回転駆動される。
【0017】
分離ローラ12はトルクリミッタ12aにより駆動力伝達が規制されるため、送りローラ11と当接している際は送りローラ11に連れ回りする方向(破線矢印方向)に回転する。これにより、複数の搬送媒体Sが送りローラ11と分離ローラ12との圧接部に搬送されてきた際には、一つを残して2つ以上の搬送媒体Sが下流に搬送されないようにせき止められる。
【0018】
なお、本実施形態では分離ローラ12と送りローラ11とで分離機構を構成したが、このような分離機構は必ずしも設けなくてもよく、搬送路RTに搬送媒体Sを1つずつ順次給送する給送機構であればよい。また、分離機構を設ける場合においては、分離ローラ12のような構成の代わりに、搬送媒体Sに摩擦力を付与する分離パッドを送りローラ11に圧接させて、同様の分離作業を持たせるようにしてもよい。
<搬送構造>
【0019】
第1搬送部10の搬送方向下流側にある搬送機構としての第2搬送部20は、駆動ローラ21と、駆動ローラ21に従動する従動ローラ22とを備え、第1搬送部10から搬送されてきた搬送媒体Sをその下流側へ搬送する。駆動ローラ21にはモータ等の駆動部4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラ22は駆動ローラ21に対して一定圧で圧接し、駆動ローラ21に連れ回る。この従動ローラ22は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ21に対して付勢された構成としてもよい。
【0020】
このような第2搬送部20よりも搬送方向下流側にある第3搬送部30は、駆動ローラ31と、駆動ローラ31に従動する従動ローラ32とを備え、第2搬送部20から搬送されてきた搬送媒体Sを排出トレイ2へ搬送する。つまり、この第3搬送部30は排出機構として機能する。駆動ローラ31にはモータ等の駆動部4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラ32は駆動ローラ31に対して一定圧で圧接し、駆動ローラ31に連れまわる。この従動ローラ32は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ31に対して付勢された構成としてもよい。
【0021】
排出トレイ2は、画像読取装置Aに対して回動可能なように、画像読取装置Aの下方に設けられた第1ヒンジ6を介して軸支されている。また、第1ヒンジ6側の第1排出トレイ2aとその先端側に接続された第2排出トレイ2bとから構成されており、第2排出トレイ2bは第1排出トレイ2aに対して回動可能に軸支されている。
<画像読取構造、制御>
【0022】
ここで、本実施形態の画像読取装置Aでは、第2搬送部20と第3搬送部30との間に配置される画像読取ユニット70によって画像の読み取りを行うため、第2搬送部20及び第3搬送部30は搬送媒体Sを定速搬送する。搬送速度は常に第1搬送部10の搬送速度以上とすることで、先行搬送媒体Sに後続搬送媒体Sが追いついてしまう事態を確実に回避できる。例えば、本実施形態では、第2搬送部20及び第3搬送部30による搬送媒体Sの搬送速度を、第1搬送部10による搬送媒体Sの搬送速度よりも速くなるように速度制御するようにした。
【0023】
なお、第2搬送部20及び第3搬送部30による搬送媒体Sの搬送速度と、第1搬送部10による搬送媒体Sの搬送速度とを同一条件とした場合でも、駆動部3を制御して後続搬送媒体Sの給送開始タイミングを間欠的にずらすことにより先行搬送媒体Sと後続搬送媒体Sとの間に最低限の間隔を形成することも可能である。
<重送検出>
【0024】
第1搬送部10と第2搬送部20との間に配置される重送検出センサ40は、静電気等で紙などの搬送媒体S同士が密着し、第1搬送部10を通過してきた場合(つまり重なって搬送される重送状態の場合)に、これを検出するための検出センサ(シートの挙動や状態を検出するセンサ)の一例である。重送検出センサ40としては、種々のものが利用可能であるが本実施形態の場合には超音波センサであり、超音波の発信部41とその受信部42とを備え、紙等の搬送媒体Sが重送されている場合と1つずつ搬送されている場合とで、搬送媒体Sを通過する超音波の減衰量が異なることを原理として重送を検出する。
<レジストセンサ>
【0025】
このような重送検出センサ40よりも搬送方向下流側に配置される媒体検出センサ50は第2搬送部20よりも上流側で、第1搬送部10よりも下流側に配置された上流側の検出センサ(シートの挙動や状態を検出するセンサ)の一例であり、第1搬送部10により搬送される搬送媒体Sの位置、詳細には、媒体検出センサ50の検出位置に搬送媒体Sの端部が到達又は通過したか否かを検出する。媒体検出センサ50としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合には光学センサであり、発光部51とその受光部52とを備え、搬送媒体Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化すること
を原理として搬送媒体Sを検出する。
【0026】
本実施形態の場合、搬送媒体Sの先端が媒体検出センサ50で検出されると、搬送媒体Sが重送検出センサ40により重送を検出可能な位置に到達しているように、上記の媒体検出センサ50は重送検出センサ40の近傍においてその下流側に設けられている。なお、この媒体検出センサ50は、上記の光学センサに限定されず、例えば、搬送媒体Sの端部が検知できるセンサ(イメージセンサ等)を用いてもよいし、搬送路RTに突出したレバー型のセンサでもよい。
【0027】
媒体検出センサ50とは別の媒体検出センサ60が画像読取ユニット70よりも上流側に配置されている。第2搬送部20よりも下流側に配置された下流側の検出センサとしての一例であり、第2搬送部20により搬送される搬送媒体Sの位置を検出する。媒体検出センサ60としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合、媒体検出センサ50と同様に光センサであり、発光部61と受光部62とを備え、搬送媒体Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを原理として搬送媒体Sを検出する。なお、本実施形態では、第2搬送部20の搬送方向上流側と下流側のそれぞれに媒体検出センサ50、60を配置したが、媒体検出センサ60だけでもよい。
<CISの配置>
【0028】
媒体検出センサ60よりも下流側にある画像読取ユニット70は、例えば、光学的に走査し、電気信号に変換して画像データとして読み取るものであり、内部にLED等の光源、イメージセンサ、レンズアレー等を備えている。本実施形態の場合、画像読取ユニット70は搬送路RTの両側に一つずつ配置されており、搬送媒体Sの表裏面を読み取る。しかし、搬送路RTの片側にのみ一つ配置して、搬送媒体Sの片面のみを読み取る構成としてもよい。また、本実施形態では、画像読取ユニット70を搬送路RTの両側に対向配置した構造としているが、例えば、搬送路RTの方向に間隔をあけて配置してもよい。また、2つの画像読取ユニット70のうち少なくとも一方を搬送媒体Sの厚み方向に移動可能に支持した構成であってもよい。例えば、一方の画像読取ユニット70は後述する下部ユニット104に固定し、もう一方の画像読取ユニットは後述する上部ユニット103の中で、搬送面に対して垂直な方向に移動可能に支持し、バネ等で付勢し対向の画像読取ユニット70に突き当てる。この構成にすることで、原稿が通過するとき上部ユニット103側の画像読取ユニット70が原稿の厚さに応じて移動するので、薄紙から厚紙までの画像読取が可能になる。
<ブロック図の説明>
【0029】
図2を参照して制御部80について説明する。
図2は画像読取装置Aの制御部8のブロック図である。
【0030】
制御部80はCPU81、記憶部82、操作部83、通信部84及びインターフェース部85を備える。CPU81は記憶部82に記憶されたプログラムを実行することにより、画像読取装置A全体の制御を行う。記憶部82は例えばRAM、ROM等から構成される。操作部83は、例えば、スイッチやタッチパネル等で構成され、操作者からの操作を受け付ける。
【0031】
通信部84は、外部装置との情報通信を行うインターフェースである。外部装置としてPC(パソコン)を想定した場合、通信部84としては、例えば、USBインターフェースやSCSIインターフェース、LANを挙げることができる。また、このような有線通信のインターフェースの他、通信部84は無線通信のインターフェースとしてもよく、有線通信、無線通信の双方のインターフェースを備えていてもよい。
【0032】
インターフェース部86はアクチュエータ85やセンサ87とのデータの入出力を行うI/Oインターフェースである。アクチュエータ86には、駆動部3、駆動部4、伝達部5等が含まれる。センサ87には、重送検出センサ40、媒体検出センサ50及び60、画像読取ユニット70等が含まれる。
<PCからの開始指示受信による駆動>
【0033】
画像読取装置Aの基本的な動作について説明する。制御部80は、画像読取装置に備わった、表示パネル90、タッチパネルまたはキースイッチ122などの操作画面から画像読み取りの開始指示を受信すると、第1搬送部10乃至第3搬送部30の駆動を開始する。載置台1に積載された搬送媒体Sはその最も下に位置する搬送媒体Sから1つずつ搬送される。
<重送時の制御>
【0034】
搬送の途中で搬送媒体Sは重送検出センサ40により重送の有無が判定され、重送が無いと判定されると搬送が継続される。なお、重送があると判定された場合には、搬送を停止するか、第1搬送部10による後続搬送媒体Sの取り込みを停止して、重送状態にある搬送媒体Sをそのまま排出するようにしてもよい。
<レジストセンサの出力に応じた読取開始>
【0035】
制御部80は、媒体検出センサ60の検出結果に基づくタイミングで、第2搬送部20により搬送されてきた搬送媒体Sの、画像読取ユニット70、70による画像の読み取りを開始し、読み取った画像を一次記憶して順次外部パソコンへ送信する。画像が読み取られた搬送媒体Sは第3搬送部30により排出トレイ2に排出されてその搬送媒体Sの画像読取処理が終了する。
<排紙構造>
【0036】
図3は本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの排出トレイ2を展開した状態の正面図である。
【0037】
装置本体の前面側を構成する上部ユニット103には、大型の表示パネル90が設けられている。また、正面上部の表示パネル90には表示画面93が設けられ、隣接した位置に操作キー122が設けられている。
【0038】
正面下部の下部パネル91には排出開口92が設けられており、第3搬送部30によって搬送された搬送媒体Sが排出される。
<給送構造詳細>
【0039】
図4は本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの排出トレイ2を収納した状態における上面図である。
【0040】
第1搬送部10の載置台1には、配置される搬送媒体Sの大きさに合わせて搬送方向に対して直交する方向にスライド可能に取り付けられた規制部材111が設けられている。
【0041】
図4に示す排出トレイ2の収納状態においては、上部ユニット103の表示パネル90が排出トレイ2によって覆われている。なお、上部ユニット103の載置台1側の上端部には、詳細は後述するが、搬送路RTを開閉するための操作アーム205が設けられている。<上部ユニット詳細>
【0042】
図5及び
図6は本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの概略断面図である。本体100は、上部ユニット103と下部ユニット104とから構成され、上部ユニット103は下部ユニット104に対し、本体ヒンジ105を支点として回動可能に取り付けられている。
【0043】
上部ユニット103は、表示パネル90に最大搬送路幅Wmaxを超える幅の表示画面93の支持フレーム板金を備えているため、
図6に示すように上部ユニット103を展開した状態における重心は、
図1に示すような上部ユニット103を収納した状態よりも搬送方向前方側に大きくずれることになる。
【0044】
したがって、上部ユニット103を展開する際に勢いがあると画像読取装置Aが転倒してしまう虞があるが、本実施形態に係る画像読取装置Aにおいては、突出部130を有することにより、上部ユニット103の展開に伴う重心移動が起こっても画像読取装置Aの転倒を防ぐことができる。突出部130の突出量は、
図5のような上部ユニット103及び排出トレイ2の収納状態においては、排出トレイ2の下方に収まるような突出量であって、
図6のような上部ユニット103の展開状態においては、画像読取装置Aの重心よりも搬送方向前方まで位置するような突出量となっている。これにより、上部ユニット103の展開による画像読取装置Aの転倒を防止しつつ、排出トレイ2を収納した収納状態においては必要以上に突出させず、ユーザーの邪魔にならないようにすることができる。<上部ユニットのアース>
【0045】
図7及び
図8は本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの上部ユニット103が下部ユニット104に収納された状態における、給紙部近傍の拡大図である。
【0046】
上部ユニット103を収納する際に勢いよく回動させると、上部ユニット103が下部ユニット104側に接触する際に大きな衝撃が加わり、大きな音が発生してしまうなどすることがある。本実施形態に係る画像読取装置Aにおいては、上部ユニット103を収納状態で保持するロック部材201が設けられ、このロック部材201の近傍には導電性の上部弾性部材140が設けられている。上記ロック部材201は、
図8に示すように下部ユニット104に備わったフック部202と係り合うフック爪203を備え、引っ張りばね204によって前記フック爪203がフック部202に係合する方向(矢印a方向)に力を受けており、フック部202とフック爪203が掛り合うことで上部フレーム103が収納状態を維持している。ロック部材201の操作アーム205を矢印b方向に動かすことで、フック部202からフック爪203が外れ、上部ユニット103が本体ヒンジ105(
図5参照)を支点として開方向に回動することが可能になる。上部弾性部材140は、例えばトーションバネのような線バネを用いており、上部ユニット103を矢印c方向に押し上げる十分な力を備えている。
【0047】
上部ユニット103が収納状態となる際に、上部弾性部材140が下部ユニット104側に設けられた接点部141に弾性付勢されながら収納状態となる。
【0048】
接点部141の一部には傾斜が設けられ、上部ユニット103が収納状態の時には、上部弾性部材140が傾斜部に当接し、フック部202とフック爪203の掛りが外れたときに上部ユニット103を押し上げやすくなっている。
【0049】
ここで、上部弾性部材140の付勢前の状態を点線で示し、付勢後の状態を実線で示す。すなわち、距離eが上部弾性部材の変位量(たわみ量)となる。一方、フック部202とフック爪203との掛かり量は、fとなる。前記たわみ量と掛かり量の関係はe>fであり、掛かりが外れたときには、上部ユニット103を距離eだけ押し上げることが可能となる。
【0050】
上部弾性部材140の上部ユニット103に取り付けられる側の端部は、上部ユニット103内に設けられた電装部品のグランド側と導通しており、上部弾性部材140が接点部141に接触することによって下部ユニット104内に配置された電装部品のグランド側に導通される。したがって、上部ユニット103の収納状態において、上部弾性部材140を介してアースを取ることができる。
【0051】
図9に本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの上部ユニット103の搬送路RT側から見た正面図を示す。
【0052】
図9に示すように、前記上部弾性部材140は、前記ロック部材201と共に原稿搬送面の原稿搬送路外に配置されると共に原稿搬送路を挟んで搬送方向に対して垂直方向であって、かつ上部ユニット103の幅方向両側に位置する。これにより、上部ユニット103を勢いよく収納した際にも上部ユニット103両側で弾性部材が図中の左右で均等にたわんで、上部ユニット103に瞬間的なねじれなど変形が発生するのを防止しするとともに、衝撃が上部弾性部材140により緩和されることで内部にある電装部品の保護を行うことが出来る。特に上部ユニット103に前述したように表示パネル90上の表示画面93や隣接した位置に操作キー122などを備えた場合には、上部ユニットの103の重量が重くなるばかりでなく衝撃に弱い部品が多いため電装部品にかかる衝撃緩和を行うことは必須になる。
【0053】
前記上部弾性部材140は、本体ヒンジ105から離れたロック部材150近傍に配置することで、付勢時の荷重のばらつきが少なくなり、左右均等に衝撃の緩和が可能となる。
【0054】
図10は、本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの装置断面図において上部弾性部材140の電気的な接続の状態を示す図である。
【0055】
上部弾性部材140の一端は、上部ユニット103の搬送路として備わった導電性の上部搬送ガイド13(例えば、金属鋼板)に接触している。前記上部搬送ガイド13は、後述する画像読取ユニット70を覆う上部金属製部材74と電気的に接続されており、下部ユニット104側に設けられた接点部141とも上部弾性部材140を介して電気的に接続されている。すなわち、上部搬送ガイド13と下部搬送ガイド14(例えば金属鋼板)とが、上部ユニット103が下部ユニット104に対して収納状態のときに、上部弾性部材140により電気的に導通している。
【0056】
図11に本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの下部フレーム104の搬送路RT側から見た正面図を示す。
【0057】
搬送路を形成する導電性の下部搬送ガイド14の一部が接点部141となっている。接点141は、搬送媒体Sの搬送可能範囲より外側に位置し、前記ロック部材201も同様に搬送媒体Sの搬送可能範囲より外側にある。
【0058】
本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aでは、搬送媒体Sの搬送により発生する静電気が前記上部搬送ガイド13と下部搬送ガイド14に流れ上部搬送ガイド13へ流れた電荷は上部弾性部材140により下部搬送ガイド14に流れる。さらに、上部弾性部材140が搬送方向に対して垂直方向に搬送路RTを挟んだ両側に配置され、接点部141と接触していることで、静電気による電荷の移動が一方向に片寄ることがなくなるため、電荷の移動により発生する電磁波の変化が原因で前記画像読取ユニット70の信号にノイズが入り、誤動作することを防ぐことも可能となる。
【0059】
上部弾性部材140の付勢力により上部ユニット103が押し上げられるが、好ましくは、ユーザーの指が押し上げられたスペースに入り込む程度にすることが好適である。その場合、上部弾性部材140の変位量としてある程度必要となり、それに伴って接点部141としても搬送方向D1と平行な方向にある程度の長さを確保する必要がある。本実施形態においては、搬送路の両脇の、幅方向としては狭い領域ではありながら、搬送方向D1方向にはある程度の領域を確保できる部分に対して上部弾性部材140を当接させることによって、上部ユニット103を所望の高さ浮き上がらせることができると同時に、電気的な接触も行うことで上部ユニット103と下部ユニット104の導通を取ることができる。さらに、搬送路の両脇に対して電気的な接点を取ることにより、搬送媒体Sが静電気により帯電していたとしても、上部ユニット103または下部ユニット104の両方に対して電気的に静電気が逃げやすい構成とすることができ、下部ユニット104内で静電気の処理を行うよりも、装置全体として有効な静電気等への対策を取ることができる。<CISユニットのアース>
【0060】
図12は本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの装置断面図において電気的な接続の状態を示す図である。
【0061】
画像読取ユニット70は、内部にコンタクトイメージセンサ(以下、CIS)71が設けられている。
【0062】
画像読取ユニット70は、下部ユニット104の収容部77aに挿入される際に、下部ユニット104側から突出した金属製の下部弾性部材75を付勢しながら挿入され、収容完了位置において、嵌合固定される。下部弾性部材75は、下部搬送ガイド14に導通している。
【0063】
画像読取ユニット70の下面は下部金属製部材76で覆われており、画像読取ユニット内部のCIS71などの電装部品が静電気から保護されている。金属製部材76で下部弾性部材75を付勢しながら挿入されることで、画像読取ユニット70は下部ユニット104に対しアースされる。
【0064】
前記画像読取ユニットの70のもう一方は、搬送路RTを挟んで略対向した位置に配置され、上部ユニット103の上部金属製部材74が備わった収納部77bに移動可能に収納されCIS71などの電装部品が静電気から保護されている。前記上部金属製部材74は、弾性部を有しており、前記上部搬送ガイド13に前記弾性部を押し当てることで電気的に接続されている。弾性部の代わりに導電性の部材(例えばトーションバネ)などを用いて接続されていても良い。
【0065】
また、前記上部金属製部材74は、上部ユニット103の下流にある除電ブラシ79と金属製部材78を介して電気的に接続されている。除電ブラシ79は、搬送媒体S表面に帯電した静電気を除電する。除電された電荷は、金属製部材78から上部金属製部材74を通して上部搬送ガイド13に導通し上部弾性部材140を介して下部ユニット104のアース部に流れる。
【0066】
以上より搬送媒体Sによって上部側に発生した静電気と搬送媒体S上に発生した静電気は、除電ブラシ79から各導電性部材を電気的に接続することで上部弾性部材140によって下部ユニット104側に導通することが可能となる。
【0067】
なお、上部搬送ガイド13、上部金属製部材74、金属製部材78は全て同一の部品で成り立っても良い。
【0068】
また、前記上部金属製部材74は、導電性部材401a、導電性部材401bを介して、上部ユニット103に備わる表示パネル90内の電装部品(例えば、表示画面93や操作キー122や各種センサの検知信号を制御する基板など)にも電気的に接続することでアースを取っている。<その他下部ユニットの構成>
【0069】
下部ユニット104は、上述したように、上部ユニット103の一方端側を回転可能に取り付けるための本体ヒンジ105で接続し、上部弾性部材140の反発力によって他方端側が開方向に回動するのを防ぐために、上部フレーム103に備わったロック部材201と掛り合うことで、前記上部フレーム103が収納状態を維持できるフック部202を備えている。
【0070】
また、搬送媒体Sを搬送するためのアクチュエータ86、駆動ローラ21、31、下部搬送ガイド14、画像読取ユニット70の収納部77、アクチュエータ86を制御する通信部84、支持フレーム301、制御部80などを下部ユニット104内部に備えている。
【0071】
下部ユニット104に取付けられた第1の導電性部材としての下部搬送ガイド14の上流側の一端は、
図12に示すように、第2の導電性部材としてのコイルバネ302が付勢しており、下流側の一端は下部弾性部材75を介して下部金属製部材76と接続している。コイルバネ302は、下部搬送ガイド14に付勢している側とは反対側を第3の導電性部材としての支持フレーム301によって付勢され、下部金属製部材76、下部搬送ガイド14を支持フレーム301に電気的に接続している。
【0072】
以上より、搬送媒体Sによって下部側に発生した静電気は、下部金属製部材76から各電気的接続部を介して支持フレーム301に導通することが可能となる。支持フレーム301は電気基板605や不図示の制御基板などのグランド電位と同電位となるように接続され、各金属部間で電位差が生じないようになっており、静電気の帯電を防ぐことができる。また、このように各部品を接続して導通を取ることにより装置の放射ノイズも低減することができる。
【0073】
ここで、コイルバネ302の周辺の概略図として
図13と
図14に断面図を、
図15と
図16に斜視図を示す。
図13のように、コイルバネ302は下部ユニット104に設けた筒部601の中に収容されるように設けられ、支持フレーム301に設けた側板604(板部)と下部搬送ガイド14のそれぞれに圧接する。側板604は支持フレーム301と一体の部品であってもよい。
図15のように、筒部601の搬送路の反対側には部分的に開口する開口部603が設けられ、支持フレーム301の側板604が開口部603に入り込んでコイルバネ302を下部搬送ガイド14側に押し付ける。組立性の向上のため筒部601に設けた開口部603をスリットにしてもよく、また、開口部603の開口の大きさをコイルバネ302の直径より小さくしてもよい。
【0074】
この開口部603は後述するように別部品で設けてもよい。この構成によれば、後述の支持フレーム301の付け外し時にコイルバネ302が落下することを防止できる。
【0075】
支持フレーム301は電気基板605を固定し、電気基板605の放射ノイズを低減する部品である。電気基板605は顧客サービス等で交換が必要になる場合があり、支持フレーム301と一体で装置から付け外しが可能である。支持フレーム301の装置への組み付け作業の方法は、
図14、16のように電気基板605を固定した支持フレーム301のU形状部606に軸部602を差し込み、軸部602を中心に支持フレーム301を矢印g方向に側板604が開口部603の縁部に当接するまで回転し、
図13、15の状態にして下部ユニット104に固定する。支持フレーム301を取り外す方法はこの逆である。支持フレーム301を組み付けるとき軸部602をガイドにして回転して組めるので、開口部603に側板604を確実に差し込むことができる。
【0076】
また、下部搬送ガイド14に対して支持フレーム301としてはビスなどの固定構造を有さない構成であるが、U字形状部606の開放方向は支持フレーム301の延びる方向であり、下部搬送ガイド14を含む部材の自重により、下部搬送ガイド14と支持フレーム301とが嵌合する方向への荷重が加わるため、安定した固定がなされている。
【0077】
例えば、下部搬送ガイド14の材料には、摩耗しにくい材料としてステンレス板を使用し、支持フレーム301の材料には、比較的安価な材料として電気亜鉛めっき鋼板を使用してもよい。電気亜鉛めっき鋼板のめっきは電気抵抗が比較的高く導通しにくいため、上記の構成において電気亜鉛めっき鋼板を使用する支持フレーム301は、めっきが無い切断面をコイルバネ302と接触させることで導通させている。
【0078】
上記のコイルバネ302の構成は、上記従来の画像読取装置の搬送板の突出部のような部分が無いため、下部搬送ガイド14の展開時の面積を小さくでき、部品コストや金型コストを低減できる。また、装置の組立作業時に突出部を周辺の部品に引っ掛け、突出部を変形させる可能性が無くなるため組立性を向上でき、品質を安定できる。
【0079】
コイルバネ302の組み付け方法は、筒部601にコイルバネを落とし込むだけで良く、位置決めや引っ掛け等の行う必要がないので組立性を向上できる。
【0080】
また、上記のコイルバネ302を使う構成は、2つの板金(下部搬送ガイド14、支持フレーム301)の間を導通させるのはコイルバネ302であり、特許文献1のような板バネではないため金型コストが掛からず、製造コストを低減できる。また、コイルバネ302は特許文献1の板バネに比べてコイル径方向の部品寸法が小さくできるため、装置の小型化ができる。また、筒部601内部に挿入されるだけで良く、固定部を設ける必要がないため、構造的にも簡易であり、作業性も向上する。
【0081】
図17は、コイルバネ302周辺の詳細な断面図である。筒部601に形成された開口部603の中心軸を通る搬送方向D1と平行な面における断面図を表している。筒部601が、下部ユニット104に設けられた筒状の空間として形成されており、下部搬送ガイド14と接している。コイルバネ302を筒部601内に挿入する作業性を向上するために、下部ユニット104は、搬送路側の下部フレーム104aと、下部フレーム104aに対して搬送路の法線方向から取り付けられる下部ガイド104bとで構成されている。下部ガイド104bには開口部603の一例としてのスリットが設けてある。
【0082】
こうすることにより、下部フレーム104aと下部搬送ガイド14との取り付け後に、筒部601内にコイルバネ302を挿入し、それを覆うようにしてスリットを設けた下部ガイド104bを取り付けることによってコイルバネ302の脱落を簡易な構成で防ぐことが出来る。そしてスリットに対し側板604を挿入することにより、ビスなどの固定部材を用いることなく、支持フレーム301と下部搬送ガイド14との確実な導通を取ることが出来る。