特許第6697938号(P6697938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6697938
(24)【登録日】2020年4月30日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20200518BHJP
   F24C 3/12 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   A47J37/06 366
   F24C3/12 A
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-82332(P2016-82332)
(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公開番号】特開2017-189531(P2017-189531A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宏直
(72)【発明者】
【氏名】新美 亮子
(72)【発明者】
【氏名】古田 美咲
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−357753(JP,A)
【文献】 特開2014−200627(JP,A)
【文献】 特開2016−016041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
F24C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫と、
調理物が収容され、グリル庫に出し入れ自在に収納される調理容器と、
調理容器を加熱する上下バーナと、
グリル庫内の上方の庫内温度を検知する第1温度検知部と、
グリル庫内の下方であって、調理容器近傍の温度を検知する第2温度検知部と、
加熱調理時間を設定する調理時間設定部と、
上下バーナの火力を制御する制御装置と、を有する加熱調理器であって、
制御装置は、
加熱調理が開始されると、加熱調理開始から所定の負荷判定開始時間が経過するかまたは第1温度検知部で検知される庫内温度が所定の負荷判定開始温度に到達する負荷判定タイミングまで、上下バーナを所定の初期火力で燃焼させ、
負荷判定タイミングが到来すると、初期火力よりも加熱量が低くなるように、下火バーナを燃焼させた状態で、上火バーナを消火させるかまたは上火バーナの火力を弱めて燃焼させる所定の負荷判定火力に切替え、
負荷判定火力で調理容器を加熱したときの第2温度検知部で検知される庫内温度の温度特性に基づき、調理容器内の調理物の負荷を判定し、
調理物の負荷の判定に基づき、上下バーナの火力を制御する加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
負荷判定開始時間及び負荷判定開始温度は、加熱調理開始時の庫内温度に基づいて設定される加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理物を収容した調理容器をグリル庫内に収納し、加熱調理する容器調理が可能な加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調理物を加熱するグリル庫と、グリル庫内を加熱するグリルバーナとを有し、焼網を用いた調理以外に、調理物を収容したダッチオーブン等の調理容器をグリル庫内に収納し、加熱調理する容器調理が可能な加熱調理器が知られている。
【0003】
上記のような調理容器を用いた加熱調理では、調理容器内の調理物の調理の進行状態を確認できないため、予め設定された条件で調理物が加熱されるよう、グリルバーナの火力を増減させている。例えば、パンやケーキ等をダッチオーブンを用いて良好に焼き上げるために、加熱調理時間を設定する設定手段を設け、調理容器自体の加熱に必要な時間、上下バーナを燃焼させる初期加熱を行い、初期加熱後に、加熱調理時間に基づいて決定される所定の燃焼態様で上下バーナを燃焼させる加熱調理器が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−19827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、調理容器は調理物よりも熱容量が大きいため、調理物の調理の進行状態が庫内温度に反映され難い。そのため、一般に、調理容器を用いた加熱調理では、特許文献1のように設定される加熱調理時間に基づいてグリルバーナの火力を制御することが行われている。
【0006】
しかしながら、パンやケーキ等のように熱が通り易く負荷の小さな調理物だけでなく、グラタン等のように調理物全体を内部まで加熱するためにはある程度以上の火力が必要な負荷の大きな調理物も、調理容器を用いて加熱調理される。それゆえ、調理物の負荷の相違に関わらず、設定される加熱調理時間のみに基づいてグリルバーナの火力を変更すると、負荷の小さな調理物では、調理物の焼き過ぎが生じたり、負荷の大きな調理物では、不十分な加熱状態で調理が終了したりするという問題がある。判定時間を長時間、設定できれば、庫内温度に基づいて調理物の負荷を判定できるとも考えられるが、上記のように調理容器を用いた加熱調理では調理を終了させる加熱調理時間を設定しているため、設定された加熱調理時間よりも一定時間以上前に調理物の負荷を判定する必要がある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、調理容器に調理物を収容して加熱調理する場合に、調理容器内の調理物の負荷を判定し、調理物の負荷に応じて、調理物を過不足なく加熱し、食味の良好な調理物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
グリル庫と、
調理物が収容され、グリル庫に出し入れ自在に収納される調理容器と、
調理容器を加熱する上下バーナと、
グリル庫内の上方の庫内温度を検知する第1温度検知部と、
グリル庫内の下方であって、調理容器近傍の温度を検知する第2温度検知部と、
加熱調理時間を設定する調理時間設定部と、
下バーナの火力を制御する制御装置と、を有する加熱調理器であって、
制御装置は、
加熱調理が開始されると、加熱調理開始から所定の負荷判定開始時間が経過するかまたは第1温度検知部で検知される庫内温度が所定の負荷判定開始温度に到達する負荷判定タイミングまで、上下バーナを所定の初期火力で燃焼させ、
負荷判定タイミングが到来すると、初期火力よりも加熱量が低くなるように、下火バーナを燃焼させた状態で、上火バーナを消火させるかまたは上火バーナの火力を弱めて燃焼させる所定の負荷判定火力に切替え、
負荷判定火力で調理容器を加熱したときの第2温度検知部で検知される庫内温度の温度特性に基づき、調理容器内の調理物の負荷を判定し、
調理物の負荷の判定に基づき、上下バーナの火力を制御する加熱調理器である。
【0009】
上記加熱調理器によれば、加熱調理開始から所定の負荷判定開始時間が経過するかまたは庫内温度が所定の負荷判定開始温度に到達する負荷判定タイミングまでは、所定の初期火力で上下バーナを燃焼させるから、グリル庫内の庫内温度及び調理容器の温度を上昇させた状態からの温度特性を評価できる。
一方、調理容器の熱容量は調理物よりも大きいため、庫内温度及び調理容器の温度を上昇させる初期の加熱では調理物の負荷の相違によって庫内温度に大きな相違は生じ難い。しかしながら、上記加熱調理器によれば、上記負荷判定タイミングが到来すると、上下バーナの火力を、初期火力よりも加熱量が低くなるように、下火バーナを燃焼させた状態で、上火バーナを消火させるかまたは上火バーナの火力を弱めて燃焼させる所定の負荷判定火力に切替えるから、庫内温度の温度特性に基づいて調理物の負荷を判定できる。すなわち、負荷の小さな調理物の場合、初期の加熱によって調理容器の温度がある程度上昇していれば、上下バーナの火力を初期火力よりも加熱量の低い負荷判定火力に変更しても、庫内温度の温度変化は小さい。これに対し、負荷の大きな調理物の場合、初期の加熱によって調理容器の温度はある程度上昇しているが、調理容器内の調理物は内部まで十分に加熱されていないから、上下バーナの火力を初期火力よりも加熱量の低い負荷判定火力に変更すると、庫内温度の温度変化は負荷の小さな調理物のそれよりも大きくなる。また、負荷判定火力では、下火バーナの燃焼は継続させるから、過度に庫内温度が低下することもない。従って、上下バーナの火力を、初期火力よりも加熱量の低い負荷判定火力に切替えたときの庫内温度の温度特性を評価することにより、調理容器内の調理物の負荷を判定できる。これにより、設定される加熱調理時間内に、判定される調理物の負荷に応じて、上下バーナの火力を制御できる。
【0011】
また、初期の加熱により調理容器の温度が上昇すると、グリル庫内全体の温度が上昇するから、グリル庫の上方の温度を検知する第1温度検知部で検知される庫内温度に基づいて負荷判定開始温度を判定することにより、調理容器が確実に所定温度以上に加熱されたときに負荷判定を開始させることができる。
一方、調理物の負荷を判定する場合、上火バーナを消火させるかまたは上火バーナの火力を弱めるから、グリル庫内の上方の庫内温度は温度降下が顕著となり、調理物の負荷が判定し難くなる場合がある。しかしながら、上記加熱調理器によれば、調理物の負荷を判定する場合、下火バーナは燃焼させるから、グリル庫の下方であって、調理容器近傍の庫内温度の温度変化を第2温度検知部でより正確に検知できる。
【0012】
上記加熱調理器において、好ましくは、
負荷判定開始時間及び負荷判定開始温度は、加熱調理開始時の庫内温度に基づいて設定される。
【0013】
加熱調理開始時の庫内温度(以下、「初期温度」という)が低温の場合と高温の場合とでは、上下バーナを一定の火力で燃焼させても温度特性が異なってくるから、上記加熱調理器によれば、グリル庫を用いた調理を連続して行う場合でも、正確に調理物の負荷を判定できる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、調理容器内に調理物を収容した容器調理が可能な加熱調理器において、設定された加熱調理時間内で調理物の負荷を正確に判定できる。従って、調理物の負荷の判定に基づいて上下バーナの火力を制御すれば、調理物の負荷に応じて適切に調理物を加熱できる。これにより、調理の過不足を低減して、食味の良好な調理物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の一例を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1の加熱調理器の概略縦断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の操作部の一例を示す説明図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の一例を示す回路図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器において、負荷の大きな調理物を加熱調理する場合の加熱時間と庫内温度との関係を示す相関図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器において、負荷の小さな調理物を加熱調理する場合の加熱時間と庫内温度との関係を示す相関図である。
図7図7は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器で加熱調理する場合の制御動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本実施の形態に係る加熱調理器を具体的に説明する。
図1は、ガスコンロに適用した本実施の形態の加熱調理器の一例を示す概略斜視図であり、図2は、その概略縦断面図である。図1に示すように、ガスコンロは、天板30の上面に複数のコンロバーナ31,32,33を備え、コンロ本体3の内部には、グリル庫2が設けられている。グリル庫2内には、例えば、焼網(図示せず)や、ダッチオーブンのような金属製や陶器製の調理容器5等の調理器具が収納される。天板30上面の前方には、運転状態や調理モード、さらに調理条件等を表示する液晶表示部300が配設されており、表示盤が視認できるように構成されている。なお、本明細書では、グリル扉21とグリル庫2の奥側とが対向する方向を前後方向、グリル庫2の幅方向を左右方向、グリル庫2の高さ方向を上下方向という。
【0017】
図2に示すように、グリル庫2の前面開口部100には、前後にスライド開閉するグリル扉21が設けられている。グリル扉21の後面部下方には、グリル庫2内へ向かって連結板210が延設されており、連結板210に、汁受け皿16を載置した金属製の線材からなる支持枠18が連結されている。支持枠18には、前後辺をそれぞれ上方に突出させ、焼網や調理容器5を設置するための容器支持体19を下方から支持する前後の支持部180が設けられている。容器支持体19は、略矩形状の金属製の枠体であり、支持枠18の前後の支持部180に容器支持体19の前後部を載置させた状態で、容器支持体19の枠体内に調理容器5を落とし込み、左右の支持枠部に調理容器5本体の左右の把持部を載置させることにより、グリル庫2内で調理容器5が所定位置に設置される。これにより、グリル扉21を手前に引くことで、調理容器5及び汁受け皿16がグリル庫2の前方に引き出され、グリル扉21を後方に押すことで、調理容器5及び汁受け皿16がグリル庫2内に収納されるように構成されている。
【0018】
グリル庫2内の上壁の中央部には、調理容器5を上方から加熱するための上火バーナ56が設けられている。また、グリル庫2内の左右の側壁の中央部より下方位置には、調理容器5を側方及び下方から加熱するための下火バーナ55が設けられている。なお、下火バーナ55は、一方の側壁にのみ設けられてもよい。グリル庫2の奥端には排気ダクト17が連設されており、排気ダクト17が排気通路13となっている。
【0019】
グリル庫2の後壁の左右中央部には、感熱部がグリル庫2の内方に突出する第1温度センサ(第1温度検知部)14aが配設されており、その下方であって、第1温度センサ14aよりも前方に感熱部が突出するように第2温度センサ(第2温度検知部)14bが配設されている。これら第1及び第2温度センサ14a,14bにより、グリル庫2内の庫内温度が検知され、庫内温度の検知信号は後述する制御装置Cに出力される。
【0020】
図1に戻って、グリル扉21の右側に位置する操作部23には、電源スイッチ29とコンロバーナ31,32,33の点・消火と火力調整機能を兼備した点消火スイッチ24,25,26が配設されている。一方、グリル扉21の左側に形成された操作部36には、上下バーナ56,55の点・消火と火力調整機能を兼備したグリル用スイッチ37と、その下方にカンガルー式の操作ユニット38とが設けられている。
【0021】
図3に示すように、操作ユニット38には、タッチパネル式の操作部380が設けられている。操作部380には、例えば、グリル庫2内に調理物を収容した調理容器5を収納し加熱調理する容器調理モードを選択するためのオートメニュースイッチ381と、容器調理モードの中から加熱調理時間を設定したタイマ調理を行ったり、調理の種類を選択したりするための調理選択スイッチ382と、容器調理モードでタイマ調理を行う場合の加熱調理時間を設定するための調理時間設定スイッチ383と、表示部384とを備えている。例えば、調理容器5としてダッチオーブンを用い、加熱調理時間を設定したタイマ調理を行う場合、使用者がオートメニュースイッチ381を操作すると、複数の調理モードの中からココットやダッチオーブンを用いた容器調理モードが択一的に選択されて表示部384に点灯表示される。また、使用者が容器調理モードを選択した後、調理選択スイッチ382を操作するごとに、タイマ設定の他、グラタン、パン・ケーキ等の調理の種類が択一的に選択されて表示部384に点灯表示される。さらに、使用者がタイマ調理を選択した後、調理時間設定スイッチ383を操作するごとに、加熱調理時間が1分間隔で増減されて表示部384に点灯表示される。従って、本実施の形態では、オートメニュースイッチ381、調理選択スイッチ382、及び調理時間設定スイッチ383が、調理時間設定部として機能する。
【0022】
図4は、本実施の形態のガスコンロの回路図である。なお、制御装置Cは、上下バーナ56,55だけでなく、コンロバーナ31,32,33の燃焼も制御するが、以下では上下バーナ56,55についてのみ説明し、コンロバーナ31,32,33については説明を省略する。
【0023】
図4に示すように、上下バーナ56,55にはそれぞれ、ガス供給管550から分岐した分岐管551,561が接続されており、ガス供給管550には、元弁V1、ガバナG、及び電磁安全弁V2が介設されている。分岐管551,561にはそれぞれ、図示しないステッピングモータの作動によってオリフィスを調整して燃料ガスの流量を変更する火力調整板S1,S2が設けられており、火力調整板S1,S2の下流側にはラッチ弁V3,V4が設けられている。これらの元弁V1、電磁安全弁V2、ラッチ弁V3,V4や、ステッピングモータは、制御装置Cでその動作が制御される。具体的には、元弁V1及び電磁安全弁V2を開閉させると、上下バーナ56,55の両方に燃料ガスが供給または停止される。また、ステッピングモータを作動させて火力調整板S1,S2のオリフィスを調整することにより、上下バーナ56,55の火力がそれぞれ強火力と弱火力との間で変更される。さらに、ラッチ弁V3,V4を閉弁させることにより、上下バーナ56,55への燃料ガスの供給がそれぞれ遮断される。また、上下バーナ56,55の各炎孔近傍には、イグナイタ600から高電圧を印加させることによって火花放電する点火電極501,601と、炎センサ502,602とが配設されている。
【0024】
制御装置Cには、上記第1及び第2温度センサ14a,14b、電源スイッチ29、グリル用スイッチ37、元弁V1、電磁安全弁V2、ステッピングモータ、ラッチ弁V3,V4、液晶表示部300、操作部380、イグナイタ600、及び炎センサ502,602などが電気配線を介して接続されている。
【0025】
図示しないが、グリル庫2を制御する制御装置Cには、CPU、ROM、RAM、タイマ等を備え、制御プログラムが格納されたマイクロコンピュータが組み込まれている。マイクロコンピュータは、容器調理モードが選択された場合、制御プログラムに従って、上下バーナ56,55の火力を制御する。また、制御装置Cは、機能構成として、容器調理モードが選択された場合に、元弁V1、電磁安全弁V2、ステッピングモータ、及びラッチ弁V3,V4を作動させて上下バーナ56,55の火力を制御する燃焼制御部、初期温度を判定する初期温度判定部、庫内温度に基づいて調理物の負荷を判定する負荷判定部などを有している。また、マイクロコンピュータのメモリには、容器調理モードが選択された場合に、選択された条件、初期温度、及び調理物の負荷判定に基づいて設定される上下バーナ56,55の所定の火力や、初期火力切替時間、初期火力切替温度、負荷判定開始時間、負荷判定開始温度等のデータテーブルが格納されている。
【0026】
表1は、容器調理モードでダッチオーブンを用いたタイマ調理が選択された場合に設定されている第1及び第2初期火力、初期火力切替時間、初期火力切替温度、負荷判定開始時間、負荷判定開始温度、及び負荷判定で大きな負荷の調理物と判定された場合に設定される火力の各設定値を含むデータテーブルの一例である。なお、これらの設定値は、実験により求められたものである。
【0027】
【表1】
【0028】
図5及び図6はそれぞれ、表1の初期温度が低温(20℃)の場合の各設定値を用いて、負荷の異なる調理物を収容したダッチオーブンをグリル庫2内に収納してタイマ調理を行った場合の加熱時間に対する庫内温度の温度変化であり、図5は、負荷の大きな調理物であるグラタンの場合の温度変化を、図6は、負荷の小さな調理物であるじゃがいもの場合の温度変化を示す。各図中、実線は、第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiの温度変化を、破線は、第2温度センサ14bで検知される庫内温度Tjの温度変化を示す。なお、上下バーナ56,55をいずれも消火させる全体の加熱調理時間は、図5の負荷の大きな調理物の場合、1680秒が設定され、図6の負荷の小さな調理物の場合、1500秒が設定されている。
【0029】
表1並びに図5図6を参照して、本実施の形態のガスコンロにおける制御動作を概略的に説明すると、加熱調理開始初期には、まず上下バーナ56,55の火力を第1初期火力P1(例えば、上下バーナ56,55いずれも強火力)とし、加熱調理開始からの加熱時間txが所定の初期火力切替時間t1を経過するかまたは第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiが所定の初期火力切替温度T1に到達すると、上下バーナ56,55の火力を第2初期火力P2(例えば、上火バーナ56を強火力、下火バーナ55を弱火力)に切替える。このように、負荷判定の開始前に一定条件の加熱を行うことにより、グリル庫2内及び調理容器5の温度がそれぞれ一定温度に上昇した状態からの庫内温度の温度特性を評価できる。また、加熱調理開始初期に上下バーナ56,55をいずれも強火力で燃焼させ、負荷判定開始前に上下バーナ56,55の火力を第2初期火力P2に弱めれば、第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiの温度勾配が緩やかになるため、オーバーシュートが防止され、より正確に調理物の負荷を判定できるだけでなく、調理容器5の内壁のコーティングの劣化も防止できる。また、図5及び図6では、初期温度T0が低温の場合の温度変化のみが示されているが、初期温度T0が低温の場合と高温の場合とでは、上下バーナを56,55を一定の火力で燃焼させても庫内温度の温度特性が異なってくる。このため、本実施の形態では、表1に示すように、初期温度T0に応じて初期火力切替時間t1等が設定されている。これにより、グリル庫2を用いた加熱調理を連続して行う場合でも、より一層、正確に調理物の負荷を判定できる。
【0030】
なお、上下バーナ56,55を第1及び第2初期火力P1,P2で燃焼させたときの第1及び第2温度センサ14a,14bで検知される庫内温度Ti,Tjを図5及び図6で比較すると、例えば、加熱調理開始から300秒後の庫内温度Tiはいずれの場合も、150℃程度、庫内温度Tjはいずれの場合も、60℃程度であり、負荷判定開始前の720秒後の庫内温度Tiはいずれの場合も、240℃程度、庫内温度Tjはいずれの場合も、120℃程度である。また、それらの温度勾配も、図5及び図6で略同様であることが分かる。従って、調理容器5内の調理物の負荷は異なっていても、第1及び第2温度センサ14a,14bで検知される庫内温度Ti,Tjの温度特性は、初期の加熱で明確な差が生じないことが分かる。これは、初期の加熱は、主として熱容量の大きな調理容器5の温度を上昇させるのに使用されるため、調理容器5よりも熱容量の小さい調理物の負荷の差が現れ難いためである。
【0031】
このため、本実施の形態では、加熱調理開始からの加熱時間txが所定の負荷判定開始時間taを経過するかまたは第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiが所定の負荷判定開始温度Taに到達する負荷判定タイミングが到来すると、上下バーナ56,55の火力を、第2初期火力P2の加熱量よりも低い、負荷判定火力Pa(例えば、上火バーナ56を消火、下火バーナ55を弱火力)に切替える。このとき、第1温度センサ14aはグリル庫2内の上方の庫内温度Tiを検知しているため、上火バーナ56を消火させた負荷判定火力Paに切替えることにより、図5及び図6に示すように、庫内温度Tiはいずれの負荷の調理物でも顕著に低下する。そのため、第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiでは調理物の負荷を判定することは難しい。しかしながら、第1温度センサ14aよりも下方に配設され、より調理容器5近傍の温度を検知可能な第2温度センサ14bで検知される庫内温度Tjの温度変化は、負荷の相違によって異なる。
【0032】
すなわち、図5の負荷の大きな調理物の場合、上火バーナ56が消火された負荷判定火力Paに切替えられると短時間で庫内温度Tjが低下してくるのに対し、図6の負荷の小さな調理物の場合、上火バーナ56が消火された負荷判定火力Paに切替えられても、庫内温度Tjの温度変化は小さい。これは、負荷の大きな調理物では、初期の加熱によって調理容器5の温度は上昇しているが、調理物全体は内部まで十分に加熱されておらず、第2初期火力P2よりも加熱量の低い負荷判定火力Paに切替えると、庫内温度Tjが低下しやすいためである。これに対し、負荷の小さな調理物の場合、調理容器5の温度がある程度上昇していれば、上下バーナ56,55の火力を負荷判定火力Paに弱めても、庫内温度Tjは殆ど変化しないためである。特に、上火バーナ56を消火させ、下火バーナ55を弱火力で燃焼させる負荷判定火力Paとすることにより、庫内温度Tjの過度の温度降下を抑えつつ、調理物の負荷の相違を明確にできる。従って、例えば、負荷判定開始時の第2温度センサ14bで検知される庫内温度Tjを基準判定温度Tkとし、負荷判定開始後、設定された加熱調理時間が終了するまでの間に、第2温度センサ14bで検知される庫内温度Tjが基準判定温度Tk未満になるかどうかから、調理物の負荷を判定できる。そして、上記負荷判定に基づき、上下バーナ56,55の火力を制御すれば、調理物の負荷に応じた加熱調理を行うことができる。本実施の形態では、負荷の大きな調理物の場合、上下バーナ56,55の火力を、負荷大火力Pb(例えば、上火バーナ56を強火力で再点火、下火バーナ55を弱火力)に切替える。これにより、負荷の大きな調理物でも、調理物の内部まで十分に加熱できる。また、本実施の形態では、庫内温度Tjが基準判定温度Tk未満になるかどうかのみに基づいて調理物の負荷の判定を行っているため、図6に示すように、負荷の小さな調理物である場合、設定された加熱調理時間が終了するまで上下バーナ56,55の火力は負荷判定火力Paが維持される。このため、表1では、負荷判定後の火力として負荷の大きな調理物と判定された場合の負荷大火力のみが設定されているが、調理物の種類や上下バーナ56,55の燃焼能力等に応じて、負荷の小さな調理物と判定された場合でも、上下バーナ56,55の火力を負荷判定火力Paと異なる火力に切替えてもよい。また、負荷の大きな調理物の場合も、負荷大火力Pbとして、例えば、上火バーナ56を弱火力で燃焼させてもよいし、下火バーナ55を強火力で燃焼させてもよい。さらに、負荷判定に基づいて、加熱調理時間が終了するまでに、複数段階で上下バーナ56,55の火力を切替えてもよい。
【0033】
図7は、本実施の形態のガスコンロにおける、容器調理モードでダッチオーブンを用いたタイマ調理が選択された場合の制御動作の一例を示すフローチャートである。
まず、オートメニュースイッチ381で容器調理モードの選択を受け付け、さらに調理選択スイッチ382でタッチオーブンを用いたタイマ調理が選択され、調理時間設定スイッチ383で加熱調理時間が設定されて、グリル用スイッチ37がオンされると、上下バーナ56,55が点火されて、所定の第1初期火力P1で加熱が開始される(ステップST1〜ST5)。
【0034】
加熱が開始されると、タイマを起動し、初期温度T0が読み込まれ、初期温度T0に応じた、初期火力切替時間t1、初期火力切替温度T1、負荷判定開始時間ta、負荷判定開始温度Ta、第2初期火力P2、負荷判定火力Pa、負荷大火力Pb等の各種設定値が読み込まれる(ステップST6〜ST7)。
【0035】
加熱時間txが所定の初期火力切替時間t1を経過するかまたは第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiが所定の初期火力切替温度T1に到達すると、上下バーナ56,55の火力を、第1初期火力P1よりも加熱量が低い第2初期火力P2に弱める(ステップST8〜ST10)。
【0036】
次いで、加熱時間txが所定の負荷判定開始時間taを経過するかまたは第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiが所定の負荷判定開始温度Taに到達する負荷判定タイミングが到来すると、上下バーナ56,55の火力を、第2初期火力P2よりも加熱量が低い負荷判定火力Paに弱めるとともに、第2温度センサ14bで検知される庫内温度Tjを基準判定温度Tkとして記憶する(ステップST11〜ST14)。
【0037】
そして、設定された加熱調理時間が終了するまでに、第2温度センサ14bで検知される庫内温度Tjが基準判定温度Tk未満になるかどうかを判定する(ステップST15及びST19)。加熱調理時間が終了するまでに庫内温度Tjが基準判定温度Tk未満になった場合(ステップST15で、Yes)、負荷の大きな調理物が調理されていると判定して、上下バーナ56,55の火力を負荷大火力Pbとする(ステップST16)。一方、加熱調理時間が終了するまでに庫内温度Tjが基準判定温度Tk未満にならなければ(ステップST15で、No、ステップST19で、Yes)、負荷判定火力Paが維持される。
【0038】
以上のように、本実施の形態のガスコンロによれば、調理物を収容した調理容器5をグリル庫2内に収納して加熱調理する場合に、グリル庫2の庫内温度に基づいて調理物の負荷を判定するから、判定された調理物の負荷に基づいて上下バーナ56,55の火力を制御できる。従って、調理物の負荷に応じて適切に加熱調理できる。これにより、調理の過不足を低減し、食味の良好な調理物を提供できる。
【0039】
また、上記実施の形態のガスコンロでは、負荷判定開始温度はグリル庫2の上方の温度を検知する第1温度センサ14aで検知される庫内温度に基づいて判定するから、調理容器5が確実に所定温度以上に加熱されたときに負荷判定を開始させることができる。さらに、上記実施の形態のガスコンロでは、調理物の負荷を判定する場合、下火バーナ55は燃焼させるから、グリル庫2の下方であって、調理容器5近傍の庫内温度の温度変化を第2温度センサ14bでより正確に検知できる。従って、確実に調理物の負荷を判定できる。
【0040】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、温度検知部として第1及び第2温度センサが用いられているが、調理物の負荷を判定できれば、いずれか一方の温度センサを用いてもよいし、単一の温度センサを用いてもよい。
(2)上記実施の形態では、調理物の負荷の判定するために、負荷判定開始時の庫内温度を基準判定温度特性として用いているが、所定時間内の温度勾配や負荷判定開始時の庫内温度とは異なる特定の判定温度を基準判定温度特性として用いてもよい。
(3)上記実施の形態では、調理物の負荷を大小のみに分類して判定しているが、庫内温度の温度特性から3種類以上の負荷に分類してもよい
(4)上記実施の形態では、加熱調理時間をタイマ設定により行っているが、オートメニュー調理で調理の種類を選択することにより加熱調理時間が設定されてもよい。これによれば、同一種類の調理であっても、調理量の相違による調理の過不足を低減できる。
【符号の説明】
【0041】
2 グリル庫
5 調理容器
14a 第1温度センサ
14b 第2温度センサ
55 下火バーナ
56 上火バーナ
381 オートメニュースイッチ
382 調理選択スイッチ
383 調理時間設定スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7