特許第6698030号(P6698030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローディア オペレーションズの特許一覧

<>
  • 特許6698030-無機複合酸化物およびその製造方法 図000005
  • 特許6698030-無機複合酸化物およびその製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6698030
(24)【登録日】2020年4月30日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】無機複合酸化物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 25/02 20060101AFI20200518BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20200518BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20200518BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20200518BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20200518BHJP
   B01J 23/10 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   C01G25/02ZAB
   B01J37/03 B
   B01J32/00
   B01J35/10 301F
   B01D53/94 222
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   B01J23/10 A
【請求項の数】26
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-560882(P2016-560882)
(86)(22)【出願日】2014年12月23日
(65)【公表番号】特表2017-502917(P2017-502917A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】US2014072179
(87)【国際公開番号】WO2015100339
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年12月19日
(31)【優先権主張番号】61/920,183
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チャオ, チアン
(72)【発明者】
【氏名】サウスワード, バリー ダブリュ.エル.
(72)【発明者】
【氏名】フランシス, フランシス
(72)【発明者】
【氏名】オカンポ, ファビアン
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0211148(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/062842(WO,A1)
【文献】 特開2000−271480(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0129690(US,A1)
【文献】 特表昭63−503535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00−99/00
B01D 53/73−53/96
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(I)で表される無機複合酸化物の形成方法であって、
(Al(CeO(ZrO(M(M’x’y’(M’’x’’y’’ (I)
(式中、
、M’x’y’、M’’x’’y’’のそれぞれは、Y、La、Nd、Pr11、Gdから独立して選択される2成分酸化物であり;
係数a、b、c、d、e、およびfは、それぞれの2成分酸化物のそれぞれのモル量を反映し、ここで:
35≦a≦97、
0<b≦50、
0<c≦60、
0≦d≦14、
0≦e≦14、および
0≦f≦14であり、
ただし:
M、M’、およびM’’のうち2つが同じ元素であることはなく、
d+e+fの合計は、14以下である)
前記方法が、
少なくとも5分間にわたって5〜6.75の実質的に一定のpHで、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とを組み合わせて沈澱物組成物を形成する工程であって、前記酸性前駆体組成物が、アルミナ前駆体、セリア前駆体、ジルコニア前駆体および任意選択的に1つもしくは複数のドーパント前駆体を含む工程と;
前記沈澱物組成物のpHを8〜10に増加させることによって前記沈澱物を安定化させる工程と;
前記安定化された沈澱物をか焼して無機複合酸化物を形成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記実質的に一定のpHが、前記酸性前駆体組成物、前記塩基性組成物または両方の流量を管理することによって維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記実質的に一定のpHが、前記酸性前駆体組成物、前記塩基性組成物または両方の濃度を管理することによって維持される、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記酸性前駆体組成物と前記塩基性組成物とが、5分〜120分間にわたって5.5〜6.5の実質的に一定のpHで組み合わせられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸性前駆体組成物と前記塩基性組成物とが、30分〜90分間にわたって5.5〜6.5の実質的に一定のpHで組み合わせられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸性前駆体組成物と前記塩基性組成物とが、5分〜120分間にわたって6.5の実質的に一定のpHで組み合わせられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸性前駆体組成物と前記塩基性組成物とが、30分〜90分間にわたって6.5の実質的に一定のpHで組み合わせられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組み合わせる工程における前記沈澱物組成物の前記pHが、0.25を超えて変動しない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組み合わせる工程における前記沈澱物組成物の前記pHが、0.1を超えて変動しない、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸性前駆体組成物と前記塩基性組成物とが、50℃〜200℃の温度で組み合わせられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記沈澱物が、前記沈澱物組成物の前記pHを8〜9に増加させることによって安定化される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記沈澱物組成物を15分〜6時間にわたって50℃〜200℃の温度に加熱する工程をさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記沈澱物が、2〜4時間にわたって600〜1100℃の温度でか焼される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記前駆体組成物が、イットリウム前駆体、ランタン前駆体、ネオジム前駆体、プラセオジム前駆体、ガドリニウム前駆体、またはそれらの混合物から選択される1つもしくは複数のドーパント前駆体を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記無機複合酸化物が、900℃で2時間か焼後に、少なくとも70m/gのBET表面積、少なくとも0.45cm/gの細孔容積、または両方を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記無機複合酸化物が、1200℃で5時間エージング後に、XRDにおけるピーク分裂の不在によって測定されるように最小限のセリア−ジルコニア相分離を示す、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記無機複合酸化物が、1100℃で5時間エージング後に、少なくとも30m/gの表面積、16nm未満の結晶子サイズのセリア−ジルコニア結晶子、または両方を有する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記無機複合酸化物が、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、570℃未満の最大還元可能性温度を示す、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記無機複合酸化物が、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、540℃未満の最大還元可能性温度を示す、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記無機複合酸化物が、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、300℃未満の温度でセリア還元可能性の開始を示す、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記無機複合酸化物が、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、220℃未満の温度でセリア還元可能性の開始を示す、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記無機複合酸化物が、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、75℃未満の最大半量TPR幅測定を示す、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記無機複合酸化物が、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、60℃未満の最大半量TPR幅測定を示す、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記無機複合酸化物が、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、50℃未満の最大半量TPR幅測定を示す、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記無機複合酸化物が、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、少なくとも75%の絶対セリア還元可能性を示す、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記無機複合酸化物が、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、少なくとも85%の絶対セリア還元可能性を示す、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体を参照により本明細書によって援用される、2013年12月23日出願の米国仮特許出願第61/920,183号の優先権を主張するものである。
【0002】
内燃エンジンは、人間、動物および植物生態に公知の健康被害を与える副生成物を含有する排ガスを生成する。汚染物質としては、例えば、未燃炭化水素、一酸化炭素(CO)、窒素の酸化物(NOx)および他の残存化学種、例えば硫黄含有化合物が挙げられる。これらの汚染物質の排出は、ある程度、排ガス触媒によって制御される。使用に好適であるためには、例えば、車両用途において、そのような触媒は、活性(着火)、有効性(例えば、変動する排ガス条件に対応する)、長期活性、機械的完全性、ならびに費用有効性に関して厳しい要件を満たさなければならない。未燃炭化水素、COおよびNOx酸化物汚染物質は、いわゆる「三元」触媒を使用して成功裡に処理されている。これらの貴金属含有触媒は、高百分率の汚染物質を二酸化炭素、水(水蒸気)および窒素というより害の少ない生成物へ変換することができる。例えば、独国特許第05 38 30 318号明細書は、遭遇する様々な条件下で未燃炭化水素、CO、およびNOx酸化物汚染物質を効果的に変換することができる触媒金属としての、貴金属、典型的には、白金、パラジウム、ロジウムおよびそれらの混合物などの、白金族の金属の使用を記載している。
【0003】
実際には、貴金属は典型的には、アルミナなどの、高表面積無機酸化物上に担持される。ナノ結晶性アルミナが多くの場合、その高い比表面積ならびに高温での結晶粒粗大化および焼結に対する良好な耐熱性のために触媒担体として使用されている。アルミナは典型的には、ハニカムモノリス、ワイヤーメッシュ、または類似構造体の形態でなどの、セラミックまたは金属基材上へ適用されるまたは「ウォッシュコートされる」。貴金属は、ウォッシュコーティング前にアルミナと結合させられてもよいし、あるいは、貴金属は、アルミナがウォッシュコートされた後でアルミナに適用されてもよい。
【0004】
他の触媒システムは、貴金属担体として、多くの場合アルミナをまた含む、混合金属酸化物を使用する。例えば、欧州特許第2 036 606号明細書および欧州特許第2 036 607号明細書は、酸化アルミニウムと、酸化アルミニウムと複合酸化物を形成しない金属酸化物と、希土類元素およびアルカリ土類金属元素から選択される少なくとも1つの追加の元素とを含む無機酸化物を記載している。さらに、米国特許第6,335,305号明細書は、無機酸化物担体と、その担体上にロードされた貴金属とを含む触媒であって、その担体が、多孔質酸化物と式(Al(CeO(ZrO1−b(式中、aは、0.4〜2.5であり、bは、0.2〜0.7である)の複合酸化物とを含む触媒を開示している。
【発明の概要】
【0005】
アルミナ、セリアおよびジルコニア(ACZ)という酸化物が現在自動車用途に使用されているという事実にもかかわらず、理想的な触媒特性を提供するであろうACZ酸化物構造体を見いだすことのみならず、このACZ酸化物の製造方法を見いだすことも依然として必要とされている。不幸なことに、そのような酸化物の製造方法は、高度に複雑であり、そして結果として生じた酸化物の特性は、製造のために用いられる方法に特に依存する。そして1つの触媒特性を高める構造上の特徴は、別の特性を悪化させ得る。したがって、所与の酸化物構造体が最適特性を提供するであろうとの仮定は、いくらか空論的であり、そのような酸化物を達成する方法についての手引をそれだけではほとんど提供しない。本教示は、高い表面積、アルミナの表面上でのセリア−ジルコニア複合体の一様な分布、および高温での良好なセリア−ジルコニア相安定性を持ったACZ酸化物を生成する無機複合酸化物の新しい形成方法に、少なくとも一部は、基づいている。
【0006】
したがって、ある種の態様では本教示は、無機複合酸化物の形成方法を提供する。本方法は一般に:
少なくとも約5分間にわたって約5〜約6.75の実質的に一定のpHで、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とを組み合わせて沈澱物組成物を形成する工程であって、酸性前駆体組成物が、アルミナ前駆体、セリア前駆体、ジルコニア前駆体および任意選択的に1つもしくは複数のドーパント前駆体を含む工程と;
沈澱物組成物のpHを約8〜約10に増加させることによって沈澱物を安定化させる工程と;
安定化された沈澱物をか焼して無機複合酸化物を形成する工程と
を含む。
【0007】
ある実施形態では、実質的に一定のpHは、酸性前駆体組成物、塩基性組成物または両方の流量を管理することによって維持される。ある実施形態では、実質的に一定のpHは、酸性前駆体組成物、塩基性組成物または両方の濃度を管理することによって維持される。
【0008】
ある実施形態では、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とは、約5分〜約120分間にわたって約5.5〜約6.5の実質的に一定のpHで組み合わせられる。ある実施形態では、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とは、約30分〜約90分間にわたって約5.5〜約6.5の実質的に一定のpHで組み合わせられる。ある実施形態では、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とは、約5分〜約120分間にわたって約6.5の実質的に一定のpHで組み合わせられる。ある実施形態では、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とは、約30分〜約90分間にわたって約6.5の実質的に一定のpHで組み合わせられる。
【0009】
ある実施形態では、組み合わせる工程における沈澱物組成物のpHは、約0.25を超えて変動しない。ある実施形態では、組み合わせる工程における沈澱物組成物のpHは、約0.1を超えて変動しない。
【0010】
ある実施形態では、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とは、約50℃〜約200℃の温度で組み合わせられる。ある実施形態では、沈澱物は、沈澱物組成物のpHを約8〜約9に増加させることによって安定化される。ある実施形態では、沈澱物は、約2〜約4時間にわたって約600〜約1100℃の温度でか焼される。
【0011】
ある実施形態では、本方法は、沈澱物組成物を約15分間〜約6時間にわたって約50℃〜約200℃の温度に加熱する工程をさらに含む。
【0012】
ある実施形態では、前駆体組成物は、イットリウム前駆体、ランタン前駆体、ネオジム前駆体、プラセオジム前駆体、ガドリニウム前駆体、またはそれらの混合物から選択される1つもしくは複数のドーパント前駆体を含む。
【0013】
ある実施形態では、無機複合酸化物は、900℃で2時間か焼後に、少なくとも約70m/gのBET表面積、少なくとも約0.45cm/gの細孔容積、または両方を有する。ある実施形態では、無機複合酸化物は、1200℃で5時間エージング後に、XRDにおけるピーク分裂の不在によって測定されるように最小限のセリア−ジルコニア相分離を示す。ある実施形態では、無機複合酸化物は、1100℃で5時間エージング後に、少なくとも約30mm/gの表面積、約16nm未満の結晶子サイズのセリア−ジルコニア結晶子、または両方を有する。
【0014】
ある実施形態では、無機複合酸化物は、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、約570℃未満、例えば、約540℃未満の最大還元可能性温度(maximum reducibility temperature)を示す。ある実施形態では、無機複合酸化物は、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、約300℃未満、例えば、約220℃未満の温度でセリア還元可能性の開始を示す。ある実施形態では、無機複合酸化物は、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、約75℃未満、例えば、約60℃未満または約50℃未満さえの最大半量(half−maximal)TPR幅測定結果を示す。ある実施形態では、無機複合酸化物は、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、少なくとも約75%、例えば、少なくとも約85%の絶対セリア還元可能性を示す。
【0015】
他の態様では本教示はまた、本明細書に記載される方法によって形成される無機複合酸化物を提供する。例えば、本教示は、構造(I):
(Al(CeO(ZrO(M(Mx’y’(M’’x’’y’’ (I)
(式中、
、Mx’y’、M’’x’’y’’のそれぞれは、Y、La、Nd、Pr11、Gdから独立して選択される2成分酸化物であり;
係数a、b、c、d、e、およびfは、それぞれの2成分酸化物のそれぞれのモル量を反映し、ここで:
35≦a≦97、
0≦b≦50、
0≦c≦60、
0≦d≦14、
0≦e≦14、および
0≦f≦14である、
ただし:
M、M’、およびM’’のうち2つが同じ元素であることはなく、
d+e+fの合計は、14以下である)
で表される複合酸化物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本教示の材料を形成するための例示的な方法を表すフローダイヤグラムである。
図2】本教示の例示的な無機複合酸化物について昇温還元法(TPR)プロットを描くグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本教示は、ACZ酸化物などの、無機複合酸化物を形成するための新しい共沈澱法に、少なくとも一部は、基づいている。複酸化物の同時共沈澱は多くの場合、相いれない反応条件のために禁忌である。例えば、アルミナを沈澱させるための最適条件は、セリア−ジルコニアを沈澱させるための最適条件とは非常に異なる。しかし、共沈澱は、従来の段階的沈澱法によって形成される生成物よりも均一である生成物の可能性を与える。本方法は、複酸化物を共沈澱させて無機複合酸化物を形成するための手段を提供するのみならず、本明細書に考察される他の特性の中でも、秀でた絶対セリア還元可能性、アルミナ表面上のセリア−ジルコニアのより良好な均一性および一様性、ならびに高温での良好なセリア−ジルコニア相安定性を持ったACZ酸化物を生成することもできる。
【0018】
方法
本教示は、無機複合酸化物の形成方法を、少なくとも一部は、指向する。そのような方法は、少なくとも約5分間にわたって約5〜約6.75の実質的に一定のpHで、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とを組み合わせて沈澱物組成物を形成する工程であって、酸性前駆体組成物が、アルミナ前駆体、セリア前駆体、ジルコニア前駆体および任意選択的に1つもしくは複数のドーパント前駆体を含む工程と;pHを約8〜約10に増加させることによって沈澱物を安定化させる工程と;安定化された沈澱物をか焼して無機複合酸化物を形成する工程とを含む。本明細書で用いるところでは、「無機複合酸化物」は、X線回折によって少なくとも2つのはっきりと異なる結晶学的相を含む無機酸化物材料を意味する。無機複合酸化物を形成するための例示的な方法を概略的に示す、フローダイヤグラムが、図1に提供される。
【0019】
本明細書で用いるところでは、「少なくとも約5分間にわたって」という記述は、組成物を組み合わせるという物理的行動のために要する時間を意味する。すなわち、ボーラス添加の形態での組成物の相互添加、引き続く長時間混合は除外される。本教示の方法は、長時間混合の可能性を排除しないが、本明細書に記述される時間は明白に、酸性組成物と塩基性組成物とを組み合わせるために要する時間を意味し、いったん組み合わせられると混合時間を含むことを意図しない。典型的にはこの組み合わせは、2つの組成物を別々の出発容器から反応器へ徐々に流入させるかまたは滴下させることによって成し遂げられる。ある実施形態では、本教示の方法は、1つもしくは複数のポンプを用いて酸性前駆体組成物および/または塩基性前駆体組成物の流量を管理する。
【0020】
ある実施形態では、本方法は、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とを、少なくとも約10分間にわたって、典型的には少なくとも約15分間にわたって、より典型的には約20分間にわたって約5〜約6.75の実質的に一定のpHで組み合わせる工程を含む。ある実施形態では、本方法は、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とを、少なくとも約5分間にわたって、典型的には少なくとも約10分間にわたって、より典型的には少なくとも約15分間にわたって、さらにいっそう典型的には少なくとも約20分間にわたって約5.5〜約6.5の実質的に一定のpHで組み合わせる工程を含む。
【0021】
ある実施形態では、本方法は、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とを、約5分〜約10時間にわたって、典型的には約10分〜約8時間にわたって、より典型的には約15分〜約6時間にわたって、さらにいっそう典型的には少なくとも約20分〜約5時間にわたって約5.5〜約6.5の実質的に一定のpHで組み合わせる工程を含む。引用範囲間のすべての値および範囲が本教示によって包含されることを意図することは理解される。したがって、ある実施形態では、本方法は、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とを、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間またはそれ以上の時間にわたって、約5、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4または約6.5の実質的に一定のpHで組み合わせる工程を含む。ある実施形態では、本方法は、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とを、約5分〜約120分間にわたって、典型的には約30分〜約90分間にわたって約5.5〜約6.5の実質的に一定のpHで組み合わせる工程を含む。他の実施形態では、本方法は、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とを、約5分〜約5時間にわたって約6.5の実質的に一定のpHで組み合わせる工程を含む。他の実施形態では、本方法は、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とを、約5分〜約120分間にわたって約6.5の実質的に一定のpHで組み合わせる工程を含む。さらに他の実施形態では、本方法は、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とを、約30分〜約90分間にわたって約6.5の実質的に一定のpHで組み合わせる工程を含む。ある実施形態では、この時間は、回分サイズに依存する。
【0022】
本明細書で用いるところでは、用語「約5〜約6.75の実質的に一定のpH」は、「約5〜約6.75」範囲の境界内で、約±0.5を超えて変動しないpHを意味する。すなわち、この言葉は、±0.5を超えて変動せず約5よりも下に落ちないまたは約6.75を超えないpHを意味する。約5.5〜約6.5の実質的に一定のpHは、(a)±0.5を超えて変動しない、(b)約5よりも下に落ちないまたは約6.75を超えないこれらの2つの値間で選択されるpHを意味する。説明に役立つ実例として、約5.5の実質的に一定のpHは、約5〜約6の範囲内に入るであろうpHを意味する。しかし、約5.25の実質的に一定のpHは、本教示の目的のためには、約5〜約5.75の範囲内に入るであろうpHを意味する。同様に、約6.75の実質的に一定のpHは、本教示の目的のためには、約6.25〜約6.75の範囲内に入るであろうpHを意味する。ある実施形態では、pHは、0.25を超えて変動しない。一実施形態では、pHは、0.1を超えて変動しない。
【0023】
pHは、多くの方法で、組成物を組み合わせるという物理的行動中に、維持することができる。例えば、pHは、酸性前駆体組成物、塩基性組成物または両方の流量を管理することによって維持することができる。さらにまたはあるいは、pHは、酸性前駆体組成物、塩基性組成物または両方の濃度を管理することによって維持することができる。例えば、ターゲットpHが6.0であり、そして酸性前駆体組成物および塩基性前駆体組成物の流量が、反応容器中の混合物のpHが6.5に近いようなものである場合には、酸性前駆体組成物の流量を、混合物のpHが徐々に低下するように増加させることができる。同様に、同じ状況で、追加の溶媒(例えば、水)を塩基性組成物に添加してそれを希釈し、再び混合物のpHをターゲットに徐々に低下させることができる。商業的に入手可能なpHメーターを用いてpHが実質的に一定の割合に維持されているかどうかを測定することができる。
【0024】
本明細書で用いるところでは、用語「酸性前駆体組成物」は、酸性である(すなわち、約5未満のpH)そして金属酸化物前駆体分子を含む、水性混合物を意味する。酸性前駆体組成物は典型的には、アルミナ前駆体、セリア前駆体およびジルコニア前駆体を含む。1つもしくは複数のドーパント前駆体がまた、酸性前駆体溶液に含まれてもよい。酸性前駆体組成物の酸性度は任意選択的に、酸の添加によって調整することができる。例えば、硝酸、塩酸、硫酸、またはそれらの混合物などの、酸が、前駆体組成物の酸性度を増加させる(すなわち、pHを下げる)ために添加されてもよい。一実施形態では、酸性前駆体組成物の酸性度は、酸を組成物に添加することによって、反応器へのその導入前に調整される。
【0025】
アルミナ前駆体分子としては、例えば、ハロゲン化アルミニウム塩、硫酸アルミニウム塩、硝酸アルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、ならびにそれらの混合物などの、当技術分野で公知の水溶性アルミニウム化合物が挙げられる。ある実施形態では、アルミナ前駆体分子としては、主に硫酸アルミニウム塩が挙げられる。ある実施形態では、アルミナ前駆体分子の少なくとも50%は、硫酸アルミニウム塩である。ある実施形態では、アルミナ前駆体分子の少なくとも75%は、硫酸アルミニウム塩である。ある実施形態では、アルミナ前駆体分子の少なくとも95%は、硫酸アルミニウム塩である。ある実施形態では、アルミナ前駆体分子としては、専ら硫酸アルミニウム塩が挙げられる。好適なセリア前駆体としては、硝酸セリウム(III)、硝酸セリウム(IV)、硫酸セリウム(III)、硫酸セリウム(IV)、および硝酸セリウム(IV)アンモニウム、ならびに硝酸セリウム(III)と硝酸セリウム(IV)との混合物などの、それらの混合物などの水溶性セリウム化合物が挙げられる。好適な水溶性ジルコニア前駆体としては、硝酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、オルト硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、および炭酸ジルコニウムアンモニウム、ならびにオキシ硝酸ジルコニウムと硫酸ジルコニウムとの混合物などの、それらの混合物などの水溶性ジルコニウム化合物が挙げられる。
【0026】
ドーパント前駆体としては、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sa)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)およびスカンジウム(Sc)の水溶性化合物が挙げられる。ある実施形態では、酸性前駆体組成物としては、少なくとも1つのイットリウム前駆体、ランタン前駆体、ネオジム前駆体、プラセオジム前駆体、ガドリニウム前駆体、またはそれらの混合物が挙げられる。好適なドーパント元素前駆体としては、例えば、硝酸イットリウム、塩化イットリウム、酢酸イットリウム、硝酸ランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、硝酸ネオジム、塩化ネオジム、酢酸ネオジム、硝酸プラセオジム、塩化プラセオジム、酢酸プラセオジム、硝酸ガドリニウム、塩化ガドリニウム、酢酸ガドリニウム、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0027】
本明細書で用いるところでは、用語「塩基性組成物」は、塩基性(すなわち、約8よりも大きいpH)である、水性混合物を意味する。任意の塩基を使用して塩基性組成物を調合することができる。塩基性組成物を形成するための好適な塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウム、ならびにアンモニアもしくは水酸化アンモニウム、またはそれらの混合物などの、アルカリ性および非アルカリ性水酸化物主成分が挙げられるが、それらに限定されない。塩基性組成物の酸性度は任意選択的に、酸または塩基の添加によって、広範囲にわたって調整することができる。例えば、硝酸、塩酸、硫酸、もしくはそれらの混合物などの、酸が、組成物の酸性度を増加させるために添加されてもよいし、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウムもしくは水酸化カリウムまたはそれらの混合物などの、塩基が、組成物の酸性度を低下させるために添加されてもよい。
【0028】
本教示の方法は典型的には、水性媒体中で起こる。本明細書に言及されるように、水性媒体は、水を含む、そして任意選択的に、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールなどの、低級アルカノール、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどの、低級グリコール、ならびにアセトンおよびメチルエチルケトンなどの、低級ケトンなどの1つもしくは複数の水溶性有機液体をさらに含んでもよい媒体である。
【0029】
ある実施形態では、酸性前駆体組成物と塩基性組成物とは、高められた温度で組み合わせられる。例えば、ある実施形態では、組成物は、少なくとも約40℃、典型的には少なくとも約50℃、より典型的には約50℃〜約200℃の温度で組み合わせられる。
【0030】
ある実施形態では、本方法は、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、および任意選択のドーパント元素水和物の沈澱した物質を含有する水溶液(本明細書では「沈澱物組成物」と言われる)を、約15分〜約6時間、より典型的には約30分〜約3時間にわたって約50℃〜約200℃の温度に加熱する工程をさらに含む。100℃よりも高い温度については、加熱は、大気圧よりも高い圧力で圧力容器中で行われる。ある実施形態では、この加熱は、沈澱物組成物を安定化させた後に行われる。いかなる特定の理論にも制約されることなく、この加熱工程は、潜在的に、これらの沈澱物がより高い温度で溶解し、そして再沈澱する傾向のために、結果として生じる酸化物の細孔容積を増加させ得ると考えられる。
【0031】
水性媒体中の粒子の懸濁液のpHは次に、懸濁液への塩基の導入によって、約8〜約10、典型的には約8〜約9のpHに調整される。塩基は、当業者に公知の任意の塩基性物質であり得る。ある実施形態では、塩基は、沈澱物組成物を形成するために使用される塩基性組成物である。沈澱物組成物は次に、典型的には濾過によって、固体物質が液体媒体から単離されるように、典型的には分離される。
【0032】
一実施形態では、粒子は、残留物を除去するために洗浄される。一実施形態では、水性媒体からの粒子の単離前に、1つもしくは複数の水溶性塩が、洗浄効率を向上させるために水性媒体中の粒子の懸濁液に添加される。好適な水溶性塩としては、例えば、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アルミニウム、およびそれらの混合物が挙げられる。洗浄は、熱水および/または例えば、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウムなどの水溶性アンモニウム塩、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウムなどまたはそれらの混合物の水溶液を使用して行われてもよい。洗浄工程の一実施形態では、スラリーが脱水され、次に水溶性アンモニウム塩の水溶液で洗浄され、次に脱水され、次に水で洗浄され、そして次に洗浄済み粒子のウェットケーキを形成するために再び脱水される。一実施形態では、洗浄済み粒子のウェットケーキは、第2水性スラリーを形成するために水に再分散させられる。
【0033】
一実施形態では、第2水性スラリーは次に、噴霧乾燥されて、アルミニウム水和物または金属前駆体接触アルミニウム水和物の粒子になる。別の実施形態では、第2水性スラリーのpHは、第2水性スラリーへの酸(例えば硝酸、硫酸、もしくは酢酸)または塩基(例えば水酸化ナトリウム)の導入によって、約4〜約10の、より典型的には約6〜約8.5のpHに調整される。一実施形態では、pH調整された第2スラリーは次に、約20分〜約6時間、より典型的には約30分〜約3時間にわたって周囲温度よりも上の温度に、より典型的には約50℃〜約200℃の温度に、さらにいっそう典型的には約80℃〜約200℃の温度に加熱される。100℃よりも高い温度については、加熱は、大気圧よりも高い圧力で圧力容器中で行われる。pH調整された第2スラリーの粒子は次に、第2スラリーの水性媒体から単離される。一実施形態では、第2スラリーから単離された粒子は、第3水性スラリーを形成するために水に再分散させられ、第3水性スラリーは噴霧乾燥される。
【0034】
単離された(または単離され、再分散させられ、そして噴霧乾燥された)粒子は次に、無機複合酸化物を形成するためにか焼される。一実施形態では、粒子は、多孔質無機複合酸化物生成物を形成するために、約30分以上、より典型的には約1〜約5時間、高温で、典型的には400℃〜1100℃でか焼される。か焼は、任意選択的に約20%以下の水蒸気の存在下で、空気、または窒素中で行うことができる。一実施形態では、無機酸化物の粒子は、1時間以上、より典型的には約2〜約4時間、400℃以上、より典型的には約600〜約1100℃でか焼される。
【0035】
複合酸化物
ある種の実施形態では、本教示はまた、本明細書に記載される方法を用いて調製された無機複合酸化物に関する。
【0036】
特に明記しない限り、本明細書に記載される複合酸化物組成物のアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、およびそれぞれのドーパント元素のそれぞれの酸化物の相対量は、それぞれの元素の離散2成分酸化物(例えば、アルミニウムについてはAlのような、ジルコニウムについてはZrOのような、セリウムについてはCeOのような、イットリウムについてはYのような、ランタンについてはLaのような、ネオジムについてはNdのような、プラセオジムについてはPr11のような、およびガドリニウムについてはGdのような)に基づいてそれぞれ表される。本教示の複合酸化物内の任意の所与の酸化物の量は典型的には、重量部で測定される。所与の組成物の所与の成分の相対量を記載するために本明細書で用いるところでは、所与の組成物の100pbwに基づく成分の専門用語「重量部」は、所与の組成物の総重量に基づく成分の「重量パーセント」に等しい。例えば、所与の組成物の100pbw当たりの所与の成分の10pbwへの言及は、組成物中の成分の言及10重量%と意味が等しい。
【0037】
一実施形態では、本教示の複合酸化物は、複合酸化物の100pbw当たりのpbw Alとして表される、約20〜約96pbw、典型的には約20〜約90pbw、より典型的には約25〜約80pbw、さらにいっそう典型的には、約30〜約70pbw、Alの量でアルミニウムの1つもしくは複数の酸化物を含む。本明細書に記載される無機酸化物の酸化アルミニウム成分は、非晶質であっても結晶質であってもよい。一実施形態では、本明細書に記載される複合酸化物は、複合酸化物の100pbw当たりのpbw ZrOとして表される、約2〜約80pbw、より典型的には約5〜約70pbw、さらにいっそう典型的には、約10〜約60pbw、ZrOの量で、ジルコニウムの1つもしくは複数の酸化物を含む。一実施形態では、本明細書に記載される複合酸化物は、複合酸化物の100pbw当たりのpbw CeOとして表される、約2〜約80pbw、より典型的には約5〜約70pbw、さらにいっそう典型的には、約10〜約60pbw、CeOの量で、セリウムの1つもしくは複数の酸化物を含む。
【0038】
一実施形態では、本教示の複合酸化物は、ジルコニウムおよびセリウムの1つもしくは複数の酸化物を、複合酸化物の100pbw当たりのpbw ZrOまたはpbw CeOとして表される、それぞれ
約20〜約96pbw、より典型的には約20〜約95pbw、さらにいっそう典型的には約25〜約80pbw Al
約2〜78pbw、より典型的には約5〜75pbw、さらにいっそう典型的には約10〜70pbw、さらにより典型的には約15〜60pbw ZrO、および
約2〜78pbw、より典型的には約5〜75pbw、さらにいっそう典型的には約10〜70pbw、さらにより典型的には約15〜60pbw CeO
(ただし、ZrOおよびCeOの総計量は、80pbwを超えない)
の量で含む。
【0039】
一実施形態では、本教示の複合酸化物は、アルミニウム、セリウムおよびジルコニウムの酸化物と、任意選択的に、遷移金属、希土類、およびそれらの混合物から選択される1つもしくは複数のドーパントの酸化物とを、複合酸化物の100pbw当たりのそれぞれの元素の離散2成分のpbwとして表される、
(a)約20〜約96pbw、より典型的には約20〜約95pbw、Al
(b)約2〜78pbw未満、より典型的には約5〜約75pbw ZrOおよび2〜78pbw、より典型的には約5〜約75pbw CeO(ただし、ZrOおよびCeOの総計量は、80pbwを超えない)、
(c)任意選択的に、約15pbw以下の総計量の遷移金属、希土類、およびそれらの混合物から選択される1つもしくは複数のドーパントの酸化物
の量でそれぞれ含む。
【0040】
一実施形態では、本教示の複合酸化物は、アルミニウムおよびランタンの酸化物を含み、ここで、それぞれの元素の離散2成分酸化物の量としてそれぞれ表される複合酸化物中のアルミニウムおよびランタンの酸化物の量に関して、Laの量は、Alの100pbw当たり2pbw以上であり、そして複合酸化物は、改善された酸化アルミニウム相安定性を示す。
【0041】
一実施形態では、本教示の複合酸化物は、アルミニウム、ジルコニウム、セリウムおよびイットリウムの酸化物を含み、ここで、それぞれの元素の離散2成分酸化物の量としてそれぞれ表されるジルコニウム、セリウム、およびイットリウムの酸化物の量に関して、Yの量は、ZrOおよびCeOの総計量の100pbw当たり、2pbw以上であり、そして複合酸化物は、改善された酸化ジルコニウム−酸化セリウム相安定性を示す。
【0042】
一実施形態では、本教示の無機複合酸化物は、YおよびLaの酸化物、YおよびPrの酸化物、YおよびNdの酸化物、YおよびGdの酸化物、LaおよびPrの酸化物、LaおよびNdの酸化物、LaおよびGdの酸化物、PrおよびNdの酸化物、PrおよびGdの酸化物、またはNdおよびGdの酸化物を含む。
【0043】
一実施形態では、本教示の無機複合酸化物は:
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、Y、およびLaの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、Y、およびPrの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、Y、およびNdの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、Y、およびGdの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、La、およびPrの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、La、およびNdの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、La、およびGdの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、Pr、およびNdの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、Pr、およびGdの酸化物、または
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、Nd、およびGdの酸化物
を含む。
【0044】
一実施形態では、本教示の無機複合酸化物は、Y、La、およびPrの酸化物、Y、La、およびNdの酸化物、Y、La、およびGdの酸化物、Y、Pr、およびNdの酸化物、Y、Pr、およびGdの酸化物、Y、Nd、およびGdの酸化物、La、Pr、およびNdの酸化物、La、Pr、およびGdの酸化物、La、Nd、およびGdの酸化物、またはPr、Nd、およびGdの酸化物を含む。
【0045】
一実施形態では、本教示の無機複合酸化物は:
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、Y、La、およびPrの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、Y、La、およびNdの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、Y、La、およびGdの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、Y、Pr、およびNdの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、Y、Pr、およびGdの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、Y、Nd、およびGdの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、La、Pr、およびNdの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、La、Pr、およびGdの酸化物、
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、La、Nd、およびGdの酸化物、または
アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、Pr、Nd、およびGdの酸化物
を含む。
【0046】
一実施形態では、本教示の複合酸化物は、アルミニウム、ジルコニウム、セリウムおよびイットリウムならびにランタンおよび/またはネオジムおよび/またはプラセオジムの酸化物を含み、ここで、それぞれの元素の離散2成分酸化物の量としてそれぞれ表されるジルコニウム、セリウム、およびそれぞれのドーパント元素の酸化物の量に関して:
La、Nd、および/またはPr11の総計量は、Alの100pbw当たり2pbw以上であり、
の量は、ZrOおよびCeOの総計量の100pbw当たり2pbw以上であり、そして
複合酸化物は、改善された酸化アルミニウム相安定性および改善された酸化ジルコニウム−酸化セリウム相安定性を示す。
【0047】
一実施形態では、複合酸化物の100pbw当たりのそれぞれのドーパント元素の離散2成分酸化物の総計量のpbwとして表される、本教示の無機酸化物中の1つもしくは複数のドーパント元素の酸化物の量は、1つもしくは複数のドーパント元素の酸化物の0超〜約15pbw、より典型的には約1〜12pbw、さらにいっそう典型的には、約2〜10pbwである。
【0048】
一実施形態では、それぞれの元素の2成分酸化物として表される、無機複合酸化物式の酸化物の成分元素の相対量は、構造(I):
(Al(CeO(ZrO(M(Mx’y’(M’’’x’’y’’ (I)
(式中、
、Mx’y’、M’’x’’y’’のそれぞれは、Y、La、Nd、Pr11、Gdから独立して選択される2成分酸化物であり;
係数a、b、c、d、e、およびfは、それぞれの2成分酸化物のそれぞれのモル量を反映し、ここで:
35≦a≦97、
0≦b≦50、
0≦c≦60、
0≦d≦14、
0≦e≦14、および
0≦f≦14である、
ただし:
M、M’、およびM’’のうち2つが同じ元素であることはなく、
d+e+fの合計は、14以下である)
に従っている。
【0049】
一実施形態では、アルミニウムおよび任意選択的に1つもしくは複数のドーパント元素の酸化物は、第1の単一の結晶学的相を形成し、ジルコニウムおよびセリウムのならびに任意選択的に1つもしくは複数のドーパント元素の酸化物は、第2の結晶学的相を形成する。一実施形態では、本明細書に記載される無機酸化物は、酸化アルミニウムおよび、任意選択的に、1つもしくは複数の関連ドーパント元素の酸化物を含み、そして表面積を有する多孔質アルミナ構造体と、多孔質アルミナ構造体の表面上に担持された、ジルコニウムおよびセリウム酸化物、ならびに、任意選択的に、1つもしくは複数の関連ドーパント元素の酸化物を含む、構造体、典型的にはナノ粒子とを含む。ある実施形態では、多孔質アルミナ構造体の表面積は、外表面積と多孔質構造体の細孔によってアクセス可能な内部表面積とを含み、構造体(例えば、ナノ粒子)は、多孔質アルミナ構造体の外表面積およびアクセス可能な内部表面積上に実質的に均一に分布している。ある実施形態では、多孔質アルミナ構造体の表面積は、外表面積と多孔質構造体の細孔によってアクセス可能な内部表面積とを含み、構造体(例えば、ナノ粒子)は、酸化アルミニウム担体構造体の内部表面積上よりも酸化アルミニウム担体構造体の外表面積上に密に分布している。
【0050】
ある実施形態では、無機複合酸化物は、900℃で2時間か焼後に、少なくとも約50m/g、典型的には少なくとも約60m/g、より典型的には少なくとも約70m/gのBET表面積を
ある実施形態では、無機複合酸化物は、1100℃で5時間エージング後に、少なくとも約25m/g、典型的には少なくとも約27.5m/g、より典型的には少なくとも約30m/gの表面積を。ある実施形態では、無機複合酸化物は、1200℃で5時間エージング後に、少なくとも約10m/g、典型的には少なくとも約12.5m/g、より典型的には少なくとも約15m/gの表面積を。BET比表面積は、窒素吸着技術を用いて測定される。
【0051】
ある実施形態では、無機複合酸化物は、900℃で2時間か焼後に、少なくとも約0.30cm/g、典型的には少なくとも約0.40cm/g、より典型的には少なくとも約0.45cm/gの細孔容積を。細孔容積は、Barret−Joyner−Halenda(BJH)法によって窒素吸着を用いて測定される。
【0052】
ある実施形態では、アルミナ担体の表面上のセリア−ジルコニアの結晶子は、900℃で2時間か焼後に、約15nm未満、典型的には約10nm未満、より典型的には約5nm未満の結晶子サイズを有する。ある実施形態では、アルミナ担体の表面上のセリア−ジルコニアの結晶子は、1100℃で5時間エージング後に、約25nm未満、典型的には約20nm未満、より典型的には約15nm未満の結晶子サイズを有する。結晶子サイズは、XRD線幅拡大によって測定される。
【0053】
ある実施形態では、本明細書に記載される無機複合酸化物は、優れたセリア−ジルコニア相安定性を有する。すなわち、ある実施形態では、無機複合酸化物は、高温での長期エージング時に最小限のセリア−ジルコニア相分離を示す。ある実施形態では、無機複合酸化物は、1100℃で5時間エージング後に最小限のセリア−ジルコニア相分離を示す。ある実施形態では、無機複合酸化物は、1200℃で5時間エージング後に最小限のセリア−ジルコニア相分離を示す。相分離は、例えば、X線回折(XRD)スペクトルにおけるピーク分裂を観察することによって特定することができる。
【0054】
当業者は、無機複合酸化物を識別するための従来の手段が1試料を別の試料から識別するのに不十分であり得ることを十分理解するであろう。すなわち、同じ原料が、例えば、同じまたは非常に似た表面積、細孔容積および結晶子サイズを有する2つの異なる複合酸化物を生成することができる。そのような場合には、2つの複合酸化物は、それらの機能によって識別することができる。したがって、ある実施形態では、本教示の無機複合酸化物は、昇温還元法(TPR)によって測定されるように秀でた特性を示す。下に考察される特性は、か焼(例えば、900℃で2時間)後に、しかし長時間エージング前に測定される。
【0055】
ある実施形態では、本教示の無機複合酸化物は、同じ絶対組成(absolute formulation)を有するが、従来の手段によって調製された無機複合酸化物と比べて、より低い最大還元可能性温度を示す。本明細書で用いるところでは、用語「最大還元可能性温度」は、TPRによって測定されるように、水素の吸収が最大である温度(したがってセリウムIIIへのセリウムIVの還元が最大である温度)を意味する。TPRは、温度の関数としての水素消費を測定し、この測定は、セリウム還元の程度がまた最大である温度の演繹を可能にする。最大還元可能性温度は、TPR曲線上のピークによって反映される。ある実施形態では、本教示の無機複合酸化物は、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、約570℃未満、典型的には約555℃未満、より典型的には約540℃未満の最大還元可能性温度を示す。
【0056】
ある実施形態では、本教示の無機複合酸化物は、同じ絶対組成を有するが、従来の手段によって調製された無機複合酸化物と比べて、より低い還元可能性開始温度を示す。本明細書で用いるところでは、用語「還元可能性開始温度」は、水素の吸収が測定できる第1温度(したがってセリウムIIIへのセリウムIVの還元が測定できる第1温度)を意味する。ある実施形態では、本教示の無機複合酸化物は、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、約300℃未満、典型的には約270℃未満、より典型的には約220℃未満の温度でセリア還元可能性の開始を示す。
【0057】
ある実施形態では、本教示の無機複合酸化物は、同じ絶対組成を有するが、従来の手段によって調製された無機複合酸化物の匹敵する測定結果の半分未満である最大半量TPR幅測定結果を示す。いかなる理論にも制約されることなく、より狭い分布のピーク(すなわち、「より細い」ピーク)は、アルミナ担体の表面上により一様に分布した均一なセリア−ジルコニア相の証拠であると考えられる。ある実施形態では、無機複合酸化物は、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、約75℃未満、典型的には約70℃未満、より典型的には約65℃未満、さらにいっそう典型的には約60℃未満の最大半量TPR幅測定結果を示す。ある実施形態では、無機複合酸化物は、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、約55℃未満の最大半量TPR幅測定結果を示す。さらに他の実施形態では、無機複合酸化物は、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、約50℃未満の最大半量TPR幅測定結果を示す。
【0058】
ある実施形態では、本教示の無機複合酸化物は、同じ絶対組成を有するが、従来の手段(例えば、順次沈澱)によって調製された無機複合酸化物よりも高い絶対セリア還元可能性を示す。本明細書で用いるところでは、用語「絶対セリア還元可能性」は、TPR曲線下面積によって測定されるような、還元されたセリアの総量を意味する。ある実施形態では、本教示の無機複合酸化物は、900℃で2時間か焼後に、アルゴン中10%のHの30mL/分流れ中で10℃/分温度上昇でのTPRによって測定されるように、少なくとも約75%、典型的には少なくとも約80%、例えば、少なくとも約85%の絶対セリア還元可能性を示す。
【0059】
触媒
本教示の多孔質無機複合酸化物は、1〜200μm、より典型的には10〜100μmの粉末の形態にある場合にとりわけ、低表面積基材上の触媒コーティングとしてさらに使用することができる。基材構造体は、特定の用途向けに様々な形態から選ぶことができる。そのような構造形態としては、モノリス、ハニカム、ワイヤーメッシュなどが挙げられる。基材構造体は普通は、例えば、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア−アルミナ、ジルコニア、ムライト、コーディエライト、ならびにワイヤーメッシュなどの耐火材料で形成される。金属ハニカム基材もまた使用することができる。ある実施形態では、粉末無機複合酸化物は、水中にスラリー化され、少量の酸(典型的には鉱酸)の添加によって解膠させられ、次にウォッシュコーティング適用向けに好適な粒径への低減をもたらすために粉砕にかけられる。基材構造体は、基材をスラリー中へ浸漬することによってなどで、粉砕されたスラリーと接触させられる。過剰の材料は、吹き付け空気の適用によってなどで、除去され、引き続きコーテッド基材構造体をか焼して基材構造体への上記の(ウォッシュコート)無機複合酸化物粒子状物質の接着をもたらす。
【0060】
貴金属、通常、白金、パラジウム、ロジウムおよびそれらの混合物などの、白金族の金属は、好適な従来型貴金属前駆体(酸性または塩基性)を使用して粒子状無機複合酸化物をウォッシュコーティングする前か、ウォッシュコートされた基材を好適な貴金属前駆体溶液(酸性か塩基性かのどちらかの)中に浸漬することによってウォッシュコーティングした後かのどちらかに、当業者に周知のやり方で適用することができる。より典型的には、多孔質無機複合酸化物が形成され、それに、それへの貴金属の適用、および最後に、基材上への触媒材料担持無機複合酸化物のウォッシュコーティングが続く。本明細書に記載される多孔質無機複合酸化物はまた、1つもしくは複数の他の酸化物担体(アルミナ、マグネシア、セリア、セリア−ジルコニア、希土類酸化物−ジルコニア混合物を含むが、それらに限定されない)と混合され、次に基材上へこれらの生成物でウォッシュコートされてもよい。
【0061】
結果として得られる触媒は、内燃エンジンの排ガスシステムの一環として単独でか他の材料と組み合わせてかのどちらかでキャニスターなどへ直接装填することができる。したがって、普通は酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、硫黄、硫黄化合物および硫黄酸化物を含む、排ガス生成物は、貴金属担持触媒との接触を提供するために排ガスシステムに通される。その結果は、より環境上許容される物質への有毒なおよび有害な排ガス生成物の変換を提供する。
【0062】
本教示はまた、本明細書に記載される触媒を使用する内燃エンジンからの排ガスの処理方法を指向する。本方法は一般に、排ガスが処理されるように(例えば、排ガス中の未燃炭化水素、CO、NO、および/または硫黄化合物の量が低下するように)排ガスを触媒と接触させる工程を含む。ある実施形態では、排ガスからの、CO、NOx、未燃炭化水素、またはそれらの任意の組み合わせが除去される。
【0063】
特定のセットの特性、測定の単位、条件、物理的状態または百分率の表現などの、本明細書または特許請求の範囲に列挙される任意の範囲の数は、そのように列挙される任意の範囲内のいかなるサブセットの数をも含めて、そのような範囲内に入るいかなる数をも、参照によりまたは別のやり方で本明細書に明確に文字通り組み入れることを意図することが理解されるべきである。
【0064】
以下の実施例は、特許請求される発明の具体的な例示として示される。しかし、本発明が実施例に示される具体的な詳細に限定されないことは理解されるべきである。実施例におけるおよび本明細書の残りにおけるすべての部および百分率は、特に明記しない限り重量による。
【実施例】
【0065】
実施例1〜8の組成物についての分析結果を、下の表1A、1Bおよび1Cに報告する。例えば、試料に応じて、表1A〜1Cは、900℃で2時間か焼後の細孔容積(PV 900C(cc/g))、900℃で2時間か焼後の表面積(SA 900C(m2/g))、900℃で2時間か焼後の酸化物結晶子サイズ(X−サイズ 900C(nm))、1100℃で5時間か焼後の表面積(SA 1100C(m2/g))、1100℃で5時間か焼後の酸化物結晶子サイズ(X−サイズ 1100C(nm))および1200℃で5時間か焼後の表面積(SA 1200C(m2/g))を提供する。細孔容積およびBET比表面積は、Micromeretics Tristar 3000装置を用いて窒素吸着技術によって測定した。細孔容積データは、P/P0=0.01〜P/P0=0.998の91の測定点を用いて収集した。比表面積(SA)は、1グラム当たりの平方メートル(m/g)で報告し、細孔容積は、1グラム当たりの立方センチメートル(cc/g)で報告し、か焼温度は、度摂氏(℃)で報告し、時間は、時間(hr)で報告する。特に明記しない限り、様々な実施例において言及されるか焼は、空気中で行った。
【0066】
該当する場合、TPR測定結果は、以下の測定条件下に昇温脱着分析計を用いて得られる:キャリアガス:90%アルゴン−10%水素;ガス流量:30mL/分;測定中の試料温度上昇の速度:10℃/分。
【0067】
実施例1
実施例1の複合酸化物は、Alと、CeOと、ZrOと、LaとYとを含有した。酸性前駆体組成物(溶液A)は、総酸化物基準で50グラムの最終材料を有する組成物を与えるために、硫酸アルミニウム溶液と、硝酸セリウム溶液と、オキシ硝酸ジルコニウム溶液と、硝酸ランタン溶液と、硝酸イットリウム溶液とを混ぜ合わせることによって製造した。
【0068】
塩基性組成物(溶液B)は、おおよそ700mLのNHOHの5.3N溶液を形成するために、アンモニアと水とを混合することによって製造した。
【0069】
おおよそ120gの脱イオン水を、攪拌機を備えた加熱された1リットルの反応器に加えた。反応器中の温度を、沈澱の開始から濾過まで65℃に維持した。溶液AおよびBを、おおよそ4.8mL/分およびおおよそ4.0mL/分のそれぞれの流量で、攪拌下に、反応器へ同時に導入した。初期ランプ後に、pHは、おおよそ5.5で安定した。溶液AおよびBの流量を、溶液Aのすべてが利用されるまで、おおよそ60分、それぞれ、おおよそ4.8mL/分およびおおよそ4.0mL/分に維持した。この時点で、溶液Bの流量を、pHがおおよそ8.7の値に達するまで、おおよそ20分、おおよそ9.8mL/分に増加させた。安定化された沈澱物を含有する水性混合物を二分した。
【0070】
水性混合物の半分を次に、Buchner漏斗において60℃で濾過して湿潤フィルターケーキを形成した。湿潤フィルターケーキを、反応器における水性媒体と同じ容積でのおよび60℃での脱イオン水で洗浄した。湿潤フィルターケーキを次に、60℃での脱イオン水の1リットル当たり30グラムの重炭酸アンモニウムを溶解させることによって調製された、同じ容積の重炭酸アンモニウム溶液で洗浄した。湿潤フィルターケーキを次に、60℃での2容積の脱イオン水で洗浄した。結果として生じた湿潤フィルターケーキを次に、脱イオン水に分散させて約10重量%の固形分を含有するスラリーを形成した。このスラリーを噴霧乾燥させて乾燥粉末を得た。噴霧乾燥粉末を次に、900℃で2時間か焼し、特性評価した。900℃で2時間か焼後に、複合酸化物を次に、さらなる特性評価のためにより高い温度でか焼した。この試料についての分析データは、「pH5.5」と表示される。
【0071】
安定化された沈澱物を含有する水性混合物の第2の半分を、おおよそ95℃の温度で2時間加熱し、次に、上に記載されたように濾過し、洗浄し、噴霧乾燥させ、か焼した。この試料についての分析データは、「pH5.5*」と表示される。900℃で2時間か焼後のpH5.5およびpH5.5*試料のTPR測定結果を、順次沈澱によって(例えば、PCT公開No.国際公開第2012/067654号パンフレットに従って)調製された従来型試料と比べて図1に示す。
【0072】
実施例2
実施例2の複合酸化物は、Alと、CeOと、ZrOと、LaとYとを含有した。この複合酸化物は、溶液AおよびBの流量を、それらの組み合わせ中にpHが4.0に維持されるように調整することを除いては、実施例1と同じ方法で調製した。これらの試料についての分析データは、「pH4.0」および「pH4.0*」と表示される。
【0073】
実施例3
実施例3の複合酸化物は、Alと、CeOと、ZrOと、LaとYとを含有した。この複合酸化物は、溶液AおよびBの流量を、それらの組み合わせ中にpHが5.0に維持されるように調整することを除いては、実施例1と同じ方法で調製した。これらの試料についての分析データは、「pH5.0」および「pH5.0*」と表示される。900℃で2時間か焼後のpH5.0およびpH5.0*試料のTPR測定結果もまた図1に示す。
【0074】
実施例4
実施例4の複合酸化物は、
Alと、CeOと、ZrOと、LaとYとを含有した。この複合酸化物は、溶液AおよびBの流量を、それらの組み合わせ中にpHが6.0に維持されるように調整することを除いては、実施例1と同じ方法で調製した。これらの試料についての分析データは、「pH6.0」および「pH6.0*」と表示される。
【0075】
実施例5
実施例5の複合酸化物は、Alと、CeO、ZrOと、LaとYとを含有した。この複合酸化物は、溶液AおよびBの流量を、それらの組み合わせ中にpHが6.5に維持されるように調整することを除いては、実施例1と同じ方法で調製した。これらの試料についての分析データは、「pH6.5」および「pH6.5*」と表示される。
【0076】
実施例6
実施例6の複合酸化物は、Alと、CeOと、ZrOと、LaとYとを含有した。この複合酸化物は、溶液AおよびBの流量を、それらの組み合わせ中にpHが7.0に維持されるように調整することを除いては、実施例1と同じ方法で調製した。これらの試料についての分析データは、「pH7.0」および「pH7.0*」と表示される。
【0077】
比較例7
比較例7の複合酸化物は、Alと、CeOと、ZrOと、LaとYとを含有した。この複合酸化物は、塩基性溶液Bを直接に酸性前駆体溶液Aへ添加してそれらの組み合わせ中にpHを徐々に8.8まで増加させることを除いては、実施例1と同じ方法で調製した。これらの試料についての分析データは、「可変pH」および「可変pH*」と表示される。
【0078】
実施例8
実施例8の複合酸化物は、Alと、CeOと、ZrOと、LaとYとを含有した。この複合酸化物は、全体沈澱プロセスについての温度が、65℃よりもむしろ、40℃に維持されることを除いては、実施例1と同じ方法で調製した。これらの試料についての分析データは、「pH5.5−40℃」および「pH5.5−40℃*」と表示される。
【0079】
【0080】
【0081】
図1
図2