特許第6698035号(P6698035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

特許6698035コーティングされた基材及びそれから作製された物品
<>
  • 特許6698035-コーティングされた基材及びそれから作製された物品 図000002
  • 特許6698035-コーティングされた基材及びそれから作製された物品 図000003
  • 特許6698035-コーティングされた基材及びそれから作製された物品 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6698035
(24)【登録日】2020年4月30日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】コーティングされた基材及びそれから作製された物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20200518BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20200518BHJP
   B32B 27/02 20060101ALI20200518BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20200518BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20200518BHJP
【FI】
   B32B27/32 B
   B32B27/30 B
   B32B27/32 101
   B32B27/02
   C08L23/26
   C08J7/04 ZCEV
   C08J7/04CES
   C08J7/04CET
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-571750(P2016-571750)
(86)(22)【出願日】2015年6月11日
(65)【公表番号】特表2017-517609(P2017-517609A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】CN2015081246
(87)【国際公開番号】WO2015188763
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年5月30日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2014/079770
(32)【優先日】2014年6月12日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ハイヤン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンチュン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ハン・ウー
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−521547(JP,A)
【文献】 特開昭63−251233(JP,A)
【文献】 特開平06−344520(JP,A)
【文献】 特開2007−291173(JP,A)
【文献】 特開平05−112751(JP,A)
【文献】 国際公開第99/003907(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00286409(EP,A1)
【文献】 SIMAO, Jose Alexandre et al.,Materials Research,Effect of Fiber Treatment Condition and Coupling Agent on the Mechanical and Thermal Properties in Highly Filled Composite of Sugarcane Bagasse Fiber/PP,2016年 5月10日,No.19 Vol.4,pp.746-751,URL,http://dx.doi.org/10.1590/1980-5373-MR-2015-0609
【文献】 EASTMAN,EASTMAN(TM) Chlorinated Polyolefin 343-1,2019年,URL,http://www.eastman.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00− 43/00
C08J 7/04− 7/06
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C09J 1/00− 5/10
9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた基材であって、
a)布基材層と、
b)熱可塑性エラストマーならびに無水物及び/又はカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーを含む第1の組成物から形成される接着剤層であって、前記熱可塑性エラストマーは10〜30重量%のスチレンを含むスチレンエチレンブテンスチレン(SEBS)ブロックコポリマーであり前記無水物及び/又はカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーは、前記第1の組成物の総重量に基づいて0.1〜20重量%であり、前記無水物及び/又はカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーならびに前記熱可塑性エラストマーの総重量に基づいて1〜35重量%の塩素含有量を有する、接着剤層と、
c)少なくとも1つの非極性オレフィン系ポリマーを含む第2の組成物から形成された非極性オレフィン系層と、を備える、コーティングされた基材。
【請求項2】
コーティングされた基材であって、
a)布基材層と、
b)熱可塑性エラストマーならびに無水物及び/又はカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーを含む第1の組成物から形成される接着剤層であって、前記熱可塑性エラストマーは無水マレイン酸官能化エチレン系ポリマーであり前記無水物及び/又はカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーは、前記第1の組成物の総重量に基づいて0.1〜20重量%であり、前記無水物及び/又はカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの総重量に基づいて10〜35重量%の塩素含有量を有する、接着剤層と、
c)少なくとも1つの非極性オレフィン系ポリマーを含む第2の組成物から形成された非極性オレフィン系層と、を備える、コーティングされた基材。
【請求項3】
前記布基材層が、ポリマー織物である、請求項1または2に記載のコーティングされた基材。
【請求項4】
熱可塑性エラストマーならびに無水物及び/又はカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーを含む接着剤組成物であって、前記熱可塑性エラストマーはi)10〜30重量%のスチレンを含むSEBSブロックコポリマー及びii)無水マレイン酸官能化エチレン系ポリマーからなる群から選択され前記無水物及び/又はカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーは前記無水物及び/又はカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの総重量に基づいて10〜35重量%の塩素含有量を有する、接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2014年6月12日に出願されたPCT出願第PCT/CN2014/079770号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、コーティングされた基材、及びそれから作製された物品に関する。
【背景技術】
【0003】
コーティングされた布は、リュックサック、テント、及び外用衣類(outwear)などの製品で幅広く使用される。かかる布は、好適な接着剤を使用して、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはナイロン布を熱可塑性シートと積層することにより形成され得る。かかる用途で幅広く使用されるほとんどの熱可塑性シートには、ポリ塩化ビニル(PVC)またはスチレンブロックコポリマーから作製されたものが含まれる。しかし、スチレンブロックコポリマーは乏しい耐候性を有し、またPVCは環境に配慮しているとは見なされない。より環境に配慮された安定したポリマーの代替品には、ポリオレフィンシートが含まれる。しかし、ポリオレフィンエラストマーは、布基材に積層するのがより困難である。よって、耐候性があり、環境に優しく、基材への適用及び使用、ならびに接着が容易であることが組み合わされたシステムのためがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、コーティングされた基材、及びそれから作製された物品である。
【0005】
一実施形態において、本発明は、a)布基材層と、b)熱可塑性エラストマー、ならびに無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーであって、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの総重量に基づいて、1〜20重量%の塩素含有量を有する、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーを含む、第1の組成物から形成される接着剤層と、c)少なくとも1つの非極性オレフィン系ポリマーを含む第2の組成物から形成された非極性オレフィン系層と、を備える、コーティングされた基材を提供する。
【0006】
一実施形態において、本発明は、
a)布基材層と、
b)熱可塑性エラストマー、ならびに無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーであって、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの総重量に基づいて、10〜35重量%の塩素含有量を有する、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーを含む、第1の組成物から形成される接着剤層と、
c)少なくとも1つの非極性オレフィン系ポリマーを含む第2の組成物から形成された非極性オレフィン系層と、を備える、コーティングされた基材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例及び比較例の剥離強度を例示する。
図2】熱可塑性エラストマーと、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーであって、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの総重量に基づいて、10〜35重量%の塩素含有量を有する、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーと、選択された発明の実施例及び比較例の接着剤層の非芳香族の非塩素化溶媒と、を含む、第1の組成物のブルックフィールド粘度を例示する。
図3】発明の実施例1、ならびに比較例1及び2のヤング率を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、コーティングされた基材、及びそれから作製された物品である。
【0009】
本明細書で使用される場合、用語「ポリマー」は、同じかまたは異なる種類かにかかわらず、モノマーを重合することにより調製されたポリマー化合物を指す。よって、総称ポリマーは、用語ホモポリマー(1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられるが、微量の不純物がポリマー構造中に組み込まれ得ることが理解される)、及び本明細書のこれ以降で定義される用語インターポリマーを包含する。微量の不純物(例えば、触媒残渣)が、ポリマー中及び/または内に組み込まれ得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、用語「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合により調製されたポリマーを指す。総称インターポリマーは、コポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる)及び2つを超える異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを含む。
【0011】
本明細書で使用される場合、用語「オレフィン系ポリマー」は、(ポリマーの重量に基づいて)過半量の重合オレフィンモノマー、例えば、エチレンまたはプロピレンを含み、任意に、少なくとも1つのコモノマーを含有し得る、ポリマーを指す。
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「エチレン系ポリマー」は、(ポリマーの重量に基づいて)過半量の重合エチレンモノマーを含み、任意に、少なくとも1つのコモノマーを含有し得る、ポリマーを指す。
【0013】
本明細書で使用される場合、用語「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」は、(インターポリマーの重量に基づいて)過半量の重合エチレンモノマー、及び少なくとも1つのα−オレフィンを含む、インターポリマーを指す。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「エチレン/α−オレフィンコポリマー」は、2つのみのモノマー種類として、(コポリマーの重量に基づいて)過半量の重合エチレンモノマー、及びα−オレフィンを含む、コポリマーを指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「プロピレン系ポリマー」は、(ポリマーの重量に基づいて)過半量の重合プロピレンモノマーを含み、任意に、少なくとも1つのコモノマーを含み得る、ポリマーを指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「組成物」は、本組成物を含む材料の混合物、ならびに本組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を含む。
【0017】
使用される場合、用語「ブレンド」または「ポリマーブレンド」は、2つ以上のポリマーの混合物を指す。ブレンドは、(分子レベルで相分離されない)混合性である場合も、混合性でない場合もある。ブレンドは、相分離され得る場合も、相分離されない場合もある。ブレンドは、透過型電子顕微鏡、光散乱、X線散乱、及び当技術分野で既知の他の方法から決定されたような1つ以上のドメイン構成を含有する場合も、含有しない場合もある。ブレンドは、マクロレベル(例えば、樹脂を溶融ブレンドすることまたは配合すること)またはミクロレベル(例えば、同じ反応器内での同時形成)で2つ以上のポリマーを物理的に混合することによりもたらされ得る。
【0018】
用語「を含む(comprising)」、「を含む(including)」、「を有する」、及びそれらの派生語は、任意の追加の構成成分、ステップ、または手順の存在を、それが具体的に開示されるかどうかにかかわらず、排除することを意図しない。一切の疑義を回避するために、用語「を含む(comprising)」を使用することにより請求される全ての組成物は、ポリマー系であるかポリマー系でないかにかかわらず、そうでないと明言されていない限りは任意の追加の添加剤、補助剤、または化合物を含み得る。対照的に、用語「本質的に〜からなる」は、任意の連続的な引用の範囲から、実施性に対して本質的ではないものを除いて、任意の他の構成成分、ステップ、または手順を排除する。用語「〜からなる」は、具体的に記述または列挙されない任意の構成成分、ステップ、または手順を排除する。
【0019】
「層」及び同様の用語は、表面に流布されるか、または表面を覆う、化合物、ポリマー、または組成物の単一の厚みまたはコーティングを意味する。
【0020】
「不織布」及び同様の用語は、化学的、機械的、熱、または溶媒処理により一つに接合される、繊維から作製される布または同様の材料を意味する。本用語は、織られてもなく、編まれてもないよりも、フェルトなどの布を示すために使用される。
【0021】
「スパンボンド布」及び同様の用語は、均一で無作為な手法で収集ベルト上に押し出された延伸細糸を堆積し、その後、繊維を接合することにより作製される布または同様の材料を意味する。
【0022】
非極性オレフィン系層」は、少なくとも1つの非極性オレフィン系ポリマーから形成された層を意味する。非極性オレフィン系ポリマーは、過半重量%のオレフィン(例えば、エチレンまたはプロピレン)由来のモノマー単位、及び非極性構成成分を含む。本明細書で使用される場合、用語「極性構成成分」は、少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、窒素)を含む化学基を指す。
【0023】
第1の実施形態において、本発明は、a)布基材層と、b)熱可塑性エラストマー、ならびに無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーであって、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの総重量に基づいて、10〜35重量%の塩素含有量を有する、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーを含む、第1の組成物から形成される接着剤層と、c)少なくとも1つの非極性オレフィン系ポリマーを含む第2の組成物から形成された非極性オレフィン系層と、を備える、コーティングされた基材を提供する。
【0024】
第2の実施形態において、本発明は、a)布基材層と、b)熱可塑性エラストマー、ならびに無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーであって、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマー、ならびに熱可塑性エラストマーの総重量に基づいて、1〜20重量%の塩素含有量を有する、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーを含む、第1の組成物から形成される接着剤層と、c)少なくとも1つの非極性オレフィン系ポリマーを含む第2の組成物から形成された非極性オレフィン系層と、を備える、コーティングされた基材を提供する。
【0025】
布層
布基材層は、任意の天然及び/または合成材料を含み得る。合成材料には、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン(例えば、スパンデックス材料)、及びブレンド物、またはそれらの組み合わせに基づく種々の合成物が含まれる。天然材料には、例えば、綿、絹、またはそれらのブレンド物が含まれる。特定の実施形態において、布基材層は、スパンボンド不織物である。代替的な実施形態において、布基材層は、織物である。一実施形態において、布基材層は、1平方あたり100〜500、より典型的に150〜400、及びさらにより典型的に200〜350グラム(g/m)の重量の材料を含む。一実施形態において、布基材層は、ポリエステル、ポリエチレン、またはポリプロピレンから調製される。特定の実施形態において、布は、コロナ表面処理または含浸などの事前積層処理にかけられ得る。
【0026】
接着剤層
接着剤層は、熱可塑性エラストマーと、無水物及び/もしくはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーであって、無水物及び/もしくはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマー、ならびに熱可塑性エラストマーの総重量に基づいて、1〜20重量%、または無水物及び/もしくはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの総重量に基づいて、10〜35重量%の塩素含有量を有する、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーと、を含む、組成物から形成される。
【0027】
熱可塑性エラストマー
任意の熱可塑性エラストマーは、第1の組成物を形成するのに使用され得る。本明細書で使用される場合、用語、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性及び弾性特性の両方を有する材料を意味する。典型的な熱可塑性エラストマーには、スチレンブロックコポリマー、ポリオレフィン(またはオレフィン系ポリマー)ブレンド物、弾性合金、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性共ポリエステル、熱可塑性ポリアミド、及び官能化ポリオレフィンが含まれる。代表的な官能化ポリオレフィンには、例えば、無水マレイン酸官能化ポリオレフィンが含まれる。
【0028】
特定の実施形態において、熱可塑性エラストマーは、35重量%以下のスチレン含有量、及びさらには10MPa以下のヤング率を有するスチレンエチレンブテンスチレン(SEBS)ブロックコポリマーであるが、但し、熱可塑性エラストマーが、10MPa以下のヤング率を有することを条件とする。10MPa以下の全ての個別の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書で開示され、例えば、熱可塑性エラストマーのヤング率は、10MPa以下、または代替的に9MPa以下、または代替的に8MPa以下、または代替的に6MPa以下、または代替的に4MPa以下であり得る。特定の実施形態において、熱可塑性エラストマーのヤング率は、0.5MPa以上である。35重量%以下のスチレン含有量の全ての個別の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書で開示される。例えば、スチレン含有量は、上限35重量%、または代替的に30重量%、または代替的に25重量%であり得る。
【0029】
本発明にとって好適なスチレン系ブロックコポリマーの例は、以下、すなわち欧州特許第0 712 892 Bl号、国際公開第2004/041538 Al号、米国特許第6,582,829Bl号、米国第2004/0087235 Al号、同第2004/0122408 Al号、同第2004/0122409A1号、ならびに米国特許第4,789,699号、同第5,093,422号、及び同第5,332,613号の発行済み特許及び特許出願公報に記載され、これらの開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0030】
概して、本発明にとって好適な水素化スチレン系ブロックコポリマーは、20%未満の残渣エチレン性不飽和を含む飽和共役ジエンのブロック、好ましくは飽和ポリブタジエンブロックにより分離された、少なくとも2つのモノ−アルケニラレンブロック、好ましくは2つのポリスチレンブロックを有する。いくつかの実施形態において、分岐状もしくは放射状ポリマーまたは官能化ブロックコポリマーは、有用な化合物を作製するが、好ましいスチレン系ブロックコポリマーは、線状構造を有する。
【0031】
典型的に、ポリスチレン飽和ポリブタジエン−ポリスチレン及びポリスチレン飽和ポリイソプレン−ポリスチレンブロックコポリマーは、5,000〜35,000の数平均分子量を有するポリスチレン端ブロック及び20,000〜170,000の数平均分子量を有する飽和ポリブタジエンまたは飽和ポリイソプレン中間ブロックを含む。飽和ポリブタジエンブロックは好ましくは、35〜55%の1,2構成を有し、飽和ポリイソプレンブロックは好ましくは、85%超の1,4構成を有する。
【0032】
コポリマーが線状構造を有する場合、スチレン系ブロックコポリマーの数平均総分子量は好ましくは、30,000〜250,000である。かかるブロックコポリマーは典型的に、10重量%〜30重量%、より典型的には10重量%〜20重量%の平均ポリスチレン含有量を有する。
【0033】
本発明の特定の実施形態において有用なSEBS(Sはスチレンであり、Eはエチレンであり、Bはブチレンである)及びSEPS(Pはプロピレンである)ブロックコポリマーは、Kraton Polymers、Asahi Kasei、及びKuraray Americaから入手可能である。
【0034】
別の実施形態において、熱可塑性エラストマーは、177℃で8〜20Pa−秒のブルックフィールド粘度を有するオレフィン系ポリマー(例えば、エチレン系ポリマーまたはプロピレン系ポリマー)である。8〜20Pa−秒の全ての個別の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書で開示され、例えば、ブルックフィールド粘度は、下限8、10、12、14、16、または19Pa−秒から上限9、11、13、15、17、または20Pa−秒であり得る。例えば、ブルックフィールド粘度は、8〜20Pa−秒、または代替的に8〜14Pa−秒、または代替的に14〜20Pa−秒、または代替的に10〜18Pa−秒であり得る。
【0035】
無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマー
本明細書で使用される場合、用語、無水物及び/もしくはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーは、無水マレイン酸及び/もしくはカルボン酸官能基が上にグラフト化されるオレフィン系ポリマーが中に入るかもしくは上に乗る塩素化オレフィン系ポリマー、または1つ以上の塩素含有コモノマーを含み、かつ後に無水マレイン酸及び/もしくはカルボン酸官能基で官能化される、オレフィン系ポリマーを指す。グラフト化反応は、例えば、米国特許第8,450,430号及び同第7,763,692号に記載され、これらの開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。あるいは、官能基は、オレフィンモノマーと共重合されて、オレフィン系ポリマーを形成するコポリマー(すなわち、カルボン酸官能基)中に存在し得る。
【0036】
一実施形態において、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーは、オレフィン系ポリマー上に、無水マレイン酸及び/またはカルボン酸官能基が上にグラフト化される、塩素化オレフィン系ポリマーから形成される。
【0037】
第1の組成物は、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの総重量に基づいて、10〜35重量%の塩素含有量を有する、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーを使用して形成される。10〜35重量%の塩素の全ての個別の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書で開示され、例えば、塩素含有量は、下限10、14、18、22、26、30、または34重量%から上限12、16、20、24、28、32、または35重量%であり得る。例えば、塩素含有量は、10〜35重量%、または代替的に10〜20重量%、または代替的に20〜35重量%、または代替的に18〜32重量%、または代替的に15〜30重量%であり得る。
【0038】
あるいは、第1の組成物は、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマー、ならびに熱可塑性エラストマーの総重量に基づいて、1〜20重量%の塩素含有量を有する、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーを使用して形成される。1〜20重量%の塩素の全ての個別の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書で開示され、例えば、塩素含有量は、下限1、5、10、または15重量%から上限2、7、12、17、または20重量%であり得る。例えば、塩素含有量は、1〜20重量%、または代替的に1〜10重量%、または代替的に10〜20重量%、または代替的に1〜5重量%であり得る。
【0039】
特定の実施形態において、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーは、無水マレイン酸グラフト化塩素化オレフィン系ポリマーである。さらに別の具体的な実施形態において、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーは、無水物官能化塩素化オレフィン系ポリマーの重量に基づいて、0.75〜3重量%の無水マレイン酸含有量を有する無水マレイン酸グラフト化塩素化オレフィン系ポリマーである。0.75〜3重量%の全ての個別の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書で開示され、例えば、無水マレイン酸レベルは、下限0.75、1.5、2、2.5、または2.75重量%から上限0.9、1.35、1.8、2.25、2.8、または3重量%であり得る。例えば、無水マレイン酸レベルは、0.75〜3.00重量%、または代替的に0.75〜1.75重量%、または代替的に1.75〜3重量%、または代替的に1.00〜2.00重量%であり得る。別の実施形態において、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーは、25,000〜125,000g/モルの重量平均分子量Mwを有する無水マレイン酸グラフト化塩素化オレフィン系ポリマーである。25,000〜125,000の全ての個別の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書で開示され、例えば、Mwは、下限25000、50000、75000、または100000g/モルから上限50000、75000、100000、または125000であり得る。例えば、Mwは、25000〜125000、または代替的に25000〜75000、または代替的に75000〜125000、または代替的に50000〜100000であり得る。
【0040】
塩素化エチレンポリマーの例には、C−C10アルファモノ−オレフィンからなる群から選択される、エチレン及び少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含むコポリマーから調製されたものが含まれる。
【0041】
塩素化グラフトコポリマーも含まれる。本発明の組成物中で用いられ得る好適な塩素化エチレンコポリマーの具体的な例には、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、またはオクテンとエチレンとのコポリマーが含まれる。コポリマーは、ジポリマー、ターポリマー、またはより高次のコポリマーであり得る。特定の実施形態において、塩素化ポリエチレンは、塩素化オレフィン系ポリマーである。
【0042】
溶媒
特定の実施形態において、接着剤層は、熱可塑性エラストマー、ならびに必須塩素含有量を有する、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの溶媒溶液を含む、第1の組成物から形成され、溶媒は、非芳香族の非塩素化溶媒である。任意の非芳香族の非塩素化溶媒が、接着剤層の溶媒溶液の形成で使用され得る。代表的な非芳香族の非塩素化溶媒には、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、及びそれらの2つ以上の任意の組み合わせが含まれる。
【0043】
非極性オレフィン系層
非極性オレフィン系層は、少なくとも1つの非極性オレフィン系ポリマーを含む組成物から形成される。少なくとも1つの非極性オレフィン系ポリマーの各々は、50重量%以上のオレフィン系モノマー由来単位、及び非極性構成成分を含む。
【0044】
一実施形態において、非極性オレフィン系ポリマーは、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマー、好ましくはプロピレン/エチレンコポリマー、ならびに(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー、及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーのうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態において、非極性オレフィン系層は、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマー、ならびに構成成分(i)〜(iv)のうちの少なくとも2つ、3つ、または4つ全てを含む。少なくとも1つの非極性オレフィン系ポリマーは、単一のプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーまたは2つ以上のプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーのブレンドを含み得る。同様に、(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー、及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーの各々は、そのままか、または2つ以上のコポリマーのブレンドとして存在し得る。少なくとも1つの非極性オレフィン系ポリマーは、処理助剤、伸長剤、ブロック剤、顔料及び/または染料、抗酸化剤、紫外線安定剤及び/または吸収剤、難燃剤、充填剤(滑石、炭酸カルシウムなど)、などの1つ以上の任意の添加剤も含み得る。
【0045】
少なくとも1つの非極性オレフィン系ポリマーは典型的に、少なくとも30、より典型的に少なくとも40、及びさらにより典型的に少なくとも50重量パーセント(重量%)のプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーを含む。少なくとも1つの極性オレフィン系ポリマー中のプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーの最大量は典型的に、90を超えず、より典型的に80を超えず、さらにより典型的に70重量%を超えない。非極性オレフィン系層は、発泡プロセスに起因するガス及び副産物を除いては上面層と組成的に同じであり得る。
【0046】
少なくとも1つの極性オレフィン系ポリマー中の(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐した線状エチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー、及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーの総量は典型的に、少なくとも10、より典型的に少なくとも20、及びさらにより典型的に少なくとも30重量%である。非極性オレフィン系層中の(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー、及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーの最大総量は典型的に、70を超えず、より典型的に60を超えず、さらにより典型的に50重量%を超えない。
【0047】
特定の実施形態において、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、実質的にアイソタクティックなプロピレン配列を有することを特徴とする。「実質的にアイソタクティックなプロピレン配列」は、配列が13C NMRにより測定された、0.85超、代替的には0.90超、別の代替においては0.92超、及び別の代替においては0.93超のアイソタクティックな三連構造(mm)を有することを意味する。アイソタクティックな三連構造は、当技術分野で周知であり、例えば、米国特許第5,504,172号及び国際公開第WO00/01745号に記載され、それらは、13C NMRスペクトルにより決定されたコポリマー分子鎖中の三連構造単位に関してアイソタクティック配列に言及する。
【0048】
プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、ASTM D−1238(230℃/2.16Kg)に従って測定された、0.1〜25g/10分の範囲の溶融流量(MFR)を有し得る。0.1〜25g/10分の全ての個別の値及び部分範囲が、この範囲に含まれ、この範囲で開示され、例えば、MFRは、下限0.1g/10分、0.2g/10分、または0.5g/10分から上限25g/10分、15g/10分、10g/10分、8g/10分、または5g/10分であり得る。例えば、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、0.1〜10g/10分の範囲のMFRを有し得るか、またはプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、0.2〜10g/10分の範囲のMFRを有し得る。さらなる実施形態において、プロピレン/アルファ−オレフィンは、プロピレン/エチレンコポリマーである。
【0049】
具体的な実施形態において、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、0.85〜0.89g/ccの密度を有する。0.85〜0.89g/ccの全ての個別の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書で開示され、例えば、密度は、下限0.85、0.86、0.87、または0.88g/ccから上限0.855、0.865、0.875、0.885、または0.89g/ccであり得る。例えば、密度は、0.85〜0.89g/cc、または代替的に0.85〜0.87g/cc、または代替的に0.87〜0.89g/cc、または代替的に0.86〜0.888g/ccであり得る。さらなる実施形態において、プロピレン/アルファ−オレフィンは、プロピレン/エチレンコポリマーである。
【0050】
プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、プロピレン及び1つ以上のアルファ−オレフィンコモノマー由来単位を含む。プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーを製造するために活用される代表的なコモノマーは、C及びC〜C10アルファ−オレフィン、例えば、C、C、C、及びCアルファ−オレフィンである。プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、1〜30重量%の、1つ以上のアルファ−オレフィンコモノマー由来の1つ以上の単位を含む。
【0051】
プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、3.5以下、または3.0以下、または1.8〜3.0の数平均分子量により除算された重量平均分子量(M/M)として定義される分子量分布(MWD)を有する。さらなる実施形態において、プロピレン/アルファ−オレフィンは、プロピレン/エチレンコポリマーである。
【0052】
かかるプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、米国特許第6,960,635号及び同第6,525,157号にさらに記載される。かかるプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、商標名VERSIFYでThe Dow Chemical Companyからか、または商標名VISTAMAXXでExxonMobil Chemical Companyから市販される。
【0053】
具体的な実施形態
特定の実施形態において、本発明は、第1の組成物が、溶媒をさらに含み、第1の組成物が、1〜99重量パーセントの溶媒、0.1〜20重量パーセントの熱可塑性エラストマー、ならびに0.1〜20重量パーセントの無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーを含むことを除いて、本明細書で開示される任意の実施形態による、コーティングされた基材を提供する。1〜99重量%の溶媒の全ての個別の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書で開示され、例えば、第1の組成物は、下限1、20、40、60、または80重量%から上限10、30、50、70、90、または99重量%の溶媒を含み得る。第1の組成物中の溶媒の量は、1〜99重量%、または代替的に1〜70重量%、または代替的に60〜99重量%、または代替的に70〜95重量%であり得る。種々の実施形態において、熱可塑性エラストマー、ならびに無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの各々は、0.1〜20重量%で第1の組成物中に存在し得る。0.1〜20重量%の全ての個別の値が、本明細書に含まれ、本明細書で開示され、例えば、溶媒溶液中の熱可塑性エラストマー、ならびに無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの量は、下限0.1、4、8、12、16、または19重量%から上限1、5、9、13、17、または20重量%であり得る。例えば、第1の組成物中の熱可塑性エラストマー、ならびに無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの量は、0.1〜20重量%、または代替的に8〜20重量%、または代替的に0.1〜12重量%、または代替的に8〜16重量%であり得る。
【0054】
別の実施形態において、本発明は、第1の組成物が、非芳香族の非塩素化溶媒をさらに含み、第1の組成物が、室温(摂氏約26度)で測定された10〜400cPのブルックフィールド粘度(溶液)を有することを除いて、本明細書で開示される任意の実施形態による、コーティングされた基材を提供する。10〜400cPの全ての個別の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書で開示される。例えば、ブルックフィールド(溶液)粘度は、下限10、20、30、40、または50cPから上限100、150、200、250、300、350、または400cPの範囲であり得る。例えば、ブルックフィールド(溶液)粘度は、20〜350cP、または代替的に30〜300cP、または代替的に40〜250cP、または代替的に50〜200cPであり得る。
【0055】
特定の実施形態において、本発明は、布基材層がポリエチレンテレフタレートを含むことを除いて、本明細書で開示される任意の実施形態による、コーティングされた基材を提供する。
【0056】
特定の実施形態において、本発明は、熱可塑性エラストマーが、i)30%以下のスチレン含有量及び10MPa以下のヤング率を有するスチレンエチレンブテンスチレン(SEBS)ブロックコポリマー、ならびにii)177℃で8〜20Pa−秒のブルックフィールド粘度を有する官能化ポリオレフィン(またはオレフィン系ポリマー)エラストマーからなる群から選択されることを除いて、本明細書で開示される任意の実施形態による、コーティングされた基材を提供する。
【0057】
特定の実施形態において、本発明は、熱可塑性エラストマーが、無水マレイン酸官能化ポリオレフィンであることを除いて、本明細書で開示される任意の実施形態による、コーティングされた基材を提供する。
【0058】
特定の実施形態において、本発明は、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーが、16重量%以上の塩素含有量を有することを除いて、本明細書で開示される任意の実施形態による、コーティングされた基材を提供する。
【0059】
特定の実施形態において、本発明は、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーが、1〜3重量%の無水マレイン酸官能基の量及び16〜30重量%の塩素含有量を有する無水マレイン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーであることを除いて、本明細書で開示される任意の実施形態による、コーティングされた基材を提供する。
【0060】
特定の実施形態において、本発明は、接着剤層の溶媒が、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを除いて、本明細書で開示される任意の実施形態による、コーティングされた基材を提供する。
【0061】
特定の実施形態において、本発明は、接着剤層の溶媒溶液が、エチレン酢酸ビニルを含有しないことを除いて、本明細書で開示される任意の実施形態による、コーティングされた基材を提供する。
【0062】
特定の実施形態において、本発明は、第1の組成物が、95重量パーセント以上の熱可塑性エラストマー、ならびに無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの合計を含むことを除いて、本明細書で開示される任意の実施形態による、コーティングされた基材を提供する。
【0063】
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1つの極性オレフィン系ポリマーが、(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー、及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーのうちの少なくとも1つとブレンドされた、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーであることを除いて、本明細書で開示される任意の実施形態による、コーティングされた基材を提供する。
【0064】
特定の実施形態において、本発明は、非極性オレフィン系層が、以下の特性、すなわち0.85〜0.92g/ccの密度、及び0.1〜80g/10分の溶融流量のうちの1つかまたは両方を示す非極性オレフィン系ポリマーを含むことを除いて、本明細書で開示される任意の実施形態による、コーティングされた基材を提供する。0.85〜0.92g/ccの全ての個別の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書で開示され、例えば、密度は、下限0.85、0.87、0.89、または0.91g/ccから上限0.86、0.88、0.90、または0.92g/ccであり得る。例えば、密度は、0.85〜0.92g/cc、または代替的に0.85〜0.89g/cc、または代替的に0.89〜0.92g/cc、または代替的に0.86〜0.91g/ccであり得る。0.1〜80g/10分の溶融流量の全ての個別の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書で開示され、例えば、溶融流量は、下限0.1、10、30、50、または70から上限5、25、35、55、75、または80g/10分であり得る。例えば、溶融流量は、0.1〜80g/10分、または代替的に0.1〜50g/10分、または代替的に30〜80g/10分、または代替的に20〜60g/10分であり得る。
【0065】
さらに別の実施形態において、本発明は、本明細書で開示される任意の実施形態による、コーティングされた基材から形成された少なくとも1つの構成成分を含む物品を提供する。代表的な物品には、リュックサック、ブリーフケース、手提げバッグ、及びテント、ならびに人工皮革などの耐水性消費者製品が含まれる。
【0066】
代替的な実施形態において、布基材層は、ポリマースパンボンド不織物である。
【0067】
代替的な実施形態において、第1の組成物は、室温(摂氏約26度)で、10〜400cPのブルックフィールド(溶液)粘度を有する。
【0068】
さらに別の実施形態において、布基材層は、ポリアミドを含む。
【0069】
代替的な実施形態において、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーは、官能化塩素化オレフィン系ポリマーの重量に基づいて、16〜30重量%の塩素含有量を有する。
【0070】
別の実施形態において、非極性オレフィン系層は、以下の特性、すなわち0.85〜0.92g/ccの密度及び0.1〜80g/10分の溶融流量のうちの1つかまたは両方を示す非極性オレフィン系ポリマーを含む。
【0071】
別の実施形態において、接着剤組成物は、1〜99重量パーセントの溶媒、0.1〜20重量パーセントの熱可塑性エラストマー、ならびに0.1〜20重量パーセントの無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーを含む。
【0072】
本開示は、熱可塑性エラストマーが、i)35%以下のスチレン含有量を有するスチレンエチレンブテンスチレン(SEBS)ブロックコポリマー、及びii)オレフィン系ポリマーからなる群から選択される、接着剤組成物をさらに提供する。
【0073】
別の実施形態において、熱可塑性エラストマーは、無水マレイン酸官能化オレフィン系ポリマーである。
【0074】
別の実施形態において、接着剤層の第1の組成物は、エチレン酢酸ビニルを含有しない。
【0075】
本開示は、本明細書で開示される任意の実施形態による、組成物から形成された接着剤をさらに提供する。
【実施例】
【0076】
以下の実施例は、本発明の具体的な実施形態の例示であるが、添付の特許請求の範囲を限定することを意図しない。
【0077】
実施例を調製するのに使用された材料
布基材層:本研究で使用された布は、Yaw Liamy Enterprise Co.,Ltd(Materials International City Pin HU,Shen Zhen,China)から市販される黒色のポリエステル織布である。
【0078】
非極性オレフィン系層:この層は、プロピレン/エチレンコポリマーを含む組成物から形成され、この組成物は、0.87g/ccの密度及び3.35g/10分の溶融流量を有する。例えば、国際公開第2011/008336号を参照されたく、この開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0079】
F−2Pは、75,000g/モルのMw、1.6重量%の無水マレイン酸レベル、及び20重量%の塩素含有量を有する無水マレイン酸グラフト化塩素化オレフィン系ポリマーであり、Toyobo Co.,Ltd. (Kita−ku,Osaka,Japan)から市販される。
【0080】
熱可塑性エラストマーのKRATON G1652は、30質量%の結合スチレン及び5g/10分の溶融指数Iを有する、スチレン及びエチレン/ブチレン、S−E/B−Sを基にした線状トリブロックコポリマーであり、Kraton Polymers U.S,L.L.C.(Houston,Texas,USA)から市販される。
【0081】
熱可塑性エラストマーのAFFINITY GA 1000Rは、1.1重量%の無水マレイン酸レベル及び13,000cPの溶融粘度を有する無水マレイン酸グラフト化AFFINITY GAであり、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan,USA)から市販される。AFFINITY GA 1000Rの溶融粘度は、ASTM D3236に従って測定される。
【0082】
接着剤層組成物の調製
本発明の実施例で使用された接着剤層組成物を、有機溶媒中にF−2P無水マレイン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマー及び熱可塑性エラストマーペレット(KRATON G1652またはAFFINITY GA 1000R)を、攪拌しながら溶解することにより調製した。比較例で使用された接着剤層組成物も、同じ溶媒中に溶解した。正確な構成成分及び比率は、以下に列挙される。得られた接着剤溶液を、室温になるまで少なくとも24時間冷却して、それが室温保管で安定することを確認した。
【0083】
発明の実施例1(IE−1):F−2P/KRATON G1652(20/80)ブレンドを、10重量%の固形(すなわち、ポリマー)濃度を有するメチルシクロヘキサン中に溶解した。
【0084】
発明の実施例2(IE−2)に関して:F−2P/AFFINITY GA1000R(20/80)ブレンドを、5重量%の固形濃度を有するメチルシクロヘキサン中に溶解した。
【0085】
比較例1(CE−1)に関して:KRATON G1652を、10重量%の固形濃度を有するメチルシクロヘキサン中に溶解した。
【0086】
比較例2(CE−2)に関して:F−2Pを、10重量%の固形濃度を有するメチルシクロヘキサン中に溶解した。
【0087】
比較例3(CE−3)に関して:AFFINITY GA1000Rを、10重量%の固形濃度を有するメチルシクロヘキサン中に溶解した。
【0088】
積層
布を、調製した接着剤層組成物(第1の組成物)でコーティングし、次いで、コーティングした布を、オーブン内に120℃で2分間置いて、有機溶媒を除去した。コーティングした布を、4kNの圧迫力で115℃で12秒間、圧縮成型機を使用して非極性層とともに積層した。
【0089】
比較例4に関して、非極性層を、接着剤層無しに布上に直接積層した。
【0090】
コーティングした布の分野では、コーティング厚に代わってコーティング重量が概して使用される。この場合、本発明の実施例及び比較例の両方に関するコーティング重量は、10〜20gsm(1平方あたりのグラム)である。
【0091】
試験
積層生成物を各々、「3cmx15cmx0.5mm」の長方形の検体に切り取り、300mm/分のクロスヘッド速度で180度の剥離試験を使用して、INSTRON上で剥離強度を測定した。平均負荷(kgf)を記録し、平均剥離強度を報告した(kgf/3cm、各実施例につき5つの試験試料を試験した)。図1は、本発明の実施例及び比較例の各々に関する剥離強度を例示する。
【0092】
異なる接着剤を使用することにより調製された積層試料の対応する剥離強度を、図1に列挙する。図1で見られ得るように、本発明の実施例は、増強された剥離強度を示す。
【0093】
図2は、本発明の実施例及び比較例の接着剤層組成物のブルックフィールド粘度(溶液粘度)を例示する。
【0094】
剥離強度に加えて、コーティングした布の触覚性も重要である。通常、コーティングされた柔らかくしなやかな布は、手触りの良さを目的とする上で好ましい。手触りまたは触覚性は、非常に主観的であるが、布上にコーティングされた接着剤の弾性率に大きく依存する。図3は、(有機溶媒を除去することにより調製される)接着剤固形のヤング率を提供する。図1で見られるように、CE−2は、IE−1と比較可能な剥離強度を有する。しかし、図3で見られるように、CE−2は、IE−1よりもはるかに高い弾性率を有し、これは、CE−2に対応するコーティングした布は、非常に硬くなり、よって、手触りが悪くなることを示す。よって、本発明の塩素化オレフィン系ポリマーと柔らかい熱可塑性エラストマーとの組み合わせは、優れたバランスの剥離強度及びコーティングされた布の手触りを達成し得る。
【0095】
試験方法
特定の材料が別途示されない限り、試験方法には、以下が含まれる。
塩素含有量を、ASTM D3566−03に従って測定する。
溶融流量(MFR)を、ASTM D−1238(230℃、2.16Kg)に従って測定する。
【0096】
溶融指数Iを、ASTM D−1238、条件190℃/2.16Kgに従って測定する。
【0097】
溶融指数Iを、ASTM D−1238、条件190℃/5.0Kgに従って測定する。
【0098】
密度を、ASTM D−792に従って測定する。
【0099】
ブルックフィールド粘度(溶液粘度)を、室温でASTM D3236により測定する。
【0100】
ブルックフィールド粘度(溶融粘度)を、177℃でASTM D3236により測定する。ニートポリマーと関連付けて使用する場合、ブルックフィールド粘度は、溶融粘度を指す。
【0101】
従来のGPC測定を使用して、ポリマーの重量平均(Mw)及び数平均(Mn)分子量を決定し、MWD(=Mw/Mn)を決定した。高温GPC器具(Polymer Laboratories,Inc.モデルPL220)で試料を分析した。
【0102】
この方法は、水力学的容積の概念に基づいて周知の万能較正方法を用い、較正を、140℃のシステム温度で操作して、4つの混合されたA、20μmのカラム(Agilent(前Polymer Laboratory Inc.)のPLゲル混合A)とともに狭いポリスチレン(PS)標準を使用して行った。試料を、1,2,4−トリクロロベンゼン溶媒中、「2mg/mL」濃度で調製した。流量は、1.0mL/分であり、注入サイズは、100マイクロリットルであった。
【0103】
分子量決定を、(Polymer Laboratoriesからの)狭分子量分布ポリスチレン標準を、それらの溶出容積と併せて使用することにより推定した。換算ポリエチレン分子量を、ポリエチレン及びポリスチレンに関して適切なマークハウインク係数を使用することにより決定して(Williams and Ward in Journal of Polymer Science,Polymer Letters,Vol. 6,(621)1968により記載されるように)、以下の等式を引き出した。
Mポリエチレン=a*(Mポリスチレン)
本等式中、a=0.4316及びb=1.0である。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を、通常の手法で計算した。例えば、Mwを、以下の式、すなわちMw=Σ wi Miに従って計算し、式中、wi及びMiはそれぞれ、GPCカラムから溶出する第iの画分の重量画分及び分子量である。ポリエチレン換算分子量計算を、ViscotekTriSECソフトウェアバージョン3.0を使用して実施した。
【0104】
接着剤膜のヤング率を、0.5%の張り及び6.28rad/sの振動数を備える引張りモードDMA RSAIII(TA器具)上で、動的機械的熱分析(DMTA)試験を使用して測定した。温度勾配を、2℃/分で、25℃から80℃になるように設定した。約12mm(長さ)×8mm(幅)×1mm(厚み)の試料サイズ。
【0105】
本発明は、その真意及び本質的な特質から逸脱することなく、他の形態で実施されてもよく、したがって、本発明の範囲を示しているとして、上述の明細書よりもむしろ添付の特許請求の範囲が参照されるべきである。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
コーティングされた基材であって、
a)布基材層と、
b)熱可塑性エラストマー、ならびに無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーであって、前記無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマー、ならびに前記熱可塑性エラストマーの総重量に基づいて、1〜20重量%の塩素含有量を有する、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーを含む、第1の組成物から形成される接着剤層と、
c)少なくとも1つの非極性オレフィン系ポリマーを含む第2の組成物から形成された非極性オレフィン系層と、を備える、コーティングされた基材。
項2.
コーティングされた基材であって、
a)布基材層と、
b)熱可塑性エラストマー、ならびに無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーであって、前記無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの総重量に基づいて、10〜35重量%の塩素含有量を有する、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーを含む、第1の組成物から形成される接着剤層と、
c)少なくとも1つの非極性オレフィン系ポリマーを含む第2の組成物から形成された非極性オレフィン系層と、を備える、コーティングされた基材。
項3.
前記布基材層が、ポリマー織物である、項1または2に記載のコーティングされた基材。
項4.
前記接着剤層が、非芳香族の非塩素化溶媒をさらに含む第1の組成物から形成される、項1または2に記載のコーティングされた基材。
項5.
前記第1の組成物が、1〜99重量パーセントの溶媒、0.1〜20重量パーセントの前記熱可塑性エラストマー、ならびに0.1〜20重量パーセントの前記無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーを含む、項3に記載のコーティングされた基材。
項6.
前記布基材層が、ポリエチレンテレフタレートを含む、項3に記載のコーティングされた基材。
項7.
前記熱可塑性エラストマーが、i)35%以下のスチレン含有量を有するスチレンエチレンブテンスチレン(SEBS)ブロックコポリマー、及びii)オレフィン系ポリマーからなる群から選択される、項3に記載のコーティングされた基材。
項8.
前記熱可塑性エラストマーが、無水マレイン酸官能化オレフィン系ポリマーである、項3に記載のコーティングされた基材。
項9.
前記無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーが、前記官能化塩素化ポリマーの重量に基づいて、0.75〜3重量%の無水マレイン酸官能基の量を有する無水マレイン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーである、項3に記載のコーティングされた基材。
項10.
前記第1の組成物の前記溶媒が、以下、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項3に記載のコーティングされた基材。
項11.
前記第1の組成物が、70〜95重量パーセントの溶媒を含む、項3に記載のコーティングされた基材。
項12.
前記非極性オレフィン系層が、以下、(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー、(iv)ランダムポリプロピレンコポリマー、または(v)それらの組み合わせのうちの少なくとも1つとブレンドされた、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーを含む、項3に記載のコーティングされた基材。
項13.
項1、2、及び3のいずれか一項に記載のコーティングされた基材から形成された少なくとも1つの構成成分を含む、物品。
項14.
熱可塑性エラストマーと、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーであって、前記無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーの総重量に基づいて、10〜35重量%の塩素含有量を有する、無水物及び/またはカルボン酸官能化塩素化オレフィン系ポリマーと、を含む、接着剤組成物。
項15.
少なくとも1つの非芳香族の非塩素化溶媒をさらに含む、項14に記載の接着剤組成物。
図1
図2
図3