特許第6698047号(P6698047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6698047
(24)【登録日】2020年4月30日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2338 20110101AFI20200518BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   B60R21/2338
   B60R21/207
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-70368(P2017-70368)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-171966(P2018-171966A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2017年10月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−315262(JP,A)
【文献】 特開2008−230406(JP,A)
【文献】 特開平11−011253(JP,A)
【文献】 特開2000−016230(JP,A)
【文献】 特開平09−272396(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0334390(US,A1)
【文献】 特開2017−088007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 − 21/33
B60R 21/00 − 21/13
B60R 21/34 − 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の衝突を検出すると衝突信号を出力する衝突検出部と、
少なくとも自動車に搭乗する搭乗者前記自動車の側部側への動きの速さを取得する動き取得部と、
前記搭乗者と前記自動車の側部との間の隙間に車幅方向に異なる厚みで展開可能に形成されたエアバッグと、
前記衝突検出部から前記突信号入力されると前記動き取得部から少なくとも前記搭乗者の前記自動車の側部側への動きの速さを取得し、取得した動きの速さに基づいて前記自動車が衝突したときの前記隙間を算出し、算出された前記隙間が所定の値より小さ場合には、前記エアバッグが前記隙間に差し込まれるように前記隙間に向かって展開する前記エアバッグの車幅方向の厚みを規制するエアバッグ制御部とを備え、
前記動き取得部は、前記自動車の少なくとも転舵量および制動量を取得し、少なくとも前記転舵量および前記制動量に基づいて前記搭乗者の前記自動車の側部側への動きの速さを算出するエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグ制御部は、前記エアバッグが前記隙間に差し込まれた後に前記エアバッグの厚みを広げるように制御する請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグ制御部は、算出された前記隙間が所定の値以上である場合には、前記隙間に向かって展開する前記エアバッグの厚みの規制を解除する請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記自動車の自動運転を制御する運転制御部と、
前記自動車が走行する外部環境を測定する外部環境測定部をさらに有し、
前記動き取得部は、前記運転制御部の制御情報と前記外部環境測定部で測定された前記外部環境に基づいて前記搭乗者の前記自動車の側部側への動きの速さを予測する請求項1〜のいずれか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグの展開する車幅方向の厚みを規制するテザーと、
前記テザーを切断するテザー切断部とをさらに有し、
前記エアバッグ制御部は、前記テザー切断部を制御して前記エアバッグを車幅方向に異なる厚みで展開させる請求項1〜のいずれか一項に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エアバッグ装置に係り、特に、自動車の側部と搭乗者との間にエアバッグを展開させるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の側部と搭乗者との間にエアバッグを展開して、自動車が衝突した際の衝撃から搭乗者を保護するエアバッグ装置が用いられている。例えば、座席の側部には自動車の側部に沿って前方に展開するサイドエアバッグが配置されている。このサイドエアバッグを展開することにより、衝突に伴って側方に移動する搭乗者を受け止めて衝撃を吸収することができる。
しかしながら、サイドエアバッグは、自動車の座席から前方に大きく張り出すように展開されるため、その展開位置がずれるおそれがあった。
【0003】
そこで、サイドエアバッグの展開位置のずれを抑制する技術として、例えば、特許文献1には、エアバッグの展開膨張位置を好適に制御するサイドエアバッグ装置が提案されている。このサイドエアバッグ装置は、搭乗者の胸部側方で展開する主展開部と搭乗者の頭部側方または腰部側方で展開する副展開部とを有し、副展開部の内面には主展開部内に配設されたガス発生源側に向く開口部を有するポケット部が設けられている。これにより、主展開部が展開する際のガスの圧力をポケット部で受けるため、エアバッグがポケット部の内奥方向である車両上方または車両下方に向かって展開されやすくなり、サイドエアバッグの展開位置のずれを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−82664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のサイドエアバッグ装置は、エアバッグの展開位置を制御するためにエアバッグが車両の上下方向に向かって展開するように構成されているため前方への展開が遅くなるといった問題があった。このため、衝突により自動車の側部に向かって移動する搭乗者に展開中のエアバッグが接触するなどして、所定の位置にエアバッグを展開できないおそれがあった。特に、自動車が自動運転される場合には、搭乗者が自動車の側部に向かう速度が大きくなるため、エアバッグが展開する経路に搭乗者が先に到達して、搭乗者と自動車の側部との間にエアバッグを展開できずに搭乗者をエアバッグで受け止めることができないおそれがあった。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、搭乗者をエアバッグで確実に受け止めるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエアバッグ装置は、自動車の衝突を検出すると衝突信号を出力する衝突検出部と、少なくとも自動車に搭乗する搭乗者自動車の側部側への動きの速さを取得する動き取得部と、搭乗者と自動車の側部との間の隙間に車幅方向に異なる厚みで展開可能に形成されたエアバッグと、衝突検出部から突信号入力されると動き取得部から少なくとも搭乗者の自動車の側部側への動きの速さを取得し、取得した動きの速さに基づいて自動車が衝突したときの隙間を算出し、算出された隙間が所定の値より小さ場合には、エアバッグが隙間に差し込まれるように隙間に向かって展開するエアバッグの車幅方向の厚みを規制するエアバッグ制御部とを備え、動き取得部は、自動車の少なくとも転舵量および制動量を取得し、少なくとも転舵量および制動量に基づいて搭乗者の自動車の側部側への動きの速さを算出する、ものである。
【0008】
ここで、エアバッグ制御部は、エアバッグが隙間に差し込まれた後にエアバッグの厚みを広げるように制御することが好ましい。
【0009】
また、エアバッグ制御部は、算出された隙間が所定の値以上である場合には、隙間に向かって展開するエアバッグの厚みの規制を解除することが好ましい。
【0011】
また、自動車の自動運転を制御する運転制御部と、自動車が走行する外部環境を測定する外部環境測定部をさらに有し、動き取得部は、運転制御部の制御情報と外部環境測定部で測定された外部環境に基づいて搭乗者の自動車の側部側への動きの速さを予測することもできる。
【0012】
また、エアバッグの展開する車幅方向の厚みを規制するテザーと、テザーを切断するテザー切断部とをさらに有し、エアバッグ制御部は、テザー切断部を制御してエアバッグを車幅方向に異なる厚みで展開させることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、エアバッグが搭乗者と自動車の側部との間の隙間に異なる厚みで展開可能に形成され、搭乗者の動きに基づいて隙間が所定の値より小さくなる場合には、エアバッグが隙間に差し込まれるように隙間に向かって展開するエアバッグの厚みをエアバッグ制御部が規制するので、搭乗者をエアバッグで確実に受け止めるエアバッグ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施の形態1に係るエアバッグ装置を備えた自動車の構成を示す図である。
図2】エアバッグ装置の構成を示す図である。
図3】隙間に向かって展開するエアバッグの厚みの規制を解除した様子を示す図である。
図4】隙間に差し込まれた後にエアバッグの厚みを大きく展開させる様子を示す図である。
図5】実施の形態2に係るエアバッグ装置の要部を示す図である。
図6】実施の形態3に係るエアバッグ装置の要部を示す図である。
図7】実施の形態1〜3の変形例に係るエアバッグ装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係るエアバッグ装置を備えた自動車の構成を示す。この自動車は、自動運転するように構成されたものであり、自動運転を制御する運転制御部1と、車室内に配置された座席2と、座席2に配置されたシートベルト3と、運転制御部1に接続されたエアバッグ装置4とを有する。
【0016】
運転制御部1は、予め記憶された地図データと自動車の現在の位置とに基づいて自動車の自動運転を制御するものであり、例えば自動車の制動および転舵の制御を行う。なお、自動運転としては、自動車の運転を完全に制御するものだけでなく、搭乗者Dの運転を部分的に支援する運転支援システムも含むものである。
シートベルト3は、座席2に座る搭乗者Dの肩と腰を固定する、いわゆる3点式のシートベルト3である。
【0017】
エアバッグ装置4は、座席2の側部に配置された収納部5と、収納部5に収容されたエアバッグ6と、収納部5に配置されたインフレータ7とを有する。
エアバッグ6は、座席2に配置されて自動車の側部に沿って車両前方に展開する、いわゆるサイドエアバッグである。エアバッグ6は、搭乗者Dと自動車の側部との間の隙間に車幅方向に異なる厚みで展開可能に形成されている。
インフレータ7は、エアバッグ6を展開させるためのものである。
【0018】
次に、エアバッグ装置4の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、エアバッグ装置4は、運転制御部1に接続された動き取得部8を有し、この動き取得部8にエアバッグ制御部9が接続されている。また、エアバッグ制御部9は、インフレータ7およびテザー切断部10にそれぞれ接続されている。さらに、エアバッグ6の内部には、内部テザー11が配置されている。
【0019】
内部テザー11は、エアバッグ6内を自動車の車幅方向に延びるように配置され、一端部がエアバッグ6において自動車の側部12側に固定されると共に他端部がエアバッグ6において座席2側に固定されている。これにより、内部テザー11は、展開するエアバッグ6の車幅方向の厚みを規制し、所定の厚みだけ小さくした状態でエアバッグ6を展開させる。
テザー切断部10は、内部テザー11を切断するものであり、内部テザー11が切断されることによりエアバッグ6が車幅方向に大きく展開、すなわちエアバッグ6の厚みが大きくなる。
【0020】
動き取得部8は、搭乗者Dの動きを取得するものである。具体的には、動き取得部8は、運転制御部1の制御情報に基づいて自動車の動きを求め、その自動車の動きに基づいて搭乗者Dの動きを算出する。
【0021】
エアバッグ制御部9は、動き取得部8で取得される自動車の側部12側への搭乗者Dの動き(移動)に基づいて搭乗者Dと側部12との間の隙間Sを算出し、隙間Sが所定の値より小さい場合には、エアバッグ6が隙間Sに差し込まれるように、隙間Sに向かって展開するエアバッグ6の車幅方向の厚みを規制する。具体的には、エアバッグ制御部9は、テザー切断部10を制御してエアバッグ6を異なる厚みで展開させる。すなわち、隙間Sが所定の値より小さい場合には、テザー切断部10を駆動せずに、エアバッグ6を所定の厚みだけ小さくした状態で展開させる。一方、図3に示すように、動き取得部8で取得される自動車の側部12側への搭乗者Dの動きに基づいて算出された隙間Sが所定以上である場合には、テザー切断部10により内部テザー11を切断して、隙間Sに向かって展開するエアバッグ6の厚みの規制を解除し、エアバッグ6を通常の厚みのまま展開させる。
【0022】
次に、この実施の形態の動作について説明する。
まず、図1に示すように、搭乗者Dが座席2に座った状態で自動車が運転制御部1により自動運転される。この時、運転制御部1は、自動車の動き、例えば自動車の転舵量をエアバッグ装置4の動き取得部8に順次出力している。運転制御部1から自動車の転舵量が入力された動き取得部8は、その転舵量に基づいて搭乗者Dの動きを算出する。なお、動き取得部8は、運転制御部1から自動車の転舵量と共に制動量を取得することが好ましく、これにより転舵量および制動量に基づいて搭乗者Dの動きを高精度に算出することができる。
【0023】
ここで、自動車が衝突すると、図示しない衝突検出部に衝突の衝撃が入力されて、その衝突信号が、図2に示すエアバッグ制御部9に入力される。エアバッグ制御部9は、衝突信号が入力されると、動き取得部8を介して搭乗者Dの動きを取得する。
【0024】
この時、エアバッグ制御部9は、動き取得部8から入力される搭乗者Dの動き、例えば自動車の側部12側への搭乗者Dの動きの速さに基づいて搭乗者Dと側部12との間の隙間Sを算出し、隙間Sが所定の値より小さい場合には、テザー切断部10を駆動せずに、インフレータ7からエアバッグ6内に展開ガスを注入してエアバッグ6を前方へ向けて展開させる。
【0025】
例えば、エアバッグ制御部9は、自動運転により制動と転舵を同時に行っている時の搭乗者Dの動きが動き取得部8から入力された場合には、隙間Sが小さいと判断し、テザー切断部10を駆動せずにエアバッグ6を展開させる。
ここで、自動車が手動運転される場合には自動車性能の最大限まで制動および転舵を行うことは困難であるが、運転制御部1により自動運転される場合には自動車性能の最大限まで制動および転舵を行うことができる。このため、自動運転時には、手動運転時と比較して自動車の動きが大きくなると共に搭乗者Dの加速度も大きくなり、これに伴って隙間Sが急速に小さくなるおそれがある。この時に、エアバッグ6の厚みを規制せずに、通常の厚みでエアバッグ6を展開すると、エアバッグ6が搭乗者Dに接触して所定の位置に展開できなくなる。さらに、エアバッグ6が展開する前に搭乗者Dが隙間Sを塞ぐように移動すると、エアバッグ6を搭乗者Dと自動車の側部12との間に展開できず、搭乗者Dをエアバッグで受け止めることができないおそれもあった。
【0026】
そこで、エアバッグ6の車幅方向の厚みを内部テザー11で規制し、内部テザー11がない場合と比較して所定の厚みだけ小さくしてエアバッグ6を前方へ展開させる。ここで、内部テザー11は、搭乗者Dの動きが速い時の隙間Sの値に基づいて、エアバッグ6が隙間Sに差し込まれるように予め長さが調節されている。このため、エアバッグ6は、内部テザー11に厚みを規制されて、隙間Sに差し込み可能な厚みで隙間Sに向かって展開を開始する。
【0027】
このように、搭乗者Dの動きが速いために隙間Sが急速に小さくなる場合には、エアバッグ6が、隙間Sより小さな厚みで展開を開始するため、展開中のエアバッグ6を隙間Sにスムーズに差し込むことができ、エアバッグ6を搭乗者Dと自動車の側部12との間に確実に展開させることができる。また、エアバッグ6が、厚みを規制しつつ展開されるため、展開速度を高めることができる。これにより、衝突により自動車の側部12側へ速い速度で移動する搭乗者Dをエアバッグ6で確実に受け止めることができる。
ここで、エアバッグ6は、複数の内部テザー11により全体的にほぼ同じ厚みに規制されている。このため、エアバッグ6が、搭乗者Dに部分的に接触することを抑制し、エアバッグ6を隙間Sによりスムーズに差し込むことができる。
【0028】
なお、エアバッグ制御部9は、図4に示すように、エアバッグ6が隙間Sに差し込まれた後にエアバッグ6の厚みを広げるように制御することが好ましい。すなわち、エアバッグ制御部9は、インフレータ7からエアバッグ6内に展開ガスを注入しつつテザー切断部10を駆動して内部テザー11を切断する。この時、エアバッグ6は、内部テザー11が切断されることにより厚みの規制が解除されるため、展開ガスの注入に伴って厚みを広げるように展開される。
このように、エアバッグ6が、隙間Sに差し込まれた後に厚みを広げるように展開されるため、搭乗者Dを確実に受け止めると共に衝突による搭乗者Dの衝撃を確実に吸収することができる。
【0029】
一方、エアバッグ制御部9は、図3に示すように、自動車が衝突した時に動き取得部8から入力される自動車の側部12側への搭乗者Dの動きが遅く、隙間Sが所定の値以上である場合には、テザー切断部10を駆動して内部テザー11を切断すると共にインフレータ7からエアバッグ6内に展開ガスを注入してエアバッグ6を展開させる。エアバッグ6は、内部テザー11によって厚みを規制されていないため、大きな厚みで展開が開始されることになる。ここで、エアバッグ6は、衝突による搭乗者Dの衝撃を確実に吸収するように厚みが予め調節されている。このため、エアバッグ6が、隙間Sに向かって展開する際に搭乗者Dと接触しない場合には、厚みを規制せずに展開することで衝突による搭乗者Dの衝撃を確実に吸収することができる。
【0030】
本実施の形態によれば、搭乗者Dの動きに基づいて搭乗者Dと自動車の側部12との間の隙間Sが所定の値より小さくなる場合には、エアバッグ6が隙間Sに差し込まれるように隙間Sに向かって展開するエアバッグ6の厚みをエアバッグ制御部9が規制するため、搭乗者Dをエアバッグ6で確実に受け止めることができる。
【0031】
実施の形態2
実施の形態1では、動き取得部8は、運転制御部1の制御情報に基づいて搭乗者Dの動きを算出したが、搭乗者Dの動きを取得できればよく、これに限られるものではない。
例えば、図5に示すように、実施の形態1において、動き取得部8に換えて動き取得部21を配置すると共にこの動き取得部21に外部環境測定部22を新たに接続することができる。
【0032】
外部環境測定部22は、自動車が走行する外部環境を測定するもので、例えばカメラなどから構成することができる。
動き取得部21は、外部環境測定部22で測定された外部環境情報を入力する。また、動き取得部21は、実施の形態1と同様に、運転制御部1から制御情報を入力する。そして、動き取得部21は、外部環境測定部22から入力された外部環境情報と運転制御部1から入力された制御情報に基づいて搭乗者Dの動きを予測する。
【0033】
例えば、外部環境測定部22により自動車の前方に障害物が測定されると、動き取得部21は、運転制御部1の制御情報に基づいて自動車が障害物に衝突するか否かを判定する。この時、自動車が障害物に衝突すると判定された場合には、動き取得部21は、外部環境情報と制御情報に基づいて衝突により自動車に入力される衝撃量を算出する。そして、動き取得部8は、算出された自動車への衝撃量に基づいて座席2に座る搭乗者Dの動きを予測する。
続いて、エアバッグ制御部9が、動き取得部21で予測された搭乗者Dの動きに基づいて隙間Sを算出し、隙間Sに向かって展開するエアバッグ6の厚みを制御する。
【0034】
本実施の形態によれば、動き取得部21で予測された搭乗者Dの動きに基づいて隙間Sに向かって展開するエアバッグ6の厚みが制御されるため、早い段階でエアバッグ6を展開させてエアバッグ6を隙間Sに差し込むことができ、搭乗者Dをエアバッグ6で確実に受け止めることができる。
【0035】
実施の形態3
実施の形態1および2において、動き取得部は、自動車に搭乗する搭乗者Dの動きを測定した測定情報を取得することもできる。
例えば、図6に示すように、実施の形態1において運転制御部1に換えて搭乗者測定部31を動き取得部8に接続することができる。
【0036】
搭乗者測定部31は、自動車に搭乗した搭乗者Dの動きを直接測定するもので、例えばカメラなどから構成することができる。
動き取得部8は、搭乗者測定部31で測定された測定情報に基づいて、自動車の側部12側への搭乗者Dの動きを算出する。
エアバッグ制御部9は、動き取得部8で算出された搭乗者Dの動きに基づいて隙間Sを算出し、隙間Sに向かって展開するエアバッグ6の厚みを制御する。
【0037】
本実施の形態によれば、搭乗者測定部31が搭乗者Dの動きを直接測定するため、動き取得部8が側部12側への搭乗者Dの動きを高精度に算出することができ、展開するエアバッグ6の厚みを適切に制御することができる。
【0038】
なお、上記の実施の形態1〜3では、エアバッグ6は、2つの厚みで展開可能に形成されたが、複数の異なる厚みで展開可能であればよく、2つの厚みに限られるものではない。例えば、エアバッグ制御部9は、搭乗者Dの動きに応じてエアバッグ6を複数の厚みで段階的に制御することができる。すなわち、エアバッグ制御部9は、搭乗者Dの動きの速さに対して複数の値を段階的に設定し、その設定された値に応じた厚みでエアバッグ6を展開させる。これにより、エアバッグ6を極力大きく展開させることができるため、搭乗者Dをより安全に受け止めることができる。
【0039】
また、上記の実施の形態1〜3では、エアバッグ6は、隙間Sに差し込まれる展開開始直後において、複数の内部テザー11により全体的にほぼ同じ厚みに規制されていたが、隙間Sに差し込まれるように厚みが規制されていればよく、これに限られるものではない。
例えば、エアバッグ6は、展開時において最も前方に位置する先端部近傍の厚みをさらに小さく規制することができる。これにより、隙間Sが小さい場合でもエアバッグ6を隙間Sに差し込むことができ、搭乗者Dをエアバッグ6でより確実に受け止めることができる。
【0040】
また、上記の実施の形態1〜3では、エアバッグ6は、内部テザー11により厚みが規制されたが、隙間Sに差し込まれるようにエアバッグ6の厚みを規制できればよく、内部テザー11に限られるものではない。
例えば、図7に示すように、実施の形態1においてエアバッグ6に換えてエアバッグ41を配置すると共に内部テザー11に換えて圧力弁42を配置することができる。
【0041】
エアバッグ41は、分割部43により車幅方向に2つの展開室44aおよび44bに分割されている。
圧力弁42は、分割部43に配置されており、インフレータ7からエアバッグ41の展開室44aに所定の圧力以上で展開ガスを注入すると、展開室44bに展開ガスが流入するように形成されている。
このため、インフレータ7からエアバッグ41内に注入する展開ガスの圧力を調節することで、エアバッグ41を異なる厚みで展開可能に形成することができる。
【0042】
また、上記の実施の形態1〜3において、テザー切断部10は、内部テザー11を機械的に切断するものに限られるものではない。
例えば、テザー切断部10は、所定の圧力により切断される内部テザー11に設けられた脆弱部であってもよい。これにより、エアバッグ制御部9がエアバッグ6内の圧力を制御することで、脆弱部により内部テザー11を切断してエアバッグ6が展開する大きさを変えることができる。
【0043】
また、上記の実施の形態1〜3では、エアバッグ6は、座席2に配置されて自動車の側部12に沿って前方に展開するサイドエアバッグから構成されたが、搭乗者Dと自動車の側部12との間の隙間Sに異なる厚みで展開可能に形成されていればよく、サイドエアバッグに限られるものではない。
例えば、エアバッグ6は、自動車の側部12の上縁部に沿って前後方向に配置されて側部12に沿って下方に展開する、いわゆるカーテンエアバッグから構成することもできる。
【0044】
また、上記の実施の形態1〜3では、エアバッグ装置4は、自動運転される自動車に配置されたが、手動運転される自動車に配置することもできる。ただし、手動運転される自動車は、自動運転される自動車と比較して搭乗者Dの動きが極端に変化しない傾向にあるため、エアバッグ装置4は自動運転される自動車に配置することが好ましい。
【符号の説明】
【0045】
1 運転制御部、2 座席、3 シートベルト、4 エアバッグ装置、5 収納部、6,41 エアバッグ、7 インフレータ、8,21 動き取得部、9 エアバッグ制御部、10 テザー切断部、11 内部テザー、12 自動車の側部、22 外部環境測定部、31 搭乗者測定部、42 圧力弁、43 分割部、44a,44b 展開室、D 搭乗者、S 隙間。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7